以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明による電圧変換装置が搭載された車両の一例として示されるハイブリッド自動車の構成を示す概略図である。
図1を参照して、ハイブリッド自動車10は、バッテリ12と、パワーコントロールユニット(Power Control Unit、以下「PCU」と称する。)14と、動力出力装置16と、ディファレンシャルギア(Differential Gear、以下「DG」と称する。)18と、前輪20R,20Lと、後輪22R,22Lと、フロントシート24R,24Lと、リアシート26とを備える。
バッテリ12は、たとえば、リアシート26の後方に配設される。PCU14は、たとえば、フロントシート24R,24Lの下部に位置するフロア下領域に配設される。動力出力装置16は、たとえば、ダッシュボード28の前方のエンジンルームに配設される。そして、PCU14は、バッテリ12および動力出力装置16と電気的に接続される。動力出力装置16は、DG18と連結される。
直流電源であるバッテリ12は、たとえば、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池からなり、直流電圧をPCU14へ供給するとともに、PCU14からの直流電圧によって充電される。
PCU14は、バッテリ12から受ける直流電圧を昇圧し、その昇圧された直流電圧を交流電圧に変換して動力出力装置16に含まれるモータジェネレータ(図示せず、以下同じ。)を駆動制御する。また、PCU14は、動力出力装置16に含まれるモータジェネレータが発電した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ12を充電する。
さらに、PCU14は、動力出力装置16に含まれるモータジェネレータが発電した交流電圧を商用交流電圧に変換して商用交流電源として出力することができる。また、さらに、PCU14は、外部から商用交流電圧を受け、その受けた商用交流電圧を昇圧してバッテリ12を充電することができる。このPCU14の構成については、後ほど詳しく説明する。
動力出力装置16は、エンジン(図示せず、以下同じ。)および/またはモータジェネレータによる動力をDG18へ出力する。また、動力出力装置16は、前輪20R,20Lの回転力によって発電し、その発電された電力をPCU14に供給する。さらに、動力出力装置16は、エンジンの動力を用いてモータジェネレータによって電力を発電し、その発電された電力をPCU14に供給する。
DG18は、動力出力装置16から受ける動力を前輪20R,20Lに伝達するとともに、前輪20R,20Lの回転力を動力出力装置16に伝達する。
図2は、図1に示したPCU14の主要部の構成を示す回路図である。
図2を参照して、PCU14は、コンバータ32と、インバータ34,36と、マトリックスコンバータ38と、制御装置40と、コンセントユニットACUと、電圧センサ42〜46と、制御コントローラ48と、コンデンサC1,C2と、抵抗Rと、電源ラインL1,L2と、接地ラインL3と、U相ラインLU1,LU2と、V相ラインLV1,LV2と、W相ラインLW1,LW2とを含む。
インバータ34に接続されるモータジェネレータMG1およびインバータ36に接続されるモータジェネレータMG2は、図1に示した動力出力装置16に含まれる。モータジェネレータMG1は、3相交流同期電動発電機であって、U,V,W各相ラインLU1,LV1,LW1に接続され、U,V,W各相ラインLU1,LV1,LW1から受ける交流電力によって駆動力を発生する。また、モータジェネレータMG1は、動力出力装置16に含まれるエンジン(図示せず、以下同じ。)からの動力を交流電力に変換し、その変換した交流電力をU,V,W各相ラインLU1,LV1,LW1へ出力する。
さらに、モータジェネレータMG1は、マトリックスコンバータ38とともに、外部から入力される商用交流電圧を昇圧する昇圧コンバータとしても機能する。すなわち、モータジェネレータMG1は、内部に含まれるコイルを用いて、マトリックスコンバータ38から供給される電流を磁場エネルギーとして蓄積することによってマトリックスコンバータ38から受ける電圧を昇圧し、マトリックスコンバータ38がオフされたタイミングに同期して、U,V,W各相ラインLU1,LV1,LW1にその昇圧した電圧を出力する。そして、この昇圧電圧を用いてバッテリ12が充電される。
モータジェネレータMG2は、3相交流同期電動機であって、U,V,W各相ラインLU2,LV2,LW2に接続される。モータジェネレータMG2は、U,V,W各相ラインLU2,LV2,LW2から受ける交流電力によって駆動力を発生する。なお、モータジェネレータMG1,MG2には、その回転位置を検出するための回転位置センサ50,52が設けられている。
コンバータ32は、パワートランジスタQ11,Q12と、ダイオードD11,D12と、リアクトルLとからなる。パワートランジスタQ11,Q12は、電源ラインL2と接地ラインL3との間に直列に接続され、制御装置40からの制御信号をベースに受ける。各パワートランジスタQ11,Q12のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにダイオードD11,D12がそれぞれ接続される。
リアクトルLは、バッテリ12の正極と接続される電源ラインL1に一端が接続され、パワートランジスタQ1のエミッタとパワートランジスタQ2のコレクタとの接続点に他端が接続される。そして、リアクトルLは、パワートランジスタQ12のスイッチング動作に応じてコイルに流される電流を磁場エネルギーとして蓄積することによってバッテリ12からの直流電圧を昇圧し、その昇圧された直流電圧をパワートランジスタQ12がオフされたタイミングに同期してダイオードD11を介して電源ラインL2に供給する。
このコンバータ32は、制御装置40からの制御信号に基づいて、バッテリ12から受ける直流電圧を昇圧して電源ラインL2に供給する。また、コンバータ32は、インバータ34から受ける直流電圧を降圧してバッテリ12を充電する。
コンデンサC1は、電源ラインL1と接地ラインL3との間に接続され、電圧変動に起因するバッテリ12およびコンバータ32に対しての影響を低減する。
