以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における無線基地局装置の構成を示す図である。以下、本実施の形態においては、複数の無線端末装置から無線基地局装置に向けての送信時(以下、アップリンク)における無線基地局装置の動作について説明する。
図1において、1−1〜1−Nt(図ではNt=2の場合を示す。)は無線端末装置、2は無線基地局装置を示す(以下の説明において、無線端末装置を総称する場合は無線端末装置1と記す)。無線基地局装置2において、3は複数(NR個)のアンテナ、4−1〜4−Nt(図ではNt=4の場合を示す。)は複数のアンテナ3で受信されたそれぞれの高周波信号をベースバンド信号に周波数変換しディジタル信号として取り出す受信部(以下の説明において、受信部を総称する場合は受信部4と記す)、5は複数の無線端末装置1−1〜1−Ntを用いて送信される複数の送信系列に対し、ユーザ間の干渉を排除されたユーザ間干渉除去信号を出力する他ユーザ信号分離手段、6−1〜6−Nt(図ではNt=2の場合を示す。)はユーザ間干渉除去信号から、ユーザ単位の送信系列に対し受信処理を行うユーザ個別受信処理手段(以下の説明において、ユーザ個別受信処理手段を総称する場合はユーザ個別受信処理手段6と記す)である。以下、図1を用いてその動作を順に説明する。
まず、Nt個の無線端末装置1−1〜1−Ntは、それぞれアンテナから送信系列を送信する。ここで、第n番目の無線端末装置1−nから無線基地局装置2へ送信する離散時刻kにおける送信系列をxn(k)と表記する。nはNt以下の自然数であり、複数のアンテナ(M(n)>1)を用いて複数M(n)個の送信系列xn(k)を並列的に送信する場合、送信系列xn(k)はM(n)次元の列ベクトルからなるものとする。
図2は無線端末装置1の詳細な構成を示す図である。図2(a)は無線端末装置1がシングルアンテナで送信を行う場合、図2(b)は複数アンテナで送信を行う場合(図では一例としてM(n)=2の場合を示す。)の構成を示す。図2において、データ系列生成手段20は無線基地局装置2へ送信するデータ系列znを生成する。
図2(a)のシングルアンテナ送信の場合、データ系列生成手段20で生成したデータ系列znを送信系列xn(k)と見なし、伝送路符号化手段22−1により所定の符号化率で誤り訂正符号化を施した後に、インターリーバ23−1によりインターリービングし、変調手段24−1により所定の多値変調を用いてビット列をIQ平面上の変調シンボルにマッピングしたベースバンド信号とし、送信部25−1において、ベースバンド信号を周波数変換し帯域制限処理を加え、増幅後に高周波信号としてアンテナから送信する。
一方、図2(b)の複数アンテナ送信の場合、データ系列生成手段20で生成したデータ系列znを直並列変換手段(S/P変換手段)21によりM(n)個の並列データ列である送信系列xn(k)に変換する。すなわち、送信系列xn(k)はM(n)個の要素をもつ列ベクトルとして表記される。その後、送信系列毎に、伝送路符号化手段22−1〜22−M(n)、インターリーバ23−1〜23−M(n)、変調手段24−1〜24−M(n)及び送信部25−1〜25−M(n)でシングルアンテナ送信と同様な処理を行う。なお、送信系列よりも多くのアンテナ数を用いて送信することも可能であり、その場合は、所望の指向性を形成する指向性ウエイトを送信系列に対し乗算する方法、または、STBC(Space Time Block coding)のような時空間符号化を施すことで実現できる。以下では、無線端末装置1で送信に用いられるアンテナ数と送信系列の数が同数である場合を説明する。
続いて、図1を用いて、無線基地局装置2における動作を説明する。なお、以下では、周波数同期、位相同期、シンボル同期確立後の動作を説明する。Nr個の複数アンテナ3で受信された高周波信号は、それぞれ受信部4−1〜4−Nrにおいて、図示されていない増幅及び周波数変換後に直交検波され、IQ平面上のベースバンド信号に変換され、さらに、A/D変換器を用いて複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)として出力する。ここで、y(k)は受信に用いるアンテナ数Nr個での受信信号を要素として含む列ベクトルである。
ここで、無線端末装置1―nからの送信系列xn(k)に対し、フラットフェージング伝搬環境下において得られる離散時刻kにおける無線基地局装置2での受信信号y(k)は(数1)のように示される。(数1)において、Hnは第n番目の無線端末装置1―nの送信系列xn(k)が受ける伝搬路変動を示し、(無線基地局アンテナ数Nr)行×(第n番目の無線端末装置1―nにおける送信アンテナ数M(n))列からなる行列であり、そのi行j列の行列要素hijは、第n番目の無線端末装置1−nにおける第j番目の送信アンテナから送信された信号が、無線基地局装置2における第i番目のアンテナで受信される場合に伝搬路による伝搬路変動を示す。また、n(k)は無線基地局装置2のNr個のアンテナで受信時に付加されるNr個の要素をもつ雑音ベクトルを示す。
次に、他ユーザ信号分離手段5は、無線端末装置1−n(nはNt以下の自然数)から送信される既知のパイロット信号などを用いて推定された伝搬路変動Hnに対する伝搬路変動推定値Bnを用いて、異なる無線端末装置1−m(m≠n)からの他ユーザ信号を分離するユーザ間分離ウエイトを生成し、受信信号y(k)に対し乗算演算を行う。ここで所望の第n番目の無線端末装置1−nに対するユーザ間分離ウエイトWnは、(数2)に示すように、所望の第n番目の無線端末装置1−nを除く伝搬路変動推定値Bjから構成される行列G(n)に対し(ただし、j≠n)、特異値分解を用いて生成する。(数2)におけるHは複素共役転置を行う演算子である。すなわち伝搬路変動推定値G(n)の左特異行列Uを構成する列ベクトル(左特異ベクトル)ujのうち、所望の第n番目を除く無線端末装置1−jがトータルでMs個の送信系列を送信し、受信アンテナ数Nrとする場合に、j=(Ms+1)、・・・・・、Nrの(Nr−Ms)個の左特異ベクトルujを選択する。(数3)のように、選択された左特異ベクトルujを用いてユーザ間分離ウエイト行列Wnとする。選択された各左特異ベクトルujは所望の第n番目の無線端末装置1−nからの送信系列xn(k)を除く送信信号に指向性ヌルを向けるウエイトとなる。なお、ユーザ間分離ウエイトを生成するためには、(全無線端末装置1からの全ての送信系列数)≦(無線基地局数のアンテナ数Nr)の条件を満たす必要がある。
このように生成されたユーザ間分離ウエイトWnを用いて、無線基地局装置2での受信信号y(k)に対し、(数4)に示すように乗算することで、他の無線端末装置1−mからの干渉信号成分を低減した信号yn(k)を得ることができる。Ntまた、チャネル推定が理想的に行われた場合、(数5)のような関係が得られるため、(数4)は、(数6)に示すように変形することができ、yn(k)は他の無線端末装置1−mからの干渉信号成分が完全に除去された信号となる。すなわち、他ユーザ信号分離手段5は他の無線端末装置1−mからの他のユーザによる信号を除去するユーザ信号除去手段として作用する。
次にユーザ個別受信処理手段6は、他ユーザ信号分離信号yn(k)に対し、ユーザ個別受信処理を行う。図3は第n番目の無線端末装置1−nからの送信系列を受信するユーザ個別受信処理手段6−nの構成を示す図である。第n番目の無線端末装置1−nにおいて、送信系列数M(n)=1の場合は図3(a)に示す構成により処理を行い、M(n)>1の場合は図3(b)に示す構成による処理を行う。なお図3(b)はM(n)=2の場合の例を示している。図3において、31−1〜31−M(n)は信号分離手段、32−1〜32−M(n)は復調手段、33−1〜33−M(n)はデインターリーバ、34−1〜34−M(n)は復号化手段、35は並直列変換手段(P/S変換手段)である。
M(n)=1の場合、他ユーザ信号分離信号yn(k)に対し、復調手段32は所定の変調方式によるシンボルデータ列からビットデータ列に変換する。デインターリーバ33は送信側で施されたインターリーブと逆の動作によりビット順を復元する。復号化手段3
4は入力されるビットデータ列に対し誤り訂正符号を施し、送信信号系列を復元する。
