≪電気泳動表示装置用シート≫
本発明の電気泳動表示装置用シート(以下「本発明の表示シート」または単に「表示シート」ということがある。)は、2枚の電極フィルムの導電層間に電気泳動表示装置用マイクロカプセル(以下、単に「マイクロカプセル」ということがある。)とバインダー樹脂とを含むデータ表示層を有する電気泳動表示装置用シートであって、該バインダー樹脂の重量平均分子量が40,000以上、300,000以下であり、ガラス転移温度が−50℃以上、10℃以下であることを特徴とする。
以下、本発明の表示シートについて詳しく説明するが、本発明の表示シートは下記の説明に拘束されることはなく、下記に例示した事項以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
<バインダー樹脂>
本発明の表示シートにおいて、バインダー樹脂は、重量平均分子量が40,000以上、300,000以下であり、ガラス転移温度が−50℃以上、10℃以下である。
通常、電気泳動表示装置を作製する場合、表示部分において、データ表示層中のマイクロカプセルに含まれる電気泳動粒子がすべて同じように電気泳動すれば、コントラストが高くなると考えられる。それゆえ、高いコントラストを得るには、マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含むデータ表示層を、マイクロカプセルができる限り単層に配列するように形成することが必要である。
重量平均分子量が100万を超える高分子量ポリマーをバインダー樹脂に用いた場合には、データ表示層上に他方の電極フィルムの導電層を重ね合わせてラミネートする工程において、マイクロカプセルが破壊されない程度までラミネート圧力や温度を高くしても、一方の電極フィルムの導電層上に塗工液を塗工・乾燥させた状態からマイクロカプセルがほとんど移動できず、マイクロカプセルが厚さ方向に積層された状態のままであり、高いコントラストを得ることが困難であった。また、高分子量ポリマーから構成されるバインダー樹脂を用いた場合には、一方の電極フィルムの導電層上に塗工液を塗工・乾燥してデータ表示層を形成する際に、マイクロカプセルができる限り単層に配列するように工夫する必要があるので、データ表示層を形成する際の作業性や生産性が低下するという問題があった。
本発明者らの研究によれば、比較的低分子量であり、所定の範囲内のガラス転移温度を有するバインダー樹脂を用いた場合には、一方の電極フィルムの導電層上にマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含むデータ表示層を形成し、その上に他方の電極フィルムの導電層を重ね合わせてラミネートする際に、マイクロカプセルがデータ表示層中を移動できるようになり、一方の電極フィルムの導電層上に塗工液を塗工・乾燥してデータ表示層を形成する際に、マイクロカプセルができる限り単層に配列するように工夫しなくても、上記のラミネート時に、マイクロカプセルを破壊することなく、2枚の対向する電極フィルムの導電層間にほぼ単層に配列させることが可能になった。これにより、データ表示層の形成時に塗工液の塗工条件を幅広く設定することができ、作業性や生産性が向上すると共に、初期コントラストが高く、かつコントラストの経時変化が小さい電気泳動表示装置用シートを簡便に効率よく製造することができるようになった。
バインダー樹脂の重量平均分子量は、その下限が通常は40,000、好ましくは45,000、より好ましくは50,000であり、また、その上限が通常は300,000、好ましくは250,000、より好ましくは200,000である。バインダー樹脂の重量平均分子量が40,000未満であると、電極フィルムとデータ表示層との密着性が低下することがある。逆に、バインダー樹脂の分子量が300,000を超えると、ラミネート時にマイクロカプセルがデータ表示層中を移動しにくく、ほぼ単層に配列することが困難になるので、コントラストが低下することがある。なお、バインダー樹脂の重量平均分子量は、下記の実施例に説明する方法で測定した値である。
バインダー樹脂のガラス転移温度は、その下限が通常は−50℃、好ましくは−45℃、さらに好ましくは−40℃であり、また、その上限が通常は10℃、好ましくは5℃、より好ましくは0℃である。バインダー樹脂のガラス転移温度が−50℃未満であると、電極フィルムとデータ表示層との密着性が低下することがある。逆に、バインダー樹脂のガラス転移温度が10℃を超えると、ラミネート時にマイクロカプセルがデータ表示層中を移動しにくく、ほぼ単層に配列することが困難になるので、コントラストが低下することがある。なお、バインダー樹脂のガラス転移温度は、下記の実施例に説明する方法で測定した値である。
バインダー樹脂は、好ましくは、水酸基を有するポリマーである。バインダー樹脂として、水酸基を有するポリマーを用いた場合には、マイクロカプセルと電極フィルムの導電層との親和性が高くなり、電極フィルムの導電層上に塗工液を塗工する際に、より均一な塗工膜を形成することができる。バインダー樹脂の水酸基価は、その下限が好ましくは0mgKOH/g、より好ましくは25mgKOH/g、さらに好ましくは50mgKOH/gであり、また、その上限が好ましくは400mgKOH/g、より好ましくは380mgKOH/g、さらに好ましくは350mgKOH/gである。バインダー樹脂の水酸基価が400mgKOH/gを超えると、バインダー樹脂の吸湿性が高くなり、コントラストの経時変化が大きくなることがある。なお、バインダー樹脂の水酸基価は、下記の実施例に説明した方法で測定した値である。
バインダー樹脂としては、重量平均分子量が40,000以上、300,000以下であり、ガラス転移温度が−50℃以上、10℃以下である限り、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーン系樹脂、シリコーンアルキド系樹脂、シリコーンウレタン系樹脂、シリコーンポリエステル系樹脂などの合成樹脂バインダー;エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタンジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの合成ゴムまたは天然ゴムバインダー;硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの熱可塑性または熱硬化性高分子バインダー;などが挙げられる。なお、合成樹脂バインダーは、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの硬化性樹脂でもよい。これらのバインダー樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのバインダー樹脂のうち、マイクロカプセルの分散性が比較的良好であり、さらに電極フィルムとデータ表示層との密着性に優れる点で、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂が好適であり、(メタ)アクリル系樹脂が特に好適である。
バインダー樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である場合、使用できる共重合可能な不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有不飽和単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルリン酸などの酸性リン酸エステル系不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシアクリレート(商品名「プラクセルFシリーズ」、ダイセル化学工業(株)製)、カプロラクトン変性ヒドロキシメタクリレート(商品名「プラクセルFMシリーズ」、ダイセル化学工業(株)製)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有不飽和単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、チシル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート硫酸塩、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどの窒素含有不飽和単量体;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチルメタクリレートなどのケイ素含有不飽和単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの2個の重合性二重結合を有する不飽和単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタドデカフルオロデシルアクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレートなどのハロゲン含有不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族不飽和単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、2,2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−クロルエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和シアン化合物;などが挙げられる。これらの不飽和単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記の不飽和単量体からなる単量体組成物を共重合させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、溶液重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合などの重合方法により、重合条件を適宜設定して行えばよい。また、重合開始剤、重合禁止剤、還元剤などの添加剤、溶媒の有無や使用量なども適宜設定して行えばよい。
溶液重合法を用いて単量体組成物を共重合させる場合に使用できる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、その他の芳香族系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶媒;などの有機溶媒や水などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、溶媒の使用量は、生成物の濃度などを考慮して適宜設定すればよい。
また、重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの通常のラジカル重合開始剤が挙げられる。重合開始剤の使用量は、要求されるポリマーの特性値などから適宜決定されるべきものであり、特に限定されるものでないが、単量体成分全量に対して、好ましくは0.01質量%以上、50質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上、20質量%以下の範囲内である。
さらに、必要に応じて、分子量を調整する目的で、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、四塩化炭素などの連鎖移動剤や調節剤を用いてもよい。連鎖移動剤や調節剤の使用量は、要求されるポリマーの分子量などから適宜決定されるべきものであり、特に限定されるものではないが、単量体成分全量に対して、好ましくは0.01質量%以上、10質量%以下、より好ましくは0.02質量%以上、5質量%以下の範囲内である。
反応温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは室温以上、200℃以下、より好ましくは40℃以上、140℃以下である。なお、反応時間は、単量体組成物の組成や重合開始剤の種類などに応じて、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。
また、乳化重合法を用いて単量体組成物を共重合させる場合に使用できる乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、分子中に1個以上の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する重合性界面活性剤などが挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェートなどのアルカリ金属アルキルサルフェート類;アンモニウムドデシルサルフェートなどのアンモニウムアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、ナトリウムスルホシノエート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩類;スルホン化パラフィンのアンモニウム塩などのアルキルスルホネート類;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテートなどの脂肪酸塩類;などが挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェートなどのアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;などが挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレートなどの脂肪酸モノグリセライド類;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体、エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸との縮合生成物;などが挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
高分子界面活性剤としては、特に限定されものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、これらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体または他の単量体との共重合体、クラウンエーテル類などの相関移動触媒などが挙げられる。これらの高分子界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
重合性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、プロペニル−2−エチルヘキシルベンゼンスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸アンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルのリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;などが挙げられる。これらの重合性界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、単量体成分全量に対して、好ましくは0.1質量%以上、50質量%以下、より好ましくは1質量%以上、10質量%以下の範囲内である。
また、乳化重合法で用いられる重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)などのアゾ系化合物;過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの過酸化物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いも2種以上を併用してもよい。さらに、分子量を所定の値に制御するために、還元剤として、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸などのレドックス系開始剤を用いてもよい。
バインダー樹脂がポリエステル系樹脂である場合、ポリエステル系樹脂は、主として、多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得ることができる。
ポリエステル系樹脂に用いる多価カルボン酸類としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸などの芳香族多価カルボン酸;マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、メチルメジック酸などの脂環式ジカルボン酸;これらカルボン酸の無水物や低級アルキルエステル;などが挙げられる。これらの多価カルボン酸類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリエステル系樹脂に用いる多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブテンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどのアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのアルキレンエーテルグリコール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂肪族多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;ビスフェノール類のアルキレンオキサイド;などが挙げられる。これらの多価アルコール類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、分子量の調整や反応の制御を目的として、モノカルボン酸類やモノアルコール類を、必要に応じて、用いてもよい。モノカルボン酸類としては、例えば、安息香酸、パラオキシ安息香酸、トルエンカルボン酸、サリチル酸、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸などが挙げられる。モノアルコール類としては、例えば、ベンジルアルコール、トルエン−4−メタノール、シクロヘキサンメタノールなどが挙げられる。これらのモノカルボン酸類やモノアルコール類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリエステル系樹脂は、これらの原料を用いて通常の方法で製造される。例えば、アルコール成分と酸成分とを所定の割合で反応器に仕込み、窒素などの不活性ガスを吹き込みながら、触媒の存在下、150〜190℃の温度で反応を開始する。副生する低分子量化合物は、連続的に反応系外へ除去される。その後、さらに反応温度を210〜250℃に上げて反応を促進し、目的とするポリエステル系樹脂を得る。反応は、常圧、減圧、加圧のいずれの条件下でも行うことができる。
