以下、本発明の参考例および実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸を図面を参照しつつ説明する。
(車両用ステアリングシャフトの全体構成)
図1は、本発明の参考例および実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸を適用した自動車の操舵機構部の側面図である。
図1において、車体側のメンバ100にアッパブラケット101とロアブラケット102とを介して取付けられたアッパステアリングシャフト部120(ステアリングコラム103と、ステアリングコラム103に回転自在に保持されたスアリングシャフト104を含む)と、ステアリングシャフト104の上端に装着されたステアリングホイール105と、ステアリングシャフト104の下端にユニバーサルジョイント106を介して連結されたロアステアリングシャフト部107と、ロアステアリングシャフト部107に操舵軸継手108を介して連結されたピニオンシャフト109と、ピニオンシャフト109に連結したステアリングラック軸112と、このステアリングラック軸112を支持して車体の別のフレーム110に弾性体111を介して固定されたステアリングラック支持部材113とから操舵機構部が構成されている。
ここで、アッパステアリングシャフト部120とロアステアリングシャフト部107が本発明の参考例又は実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸(以後、伸縮軸と記す)を用いている。ロアステアリングシャフト部107は、雄軸と雌軸とを嵌合したものであるが、このようなロアステアリングシャフト部107には自動車が走行する際に発生する軸方向の変位を吸収し、ステアリングホイール105上にその変位や振動を伝えない性能が要求される。このような性能は、車体がサブフレーム構造となっていて、操舵機構上部を固定するメンバ100とステアリングラック支持部材113が固定されているフレーム110が別体となっておりステアリングラック支持部材113がゴムなどの弾性体111を介してフレーム110に締結固定されている構造の場合に要求される。また、その他のケースとして操舵軸継手108をピニオンシャフト109に締結する際に作業者が、伸縮軸をいったん縮めてからピニオンシャフト109に嵌合させ締結させるため伸縮機能が必要とされる場合がある。さらに、操舵機構の上部にあるアッパステアリングシャフト部120も、雄軸と雌軸とを嵌合したものであるが、このようなアッパステアリングシャフト部120には、運転者が自動車を運転するのに最適なポジションを得るためにステアリングホイール105の位置を軸方向に移動し、その位置を調整する機能が要求されるため、軸方向に伸縮する機能が要求される。前述のすべての場合において、伸縮軸には嵌合部のガタ音を低減することと、ステアリングホイール105上のガタ感を低減することと、軸方向摺動時における摺動抵抗を低減することが要求される。
(第1参考例の形態)
図2は、本発明の第1参考例の形態に係るカルダン軸継手付き車両ステアリング用伸縮軸の縦断面図である。図3は、図2に示した車両ステアリング用伸縮軸の分解斜視図である。図4は、図2のIII−III線に沿った横断面図である。図5は、操舵トルクと回転角度との関係を示すグラフ(その1)である。図6は、操舵トルクと回転角度との関係を示すグラフ(その2)である。図7は、操舵トルクと回転角度との関係を示すグラフ(その3)である。
図2に示すように、車両ステアリング用伸縮軸(以後、伸縮軸と記す)は、相互に回転不能に且つ摺動自在に嵌合した雄軸1と雌軸2とからなる。
雄軸1は、ステアリングホイール側のカルダン軸継手20のヨーク21に連結してあり、雌軸2は、ステアリングギヤ側のカルダン軸継手22のヨーク23に連結してある。
図3に示すように、雄軸1の外周面には、周方向に120度間隔で等配した3対の略円弧状の軸方向溝3、4が延在して形成してある。対応して雌軸2の内周面にも、周方向に120度間隔で等配した3対の略円弧状の軸方向溝5、6が延在して形成してある。
各対において、雄軸1の略円弧状の軸方向溝3と、雌軸2の略円弧状の軸方向溝5との間に、予圧用の波形形状の板バネ9を介して、複数個のボール7(球状転動体)が転動自在に嵌合してある。なお、雄軸1の各軸方向溝3の両側には、この板バネ9を係止するための段部3aが形成してある。
雄軸1の略円弧状の軸方向溝4と、これに対応する雌軸2の略円弧状の軸方向溝6との間には、ニードルローラー8(摺動体)が摺動自在に嵌合してある。
各板バネ9は、トルク非伝達時には、ボール7とニードルローラー8を雌軸2に対してガタ付きのない程度に予圧する一方、トルク伝達時には、弾性変形してボール7を雌軸2の間で周方向に拘束する働きをするようになっている。
雄軸1の端部には、周方向溝10が形成してある。これにより、周方向溝10に、ストッパープレート11を嵌め合わせ、ニードルローラー8を軸方向溝3,4の内方側の端面との間にはさみ込む形で軸方向に固定している。軸方向溝3,4の内方側の端面は軸に対して傾斜していても、もしくはほぼ直角でも良い。
さらに、図4に示すように、板バネ9は、各々その両端部の凹部9cで雄軸1の軸方向溝3の両側の段部3aに係止してあり、これにより、トルク伝達時、板バネ9全体が周方向に移動できないようになっている。
以上のように構成した伸縮軸では、トルク非伝達時には、「転がり用」と「滑り用」にそれぞれボール7とニードルローラー8を用いていると共に、板バネ9により、ボール7を雌軸2に対してガタ付きのない程度に予圧しているため、雄軸1と雌軸2の間のガタ付きを確実に防止することができると共に、雄軸1と雌軸2は、ガタ付きのない安定した摺動荷重で軸方向に摺動することができる。