インバータ34は、U相アーム341、V相アーム342およびW相アーム343からなる。U相アーム341、V相アーム342およびW相アーム343は、電源ラインL2と接地ラインL3との間に並列に接続される。U相アーム341は、直列に接続されたパワートランジスタQ21,Q22からなり、V相アーム342は、直列に接続されたパワートランジスタQ23,Q24からなり、W相アーム343は、直列に接続されたパワートランジスタQ25,Q26からなる。また、各パワートランジスタQ21〜Q26のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD21〜D26がそれぞれ接続されている。
そして、各相アームにおける各パワートランジスタの接続点は、U,V,W各相ラインLU1,LV1,LW1を介してモータジェネレータMG1の各相コイルの反中性点側にそれぞれ接続されている。
このインバータ34は、制御装置40からの制御信号に基づいて、電源ラインL2から受ける直流電圧を交流電圧に変換してU,V,W各相ラインLU1,LV1,LW1へ出力する。また、インバータ34は、U,V,W各相ラインLU1,LV1,LW1から受ける交流電圧を直流電圧に整流して電源ラインL2に供給する。
インバータ36は、U相アーム361、V相アーム362およびW相アーム363からなる。U相アーム361、V相アーム362およびW相アーム363は、電源ラインL2と接地ラインL3との間に並列に接続される。U相アーム361は、直列に接続されたパワートランジスタQ31,Q32からなり、V相アーム362は、直列に接続されたパワートランジスタQ33,Q34からなり、W相アーム363は、直列に接続されたパワートランジスタQ35,Q36からなる。また、各パワートランジスタQ31〜Q36のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD31〜D36がそれぞれ接続されている。
そして、インバータ36においても、各相アームにおける各パワートランジスタの接続点は、U,V,W各相ラインLU2,LV2,LW2を介してモータジェネレータMG2の各相コイルの反中性点側にそれぞれ接続されている。
このインバータ36は、制御装置40からの制御信号に基づいて、電源ラインL2から受ける直流電圧を交流電圧に変換してU,V,W各相ラインLU2,LV2,LW2へ出力する。
コンデンサC2は、電源ラインL2と接地ラインL3との間に接続され、電圧変動に起因するインバータ34,36およびコンバータ32に対しての影響を低減する。抵抗Rは、電源ラインL2と接地ラインL3との間に接続される放電抵抗である。
マトリックスコンバータ38は、双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbと、電源ラインLA〜LC,La,Lbとからなる。
電源ラインLA〜LCは、インバータ34のU相ラインLU1,V相ラインLV1,W相ラインLW1にそれぞれ接続される。電源ラインLa,Lbは、後述するコンセントユニットACUに接続される。
双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbは、2行3列の行列状に配置される。双方向スイッチング素子SAaは、電源ラインLAと電源ラインLaとの間に接続され、双方向スイッチング素子SBaは、電源ラインLBと電源ラインLaとの間に接続され、双方向スイッチング素子SCaは、電源ラインLCと電源ラインLaとの間に接続される。また、双方向スイッチング素子SAbは、電源ラインLAと電源ラインLbとの間に接続され、双方向スイッチング素子SBbは、電源ラインLBと電源ラインLbとの間に接続され、双方向スイッチング素子SCbは、電源ラインLCと電源ラインLbとの間に接続される。
そして、双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbの各々は、制御装置40から受ける制御指令に応じてスイッチング動作を行ない、オン状態のときは、対応する2つの電源ライン間で双方向に電流を通流することができる。また、双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbの各々は、オフ状態のときは、対応する2つの電源ラインを電気的に分離する。
このマトリックスコンバータ38は、モータジェネレータMG1によって発電されたU,V,W各相電圧VA,VB,VCをそれぞれ電源ラインLA〜LCに受け、その受けた各相電圧VA,VB,VCを用いて商用交流電圧Vabを生成する。すなわち、マトリックスコンバータ38は、従来の3相全波整流インバータ方式のように3相交流を一旦直流に整流せずに、3相交流電圧から単相の商用交流電圧Vabを直接生成する。ここで、商用交流電圧Vabは、電源ラインLaの電圧Vaと電源ラインLbの電圧Vbとの電圧差として電源ラインLa,Lbに出力される。
マトリックスコンバータ38は、制御装置40から制御信号を受け、その制御信号に応じて双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbのスイッチング動作を行なうことによって、各相電圧VA,VB,VCを商用交流電圧Vabに変換し、その変換した商用交流電圧Vabを電源ラインLa,Lbへ出力する。
また、マトリックスコンバータ38は、外部からコンセントユニットACUに入力される商用交流電圧を電源ラインLa,Lbの電圧差として電源ラインLa,Lbに受け、その受けた商用交流電圧をモータジェネレータMG1の各相コイルを用いて昇圧し、その昇圧した昇圧電圧をインバータ34に供給する。このとき、マトリックスコンバータ38は、モータジェネレータMG1に駆動力を発生させないように、モータジェネレータMG1に対してd軸電流のみを発生させる電圧パターンを生成してモータジェネレータMG1へ出力する。なお、このマトリックスコンバータ38の具体的なスイッチング動作については、後ほど詳しく説明する。
コンセントユニットACUは、マトリックスコンバータ38によって電源ラインLa,Lb間に発生される商用交流電圧Vabを受けて外部へ出力し、または、外部から商用交流電圧を受けて電源ラインLa,Lbに供給するための入出力ソケットである。