M(n)>2の場合、他ユーザ信号分離信号yn(k)は信号分離手段31により個別の送信系列に分離される。この場合の第n番目の無線端末装置1−nからの送信系列xn(k)に対する受信信号の分離は、(数7)に示すチャネル推定値Bnにユーザ間分離ウエイトWnを乗算した結果得られるユーザ間分離ウエイト乗算後のチャネル推定値Fnに基づいて行う。また、分離アルゴリズムは、ZF(Zero Forcing)、MMSE(Minimum Mean Square Error),MLD(Maximum likelihood Detection)等の手法を適用することで実現できる。ここで、MLDによる分離手法を使う場合、本手法は無線端末装置1−1〜1−Nt毎に、他無線端末装置からの干渉信号を除去した他ユーザ信号分離信号を用いることから、MLDの際の信号点候補を削減することができ、現実的なハードウエアでの実現が可能となる。
なお、分離アルゴリズムは、一つの手法を固定的に使用してもよいし、送信系列の変調多値数、受信信号数等に応じて適応的に変更してもよい。例えば、BPSK、QPSKといった変調多値数が少ない場合はMLDを適用し、変調多値数が多い16QAM、64QAMの場合は、MMSE等の線形手法の適用が考えられる。
ユーザ個別に分離されたそれぞれの信号は、復調手段32−1〜32−M(n)、デインターリーバ33−1〜33−M(n)、復号化手段34−1〜34−M(n)により誤り訂正されたビット列を出力し送信系列を復元する。そして、並直列変換手段(P/S変換手段)35により直列のデータ列系列を再生する。
以上のような動作により、本実施の形態では、当該無線端末装置1からの送信系列が複数である場合、それを一つの単位として、他ユーザ信号の干渉を除去した信号として抽出する。これにより、後続の処理は、ユーザ個別に受信復号処理を適用することが可能となる。従って、送信系列が複数である場合、最終的に並直列変換手段(P/S変換手段)35によりパラレルデータを直列データに変換する必要があるが、本実施の形態では、ユーザ毎に受信復号処理が同時並列に行えるため、並直列変換手段35への入力データがウエイトされることなく、また、新たに入力データを一次的に保管するバッファメモリを設けることもないため、データ処理遅延を小さくし、またメモリ増によるハードウエア増加を抑えることができる。
また、受信特性としても、本構成は、現実的なハードウエア規模で従来手法(ZF、MMSE)よりも良好な特性を得ることができる。すなわち、他ユーザ信号分離手段5にかわり、従来のZF,MMSEといった線形処理により一括分離処理を用いる場合、当該無線端末装置1からの送信系列が複数であっても、当該無線端末装置1毎の送信系列を取り出すことが可能であるが、STBC(Space Time Block Coding)、STTC(Space Time
Trellis Coding)といった時空間符号を施している場合、同じ無線端末装置1からの複数の送信系列が含まれる場合、それらを分離受信する受信ウエイトを形成する性質から、アンテナ自由度を干渉抑圧のために使用してしまい、ダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を損ねる。一方、本実施の形態では他無線端末装置1からの干渉を排除した信号を用いることで時空間復号が可能であるためにダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を得ることができる。また、他ユーザ信号分離手段5にかわり、従来のMLDに基づく一括分離処理を導入することも可能であるが、その場合、本実施の形態よりも受信特性は優れるが、
全ての無線端末装置1―1〜Ntからの送信系列に対しMLD処理を行うと、MLDによる処理量は、送信系列数とその変調多値数に対し指数関数的に増大するため、現実的なハードウエアの実現が困難となる。
なお、本実施の形態では、ユーザ個別受信処理手段6を、接続する無線端末装置数Nt分設けているが、送信系列のQoSに基づき適当な指標(送信系列の許容遅延量、データ種別等)を設け、受信処理を行う優先度を無線端末装置1毎に設定して、逐次的にユーザ個別受信処理手段6への入力を切り替える構成でも可能である。これにより、ユーザ個別受信処理手段6を、接続する無線端末装置1より少ない数にでき、ユーザによっては、伝送データを復元するまでの処理遅延が大きくなるが、無線基地局装置2の構成を簡易化する効果が得られる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2におけるアップリンクにおける無線基地局装置2aの構成を示す図である。図4において、図1の無線基地局装置2の構成と異なる部分は、受信部4の出力以降の構成であり、以下では異なる動作部分を主に説明する。
Nt個の無線端末装置1−1〜1−Ntがそれぞれアンテナから送信系列を送信するまでの動作は実施の形態1と同様であり、その説明を省略する。
無線基地局装置2aにおいて、図示されていない複数(Nr個)のアンテナ3で得られた高周波信号を受信部4−1〜4−Nrで出力を得るまでは実施の形態1における図1の無線基地局装置2と同様である。受信部4−1〜4−Nrは複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)を出力する。ここで、y(k)は受信に用いるアンテナ数Nr個での受信信号を要素として含む列ベクトルである。ここで、無線端末装置1−nからの送信系列xn(k)に対し、実施の形態1と同様にフラットフェージング伝搬環境下において得られる離散時刻kにおける無線基地局装置2aでの受信信号y(k)は(数1)のように示される。また、Hnは第n番目の無線端末装置1―nの送信系列xn(k)が受ける伝搬路変動を示し、(無線基地局アンテナ数Nr)行×(第n番目の無線端末装置1−nにおける送信アンテナ数M(n))列からなる行列であり、そのi行j列の行列要素hijは、第n番目の無線端末装置1−nにおける第j番目の送信アンテナから送信された信号が、無線基地局装置2aにおける第i番目のアンテナで受信される場合に伝搬路による伝搬路変動を示す。また、n(k)は無線基地局装置2aのNr個のアンテナで受信時に付加されるNr個の要素をもつ雑音ベクトルを示す。なお、送信系列xn(k)はM(n)個の要素をもつ列ベクトルで構成される。
受信部4の出力に対して、(Nt−1)個の受信処理手段40−1〜40−(Nt−1)及び、1つのユーザ個別受信処理手段6をシーケンシャルに接続することで、送信されたデータ系列を復号する。図5は、第s番目の受信処理手段40−sの詳細な構成を示す図である。図5において、第s番目の受信処理手段40−sは、他ユーザ信号分離手段50−s、ユーザ個別受信処理手段6−s及び干渉キャンセル手段51−sから構成され、各手段の出力において、復号順を決定する所定の評価基準に従って、複数の無線端末装置1からの送信系列毎に復号を行う。ここで、s=1〜(Nt−1)である。以下図4及び図5を用いて、その動作を順に説明する。
(1)s=1の処理:
第1番目の受信処理手段40−1に、受信部4からの出力が入力され、さらに、他ユーザ信号分離手段50−1に入力される。他ユーザ信号分離手段50−1において、無線端末装置1―nから送信される既知のパイロット信号などを用いて推定された離散時刻kでの伝搬路変動Hnに対する伝搬路変動推定値Bnを用いて、異なる無線端末装置1からの他
ユーザ信号を分離するユーザ間分離ウエイトを生成し、受信信号y(k)に対し乗算を行う。ここで、実施の形態1と異なる動作は、所定の評価基準を用いて複数の無線端末装置から特定の無線端末装置1−nからの送信系列のみを分離受信を行う点である。
所定の評価基準により優先的に復号する送信系列が第n番目の無線端末装置1−nである場合、第n番目の無線端末装置1−nの送信系列xn(k)以外の送信系列成分を除去するユーザ間分離ウエイトWnを生成する。ここで所望の第n番目の無線端末装置1−nに対するユーザ間分離ウエイトWnは、(数2)に示すように、所望の第n番目の無線端末装置1−nを除く伝搬路変動推定値Bj(k)から構成される行列G(n)に対し(ただし、j≠n)、特異値分解を用いて生成する。すなわち伝搬路変動推定値G(n)の左特異行列Uを構成する左特異ベクトルujのうち、所望の第n番目を除く無線端末装置1がトータルでMs個の送信系列を送信し、受信アンテナ数Nrrとする場合に、j=(Ms+1)、・・・・・、Nrの(Nr−Ms)個の左特異値ベクトルujを選択する。(数3)のように、選択された列ベクトルujを用いてユーザ間分離ウエイト行列Wnとする。選択された各左特異ベクトルujは所望の第n番目の無線端末装置1−nからの送信系列xn(k)を除く送信信号に指向性ヌルを向けるウエイトとなる。なお、ユーザ間分離ウエイトを生成するためには、(全無線端末装置からの全ての送信系列数)≦(無線基地局数のアンテナ数Nr)の条件を満たす必要がある。
