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JP4488723B2 - 1,2−α−L−フコシダーゼをコードする遺伝子 - Google Patents

1,2−α−L−フコシダーゼをコードする遺伝子 Download PDF

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Description

本発明は、種々のオリゴ糖および糖タンパク質の末端α-(1→2)フコシド結合を特異的に加水分解する1,2-α-L-フコシダーゼをコードする遺伝子に関する。
グラム陽性の偏性嫌気性菌であるビフィズス菌(Bifidobacteria)は、宿主に対する多くの有益な共生の効果、例えば下痢の防止、有害細菌および毒性化合物の減少、免疫調節ならびに抗発癌性活性を奏しており、腸管の健康を促進する重要な共生生物であると考えられている。近年、ビフィズス菌は多大な注目を引き付けてきたが、それらの共生効果に存在する正確な機構は、依然としてほとんど不明である。
自然中のビフィズス菌は、単糖類および二糖類の乏しい環境である下部腸管においてコロニーを形成する。なぜなら、このような糖類は、宿主および上部腸管に存在する微生物によって優先的に消費されるからである。下部腸管における栄養制限状態の下で生存するため、ビフィズス菌は、表面結合型および/または細胞外型で、多様な種類のエキソグリコシダーゼおよびエンドグリコシダーゼ(これによって、ビフィズス菌は多様な炭水化物を利用することができる)を産生することが知られている。
一方、ヒトの腸の上皮細胞はムチン糖タンパク質類を発現および/または分泌することが知られている。この糖タンパク質は、化学的損傷および物理的損傷から腸細胞を防御するのにおいて、そして病原体による侵襲を防止するのにおいて、重要な役割を果たすと考えられている。腸のムチン糖タンパク質類は、多数の-結合オリゴ糖類を含み、その非還元末端ではL-フコシル残基が頻繁に見出される。L-フコシル残基は、α-L-フコシダーゼによって特異的に加水分解され、α-L-フコシダーゼの糖転移反応の触媒によりα-L-フコースを含むオリゴ糖の生成に寄与する。いくつかの糞便分解細菌(例えば、ビフィズス菌、クロストリジウム(Clostridia)およびバクテロイデス(Bacteroides))が、α-L-フコシダーゼを産生することを考慮すれば、α-L-フコシダーゼがヒト腸管におけるこれらの細菌による選択的なコロニー形成の原因であり得ることが予想される。したがって、ビフィズス菌の有するα-L-フコシダーゼの遺伝子を得ることができれば、選択的なコロニー形成の原因解明につながるのはもとより、腸内への定着に有利な微生物群、例えば乳酸菌の提供や、ビフィズス菌に対して有利に働く因子となる物質、例えばα-L-フコースを含む新規なオリゴ糖の提供やその利用、その製造に大きく寄与できる可能性がある。
現在まで、α-L-フコシダーゼはいくつかの原核生物および真核生物の供給源から精製されているが(例えば、特開2000−125857号公報や特開平11−123075号その他非特許文献1〜5などを参照)、ビフィズス菌からの単離精製は、本願発明者らも述べているように非常に困難であって(本願明細書、実施例の項)、ビフィズス菌由来のα-L-フコシダーゼが単離精製されたという報告は未だない。また、ビフィズス菌はもとよりその遺伝子のクローニングに関しての報告はほとんどなく、例えば、特開平7−308192号に開示されたストレプトマイセス(Streptomyces)種由来の1,3-/4-α-L-フコシダーゼ(GH29ファミリー)遺伝子が知られているに過ぎない。
特開2000−125857号公報 特開平11−123075号公報 特開平7−308192号公報 Aminoff,D.,et al. Enzymes that destroy blood group specificity. I. Purification and properties of α-L-fucosidase from Clostridium perfringens. J. Biol. Chem. 245(1970):1659-1669 Berg,J.O.,et al. Purification of glycoside hydrolases from Bacteroides fragilis. Appl. Environ. Microbiol. 40(1980):40-47 Hoskins,L.C., Mucin degradation in human colon ecosystems. Isolation and properties of fecal strains that degrade ABH blood group antigens and oligosaccharides from mucin glycoproteins. J. Clin. Invest. 75(1985):944-953 Larson,G.,et al. Degradation of human intestinal glycosphingolipids by extracellular glycosidases from mucin-degrading bacteria of the human fecal flora. J. Biol. Chem. 263(1988):10790-10798 Salyers,A.A.,et al. Fermentation of mucins and plant polysaccharides by anaerobicbacteria from the human colon. Appl. Environ. Microbiol. 34(1977):529-533