電圧センサ42は、電源ラインL1と接地ラインL3との電圧差すなわちバッテリ12の端子間電圧を検出し、その検出値を制御装置40へ出力する。電圧センサ44は、電源ラインLaと電源ラインLbとの電圧差を検出し、その検出値を制御装置40へ出力する。また、電圧センサ46は、U,V,W各相ラインLU1,LV1,LW1におけるU,V,W各相電圧VA,VB,VCをそれぞれ検出し、その検出値を制御装置40へ出力する。
制御コントローラ48は、バッテリ12の基準電圧Vrefと電圧センサ42によって検出されたバッテリ12の検出電圧との偏差を受け、その偏差を速やかに0とするためのフィードバック制御信号を生成して制御装置40へ出力する。
制御装置40は、バッテリ12の端子間電圧の検出値を電圧センサ42から受け、バッテリ12からの直流電圧を昇圧して電源ラインL2に供給する昇圧動作をコンバータ32に行なわせるため、コンバータ32におけるパワートランジスタQ12のスイッチング動作を制御する。また、制御装置40は、インバータ34から電源ラインL2に供給される直流電圧をバッテリ電圧に降圧してバッテリ12を充電するため、コンバータ32におけるパワートランジスタQ11のスイッチング動作を制御する。
さらに、制御装置40は、バッテリ12から供給される電力に基づいてモータトルク指令に応じたトルクをモータジェネレータMG1,MG2に発生させるため、インバータ34,36におけるパワートランジスタQ21〜Q26,Q31〜Q36のスイッチング動作を制御する。また、さらに、制御装置40は、モータジェネレータMG1によって発生された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12を充電するため、インバータ34におけるパワートランジスタQ21〜Q26のスイッチング動作を制御する。
また、さらに、制御装置40は、U,V,W各相電圧VA,VB,VCの検出値を電圧センサ46から受け、モータジェネレータMG1によって発生された3相交流電圧を商用交流電圧Vabに変換してコンセントユニットACUに供給するため、マトリックスコンバータ38における双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbのスイッチング動作を制御する。
また、さらに、制御装置40は、コンセントユニットACUから入力される商用交流電圧の検出値を電圧センサ44から受け、入力された商用交流電圧を昇圧してバッテリ12を充電するため、マトリックスコンバータ38における双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbのスイッチング動作を制御する。ここで、制御装置40は、モータジェネレータMG1の電気角θ1をモータジェネレータMG1の回転位置センサ50から受け、その電気角θ1を用いてモータジェネレータMG1に対してd軸電流のみを発生させる電圧パターンが生成されるように双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbのスイッチング動作を制御する。
なお、上記において、マトリックスコンバータ38および制御装置40は、「電圧変換装置」を構成する。
このPCU14においては、コンバータ32は、バッテリ12からの直流電圧を昇圧して電源ラインL2に供給する。インバータ34,36は、電源ラインL2から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータMG1,MG2をそれぞれ駆動する。また、インバータ34は、モータジェネレータMG1によって発電された交流電圧を直流電圧に整流して電源ラインL2に供給し、コンバータ32は、電源ラインL2からの直流電圧を降圧してバッテリ12に供給する。
さらに、このPCU14においては、マトリックスコンバータ38は、モータジェネレータMG1によって発電された3相交流電圧を商用交流電圧Vabに変換してコンセントユニットACUへ出力し、コンセントユニットACUから商用交流電圧を出力することができる。また、さらに、マトリックスコンバータ38は、コンセントユニットACUから入力される商用交流電圧を受け、モータジェネレータMG1のコイルを用いてその受けた商用交流電圧を昇圧する。そして、その昇圧された昇圧電圧は、インバータ34によって整流され、コンバータ32を介してバッテリ12に充電される。
すなわち、このPCU14においては、モータジェネレータMG1のU,V,W各相ラインLU1,LV1,LW1に接続されるマトリックスコンバータ38を備えることによって、商用交流電圧を生成し、また、外部から受ける商用交流電源によってバッテリ12を充電する電源システムが構築される。
図3は、図2に示したマトリックスコンバータ38における双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbの構成を示す回路図である。
図3を参照して、双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbの各々は、パワートランジスタ62,64と、ダイオード66,68とからなる。パワートランジスタ62,64は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)からなる。
パワートランジスタ62は、コレクタが端子70に接続され、ダイオード66のアノードにエミッタが接続され、制御装置40からの制御信号CSをベースに受ける。ダイオード66は、パワートランジスタ62のエミッタにアノードが接続され、カソードが端子72に接続される。
また、パワートランジスタ64は、コレクタが端子72に接続され、ダイオード68のアノードにエミッタが接続され、制御装置40からの制御信号CSをベースに受ける。ダイオード68は、パワートランジスタ64のエミッタにアノードが接続され、カソードが端子70に接続される。
そして、パワートランジスタ62とダイオード66との接続点は、パワートランジスタ64とダイオード68との接続点と接続される。端子70,72は、対応する2つの電源ラインにそれぞれ接続される。
この双方向スイッチング素子においては、制御信号CSが活性化されると、パワートランジスタ62がオンし、パワートランジスタ62およびダイオード66を介して端子70から端子72へ電流を流すことができる。また、制御信号CSが活性化されると、パワートランジスタ64もオンし、パワートランジスタ64およびダイオード68を介して端子72から端子70へも電流を流すことができる。