上記の触媒としては、例えば、スズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウムなどの金属およびその化合物などが挙げられる。これらの触媒は、単独で用いも2種以上を併用してもよい。
バインダー樹脂がウレタン系樹脂である場合、ウレタン系樹脂は、主として、多価アルコール類とジイソシアネート類との反応により得ることできる。
ウレタン系樹脂に用いる多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブテンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどのアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのアルキレンエーテルグリコール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂肪族多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;ビスフェノール類のアルキレンオキサイド;トリメチロールプロパンなどの低分子ポリオールに、プロピレンオキサイドを付加重合させて得られるか、あるいは、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを付加重合させて得られる、通常「PPG」と略称されるもの;ポリオキシテトラメチレングリコール;ポリカプロラクトンポリオール;ポリエステルポリオール;などが挙げられる。これらの多価アルコール類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ウレタン系樹脂に用いるジイソシアネート類としては、例えば、各種異性体や混合物を含むトリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ジイソシアネート類;などが挙げられる。これらのジイソシアネート類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ウレタン系樹脂は、これらの原料を用いて通常の方法で製造される。例えば、アルコール成分とイソシアネート成分とを所定の割合で反応器に仕込み、窒素などの不活性ガスを吹き込みながら、触媒の存在下、室温〜150℃の温度で反応させる。
上記の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンなどのアミン類;N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのモルホリン化合物類;ジブチルスズジラウレート、オクチル酸鉛、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどの有機金属化合物類;などが挙げられる。これらの触媒は、単独で用いも2種以上を併用してもよい。
バインダー樹脂の形態としては、特に限定されるものではないが、例えば、溶剤可溶型、水溶性型、エマルション型および分散型(水、有機溶剤などの任意の分散媒)などが挙げられる。バインダー樹脂を溶解または分散させる場合に使用できる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、その他の芳香族系溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶媒;などの有機溶媒や水などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの溶媒のうち、マイクロカプセルの内容物に含まれる溶媒が滲出しにくい点で、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低分子量アルコール系溶媒および水が好適である。なお、バインダー樹脂に使用する溶媒がバインダー樹脂を合成する際に使用した溶媒と異なる場合には、例えば、蒸留法を用いる方法や、不溶性溶媒によるバインダー樹脂の析出および所定の溶媒への再溶解を行う方法など、従来公知の方法により溶媒置換を行えばよい。
また、バインダー樹脂を上記の溶媒に分散させる方法としては、例えば、自己分散法、強制分散法などの従来公知の方法を用いることができる。強制分散法に使用できる界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの界面活性剤の具体例としては、乳化重合法に使用できる界面活性剤として列挙した上記のような界面活性剤が挙げられる。
さらに、バインダー樹脂には、使用した単量体成分ができる限り残存していないことが好ましい。バインダー樹脂に単量体成分が残存していると、電極フィルムとデータ表示層との密着性が低下したり、マイクロカプセル中へ単量体成分が滲入して電気泳動性が低下したりすることがある。バインダー樹脂に含まれる残存単量体濃度としては、好ましくは5,000ppm以下、より好ましくは2,000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。なお、残存単量体濃度の下限は0ppmである。ここで、残存単量体濃度は、バインダー樹脂の固形分中に残存する全種類の単量体の合計濃度(質量基準)を意味し、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーなどの従来公知の方法で測定することができる。
<マイクロカプセル>
本発明の表示シートにおいて、マイクロカプセルは、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液が殻体に内包されている。
(電気泳動粒子)
一般に、電気泳動表示には、分散液中の溶媒の色と電気泳動粒子の色とのコントラストで表示する方法と、分散液中の少なくとも2種類の電気泳動粒子の互いの色のコントラストで表示する方法とがある。
分散液に用いる電気泳動粒子は、電気泳動性を有する固体粒子、すなわち分散液中で正または負の極性を示す着色粒子であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、顔料粒子が用いられる。あるいは、染料で着色したポリマー粒子や顔料を含有させたポリマー粒子を用いてもよい。これらの固体粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの固体粒子のうち、顔料粒子が好適である。なお、電気泳動粒子として、分散液中で電気泳動性を有しない固体粒子を用いる場合には、従来公知の方法で電気泳動性を付与すればよい。あるいは、分散液中で電気泳動性を有する固体粒子と電気泳動性を有しない固体粒子とを併用してもよい。
電気泳動粒子に用いる顔料粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、白色系では、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、亜鉛華などの無機顔料;黄色系では、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、クロムイエロー、黄鉛などの無機顔料や、ファーストイエローなどの不溶性アゾ化合物類、クロモフタルイエローなどの縮合アゾ化合物類、ベンズイミダゾロンアゾイエローなどのアゾ錯塩類、フラバンスイエローなどの縮合多環類、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、ニトロ化合物、ピグメントイエローなどの有機顔料;橙色系では、モリブデートオレンジなどの無機顔料や、ベンズイミダゾロンアゾオレンジなどのアゾ錯塩類、ベリノンオレンジなどの縮合多環類などの有機顔料;赤色系では、ベンガラ、カドミウムレッドなどの無機顔料や、マダレーキなどの染色レーキ類、レーキレッドなどの溶解性アゾ化合物類、ナフトールレッドなどの不溶性アゾ化合物類、クロモフタルスカーレッドなどの縮合アゾ化合物類、チオインジゴボルドーなどの縮合多環類、シンカシヤレッドY、ホスタパームレッドなどのキナクリドン顔料、パーマネントレッド、ファーストスローレッドなどのアゾ系顔料などの有機顔料;紫色系では、マンガンバイオレットなどの無機顔料や、ローダミンレーキなどの染色レーキ類、ジオキサジンバイオレットなどの縮合多環類などの有機顔料;青色系では、紺青、群青、コバルトブルー、セルリアンブルーなどの無機顔料や、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン類、インダンスレンブルーなどのインダンスレン類、アルカリブルーなどの有機顔料;緑色系では、エメラルドグリーン、クロームグリーン、酸化クロム、ビリジアンなどの無機顔料や、ニッケルアゾイエローなどのアゾ錯塩類、ピグメントグリーン、ナフトールグリーンなどのニトロソ化合物類、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン類などの有機顔料;黒色系では、カーボンブラック、チタンブラック、鉄黒などの無機顔料や、アニリンブラックなどの有機顔料;などで構成される粒子が挙げられる。これらの顔料粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの顔料粒子のうち、酸化チタンなどの白色系の顔料粒子や、カーボンブラック、チタンブラックなどの黒色系の顔料粒子が好ましい。
なお、酸化チタンの微粒子を用いる場合、その種類は、特に限定されるものではなく、一般に白色系の顔料として用いられるものであれば、例えば、ルチル型またはアナターゼ型のいずれでもよいが、酸化チタンの光触媒活性による着色剤の退色などを考えた場合、光触媒活性の低いルチル型であることが好ましく、さらに、光触媒活性を低減させるために、SiO2処理、Al2O3処理、SiO2−Al2O3処理、ZnO−Al2O3処理などを施した酸化チタンであれば、より好ましい。
電気泳動粒子にポリマー粒子を用いる場合、その構成ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、ポリハロゲン化オレフィン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、メラミン系ポリマー、尿素系ポリマーなどが挙げられる。ここで、「ポリマー」とは、ホモポリマーだけでなく、少量の共重合可能な他のモノマーを共重合させたコポリマーを含むものとする。これらのポリマー粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのポリマー粒子を着色する染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、溶媒を着色する染料として列挙した下記のような染料が挙げられる。また、これらのポリマー粒子に含有させる顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば、電気泳動粒子に用いる顔料として列挙した上記のような顔料が挙げられる。
分散液中における電気泳動粒子の濃度(分散液の質量に対する粒子の質量%)は、その下限が好ましくは5質量%、より好ましくは7質量%、さらに好ましくは10質量%であり、また、その上限が好ましくは60質量%、より好ましくは55質量%、さらに好ましくは50質量%である。電気泳動粒子の濃度が5質量%未満であると、充分な色度が得られず、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。逆に、電気泳動粒子の濃度が60質量%を超えると、分散液の粘度が高くなり、分散処理が困難になることや、表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の凝集が生じて、コントラストの低下や電気泳動粒子の応答速度(表示応答性)が低下することがある。
電気泳動粒子の粒子径は、特に限定されるものではないが、その下限が好ましくは0.1μmであり、また、その上限が好ましくは5μm、より好ましくは4μm、さらに好ましくは3μmである。電気泳動粒子の粒子径が0.1μm未満であると、充分な色度が得られず、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。逆に、電気泳動粒子の粒子径が5μmを超えると、粒子自体の着色度を必要以上に高くする必要があり、顔料などの使用量が増大することや、電気泳動表示装置に用いた場合に、表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の速やかな移動が困難となり、その応答速度(表示応答性)が低下することがある。なお、電気泳動粒子の粒子径とは、動的光散乱式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径を意味する。
電気泳動粒子は、溶媒に、そのまま分散させてもよいが、その表面にカップリング剤を反応させたり、その表面をポリマーグラフト処理したり、その表面をポリマーで被覆したりして、表面処理を行ってから分散させてもよい。表面処理を行う場合には、電気泳動粒子は、カップリング剤またはポリマーで表面処理された顔料粒子であることが好ましい。なお、本発明では、このように表面処理された電気泳動粒子を単に電気泳動粒子と呼ぶことがある。
(溶媒)
分散液に用いる溶媒としては、従来から一般的に電気泳動表示装置用分散液に用いられている溶媒であればよく、特に限定されるものではないが、より詳しくは、実質的に水に不溶性(疎水性)であり、マイクロカプセルの殻体とその機能を阻害する程度に相互作用しないものであればよく、例えば、高絶縁性の有機溶媒が好ましい。
高絶縁性の有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどのベンゼン系炭化水素などの芳香族炭化水素類;ヘキサン、デカンなどの飽和炭化水素、アイソパー(商品名「Isopar」、エクソン化学(株)製)などのイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセンなどのオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリンなどのナフテン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤;などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、沸点および引火点が高く、毒性もほとんどないことから、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼンなどの長鎖アルキルベンゼン、フェニルキシリルエタン、アイソパー(商品名「Isopar」、エクソン化学(株)製)、ジメチルシリコーンオイルなどが好ましい。
溶媒を着色する場合には、電気泳動粒子の色(例えば、酸化チタンの微粒子であれば白色)に対して、充分なコントラストが得られる程度に着色することが好ましい。
溶媒を着色する場合、着色に用いられる染料としては、特に限定されるものではないが、油溶性染料が好ましく、特に使いやすさの観点から、アゾ染料およびアントラキノン染料などがより好ましい。具体的には、黄色系染料として、オイルイエロー3G(オリエント化学工業(株)製)などのアゾ化合物類;橙色系染料として、ファーストオレンジG(BASF AG製)などのアゾ化合物類;青色系染料として、マクロレックスブルーRR(BAYER AG製)などのアントラキノン類;緑色系染料として、スミプラストグリーンG(住友化学(株)製)などのアントラキノン類;茶色系染料として、オイルブラウンGR(オリエント化学工業(株)製)などのアゾ化合物類;赤色系染料として、オイルレッド5303(有本化学工業(株)製)およびオイルレッド5B(オリエント化学工業(株)製)などのアゾ化合物類;紫色系染料として、オイルバイオレット#730(オリエント化学工業(株)製)などのアントラキノン類;黒色系染料として、スーダンブラックX60(BASF AG製)などのアゾ化合物や、アントラキノン系のマクロレックスブルーFR(BAYER AG製)とアゾ系のオイルレッドXO(関東化学(株)製)との混合物が挙げられる。これらの染料は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
分散液には、電気泳動粒子および溶媒以外に、必要に応じて、染料、分散剤、電荷制御剤、粘度調整剤などを配合してもよい。これらの配合量は、電気泳動粒子とその機能を阻害しない限り、特に限定されるものではなく、適宜調整すればよい。
(殻体)