このように生成されたユーザ間分離ウエイトWnを用いて、無線基地局装置2での受信信号y(k)に対し、(数8)に示すように乗算することで、他の無線端末装置1からの干渉信号分を低減した信号yn(t)を得ることができる。ここで、nはNt以下の自然数である。また、チャネル推定が理想的に行われた場合、(数5)のような関係が得られるため、(数8)は、(数9)に示すように変形することができ、yn(t)は他の無線端末装置からの干渉信号成分が完全に除去された信号となる。
次にユーザ個別受信処理手段6−1は、他ユーザ信号分離信号yn(k)に対し、第n番目の無線端末装置の送信系列数がM(n)=1の場合、または、M(n)>2の場合に応じて、実施の形態1と同様な動作によりユーザ個別受信処理を行い、送信されたデータ系列を復元する。
干渉キャンセル手段51−sは、復元された第n番目のデータ系列を用いて再度、送信系列と同様な符号化処理、変調を加えたベースバンド信号を生成し、チャネル推定値を用いて受信信号から、復号した第n番目の無線端末装置の送信系列xn(k)による成分を除去する。図6は干渉キャンセル手段51−sの構成を示す図である。図6において、60−sは復号したデータ系列から送信系列と同様な符号化処理、変調を加えたベースバンド信号を生成する信号生成手段、61−sは、信号生成手段の出力に対しチャネル推定値を用いて受信信号として受けたチャネル変動を付加するチャネル変動付加手段、62−sは受信信号からチャネル変動付加手段の出力を用いて復号した第n番目の無線端末装置1−nの送信系列xn(k)を除去する信号除去手段である。以下、図6における動作を説
明する。
信号生成手段60−sは、ユーザ個別受信処理手段6−sの出力である復号したデータ系列から送信系列と同様な符号化処理、変調を加えたベースバンド信号を生成する。具体的な構成は実施の形態1における説明で用いた無線端末装置1における送信系列生成における、伝送路符号化手段22、インターリーバ23、変調手段24を用いて変調処理が加えられた再生ベースバンド信号gn(k)を出力する。複数のアンテナ(M(n)>1)を用いて複数M(n)個の送信系列xn(k)が並列的に送信された場合、gn(k)はM(n)次元の列ベクトルからなるものとする。
次にチャネル変動付加手段61−sは、各無線端末装置1から送信される既知のパイロット信号などを用いて推定された離散時刻kでの伝搬路変動Hnに対する伝搬路変動推定値Bnを用いて、受信信号として受けたチャネル変動を付加し、信号除去手段62−sにおいて、受信信号y(k)から減算処理を行い、第1番目の干渉除去信号r1(k)を出力する。すなわち、(数10)に示す演算処理を行う。ここで得られる第1番目の干渉除去信号r1(k)は、復号が正しく行えており、かつ、チャネル推定が理想的に行えている場合、第n番目の無線端末装置の送信系列xn(k)による信号成分が完全に除去された信号となる。
(2)Nt>s>1の処理:
第s番目の受信処理手段40−sに、第(s−1)番目の干渉除去信号rs-1(k)が入力され、さらに、他ユーザ信号分離手段50−sに入力される。他ユーザ信号分離手段50−sにおいて、所定の評価基準により優先的に復号する送信系列を決定し、s=1の場合と同様に、第ns番目の無線端末装置1−nsの送信系列xns(k)以外の送信系列成分を除去するユーザ間分離ウエイトWnsを生成する。
各無線端末装置1から送信される既知のパイロット信号などを用いて推定された離散時刻kでの伝搬路変動Hnに対する伝搬路変動推定値Bnを用いて、異なる無線端末装置1からの他ユーザ信号を分離するユーザ間分離ウエイトを生成し、第(s−1)番目の干渉除去信号rs-1(k)に対し乗算演算を行う。ここで所望の第ns番目の無線端末装置1―nsに対するユーザ間分離ウエイトWnsは、(数11)に示すように、所望の第ns番目の無線端末装置1−ns及び第1番目から第(s−1)番目の受信処理手段40−1〜40−(s−1)により除去された無線端末装置1からの送信系列を除く伝搬路変動推定値Bjから構成される行列G(ns)に対し(ただし、j≠n、n2、・・・・・ ns-1)、特異値分解を用いて生成する。すなわち伝搬路変動推定値G(ns)の左特異行列Uを構成する左特異ベクトルujのうち、所望の第ns番目の無線端末装置、及び第1番目から第(s−1)番目の受信処理手段40−1〜40−(s−1)で除去された無線端末装置からの送信系列を除いた、トータルでMs個の送信系列を送信し、受信アンテナ数Nrとする場合に、j=(Ms+1)、・・・・・、Nrの(Nr−Ms)個の左特異ベクトルujを選択する。(数12)のように、選択された左特異ベクトルujを用いてユーザ間分離ウエイト行列Wnsとする。
生成されたユーザ間分離ウエイトWnsを用いて、第(s−1)番目の干渉除去信号rs-1(k)に対し、(数13)に示すように乗算することで、所望以外の無線端末装置1からの干渉信号分を低減した信号yns(t)を得ることができる。チャネル推定が理想的に行われた場合、(数5)のような関係が得られるため、(数13)は、(数14)に示すように変形することができ、yns(t)は他の無線端末装置1からの干渉信号成分が除去された信号となる。
次にユーザ個別受信処理手段6−sは、他ユーザ信号分離信号yns(k)に対し、第ns番目の無線端末装置の送信系列数がM(ns)=1の場合、または、M(ns)>2の場合に応じて、実施の形態1において、図2を用いて説明したものと同様な動作によりユーザ個別受信処理を行い、送信されたデータ系列を復元する。
干渉キャンセル手段51−sは、復元された第ns番目のデータ系列を用いて再度、送信系列と同様な符号化処理、変調を加えたベースバンド信号を生成し、チャネル推定値を用いて受信信号から、復号した第ns番目の無線端末装置の送信系列xns(k)による成分を除去する。図6において、信号生成手段60−sは、ユーザ個別受信処理手段6−sの出力である復号したデータ系列から送信系列と同様な符号化処理、変調を加えたベースバンド信号を生成する。具体的な構成は実施の形態1における説明で用いた無線端末装置1における送信系列生成における、伝送路符号化手段22、インターリーバ23、変調手段24を用いて変調処理が加えられた再生ベースバンド信号gns(k)を出力する。複数のアンテナ(M(ns)>1)を用いて複数M(ns)個の送信系列xn(k)が並列的に
送信された場合、gns(k)はM(ns)次元の列ベクトルからなるものとする。
次にチャネル変動付加手段61−1は、各無線端末装置1から送信される既知のパイロット信号などを用いて推定された離散時刻kでの伝搬路変動Hnsに対する伝搬路変動推定値Bnsを用いて、受信信号として受けたチャネル変動を付加し、信号除去手段62−sにおいて、第(s−1)番目の干渉除去信号rs(k)から減算処理を行い、第s番目の干渉除去信号rs(k)を出力する。すなわち、(数15)に示す演算処理を行う。ここで得られる第s番目の干渉除去信号rs(k)は、復号が正しく行えており、かつ、チャネル推定が理想的に行えている場合、第ns番目の無線端末装置の送信系列xns(k)による信号成分が除去された信号となる。
(3)上記の動作をs=(Nt−1)まで繰り返す。その結果、第(Nt―1)番目の受信処理手段40−(Nt−1)の動作により第(Nt−1)番目の干渉除去信号rs(k)を抽出することができ、この出力に対して、実施の形態1と同様にユーザ個別受信処理手段6aを用いて、最後に残った第Nt番目の無線端末装置1の受信データ系列を得ることができる。
なお、第s番目の受信処理手段40−sにおいて、優先的に復号される送信系列を決定する評価基準としては以下のような方法がある。また、受信品質及びQoSを組合せたものを評価指標としても良い。
(1)受信品質による評価基準:
第n番目の無線端末装置1−nからの送信系列xn(k)に対する受信SNRまたは受信SIRを評価基準Qnとする。このような場合、(数16)に示す評価基準Qnにより受信SNRによる評価基準とすることができ、この場合、Qnが大きい順に優先的に復号する。ただし、trace(X)は行列Xの固有和を算出する演算子である。SIR評価の場合は、チャネル推定時に用いるパイロット信号の、推定値に対する分散を評価する手法の適用が可能である。
本実施の形態は、逐次型干渉キャンセラ構成であるため、復号誤りが生じた場合、後段の受信処理手段にその悪影響が伝搬される特性をもつ、従って受信品質が良好な送信系列を優先的に復号する方が特性向上する。従って、STBC、STTCなどの時空間符号を施している場合はダイバーシチ効果による受信品質の向上が見込まれるため、その優先順位を高く設定する方法でもよい。