トルク伝達時には、図4に示すように、雄軸1と雌軸2の間に介装されているニードルローラー8が主なトルク伝達の役割を果たす。例えば、雄軸1からトルクが入力された場合、初期の段階では、板バネ9の予圧がかかっているため、ガタ付きはなく、板バネ9がトルクに対する反力を発生させてトルクを伝達する。この時は、雄軸1・板バネ9・ボール7・雌軸2間のトルク伝達荷重と、雄軸1・ニードルローラー8・雌軸2間のトルク伝達荷重がつりあった状態で全体的なトルク伝達がなされる。
さらにトルクが増大していくと、図4に示すように、雄軸1・ニードルローラー8・雌軸2間の回転方向の隙間は、雄軸1・板バネ9・ボール7・雌軸2間の隙間に比べて、小さく設定してあるため、ニードルローラー8は、ボール7に比べて、強く反力を受けて、ニードルローラー8が主にトルクを雌軸2に伝える。そのため、雄軸1と雌軸2の回転方向ガタを確実に防止するとともに、高剛性の状態でトルクを伝達することができる。
また、操舵トルクが所定以下の時、予圧用の各板バネ9は、予圧作用を行って低剛性特性を発揮する一方、操舵トルクが所定以上の時、各ニードルローラー8は、一対の軸方向溝4,6に周方向に係合して、高剛性特性を発揮する。
即ち、操舵トルクが所定以下の時、板バネ9は、予圧作用により、エンジンルームから伝わってくる不快な音や振動を緩衝して低減する一方、操舵トルクが上昇して所定以上の時、ニードルローラー8がそれぞれ一対の軸方向溝4,6に周方向に係合して操舵トルクを伝達できるため、キレのある操舵感を得ることができる。
従って、トルク伝達・摺動機構が緩衝機構をも兼ねることから、スペースの有効利用、部品点数削減、及び製造コストの低減を図りつつ、二段階の捩り剛性特性を備えた伸縮軸を提供することができる。
図5は、操舵トルクと回転角度との関係を示すグラフ(その1)である。この場合には、板バネ9のばね定数が高いため、予圧剛性(低剛性)域の剛性が高く、高剛性域とあまり変わらない捩り剛性を示している。緩衝機能は、あまり得られないが、低いトルク域においても高い剛性が要求される場合に適している。
図6は、操舵トルクと回転角度との関係を示すグラフ(その2)である。この場合は、板バネ9のばね定数を図5(その1)の状態より少し下げた状態であり、緩衝特性と捩り剛性の両立を図る場合に求められる特性である。
図7は、操舵トルクと回転角度との関係を示すグラフ(その3)である。この場合は、板バネ9のばね定数を図6(その2)の状態より少し下げた状態であり、さらに緩衝特性を求められる場合の特性である。
図8および図9はそれぞれ本発明の第1および第2の実施形態の横断面図であり、図10、図11はそれぞれ本発明の第1参考例に係る形態の第1、第2変形例について図4と同様な横断面図である。これらにおいては、図2〜図4に示した第1参考例の形態は板ばねを含む弾性部材の構造および形状、および弾性部材を取付ける雄軸の断面形状が異なる。
第1実施の形態を示す図8において、図2〜図4の板バネ9に対応する弾性体は板ばね部材40とゴム(または合成樹脂等の板ばね部40とは異なる材質の)弾性部材41から成る複合体として構成されている。ゴム弾性部材41は、板ばね部材40に接着固定されており、一体構造となっている。板ばね部材40はゴム弾性部材41が付加されたことによりその緩衝性能を向上させている。
板ばね部材40の折り曲げ部40cおよび40aはボール7によって押され、ばね性を発揮する。
さらに、板ばね部材40の折り曲げ部40cと40aの間にはさまれる形でゴム弾性部材41が存在するため、板ばね部材との複合作用により緩衝性能を高めている。
第2の実施形態を示す図9において、図2〜図4の板ばね9に対応する弾性体は、図8に示す弾性体からゴム弾性部材を取除いた構造である。このようにゴム弾性部材41の無い単一材料から成る場合でも、弾性体としての役割を持っている。
板ばね部材40aは、ボール7に予圧を掛ける一方、ボール7の軌道面の役割を果たしている。
第1参考例の形態の第1変形例を示す図10において、図2〜図4の板ばね9に対応する弾性体は、板ばね部材42とゴム弾性部材43とボール7との軌道面部材42aとから成る複合体である。ゴム弾性部材43は、板ばね部材42、軌道面部材42aに接着固定されており、一体構造となっている。板ばね部材42はゴム弾性部材43が付加されたことによりその緩衝性能を向上させることができる。板ばね部材42の折り曲げ部42bはゴム弾性部材43と軌道面部材42aを通じて、ボール7によって押されるため、その複合作用によって緩衝機能を高めている。軌道面部材42aは平面形状である。
第1参考例の形態の第2変形例を示す図11において、図2〜図4の板ばね9に対応する弾性体44は、第1変形例のものと類似の形状をしているが、第2変形例において、軌道面部材44aはボール7の半径に対し、5〜50%大きい半径を持っており、接触部の面積が第1変形例より大きい構造となっている。
これにより、接触部の局部面圧の上昇を抑えることができる。
緩衝性能としては、第1変形例と同様である。
(第2参考例の形態)
図12(A)は、本発明の第2参考例の形態に係るカルダン軸継手付き車両ステアリング用伸縮軸の縦断面図であり、図12(B)は、図12(A)のb−b線に沿った横断面図である。
図13(A)は、図12(A)、12(B)に示したカルダン軸継手付き車両ステアリング用伸縮軸のサブ組立の部分切欠き断面を含む側面図であり、図13(B)は、雌軸の部分切欠き断面を含む側面図であり、図13(C)は、図13(B)の雌軸を左方から視た雌軸の正面図である。
図14は、第2参考例の形態に係る操舵トルクと回転角度との関係を示すグラフである。
本参考例の形態では、雌軸2の端部とカルダン軸継手22のヨーク23との間に、内環31と外環32の間にゴム33を充填した緩衝部材30が設けてある。操舵トルクが所定以下の時、この緩衝部材30によって、エンジンルームから伝わってくる不快な音や振動を緩衝して低減できるようになっている。なお、緩衝部材30は、ラバーカップリングタイプであってもよい。