したがって、制御信号CSが活性化されたとき、端子72よりも端子70の方が高電圧のときは、パワートランジスタ62およびダイオード66を介して端子70から端子72へ電流が流れる。なお、ダイオード68には逆バイアスがかかるので、パワートランジスタ64に逆方向の電流は流れない。また、制御信号CSが活性化されたとき、端子70よりも端子72の方が高電圧のときは、パワートランジスタ64およびダイオード68を介して端子72から端子70へ電流が流れる。なお、ダイオード66には逆バイアスがかかるので、パワートランジスタ62に逆方向の電流は流れない。
図4は、図2に示したマトリックスコンバータ38における双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbの他の構成を示す回路図である。
図4を参照して、双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbの各々は、パワートランジスタ74,76からなる。パワートランジスタ74,76は、逆阻止機能付きIGBTからなる。この逆阻止機能付きIGBTは、素子に逆方向の電圧がかけられても十分な耐圧を有するものである。
パワートランジスタ74は、コレクタおよびエミッタがそれぞれ端子70,72に接続され、制御装置40からの制御信号CSをベースに受ける。パワートランジスタ76は、コレクタおよびエミッタがそれぞれ端子72,70に接続され、制御装置40からの制御信号CSをベースに受ける。
この双方向スイッチング素子においては、制御信号CSが活性化されると、パワートランジスタ74,76がいずれもオンする。したがって、制御信号CSが活性化されたとき、端子72よりも端子70の方が高電圧のときは、パワートランジスタ74を介して端子70から端子72へ電流が流れる。なお、パワートランジスタ76には逆バイアスがかかるが、パワートランジスタ76は、逆耐圧を有するので、素子が破壊されることはない。また、制御信号CSが活性化されたとき、端子70よりも端子72の方が高電圧のときは、パワートランジスタ76を介して端子72から端子70へ電流が流れる。なお、パワートランジスタ74には逆バイアスがかかるが、パワートランジスタ74も、逆耐圧を有するので、素子が破壊されることはない。
図5は、図2に示したマトリックスコンバータ38によって商用交流電圧Vabが生成される際の制御装置40の動作を説明するためのフローチャートである。
図5を参照して、制御装置40は、所定のサンプリングタイミングになると、電圧センサ46によって検出されたU,V,W各相電圧VA,VB,VCを電圧センサ46から受ける(ステップS1)。そして、制御装置40は、検出されたU,V,W各相電圧VA,VB,VCから最大電圧Vmaxおよび最小電圧Vminを下式によって算出する(ステップS2)。
ここで、max(VA,VB,VC)は、VA,VB,VCのうちの最大値を表し、min(VA,VB,VC)は、VA,VB,VCのうちの最小値を表す。
最大電圧Vmaxおよび最小電圧Vminが算出されると、制御装置40は、最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差が、このタイミングで出力すべき商用交流電圧Vabの絶対値よりも大きいか否かを判定する(ステップS3)。最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差が出力すべき商用交流電圧Vabの絶対値以下であると判定されたときは、U,V,W各相電圧VA,VB,VCから商用交流電圧Vabを生成できないので、制御装置40は、処理を終了する。
ステップS3において、最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差が出力すべき商用交流電圧Vabよりも大きいと判定されると、制御装置40は、最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差から商用交流電圧Vabを双方向スイッチング素子によって生成するためのデューティ比mを算出する(ステップS4)。ここで、デューティ比mは、下式によって算出される。
デューティ比mが算出されると、制御装置40は、双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCbの各々のデューティ比Mを決定する。制御装置40は、出力する商用交流電圧Vabが正値であるか否かを判定し(ステップS5)、Vabが正値のとき、デューティ比Mを下式によって決定する(ステップS6)。
ここで、M[Xy]は、双方向スイッチング素子SXy(XはA,B,Cのいずれかであり、yはa,bのいずれかである。)のデューティ比を表す。また、δ(VX)は“X”を表し、たとえば、Vmax=VAのとき、δ(Vmax)は“A”となる。
なお、(4)式によってデューティ比Mが決定される双方向スイッチング素子以外の双方向スイッチング素子は、デューティ比を0(スイッチをオフ)とする。
一方、ステップS3において、Vabが0以下であると判定されると、制御装置40は、デューティ比Mを下式によって決定する(ステップS7)。
なお、(5)式によってデューティ比Mが決定される双方向スイッチング素子以外の双方向スイッチング素子は、デューティ比を0とする。
そして、スイッチングする双方向スイッチング素子のデューティ比Mが決定されると、制御装置40は、所定のキャリア周期の間、対応する双方向スイッチング素子へデューティ比Mの制御信号を出力する(ステップS8)。
これにより、出力すべき商用交流電圧Vabが正値のときは、最大電圧の電源ラインから電源ラインLaに電流が流れ、外部負荷に供給された電流は、電源ラインLbから最小電圧の電源ラインに流されてモータジェネレータMG1に還流される。一方、出力すべき商用交流電圧Vabが0以下のときは、最大電圧の電源ラインから電源ラインLbに電流が流れ、外部負荷に供給された電流は、電源ラインLaから最小電圧の電源ラインに流されてモータジェネレータMG1に還流される。そして、電流を流す双方向スイッチング素子は、デューティ比mでスイッチング動作を行なうので、最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの電圧差から所望の商用交流電圧Vabが生成される。