そこで、本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意努力したところ、ビフィズス菌から1,2-α-L-フコシダーゼをコードする遺伝子を見出し、当該遺伝子構造からビフィズス菌由来の1,2-α-L-フコシダーゼの構造を特定して、本願発明を完成するに至った。
本発明は、
(1)配列表の配列番号1に示された塩基配列からなる非還元末端に位置するフコシルα1,2−ガラクトース結合に特異的な1,2-α-L-フコシダーゼをコードする単離された遺伝子、
(2)上記(1)に記載された遺伝子を含有する組換えベクター、
(3)上記(1)に記載された遺伝子を含有する組換えベクターが導入された組換体、
(4)上記(3)に記載された組換体を用いて非還元末端に位置するフコシルα1,2−ガラクトース結合に特異的な1,2-α-L-フコシダーゼを生産する方法、
(5)上記(3)に記載された組換体を用いて生産された非還元末端に位置するフコシルα1,2−ガラクトース結合に特異的な1,2-α-L-フコシダーゼ、
(6)配列表の配列番号2に示されたアミノ酸配列からなる非還元末端に位置するフコシルα1,2−ガラクトース結合に特異的な1,2-α-L-フコシダーゼ活性を有する酵素タンパク質
に係るものである。

本発明によれば、ビフィズス菌由来の1,2-α-L-フコシダーゼをコードする遺伝子が提供される。ビフィズス菌は腸管内におけるフコースオリゴ糖の活用により腸管に定着していると考えられるので、本発明による遺伝子を用いた遺伝子組換え手法によれば、腸管に定着しやすい有利な微生物群、例えば乳酸菌の提供や、ビフィズス菌に対して有利に働く因子となる物質、例えばα-L-フコースを含む新規なオリゴ糖の提供、α-L-フコースを含むオリゴ糖の新たな利用、その製造に大きく寄与できる可能性がある。そして、これらの微生物群や新規なオリゴ糖がヒトや動物の整腸作用を発揮、増進し、ヒトや動物の健康の維持促進に貢献する。
本発明の1,2-α-L-フコシダーゼをコードする遺伝子(以下「afuA遺伝子」と称する)は、ビフィズス属に属するビフィズス菌(Bifidobacteria)から単離されたものである。この遺伝子は、配列表の配列番号1に示された塩基配列を有する。afuA遺伝子は6120の塩基対からなり、配列表の配列番号2に示された1959アミノ酸残基からなる分子量約20万のタンパク質をコードする。afuA遺伝子は、図3に示すように、131〜137番塩基にSD配列を有し、144〜6023番塩基に、配列番号2のアミノ酸配列で示されたタンパク質をコードする塩基配列を有する。
当該タンパク質(以下「AufAタンパク質」と称する)は1,2-α-L-フコシダーゼ活性を有するものではあるが、従来から知られているグリコシド加水分解酵素ファミリーとは相同性を示さない。また、従来から知られているフコシダーゼとはそのアミノ酸配列を異にするものである。
当該タンパク質において、1,2-α-L-フコシダーゼ活性を担うドメインは、配列番号4のアミノ酸配列で示され、当該フコシダーゼの577〜1474番目のアミノ酸残基、aufA遺伝子の2639〜5332番目(配列番号1における1872−4565番目)の塩基に対応する。この塩基配列は配列番号3で示される。
本発明において、配列番号2に示されたAufAタンパク質をコードする範囲内であれば、配列番号1の塩基配列のうち少なくとも1個の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加されたものであってもよい。
本発明の遺伝子がコードするタンパク質は、1,2-α-L-フコシダーゼ活性を損なわない程度に、少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたものであってもよい。この欠失、置換等が行われる場所は、配列番号4に示されたドメイン領域であるかどうかを問わない。このような変異体としては、AlaとValとの間、LeuとIleとの間、SerとThrとの間、AspとGluとの間、LysとArgとの間等で置換の起こったものや、立体構造保持に不必要なルーツの部分が欠失したもの等が挙げられる。一般的には、このドメインが保存されていればよく、本発明には、例えば実施例において後述するように、例えば図4に示すpSA20、pSA86、pSA117で示されたプラスミドや当該プラスミドが導入された大腸菌などの組換体、当該プラスミドから発現された酵素タンパクが含まれる。
配列番号2のアミノ酸配列で示されたAufAタンパク質は、配列番号1の塩基配列の発現により得られるものであるので、配列番号1の塩基配列あるいはそのドメインに対応する塩基配列4などをベクターに導入して発現させることができる。すなわち、塩基配列が導入された組換えベクターを例えば大腸菌などの宿主に形質転換して組換体とし、その後、該組換体を用いて培養する。そして、培養された細胞からは、細胞破壊、塩析、溶媒沈澱、クロマトグラフィーによる分離精製など常法に従ってタンパク質を精製すればよい。これらの組換えベクターには、公知の発現系を有する遺伝子操作宿主細胞由来のプラスミドやファージ、コスミド等に本発明の遺伝子を挿入したものが用いられる。遺伝子操作宿主細胞由来のプラスミドとしては、例えば大腸菌由来のpBR322、pUC119、サルモネラ菌由来のpMW118、pMW219などが挙げられる。組換えベクターを細胞に導入する形質転換についても特に制限されるものではなく、一般的な方法、例えば塩化カルシウム法などが利用できる。
配列番号1の塩基配列は、例えば、以下の実施例に記載されたように標準的なクローニング法により単離される。もちろん、DNA合成によってもよい。また、クローニングにおいては、レポータープラスミドとして、β-ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ遺伝子)を連結したレポータプラスミドを用い、イソプロピル-β-D-ガラクトピラノシド(IPTG)の添加によってその発現を誘導するのが、効率的である。なお、クローニングに際しては一般的に使用される抗生物質耐性遺伝子やマーカ遺伝子等を、適宜選択して使用するベクターに組み込めばよい。
