JP4549512B2 - 超音波探傷装置および方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば溶接部の検査や、板材や管材等の検査に用いられる超音波探傷装置および方法に関するもので、特に、試験体の探傷面に対して傾いた角度で進行する超音波を用いた、いわゆる超音波斜角探傷法において、試験体の底面に開口したスリット状の傷の性状を求める装置および方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の超音波斜角探傷法については、例えば「新非破壊検査便覧」((社)日本非破壊検査協会編、日刊工業新聞社、1992年10月15日初版1刷発行、第328頁〜第330頁)(以下、「文献A」と略称する)に詳しく記述されている。
従来の超音波探傷装置および方法について図10を参照しながら説明する。
【0003】
図10は、上記文献Aから引用した従来の超音波斜角探傷法を説明するための図である。
図10において、1は試験体、2は探触子、3は試験体1の底面に対して開口している面状の傷である。この面状の傷には種々のものがあり、溶接時の初層溶接部の割れやパイプの表面に発生するスリット状の傷等がある。以下、これらを簡単のため、傷3と呼んで説明することとする。また、図10では、試験体1の厚さをT、傷3の高さをHとして示している。傷の高さHは、試験体1の底面に垂直な方向の大きさである。
【0004】
探触子2から、試験体1の内部へ超音波パルスが送信される。図10中、超音波パルスの伝搬方向を矢印を付した実線で示しており、角度「θ」は超音波パルスの屈折角である。
図10に示すように、傷3の上部に照射されて反射された超音波パルスは、試験体1中を伝搬し、探触子2によってエコーとして受信される。
【0005】
傷3の高さHの推定は次のようにして行われる。
探触子2に電気的に接続された図示しない超音波探傷器によって、探触子2から超音波パルスが送信された時間とエコーが受信された時間との時間差、すなわち、超音波パルスが試験体1中を伝搬するのに要した時間を測定する。この時間は、超音波パルスが探触子2から傷3の上部まで往復するのに要した時間であるから、2で割って片道の時間を求め、この時間と試験体1中の音速とから片道のビーム路程を求める。このビーム路程は、図中、Lで示している。なお、文献Aでは、ビーム路程をWとして示しているが、ここではLとして示すことにする。
傷3の高さHは、次の式から求めることができる。
H=T−Lラcosθ (1)
【0006】
以上が、文献Aに示されている傷3の高さHを求める方法である。
しかし、超音波パルスの波長が傷3の高さHと同等あるいは同等以下である場合には、式(1)中のTとLラcosθがほぼ同じになると考えられるので、傷3の高さHを求めることができなくなる。
【0007】
また、文献Aでは、傷3の高さHを求める方法は示されているが、傷3の試験体1の底面に平行な方向の大きさ(以下、「幅」と称する)を求める方法は示されていない。したがって、傷3の高さHが波長と同等あるいは同等以下である場合、文献Aに示されている方法では、傷3の高さHや幅を正確に求めることができず、傷3の性状を精密に求めることができない。
【0008】
一方、傷の性状を求める方法として、特開2000−88821号公報に示されている方法がある。この方法は、2つの探触子を用いて傷の長い方向を判定するというものであるが、試験体の底面に開口した傷の性状を精密に求めることはできない。
【0009】
また、特開平2−167465号公報には、エコーの周波数スペクトルを用いて、傷が球状の空孔であるか、クラック状のものかを判定する方法が示されている。しかし、この方法では、傷の大きさを求めることはできず、このため、傷の性状を精密に求めることができない。
【0010】