マイクロカプセルの殻体を構成する材料としては、内容物に含まれる溶媒が滲出しない限り、特に限定されるものではないが、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、ゼラチンなどの有機系材料;タルク、クレー、ステアリン酸カルシウム、水和酸化鉄、炭酸コバルト、炭酸カルシウム、アルカリ土類金属ケイ酸塩、シリカなどの無機系材料;が挙げられる。これらの材料は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの材料のうち、バインダー樹脂と混合する場合やデータ表示層と電極フィルムとをラミネートする場合に、内容物に含まれる溶媒が滲出しにくい点で、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリカが好適であり、これらの2種以上を併用した二層構造の殻体が特に好適である。
このような二層構造の殻体を有するマイクロカプセルとしては、例えば、殻体がメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する二層マイクロカプセルが挙げられる。この二層マイクロカプセルは、内殻を構成するアミノ樹脂が高い不浸透性を有し、外殻を構成するエポキシ樹脂が耐熱性や機械的性質に優れており、内殻を構成するアミノ樹脂と外殻を構成するエポキシ樹脂とがメルカプト基を介して互いに強固に結合しているので、カプセル強度が向上しており、内容物に含まれる溶媒の滲出を起こすことがない。
この二層マイクロカプセルにおいて、内殻は、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液を水系媒体中に分散させた後、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物を用いて、メルカプト基とカルボキシ基またはスルホ基とを有する化合物の存在下で縮合反応を行うことにより形成することができる。なお、内殻を構成するアミノ樹脂がメルカプト基を有することは、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)により分析することができる。
また、外殻は、内殻に分散液が内包されたマイクロカプセルを水系媒体中に分散させた後、エポキシ基を有する化合物を添加することにより形成することができる。なお、外殻を形成する際に、エポキシ基を有する化合物に架橋剤を反応させるか、および/または、エポキシ基を有する化合物に加えて、エポキシ・メラミン縮合物を添加すれば、外殻の強度や不浸透性が向上し、マイクロカプセルがより高い性能を有するようになるので、好ましい。
マイクロカプセルの殻体の厚さ(二層マイクロカプセルの場合は、内殻と外殻との合計厚さ)は、特に限定されるものではないが、湿潤状態で、例えば、好ましくは0.1μm以上、5μm以下、より好ましくは0.1μm以上、4μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上、3μm以下である。殻体の厚さが0.1μm未満であると、充分なカプセル強度が得られないことがある。逆に、殻体の厚さが5μmを超えると、透明性が低下するので、コントラスト低下の原因となることや、マイクロカプセルの柔軟性が低下するので、電極フィルムなどへの密着性が不充分になることがある。
また、マイクロカプセルを製造する方法としては、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に分散させた分散液を用いて、例えば、相分離法、液中乾燥法、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被覆法、スプレードライング法、表面沈積法などの従来公知のマイクロカプセル化手法により殻体を形成する方法を用いることができる。
芯物質を分散させる水系媒体としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、または、水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。水と親水性有機溶媒とを併用する場合、水の配合量は、その下限が好ましくは70質量%、より好ましくは75質量%、さらに好ましくは80質量%であり、また、その上限が好ましくは95質量%である。
親水性有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらの親水性有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
水系媒体は、水や親水性有機溶媒以外に、さらに他の溶媒を併用してもよい。他の溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロペンタン、ペンタン、イソペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アミニルスクアレン、石油エーテル、テルペン、ヒマシ油、大豆油、パラフィン、ケロシンなどが挙げられる。他の溶媒を併用する場合、その使用量は、水と親水性有機溶媒とを含む水系媒体に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
芯物質を水系媒体に分散させる量としては、特に限定されるものではないが、水系媒体100質量部に対して、その下限が好ましくは5質量部、より好ましくは8質量部、さらに好ましくは10質量部であり、また、その上限が好ましくは70質量部、より好ましくは65質量部、さらに好ましくは60質量部である。分散量が5質量部未満であると、芯物質の濃度が低いので、カプセル殻体の形成に長時間を必要とし、目的のマイクロカプセルが調製できないことや、粒径分布が広いマイクロカプセルとなり、生産効率が低下することがある。逆に、分散量が70質量部を超えると、芯物質が凝集することや、芯物質中に水系媒体が懸濁してしまい、マイクロカプセルが製造できなくなることがある。
芯物質を水系媒体中に分散させる際には、必要に応じて、分散剤を用いてもよい。分散剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ゼラチン、アラビアゴム)、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤)、無機微粒子(例えば、タルク、ベントナイト、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム)などが挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの分散剤の添加量は、殻体の形成を阻害しない限り、特に限定されるものではなく、適宜調整すればよい。
マイクロカプセルは、ある程度の柔軟性を有しており、その形状は、外部圧力により変化するので、特に限定されるものではないが、外部圧力がない場合には、真球状などの粒子状であることが好ましい。
マイクロカプセルの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、その下限が好ましくは5μm、より好ましくは10μm、さらに好ましくは15μmであり、また、その上限が好ましくは300μm、より好ましくは200μm、さらに好ましくは150μmである。マイクロカプセルの平均粒子径が5μm未満であると、表示部分で充分な表示濃度が得られないことがある。逆に、マイクロカプセルの平均粒子径が300μmを超えると、マイクロカプセルの強度が低下することや、マイクロカプセルに封入した分散液中における電気泳動粒子の電気泳動特性が充分に発揮されず、表示のための起動電圧も高くなることがある。なお、マイクロカプセルの平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径を意味する。
マイクロカプセルの粒子径の変動係数(すなわち、粒度分布の狭さ)は、特に限定されるものではないが、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。マイクロカプセルの粒子径の変動係数の下限は、特に限定されるものではないが、最も好ましくは0%である。マイクロカプセルの粒子径の変動係数が30%を超えると、有効な粒子径を有するマイクロカプセルが少なく、多数のマイクロカプセルを用いる必要が生じることがある。
なお、マイクロカプセルの粒子径やその変動係数は、マイクロカプセルを製造する際に水系媒体に分散させた分散液の粒子径や粒度分布に大きく依存する。それゆえ、分散液の分散条件を適宜調整することにより、所望の粒子径やその変動係数を有するマイクロカプセルを得ることができる。さらに、粒度分布が狭いマイクロカプセルを得るために、分級することが好ましく、および/または、不純物を除去して製品品質を向上させるために、洗浄することが好ましい。
マイクロカプセルの分級は、水系媒体中にマイクロカプセルを含む分散液に対して、そのままで、あるいは、任意の水系媒体などで希釈した後、従来公知の方式、例えば、ふるい式、フィルター式、遠心沈降式、自然沈降式などの方式を用いて、マイクロカプセルが所望の粒子径や粒度分布を有するように行えばよい。なお、比較的粒子径が大きいマイクロカプセルに対しては、ふるい式が有効である。
マイクロカプセルの洗浄は、水系媒体中にマイクロカプセルを含む分散液に対して、そのままで、あるいは、任意の水系媒体などで希釈した後、従来公知の方式、例えば、遠心沈降式、自然沈降式などの方式を用いて、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄して沈降物を回収し、任意の水系媒体などに再分散するという操作を繰り返せばよい。なお、比較的粒子径が大きいマイクロカプセルに対しては、マイクロカプセルの破壊や損傷を防止するために、自然沈降式を採用することが好ましい。
上記のようなメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する二重構造の殻体に電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液が内包されているマイクロカプセルを製造する方法は、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に分散させた後、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物を用いて、メルカプト基とカルボキシ基またはスルホ基とを有する化合物の存在下で縮合反応を行うことにより、該芯物質の表面にメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻を形成し、次いで、該芯物質が該内殻に内包されているマイクロカプセルを水系媒体中に分散させた後、エポキシ基を有する化合物を添加することにより、該内殻の外表面にエポキシ樹脂で構成される外殻を形成することを包含する。
以下、この製造方法を各工程に従って詳しく説明する。
(芯物質の分散)
まず、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に分散させる。芯物質を水系媒体に分散させる方法としては、前述の方法と同様に行えばよいので、ここでは説明を省略する。
(初期縮合物の調製)
次いで、尿素、チオ尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種(以下「アミノ化合物」ということがある。)とホルムアルデヒドとを反応させて初期縮合物を用意する。
アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物は、いわゆるアミノ樹脂(すなわち、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂)の前駆体となる化合物である。特定の初期縮合物を用いることにより、アミノ樹脂で構成される内殻を形成できるが、メルカプト基とカルボキシ基またはスルホ基とを有する化合物を存在させることにより、初期縮合物から得られるアミノ樹脂にメルカプト基を導入することができる。
初期縮合物については、(1)尿素およびチオ尿素(以下「尿素化合物」ということがある。)のうち少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させる場合は、尿素樹脂を与える初期縮合物となり、(2)メラミンとホルムアルデヒドとを反応させる場合は、メラミン樹脂を与える初期縮合物となり、(3)ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミン(以下「グアナミン化合物」ということがある。)のうち少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させる場合は、グアナミン樹脂を与える初期縮合物となる。また、(4)尿素化合物、メラミンおよびグアナミン化合物のうち少なくとも2種とホルムアルデヒドとを反応させる場合は、尿素樹脂、メラミン樹脂およびグアナミン樹脂のうち少なくとも2種が混在する樹脂を与える初期縮合物となる。これらの初期縮合物(1)〜(4)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
アミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応は、一般に、溶媒として水が用いられる。それゆえ、反応形態としては、例えば、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合して反応させる方法や、トリオキサンやパラホルムアルデヒドに水を添加してホルムアルデヒド水溶液を調製し、得られたホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合して反応させる方法などが挙げられる。ホルムアルデヒド水溶液を調製する必要がないこと、ホルムアルデヒド水溶液の入手が容易であることなど、経済性の観点から、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合して反応させる方法が好ましい。また、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合する場合、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を添加しても、アミノ化合物にホルムアルデヒド水溶液を添加してもよい。なお、縮合反応は、例えば、従来公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
アミノ化合物としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミンが好ましく、メラミン、メラミンと尿素との組合せ、メラミンとベンゾグアナミンとの組合せがより好ましい。
アミノ化合物としては、上記のようなアミノ化合物以外に、さらに他のアミノ化合物を用いてもよい。他のアミノ化合物としては、例えば、カプリグアナミン、アメリン、アメリド、エチレン尿素、プロピレン尿素、アセチレン尿素などが挙げられる。これらの他のアミノ化合物を用いる場合は、これらの他のアミノ化合物を含めて、初期縮合物の原料となるアミノ化合物として扱うものとする。
初期縮合物を得る反応において、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの添加量は、特に限定されるものではないが、アミノ化合物/ホルムアルデヒドのモル比で、好ましくは1/0.5〜1/10、より好ましくは1/1〜1/8、さらに好ましくは1/1〜1/6である。アミノ化合物/ホルムアルデヒドのモル比が1/10未満であると、未反応のホルムアルデヒドが多くなり、反応効率が低下することがある。逆に、アミノ化合物/ホルムアルデヒドのモル比が1/0.5を超えると、未反応のアミノ化合物が多くなり、反応効率が低下することがある。なお、水を溶媒として反応を行う場合、溶媒に対するアミノ化合物およびホルムアルデヒドの添加量、すなわち仕込み時点におけるアミノ化合物およびホルムアルデヒドの濃度は、反応に特に支障がない限り、より高濃度であることが望ましい。
初期縮合物を得る反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、その下限が好ましくは55℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは65℃であり、また、その上限が好ましくは85℃、より好ましくは80℃、さらに好ましくは75℃であり、反応終点が認められた時点で、反応液を常温(例えば、25℃以上、30℃以下)に冷却するなどの操作により、反応を終了させればよい。これにより、初期縮合物を含む反応液が得られる。なお、反応時間は、特に限定されるものではなく、仕込み量に応じて、適宜設定することができる。
(内殻の形成)
次いで、芯物質を分散させた水系媒体中で、初期縮合物を用いて、メルカプト基(−SH)とカルボキシ基(−COOH)またはスルホ基(−SO3H)とを有する化合物(以下「チオール化合物」ということがある。)の存在下で縮合反応を行うことにより、該芯物質の表面にメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻を形成する。この操作により、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液がメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻に内包されたマイクロカプセルが得られる。