組換えベクターによる形質転換体作製も常法に従って行えばよい。このとき宿主細胞として、宿主内に挿入された遺伝子を維持、増殖、発現させ得るものであればいずれも使用可能である。宿主には、例えば、大腸菌、ストレプトコッカス属細菌、スタフィロコッカス属細菌、枯草菌、酵母、動物細胞が挙げられる。
本発明のAufAタンパク質は、種々のオリゴ糖および糖タンパク質の末端α-(1→2)フコシド結合、特にフコースとガラクトース間のα1→2β結合の加水分解に寄与する。また、フコシダーゼは、フコースとオリゴ糖を含む水溶液とからそのリバースハイドロリシス反応により、α-(1→2)フコシド結合を生じさせることも報告されており(例えば特開2000−245496号公報参照)、フコシルオリゴ糖の合成や新規なフコシルオリゴ糖の合成にも応用できる。
腸内コロニ-形成株であるBifidobacterium bifidumから、1,2-α-L-フコシダーゼをコードする遺伝子を単離し、塩基配列を決定した。ビフィズス菌の細胞培養液または細胞壁画分のいずれかからこの酵素を精製するいくつかの試みは失敗し、ビフィズス菌から1,2-α-L-フコシダーゼを単離できず、単離されたタンパク質からアミノ酸配列や遺伝子配列を決定しえなかった。そこで、遺伝子の単離には、非フコシダーゼ産生細菌である大腸菌DH5α株を用いる発現クローニング戦略によった。
A.材料および方法
(1)細菌の株およびプラスミド
ビフィズス菌として、Bifidobacterium breve203およびJCM119、B.bifidum ATCC29251、JCM1254およびJCM7004、B.infantis JCM1222、B.longum 33RおよびJCM1217を用いた。また、クローニングには大腸菌Escherichia coli DH5α(Woodcock,D.M.et al., Quantitative evaluation of Escherichia coli host strains for tolerance to cytosine methylation in plasmid and phage recombinants. Nucleic Acids Res.17(1989):3469-3478)を用いた。クローニング用のプラスミドには、pBR322(Sutcliffe, J. G. Nucleotide sequence of the ampicillin resistance gene of Escherichia coli plasmid pBR322. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75(1978):3737-3741)、pMW118(ニッポンジーン社製)、pMW119(同),pMW219(同)を用い、必要に応じて常法によって必要なプラスミドを作製した。なお、表1〜表3に、上記の大腸菌や以下の実験で使用されたプラスミドの特徴を示した。また、ドメイン決定のためのN末端欠失株およびC末端欠失株作製のために用いられたプライマー対の塩基配列を配列番号5〜16に示した。
Figure 0004488723
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(2)培地および化学物質
大腸菌の培養には、ルリア-ベルターニ(Luria-Bertani)ブロスを慣用的に用いた。ビフィズス菌の培養には、アネロパック(登録商標、三菱ガス化学社製)による嫌気下でGAM培地(ニッスイ社製)を用いた。それぞれの培地には、100μg/mlおよび30μg/mlの最終濃度でアンピシリンおよびカナマイシンを添加した。
基質として、2´-フコシルラクトース(Fucα1→2Galβ1→4Glc、協和発酵工業株式会社の寄贈による)、6-フコシル-,´-ジアセチルキトビオース(GlcNAcβ1→4(Fucα1→6)GlcNAc、シグマ社製)、3-フコシルラクトース(Galα1→4(Fucα1→3)Glc、シグマ社製)、3-フコシルガラクトース(Fucα1→3Gal、フナコシ社製)、血液型物質H(II)(Fucα1→2Galβ1→4GlcNAc、同社製)、血液型A物質(GalNAcα1→3(Fucα1→2)Gal)、血液型B物質(Galα1→3(Fucα1→2)Gal、同社製)、ラクト--フコペンタオースI(Fucα1→2Galβ1→3GlcNAcβ1→3Galβ1→4Glc)、ラクト--フコペンタオースII(Galβ1→3(Fucα1→4)GlcNAcβ1→3Galβ1→4Glc)、ラクト--フコペンタオースV(Galβ1→3GlcNAcβ1→3Galβ1→4(Fucα1→3)Glc)を含む乳汁オリゴ糖類(フナコシ社製)、-ニトロフェニル(pNP)-α-L-フコシド、NP-β-L-フコシド、および4-メチルウンベリフェリル-フコシド(和光純薬工業社製)、そして、ピリジルアミノ(PA)オリゴ糖類(タカラバイオ株式会社製)を用いた。これらの化学物質は、特記したものを除いてすべて市販品を用い、いずれもさらに精製はしなかった。
(3)2´-フコシルラクトースのピリジルアミノ化
長谷ら(Hase,S.,et al. Structure analysis of oligosaccharides by tagging of the reducing end sugars with a fluorescent compound. Biochem. Biophys. Res. Commun. 85(1978):257-263)の方法によって、2-アミノピリジンを用いた2´-フコシルラクトース(2´-FL)の蛍光標識を行った(PA化)。カップリング反応後、その生成物を還元して、Sephadex G-25(Pharmacia社製)上のゲル濾過によって精製し、1mgの出発材料から約0.5mgのPA-2´-FLを得た。
(4)フコシダーゼアッセイ