また、図12(B)及び図13(C)に示すように、ヨーク23に、切欠き34(被係合部)を形成し、雌軸2の端部に、切欠き34に係脱自在のカムフランジ35(係合部材)を設けている。なお、符号38は、塵芥浸入防止のためのキャップである。
これにより、操舵トルクが所定以下の時、カムフランジ35が切欠き34に係合せず、操舵トルクが上昇して所定以上の時には、カムフランジ35が切欠き34に係合して、操舵トルクを伝達できるため、キレのある操舵感を得ることができるようになっている。
このように、本参考例の形態によれば、操舵トルクが所定以下の時、カムフランジ35は切欠き34に係合せず、緩衝部材30は、緩衝作用を行って低剛性特性を発揮し、操舵トルクが所定の中間範囲の時、予圧用の板バネ9は、予圧作用を行って中剛性特性を発揮する一方、操舵トルクが所定以上の時、カムフランジ35は切欠き34に係合し、ニードルローラー8は、一対の軸方向溝4,6に周方向に係合して高剛性特性を発揮する。
即ち、操舵トルクが所定以下の時、カムフランジ35は切欠き34に係合せず、緩衝部材30によって、エンジンルームから伝わってくる不快な音や振動を緩衝して低減でき、操舵トルクが所定の中間範囲の時、予圧用の板バネ9は、予圧作用によって、捩り剛性を段階的に高くする一方、操舵トルクが上昇して所定以上の時、カムフランジ35は切欠き34に係合し、ニードルローラー8が一対の軸方向溝4,6に周方向に係合して操舵トルクを伝達するため、キレのある操舵感を得ることができる。
従って、伸縮軸がトルク伝達・摺動・緩衝機構を兼ね備えている場合に、別途、ヨーク側にも緩衝機構を設けることにより、三段階の捩り剛性特性を備えた伸縮軸を提供することができる。
図14は、第2参考例の形態に係る操舵トルクと回転角度との関係を示すグラフである。緩衝部材30のゴム33の剛性域により緩衝機能を発揮し、さらに高いトルク域(中剛性域)では、板バネ9により捩り剛性を段階的に高め、さらに高いトルク域(高剛性域)では、高剛性でトルクを伝達することができる。
このように、二段階の捩り剛性特性より優れた三段階の捩り剛性特性を得ることができる。よって、各車両の要求特性、スペース、コスト、に応じて自在に組み合わせることが可能であり、操舵フィーリングの向上と緩衝機能の両方を所望に設定することができる。
図15(A)は、本発明の第2参考例の形態の変形例に係るカルダン軸継手付き車両ステアリング用伸縮軸の縦断面図であり、図15(B)は、図15(A)のb−b線に沿った横断面図である。
この変形例では、緩衝部材46をヨークの外側に配置している。緩衝部材46は、内環47と外環49との間に充填されたゴム48とから成り、内環47は、その内周面がヨーク外周面に外嵌固定されており、また外環49は断面U字形状をしており、その内径部内周が雌軸2に外嵌固定されている。
本変形例によれば、弾性部材であるゴムのサイズを大きくできるので、エンジンから伝達される不快音や振動を、さらに幅広い周波数帯域で吸収することができる。
(第3参考例の形態)
図16(A)は、本発明の第3参考例の形態に係るカルダン軸継手付き車両ステアリング用伸縮軸の縦断面図であり、図16(B)は、図16(A)のb−b線に沿った横断面図である。
図17は、図16(A)、16(B)に示したカルダン軸継手付き車両ステアリング用伸縮軸の雌軸の部分切欠き断面を含む側面図である。
本参考例の形態においても、雌軸2の端部とカルダン軸継手22のヨーク23との間に、内環31と外環32の間にゴム33を充填した緩衝部材30が設けてある。操舵トルクが所定以下の時、この緩衝部材30によって、エンジンルームから伝わってくる不快な音や振動を緩衝して低減できるようになっている。
また、図16(A)及び図17に示すように、ヨーク23に、係合孔36(被係合部)を形成し、雌軸2の端部に、係合孔36に係脱自在のストッパーピン37(係合部材)を設けている。なお、符号38は、塵芥浸入防止のためのキャップである。
これにより、操舵トルクが所定以下の時、ストッパーピン37が係合孔36に係合せず、操舵トルクが上昇して所定以上の時には、ストッパーピン37が係合孔36に係合して、操舵トルクを伝達できるため、キレのある操舵感を得ることができるようになっている。
このように、本参考例の形態によれば、操舵トルクが所定以下の時、ストッパーピン37が係合孔36に係合せず、緩衝部材30によって、エンジンルームから伝わってくる不快な音や振動を緩衝して低減でき、操舵トルクが所定の中間範囲の時、予圧用の板バネ9は、予圧作用によって、捩り剛性を段階的に高くする一方、操舵トルクが上昇して所定以上の時、ストッパーピン37が係合孔36に係合し、ニードルローラー8が一対の軸方向溝4,6に周方向に係合して操舵トルクを伝達するため、キレのある操舵感を得ることができる。
従って、伸縮軸がトルク伝達・摺動・緩衝機構を兼ね備えている場合に、別途、ヨーク側にも緩衝機構を設けることにより、三段階の捩り剛性特性を備えた伸縮軸を提供することができる。
例えば、上記参考例の形態において、雄軸は、ステアリングホイール側のカルダン軸継手のヨークに連結し、雌軸をステアリングギヤ側のカルダン軸継手のヨークに連結してあるが、これと逆に雌軸を、ステアリングホイール側のカルダン軸継手のヨークに連結し、雄軸をステアリングギヤ側のカルダン軸継手のヨークに連結しても良い。
以上説明したように、上記参考例の形態によれば、トルク非伝達時には、2種類の転動体と摺動体を用いていると共に、弾性体により、転動体を雌軸に対してガタ付きのない程度に予圧しているため、雄軸と雌軸の間のガタ付きを確実に防止しながら、雄軸と雌軸は、安定した摺動荷重により軸方向に摺動することができる。
トルク伝達時、摺動体が一対の軸方向溝に周方向に係合して拘束でき、さらに、弾性体により転動体を周方向に拘束できるため、雄軸と雌軸の間の回転方向ガタ付きを確実に防止しながら、高剛性の状態でトルクを伝達することができる。