さらに、特開昭61−184455号公報には、エコーの周波数スペクトルを用いて試験体の底面に開口している傷の高さを求める方法が示されている。この方法は、傷の上部で反射されて受信されたエコーと、試験体の上側の面で反射されて受信されたエコーとの時間差を、これらのエコーの周波数スペクトルを用いて求めるというものである。しかし、この方法では、試験体の上側で反射されて受信されるエコーが存在しない場合には、傷の高さは求めることができず、このため、傷の性状を精密に求めることができない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来、傷の性状を求める方法は示されているものの、試験体底面に開口したスリット状の傷の高さが波長と同等あるいは同等以下である場合、傷の高さや幅を求める方法については示されていない。このため、従来では、試験体底面に開口したスリット状の傷の高さが波長と同等あるいは同等以下である場合、傷の性状を精密に求めることができないという問題点があった。
【0012】
この発明は上述した点に鑑みてなされたもので、試験体底面に開口したスリット状の傷の高さが波長と同等あるいは同等以下である場合にも傷の幅を求め、傷の高さを推定し、高精度に傷の性状を求めることができる超音波探傷装置および方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る超音波探傷装置は、励振信号により駆動されて超音波パルスを試験体中に送信するとともに、前記試験体中の底面に開口したスリット状の傷によって反射された前記超音波パルスをエコーとして受信する1個の斜角探触子と、前記探触子を前記試験体の所定の走査範囲にわたって移動させるとともに、前記探触子の空間的位置を出力する走査機構手段と、前記探触子へ励振信号を送信して前記探触子から超音波パルスを送信させ、前記探触子から前記受信されたエコーを入力して記憶するとともに、前記走査機構手段から前記エコーを受信した際の前記探触子の空間的位置を入力して記憶し、前記受信されたエコーの周波数スペクトルを計算し、前記周波数スペクトルの振幅が極小値を示す周波数を計算し、前記極小値となる周波数同士の間隔を計算し、前記極小となる周波数同士の間隔に基づいて、前記スリット状の傷の大きさを求める送受信装置とを備えた超音波探傷装置において、前記送受信装置は、前記試験体の横波音速、前記試験体の表面波の音速、前記超音波パルスの屈折角、および前記超音波パルスの波長を用いて、前記スリット状の傷の、前記試験体の底面に平行な方向の大きさを求めることを特徴とするものである。
【0016】
また、この発明に係る超音波探傷方法は、走査機構手段により1個の斜角探触子を試験体の所定の走査範囲にわたって移動させるステップと、前記探触子へ励振信号を送信して前記探触子により超音波パルスを前記試験体中に送信するステップと、前記探触子により前記試験体中の底面に開口したスリット状の傷によって反射された前記超音波パルスをエコーとして受信する受信ステップと、前記探触子から前記受信されたエコーを入力して記憶するとともに前記走査機構手段から前記エコーを記憶した際の前記探触子の空間的位置を入力して記憶する記憶ステップと、前記受信されたエコーの周波数スペクトルを計算し、前記周波数スペクトルの振幅が極小値を示す周波数を計算し、前記極小値となる周波数同士の間隔を計算し、前記極小となる周波数同士の間隔に基づいて、前記スリット状の傷の大きさを求める信号処理ステップとを含む超音波探傷方法において、前記信号処理ステップは、前記試験体の横波音速、前記試験体の表面波の音速、前記超音波パルスの屈折角、および前記超音波パルスの波長を用いて、前記スリット状の傷の、前記試験体の底面に平行な方向の大きさを求めることを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置および方法について、図1〜図9を参照しながら説明する。
図1は、この発明の実施の形態1に係る斜角探傷法を用いた超音波探傷装置の構成を示すブロック図である。
図1において、1は試験体、2は探触子、3はスリット状の傷、8は送受信装置である。図中では、説明を明確にするため、傷3を実物よりも大きく描いており、傷の高さをH、傷の幅をWとして示している。
【0020】
まず、図1に示した超音波探傷装置の構成について説明する。
図1に示す超音波探傷装置は、試験体1に載置された探触子2と、探触子2に接続された送受信装置8と、探触子2のための走査機構部4とを備える。
【0021】
また、送受信装置8は、制御部81と、送信部82と、受信部83と、信号処理部84と、探触子7の位置検出部85とを含む。なお、走査機構部4は、図示はしていないが探触子4の位置検出センサーを含んでいる。
【0022】