ビフィズス菌の培養液および細胞壁画分ならびにE.coliの無細胞抽出液は、スポロットらの方法(Sprott,G.D,et al., Cell fracitonation Methods for general and molecular bacteriology. American Society for Microbiology,73-103(1994))に従って調整した。フコシダーゼ活性測定のための標準的な溶液には、100mMのリン酸ナトリウム(pH7.5)、2mMの基質および10mMのリン酸ナトリウム(pH6.5)で透析したタンパク質サンプルを全量100μlとしたものを用いた。37℃で適切な時間インキュベーションした後、沸騰している水槽中で3分間加熱することによって反応を停止した。そして、以下に記載した3つの方法のうちのいずれかによって、α-L-フコシダーゼ活性を測定した。
(i)薄層クロマトグラフィー(TLC)法
シリカゲルプレート(Silica gel 60,メルク社製)上でのTLCによって反応生成物を分析した。プレートを、クロロホルム/メタノール/水=3/3/1の溶媒系で展開し、乾燥させた。そしてオルシノール-H2SO4試薬を噴霧した後、このプレートを120℃で加熱して可視化した(Holmes,E.W.,et al. Separation of glycoprotein-derived oligosaccharides by thin-layer chromatography. Anal. Biochem.93(1979):167-170)。
(ii)高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)法
TSK-ゲルアミド-80カラム(4.6×250mm)(東ソー社製)およびF-1050蛍光分光光度計を備えたHitachi L-6200クロマトグラフシステムを用いて、PA-オリゴ糖類を含む反応混合物を、HPLCによって分析した。カラムに反応混合物をインジェクションした後、0.3%酢酸を含有する90%〜60%の直線的に漸減する勾配のアセトニトリル(アンモニアでpH7.0に調整した)を用いて、40℃、30分間、流速0.5ml/分で溶出させた。315nmおよび380nmの励起波長および放出波長を用いてモニタリングし、その蛍光強度からPA-オリゴ糖類の濃度を求めた。
(iii)フコースデヒドロゲナーゼ(FDH)アッセイ
コヘンフォードらの方法(Cohenford,M.A.,et al. Colorimetric assay for free and bound L-fucose. Anal. Biochem. 177(1989):172-177)に従い、FDH-NADPシステムによって、オリゴ糖類および糖タンパク質から遊離されたL-フコースの量を測定した。すなわち、反応混合物80μlに対して、128μlの150mM Tris-HCl(pH8.5)、16μlの50mM NADP、および16μlのFDH溶液(1mU/μl、シグマ社製)を添加した。37℃で50分間インキュベーションした後、発色のために240μlのネオクプロイン-Cu2+試薬を添加し、次いでこれを455nmでの分光光度測定によって定量した。基質から1分間あたり1μmolのフコースを放出する酵素の量を、酵素活性1単位(unit)として規定した。
(5)遺伝子手法
遺伝子手法は、基本的にSambrookらの方法(Sambrook,J.,et al. Molecular cloning: a laboratory manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. 1989)に従って行った。
B.1,2-α-L-フコシダーゼ遺伝子(afuA遺伝子)のクローニング
(1)1,2-α-L-フコシダーゼ生産能
ゲノムライブラリーの構築に先立ち、上記ビフィズス菌8菌種を用いてフコシダーゼ活性を測定した。各培養液および細胞壁画分から試験液を調製し、基質として2´-フコシルラクトース(2´-FL)を用いて、α-(1→2)-L-フコシド結合の加水分解能について試験した。その結果、B.infantis株およびB.bifidum株は1,2-α-L-フコシダーゼを産生することが見出されたが、B.breve株およびB.longum株は、1,2-α-L-フコシダーゼを産生しなかった。中でもB.bifidum JCM1254株が、最高の活性を示した。しかし、培養液または細胞壁画分のいずれもからこの酵素を精製することができなかった。
(2)ゲノムライブラリーの構築
ゲノムライブラリーの構築には、最高のフコシダーゼ活性を認めたB.bifidum JCM1254株を用いた。ライブラリーの構築は、片山らの方法(Katayama,T.,et al. Cloning and random mutagenesis of the Erwinia herbicola tyrR gene for high-level expression of tyrosine phenollyase. Appl.Environ.Microbiol.66(2000):4764-4771)に従って行った。すなわち、B.bifidum JCM1254からゲノムDNAを単離し、Sau3AIを用いて部分的に消化した後、アガロースゲル電気泳動によって分画して、9〜10kbのフラグメントを得た。回収したDNAフラグメントをpBR322の互換性のあるBamHI部位に挿入し(Takara社製 「Ligation Kit Version II」を用いた)、そしてこれを用いてE.coli株DH5αを形質転換して、LB培地上で約800のコロニーを形成した。
(3)1,2-α-L-フコシダーゼ遺伝子(afuA遺伝子)のクローニング