初期縮合物の添加量は、特に限定されるものではないが、芯物質1質量部に対して、その下限が好ましくは0.5質量部であり、また、その上限が好ましくは10質量部、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは3質量部である。初期縮合物の添加量を調整することにより、内殻の厚さを容易に制御することができる。初期縮合物の添加量が0.5質量部未満であると、充分な量の内殻が形成できないことや、内殻の厚さが小さくなるので、強度および不浸透性が低下することがある。逆に、初期縮合物の添加量が10質量部を超えると、内殻の厚さが大きくなるので、柔軟性および透明性が低下することがある。
初期縮合物の水系媒体への添加方法は、特に限定されるものではなく、一括添加または逐次添加(連続的添加および/または間欠的添加)のいずれでもよい。なお、初期縮合物の添加は、従来公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
縮合反応の際に用いるチオール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、システイン(2−アミノ−3−メルカプトプロピオン酸)、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトコハク酸、メルカプトエタンスルホン酸、メルカプトプロパンスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。これらのチオール化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのチオール化合物のうち、入手が容易であること、効果の観点から、L−システイン、DL−システインが好ましい。
チオール化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、初期縮合物100質量部に対して、その下限が好ましくは1質量部であり、また、その上限が好ましくは20質量部、より好ましくは10質量部、さらに好ましくは5質量部である。チオール化合物の添加量が1質量部未満であると、アミノ樹脂に導入されるメルカプト基が少なすぎるので、外殻を構成するエポキシ樹脂と強固な結合を形成できないことがある。逆に、チオール化合物の添加量が20質量部を超えると、内殻の強度や不浸透性が低下することがある。
チオール化合物の水系媒体への添加方法は、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質を分散させた水系媒体に初期縮合物を添加した後、充分に攪拌してから、チオール化合物を水溶液の形態で滴下することが好ましい。なお、縮合反応は、従来公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
本製造方法においては、芯物質を分散させた水系媒体中、チオール化合物の存在下で、初期縮合物を縮合反応させることにより、芯物質の表面に内殻を形成させるようにする。具体的には、初期縮合物のアミノ基とチオール化合物のカルボキシ基またはスルホ基とを反応させながら、初期縮合物の縮合反応を行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂を芯物質の表面に沈積させて内殻とする。
縮合反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、その下限が好ましくは25℃、より好ましくは30℃、さらに好ましくは35℃であり、また、その上限が好ましくは80℃、より好ましくは70℃、さらに好ましくは60℃である。反応時間は、特に限定されるものではなく、仕込み量に応じて、適宜設定することができる。
縮合反応を行った後、熟成期間を設けてもよい。熟成時の温度は、特に限定されるものではないが、例えば、縮合反応を行う際の反応温度と同一または少し高い温度であることが好ましい。熟成時間は、特に限定されるものではないが、その下限が好ましくは0.5時間、より好ましくは1時間であり、また、その上限が好ましくは5時間、より好ましくは3時間である。
内殻を形成した後、得られたマイクロカプセルは、必要に応じて、従来公知の方法、例えば、吸引濾過や自然濾過などの方法により、水系媒体から分離してもよいが、内殻を構成するアミノ樹脂は、非常に脆く、弱い衝撃や圧力によっても、破壊されたり、損傷を受けたりすることがあるので、水系媒体から分離することなく、次の工程に付すことが好ましい。内殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルは、粒度分布が狭いマイクロカプセルを得るために、分級することが好ましく、および/または、不純物を除去して製品品質を向上するために、洗浄することが好ましい。マクロカプセルを分級および洗浄する方法としては、前述の方法と同様に行えばよい。
(外殻の形成)
次いで、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを水系媒体中に分散させた後、エポキシ基を有する化合物(以下「エポキシ化合物」ということがある。)を添加することにより、該内殻の外表面にエポキシ樹脂で構成される外殻を形成する。この操作により、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液がメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する殻体に内包されたマイクロカプセルが得られる。
芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させる水系媒体としては、例えば、内殻を形成する際に芯物質を分散させる水系媒体として列挙した上記のような水系媒体が挙げられる。なお、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルは、水系媒体中における分散液の形態で得られるので、マイクロカプセルを水系媒体から分離し、改めて水系媒体に再分散するのではなく、水系媒体中における分散液を、そのまま、あるいは、濃縮または希釈した後、外殻を形成する工程に付してもよい。
エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する水溶性のエポキシ化合物が好ましく、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エポキシ化合物の重量平均分子量は、その下限が好ましくは300であり、また、その上限が好ましくは100,000、より好ましくは75,000、さらに好ましくは50,000である。エポキシ化合物の重量平均分子量が300未満であると、充分な強度を有する外殻が得られないことがある。逆に、エポキシ化合物の重量平均分子量が100,000を超えると、反応系の粘度が高くなり、攪拌が困難となることがある。
エポキシ化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセル1質量部に対して、その下限が好ましくは0.5質量部であり、また、その上限が好ましくは10質量部、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは3質量部である。エポキシ化合物の添加量を調整することにより、外殻の厚さを容易に制御することができる。エポキシ化合物の添加量が0.5質量部未満であると、充分な量の外殻が形成できないことや、外殻の厚さが小さくなるので、強度が低下することがある。逆に、エポキシ化合物の添加量が10質量部を超えると、外殻の厚さが大きくなるので、柔軟性および透明性が低下することがある。
エポキシ化合物の水系媒体への添加方法は、特に限定されるものではなく、一括添加または逐次添加(連続的添加および/または間欠的添加)のいずれでもよい。例えば、水系媒体に芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させた後、攪拌しながら、エポキシ化合物を水溶液の形態で添加することが好ましい。
エポキシ樹脂で構成される外殻を形成する際には、エポキシ化合物に架橋剤を反応させることができる。架橋剤を反応させることにより、外殻の強度、ひいては殻体の強度が向上するので、その後にマイクロカプセルを分離したり洗浄したりする際に殻体が破壊または損傷することを効果的に抑制することができる。
架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(水和物を含む)、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム(水和物を含む)、ジチオシュウ酸およびジチオ炭酸などが挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
架橋剤の添加量は、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物100質量部に対して、その下限が好ましくは1質量部、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは10質量部であり、また、その上限が好ましくは100質量部、より好ましくは90質量部、さらに好ましくは80質量部である。架橋剤の添加量が1質量部未満であると、外殻の強度を充分に高めることができないことがある。逆に、架橋剤の添加量が100質量部を超えると、架橋剤がエポキシ化合物のエポキシ基と過剰に反応するので、外殻の柔軟性が低下することがある。
架橋剤の水系媒体への添加方法は、エポキシ化合物と共に添加しても、エポキシ化合物の添加前や添加後に添加してもよく、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させた水系媒体にエポキシ化合物を水溶液の形態で添加した後、少し時間をおいてから、攪拌しながら、架橋剤を水溶液の形態で滴下することが好ましい。
エポキシ樹脂で構成される外殻を形成する際には、エポキシ化合物に加えて、エポキシ・メラミン縮合物を添加することができる。エポキシ・メラミン縮合物を添加することにより、外殻の不浸透性、ひいては殻体の不浸透性が向上するので、マイクロカプセルがより高い性能を有するようになる。
エポキシ・メラミン縮合物は、エポキシ化合物とメラミンとホルムアルデヒドとから、従来公知の方法により製造された初期縮合物であればよく、特に限定されるものではないが、さらに、尿素、チオ尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種を反応させることができる。エポキシ・メラミン縮合物の好ましい具体例としては、例えば、エポキシ化合物と尿素とを反応させて得られた化合物を、さらにメラミン、尿素およびホルムアルデヒドを反応させて得られた初期縮合物と反応させることにより製造された縮合物である。
エポキシ・メラミン縮合物の添加量は、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物1質量部に対して、その下限が好ましくは0質量部であり、また、その上限が好ましくは10質量部、より好ましくは8質量部、さらに好ましくは5質量部である。エポキシ・メラミン縮合物の添加量が10質量部を超えると、外殻が脆くなり、強度が低下することがある。
エポキシ・メラミン縮合物の水系媒体への添加方法は、エポキシ化合物と共に添加しても、エポキシ化合物の添加前や添加後に添加してもよく、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させた水系媒体にエポキシ化合物を水溶液の形態で添加した後、少し時間をおいてから、エポキシ・メラミン縮合物を水溶液の形態で添加することが好ましい。架橋剤を反応させる場合、架橋剤は、エポキシ・メラミン縮合物を水溶液の形態で添加した後、少し時間をおいてから、水溶液の形態で滴下することが好ましい。
外殻を形成させる際の温度は、特に限定されるものではないが、その下限が好ましくは25℃、より好ましくは30℃、さらに好ましくは35℃であり、また、その上限が好ましくは80℃、より好ましくは70℃、さらに好ましくは60℃である。外殻を形成させる際の時間は、特に限定されるものではなく、仕込み量に応じて、適宜設定することができる。
外殻を形成した後、熟成期間を設けてもよい。熟成時の温度は、特に限定されるものではないが、例えば、外殻を形成させる際の温度と同一または少し高い温度であることが好ましい。熟成時間は、特に限定されるものではないが、その下限が好ましくは0.5時間、より好ましくは1時間であり、また、その上限が好ましくは5時間、より好ましくは3時間である。
外殻を形成した後、得られたマイクロカプセルは、必要に応じて、従来公知の方法、例えば、吸引濾過や自然濾過などの方法により、水系媒体から分離してもよいが、マイクロカプセルを乾燥状態にすると、芯物質のうち溶媒が滲出して蒸発することにより、マイクロカプセルが変形することがあるので、水系媒体から分離することなく、次の工程に付すことが好ましい。
外殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルは、粒度分布が狭いマイクロカプセルを得るために、分級することが好ましく、および/または、不純物を除去して製品品質を向上させるために、洗浄することが好ましい。
マイクロカプセルの分級および洗浄は、内殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルの場合と同様に行えばよいので、ここでは説明を省略する。
<データ表示層>
本発明の表示シートにおいて、マイクロカプセルは、2枚の対向する電極フィルムの導電層間にほぼ単層に配列しており、その配列を維持し得るように、バインダー樹脂で固定されており、バインダー樹脂と共に、データ表示層を形成している。
データ表示層の厚さは、マイクロカプセルの粒子径に応じて変化するので、特に限定されるものではないが、その下限が好ましくは10μm、より好ましくは15μm、さらに好ましくは20μmであり、また、その上限が好ましくは200μm、より好ましくは150μm、さらに好ましくは100μmである。データ表示層の厚さが10μm未満であると、表示部分において充分な表示濃度が得られず、その他の非表示部分との明確な区別ができないことがある。逆に、データ表示層の厚さが200μmを超えると、マイクロカプセル内に封入した分散液中の電気泳動粒子が充分な電気泳動性を発揮できず、コントラストなどの表示特性が低下したり、表示用の駆動電圧が高くなったりすることがある。
データ表示層において、マイクロカプセルは、データ表示層を形成するための塗工液中における形状と同じ形状を有する場合もあるし、一方の電極フィルムの導電層上に塗工液を塗工した後の乾燥工程を経て、変形している場合もある。また、データ表示層上に他方の電極フィルムの導電層を重ね合わせてラミネートする際に、変形している場合もある。いずれにしても、マイクロカプセルは、球状である場合もあれば、球が変形した形状である場合もある。隣接するマイクロカプセル同士の接触部分や、マイクロカプセルと電極フィルムとの接触部分などにおいて、マイクロカプセルが押し潰されて変形し、面で接触していてもよい。また、マイクロカプセルは、ほぼ単層で配列されている場合のほか、目的とする機能に支障がなければ、マイクロカプセルが部分的に重なっていても構わない。
<電極フィルム>
本発明の表示シートにおいて、2枚の対向する電極フィルムは、マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含むデータ表示層を挟持する機能を果たす。
本発明の表示シートに用いる電極フィルムは、非透明の電極フィルムであっても、透明の電極フィルムであってもよく、特に限定されるものではないが、データ表示層が2枚の対向する電極フィルムで挟持されているので、表示データを目視するためには、少なくとも一方の電極フィルムが透明であることが必要である。
電極フィルムは、基材フィルムの片面に導電層が形成されている。基材フィルムの材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のうち、ポリエステル樹脂が好適であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好適である。導電層の材料としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛、金属微粒子、金属箔などの無機導電性物質;ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリチオフェンなどの有機導電性物質;などが挙げられる。基材フィルム上に導電層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリングなどのドライコーティング法、導電性物質の分散液や溶液を塗布するウェットコーティング法などが挙げられる。なお、電極フィルムは、自ら調製してもよいが、各種の市販品を利用することもできる。
電極フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは20μm以上、200μm以下である。電極フィルムの厚さが20μm未満であると、シワが発生しやすくなることがある。逆に、電極フィルムの厚さが200μmを超えると、ロール状に巻回したときなどに巻き径が大きくなって取り扱いが困難になることや、使用後の廃棄物量が増加することがある。
<その他>
本発明の表示シートは、表面に別のフィルム材料またはシート材料、例えば、反射防止フィルム、防眩フィルム、ハードコートフィルム、衝撃吸収シート、電極フィルム、表面保護シート、着色シートなどを貼着したり、表面に別の塗工材料を塗工したりすることができる。また、本発明の表示シートを、別の材料、例えば、シート状や板状の材料に張り付けて用いることができる。さらに、本発明の表示シートを所望の大きさや形状に加工して用いることもできる。
≪電気泳動表示装置用シートの製造方法≫