また、探触子2は、信号線により送信部82および受信部83に接続されている。受信部83は信号処理部84に接続されている。位置検出部85は信号処理部84に接続されている。制御部81は、送信部82、受信部83、信号処理部84、位置検出部85、そして走査機構部4に接続されている。
【0023】
さらに、走査機構部4は位置検出部85に接続されている。走査機構部4の図示しない位置検出センサーからの出力信号が位置検出部85に入力される。位置検出部85で検出された探触子2の位置の情報は信号処理部84に入力される。
なお、探触子2の位置情報は、制御部81からの信号だけでその位置情報を得ることが可能な場合は、位置検出部85からの情報を用いずに制御部81からの情報だけを用いて、位置情報を信号処理部84へ入力しても良い。
【0024】
また、信号処理部84は、図示しないメモリを内蔵する。このメモリに信号処理部84において演算された種々の結果が適宜記憶されるとともに、信号処理部84に入力された入力信号が適宜記憶される。
また、信号処理部84からは、処理状況を示す信号が適宜、制御部81に入力される。その入力信号に基づき、制御部81は、送信部82、受信部83、信号処理部84、位置検出部85、および走査機構部4に対し、制御信号を出力して、それらの制御を司る。
【0025】
次に、図1に示した超音波探傷装置の動作について説明する。
送信部82から励振信号が探触子2に伝達される。この励振信号によって、探触子2から超音波パルスが送信され、試験体1中に超音波パルスが伝搬していく。この超音波パルスは、縦波である場合と横波である場合とがあるが、ここでは横波である場合について説明する。試験体1中を伝搬する横波の超音波パルスは、傷3で反射され、ふたたび試験体1中を伝搬し、探触子2でエコーとして受信される。このエコーは、受信部83で増幅された後、信号処理部84へ伝達される。信号処理部84では、エコーを信号処理部84内のメモリに記憶する。
【0026】
一方、超音波パルスを送信しエコーを受信した探触子2の位置情報が位置検出部85を介して信号処理部84へ入力される。探触子2の位置情報は、信号処理部84内のメモリに、その探触子位置のエコーと共に記憶される。
これらの動作が、走査機構部4によって探触子2を所定の走査範囲にわたって走査しながら実行される。
【0027】
このような動作の後、信号処理部84内のメモリ内には、
・探触子2の位置情報
・探触子2の位置に対応するエコー
以上の2種類の情報がセットとして記憶されている。
【0028】
さて、傷3の高さHが波長と同等あるいは同等以下である場合で、傷3の幅Wがある程度の大きさである場合には、複数個のエコーが受信されることが予想される。この様子を、図2を参照しながら説明する。
図2は、傷3近傍を拡大して示した図であり、傷3に入射する超音波や、反射される超音波を併せて示している。
【0029】
図2においては、図中の左上から超音波パルスが傷3に照射される状況を示している。傷3に入射した超音波パルスは、傷3の探触子2に近い側で反射され、受信される。このエコーを、ここでは「コーナーエコー」と呼ぶことにする。
【0030】
一方、傷3の探触子2に近い側において、モード変換により表面波が発生する。この表面波は、傷3の上部を伝搬し、傷3の探触子から遠い側で散乱される。
そして再び横波にモード変換され、探触子2で受信される。このエコーは、コーナーエコーよりも時間的に遅れて受信されるので、ここではこのエコーを「後方エコー」と呼ぶことにする。
【0031】
2つのエコーが受信される様子を、模擬的に図3に示す。
図3に示したような2つのエコーの周波数スペクトルを求めると、図4のように振幅が極小値を示す周波数(零点)を含んだ特性となる。この零点の間隔をΔfとすると、コーナーエコーと後方エコーとの受信時間差ΔTは、式(2)から求めることができる。
ΔT=1/Δf (2)
【0032】
一方、コーナーエコーと後方エコーとの受信時間差ΔTは、幾何学的に求めることができる。この様子を図5に示す。
図5に示す基準線は、超音波パルスの傷に対する入射角θに対して垂直であり、傷3の探触子に近い端部を通る直線である。ここでは、基準線より探触子2に近い領域については、コーナーエコーと後方エコーは試験体1中を同じ時間伝搬するものとし、基準線から傷3に近い領域を伝搬する時間だけを比較する。
【0033】
コーナーエコーは、基準線からHcosθの距離を往復伝搬するので、この往復伝搬に伴う時間遅延T1は、