上記で得た各コロニーを、小容積のBugBusterタンパク質抽出試薬(ノバゲン社製)中に懸濁して溶解し、2´-FLとともにインキュベートした。そして、この反応混合物をTLCによって分析して、1,2-α-L-フコシダーゼ活性を求めた。その中から、2´-FLからフコースを放出する能力を高度に有するSA3と命名した1つのクローンを候補として選択した。そして、選択したコロニーによる反応混合物を対象に、PA化した2´-FLを基質とするフコースデヒドロゲナーゼ(FDH)アッセイおよびHPLC分析によって酵素活性を測定した。HPLCによる分析結果を図1に示す。
PA-2´-FL(2mM)を、SA3株の無細胞抽出液(100mMのリン酸緩衝液(pH7.5))とともにインキュベートした場合、PA-2´-FLのピークは低下し、そして代わりに、PA-ラクトース(PA-Lac)に正確に対応する新しいピークが出現した(図1(d))。一方でPA-2´-FLを、pBR322を有するE.coli株DH5αの無細胞抽出液とともにインキュベートした場合は、ピークの変化は観察されなかった(図1(c))。SA3抽出物を利用したPA-2´-FLからのL-フコース生成における時間依存性、用量依存性は、FDH-NADPアッセイシステムを用いても同様に観察された(データ示さず)。なお、フコースの量は、前記コヘンホードらの方法に従って産生されたNADPHの量として求められた。こうして、1,2-α-L-フコシダーゼ遺伝子が、B.bifidum JCM1254から首尾よくクローニングされ、そしてE.coliにおいて発現されたことが確認された。
C.1,2-α-L-フコシダーゼ遺伝子(afuA遺伝子)の詳細
(1)afuA遺伝子の塩基配列
上記SA3と命名した1つのクローン細胞からafuA遺伝子の塩基配列を決定した。BigDyeターミネーターv3.0サイクル配列決定即時反応キット(BigDye Terminator v3.0 cycle sequencing ready reaction kit)、およびABIプリズム遺伝子アナライザアナライザー(Applied Biosystems社)を用い、サンガーらの方法(Sanger,F.,et al. DNA sequencing with chain-terminating inhibitors. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74(1977):5463-5467)に従って、両方の鎖についてDNA配列を決定した。このとき用いられた合成オリゴヌクレオチドは、プロリゴ社から市販されているものを用いた。配列データのコンパイルには、GENETYA-MAC 10.1ソフトウェア(ソフトウェア開発株式会社製)を用いた。この結果、pSA3からクローニングされた遺伝子は、N末端に対応する領域が欠けた下流域(1721番目以降の塩基配列;図4参照)であることが判明した。
次いで、このafuA遺伝子の上流域をクローニングするために、プローブとしてpSA3の1.1kb PstI-BamHIフラグメント(図2の破線)を用いて、上記Sambrookらの標準的なハイブリダイゼーション方法に準じて(具体的には、High efficiency hybridization solution(日本ジーン社製)を使用し、そのプロトコールに従った)、B.bifidum JCM1254のゲノムライブラリーをスクリーニングした(図2)。プローブの標識には、製造業者の指示に従って、[α-32P]-dATP(ICN)を用いるMegaprime DNA標識システム(アマシャムファルマシア社製)を用いた。
(2)afuA遺伝子の配列分析
上記プラスミドpSA3の配列分析によって、クローニングされた遺伝子は、3つの可能性のあるオープンリーディングフレーム(ORF)を含むことが明らかになった(図2)。これらのうちの1つ(ORF3と命名した)は、タンパク質ファミリーのデータベース(Pfam 03577)におけるペプチダーゼファミリーU34のコンセンサス配列に対して高い同一性(>90%)を示した。そして、B.longum NCC2705のジペプチダーゼD(PepD)に対し、アミノ酸配列において高い類似性(85%)を示した。ペプチダーゼに対するOFR3の類似性、およびpSA3のKpnI-内部フラグメント(2.3kb)の欠失が、このクローンの1,2-α-L-フコシダーゼ活性の損失を生じたという事実(データ示さず)によって、2´-FLの加水分解におけるORF3産物の関与の可能性が排除された。
ORF1およびORF2のセンス鎖は、逆方向にかなりの程度重複していた。前記段落番号0028で示した方法によって得られた上流域2.9KB KpnI-BamHIフラグメントを低コピー数のプラスミドであるpMW118中にクローニングし(pSA19)、次いでそのDNA配列を決定した。結果として、2つのORFが完全な形態で出現した(図2参照)。
どちらのORFが現実に1,2-α-L-フコシダーゼをコードするかを決定するために、各々のORFをlacZプロモーターの制御下に置き、次いでイソプロピル-β-D-ガラクトピラノシド(IPTG)の添加によってその発現を誘導した(ORF1についてはpSA26,そしてORF2についてはpSA27で示す)。IPTGの添加によって、ORF2が誘導されたときには、1,2-α-L-フコシダーゼ活性の増大は観察されなかったが(1.0〜1.1mU/mgの上昇)、ORF1が誘導されたときには、1,2-α-L-フコシダーゼの比活性は有意に上昇した(1.3〜20mU/mgの上昇)。これにより、ORF1が1,2-α-L-フコシダーゼをコードすることが示された。なお、afuA遺伝子のコドン使用頻度は、そのデータベース(かずさDNA研究所(Kazusa DNA Research Institute)のコドン使用頻度データベース;http://www.kazusa.or.jp/codon/)におけるB.bifidumの他の遺伝子のコドン使用頻度と極めて類似していた。
D.AfuAタンパク質の構造
(1)AfuAタンパク質の一次構造