また、操舵トルクが所定以下の時、予圧用の弾性体は、予圧作用を行って低剛性特性を発揮する一方、操舵トルクが所定以上の時、摺動体は、一対の軸方向溝に周方向に係合して高剛性特性を発揮する。
即ち、操舵トルクが所定以下の時、弾性体は、予圧作用により、エンジンルームから伝わってくる不快な音や振動を緩衝して低減する一方、操舵トルクが上昇して所定以上の時、摺動体が一対の軸方向溝に周方向に係合して操舵トルクを伝達できるため、キレのある操舵感を得ることができる。
従って、トルク伝達・摺動機構が緩衝機構をも兼ねることから、スペースの有効利用、部品点数削減、及び製造コストの低減を図りつつ、二段階の捩り剛性特性を備えた伸縮軸を提供することができる。
また、上記参考例の形態によれば、操舵トルクが所定以下の時、係合部材は被係合部に係合せず、緩衝部材は、緩衝作用を行って低剛性特性を発揮し、操舵トルクが所定の中間範囲の時、予圧用の弾性体は、予圧作用を行って中剛性特性を発揮する一方、操舵トルクが所定以上の時、係合部材は被係合部に係合し、摺動体は、一対の軸方向溝に周方向に係合して高剛性特性を発揮する。
即ち、操舵トルクが所定以下の時、係合部材は被係合部に係合せず、緩衝部材によって、エンジンルームから伝わってくる不快な音や振動を緩衝して低減でき、操舵トルクが所定の中間範囲の時、予圧用の弾性体は、予圧作用によって、捩り剛性を段階的に高くする一方、操舵トルクが上昇して所定以上の時、係合部材は被係合部に係合し、摺動体が一対の軸方向溝に周方向に係合して操舵トルクを伝達するため、キレのある操舵感を得ることができる。
(第3実施の形態)
図18(A)は、本発明の第3実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の縦断面図であり、図18(B)は、弾性体である板バネの斜視図である。図19は、図18(A)のX−X線に沿った横断面図である。
図18(A)に示すように、車両ステアリング用伸縮軸(以後、伸縮軸と記す)は、相互に回転不能に且つ摺動自在に嵌合した雄軸1と雌軸2とからなる。
図19に示すように、雄軸1の外周面には、周方向に120度間隔(位相)で等配した3個の軸方向溝3が延在して形成してある。これに対応して、雌軸2の内周面にも、周方向に120度間隔(位相)で等配した3個の軸方向溝5が延在して形成してある。
雄軸1の軸方向溝3と、雌軸2の軸方向溝5との間に、両軸1,2の軸方向相対移動の際に転動する複数の剛体の球状体7(転動体、ボール)が転動自在に介装してある。なお、雌軸2の軸方向溝5は、断面略円弧状若しくはゴシックアーチ状である。
雄軸1の軸方向溝3は、傾斜した一対の平面状側面3aと、これら一対の平面状側面3aの間に平坦に形成した底面3bとから構成してある。
雄軸1の軸方向溝3と、球状体7との間には、球状体7に接触して予圧するための板バネ9が介装してある。
この板バネ9は、球状体7に2点で接触する球状体側接触部9aと、球状体側接触部9aに対して略周方向に所定間隔をおいて離間してあると共に雄軸1の軸方向溝3の平面状側面3aに接触する溝面側接触部9bと、球状体側接触部9aと溝面側接触部9bを相互に離間する方向に弾性的に付勢する付勢部9cと、軸方向溝3の底面3bに対向した底部9dと、を有している。
この付勢部9cは、略U字形状で略円弧状に折曲した折曲形状であり、この折曲形状の付勢部9cによって、球状体側接触部9aと溝面側接触部9bを相互に離間するように弾性的に付勢することができる。
図19に示すように、雄軸1の外周面には、周方向に120度間隔(位相)で等配した3個の軸方向溝4が延在して形成してある。これに対応して、雌軸2の内周面にも、周方向に120度間隔(位相)で等配した3個の軸方向溝6が延在して形成してある。
雄軸1の軸方向溝4と、雌軸2の軸方向溝6との間に、両軸1,2の軸方向相対移動の際に滑り摺動する複数の剛体の円柱体8(摺動体、ニードルローラー)が微小隙間をもって介装してある。なお、これら軸方向溝4,6は、断面略円弧状若しくはゴシックアーチ状である。
また、図18(A)に示すように、雄軸1の端部には、弾性体付ストッパープレート10が設けてあり、この弾性体付ストッパープレート10により、球状体7、円柱体8、板バネ9の脱落を防止している。
さらに、雄軸1の軸方向溝3、雌軸2の軸方向溝5、板バネ9、及び球状体7の間には、潤滑剤が塗布してあることから、トルク非伝達時(摺動時)、雄軸と雌軸は、ガタ付きのない安定した摺動荷重で軸方向に摺動することができる。
以上のように構成した伸縮軸では、雄軸1と雌軸2の間に球状体7を介装し、板バネ9により、球状体7を雌軸2に対してガタ付きのない程度に予圧してあるため、トルク非伝達時は、雄軸1と雌軸2の間のガタ付きを確実に防止することができると共に、雄軸1と雌軸2は軸方向に相対移動する際には、ガタ付きのない安定した摺動荷重で摺動することができる。
トルク伝達時には、板バネ9が弾性変形して球状体7を周方向に拘束すると共に、雄軸1と雌軸2の間に介装した3列の円柱体8が主なトルク伝達の役割を果たす。
例えば、雄軸1からトルクが入力された場合、初期の段階では、板バネ9の予圧がかかっているため、ガタ付きはなく、板バネ9がトルクに対する反力を発生させてトルクを伝達する。この時は、雄軸1・板バネ9・球状体7・雌軸2間の伝達トルクと入力トルクがつりあった状態で全体的なトルク伝達がなされる。
さらにトルクが増大していくと、円柱体8を介した雄軸1、雌軸2の回転方向のすきまがなくなり、以後のトルク増加分を、雄軸1、雌軸2を介して、円柱体8が伝達する。そのため、雄軸1と雌軸2の回転方向ガタを確実に防止するとともに、高剛性の状態でトルクを伝達することができる。