T1=2Hcosθ/VS (3)
となる。ここで、VSは試験体1中を伝搬する横波の音速である。
【0034】
これに対し、後方エコーは、距離Wを表面波の音速で伝搬し、距離Wsinθを横波の音速で伝搬するので、この伝搬に伴なう時間遅延T2は、
T2=W/VR+Wsinθ/VS (4)
となる。ここで、VRは試験体1の表面を伝搬する表面波の音速である。
【0035】
コーナーエコーと後方エコーとの受信時間差ΔTは、ΔT=T2−T1として求めることができるので、式(3)および式(4)を用いてΔTを表すと、式(5)となる。
式(2)を式(5)に代入して整理すると、傷3の幅Wを求める式は、次式(6)のようになる。
【0036】
【数1】
【0037】
表面波の音速VRおよび横波の音速VSは、試験体1に固有の値であるので、試験体1の材質から予め求めることができる。また、傷3に入射する超音波パルスの傷に対する入射角θは、探触子2の屈折角とほぼ同じと考えられるので、このθの値も予め求めることができる。すなわち、式(6)において、表面波の音速VR、横波の音速VS、超音波パルスの傷に対する入射角θは予め求めることができる値である。したがって、傷3の高さHが既知である場合には、信号処理部84でエコーの周波数スペクトルの零点間隔Δfを求め、さらに式(6)を用いることによって、傷3の幅Wを求めることができる。なお、超音波の傷に対する入射角θは、超音波パルスの屈折角に等しいとして以下議論する。
【0038】
一般的には、傷3の高さHは既知ではない。したがって、式(6)からだけでは傷3の幅Wを求めることができないが、傷3の高さHが波長と同等あるいは同等以下であるを対象にしているため、例えば傷3の高さHを波長の2分の1と仮定して、傷3の幅Wを求めても、それほど大きな誤差は生じない。波長をλとすると、H=λ/2とおくことによって、傷3の高さHが既知でない場合でも、傷3の幅Wを求めることができる。なお、ここでは傷3の高さHを波長の2分の1と仮定して説明したが、波長の2分の1でなくても、波長と同程度あるいは波長よりも少し小さい値であれば、かわまない。
【0039】
以上に述べたように、傷3の高さHが波長と同等あるいは同等以下である場合で、傷3の幅Wがある程度の大きさである場合、エコーの周波数スペクトルから傷3の幅Wを求めることができる。さらに、エコーの周波数スペクトルに零点が生じた場合には、傷3の高さHが波長と同等あるいは同等以下、というインディケーションを得ることもできる。この理由を以下に示す。
【0040】
傷3の高さHおよび傷3の幅Wの大きさによっては、受信されるエコーが異なる。すなわち、傷3の高さHが波長に比べて大きい場合には、コーナーエコーは大きくなるため、相対的に後方エコーは無視できるような大きさになり、受信されるエコーはコーナーエコーだけと見なすことができる。また、傷3の幅Wが小さい場合には、コーナーエコーと後方エコーとが時間的に分離されなくなるので、結果的に後方エコーが受信されないような状況となる。傷3の高さHおよび傷3の幅Wの大きさによって、受信されるエコーをまとめたものを、図6に示す。
【0041】
図6では、傷3の高さHおよび傷3の幅Wの大きさによって、4種類の状況が発生することを示している。図中のAは、コーナーエコーと後方エコーが分離して受信されるための、傷3の幅Wの閾値である。図6から明らかなように、傷3の高さHが波長と同等あるいは同等以下である場合で、なおかつ、傷3の幅Wが閾値Aより大きい場合に限り、後方エコーが受信される。したがって、コーナーエコーと後方エコーが受信され、エコーの周波数スペクトルに零点が生じた場合には、傷3の高さHは波長と同等あるいは同等以下であると判定することが可能である。
【0042】
以上に述べたように、傷3の高さHが波長と同等あるいは同等以下であり、傷3の幅Wの大きさがある程度の大きさである場合には、エコーの周波数スペクトルから、
・傷3の高さHが波長と同等あるいは同等以下であるというインディケーション・傷3の幅Wの大きさ
が得られる。
【0043】
以下に、上記2つの結論を導き出すための信号処理部84における処理を、図7に示すフローチャート上のステップを追って示す。
(Step1)
まず、各探触子位置におけるエコーの絶対値の最大値(以後、エコー高さと略称する)を求め、エコー高さが最大になるとなる探触子位置ymを求める。