配列番号2に示されたタンパク質の一次構造を塩基配列とともに図3に示す。図3に示された塩基配列は、配列番号1に相当する。AfuAタンパク質のN末端およびC末端において2つの典型的な膜貫通セグメントの存在が明らかになった。N末端の1つは、正に荷電した残基と、それに続く25〜30アミノ酸の疎水性ストレッチから構成されている。したがって、このことは、そのシグナルペプチドとしての役割を強力に示唆する。C末端セグメントは、20〜23の疎水性アミノ酸残基と、それに続く3つの正に荷電した残基を含み、膜アンカーとして機能すると考えられる。1,2-α-L-フコシダーゼ活性は、培養液中で、そしてほとんどはB.bifidum JCM1254の細胞壁画分において見出されたことを考慮すれば、これらの構造的特徴はその局在性と一致していた。B.bifidumの培養物の培地中で見出された酵素活性は、細胞表面由来のタンパク質の漏出に起因し得る。シグナルペプチドとしてのAfuAタンパク質のN末端セグメントの重要性はまた、pSA26を保有しているE.coli株(図2参照)が、培養培地中に1,2-α-L-フコシダーゼをわずかに排出する(データ示さず)という観察によっても強調された。可能性のあるリボソーム結合部位は、有望な開始コドンから6bp離れて配置されており、そしてプロモーター様配列もまた上流域に見出された(図3参照)。以上述べたように、AfuAタンパク質は、配列番号2で示される1,959のアミノ酸残基から構成され、これは計算上の分子量が205kDaであった。
(2)AfuAタンパク質のドメイン構造
AfuAの一次構造全体は、既知のグリコシダーゼファミリーの一次構造に対して類似性がないので、次に、1,2-α-L−フコシダーゼ活性について必須であるドメインの位置付けを行った。
まず、pSA3を有するE.coli株(人工的なtet-afuA翻訳融合物を保有する)が、1,2-α-L-フコシダーゼ活性を示したので、その活性を担うドメインがこのインサート内に局在することが示された(図4参照、1721bより下流域)。
次に、低コピーベクターであるpMW219に存在するlacZα遺伝子のN末端部分に由来する8つのアミノ酸残基との翻訳融合物として発現されたAfuAタンパク質の欠失変異体を構築した(pSA86、87、89、90、および108)。このために、テンプレートとしてpSA3を用いて、afuA遺伝子のN末端部分を増幅するのにおいて、あるプライマー対(pSA86:配列番号7および配列番号11、pSA87:配列番号8および配列番号11、pSA89:配列番号9および配列番号11、pSA90:配列番号10および配列番号11、pSA108:配列番号5および配列番号6)を用いた。HindIIIおよびMluIを用いてこの増幅したフラグメントを消化し、次いでpSA23の8.8kbのHindIII-MluIフラグメントと連結させた。DNA配列決定によって確認した後、得られた欠失変異体をフコシダーゼ分析に供した。これらの欠失変異体酵素の発現を、IPTGの添加によって誘導し、次いでこれらの変異体が、2´-FLからL-フコースを生成する能力を測定した。その結果、図4に示されるように、N末端の576アミノ酸残基(911〜2638番塩基)は、フコシダーゼ活性の損失なしに除去可能であることが見出された。なお、欠質分析の目的のために、KODポリメラーゼ(東洋紡社製)を含む、高忠実度(High-fidelity)PCRを実施し、そして増幅したフラグメントを完全に配列決定して、計画した塩基の変化以外に塩基の変化が生じなかったことを確認した。
そして、C末端欠失株を作製した。このC末端欠乏株に関しては、あるプライマー対(pSA117:配列番号12および配列番号13、pSA113:配列番号12および配列番号14、pSA114:配列番号15および配列番号16)を用いた。図4(A)に示した位置に終止コドン(TAA+A)を導入することによって、3つのC末端欠失変異体を構築し、次いでその活性を測定した。これらの結果によって、898のアミノ酸残基から構成される領域(配列番号4で示される577〜1474番アミノ酸残基、図4(B)参照)は、α-(1→2)-フコシド結合の加水分解のために必須のドメインを構成することが確認された。
(3)ドメインの配列類似性
他のタンパク質の配列類似性について、BLASTによる検討を行った。AfuAタンパク質の1475〜1819番目のアミノ酸残基から構成される配列番号17で示された領域は、免疫グロブリン(Ig)様の折り畳みを有するドメイン(いわゆる、細菌Ig様ドメイン)を構築することが見出された。このドメインは、腸管病原性のE.coli株のインチミンにおいて最初に同定され、細菌の細胞表面タンパク質およびファージに広範に分布していることが知られている。Ig様の折り畳みを有する他のタンパク質において頻繁に観察されるように、AfuAのIg様ドメインは4つの反復性配列(お互いに対して56%を超える同一性を示す)を含む。図5に、それらのIg様配列を、Pfam02368(細菌のIg様ドメインB)のコンセンサス配列と対比して示した。インチミンのIg様ドメインは、転座されたインチミンレセプター(Tir)についてのリガンドとしての機能を果たすとともに、細胞接着分子としての機能を示すことが知られている。345アミノ酸長を有する配列番号17に示されるアミノ酸残基から構成されるドメインは、AfuAのフコシダーゼドメインを提示するように少なくとも機能し、これによって細胞表面からAfuAフコシダーゼドメインを突出させる(これによってB.bifidum細胞は、腸上皮および粘膜の複合糖質に存在するフコース残基に容易に接近し、かつこれを分解し得る)可能性が高い。したがって、ビフィズス菌以外の他の細胞中でこのIg様領域が発現されることにより、腸管内への侵入、定着性が向上されるものと推測される。N末端ドメインのアミノ酸配列(1〜576番目のアミノ酸残基)は、データベース中のいずれの配列に対しても有意な類似性を示さなかった。
(4)データベース上における特定タンパク質に対するAfuAのフコシダーゼドメインの構造上の類似性