本発明による電気泳動表示装置用シートの製造方法(以下「本発明の製造方法」ということがある。)は、上記のような電気泳動表示装置用シートを製造する方法であって、一方の電極フィルムの導電層上に、電気泳動表示装置用マイクロカプセルと、重量平均分子量が40,000以上、300,000以下であり、ガラス転移温度が−50℃以上、10℃以下であるバインダー樹脂とを含むデータ表示層を形成し、該データ表示層上に他方の電極フィルムの導電層を重ね合わせてラミネートすることを特徴とする。
以下、本発明の製造方法について詳しく説明するが、本発明の製造方法は下記の説明に拘束されることはなく、下記に例示した事項以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
<塗工液>
本発明の表示シートを製造する際には、まず、一方の電極フィルムの導電層上に、電気泳動表示装置用マイクロカプセルと、重量平均分子量が40,000以上、300,000以下であり、ガラス転移温度が−50℃以上、10℃以下であるバインダー樹脂とを含むデータ表示層を形成する。
データ表示層を形成するには、一方の電極フィルムの導電層上にマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含有する塗工液を塗工し、得られた塗工膜を乾燥させればよい。マイクロカプセルおよびバインダー樹脂については、上記したとおりであるので、ここでは、説明を省略する。なお、以下では、一方の電極フィルムの導電層上に塗工液を塗工することを、単に、「電極フィルム上に塗工液を塗工する」あるいは「塗工液を電極フィルム上に塗工する」ということがある。
塗工液中におけるマイクロカプセルとバインダー樹脂との配合比は、データ表示層を形成することができる限り、特に限定されるものではないが、例えば、マイクロカプセル/バインダー樹脂が、固形比で、好ましくは10/0.5〜10/10、より好ましくは10/1〜10/7の範囲内である。マイクロカプセル/バインダー樹脂が、固形比で、10/0.5より大きく、マイクロカプセルに比べてバインダー樹脂の割合が少ないと、電極フィルムとデータ表示層との密着性が低下したり、マイクロカプセル間に空気が混入したりすることにより、表示性能が低下することがある。逆に、マイクロカプセル/バインダー樹脂が、固形比で、10/10より小さく、マイクロカプセルに比べてバインダー樹脂の割合が多いと、電気泳動性が低下することにより、表示性能が低下することがある。
塗工液には、マイクロカプセルおよびバインダー樹脂以外に、必要に応じて、その他の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、溶剤、分散剤、粘度調整剤、保存剤、消泡剤などが挙げられる。
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、その他の芳香族系溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶媒;などの有機溶媒や水などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸塩;スチレン−マレイン酸共重合体塩;ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物;長鎖アルキル有機スルホン酸塩;ポリリン酸塩;長鎖アルキルアミン塩;ポリアルキレンオキシド;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ペルフルオロアルキル基含有塩、ペルフルオロアルキル基含有エステル、ペルフルオロアルキル基含有オリゴマーなどのフッ素系界面活性剤;アセチレンジオール系やアセチレングリコール系の非イオン性界面活性剤;などが挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
粘度調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系粘度調整剤;ポリアクリル酸ナトリウム、アルカリ可溶性エマルション、会合型アルカリ可溶性エマルションなどのポリカルボン酸系粘度調整剤;ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエステル、会合型ポリエチレングリコール誘導体などのポリエチレングリコール系粘度調整剤;ポリビニルアルコールなどのその他の水溶性高分子系粘度調整剤;モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトなどのスメクタイト系の粘度調整剤;などが挙げられる。これらの粘度調整剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
保存剤としては、例えば、有機窒素硫黄化合物、有機窒素ハロゲン化合物、クロルヘキシジン塩、クレゾール系化合物、ブロム系化合物、アルデヒド系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、ハロゲン化環状硫黄化合物、有機ヒ素化合物、有機銅化合物、塩化イソチアゾロン、イソチアゾロンなどが挙げられる。これらの保存剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、プロルニック型消泡剤、鉱物油系消泡剤、ポリエステル系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤などが挙げられる。これらの消泡剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
塗工液にその他の成分を配合する場合、その配合量は、電極フィルムへの塗工を阻害せず、かつ、その他の成分を用いる効果が得られる限り、特に限定されるものではない。
塗工液の粘度は、特に限定されるものではないが、その下限が好ましくは50mPa・s、より好ましくは100mPa・sであり、また、その上限が好ましくは5,000mPa・s、より好ましくは4,000mPa・s、さらに好ましくは3,000mPa・sである。塗工液の粘度がこの範囲内であれば、一方の電極フィルムの導電層上にマイクロカプセルをほぼ単層で隙間なく配列させることができ、マイクロカプセルが緻密に充填された状態の塗工膜に仕上げることができる。
<塗工方法>
電極フィルム上に塗工液を塗工する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ワイヤーバーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、スリットコート法、グラビアコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スクリーン印刷法などが挙げられる。これらの塗工方法のうち、マイクロカプセルを含有する塗工液を電極フィルム上に塗工する際に比較的容易に均一な塗工ができる点で、ロールコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、スリットコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法が好適である。また、これらの塗工方法は、枚葉式で行ってもよいし、roll−to−rollによる連続塗工方式で行ってもよい。これらの塗工方式は、必要に応じて、適宜選択することができる。
電極フィルムに塗工された塗工液、すなわち塗工膜を乾燥させることにより、電極フィルム上にデータ表示層が形成される。塗工液にバインダー樹脂が配合されているので、バインダー樹脂がマイクロカプセルを電極フィルムに接合する機能を果たす。
乾燥方法としては、従来公知の乾燥技術を用いればよく、特に限定されるものではないが、例えば、自然乾燥または強制乾燥が挙げられる。強制乾燥の手段としては、例えば、熱風や遠赤外線などの従来公知の乾燥手段を用いることができる。乾燥条件は、塗工液の粘度や塗工膜の面積などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、乾燥温度は、その下限が好ましくは15℃、より好ましくは20℃であり、また、その上限が好ましくは150℃、より好ましくは120℃である。乾燥時間は、その下限が好ましくは5秒間、より好ましくは10秒間であり、また、その上限が好ましくは60分間、より好ましくは45分間である。これらの乾燥温度および乾燥時間は、乾燥工程において、一定であってもよいし、段階的に変化させてもよい。
電極フィルムに塗工された塗工液の乾燥後の厚さは、塗工液に含有されるマイクロカプセルの粒子径などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは10μm、より好ましくは15μmであり、また、その上限が好ましくは200μm、より好ましくは150μm、さらに好ましくは100μmである。湿潤状態の厚さは、塗工液の不揮発分によって、適宜調整されるものである。
さらに、塗工液を乾燥させた塗工膜の表面(対向電極となる電極フィルムをラミネートする面)に、バインダー樹脂からなる接着層を一層設けてもよい。塗工液を乾燥させた塗工膜の表面には、マイクロカプセルによる凹凸が生じている場合があるので、さらに接着層を一層設けることにより、この凹凸をなくし、データ表示層とラミネートした電極フィルムとの間に空気が入らなくすることができる。接着層の厚さは、生じた凹凸の深さやマイクロカプセルの柔軟性などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。接着層の厚さが10μmを超えると、電気泳動性が低下することにより、表示性能が低下することがある。なお、接着層の厚さの下限は、約0.5μm程度である。
<ラミネートの方法および条件>
本発明の表示シートを製造する際には、一方の電極フィルムの導電層上にデータ表示層を形成した後、このデータ表示層上に他方の電極フィルムの導電層を重ね合わせてラミネートする。ラミネートの方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、一対のラミネートロールを通過させることにより加圧する方法など、従来公知のラミネート技術を採用することができる。また、必要に応じて、ラミネートロールを適当な温度に調節することにより、加熱下でラミネートしてもよい。
優れた表示品質を安定して発揮し得る電気泳動表示装置を得るためには、一般的には、マイクロカプセルを2枚の対向する電極フィルムに対して充分に密着させたもの(接触面積が大きいもの)であることが好ましい。マイクロカプセルと2枚の対向する電極フィルムとの密着性が低いと、電気泳動粒子の応答性の低下や、コントラストの低下などが生じることがある。この密着性を高めるためには、例えば、ラミネート圧力や温度を高くするようにすることなどが考えられる。また、使用するマイクロカプセルに関しては、殻体を構成する成分の含有割合を適宜設定し、柔軟性や接着性を高めることなどにより、電極フィルムへの密着のしやすさをより一層高めることができ、その場合は、ラミネート時の温度や圧力などの諸条件をある程度緩やかにした状態でも、充分な密着性を得ることができる。
ラミネート圧力は、その下限が好ましくは0.1MPa、より好ましくは0.15MPa、さらに好ましくは0.2MPaであり、また、その上限が好ましくは4MPa、より好ましくは3.5MPa、さらに好ましくは3MPaである。ラミネート圧力が0.1MPa未満であると、マイクロカプセルと2枚の対向する電極フィルムとの密着性が低くなったり、マイクロカプセルがデータ表示層中を移動しにくく、ほぼ単層に配列することが困難になったりするので、コントラストが低下することがある。逆に、ラミネート圧力が4MPaを超えると、マイクロカプセルが著しく変形したり、場合によっては、マイクロカプセルが破壊されたりして、実用的な表示シートが得られないことがある。
ラミネート温度は、その下限が好ましくは室温(25℃〜30℃)、より好ましくは35℃、さらに好ましくは40℃であり、また、その上限が好ましくは120℃、より好ましくは110℃、さらに好ましくは100℃である。ラミネート温度が室温より低いと、マイクロカプセルと2枚の対向する電極フィルムとの密着性が低くなったり、マイクロカプセルがデータ表示層中を移動しにくく、ほぼ単層に配列することが困難になったりするので、コントラストが低下することがある。逆に、ラミネート温度が100℃を超えると、マイクロカプセルの内容物に含まれる溶媒が膨張して、マイクロカプセルから滲出したり、場合によっては、マイクロカプセルが破壊されたりして、実用的な表示シートが得られないことがある。
≪電気泳動表示装置≫
本発明の表示シートは、例えば、データ表示部の構成要素として、電気泳動表示装置に用いられる。本発明の電気泳動表示装置は、データ表示部を備えている電気泳動表示装置であって、該データ表示部が本発明の表示シートで構成されていることを特徴とする。本発明の電気泳動表示装置は、データ表示部が本発明の表示シートで構成されていること以外は、従来公知の電気泳動表示装置と同様である。それゆえ、データ表示部分以外の部分、例えば、駆動回路や電源回路などは、従来公知の電気泳動表示装置と同様に構成すればよい。すなわち、本発明の電気泳動表示装置は、従来公知の電気泳動表示装置のデータ表示部を本発明の表示シートで構成することにより得られる。なお、本発明においては、駆動回路や電源回路などを外部回路に含めることにより、データ表示部だけを電気泳動表示装置ということがある。
本発明の電気泳動表示装置としては、例えば、本発明の表示シートのうち、マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含む層が2枚の対向する電極フィルムでラミネートされている表示シートをデータ表示部の構成要素として含む電気泳動表示装置が好ましく例示できる。なお、このような電気泳動表示装置において、表示シート以外の各種構成部分(例えば、駆動回路や電源回路など)としては、上記したように、従来公知の電気泳動表示装置において使用されている構成部分を採用することができる。
本発明の電気泳動表示装置における所要の表示動作は、対向する電極フィルム間に、制御された電圧を印加(例えば、所望の画像を表示したい部分のみに電圧を印加)し、マイクロカプセル中の電気泳動粒子の配向位置を変えることにより、行うことができる。ここで、例えば、一方の電極フィルムに、アモルファスシリコンやポリシリコンを用いた薄膜トランジスタまたは有機分子を用いた有機トランジスタからなるドライバ層を設けておけば、表示の制御を行うことができる。あるいは、ドライバ層を設けずに、外部装置によって表示の制御を行ってもよい。表示を制御する手段は、電気泳動表示装置の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
≪電子機器≫
本発明の表示シートを用いて得られた電気泳動表示装置は、例えば、データ表示手段として、電子機器に用いられる。本発明の電子機器は、データ表示手段を備えている電子機器であって、該データ表示手段が本発明の電気泳動表示装置であることを特徴とする。ここで、「データ表示手段」とは、文字データや画像データなどを表示するための手段を意味する。本発明の電子機器は、データ表示手段が本発明の電気泳動表示装置であること以外は、従来公知の電子機器と同様である。それゆえ、データ表示手段以外の部分は、従来公知の電子機器と同様に構成すればよい。すなわち、本発明の電子機器は、従来公知の電子機器におけるデータ表示手段を本発明の電気泳動表示装置で置き換えることにより得られる。
本発明の電気泳動表示装置を適用できる電子機器としては、データ表示手段を備えている限り、特に限定されるものではないが、例えば、パーソナルコンピューター、ワークステーション、ワードプロセッサー、ICカード、ICタグ、電子手帳、電子辞書、ICレコーダ、電子ブック、電子ペーパー、電子ノート、電卓、電子新聞、電子ホワイトボード、案内板、広告板、各種ディスプレイ、テレビ、DVDプレーヤー、デジタルスチルカメラ、ビューファインダー型またはモニタ直視型のビデオカメラ、カーナビゲーションシステム、携帯電話、テレビ電話、ページャ、携帯端末、POS用端末、タッチパネルを備えた各種機器などが挙げられる。これらの電子機器は従来公知であるが、そのデータ表示手段を本発明の電気泳動表示装置で置き換えることにより、本発明の電子機器が得られる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
まず、各種の測定方法について説明する。
<電気泳動粒子の粒子径>
電気泳動粒子の粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(商品名「LB−500」、(株)堀場製作所製)を用いて、体積平均粒子径を測定した。
<マイクロカプセルの粒子径>
マイクロカプセルの粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(商品名「LA−910」、(株)堀場製作所製)を用いて、体積平均粒子径を測定した。
<バインダー樹脂の分子量>
バインダー樹脂の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、バインダー樹脂溶液にテトラヒドロフラン(THF)を加えて、0.2重量%の溶液とし、ゲル浸透クロマトグラフィー(商品名「GPCシステムHLC−8120GPC」、東ソー(株)製)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。なお、測定条件は以下の通りである。
・測定条件
カラム:商品名「TSKgel G5000HXL」および「TSKgel GMHXL−L」(いずれも東ソー(株)製)の連結カラム
カラム温度:40℃
サンプル注入量:200μL
溶出液:テトラヒドロフラン
送液量:1.0mL/min.