以上から、本実施形態によれば、球状体7以外に、円柱体8を設けているため、大トルク入力時、負荷量の大部分を円柱体8で支持することができる。従って、雌軸2の軸方向溝5と球状体7との接触圧力の上昇を抑えて、耐久性を向上することができると共に、大トルク負荷時には、高剛性の状態でトルクを伝達することができる。
また、円柱体8が雄軸1及び雌軸2に接触していることから、球状体7への捩りトルクを低減し、板バネ9の横滑りを抑えて、その結果、ヒステリシスが過大となることを抑えることができる。
このように、本実施形態によれば、安定した摺動荷重を実現すると共に、回転方向ガタ付きを確実に防止して、高剛性の状態でトルクを伝達することができる。
なお、球状体7は、剛体のボールが好ましい。また剛体の円柱体8は、ニードルローラーが好ましい。
円柱体(以後、ニードルローラーと記す)8は、線接触でその荷重を受けるため、点接触で荷重を受けるボールよりも接触圧を低く抑えることができるなど、さまざまな効果がある。したがって、全列をボール転がり構造とした場合よりも下記の項目が優れている。
・摺動部での減衰能効果が、ボール転がり構造に比べて大きい。よって振動吸収性能が高い。
・ニードルローラーが雄軸と雌軸に微小に接触していることにより、摺動荷重変動幅を低く抑えることができ、その変動による振動がステアリングまで伝わらない。
・同じトルクを伝達するならば、ニードルローラーの方が接触圧を低く抑えることができるため、軸方向の長さを短くできスペースを有効に使うことができる。
・同じトルクを伝達するならば、ニードルローラーの方が接触圧を低く抑えることができるため、熱処理等によって雌軸の軸方向溝表面を硬化させるための追加工程が不要である。
・部品点数を少なくすることができる。
・組立性をよくすることができる。
・組立コストを抑えることができる。
このようにニードルローラーは、雄軸1と雌軸2の間のトルク伝達のためのキーの役割をするとともに、雌軸2の内周面とすべり接触する。ニードルローラーの使用が従来のスプライン嵌合と比較して、優れている点は下記のとおりである。
・ニードルローラーは大量生産品であり、非常に低コストである。
・ニードルローラーは熱処理後、研磨されているので、表面硬度が高く、耐摩耗性に優れている。
・ニードルローラーは研磨されているので、表面粗さがきめ細かく摺動時の摩擦係数が低いため、摺動荷重を低く抑えることができる。
・使用条件に応じて、ニードルローラーの長さや配置を変えることができるため、設計思想を変えること無く、さまざまなアプリケーションに対応することができる。
・使用条件によっては、摺動時の摩擦係数をさらに下げなければならない場合がある、この時ニードルローラだけに表面処理をすればその摺動特性を変えることができるため、設計思想を変えること無く、さまざまなアプリケーションに対応することができる。
・ニードルローラーの外径違い品を安価に数ミクロン単位で製造することができるため、ニードルローラー径を選択することによって雄軸・ニードルローラー・雌軸間のすきまを最小限に抑えることができる。よって軸の捩り方向の剛性を向上させることが容易である。
次に、独国特許DE3730393C2号公報と本第3実施の形態とを比較して、検討する。
図20は、本発明の第3実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の拡大部分断面図であり、トルク非伝達時を示す。
図21は、本発明の第3実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の拡大部分断面図であり、トルク伝達時を示す。
図37は、独国特許DE3730393C2号公報に係る車両ステアリング用伸縮軸の拡大部分断面図であり、トルク非伝達時を示す。
図38は、独国特許DE3730393C2号公報に係る車両ステアリング用伸縮軸の拡大部分断面図であり、トルク伝達時を示す。
図37に示す独国特許DE3730393C2号公報において、トルク非伝達時(トルクのバランスが左右でとれている状態を含む)、雄軸・ボール・雌軸の間に予圧を発生させるため、板バネは、その曲率と軸方向溝の曲率とを変えて介装している。しかし、この状態では、雄軸と板バネの接触点と、ボールと板バネの接触点との接触点間距離(L1)が非常に小さく、かつ、隙間(ΔS2:撓み量)が小さいため、板バネとボールとの接触点に過大な荷重が発生して、板バネには、高い応力が発生する。
図38に示す独国特許DE3730393C2号公報において、トルクが負荷されると、板バネの撓みにより、接触点間距離(L1)が徐々に小さくなる。L1は、トルクが増すにつれて零に近づき、接触点にかかる荷重は、トルクに比例して増大し、板バネに発生する応力は、さらに高くなってしまう。この状態が繰り返し発生することにより、トルク伝達部の寿命を長く保つことができない虞れがある。
これに対して、図20及び図21に示す本第3実施の形態では、板バネ9は、その球状体側接触部9aが付勢部9cを介して十分に撓むことができ、撓み量を十分に確保することができる。
また、球状体7以外に、円柱体8を備えていることから、トルク伝達時には、円柱体8の方が板バネ9に過大な負荷(応力)がかかるより先に雄軸1と雌軸2の軸方向溝4,6に接触し、円柱体8が主としてトルクを伝達することができるため、球状体7及び板バネ9には、過大な負荷(応力)がかかることがない。
このように、板バネ9は、撓み量を十分に確保することができると共に、球状体7及び板バネ9には、過大な負荷(応力)がかかることがないことから、トルク伝達時に、球状体7と板バネ9の接触部に発生する応力を緩和することができ、これにより、高い応力が発生することがなく、永久変形による「へたり」を防止して、長期にわたり予圧性能を維持することができる。
なお、図20において、トルク非伝達時には、円柱体8と、雄軸1の軸方向溝4との間、並びに、円柱体8と、雌軸2の軸方向溝6との間には、微小隙間が存在しているが、接触はしている。