なお、制御装置40は、モータジェネレータMG1から出力されるU,V,W各相電圧VA,VB,VCを所定のサンプリング周期ごとに検出し、所定のキャリア周期における各双方向スイッチング素子のデューティ比Mを決定するが、サンプリング周期は、デューティ比を決定するための周期であり、キャリア周期は、決定されたデューティ比で双方向スイッチング素子のスイッチングが行なわれる周期であって、両周期は、同じである必要はない。一般に、キャリア周期は、サンプリング周期よりも短く設定される。
図6は、図2に示したマトリックスコンバータ38によって商用交流電圧Vabが生成される際のマトリックスコンバータ38の動作の一例を説明するための動作波形図である。
図6を参照して、期間tCは、キャリア周期を表し、マトリックスコンバータ38は、このキャリア周期の期間、制御装置40によって決定されたデューティ比Mでスイッチング動作を行なう。また、ここでは、デューティ比を算出するサンプリング周期は、キャリア周期と同じとするが、上述したように、サンプリング周期は、キャリア周期と必ずしも同じである必要はない。
時刻t1において、U相電圧VA=90V、V相電圧VB=−10V、W相電圧VC=50Vであったとすると、制御装置40は、(1),(2)式により最大電圧Vmax=VA=90V、および最小電圧Vmin=VB=−10Vを算出する。そして、この時刻t1において出力すべき出力電圧Vabが30Vであるとすると、制御装置40は、(3)式によりデューティ比m=30V/(90V−(−10V))=0.3を算出する。
そして、制御装置40は、(4)式によって、双方向スイッチング素子SAa,SBbのデューティ比を0.3、その他の双方向スイッチング素子のデューティ比を0と決定し、時刻t1〜t2のキャリア周期tC内において各双方向スイッチング素子が上記のデューティ比でスイッチング動作を行なうようにマトリックスコンバータ38へ制御信号を出力する。そうすると、双方向スイッチング素子SAa,SBbは、制御装置40からの制御信号に応じて、時刻t1〜t2のキャリア周期tCに対して0.3の割合でオンし、このタイミングにおける所望の商用交流電圧V(30V)が生成される。
図7は、図6に示したフローチャートにおける時刻t1〜t2の電流の流れを示した回路図である。なお、コンセントユニットACUには、このPCU14から商用交流電力の供給を受ける外部機器が接続されているとする。また、図7では、図2に示したインバータ36およびモータジェネレータMG2については、図示を省略している。
図7を参照して、双方向スイッチング素子SAa,SBbがオンし、その他の双方向スイッチング素子SAb,SBa,SCa,SCbはオフしている。そうすると、モータジェネレータMG1において最大電圧を発生しているU相コイルから電流が出力され、その出力された電流は、電源ラインLA、双方向スイッチング素子SAaおよび電源ラインLaを介してコンセントユニットACUに供給される。そして、コンセントユニットACUに接続された外部機器に電流が流れ、その電流は、電源ラインLb、双方向スイッチング素子SBbおよび電源ラインLBを介して、モータジェネレータMG1において最小電圧を発生しているV相コイルに還流される。
再び図6を参照して、次のサンプリングタイミングである時刻t2において、U相電圧VA=30V、V相電圧VB=−40V、W相電圧VC=40Vであったとすると、制御装置40は、(1),(2)式により最大電圧Vmax=VC=40V、および最小電圧Vmin=VB=−40Vを算出する。そして、この時刻t2において出力すべき出力電圧Vabが40Vであるとすると、制御装置40は、(3)式によりデューティ比m=40V/(40V−(−40V))=0.5を算出する。
そして、制御装置40は、(4)式によって、双方向スイッチング素子SCa,SBbのデューティ比を0.5、その他の双方向スイッチング素子のデューティ比を0と決定し、時刻t2〜t3のキャリア周期tC内において各双方向スイッチング素子が上記のデューティ比でスイッチング動作を行なうようにマトリックスコンバータ38へ制御信号を出力する。そうすると、双方向スイッチング素子SCa,SBbは、制御装置40からの制御信号に応じて、時刻t2〜t3のキャリア周期tCに対して0.5の割合でオンし、このタイミングにおける所望の商用交流電圧V(40V)が生成される。
図8は、図6に示したフローチャートにおける時刻t2〜t3の電流の流れを示した回路図である。なお、この図8でも、図2に示したインバータ36およびモータジェネレータMG2については、図示を省略している。
図8を参照して、双方向スイッチング素子SCa,SBbがオンし、その他の双方向スイッチング素子SAa,SAb,SBa,SCbはオフしている。そうすると、モータジェネレータMG1において最大電圧を発生しているW相コイルから電流が出力され、その出力された電流は、電源ラインLC、双方向スイッチング素子SCaおよび電源ラインLaを介してコンセントユニットACUに供給される。そして、コンセントユニットACUに接続された外部機器に電流が流れ、その電流は、電源ラインLb、双方向スイッチング素子SBbおよび電源ラインLBを介して、モータジェネレータMG1において最小電圧を発生しているV相コイルに還流される。
なお、再び図6を参照して、この図6では、双方向スイッチング素子は、キャリア周期内の最初にオンされるが、双方向スイッチング素子がオンするタイミングは、必ずしもキャリア周期内の最初である必要はない。双方向スイッチング素子のオンタイミングは、たとえば、キャリア周期内の後半であったり、キャリア周期内の前半と後半とに分けるなどしてもよい。
図9は、図2に示した実施の形態1における制御装置40において、外部から入力された商用交流電圧を昇圧する昇圧機能を説明するための機能ブロック図である。
図9を参照して、制御装置40は、電圧演算部82と、デューティ比演算部84と、スイッチング制御部86とからなる。電圧演算部82は、モータジェネレータMG1の電気角θ1をモータジェネレータMG1の回転位置センサ50から受け、その電気角θ1におけるU,V,W各相の電圧Vu,Vv,Vwを演算する。U,V,W各相の電圧Vu,Vv,Vwは、下式(6)によって算出される。