検出器:示差屈折計。
<バインダー樹脂のガラス転移温度>
バインダー樹脂の溶液をセパレーター上に塗布した後、100℃で1時間乾燥し、バインダー樹脂の塗膜を形成した。形成した塗膜を試料として、動的粘弾性測定装置(商品名「ARES」、ティー・エー・インスツルメント社製)を用いて、下記の測定条件で、損失弾性率を測定し、そのピーク値をガラス転移温度(Tg)とした。
測定条件:
ジオメトリー:パラレルプレート(直径8mm)
周波数:1Hz
測定温度:−60℃〜100℃
昇温速度:5℃/min。
<バインダー樹脂の水酸基価>
JIS K0070に準じて、下記方法により測定した。
(試料の調製)
バインダー樹脂の溶液をアルミニウム箔の皿に取り、13kPaの減圧下、90℃で24時間乾燥させ、溶媒を含まないバインダー樹脂を得た。得られたバインダー樹脂を酢酸エチルに溶解し、水酸基価を測定するための試料とした。
(アセチル化試薬の調製)
ピリジン/無水酢酸を容量比100/30で均一に混合し、アセチル化試薬とした。
(ピリジン水溶液の調製)
試薬一級のピリジン/イオン交換水を容量比2/3で均一に混合し、ピリジン水溶液とした。
(KOHメタノール溶液の調製)
試薬特級の水酸化カリウム(KOH)約70gを採取し、イオン交換水約50mLを加えて溶解させ、これに試薬一級のメタノールを加えて約1Lとし、振盪して溶解させた。炭酸ガスを遮り、一晩以上放置後、上澄み液を取り、ファクターが既知の1mol/L塩酸で標定し、ファクター(下記式の「f」)を求めた。
(滴定)
試料10gを精秤し、アセチル化試薬5mLをホールピペットで添加した。試料を完全に溶解させた後、100℃±2℃のオイルバスに60分間浸漬した。ピリジン水溶液5mLをホールピペットで添加し、均一に混合した後、100℃のオイルバスに10分間浸漬した。常温で冷却した後、ジオキサン40mLを添加した。均一に混合し、フェノールフタレイン指示薬を2〜3滴加え、KOHメタノール溶液で滴定した。薄紅色となった時点を終点とし、滴定量(下記式の「C」)を求めた。同様に試料を添加しないブランクについても滴定量(下記式の「B」)を求めた。
(水酸基価の計算)
次式により水酸基価を計算した。水酸基価は、バインダー樹脂の不揮発分1g中に含まれる水酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数で表す。
水酸基価={[(B−C)×f×56.1]/(s×N/100)}+A
ただし、Bはブランクの滴定量(mL);Cは試料の滴定量(mL);sは試料の採取量(g)(10g);fは1mol/LのKOHメタノール溶液のファクター;Aはバインダー樹脂の不揮発分の酸価(mgKOH/g);Nはバインダー樹脂の不揮発分(%)である。
(酸価の測定)
バインダー樹脂0.5gを精秤し、トルエン50gを加えて均一に溶解させた。指示薬としてフェノールフタレイン/アルコール溶液を2〜3滴加え、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、液の赤みが約30秒で消えてなくなったときを終点とした。このときの滴定量とバインダー樹脂の不揮発分から次式により酸価を計算した。酸価は、バインダー樹脂の不揮発分1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で表わす。
酸価={[D×f×5.61]/(s×N/100)}
ただし、Dは試料の滴定量(mL);sは試料の採取量(g)(0.5g);fは0.1mol/LのKOHアルコール溶液のファクター;Nは試料の不揮発分(%)である。
(不揮発分の測定)
JIS K6833に準拠して、下記の方法により測定した。バインダー樹脂(試料)1.0gをアルミニウム箔の皿に精秤し、熱風循環式恒温槽を用いて、105℃で60〜180分間乾燥させた後、デシケーター中で放冷した。乾燥後のバインダー樹脂(試料)の質量を精秤し、次式により、不揮発分を計算した。
不揮発分(%)=[(Wd)/(Ws)]×100
ただし、Wdは乾燥後の試料の質量(g);Wsは乾燥前の試料の質量(g)である。
<コントラスト>
電気泳動表示装置用シート(表示部分は縦×横=5cm×3cm)の両電極間に15Vの直流電圧を0.4秒間印加して、白表示または黒表示をさせ、各表示の反射率をマクベス分光光度計(商品名「SpectroEye」、GretagMacbeth社製)で測定し、コントラスト(反射率比)を次式により算出した。
コントラスト=(白表示の反射率)/(黒表示の反射率)
なお、白表示および黒表示の反射率は、極性を切り替えて電圧を印加することにより別々に測定し、各反射率は電気泳動表示装置用シートの片面全体について測定した平均値とする。
<表示シートの保存安定性>
電気泳動表示装置用シートについて、25℃、60%RHの環境下で30日間保存した後のコントラストを測定し、保存前のコントラストとの差をとることにより、表示シートの保存安定性を評価した。すなわち、下記式:
(コントラスト変化量)=|(保存後のコントラスト)−(保存前のコントラスト)|
により、絶対値としてコントラスト変化量を求め、変化量が0.5以下をA、変化量が0.5を超えて1.0以下をB、変化量が1.0を超えて1.5以下をC、変化量が1.5を超えるものをDとした。
次に、電気泳動表示装置用分散液および電気泳動表示装置用マイクロカプセルペーストの調製例について説明する。
≪調製例1≫
電気泳動表示装置用分散液(D−1)の調製
攪拌羽根、温度計、冷却管を備えた容量300mLのセパラブルフラスコに、ドデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート(組成比80:15:5)からなるアクリル系ポリマー(重量平均分子量3,300)2g、カーボンブラック(商品名「MA−100R」、三菱化学(株)製)20g、アイソパーM(商品名「Isopar M」、エクソン化学(株)製)78gを仕込み、さらに直径1mmのジルコニアビーズ800gを仕込んだ後、回転数300min−1で攪拌しながら、160℃で2時間反応させてポリマーグラフト処理を行った。処理後、さらにアイソパーM100gを添加し、充分に混合した。その後、ジルコニアビーズを分離して、ポリマーグラフト処理されたカーボンブラック(ここでは、カーボンブラックの表面に存在するカルボキシ基にアクリル系ポリマーのエポキシ基を反応させた。)を含有する不揮発分11%の分散液150gを得た。この分散液に含まれる電気泳動粒子の体積平均粒子径は0.2μmであった。
一方、攪拌羽根を備えた容量300mLのセパラブルフラスコに、酸化チタン(商品名「タイペークCR90」、石原産業(株)製)50g、ドデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(組成比80:15:5)からなるアクリル系ポリマー(重量平均分子量6,800)5g、ヘキサン100gを仕込み、55℃の超音波浴槽(商品名「BRANSON5210」、ヤマト科学(株)製)に入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を2時間行った。このセパラブルフラスコを90℃の恒温槽に移し、溶剤を留去し、粉体状となった酸化チタンをフラスコから取り出し、バットに移した後、乾燥機中、150℃で熱処理を5時間行った。熱処理された酸化チタンをヘキサン100gに分散させ、遠心沈降器で遠心分離し、酸化チタンを洗浄する操作を3回行った後、100℃で乾燥させた。容量300mLのセパラブルフラスコに、洗浄処理された酸化チタン50g、アイソパーM 50gを仕込み、55℃の超音波浴槽(商品名「BRANSON5210」、ヤマト科学(株)製)に入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を2時間行って、ポリマーグラフト処理された酸化チタン(ここでは、酸化チタンの表面に存在するシラノール基にアクリル系ポリマーのアルコキシシリル基を反応させた。)を含有する不揮発分50%の分散液100gを得た。この分散液に含まれる電気泳動粒子の体積平均粒子径は0.5μmであった。
容量200mLのマヨネーズ瓶に、ポリマーグラフト処理されたカーボンブラックの分散液6.0g、ポリマーグラフト処理された酸化チタンの分散液75g、アイソパーM 19gを仕込み、充分に混合して、電気泳動粒子の濃度がカーボンブラック0.66%および酸化チタン37.5%である電気泳動表示装置用分散液(D−1)を得た。
≪調製例2≫
電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−1)の調製
容量100mLの丸底セパラブルフラスコに、メラミン8g、尿素7g、37%ホルムアルデヒド水溶液30g、25%アンモニア水3gを仕込み、攪拌しながら70℃まで昇温した。同温度で2時間保持した後、25℃まで冷却し、メラミン・尿素・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有する不揮発分54.6%の水溶液(A−1)を得た。
次に、容量500mLの平底セパラブルフラスコに、アラビアゴム20gを溶解した水溶液120gを仕込み、ディスパー(商品名「ROBOMICS」、プライミクス(株)製)を用いて、600min−1で攪拌しながら、電気泳動表示装置用分散液(D−1)100gを添加し、その後、攪拌速度を1,600min−1に変更して2分間攪拌した後、攪拌速度を1,000min−1に変更し、水100gを添加して懸濁液を得た。
この懸濁液を、温度計、冷却管を備えた容量300mLの四ツ口セパラブルフラスコに入れ、40℃に保持し、パドル翼で攪拌しながら、メラミン・尿素・ホルムアルデヒド初期縮合物の水溶液(A−1)48gを添加した。15分後に、L−システイン2gを溶解した水溶液100gを滴下ロートで5分間かけて滴下した。40℃を保持したまま、反応を4時間行った後、50℃に昇温し、熟成を2時間行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻に電気泳動表示装置用分散液が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。
得られたマイクロカプセルの分散液を25℃まで冷却し、目開き75μmの標準ふるいで粗大カプセルを除去した。次いで、マイクロカプセル分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、マイクロカプセルを洗浄した。
次いで、このマイクロカプセルに水を添加して200gの分散液とし、これを前記の平底セパラブルフラスコに移し、攪拌しながら、40℃に加温した。
このマイクロカプセル分散液に、エポキシ化合物であるポリグリセロールポリグリシジルエーテル(商品名「デナコールEX−521」(重量平均分子量732、水に対する溶解率100%)、ナガセケムテックス(株)製)15gを溶解した水溶液100gを添加した。30分後に、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gを溶解した水溶液50gを滴下ロートで5分間かけて滴下した。40℃を保持したまま3時間反応を行い、次いで、50℃に昇温して1時間熟成を行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻の外表面にエポキシ樹脂で構成される外殻が形成された殻体に電気泳動表示装置用分散液が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。
得られた分散液を25℃まで冷却し、目開き53μmの標準ふるいで粗大カプセルを除去した。次いで、マイクロカプセル分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、マイクロカプセルを洗浄した。
このようにして得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセルの体積平均粒子径は40.7μmであった。
この電気泳動表示装置用マイクロカプセルを吸引ろ過し、不揮発分65%の電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−1)を得た。
≪調製例3≫
電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−2)の調製
容量500mLの平底セパラブルフラスコに、ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバール205」、(株)クラレ製)6gを溶解した水溶液120gを仕込み、ディスパー(商品名「ROBOMICS」、プライミクス(株)製)を用いて、600min−1で攪拌しながら、電気泳動表示装置用分散液(D−1)100gにメチルメタクリレート10g、メタクリル酸2g、テトラエチレングリコールジアクリレート1gにアゾビスイソブチロニトリル0.15gを溶解した重合性組成物を予め混合した溶液を添加し、その後、攪拌速度を1,300min−1に変更して2分間攪拌した後、攪拌速度を1,000min−1に変更し、水200gを添加して縣濁液を得た。
この縣濁液を、温度計、冷却管を装備した容量300mLの四ツ口セパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを流通し、70℃を保持したまま5時間反応を行い、(メタ)アクリル樹脂で構成される壁層に電気泳動表示装置用分散液が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。
得られた分散液を25℃まで冷却し、目開き75μmの標準ふるいで粗大カプセルを除去した。次いで、マイクロカプセル分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、マイクロカプセルを洗浄した。
このようにして得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセルの体積平均粒子径は52.1μmであった。
この電気泳動表示装置用マイクロカプセルを吸引ろ過し、不揮発分65%の電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−2)を得た。
≪調製例4≫
電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−3)の調製
容量500mLの平底セパラブルフラスコに、アラビアガム20gを溶解した水溶液120gを仕込み、ディスパー(商品名「ROBOMICS」、プライミクス(株)製)を用いて、600min−1で攪拌しながら、電気泳動表示装置用分散液(D−1)100gを添加し、その後、攪拌速度を1,600min−1に変更して2分間攪拌した後、攪拌速度を1,000min−1に変更し、水100gを添加して、縣濁液を得た。
この縣濁液を、温度計、冷却管を備えた容量300mLの四ツ口セパラブルフラスコに入れ、40℃に保持し、パドル翼で攪拌しながら、メラミン・尿素・ホルムアルデヒド初期縮合物の水溶液(A−1)48gを添加した。40℃を保持したまま4時間反応を行い、次いで50℃に昇温して2時間熟成を行い、メラミン樹脂の壁層に電気泳動表示装置用分散液が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。
得られた分散液を25℃まで冷却し、目開き53μmの標準ふるいで粗大カプセルを除去した。次いで、マイクロカプセル分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、マイクロカプセルを洗浄した。
次いで、このマイクロカプセル分散液に水を添加して200gの分散液とし、これを前記の平底セパラブルフラスコに移し、攪拌した。
このマイクロカプセル分散液に、ビスフェノールS 10gを1NのNaOH水溶液に溶解し、全量を200gとした水溶液(pH10)を添加した。30分間攪拌した後、10%のクエン酸水溶液によりpH8.03に調整し、更に1時間攪拌し、ビスフェノールSをマイクロカプセル上に一部析出させた。次いで、平均粒子径20nmのシリカ微粒子(商品名「アエロジル90G」、日本アエロジル(株)製)1gを30gの脱イオン水に分散させた分散液を添加し、10%のクエン酸水溶液によりpH7に調製することにより、メラミン樹脂からなる壁層の外表面にビスフェノールSを結晶成長させると共にシリカ微粒子を沈積させた壁層が形成された殻体に電気泳動表示装置用分散液が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。