図37及び図38に示す独国特許DE3730393C2号公報において、板バネの配置してある雄軸の軸方向溝の断面形状は、曲率を持った円弧形状であり、板バネも、曲率を持った円弧形状であり、それぞれの曲率を変えることで、板バネにバネ性を持たせている。そのため、板バネと雄軸との接触点は、図37に示すように、雄軸の角部になる。従って、図38に示すように、トルクが負荷された場合、板バネ全体が横滑りし、伝達トルクの低下を招いたり、ヒステリシスが過大に発生したりする。
これに対して、図20及び図21に示す本第3実施の形態では、雄軸1の軸方向溝3は、平面で構成されている。軸方向溝3の中心線は、雄軸1の中心点に向かっており、軸方向溝3の中心から左右対称のくさび形状をなしている。くさびの角度(接触角)は、軸方向溝3の中心に対して、40〜70度が好ましい。これにより、軸方向溝3のくさび面に板バネ9がしっかり固定されるため、トルクが負荷された際に、板バネ9全体が横滑りを起こし難いことから、伝達トルクの低下を招くことがなく、また、ヒステリシスが過大に発生することを防止することができる。
図37及び図38に示す独国特許DE3730393C2号公報において、トルクを負荷していない時、雄軸・球状体・板バネ・雌軸の間では、その接触点が同一線上にないことから、トルクを負荷するに従って、接触角が変化してしまい、その結果、ステアリングシャフトに必要なリニアな捩り特性を得ることができないだけでなく、適正なヒステリシスをも得ることができない虞れがある。
これに対して、図20及び図21に示す本第3実施の形態では、トルクの負荷状態に拘わらず、雄軸1・球状体7・板バネ9・雌軸2の間では、その接触点が同一線上に留まることから、接触角が変化することがなく、これにより、ステアリングシャフトに必要なリニアな捩り特性を得ることができ、リニアで高剛性感のある操舵特性を得ることができる。
次に、図22(A)、22(B)、22(C)は、夫々、本発明の第3及び第5実施の形態ならびに第6参考例で使用する板バネの撓み状態を示す模式図である。
図39(A)、39(B)は、夫々、独国特許DE3730393C2号公報で使用する板バネの撓み状態を示す模式図である。
図39(A)、39(B)は、独国特許DE3730393C2号公報で示された板バネを単純化したモデルであり、図39(A)では、トルクを負荷していない状態で、適度な予圧が負荷されることを望んだ状態であるが、板バネと軸方向溝との距離(C2)分がバネとしての予圧を発生できるだけのストロークとなる。図39(B)では、さらに荷重(F1)が2点で負荷されると、板バネが撓み、やがて軸方向溝の側面と接触してしまう。これにより、全トルクをボールと接触する点で受けなければならない。従って、板バネは、その撓み量(ΔS2)を大きくとることができず、ステアリングシャフトとして必要な寿命を有することが困難と推察される。なお、C2≦ΔS2である。
これに対して、図22(A)に示す本発明の第3実施の形態では、板バネ9の球状体側接触部9aと溝面側接触部9bとの間隔は、(C1)に設定してあり、この状態で、荷重(F1)が(球状体側接触部9aに相当する)2点で負荷されると、弾性体は、十分に撓むことができ、十分な撓み量(ΔS1)を確保することができる。従って、永久変形による「へたり」を防止して、長期にわたり予圧性能を維持することができる。なお、C1>ΔS1である。
図22(B)に示す本発明の後述する第5実施の形態では、板バネ9の球状体側接触部9aと溝面側接触部9bとの間隔は、(C1)に設定してあり、この状態で、荷重(F1)が(球状体側接触部9aに相当する)2点で負荷されると、弾性体は、十分に撓むことができ、十分な撓み量(ΔS1)を確保することができる。従って、永久変形による「へたり」を防止して、長期にわたり予圧性能を維持することができる。なお、C1>ΔS1である。
図22(C)に示す本発明の後述する第6参考例では、板バネ9の球状体側接触部9aと溝面側接触部9bとの間隔は、(C1)に設定してあり、付勢部9cは、ゴム、合成樹脂等から形成してある。この状態で、荷重(F1)が(球状体側接触部9aに相当する)2点で負荷されると、弾性体は、十分に撓むことができ、十分な撓み量(ΔS1)を確保することができる。従って、永久変形による「へたり」を防止して、長期にわたり予圧性能を維持することができる。なお、C1>ΔS1である。
次に、上記のように、トルクが負荷された際に、板バネ9の全体は、横滑りを起こし難いように構成しているが、板バネ9の底部9dは、軸方向溝3の底面3bに対して若干横ずれすることができるようになっている。
即ち、板バネ9は、本第3実施の形態のように、その底部9dを軸方向溝3の底面3bに接触状態にするか、又は、後述する第2実施の形態のように、軸方向溝3の底面3bとの間隔を所定間隔に設定している。
従って、軸方向溝3の底面3bに、板バネ9の底部9dを必要に応じて接触させることにより、ヒステリシスをコントロールすることができ、所望のヒステリシスを得ることができる。
即ち、ヒステリシスは、各車両の操舵性能とのマッチングによって種々変える必要がある。具体的には、軸方向溝3の底面3bに、板バネ9の底部9dを接触状態に設定している場合には、軸方向溝3と板バネ9が相対的に移動した際にフリクションが発生し、ヒステリシスを比較的大きく設定することができる。一方、軸方向溝3の底面3bと、板バネ9の底部9dの間隔を所定間隔に設定している場合には、軸方向溝3と板バネ9が相対的に移動した際にフリクションが発生することがなく、ヒステリシスを比較的小さく設定することができる。
(第4実施の形態)
図23は、本発明の第4実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第4実施の形態は、上述した第3実施の形態と略同様であり、軸方向溝3の底面3bと、板バネ9の底部9dの間隔を所定間隔に離間して設定している。