(2)QoSに基づく評価基準:
第n番目の無線端末装置からの送信系列xn(k)の、QoSに基づき適当な指標(送信系列の許容遅延量、データ種別等)を設け、受信処理を行う優先度を無線端末装置1毎
に設定伝送遅延に対する許容遅延量を評価基準とする。
以上のような動作により、本実施の形態では、実施の形態1と同様に、当該無線端末装置1からの送信系列が複数である場合、それを一つの単位として、他ユーザ信号の干渉を除去した信号として抽出し送信データ系列を復元していく特徴をもち、実施の形態1と同様に、データ伝送遅延を小さくし、一次的保管用バッファメモリの追加なく実現できる。また、STBC、STTCといった時空間符号を施している場合、従来のZF,MMSEといった線形処理よりも良好な特性を得ることができ、また、MLDに基づく一括分離処理を導入時には、現実的なハードウエアでの実現が可能となる。また、実施の形態1と異なる部分は、無線端末装置1毎に受信データ系列を復元しそれを受信信号から逐次的に除去していく逐次的干渉キャンセラ(SIC)構成である点であり、本構成により、実施の形態1の構成に比べてハードウエア規模は増大するが、受信信号から逐次的に干渉信号成分が除去されていくため、後段の受信処理手段になるにつれ、複数アンテナの自由度を干渉除去から信号品質を高める動作が行えるため、受信品質の改善が図れる効果が得られる。
なお、本実施の形態では逐次的干渉キャンセラ構成であるが、パラレル型の干渉キャンセラ構成にしてもよい。
また、後段の受信処理手段において、すべて干渉除去信号を使わずに、復号すべき送信系列の受信品質が良好な干渉除去信号を選択して、その信号数を削減してもよい。これにより、性能劣化を比較的抑えながら、ハードウエア規模の削減を行うことができる。
(実施の形態3)
図7及び図8は、本発明の実施の形態3におけるアップリンクにおける無線端末装置1c及び無線基地局装置2cの構成を示す図である。実施の形態1では、シングルキャリアを用いる伝送方式を用いたが、本実施の形態では、マルチキャリア伝送を行う点が異なるため無線端末装置1c及び無線基地局装置2cの構成が異なる。以下では異なる動作部分を主に説明する。
実施の形態1と同様にNt個の無線端末装置1−1〜1−Ntは、それぞれアンテナから送信系列を送信する。ここで、第n番目の無線端末装置1−nから無線基地局装置へ送信する離散時刻kにおける送信系列xn(k)と表記する。ここで、nはNt以下の自然数であり、複数のアンテナ(M(n)>1)を用いて複数M(n)個の送信系列xn(k)を並列的に送信する場合、送信系列xn(k)はM(n)次元の列ベクトルからなるものとする。
図7(a)、(b)の無線端末装置1cはOFDM変調を用いたマルチキャリア伝送を行う無線端末装置である。図7(a)は無線端末装置1cがシングルアンテナで送信を行う場合、図7(b)は複数アンテナで送信を行う場合(図では一例としてM(n)=2の場合を示す。)の構成を示す。データ系列生成手段70は無線基地局装置2cへ送信するデータ系列znを生成する。
図7(a)において、シングルアンテナ送信の場合、データ系列生成手段70で生成したデータ系列znを送信系列xn(k)と見なし、伝送路符号化手段72により所定の符号化率で誤り訂正符号化を施した後に、インターリーバ73によりインターリービングし、一次変調手段74により所定の多値変調を用いてビット列をIQ平面上の変調シンボルにマッピングしたベースバンド信号とし、OFDM変調手段75を用いて直並列変換、IFFT変換、並直並列変換、ガードインターバル(GI)挿入を含むOFDM変調を施す。ここでOFDM変調及び復調方法に関しては、文献(尾知、“OFDMシステム技術とM
ATLABシミュレーション解説“、トリケップス刊)に情報開示されており、ここではその説明を省略する。続いて、送信部76おいて、ベースバンド信号を周波数変換し帯域制限処理を加え、増幅後に高周波信号としてアンテナ77から送信する。
図7(b)において、複数アンテナ送信の場合、直並列変換手段71(S/P変換手段)によりデータ系列生成手段70で生成したデータ系列znを、M(n)個の並列データ列である送信系列xn(k)に変換する。すなわち、送信系列xn(k)はM(n)個の要素をもつ列ベクトルとして表記される。その後、送信系列毎に、伝送路符号化手段72−1〜72−M(n)、インターリーバ73−1〜73−M(n)、一次変調手段74−1〜74−M(n)、OFDM変調手段75−1〜75−M(n)及び送信部76−1〜76−M(n)はシングルアンテナ送信と同様な処理を行う。なお、送信系列よりも多くのアンテナ数を用いて送信することも可能であり、その場合は、所望の指向性を形成する指向性ウエイトを送信系列に対し乗算する方法、または、STBCのような時空間符号化を施す方法で実現できる。以下では、無線端末装置1cで送信に用いられるアンテナ数と、送信系列の数が同数である場合を説明する。
続いて、図8を用いて、無線基地局装置2cにおける動作を説明する。なお、以下では、周波数同期、位相同期、シンボル同期確立後の動作を説明する。Nr個の複数アンテナ81で受信された高周波信号は、それぞれ受信部82−1〜82−Nrにおいて、増幅及び周波数変換後に直交検波され、IQ平面上のベースバンド信号に変換され、さらに、A/D変換器を用いて複素ディジタル信号で表現される受信信号y(k)として出力する。ここで、y(k)は受信に用いるアンテナ数Nr個での受信信号を要素として含む列ベクトルである。
OFDM復調手段83−Nrは、図示されていないGI除去手段、FFT手段、直列並列変換手段を含みOFDM復調を施し、Nc個のサブキャリア毎のシンボルデータ系列を出力する。ここで、離散時刻kにおける第fs番目のサブキャリア毎のシンボルデータ系列をY(k、fs)と表記する。なお、Y(k、fs)は受信に用いるアンテナ数Nr個で受信された信号を要素として含む列ベクトルである。ただし、fs=1〜Ncである。
他ユーザ信号分離手段84はサブキャリア数に対応するNc個あり、それぞれに対しNr個のアンテナ数のOFDM復調手段83−1〜83−Nrからの異なるサブキャリア毎のシンボルデータ系列が入力される。ここで、各無線端末装置1からの送信系列における第fs番目のサブキャリアデータ系列Xn(k、fs)と表記すると、伝搬路におけるマルチパスの先行波からの相対的な遅延時間がガードインターバル(GI)範囲内であれば、周波数選択性フェージング環境をフラットフェージング伝搬環境と等価に扱うことができるため、無線基地局装置2cで受信されるサブキャリアデータ系列Y(k、fs)は(数17)のように示される。ここで、Hn(fs)は、第n番目の無線端末装置1−nの第fs番目のサブキャリアのシンボルデータ系列Xn(k、fs)が受ける伝搬路変動を示し、(無線基地局アンテナ数Nr)行×(第n番目の無線端末装置における送信アンテナ数M(n))列からなる行列であり、そのi行j列の行列要素hijは、第n番目の無線端末装置1−nにおける第j番目の送信アンテナから送信された信号が、無線基地局装置2cにおける第i番目のアンテナで受信される第fs番目のサブキャリア信号の伝搬路による伝搬路変動を示す。また、n(k)は無線基地局装置のNr個のアンテナで受信時に付加されるNr個の要素をもつ雑音ベクトルを示す。
以下では第fs番目のサブキャリアデータ系列Y(k、fs)に対する第fs番目の他ユーザ信号分離手段84―fsの動作について説明する。各無線端末装置1cから送信される既知のパイロット信号などを用いて推定された第fs番目のサブキャリア群の伝搬路変動Hn(fs)に対する伝搬路変動推定値Bn(fs)を用いて、異なる無線端末装置1cからの他ユーザ信号を分離するユーザ間分離ウエイトを生成し、第fs番目のサブキャリアデータ系列Y(k、fs)に対し乗算演算を行う。ここで所望の第n番目の無線端末装置1−nの第fs番目のサブキャリアデータ系列に対するユーザ間分離ウエイトWn(fs)は、(数18)に示すように、所望の第n番目の無線端末装置1−nを除く伝搬路変動推定値Bj(fs)から構成される行列G(n、fs)に対し(ただし、j≠n)、特異値分解を用いて生成する。ここで、Hは複素共役転置を行う演算子である。すなわち伝搬路変動推定値G(n、fs)の左特異行列Uを構成する左特異ベクトルujのうち、所望の第n番目を除く無線端末装置1がトータルでMs個の送信系列を送信し、受信アンテナ数Nrとする場合に、j=(Ms+1)、・・・・・、Nrの(Nr−Ms)個の左特異ベクトルujを選択する。(数19)のように、選択された左特異ベクトルujを用いてユーザ間分離ウエイト行列Wn(fs)とする。選択された各左特異ベクトルujは所望の第n番目の無線端末装置の第fs番目のサブキャリアデータ系列Y(k、fs)において送信系列Xn(k、fs)を除く送信信号に指向性ヌルを向けるウエイトとなる。なお、ユーザ間分離ウエイトを生成するためには、(全無線端末装置1cからの全ての送信系列数)≦(無線基地局数のアンテナ数Nr)の条件を満たす必要がある。