得られた分散液を、目開き53μmの標準ふるいで53μm以上の粗大カプセルを除去した。次いで、マイクロカプセル分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、マイクロカプセルを洗浄した。
このようにして得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセルの体積平均粒子径は41.1μmであった。
この電気泳動表示装置用マイクロカプセルを吸引ろ過し、不揮発分65%の電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−3)を得た。
次に、バインダー樹脂の合成例について説明する。
≪合成例1≫
バインダー樹脂(P−1)の合成
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた容量500mLの四ツ口フラスコに、酢酸エチル115gを入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温を78℃まで加熱した。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート60g、n−ブチルアクリレート140g、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)4gを混合した溶液を滴下口より120分間かけて滴下した。滴下後も同温度で30分間攪拌を続けた後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを30分おきに3回添加し、さらに150分間加熱して共重合を行った。
次いで、得られた共重合体の酢酸エチル溶液100gを、n−ヘキサン300gに添加していき、共重合体を析出させた。析出したポリマー分を取り出し、6.7kPaの圧力下、40℃で、わずかに残存している溶剤を除去し、溶媒を含まないバインダー樹脂(P−1)を得た。
さらに、得られた溶剤を含まないバインダー樹脂(P−1)100gをエタノール67gに溶解し、バインダー樹脂(P−1)がエタノールに溶解した溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−1)の数平均分子量は20,800、重量平均分子量は57,400、ガラス転移温度は−25.8℃、水酸基価は143.8mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.2%であった。
≪合成例2≫
バインダー樹脂(P−2)の合成
合成例1において、滴下した重合開始剤である2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を1gとしたこと以外は、合成例1と同様にして、バインダー樹脂(P−2)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−2)の数平均分子量は40,400、重量平均分子量は152,200、ガラス転移温度は−25.1℃、水酸基価は142.7mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.5%であった。
≪合成例3≫
バインダー樹脂(P−3)の合成
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた容量500mLの四ツ口フラスコに、酢酸エチル115gを入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温を78℃まで加熱した。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート60g、n−ブチルアクリレート130g、メチルメタクリレート10g、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.5gを混合した溶液を滴下口より120分間かけて滴下した。滴下後も同温度で30分間攪拌を続けた後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを30分おきに3回添加し、さらに150分間加熱して共重合を行った。
次いで、得られた共重合体の酢酸エチル溶液100gを、n−ヘキサン300gに添加していき、共重合体を析出させた。析出したポリマー分を取り出し、6.7kPaの圧力下、40℃で、残存している溶剤を除去し、溶剤を含まないバインダー樹脂(P−3)を得た。
さらに、得られた溶剤を含まないバインダー樹脂(P−3)100gをエタノール67gに溶解し、バインダー樹脂(P−3)がエタノールに溶解した溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−3)の数平均分子量は38,700、重量平均分子量は99,300、ガラス転移温度は−19.5℃、水酸基価は142.3mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.2%であった。
≪合成例4≫
バインダー樹脂(P−4)の合成
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた容量500mLの四ツ口フラスコに、酢酸エチル115gを入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温を78℃まで加熱した。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート60g、2−エチルヘキシルアクリレート140g、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)4gを混合した溶液を滴下口より120分間かけて滴下した。滴下後も同温度で30分間攪拌を続けた後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを30分おきに3回添加し、さらに150分間加熱して共重合を行った。
次いで、得られた共重合体の酢酸エチル溶液100gを、メタノール300gに添加していき、共重合体を析出させた。析出したポリマー分を取り出し、6.7kPaの圧力下、40℃で、残存している溶剤を除去し、溶剤を含まないバインダー樹脂(P−4)を得た。
さらに、得られた溶剤を含まないバインダー樹脂(P−4)100gをエタノール67gに溶解し、バインダー樹脂(P−4)がエタノールに溶解した溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−4)の数平均分子量は25,500、重量平均分子量は55,700、ガラス転移温度は−38.2℃、水酸基価は141.8mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.1%であった。
≪合成例5≫
バインダー樹脂(P−5)の合成
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた容量500mLの四ツ口フラスコに、酢酸エチル115gを入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温を78℃まで加熱した。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート60g、n−ブチルアクリレート85g、メチルメタクリレート55g、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.5gを混合した溶液を滴下口より120分間かけて滴下した。滴下後も同温度で30分間攪拌を続けた後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを30分おきに3回添加し、さらに150分間加熱して共重合を行った。
次いで、得られた共重合体の酢酸エチル溶液100gを、n−ヘキサン300gに添加していき、共重合体を析出させた。析出したポリマー分を取り出し、6.7kPaの圧力下、40℃で、残存している溶剤を除去し、溶剤を含まないバインダー樹脂(P−5)を得た。
さらに、得られた溶剤を含まないバインダー樹脂(P−5)100gをエタノール67gに溶解し、バインダー樹脂(P−5)がエタノールに溶解した溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−5)の数平均分子量は37,200、重量平均分子量は96,800、ガラス転移温度は4.8℃、水酸基価は140.8mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.4%であった。
≪合成例6≫
バインダー樹脂(P−6)の合成
合成例1において、滴下した重合開始剤である2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.7gとしたこと以外は、合成例1と同様にして、バインダー樹脂(P−6)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−6)の数平均分子量は57,200、重量平均分子量は266,600、ガラス転移温度は−26.1℃、水酸基価は141.3mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.3%であった。
≪合成例7≫
バインダー樹脂(P−7)の合成
合成例1において、2−ヒドロキシエチルアクリレートを50g、n−ブチルアクリレートを150g、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.7gとしたこと以外は、合成例1と同様にして、バインダー樹脂(P−7)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−7)の数平均分子量は57,000、重量平均分子量は229,200、ガラス転移温度は−25.6℃、水酸基価は118.7mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は59.9%であった。
≪合成例8≫
バインダー樹脂(P−8)の合成
合成例4において、2−ヒドロキシエチルアクリレートを20g、2−エチルヘキシルアクリレートを180gとしたこと以外は、合成例4と同様にして、バインダー樹脂(P−8)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−8)の数平均分子量は23,000、重量平均分子量は47,500、ガラス転移温度は−46.9℃、水酸基価は48.1mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は59.6%であった。
≪合成例9≫
バインダー樹脂(P−9)の合成
合成例5において、2−ヒドロキシエチルアクリレートを60g、n−ブチルアクリレートを100g、メチルメタクリレートを40g、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を5gとしたこと以外は、合成例5と同様にして、バインダー樹脂(P−9)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−9)の数平均分子量は22,500、重量平均分子量は41,500、ガラス転移温度は−4.1℃、水酸基価は143.7mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.2%であった。
≪合成例10≫
バインダー樹脂(P−10)の合成
合成例1において、2−ヒドロキシエチルアクリレートを100g、n−ブチルアクリレートを100gとしたこと以外は、合成例1と同様にして、バインダー樹脂(P−10)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−10)の数平均分子量は22,200、重量平均分子量は60,200、ガラス転移温度は−20.1℃、水酸基価は239.4mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.4%であった。
≪合成例11≫
バインダー樹脂(P−11)の合成
合成例1において、2−ヒドロキシエチルアクリレートを140g、n−ブチルアクリレートを60gとしたこと以外は、合成例1と同様にして、バインダー樹脂(P−11)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−11)の数平均分子量は19,900、重量平均分子量は74,000、ガラス転移温度は−11.2℃、水酸基価は335.9mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.1%であった。
≪合成例12≫
バインダー樹脂(P−12)の合成
合成例1において、2−ヒドロキシエチルアクリレートを40g、n−ブチルアクリレートを160g、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を1gとしたこと以外は、合成例1と同様にして、バインダー樹脂(P−12)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−12)の数平均分子量は70,600、重量平均分子量は194,000、ガラス転移温度は−34.2℃、水酸基価は98.6mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は59.8%であった。
≪合成例13≫
バインダー樹脂(P−13)の合成
合成例1において、2−ヒドロキシエチルアクリレートを160g、n−ブチルアクリレートを40g、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を8gとしたこと以外は、合成例1と同様にして、バインダー樹脂(P−13)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(P−13)の数平均分子量は13,700、重量平均分子量は57,300、ガラス転移温度は−6.3℃、水酸基価は385.1mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.4%であった。
≪合成例14≫
バインダー樹脂(CP−1)の合成
合成例1において、滴下した重合性単量体である2−ヒドロキシエチルアクリレート60g、n−ブチルアクリレート140gに代えて、2−ヒドロキシエチルアクリレート60g、n−ブチルアクリレート70g、メチルメタクリレート70gを用いたこと以外は、合成例1と同様にして、バインダー樹脂(CP−1)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(CP−1)の数平均分子量は23,400、重量平均分子量は47,600、ガラス転移温度は15.5℃、水酸基価は142.7mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は59.7%であった。
≪合成例15≫
バインダー樹脂(CP−2)の合成
合成例1において、滴下した重合開始剤である2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.5gとしたこと以外は、合成例1と同様にして、バインダー樹脂(CP−2)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(CP−2)の数平均分子量は71,200、重量平均分子量は374,900、ガラス転移温度は−24.7℃、水酸基価は141.5mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は59.9%であった。