従って、この場合には、上述したように、ヒステリシスをコントロールすることができ、軸方向溝3と板バネ9が相対的に移動した際にフリクションが発生することがなく、ヒステリシスを比較的小さく設定することができる。
(第5実施の形態)
図24は、本発明の第5実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第5実施の形態は、上述した第4実施の形態と略同様であり、板バネ9において、球状体側接触部9aは、板バネ9の折り返し端部に構成してあり、溝面側接触部9bは、板バネ9の折り返しの中間部に構成してある。
また、上述した第4実施の形態と同様に、軸方向溝3の底面3bと、板バネ9の底部9dの間隔を所定間隔に離間して設定している。
(第6実施の形態)
図25は、本発明の第6実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第6実施の形態は、上述した第3実施の形態と略同様であり、板バネ9において、球状体側接触部9aには、溝面側接触部9bに向けて突出した突起部9eが形成してある。
これにより、球状体側接触部9aは、4点で球状体7に接触することができ、板バネ9と球状体7との接触点の荷重を軽減することができ、応力を緩和することができる。
また、軸方向溝3の底面3bに、板バネ9の底部9dを接触状態に設定している。この場合には、上述したように、ヒステリシスをコントロールすることができ、軸方向溝3と板バネ9が相対的に移動した際にフリクションが発生し、ヒステリシスを比較的大きく設定することができる。
(第7実施の形態)
図26は、本発明の第7実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第7実施の形態は、上述した第6実施の形態と略同様であり、軸方向溝3の底面3bと、板バネ9の底部9dの間隔を所定間隔に離間して設定している。
従って、この場合には、上述したように、ヒステリシスをコントロールすることができ、軸方向溝3と板バネ9が相対的に移動した際にフリクションが発生することがなく、ヒステリシスを比較的小さく設定することができる。
(第8実施の形態)
図27は、本発明の第8実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第8実施の形態は、上述した第3実施の形態と略同様であり、板バネ9において、溝面側接触部9bは、その先端部を内側に折り返して、球状体側接触部9aに接触させている。
これにより、板バネ9の剛性を増大することができ、捩り剛性を向上することができる。
(第9実施の形態)
図28は、本発明の第9実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第9実施の形態は、上述した第8実施の形態と略同様であり、軸方向溝3の底面3bと、板バネ9の底部9dの間隔を所定間隔に離間して設定している。
従って、この場合には、上述したように、ヒステリシスをコントロールすることができ、軸方向溝3と板バネ9が相対的に移動した際にフリクションが発生することがなく、ヒステリシスを比較的小さく設定することができる。
(第10実施の形態)
図29は、本発明の第10実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第10実施の形態は、上述した第5実施の形態と略同様であり、板バネ9において、球状体側接触部9aは、板バネ9の折り返し端部側に構成してあり、溝面側接触部9bは、板バネ9の折り返しの中間部に構成してある。この場合にも、上述した第5実施の形態と同様の作用・効果を発揮することができる。
板バネ9において、球状体側接触部9aは、その先端部を外側に折り返して、溝面側接触部9bに接触させている。これにより、板バネ9の剛性を増大することができ、捩り剛性を向上することができる。
(第4参考例)
図31は、本発明の第4参考例に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第4参考例は、上述した第3実施の形態と略同様であり、板バネ9において、折曲形状の付勢部9cを廃止し、一対の球状体側接触部9aは、略U字形状に折り曲げた内側板9fからなり、一対の溝面側接触部9bは、略U字形状に折り曲げた外側板9gからなる。これら内側板9fの平面部と、外側板9gの平面部との間に、ゴム又は合成樹脂等の異なる弾性材料からなる付勢部9hが介装してある。
また、内側板9fの底平面部と外側板9gの底平面部の間にはすきまがなく、接触状態に設定している。この場合には、ヒステリシスをコントロールすることができ、内側板9fと外側板9gが相対的に移動した際にフリクションが発生し、ヒステリシスを比較的大きく設定することができる。
(第5参考例)
図30は、本発明の第5参考例に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第5参考例は、上述した第4参考例と略同様であり、内側板9fの底平面部と外側板9gの底平面部との間にはわずかなすきまがあり、非接触状態に設定している。この場合には、ヒステリシスをコントロールすることができ、内側板9fと外側板9gが相対的に移動した際にフリクションが発生することがなく、ヒステリシスを比較的小さく設定することができる。
(第11実施の形態)
図32は、本発明の第11実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第11実施の形態は、上述した第3実施の形態と略同様であり、板バネ9において、球状体側接触部9aと、溝面側接触部9bとの間に、ゴム又は合成樹脂等の異なる弾性材料からなる第2付勢部9jが介装してある。
これにより、板バネ9本体が持つ弾性に異なる弾性材料が持つ弾性を付加することにより、より高い捩り剛性を得ることができる。
(第12実施の形態)