このように生成されたユーザ間分離ウエイトWn(fs)を用いて、無線基地局装置2cでの第fs番目のサブキャリアデータ系列Y(k、fs)に対し、(数20)に示すように乗算することで、他の無線端末装置1cからの干渉信号成分を低減したサブキャリアデータ系列Yn(k、fs)を得ることができる。ここで、nはNt以下の自然数である。また、チャネル推定が理想的に行われた場合、(数21)のような関係が得られるため、(数20)は、(数22)に示すように変形することができ、Yn(k、fs)は他の無線端末装置1cからの干渉信号成分が完全に除去された信号となる。
次にユーザ個別受信処理手段91−nは、第n番目の無線端末装置のサブキャリア毎(fs=1〜Nc)に得られた他ユーザ信号分離信号Yn(k、fs)を一つの単位として、ユーザ個別受信処理を行う。ここで、n=1〜Ntである。M(n)が複数の場合と単数の場合で一部異なる構成をとる。
(a)M(n)が複数の場合:
図8における第1番目のユーザ個別受信処理手段91−1は、M(n)が複数の場合(M(n)=2)を示しており、85は信号分離手段、86は一次復調手段、87は並直列変換手段(P/S変換手段)、88はデインターリーバ、89は復号化手段、90は並直列変換手段である。M(n)が複数の場合、図における一次復調手段86、並直列変換手段(P/S変換手段)87、デインターリーバ88、復号化手段89がそれぞれM(n)個の系統が含まれる。
信号分離手段85は、サブキャリア毎(fs=1〜Nc)に設けられ、それぞれはユーザ信号分離信号Yn(k、fs)を入力とする。信号分離手段85により、個別の送信系列に分離される。この場合の第n番目の無線端末装置1c−nからの第fs番目のサブキャリアデータ送信系列Xn(k、fs)に対する受信信号の分離は、(数23)に示すチャネル推定値Bn(fs)にユーザ間分離ウエイトWnを乗算した結果得られるユーザ間分離ウエイト乗算後のチャネル推定値Fn(fs)に基づいて行う。また、分離アルゴリズ
ムは、ZF、MMSE,MLD(Maximum likelihood Detection)等の手法を適用することで実現できる。ここで、MLDによる分離手法を使う場合、本手法は無線端末装置毎に、他無線端末装置からの干渉信号を除去した信号であるため、MLDの際の信号点候補を削減することができるため、現実的なハードウエアでの実現が可能となる。なお、分離アルゴリズムは、一つの手法を固定的に使用してもよいし、送信系列の変調多値数、受信信号数等に応じて適応的に変更してもよい。例えば、BPSK、QPSKといった変調多値数が少ない場合はMLDを適用し、変調多値数が多い16QAM、64QAMの場合は、MMSE等の線形手法の適用が考えられる。
ユーザ個別に分離されたそれぞれの信号は、一次復調手段86−1〜86−M(n)によりサブキャリア毎にシンボルデータ列を変調に用いたマッピング情報を基にビットデータ列に変換され、並直列変換手段(P/S変換手段)87−1〜87−M(n)により、並列なサブキャリアデータを直列のビートデータ列に変換される。デインターリーバ88−1〜88−M(n)は送信側で施されたインターリーブと逆の動作によりビット順を復元する。復号化手段89−1〜89−M(n)は入力されるビットデータ列に対し誤り訂正符号を施し、送信信号系列を復元する。そして、並直列変換手段(P/S変換手段)90により直列のデータ列系列を再生する。
(b)M(n)=1の場合:
1系統の一次復調手段86、並直列変換手段(P/S変換手段)87、デインターリーバ88、復号化手段89が、それぞれシリアルに接続される構成をとり、送信信号系列を復元する。それぞれの動作は、M(n)>1の場合と同様であり説明を省略する。
以上のような動作により、本実施の形態では、実施の形態1をマルチキャリア伝送に適用したものであり、複数の無線端末装置1cがマルチキャリア伝送を用いてSDMA接続する場合の無線基地局装置1cの動作を説明しており、具体的には当該無線端末装置1cからの送信系列が複数である場合、サブキャリア毎に、それを一つの単位として、他ユーザ信号の干渉を除去した信号として抽出することで後続の処理は、ユーザ個別に受信復号処理を適用することが可能となる。これにより、実施の形態1の効果に加え、本実施の形態では次のような特徴をもつ。すなわち、サブキャリア毎の信号分離手段85及び一次復調手段86は、当該無線端末装置1cのみの送信信号成分を含むため、一次復調手段86による処理が同時並列に行え、並直列変換手段(P/S変換手段)87への入力データ及び並直列変換手段(P/S変換手段)90への入力データがウエイトされることがなく、また、新たに入力データを一次的に保管するバッファメモリを設けることもないため、データ処理遅延を小さくし、またメモリ増によるハードウエア規模の増加を抑えることができる。
また、受信特性としても、本構成は、現実的なハードウエア規模で従来手法(ZF、MMSE)よりも良好な特性を得ることができる。すなわち、他ユーザ信号分離手段84にかわり、従来のZF,MMSEといった線形処理により一括分離処理を用いる場合、実施の形態のように、当該無線端末装置1cからの送信系列が複数であっても、当該無線端末装置1c毎の送信系列を取り出すことが可能であるが、STBC、STCといった時空間符号を施している場合、同じ無線端末装置1cからの複数の送信系列が含まれる場合、それらを分離受信する受信ウエイトを形成する性質から、アンテナ自由度を干渉抑圧ために
使用するため、ダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を損ねる。
一方、本実施の形態では他無線端末装置からの干渉を排除した信号を用いることで時空間復号が可能であるためにダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を得ることができる。また、マルチキャリア伝送を利用して、異なるサブキャリアと異なる送信アンテナを用いてSFBC(Space frequency block coding)といった周波数―空間符号の適用も可能であるが、この場合も同様に、従来のZF,MMSEといった線形処理により一括分離処理を用いる場合、同じ無線端末装置からの複数の送信系列が含まれる場合、それらを分離受信する受信ウエイトを形成する性質から、アンテナ自由度を干渉抑圧ために使用するため、ダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を損ねる。一方、本実施の形態では他無線端末装置からの干渉を排除した信号を用いることで時空間復号が可能であるためにダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を得ることができる。また、他ユーザ信号分離手段5にかわり、従来のMLDに基づく一括分離処理を導入することも可能であるが、その場合、本実施の形態よりも受信特性は優れるが、全ての無線端末装置1―1〜Ntからの送信系列に対しMLD処理を行うと、MLDによる処理量は、送信系列数とその変調多値数に対し指数関数的に増大するため、現実的なハードウエアの実現が困難となる。
なお、本実施の形態では、ユーザ個別受信処理手段91を接続する無線端末装置数分設けているが、送信系列のQoSに基づき適当な指標(送信系列の許容遅延量、データ種別等)を設け、受信処理を行う優先度を無線端末装置1c毎に設定する逐次的にユーザ個別受信処理手段91への入力を切り替える構成でも可能である。この場合、ユーザ個別受信処理手段91を、接続する無線端末装置より少ない数にできる。この場合、ユーザによっては、伝送データを復元するまでの処理遅延が大きくなるが、無線基地局装置2cの構成を簡易化する効果が得られる。
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4における無線基地局装置2dの構成を示す図である。実施の形態1では、シングルキャリアを用いる伝送方式を用いたが、本実施の形態では、マルチキャリア伝送を行う点が異なり、また、実施の形態3における図8の無線基地局装置2cの構成と異なる部分は、OFDM復調手段83の出力以降の構成であり、以下では異なる動作部分を主に説明する。