ここで、Raは、モータパラメータであり、idは、モータジェネレータMG1に流れる電流値である。
デューティ比演算部84は、電圧演算部82によって算出されたU,V,W各相の電圧Vu,Vv,Vwを電圧演算部82から受け、電圧センサ44によって検出された商用交流電圧Vabを電圧センサ44から受ける。そして、デューティ比演算部84は、検出された商用交流電圧Vabの大きさが所定電圧Vlow(Vlow>0)よりも大きいとき、モータジェネレータMG1に対してd軸電流のみを発生させるためのデューティ比Du,Dv,Dwを下式(7)〜(13)によって演算する。
ここで、V*は、所望のバッテリ電圧を表わし、tCは、キャリア周期を表わす。
上記において、検出された商用交流電圧Vabの大きさが所定電圧Vlowよりも大きいときに限りデューティ比の演算を行なうのは、商用交流電圧Vabの大きさが所定電圧Vlow以下であると、デューティ比を1(常時スイッチをオン)としても所望のバッテリ電圧V*まで昇圧することができないからである。
上記の(9)〜(13)式の考え方は、以下のとおりである。すなわち、(9)式によって、(8)式により算出された最小電圧Vminから所望のバッテリ電圧V*まで昇圧するための最大デューティ比D*が算出される。そして、(10)式によって、モータジェネレータMG1に対してd軸電流のみを発生させるための各相の電圧比が算出され、(11)〜(13)式において、(10)式により算出された電圧比を(9)式により算出される最大デューティ比D*に掛け合わせることによって、所望の昇圧を達成し、かつ、モータジェネレータMG1に対してd軸電流のみしか発生させない電圧パターンを発生させるためのデューティ比Du,Dv,Dwが算出される。
スイッチング制御部86は、マトリックスコンバータ38のスイッチングパターンを決定し、その決定したスイッチングパターンに基づく制御信号をマトリックスコンバータ38へ出力する。具体的には、スイッチング制御部86は、以下のようにしてスイッチングパターンを決定する。
(1)U相スイッチパターン
商用交流電圧Vab×電圧Vuの符号が正のとき、(11)式によって算出されたデューティ比Duで双方向スイッチング素子SAa,SBb,SCbをスイッチングさせる。その他の双方向スイッチング素子は、オフとする。
一方、商用交流電圧Vab×電圧Vuの符号が負のときは、デューティ比Duで双方向スイッチング素子SAb,SBa,SCaをスイッチングさせる。その他の双方向スイッチング素子は、オフとする。
(2)V相スイッチパターン
商用交流電圧Vab×電圧Vvの符号が正のとき、(12)式によって算出されたデューティ比Dvで双方向スイッチング素子SBa,SCb,SAbをスイッチングさせる。その他の双方向スイッチング素子は、オフとする。
一方、商用交流電圧Vab×電圧Vvの符号が負のときは、デューティ比Dvで双方向スイッチング素子SBb,SCa,SAaをスイッチングさせる。その他の双方向スイッチング素子は、オフとする。
(3)W相スイッチパターン
商用交流電圧Vab×電圧Vwの符号が正のとき、(13)式によって算出されたデューティ比Dwで双方向スイッチング素子SCa,SAb,SBbをスイッチングさせる。その他の双方向スイッチング素子は、オフとする。
一方、商用交流電圧Vab×電圧Vwの符号が負のときは、デューティ比Dwで双方向スイッチング素子SCb,SAa,SBaをスイッチングさせる。その他の双方向スイッチング素子は、オフとする。
そして、スイッチング制御部86は、キャリア周期tCごとに上記のU,V,W各相スイッチパターンを繰り返し行なう。これによって、モータジェネレータMG1に対してd軸電流のみを発生させることができる。
図10は、図2に示した実施の形態1における制御装置40において、外部から入力される商用交流電圧Vabが昇圧される際のマトリックスコンバータ38の動作波形図である。
図10を参照して、時刻t1において、最大電圧Vmax=Vu、最小電圧Vmin=|Vw|であったとする。また、このときのU,V,W各相の電圧Vu,Vv,Vwの符号は、それぞれ正,負,負であり、商用交流電圧Vabの符号は、正であったとする。
制御装置40は、時刻t1〜t3までのキャリア周期tCの期間、デューティ比をDuとする。ここで、(10)式よりru=1であるから、デューティ比Du=D*×tCとなる。そして、Vab×Vuの符号が正であるから、制御装置40は、デューティ比Duで双方向スイッチング素子SAa,SBb,SCbをスイッチングさせる。
制御装置40は、時刻t3〜t6までのキャリア周期tCの期間は、デューティ比をDvとする。ここで、(10)式よりrvは1よりも小さいから、デューティ比Dv<D*×tCとなる。そして、Vab×Vvの符号が負であるから、制御装置40は、デューティ比Dvで双方向スイッチング素子SBb,SCa,SAaをスイッチングさせる。
制御装置40は、時刻t6〜t9までのキャリア周期tCの期間は、デューティ比をDwとする。ここで、(10)式よりrwはrvよりもさらに小さく、デューティ比Dw<Dv<D*×tCとなる。そして、Vab×Vwの符号が負であるから、制御装置40は、デューティ比Dwで双方向スイッチング素子SCb,SAa,SBaをスイッチングさせる。
図11は、図2に示した実施の形態1における制御装置40において、外部から入力される商用交流電圧が昇圧される際の電流の流れを示した回路図である。なお、図11では、図10に示した時刻t1〜t2における電流の流れが一例として示されている。
図11を参照して、コンセントユニットACUから商用交流電力が入力され、双方向スイッチング素子SAa,SBb,SCbがオンする。そうすると、電流は、コンセントユニットACUから電源ラインLa、双方向スイッチング素子SAa、電源ラインLA、U相ラインLU1、モータジェネレータMG1のU相コイルへと流れる。そして、その後、電流は、モータジェネレータMG1の中性点からV,W各相コイルに流れ、V,W各相ラインLV1,LW1、電源ラインLB,LC、双方向スイッチング素子SBb,SCb、および電源ラインLbを介してコンセントユニットACUに還流する。