図33は、本発明の第12実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第12実施の形態は、上述した第4実施の形態と略同様であり、板バネ9において、球状体側接触部9aと、溝面側接触部9bとの間に、ゴム又は合成樹脂等の異なる弾性材料からなる第2付勢部9jが介装してある。
これにより、板バネ9本体が持つ弾性に異なる弾性材料が持つ弾性を付加することにより、より高い捩り剛性を得ることができる。
(第13実施の形態)
図34は、本発明の第第13実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第第13実施の形態は、上述した第5実施の形態と略同様であり、板バネ9において、球状体側接触部9aと、溝面側接触部9bとの間に、ゴム又は合成樹脂等の異なる弾性材料からなる第2付勢部9jが介装してある。
これにより、板バネ9本体が持つ弾性に異なる弾性材料が持つ弾性を付加することにより、より高い捩り剛性を得ることができる。
(第6参考例)
図35は、本発明の第6参考例に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第6参考例は、上述した第4又は第5参考例と略同様であり、板バネ9において、一対の球状体側接触部9aは、内側板が2枚の板から構成してあり、一対の溝面側接触部9bは、略U字形状に折り曲げた外側板9gからなる。これらの間に、ゴム又は合成樹脂等の異なる弾性材料からなる付勢部9hが介装してある。
これにより、材料そのものが持つ弾性を生かすことができ、特に低捩り剛性が求められる場合にその特性を発揮することができる。
(第14実施の形態)
図36は、本発明の第14実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の横断面図である(図18(A)のX−X線に沿った横断面図に相当)。
本第14実施の形態は、上述した第3実施の形態において、板バネ9を雌軸2側に設けたものである。
雌軸2の軸方向溝5は、傾斜した一対の平面状側面5aと、これら一対の平面状側面5aの間に平坦に形成した底面5bとから構成してある。
雌軸2の軸方向溝5と、球状体7との間には、球状体7に接触して予圧するための板バネ9が介装してある。
この板バネ9は、球状体7に2点で接触する球状体側接触部9aと、球状体側接触部9aに対して略周方向に所定間隔をおいて離間してあると共に雌軸2の軸方向溝5の平面状側面5aに接触する溝面側接触部9bと、球状体側接触部9aと溝面側接触部9bを相互に離間する方向に弾性的に付勢する付勢部9cと、軸方向溝5の底面5bに対向した底部9dと、を有している。
この付勢部9cは、略U字形状で略円弧状に折曲した折曲形状であり、この折曲形状の付勢部9cによって、球状体側接触部9aと溝面側接触部9bを相互に離間するように弾性的に付勢することができる。
このように、第3実施の形態に対して、板バネ9の配置を逆転しても、同様の作用・効果を発揮することができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。
以上説明したように、本発明の第1−14実施形態によれば、弾性体は、第1トルク伝達部材に接触する伝達部材側接触部と、この伝達部材側接触部に対して、略周方向に所定間隔をおいて離間してあると共に、雄軸又は雌軸の第1軸方向溝の溝面に接触する溝面側接触部と、伝達部材側接触部と溝面側接触部との間で折曲した折曲形状をしており伝達部材側接触部と溝面側接触部を相互に離間する方向に弾性的に付勢する付勢部と、を有している。従って、弾性体は、その伝達部材側接触部が付勢部を介して十分に撓むことができ、撓み量を十分に確保することができる。
また、第1トルク伝達部材以外に、第2トルク伝達部材を備えていることから、トルク伝達時には、第2トルク伝達部材の方が弾性体に過大な負荷(応力)がかかるより先に雄軸と雌軸の第2軸方向溝に接触し、第2トルク伝達部材が主としてトルクを伝達することができるため、第1トルク伝達部材及び弾性体には、過大な負荷(応力)がかかることがない。
さらに、弾性体は、上記のように、撓み量を十分に確保することができると共に、第1トルク伝達部材及び弾性体には、過大な負荷(応力)がかかることがないことから、トルク伝達時に、第1トルク伝達部材と弾性体との接触部に発生する応力を緩和することができ、これにより、高い応力が発生することがなく、永久変形による「へたり」を防止して、長期にわたり予圧性能を維持することができる。
さらに、弾性体は、その伝達部材側接触部が第1トルク伝達部材に接触していると共に、その溝面側接触部が第1軸方向溝の溝面に接触していることから、弾性体は、第1軸方向溝に嵌り合うような状態になっている。従って、トルク伝達時に、弾性体全体が軸方向溝から周方向に横滑りし難くなることから、伝達トルクの低下を招くことがなく、また、ヒステリシスが過大になることを防止することができる。
さらに、トルクの負荷状態に拘わらず、雄軸・球状体・弾性体・雌軸の間では、その接触点が同一線上に留まることから、接触角が変化することがなく、これにより、ステアリングシャフトに必要なリニアな捩り特性を得ることができ、リニアで高剛性感のある操舵特性を得ることができる。
なお、雄軸、雌軸、及び弾性体の製造誤差は、弾性体の弾性変形により吸収することができるため、公差を大きくすることができ、低コスト化を図ることができる。
以上から、本発明の第1−第14実施形態によれば、弾性体に発生する応力を軽減することにより、弾性体の「へたり」を防止し、長期にわたって求める予圧性能を維持することができる。また、寸法精度を厳しくする必要がなく、低コストを実現することができる。さらに、弾性体と軸方向溝とのフリクションをコントロールすることができる構造なので、求められる操舵性能を容易に得ることができる。