【0044】
(Step2)
次に、探触子位置ymにおけるエコーの周波数スペクトルを計算する。なお、必ずしも探触子位置ymにおけるエコーである必要はなく、探触子位置ym近傍におけるエコーであれば良い。
【0045】
(Step3)
Step 2で求めた周波数スペクトルにおいて、零点の有無を調べる。
【0046】
(Step4)
明確に零点が生じていない場合には、
(I)傷3の高さHが波長λに比べて大きい
あるいは、
(II)傷3の高さHは波長λと同等あるいは同等以下であり、傷3の幅Wが非常に小さい
という結果を出力して処理を終了する。
【0047】
(Step5)
零点が生じている場合には、周波数スペクトルにおける零点の間隔(Δf)を求める。
【0048】
(Step6)
式(6)において、H=λ/2を代入し、傷3の幅Wを求める。なお、上述したように、代入する値はλ/2でなくても、波長と同等あるいは波長よりも少し小さな値であれば、かまわない。何らかの方法で、傷3の高さHが既知である場合には、その値を式(6)のHに代入して、傷3の幅Wを求める。また、試験体1の表面波の音速VR、横波の音速VS、探触子の屈折角θは、信号処理を行う前に、信号処理部84に入力しておく。
【0049】
(Step7)
傷3の高さHが波長と同等あるいは同等以下というインディケーションと、Wの値を出力し、処理を終了する。
以上が、信号処理部84における信号処理ステップである。
【0050】
実験により、傷3の幅Wを求めた例を、以下に示す。
実験では、周波数5MHzで屈折角45°(横波屈折角)の探触子を用いた。また、厚さ10mmの鋼試験体の底面に、高さ0.3mm、幅2.0mmのスリットを加工し、このスリットを対象として実験を行った。
鋼の横波音速は約3240m/sであることから、周波数5MHzの波長λは約0.65mmであるので、加工したスリットの高さは波長よりも小さい。
【0051】
エコー高さが最大となった探触子位置ym近傍におけるエコーを、図8に示す。また、図8に示すエコーの周波数スペクトルを、図9に示す。
図8から、コーナーエコーと後方エコーとが分離して受信されている様子が分かる。また、図9から、エコーの周波数スペクトルに零点が生じている様子が分かる。
【0052】
図9に示したエコーの周波数スペクトルから、零点の間隔(Δf)を求めたところ、Δf=0.95MHzであった。実験では、スリットの高さが既知であるため、式(6)におけるHには「0.3mm」という値を代入し、鋼の横波音速VSを3240m/s、鋼の表面波の音速をVR=2980m/s、屈折角θ=45°を式(4)に代入してスリットの幅を求めると、2.13mmであった。実際のスリットの幅は2mmであることから、誤差6.5%の精度でスリットの幅を求めることができた。
【0053】
以上説明したように、(Step1)から(Step7)までの信号処理を信号処理部84で行うことにより、試験体1中の傷3の幅Wの値を求めることができ、傷3の高さHのおおよその値が推定できるので、高精度で傷3の性状を求めることができるという効果がある。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、走査機構手段により探触子を試験体の所定の走査範囲にわたって移動させ、前記探触子へ励振信号を送信して前記探触子により超音波パルスを前記試験体中に送信し、前記探触子により前記試験体中のスリット状の傷によって反射された前記超音波パルスをエコーとして受信し、前記探触子から前記受信されたエコーを入力して記憶するとともに前記走査機構手段から前記エコーを記憶した際の前記探触子の空間的位置を入力して記憶し、前記受信されたエコーの周波数スペクトルを計算し、前記周波数スペクトルの振幅が極小値を示す周波数を計算し、前記極小値となる周波数同士の間隔を計算し、前記極小となる周波数同士の間隔に基づいて前記スリット状の傷の大きさを求めるようにしたので、試験体底面に開口したスリット状の傷の高さが波長と同等あるいは同等以下である場合にも傷の幅を求め、傷の高さを推定し、高精度に傷の性状を求めることができる。
【0055】
また、前記試験体の横波音速、前記試験体の表面波の音速、前記超音波パルスの屈折角、および前記超音波パルスの波長を用いて、前記スリット状の傷の、前記試験体の底面に平行な方向の大きさを求めるようにしたので、傷の幅を求め、高精度に傷の性状を求めることができる。