AfuAのフコシダーゼドメインの一次構造を、BLAST検索に供したが、上述のように、所定の機能を有するタンパク質(全てのグリコシドハイドラーゼファミリーを含む)の一次構造に対して類似性は観察されなかった。GH29ファミリーの保存的モチーフ(α-L-フコシダーゼ)に関連するAfuA配列の調査によっても、AfuAの構造におけるこのファミリーのいかなる痕跡の知見も得られなかった。しかし、BLAST検索においては、いくつかのタンパク質について高スコアが得られた。かなりの類似性(スコア、>307ビット;および期待値<5e−82(BLAST))を示した特定タンパク質のアミノ酸配列をフコシダーゼドメインと対比し、相同性が高い領域について図6に示した。中でも、Clostridium perfringens株13(Shimizu,T. Complete genome sequence of Clostridium perfringens, an anaerobic flesh-eater. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(2002):996-1001)は、培養培地中で高分子量(約200kDa)のα-L-フコシダーゼを産生することが示されており(Aminoff,D,et al. Enzymes that destroy blood group specificity. I. Purification and properties of α-L-fucosidase from Clostridium perfrigens. J. Biol.Chem. 245(1970):1659-1669)、その相同体(CPE1875)を見出すためである。CPE1875の推定アミノ酸配列は、N末端に典型的なシグナル配列を有しており、その分子量は165,332Daであると見積もられている。
これ以外にも、Streptococcus pneumoniae R6(Hoskins,L. et al. Genome of the bacterium Streptococcus pseudomoniae strain R6. J.Bacteriol. 183(2001)):5709-5717)、Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482(Xu,J. et al. A genomic view of the human-Bacteroides thetaiotaomicron symbiosis. Science 299(2003):2074-2076)、Microbulbifer degradans 2-40、Bacillus halodurans(Takami,H. et al. Complete genome sequence of the alkaliphilic bacterium Bacillus halodurans and genomic sequence comparison with Bacillus subtilis. Nucleic Acids Res.28(2000):4317-4331)、Xanthomonas campestris pv.campestris ATCC33913(da Silva,A.C.R., Comparison of the genomes of two Xanthomonasu pathogens with differing host specficities. Nature 417(2002):45-463)、およびArabidopsis thalianaのゲノム配列から、他の相同なタンパク質が発見された。B.thetaiotaomicron VPI-5482、M.degradans 2-40、X.campestris pv.campestris ATCC33913、およびArabidopsis thalianaのタンパク質は分泌タンパク質であると予想される。これらの相同体がα-L-フコシダーゼ活性を有するか否かは実験的には依然として解明されておらず、GH29以外の新規なα-L-フコシダーゼファミリーの存在が示唆されるにすぎない。
(5)AfuAの基質特異性
最後に、α-L-フコシダーゼの基質特異性を調べた。
T7RNAポリメラーゼ-pET(Novagen)またはtacプロモーター系を用いて酵素を過剰発現させ、精製することを試みた。しかし、おそらく過剰に大きいタンパク質の毒性、またはコドン選択性により、E.coli細胞におけるAfuAタンパク質の発現レベル(α-L-フコシダーゼの比活性)は、B.bifidum JCM1254細胞におけるタンパク質発現レベル(培養液、および細胞壁画分)よりも低かった。そこで、天然に存在する基質(血液型物質およびヒト乳汁オリゴ糖類を含む)とともにクローン(SA26:pSA26プラスミドを含む)の無細胞抽出物を用いて、基質特異性を試験した。それ以外に、人工基質、-ニトロフェニル(pNP)-α-L-フコシド、pNP-β-L-フコシド、および4-メチルウンベリフェリル-α-L-フコシドについても同様に試験した。pMW118(空のベクター)を保有するE.coli株の無細胞抽出物は、試験したいずれの基質をも加水分解しなかった。その結果を表4に示す。
Figure 0004488723