Nt個の無線端末装置1−1〜1−Ntがそれぞれアンテナから送信系列を送信するまでの動作は実施の形態3と同様であり、その説明を省略する。ここで、第n番目の無線端末装置1−nから無線基地局装置2dへ送信する離散時刻kにおける送信系列xn(k)と表記する。ここで、nはNt以下の自然数であり、複数のアンテナ(M(n)>1)を用いて複数M(n)個の送信系列xn(k)を並列的に送信する場合、送信系列xn(k)はM(n)次元の列ベクトルからなるものとする。
無線基地局装置2dにおいて、図示されていない複数(Nr個)のアンテナ81で得られた高周波信号を受信部82−1〜82−Nr及びOFDM復調手段83で出力を得るまでは実施の形態1における図8の無線基地局装置2cと同様である。ここでOFDM復調手段83の出力は、Nc個のサブキャリア毎のシンボルデータ系列であり、離散時刻kにおける第fs番目のサブキャリア毎のシンボルデータ系列をY(k、fs)と表記する。なお、Y(k、fs)は受信に用いるアンテナ数Nr個で受信された信号を要素として含む列ベクトルである。ただし、fs=1〜Ncである。
OFDM復調手段83−1〜83−Nrの出力に対して、(Nt−1)個の受信処理手段95−1〜95−(Nt−1)及び、1つのユーザ個別受信処理手段91aをシーケンシャルに接続することで、送信されたデータ系列を復号する。
図10は、第s番目の受信処理手段95−sの詳細な構成を示す図である。図10において、第s番目の受信処理手段95−sは、他ユーザ信号分離手段96−(s−1)〜96−(s−Nc)、ユーザ個別受信処理手段91−s及び干渉キャンセル手段97−sから構成され、各手段の出力において、復号順を決定する所定の評価基準に従って、複数の無線端末装置1cからの送信系列毎に復号を行う。ここで、s=1〜(Nt−1)である。以下図9及び図10を用いて、その動作を順に説明する。
(1)s=1の処理:
第1番目の受信処理手段95−1に、OFDM復調手段83−1〜83−Nrからの出力Y(k、fs)が入力され、さらに、それらの内、第fs番目のサブキャリア群は他ユーザ信号分離手段96−1−fsに入力される。ここで、fsは1からNcの自然数である。他ユーザ信号分離手段96−1−1〜96−1−Ncにおいて、各無線端末装置1から送信される既知のパイロット信号などを用いて推定された離散時刻kでの第fs番目のサブキャリア群の伝搬路変動Hn(fs)に対する伝搬路変動推定値Bn(fs)を用いて、異なる無線端末装置1cからの他ユーザ信号を分離するユーザ間分離ウエイトWn(fs)を生成し、第fs番目のサブキャリアデータ系列Y(k、fs)に対し乗算を行う。ここで、実施の形態3と異なる動作は、所定の評価基準を用いて複数の無線端末装置1cから特定の無線端末装置1cからの送信系列のみを分離受信を行う点である。
所定の評価基準により優先的に復号する送信系列が第n番目の無線端末装置1c−nである場合、第n番目の無線端末装置1c−nからの送信系列における第fs番目のサブキャリアデータ系列Xn(k、fs)以外の送信系列成分を除去するユーザ間分離ウエイトWn(fs)を生成する。ここで所望の第n番目の無線端末装置1c−nの第fs番目のサブキャリアデータ系列に対するユーザ間分離ウエイトWn(fs)は、(数18)に示すように、所望の第n番目の無線端末装置の第fs番目のサブキャリアデータ系列を除く伝搬路変動推定値Bj(fs)から構成される行列G(n,fs)に対し(ただし、j≠n)、特異値分解を用いて生成する。すなわち伝搬路変動推定値G(n,fs)の左特異行列Uを構成する左特異ベクトルujのうち、所望の第n番目を除く無線端末装置1cがトータルでMs個の送信系列を送信し、受信アンテナ数Nrとする場合に、j=(Ms+1)、・・・・・、Nrの(Nr−Ms)個の左特異ベクトルujを選択する。(数19)のように、選択された左特異ベクトルujを用いてユーザ間分離ウエイト行列Wn(fs)とする。選択された各左特異ベクトルujは所望の第n番目の無線端末装置の第fs番目のサブキャリアデータ系列からの送信系列Xn(k、fs)を除く送信信号に指向性ヌルを向けるウエイトとなる。なお、ユーザ間分離ウエイトを生成するためには、(全無線端末装置1cからの全ての送信系列数)≦(無線基地局数のアンテナ数Nr)の条件を満たす必要がある。
このように生成されたユーザ間分離ウエイトWn(fs)を用いて、第fs番目のサブキャリアデータ系列Y(k、fs)に対し、(数24)に示すように乗算することで、他の無線端末装置からの干渉信号分を低減した信号Yn(k、fs)を得ることができる。ここで、nはNt以下の自然数である。また、チャネル推定が理想的に行われた場合、(数21)のような関係が得られるため、(数24)は、(数25)に示すように変形することができ、Yn(k、fs)は他の無線端末装置1cからの干渉信号成分が完全に除去された信号となる。
次にユーザ個別受信処理手段91―1は、他ユーザ信号分離信号Yn(k、fs)に対し、第n番目の無線端末装置の送信系列数がM(n)=1の場合、または、M(n)>2の場合に応じて、実施の形態3と同様な動作によりユーザ個別受信処理を行い、送信されたデータ系列を復元する。
干渉キャンセル手段97−1は、復元された第n番目のデータ系列を用いて再度、送信系列と同様な符号化処理、変調を加えたサブキャリアデータ系列を生成し、チャネル推定値を用いて受信信号から、復号した第n番目の無線端末装置1c−nのサブキャリアデータ系列Xn(k、fs)による成分を除去する。図11は干渉キャンセル手段97−sの構成を示す図である。図11において、98−sは復号したデータ系列から送信系列と同様な符号化処理、変調を加えたサブキャリアデータ系列を生成する信号生成手段、99−sは、信号生成手段の出力に対しサブキャリア毎のチャネル推定値Bn(fs)を用いて受信信号として受けたチャネル変動を付加するチャネル変動付加手段、100−Sは受信信号からチャネル変動付加手段99−Sの出力を用いて復号した第n番目の無線端末装置のサブキャリアデータ系列Xn(k、fs)による成分を除去する信号除去手段である。以下、図11における動作(s=1)を説明する。
信号生成手段98−1は、ユーザ個別受信処理手段91−1の出力である復号したデータ系列から送信系列と同様な符号化処理、一次変調を加えたサブキャリアデータ系列を生成する。具体的な構成は実施の形態3における説明で用いた無線端末装置1cにおける送信系列生成における、伝送路符号化手段72、インターリーバ73、一次変調手段74を用いて変調処理が加えられたサブキャリアデータ系列gn(k、fs)を出力する。複数のアンテナ(M(n)>1)を用いて複数M(n)個の送信系列xn(k)が並列的に送信された場合、gn(k、fs)はM(n)次元の列ベクトルからなるものとする。
次にチャネル変動付加手段99−1は、各無線端末装置1cから送信される既知のパイロット信号などを用いて推定された離散時刻kでの伝搬路変動Hn(fs)に対する伝搬路変動推定値Bn(fs)を用いて、受信信号として受けたチャネル変動を付加し、信号除去手段100−1において、第fs番目のサブキャリアデータ系列Y(k、fs)から減算処理を行い、第1番目の干渉除去信号r1(k、fs)を出力する。すなわち、(数26)に示す演算処理を行う。ここで得られる第1番目の干渉除去信号r1(k、fs)は、復号が正しく行えており、かつ、チャネル推定が理想的に行えている場合、第n番目の無線端末装置のサブキャリアデータ系列Xn(k、fs)による信号成分が除去された信号となる。これらの動作をすべてのfs=1〜Ncに対して行う。
(2)Nt>s>1の処理:
第s番目の受信処理手段95−sに、第(s−1)番目の干渉除去信号rs-1(k、fs)が入力され、それらの内、第fs番目のサブキャリア群は他ユーザ信号分離手段96−(1―fs)に入力される。ここで、fsは1からNcまでの自然数である。他ユーザ信号分離手段96−(s−1)〜96−(s−Nc)において、所定の評価基準により優先的に復号する送信系列を決定し、s=1の場合と同様に、第ns番目の無線端末装置1c−nsの第fs番目のサブキャリアデータ系列Xns(k、fs)以外の送信系列成分を除去するユーザ間分離ウエイトWns(fs)を生成する。