≪合成例16≫
バインダー樹脂(CP−3)の合成
合成例1において、滴下した重合性単量体である2−ヒドロキシエチルアクリレート60g、n−ブチルアクリレート140gに代えて、2−ヒドロキシエチルアクリレート60g、n−ブチルアクリレート105g、メチルメタクリレート35gを用いたこと以外は、合成例1と同様にして、バインダー樹脂(CP−3)のエタノール溶液を得た。
なお、得られたバインダー樹脂(CP−3)の数平均分子量は20,700、重量平均分子量は36,700、ガラス転移温度は−6.8℃、水酸基価は144.2mgKOH/gであった。また、得られたエタノール溶液の不揮発分は60.3%であった。
次に、電気泳動表示装置用シートの製造例について説明する。
≪実施例1≫
調製例2で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−1)30gに合成例1で得られたバインダー樹脂(P−1)のエタノール溶液5gを添加し、混合機(商品名「あわとり練太郎(登録商標)AR−100」、(株)シンキー製)で10分間混合して塗工液を得た。
この塗工液を基材厚125μmのITO電極付きPETフィルム(商品名「ハイビームCF98」、東レ(株)製)に、少なくとも一辺に未塗布部分(導電性部分)が残るようにアプリケーターで塗布した後、90℃で10分間乾燥させた。さらに、この塗工フィルムから、一辺に未塗布部分を残した状態で、塗布部分が縦×横=5cm×3cmとなるように切出し、対向電極として縦×横=6cm×4cm、基材厚75μmのITO電極付きPETフィルム(商品名「ハイビームCF98」、東レ(株)製)を貼り合わせ(任意の2箇所をセロテープ(登録商標)で止める)、厚さ2mmのガラス板上にラミネート面が上方ロール側になるように置き、「マルチコーターTM−MC」((株)ヒラノテクシード製)に付属のラミネート装置を用いて、上方ロールの表面温度(ラミネート温度)を60℃、上方ロールを下方ロールへ圧着する圧力(ラミネート圧力)を1MPaとした2本のロール間を通過させてラミネートすることにより、電気泳動表示装置用シート(S−1)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(S−1)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。結果を表1に示す。
≪実施例2〜9≫
実施例1において、バインダー樹脂(P−1)に代えて、バインダー樹脂(P−2)〜(P−9)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用シート(S−2)〜(S−9)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(S−2)〜(S−9)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。結果を表1に示す。
≪比較例1≫
実施例1において、バインダー樹脂(P−1)に代えて、バインダー樹脂(CP−1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用シート(CS−1)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(CS−1)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。その結果を表1に示す。
≪比較例2≫
実施例1において、バインダー樹脂(P−1)に代えて、バインダー樹脂(CP−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用シート(CS−2)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(CS−2)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。その結果を表1に示す。
≪比較例3≫
実施例1において、バインダー樹脂(P−1)に代えて、バインダー樹脂(CP−3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用シート(CS−3)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(CS−3)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、重量平均分子量が40,000以上、300,000以下であり、ガラス転移温度が−50℃以上、10℃以下であるバインダー樹脂を用いた実施例1〜9の電気泳動表示装置用シートは、初期コントラストが高く、25℃、60%RHの環境下で30日間保存した後のコントラストも高く、保存安定性に優れていた。
これに対し、重量平均分子量は所定の範囲内であるが、ガラス転移温度が10℃を超えるポリマーから構成されているバインダー樹脂を用いた比較例1の電気泳動表示装置用シートは、初期コントラストが低く、25℃、60%RHの環境下で30日間保存した後のコントラストも低かった。また、ガラス転移温度が所定の範囲内であるが、重量平均分子量が300,000を超えるポリマーから構成されているバインダー樹脂を用いた比較例2の電気泳動表示装置用シートは、初期コントラストが低く、25℃、60%RHの環境下で30日間保存した後のコントラストも低かった。さらに、ガラス転移温度が所定の範囲内であるが、重量平均分子量が40,000未満であるポリマーから構成されているバインダー樹脂を用いた比較例3の電気泳動表示装置用シートは、初期コントラストが高いものの、25℃、60%RHの環境下で30日間保存した後のコントラストが低く、保存安定性に劣っていた。
かくして、重量平均分子量が40,000以上、300,000以下であり、ガラス転移温度が−50℃以上、10℃以下であるバインダー樹脂を用いれば、初期コントラストが高く、かつコントラストの経時変化が小さい電気泳動表示装置用シートを製造できることがわかる。
≪実施例10〜13≫
実施例1において、バインダー樹脂(P−1)に代えて、バインダー樹脂(P−10)〜(P−13)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用シート(S−10)〜(S−13)を作製した。
得られた電気表示装置用シート(S−10)〜(S−13)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。結果を表2に示す。
≪実施例14≫
実施例10において、ラミネートにおける上方ロールを下方ロールへ圧着する圧力(ラミネート圧力)を1MPaから2.5MPaに変更したこと以外は、実施例10と同様にして、電気泳動表示装置用シート(S−14)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(S−14)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。結果を表2に示す。
≪実施例15≫
実施例10において、ラミネートにおける上方ロールを下方ロールへ圧着する圧力(ラミネート圧力)を1MPaから3.5MPaに変更したこと以外は、実施例10と同様にして、電気泳動表示装置用シート(S−15)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(S−15)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。結果を表2に示す。
≪実施例16≫
実施例10において、ラミネートにおける上方ロールを下方ロールへ圧着する圧力(ラミネート圧力)を1MPaから0.2MPaに変更したこと以外は、実施例10と同様にして、電気泳動表示装置用シート(S−16)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(S−16)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。結果を表2に示す。
≪実施例17≫
実施例10において、ラミネートにおける上方ロールを下方ロールへ圧着する圧力(ラミネート圧力)を1MPaから0.15MPaに変更したこと以外は、実施例10と同様にして、電気泳動表示装置用シート(S−17)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(S−17)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。結果を表2に示す。
≪実施例18≫
調製例2で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−1)30gに水系ポリウレタン樹脂(商品名「スーパーフレックス470」(不揮発分38%、ガラス転移温度−30.3℃)、第一工業製薬(株)製)8gを添加し、混合機(商品名「あわとり練太郎(登録商標)AR−100」、(株)シンキー製)で10分間混合して塗工液を得た。
この塗工液を基材厚125μmのITO電極付きPETフィルム(商品名「ハイビームCF98」、東レ(株)製)に、少なくとも一辺に未塗布部分(導電性部分)が残るようにアプリケーターで塗布した後、90℃で10分間乾燥させた。さらに、この塗工フィルムから、一辺に未塗布部分を残した状態で、塗布部分が縦×横=5cm×3cmとなるように切出し、対向電極として縦×横=6cm×4cm、基材厚75μmのITO電極付きPETフィルム(商品名「ハイビームCF98」、東レ(株)製)を貼り合わせ(任意の2箇所をセロテープ(登録商標)で止める)、厚さ2mmのガラス板上にラミネート面が上方ロール側になるように置き、「マルチコーターTM−MC」((株)ヒラノテクシード製)に付属のラミネート装置を用いて、上方ロールの表面温度(ラミネート温度)を60℃、上方ロールを下方ロールへ圧着する圧力(ラミネート圧力)を1MPaとした2本のロール間を通過させてラミネートすることにより、電気泳動表示装置用シート(S−18)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(S−18)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。結果を表2に示す。
≪実施例19〜20≫
実施例10において、電気泳動表示装置用マイクロカプセルペーストを(C−1)に代えて(C−2)〜(C−3)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして、電気泳動表示装置用シート(S−19)〜(S−20)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(S−19)〜(S−20)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。その結果を表2に示す。
≪比較例4≫
実施例10において、ラミネートにおける上方ロールを下方ロールへ圧着する圧力(ラミネート圧力)を1MPaから5MPaに変更したこと以外は、実施例10と同様にして、電気泳動表示装置用シート(CS−4)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(CS−4)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。結果を表2に示す。
≪比較例5≫
実施例10において、ラミネートにおける上方ロールを下方ロールへ圧着する圧力(ラミネート圧力)を1MPaから0.05MPaに変更したこと以外は、実施例10と同様にして、電気泳動表示装置用シート(CS−5)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(CS−5)について、コントラストおよび保存安定性を測定した。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、0mgKOH/g以上、400mgKOH/g以下の範囲内で様々な水酸基価を有するバインダー樹脂を用いた実施例10〜13の電気泳動表示装置用シート、ラミネート圧力を0.1MPa以上、4MPa以下の範囲内で様々な圧力に変更した実施例14〜17の電気泳動表示装置用シート、バインダー樹脂として、(メタ)アクリル系樹脂に代えて、ウレタン系樹脂を用いた実施例18の電気泳動表示装置用シート、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する二層マイクロカプセルに代えて、(メタ)アクリル樹脂で構成される単層マイクロカプセルを用いた実施例19の電気泳動表示装置用シート、および、メラミン樹脂からなる壁層の外表面にビスフェノールSを結晶成長させると共にシリカ微粒子を沈積させた壁層が形成された二層マイクロカプセルを用いた実施例20の電気泳動表示装置用シートは、いずれも初期コントラストが高く、25℃、60%RHの環境下で30日間保存した後のコントラストも高く、保存安定性に優れていた。
これに対し、ラミネート圧力が0.1MPa以上、4MPa以下の範囲外である比較例4および5の電気泳動表示装置用シートは、初期コントラストが低く、25℃、60%RHの環境下で30日間保存した後のコントラストも低かった。
かくして、重量平均分子量が40,000以上、300,000以下であり、ガラス転移温度が−50℃以上、10℃以下であるバインダー樹脂を用いる限り、水酸基価が0mgKOH/g以上、400mgKOH/gの範囲内で様々な値をとる場合であっても、ラミネート圧力が0.1MPa以上、4MPa以下の範囲内で様々な値をとる場合であっても、バインダー樹脂として、(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂を用いた場合であっても、そして、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する二層マイクロカプセル以外の種々のマイクロカプセルを用いた場合であっても、初期コントラストが高く、かつコントラストの経時変化が小さい電気泳動表示装置用シートを製造できることがわかる。
次に、電気泳動表示装置を用いた電子機器の製造例について説明する。
≪実施例21≫
図1は、本発明の電子機器の一実施態様であるICカードの一実施例を示す平面図である。ICカード10は、複数の操作ボタン11と、表示パネル12とを備えている。ICカード10において、データ表示手段としての表示パネル12が本発明の電気泳動表示装置である。
≪実施例22≫
図2は、本発明の電子機器の一実施態様である携帯電話の一実施例を示す斜視図である。携帯電話20は、複数の操作ボタン21と、受話口22と、送話口23と、表示パネル24とを備えている。携帯電話20において、データ表示手段としての表示パネル24が本発明の電気泳動表示装置である。
≪実施例23≫
図3は、本発明の電子機器の一実施態様である電子ブックの一実施例を示す斜視図である。電子ブック30は、ブック形状のフレーム31と、フレーム31に対して回動自在に設けられた(開閉可能な)カバー32とを備えている。フレーム31には、表示面を露出させた状態の表示装置33と操作部34とが設けられている。電子ブック30において、データ表示手段としての表示装置33が本発明の電気泳動表示装置である。
≪実施例24≫
図4は、本発明の電子機器の一実施態様である電子ペーパーの一実施例を示す斜視図である。電子ペーパー40は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成されている本体41と、表示ユニット42とを備えている。電子ペーパー40において、データ表示手段としての表示ユニット42が本発明の電気泳動表示装置である。
実施例21のICカード、実施例22の携帯電話、実施例23の電子ブック、実施例24の電子ペーパーは、いずれもデータ表示手段が本発明の電気泳動表示装置であるので、初期コントラストなどの表示性能に優れると共に、常温で長時間(例えば、20℃、60%RHの環境下で30日間)放置した場合であっても、優れた表示性能を維持することができる。