そして、図10に示した時刻t2において、それまでオンしていた双方向スイッチング素子SAa,SBb,SCbがオフすると、モータジェネレータMG1の各相コイルに蓄積された磁場エネルギーが放出され、インバータ34のV,W各相上アームのダイオードD23,D25を介して電源ラインL2に昇圧された昇圧電圧が出力される。この昇圧電圧は、コンバータ32によってバッテリ12のバッテリ電圧に降圧され、バッテリ12が充電される。
なお、再び図10を参照して、この図10では、双方向スイッチング素子は、キャリア周期内の最初にオンされているが、双方向スイッチング素子がオンするタイミングは、必ずしもキャリア周期内の最初である必要はない。
以上のように、この実施の形態1によれば、2×3個の双方向スイッチング素子からなるマトリックスコンバータ38によって、モータジェネレータMG1によって発電された3相交流電圧が一旦直流に変換されることなく商用交流電圧に直接変換されるので、電力変換効率が向上する。また、商用交流電圧を出力するための専用インバータや、従来の交流−交流変換装置が備えていたリアクトルやコンデンサが不要となるので、ハイブリッド自動車10を小型化できる。さらに、リアクトルによる騒音も無くなるので、ハイブリッド自動車10の静粛性が向上する。
また、この実施の形態1によれば、コンセントユニットACUから入力される商用交流電圧がマトリックスコンバータ38およびモータジェネレータMG1のコイルを用いて昇圧され、その昇圧された昇圧電圧によってバッテリ12が充電されるので、外部の商用交流電源を用いて商用交流電圧よりも高電圧のバッテリ12を充電することができる。そして、商用交流電圧よりも高電圧のバッテリ12を充電するための昇圧コンバータが不要であるので、ハイブリッド自動車10を小型化できる。
また、この実施の形態1によれば、コンセントユニットACUから入力される商用交流電圧を用いてバッテリ12を充電するとき、モータジェネレータMG1に対してd軸電流のみを発生させる電圧パターンが生成されるので、モータジェネレータMG1において回転トルクは発生しない。したがって、安全性に十分に配慮した自動車が実現される。
[実施の形態2]
実施の形態1では、外部から入力される商用交流電圧によってバッテリ12を充電するとき、マトリックスコンバータ38は、モータジェネレータMG1に駆動力を発生させないように、モータジェネレータMG1に対してd軸電流のみを発生させる電圧パターンを出力する。
この実施の形態2では、外部から入力される商用交流電圧によってバッテリ12を充電するとき、マトリックスコンバータ38は、モータジェネレータMG1に対して右回りの回転磁界を発生させる電圧パターンと左回りの回転磁界を発生させる電圧パターンとを交互に出力する。これによって、瞬間的にはモータジェネレータMG1に駆動力を発生し得るが、全体的に見ればモータジェネレータMG1に駆動力は発生しない。したがって、この実施の形態2では、実施の形態1では必要であったモータジェネレータMG1の電気角θ1を用いる必要がない。
実施の形態2におけるハイブリッド自動車およびPCUの全体構成は、図1および図2に示した実施の形態1の構成と同じである。そして、実施の形態2におけるPCUは、実施の形態1におけるPCU14の制御装置40において、外部から入力された商用交流電圧を昇圧する昇圧機能がPCU14と異なるのみで、その他の機能はPCU14と同じである。
図12は、実施の形態2における制御装置40Aにおいて、外部から入力された商用交流電圧を昇圧する昇圧機能を説明するための機能ブロック図である。
図12を参照して、制御装置40Aは、デューティ比演算部92と、スイッチング制御部94とからなる。デューティ比演算部92は、電圧センサ44によって検出された商用交流電圧Vabを電圧センサ44から受ける。そして、デューティ比演算部92は、検出された商用交流電圧Vabの大きさが所定電圧Vlow(Vlow>0)よりも大きいとき、下式(14)〜(16)によってデューティ比Dを演算する。
ここで、V*は、所望のバッテリ電圧を表わし、tCは、キャリア周期を表わす。そして、上記において、検出された商用交流電圧Vabの大きさが所定電圧Vlowよりも大きいときに限りデューティ比の演算を行なうのは、実施の形態1で述べたとおりである。
上記の(14)〜(16)式の考え方は、以下のとおりである。すなわち、(14)式によって、所定電圧Vlowから所望のバッテリ電圧V*まで昇圧するための最大デューティ比D*が算出される。そして、(15)式によって、所定電圧Vlowと商用交流電圧Vabとの電圧比rが算出され、(16)式において、(15)式により算出された電圧比rを(14)式により算出される最大デューティ比D*に掛け合わせることによって、所望の昇圧を達成するためのデューティ比Dが算出される。
スイッチング制御部94は、マトリックスコンバータ38のスイッチングパターンを決定し、その決定したスイッチングパターンに基づく制御信号をマトリックスコンバータ38へ出力する。具体的には、スイッチング制御部94は、以下のようにしてスイッチングパターンを決定する。
(1)右回りスイッチパターン
商用交流電圧Vabの符号が正のとき、(16)式によって算出されたデューティ比Dで、下記の(i)〜(iii)の各々の組合せからなる双方向スイッチング素子をキャリア周期tCごとに(i)〜(iii)の順にスイッチングさせる。
(i)双方向スイッチング素子SAa,SBb
(ii)双方向スイッチング素子SBa,SCb
(iii)双方向スイッチング素子SCa,SAb
一方、商用交流電圧Vabの符号が負のときは、デューティ比Dで、下記の(iv)〜(vi)の各々の組合せからなる双方向スイッチング素子をキャリア周期tCごとに(iv)〜(vi)の順にスイッチングさせる。
(iv)双方向スイッチング素子SAb,SBa
(v)双方向スイッチング素子SBb,SCa
(vi)双方向スイッチング素子SCb,SAa
これによって、モータジェネレータMG1を電気角にして右回りに1回転させる電圧パターンを発生させることができる。
(2)左回りスイッチパターン
商用交流電圧Vabの符号が正のとき、デューティ比Dで、下記の(vii)〜(ix)の各々の組合せからなる双方向スイッチング素子をキャリア周期tCごとに(vii)〜(ix)の順にスイッチングさせる。
(vii)双方向スイッチング素子SBa,SAb
(viii)双方向スイッチング素子SAa,SCb
(ix)双方向スイッチング素子SCa,SBb