各無線端末装置1c−nsから送信される既知のパイロット信号などを用いて推定された離散時刻kでの第fs番目のサブキャリア群の伝搬路変動Hn(fs)に対する伝搬路変動推定値Bn(fs)を用いて、異なる無線端末装置1cからの他ユーザ信号を分離するユーザ間分離ウエイトを生成し、第(s−1)番目の干渉除去信号rs-1(k、fs)に対し乗算演算を行う。ここで所望の第ns番目の無線端末装置1c−nsに対するユーザ間分離ウエイトWnsは、(数27)に示すように、所望の第ns番目の無線端末装置及び第1番目から第(s−1)番目の受信処理手段95−1〜95−(s−1)により除去された無線端末装置1cからの送信系列を除く伝搬路変動推定値Bj(fs)から構成される行列G(ns、fs)に対し(ただし、j≠n、n2、・・・・・、ns-1)、特異値分解を用いて生成する。すなわち伝搬路変動推定値G(ns、fs)の左特異行列Uを構成する左特異ベクトルujのうち、所望の第ns番目の無線端末装置1c―ns、及び第1番目から第(s−1)番目の受信処理手段96−1〜96−(s−1)で除去された無線端末装置1cからの送信系列を除いた、トータルでMs個の送信系列を送信し、受信アンテナ数Nrとする場合に、j=(Ms+1)、・・・・・、Nrの(Nr−Ms)個の左特異ベクトルujを選択する。(数28)のように、選択された左特異ベクトルujを用いてユーザ間分離ウエイト行列Wns(fs)とする。
生成されたユーザ間分離ウエイトWns(fs)を用いて、第(s−1)番目の干渉除去
信号rs-1(k、fs)に対し、(数29)に示すように乗算することで、所望以外の無線端末装置1cからの干渉信号分を低減した第fs番目のサブキャリアデータ系列Y(k、fs)を得ることができる。チャネル推定が理想的に行われた場合、(数21)のような関係が得られるため、(数29)は、(数30)に示すように変形することができ、Y(k、fs)は他の無線端末装置からの干渉信号成分が完全に除去された信号となる。
次にユーザ個別受信処理手段91―sは、他ユーザ信号分離信号Y(k、fs)に対し、第ns番目の無線端末装置の送信系列数がM(ns)=1の場合、または、M(ns)>2の場合に応じて、実施の形態3において、図8を用いて説明したものと同様な動作によりユーザ個別受信処理を行い、送信されたデータ系列を復元する。
干渉キャンセル手段97−sは、復元された第ns番目のデータ系列を用いて再度、送信系列と同様な符号化処理、一次変調を加えたサブキャリア信号を生成し、チャネル推定値を用いて受信信号から、復号した第ns番目の無線端末装置の送信系列Xns(k、fs)による成分を除去する。
図11に具体的な構成を示しており、信号生成手段98−sは、ユーザ個別受信処理手段91−sの出力である復号したデータ系列から送信系列と同様な符号化処理、一次変調を加えたサブキャリア信号を生成する。具体的な構成は実施の形態3における説明で用いた無線端末装置1cにおける送信系列生成における、伝送路符号化手段72、インターリーバ73、一次変調手段74を用いて変調処理が加えられたサブキャリアデータ系列gns(k、fs)を出力する。複数のアンテナ(M(ns)>1)を用いて複数M(ns)M)ns)個の送信系列xn(k)が並列的に送信された場合、gns(k、fs)はM(n)次元の左特異ベクトルからなるものとする。次にチャネル変動付加手段99−1は、各無線端末装置1c−nsから送信される既知のパイロット信号などを用いて推定された離散時刻kでの伝搬路変動Hns(fs)に対する伝搬路変動推定値Bns(fs)を用いて、受信信号として受けたチャネル変動を付加し、信号除去手段100−sにおいて、第s−1番目の干渉除去信号rs(k、fs)から対応するサブキャリア信号毎に減算処理を行い、第s番目の干渉除去信号rs(k、fs)を出力する。すなわち、(数31)に示す演算処理を行う。ここで得られる第s番目の干渉除去信号rs(k、fs)は、復号が正しく行えており、かつ、チャネル推定が理想的に行えている場合、第ns番目の無線端末装置の送信系列xns(k)による信号成分が除去された信号となる。これらの動作をすべてのfs=1〜Ncに対して行う。
(3)上記の動作をs=(Nt−1)まで繰り返す。その結果、第(Nt−1)番目の受信処理手段の動作により第(Nt−1)番目の干渉除去信号rs(k、fs)を抽出することができ、この出力に対して、実施の形態3と同様にユーザ個別受信処理手段91aを用いて、最後に残った第Nt番目の無線端末装置1cの受信データ系列を得ることができる。
なお、受信処理手段95−sにおいて、優先的に復号される送信系列を決定する評価基準としては以下のような方法がある。また、受信品質及びQoSの両者を組合せたものを評価指標としても良い。
(1)受信品質による評価基準:
第n番目の無線端末装置1c−nからの送信系列xn(k)に対する平均的なサブキャリア信号の受信SNRまたは受信SIRを評価基準Qnとする。このような場合、(数32)に示す評価基準Qnにより受信SNRによる評価基準とすることができ、この場合、Qnが大きい順に優先的に復号する。ただし、trace(X)は行列Xの固有和を算出する演算子である。SIR評価の場合は、チャネル推定時に用いるパイロット信号の、推定値に対する分散を評価する手法の適用が可能である。
本実施の形態では、逐次型干渉キャンセラ構成であるため、復号誤りが生じた場合、後段の受信処理手段にその悪影響が伝搬される特性をもつ、従って受信品質が良好な送信系列を優先的に復号する方が特性向上する。従って、STBC、STTCなどの時空間符号を施しているは送信ダイバーシチ効果による受信品質の向上が見込まれるため、その優先順位を高く設定する方法でもよい。
(2)QoSに基づく評価基準:
第n番目の無線端末装置1c−nからの送信系列xn(k)の、QoSに基づき適当な指標(送信系列の許容遅延量、データ種別等)を設け、受信処理を行う優先度を無線端末装置1c毎に設定伝送遅延に対する許容遅延量を評価基準とする。
以上のような動作により、本実施の形態では、実施の形態1と同様に、当該無線端末装置1cからの送信系列が複数である場合、それを一つの単位として、他ユーザ信号の干渉を除去した信号として抽出し送信データ系列を復元していく特徴をもち、実施の形態1と同様に、データ処理遅延を小さくし、一次的保管用バッファメモリの追加なく実現できる。また、STBC、STTCといった時空間符号を施している場合、従来のZF,MMSEといった線形処理よりも良好な特性を得ることができ、また、MLDに基づく一括分離処理を導入時には、現実的なハードウエアでの実現が可能となる。
また、マルチキャリア伝送を利用して、異なるサブキャリアと異なる送信アンテナを用いてSFBC,SFCといった周波数―空間符号の適用も可能であるが、この場合も同様に、従来のZF,MMSEといった線形処理により一括分離処理を用いる場合、同じ無線端末装置からの複数の送信系列が含まれる場合、それらを分離受信する受信ウエイトを形成する性質から、アンテナ自由度を干渉抑圧ために使用するため、ダイバーシチ利得、時
空間の符号化利得を損ねる。一方、本実施の形態では他無線端末装置1cからの干渉を排除した信号を用いることで時空間復号が可能であるためにダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を得ることができる。
また、実施の形態3と同様に、無線端末装置1c毎に受信データ系列を復元しそれを受信信号から逐次的に除去していく逐次的干渉キャンセラ(SIC)構成である点であり、本構成により、実施の形態1の構成に比べてハードウエア規模は増大するが、受信信号から逐次的に干渉信号成分が除去されていくため、後段の受信処理手段になるにつれ、複数アンテナの自由度を干渉除去から信号品質を高める動作が行えるため、受信品質の改善が図れる効果が得られる。
なお、本実施の形態では逐次的干渉キャンセラ構成であるが、パラレル型の干渉キャンセラ構成にしてもよい。
また、後段の受信処理手段95において、すべて干渉除去信号を使わずに、復号すべき送信系列の受信品質が良好な干渉除去信号を選択して、その信号数を削減してもよい。これにより、性能劣化を比較的抑えながら、ハードウエア規模の削減を行うことができる。
(実施の形態5)
図12から図15は、本発明の実施の形態5における無線端末装置1のそれぞれ異なる送信構成を示す図であり、図16から図19は、図12から図15の各無線端末装置1に対応して、それぞれから送信された送信系列を復調及び復号するためのユーザ個別受信処理手段91の異なる構成を示す。以下それぞれの構成を用いた時の動作を説明する。なお、本実施の形態では、マルチキャリア伝送を用いているが、サブキャリア数を1と見なすことで、同様にシングルキャリア伝送への適用が可能である。
なお、以下では実施の形態3における図7(b)を用いて説明した複数アンテナ送信時の無線端末装置1cの構成と異なる部分及び、図8を用いて説明した複数の送信系列受信時のユーザ個別受信処理手段91の構成と異なる部分を説明する。それ以外の部分は実施の形態3または実施の形態4で説明したものと同様な動作を行う。また各図においては、第n番目の送信系列数M(n)=2である場合を示しているがこれに限定されない。