【0056】
さらに、前記試験体の横波音速、前記試験体の表面波の音速、前記超音波パルスの屈折角、および前記超音波パルスの波長を用いて、前記スリット状の傷の、前記試験体の底面に垂直な方向の大きさを求めるようにしたので、傷の高さを推定し、高精度に傷の性状を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る斜角探傷法を用いた超音波探傷装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 図1の傷3近傍を拡大して示した図である。
【図3】 2つのエコーが受信される様子を模擬的に示す説明図である。
【図4】 図3に示した2つのエコーの周波数スペクトルの振幅が極小値を示す周波数(零点)を含んだ特性の説明図である。
【図5】 コーナーエコーと後方エコーとの受信時間差ΔTを幾何学的に求めるための説明図である。
【図6】 傷3の高さHおよび傷3の幅Wの大きさによって受信されるエコーをまとめた説明図である。
【図7】 図1の信号処理部84における処理を示すフローチャートである。
【図8】 エコー高さが最大となった探触子位置ym近傍におけるエコーを示す説明図である。
【図9】 図8に示すエコーの周波数スペクトルを示す説明図である。
【図10】 文献「新非破壊検査便覧」((社)日本非破壊検査協会編、日刊工業新聞社、1992年10月15日初版1刷発行、第328頁〜第330頁)から引用した従来の超音波斜角探傷法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 試験体、2 探触子、3 傷、4 走査機構部、8 送受信装置、81 制御部、82 送信部、83 受信部、84 信号処理部、85 位置検出部。
Claims (2)
- 励振信号により駆動されて超音波パルスを試験体中に送信するとともに、前記試験体中の底面に開口したスリット状の傷によって反射された前記超音波パルスをエコーとして受信する1個の斜角探触子と、
前記探触子を前記試験体の所定の走査範囲にわたって移動させるとともに、前記探触子の空間的位置を出力する走査機構手段と、
前記探触子へ励振信号を送信して前記探触子から超音波パルスを送信させ、
前記探触子から前記受信されたエコーを入力して記憶するとともに、前記走査機構手段から前記エコーを受信した際の前記探触子の空間的位置を入力して記憶し、
前記受信されたエコーの周波数スペクトルを計算し、
前記周波数スペクトルの振幅が極小値を示す周波数を計算し、
前記極小値となる周波数同士の間隔を計算し、
前記極小となる周波数同士の間隔に基づいて、前記スリット状の傷の大きさを求める送受信装置と
を備えた超音波探傷装置において、
前記送受信装置は、前記試験体の横波音速、前記試験体の表面波の音速、前記超音波パルスの屈折角、および前記超音波パルスの波長を用いて、前記スリット状の傷の、前記試験体の底面に平行な方向の大きさを求める
ことを特徴とする超音波探傷装置。 - 走査機構手段により1個の斜角探触子を試験体の所定の走査範囲にわたって移動させるステップと、
前記探触子へ励振信号を送信して前記探触子により超音波パルスを前記試験体中に送信するステップと、
前記探触子により前記試験体中の底面に開口したスリット状の傷によって反射された前記超音波パルスをエコーとして受信する受信ステップと、
前記探触子から前記受信されたエコーを入力して記憶するとともに前記走査機構手段から前記エコーを記憶した際の前記探触子の空間的位置を入力して記憶する記憶ステップと、
前記受信されたエコーの周波数スペクトルを計算し、
前記周波数スペクトルの振幅が極小値を示す周波数を計算し、
前記極小値となる周波数同士の間隔を計算し、
前記極小となる周波数同士の間隔に基づいて、前記スリット状の傷の大きさを求める信号処理ステップと
を含む超音波探傷方法において、
前記信号処理ステップは、前記試験体の横波音速、前記試験体の表面波の音速、前記超音波パルスの屈折角、および前記超音波パルスの波長を用いて、前記スリット状の傷の、前記試験体の底面に平行な方向の大きさを求める
ことを特徴とする超音波探傷方法。
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