一方、商用交流電圧Vabの符号が負のときは、デューティ比Dで、下記の(x)〜(xii)の各々の組合せからなる双方向スイッチング素子をキャリア周期tCごとに(x)〜(xii)の順にスイッチングさせる。
(x)双方向スイッチング素子SBb,SAa
(xi)双方向スイッチング素子SAb,SCa
(xii)双方向スイッチング素子SCb,SBa
これによって、モータジェネレータMG1を電気角にして左回りに1回転させる電圧パターンを発生させることができる。
そして、スイッチング制御部94は、上記の右回りスイッチパターンと左回りスイッチパターンとを交互に繰り返し行なう。
図13は、実施の形態2における制御装置40Aにおいて、外部から入力される商用交流電圧Vabが昇圧される際のマトリックスコンバータ38の動作波形図である。ここで、この図13では、商用交流電圧Vabが正であるタイミングの動作波形が代表的に示されている。
図13を参照して、制御装置40Aは、時刻t1〜t10までの3キャリア周期の期間、上述した右回りスイッチパターンによってマトリックスコンバータ38の各双方向スイッチング素子をスイッチングさせる。すなわち、商用交流電圧Vabは正であるので、制御装置40Aは、時刻t1〜t4までのキャリア周期tCの期間、デューティ比Dで双方向スイッチング素子SAa,SBbをスイッチングさせる。そして、制御装置40Aは、時刻t4〜t7までのキャリア周期tCの期間、デューティ比Dで双方向スイッチング素子SBa,SCbをスイッチングさせる。さらに、制御装置40Aは、時刻t7〜t10までのキャリア周期tCの期間、デューティ比Dで双方向スイッチング素子SCa,SAbをスイッチングさせる。
続いて、制御装置40Aは、時刻t10〜t19までの3キャリア周期の期間、上述した左回りスイッチパターンによってマトリックスコンバータ38の各双方向スイッチング素子をスイッチングさせる。すなわち、商用交流電圧Vabは正であるので、制御装置40Aは、時刻t10〜t13までのキャリア周期tCの期間、デューティ比Dで双方向スイッチング素子SBa,SAbをスイッチングさせる。そして、制御装置40Aは、時刻t13〜t16までのキャリア周期tCの期間、デューティ比Dで双方向スイッチング素子SAa,SCbをスイッチングさせる。さらに、制御装置40Aは、時刻t16〜t19までのキャリア周期tCの期間、デューティ比Dで双方向スイッチング素子SCa,SBbをスイッチングさせる。
図14は、実施の形態2における制御装置40Aにおいて、外部から入力される商用交流電圧が昇圧される際の電流の流れを示した回路図である。なお、図14では、図13に示した時刻t1〜t2における電流の流れが一例として示されている。
図14を参照して、コンセントユニットACUから商用交流電力が入力され、双方向スイッチング素子SAa,SBbがオンする。そうすると、電流は、コンセントユニットACUから電源ラインLa、双方向スイッチング素子SAa、電源ラインLA、U相ラインLU1、モータジェネレータMG1のU相コイルへと流れる。そして、その後、電流は、モータジェネレータMG1の中性点からV相コイルに流れ、V相ラインLV1、電源ラインLB、双方向スイッチング素子SBb、および電源ラインLbを介してコンセントユニットACUに還流する。
そして、図13に示した時刻t2において、それまでオンしていた双方向スイッチング素子SAa,SBbがオフすると、モータジェネレータMG1のU,V各相コイルに蓄積された磁場エネルギーが放出され、インバータ34のV相上アームのダイオードD23を介して電源ラインL2に昇圧された昇圧電圧が出力される。この昇圧電圧は、コンバータ32によってバッテリ12のバッテリ電圧に降圧され、バッテリ12が充電される。
なお、再び図13を参照して、この図13でも、双方向スイッチング素子は、キャリア周期内の最初にオンされているが、双方向スイッチング素子がオンするタイミングは、必ずしもキャリア周期内の最初である必要はない。
以上のように、この実施の形態2によれば、コンセントユニットACUから入力される商用交流電圧を用いてバッテリ12を充電するとき、モータジェネレータMG1に対して右回りの回転磁界を発生させる電圧パターンと左回りの回転磁界を発生させる電圧パターンとが交互に生成されるので、モータジェネレータMG1において全体的な回転トルクは発生しない。したがって、安全性に十分に配慮した車両が実現される。また、モータジェネレータMG1の回転位置をセンサによって検出することなく、上記電圧パターンを生成することができる。
なお、上記の各実施の形態においては、この発明による電圧変換装置が搭載される車両としてハイブリッド自動車の場合を代表的に例示して説明したが、この発明の適用範囲は、ハイブリッド自動車に限られるものではない。一般に、発電可能な多相交流回転機にこの発明による電圧変換装置を接続することによって商用交流電圧を生成することができ、また、多相交流回転機によって充電されるバッテリが備えられるときは、商用交流電源を用いて商用交流電圧よりも高電圧にバッテリを充電することができる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 ハイブリッド自動車、12 バッテリ、14 PCU、16 動力出力装置、18 DG、20R,20L 前輪、22R,22L 後輪、24R,24L フロントシート、26 リアシート、28 ダッシュボード、32 コンバータ、34,36 インバータ、38 マトリックスコンバータ、40,40A 制御装置、42〜46 電圧センサ、48 制御コントローラ、50,52 回転位置センサ、62,64,74,76,Q11,Q12,Q21〜Q26,Q31〜Q36 パワートランジスタ、66,68,D21〜D26,D31〜D36 ダイオード、70,72 端子、82 電圧演算部、84,92 デューティ比演算部、86,94 スイッチング制御部、341,361 U相アーム、342,362 V相アーム、343,363 W相アーム、C1,C2 コンデンサ、L1,L2,LA〜LC,La,Lb 電源ライン、L3 接地ライン、LU1,LU2 U相ライン、LV1,LV2 V相ライン、LW1,LW2 W相ライン、MG1,MG2 モータジェネレータ、ACU コンセントユニット、L リアクトル、SAa,SAb,SBa,SBb,SCa,SCb 双方向スイッチング素子。