図12は、インターリーバ120の構成が異なる。伝送路符号化手段72―1〜72−M(n)からの複数の送信系列に対し時間軸、空間軸(複数アンテナ)、周波数軸(サブキャリア)にまたがってインターリーブを行う。図16は、これに対応したユーザ個別受信処理手段91fの構成を示しており、並直列変換手段(P/S変換手段)87で出力される複数の送信系列をデインターリーバ140によりデインターリーブすることで送信された送信系列を復元する。本構成により、時間軸、空間軸(複数アンテナ)、周波数軸(サブキャリア)での相関を下げるランダマイズの効果と誤り訂正を行う復号化手段89を併用することで、受信品質の改善に効果的である。また、本構成では、デインターリーバ140に複数の並直列変換手段(P/S変換手段)87の出力が終わらないと、デインターリーバ140による処理が行えないが、本実施の形態では、ユーザ個別に受信復号処理が同時並列に行えるため、並直列変換手段(P/S変換手段)87の出力データが途中で必要以上にウエイトされることがなく、また、新たにその出力データを一次的に保管するバッファメモリを設けることもなくデインターリーバ140による処理が行えるため、データ伝送遅延を小さくし、またハードウエア規模を抑えることができる。また、端末装置毎にデインターリーバ140のパターンを変えることで、実施の形態4で示したSICの構成では、干渉キャンセル手段97による干渉除去時に、干渉除去する信号と、干渉が除去される信号間の相関が高い場合でも、インターリーバが異なることで復号結果の受信品質がランダマイズされるため、最終的な受信特性が改善される効果が得られる。
図13は、インターリーバ121の構成が異なる。伝送路符号化手段72からの送信系列に対し時間軸、空間軸(複数アンテナ)、周波数軸(サブキャリア)にまたがってインターリーブを行った結果、複数の送信系列を出力する。図17は、これに対応したユーザ個別受信処理手段91gの構成を示しており、直並列変換手段(S/P変換手段)87で出力される複数の送信系列をデインターリーバ141によりデインターリーブすることで送信された送信系列を復元する。本構成により、図12による構成と同等な効果が得られる。この場合、伝送路符号化手段72、復号化手段89が一つですむため回路構成が簡易になる。
図14は、符号化の構成が異なり、時空間符号化手段130を用いる。時空間符号化手段130は、文献B. Vucetic and J. Yuan, ' Space-Time Coding', Wileyで開示されているSTTC、STTTC等を適用する。図18は、これに対応したユーザ個別受信処理手段91hの構成を示しており、デインターリーバ88によりデインターリーブされた送信系列を、適用する時空間符号化を復号化する時空間復号化手段150により送信された送信系列を復元する。本構成により、伝送レートは低下するが、時空間のダイバーシチ効果を得ることができ受信品質の改善に寄与する。また、本構成では、現実的なハードウエア規模で従来手法(ZF、MMSE)よりも良好な特性を得ることができる。すなわち、他ユーザ信号分離手段にかわり、従来のZF,MMSEといった線形処理により一括分離処理を用いる場合、実施の形態のように、当該無線端末装置1からの送信系列が複数であっても、当該無線端末装置1毎の送信系列を取り出すことが可能であるが、時空間符号を施している場合、同じ無線端末装置からの複数の送信系列が含まれる場合、それらを分離受信する受信ウエイトを形成する性質から、アンテナ自由度を干渉抑圧ために使用するため、ダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を損ねる。一方、本実施の形態では他無線端末装置からの干渉を排除した信号を用いることで時空間復号が可能であるためにダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を得ることができる。
図15は、符号化の構成が異なり、時空間符号化手段131を用いる。時空間符号化手段131は、文献B. Vucetic and J. Yuan, ' Space-Time Coding', Wileyで開示されているSTBCのようなブロック符号化を適用する。図19は、これに対応したユーザ個別受信処理手段91iの構成を示しており、時空間復号化手段160により、適用された時空間符号化に対しを復号化処理を行う。本構成により、伝送レートは低下するが、時空間のダイバーシチ効果を得ることができ受信品質の改善に寄与する。また、本構成では、現実的なハードウエア規模で従来手法(ZF、MMSE)よりも良好な特性を得ることができる。すなわち、他ユーザ信号分離手段にかわり、従来のZF,MMSEといった線形処理により一括分離処理を用いる場合、実施の形態のように、当該無線端末装置1からの送信系列が複数であっても、当該無線端末装置1毎の送信系列を取り出すことが可能であるが、時空間符号を施している場合、同じ無線端末装置1からの複数の送信系列が含まれる場合、それらを分離受信する受信ウエイトを形成する性質から、アンテナ自由度を干渉抑圧ために使用するため、ダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を損ねる。一方、本実施の形態では他無線端末装置1からの干渉を排除した信号を用いることで時空間復号が可能であるためにダイバーシチ利得、時空間の符号化利得を得ることができる。なお、時空間符号化手段131は、連続するシンボルデータに対して(時間軸)時空間符号化を施しても良いが、隣接するサブキャリア間で、周波数―空間符号化を施しても同様な効果が得られる。
なお、本実施の形態で示した各無線端末装置1の構成及び対応するユーザ個別受信処理手段91を相互に組み合わす構成でもよい。
(実施の形態6)
図20は、本発明の実施の形態6における無線端末装置1の異なる送信構成を示す図であり、無線端末装置1の構成に対応して、それぞれから送信された送信系列を復調及び復号するためのユーザ個別受信処理手段91の異なる構成を示す。以下動作を説明する。なお、本実施の形態では、マルチキャリア伝送を用いているが、サブキャリア数を1と見なすことで、同様にシングルキャリア伝送への適用が可能である。
なお、以下では実施の形態3における図7(b)を用いて説明した複数アンテナ送信時の無線端末装置1cの構成と異なる部分及び、図8を用いて説明した複数の送信系列受信時のユーザ個別受信処理手段91の構成と異なる部分を説明する。それ以外の部分は実施の形態3または実施の形態4で説明したものと同様な動作を行う。また各図においては、第n番目の送信系列数M(n)=2である場合を示しているがこれに限定されない。
図20は、一次変調手段74−1〜74−M(n)の出力の変調シンボルデータ系列に対し、それぞれの予め既知の時間的空間的に変化する位相回転を与える時空間位相回転手段190が追加されており、時空間位相回転手段190により時空間位相回転された後にOFDM変調手段75に信号が入力される。
図21は、これに対応したユーザ個別受信処理手段91jの構成を示しており、無線端末装置1の送信時に時空間位相回転手段190により付加された時空間位相回転に関する情報を出力する時空間位相回転情報出力手段191と、それを用いて信号分離を行う信号分離手段192を含む点が異なる。信号分離手段192は、原理的にはMLDを用いて信号分離を行う。ただし、この場合、一次変調手段74により付与される変調マッピングが、時空間位相回転手段190により変化するため、所定の変調マッピングによる候補点に時空間位相回転情報出力手段191による位相回転を与えた候補点との信号点距離が最小となるシンボルを送信シンボル系列として出力する。
無線端末装置1jから複数の送信系列を送信する場合、それらの信号間の相関が高い場合、MMSE,ZF等の線形分離手法では、分離特性が劣化する。非線形な分離手法としてMLDがあるが、伝搬路変動をうけ、複数の送信系列の信号点間が重なってしまうとバースト誤りを生じやすくなる。そのため本構成に示すように送信時のシンボル点に対し、送受信間で予め既知の位相回転を与え、インターリーバと誤り訂正符号を併用することで、バースト誤りを低減する効果が得られる。また、本構成では、他ユーザ信号分離手段84を用いていることで、他無線端末装置1からの送信系列から除去した後に行えるため、信号点候補が削減でき演算規模を低減するという顕著な効果が得られる。