E.coliにおいて発現されたAfuAタンパク質は,pH7.5で最大の1,2-α-L-フコシダーゼ活性を示し、そして45℃未満で安定であり、これは、B.bifidum JCM1254からわずかに精製された1,2-α-L-フコシダーゼの特性とほぼ等しいものであった。表4にE.coliにおいて発現されたAfuAタンパク質の種々の基質に対する活性(2´-FLを100とした相対活性)を示した。試験した乳汁のオリゴ糖類のうち、最も容易に影響を受けやすいのは、2´-FL、ラクト--フコペンタオースI、および2-フコシルガラクトース(Fucα1→2Gal)であると考えられる(後者のデータは示さず)。その全てが、非還元末端のα-(1→2)結合において、ガラクトースに対して結合したL-フコースを含んでいる。この酵素は、3-FL、ラクト--フコペンタオースV、および3-フコシルガラクトース(Fucα1→3Gal)のα-(1→3)結合L-フコース残基において非常に限定された作用を有しており(3-フコシルガラクトースについてはデータ示さず)、そしてラクト--フコペンタオースIIおよび4-フコシル--アセチル−グルコサミン(Fucα1→4GlcNAc)のα-(1→4)結合において作用しなかった(Fucα1→4GlcNAcについてはデータ示さず)。また、この酵素は、試験した全ての人工的な基質において不活性であった。血液型H(II)活性基質(Fucα1→2Galβ1→4GlcNAc)は、AfuAタンパク質の良好な基質であることが見出されたが、非還元末端のGal残基に別の置換基が存在する場合、この活性は、血液型AおよびBの活性物質について観察されたとおり、劇的に低下した。6-フコシル-,´-ジアセチルキトビオースのα-(1→6)結合は、この酵素によって切断されなかった。このように、AfuAタンパク質は、α-(1→2)結合でのみ活性であった。
フコース含有オリゴ糖に加えて、末端のα-(1→2)結合したL−フコース残基を有する高分子量の糖タンパク質(例えば、ブタの胃のムチン(H))は、酵素の標的であることが示された(データ示さず)。これらの結果によって、B.bifidum細胞は、表面に露出したAfuAを利用して、腸上皮および粘膜に存在する末端のα-(1→2)-連結フコシル残基を保有するいくつかのタイプの基質を分解し得ることが示唆された。この能力によって、B.bifidum細胞は、栄養制限された下部腸管において生存することが可能になり得る。そして、腸管に定着するとされるC.perfringensによるα-L-フコシダーゼの基質特異性と全く同様の基質特異性を示すことが見出された。
したがって、ヒトの病原性細菌(C.perfringensおよびS.pneumoniae)やヒト共生細菌(B.thetaiotaomicron)が、それら細菌の生育環境に広がるには、α-L-フコシダーゼが重要であって、ビフィズス菌の有するα-L-フコシダーゼ産生能を他の細菌、例えば乳酸菌に付与することにより、腸管内にて生存のしやすい乳酸菌を提供できる。特に、ビフィズス菌の産生する1,2-α-L-フコシダーゼは、細胞接着分子としての機能を示す領域を有するので、腸管内への定着には有利なものであると言える。そして、当該ビフィズス菌によるAfuAタンパク質の酵素特異性を追求することにより、ビフィズス菌の生育環境を整えるための種々の物質を探索することができる。
pSA3ならびにpBR322を含有するE.coliを用いた2´-FLとの反応後の無細胞抽出物のHPLC分析図であって、(a)はPA-2´-FL標準のピーク、(b)はPA-Lac標準のピーク、(c)はpBR322含有細胞による反応生成物のピーク、(d)はpSA3含有細胞による反応生成物のピークを示す。 B.bifidum JCM1254株におけるafuA遺伝子の配置を示す遺伝子マップである。両鎖とも10106塩基長であり、KpnI切断末端を1として番号を付した。上段のラインは制限酵素図であって、AflII(A)、BamHI(B)、EcoRI(E)、MfeI(Mf)、MluI(MI)の認識位置を示す。図中の太線は、プラスミド(pSA3、pSA19、pSA26、pSA27)中の挿入長を示す。図中の破線は、afuA遺伝子の上流域にあるOFR1(1−2888pb,pSA19)をクローニングするプローブとして用いられたpSA3の1.1kb PstI-BamHIフラグメントである。 afuA遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列図である。なお、塩基番号、アミノ酸番号の付し方は図2と対応していない。N末端にはシグナルペプチドの存在が、C末端には膜アンカーの存在が推定され、それぞれの領域は箱領域として示されている。プロモータ位置およびリボソーム結合位置は、それぞれ一重下線および二重下線で示される。 (A)は、α-L-フコシダーゼのドメインを決定するためのafuA遺伝子の欠失分析図、(B)はAfuA酵素の各ドメイン領域を示す構造図である。(A)における塩基番号は、図2と同様に付されている。太線はプラスミドへの挿入長を示す。AfuAタンパク欠失株により発現された融合物のフコシダーゼ活性の測定結果が、図の右端に示されている。(B)においては、アミノ酸番号は、開始コドンであろう位置(メチオニン)を1として付されている。α-フコシダーゼ活性に対応するドメインは塗りつぶされた領域として示され、Ig様ドメインは梨地領域として示されている。N末端、C末端に示された太い縦棒は、それぞれシグナルペプチドおよび膜アンカーを示している。 AfuA蛋白のIg様ドメインにおける繰り返し領域とPfam02368のコンセンサス配列を比較した図である。4つの繰り返し領域と、Pfam02368のIg様ドメイングループ2のコンセンサス配列を並べてある。3つ以上の配列で塩基が同じである箇所は白抜き文字で示され、わずかに異なるアミノ酸は灰色で示されている。 AfuA蛋白のドメインであるフコシダーゼ活性を示すアミノ酸配列とデータベースから見つけられた相同性を示すタンパク質のアミノ酸配列を比較した図である。検索結果からフコシダーゼドメインの一次構造と高い相同性を示すタンパク質領域が示されている。4つ以上の配列で塩基が同じである箇所は白抜き文字で示され、わずかに異なるアミノ酸は灰色で示されている。

Claims (6)

  1. 配列表の配列番号1に示された塩基配列からなる非還元末端に位置するフコシルα1,2−ガラクトース結合に特異的な1,2-α-L-フコシダーゼをコードする単離された遺伝子。
  2. 請求項1に記載の遺伝子を有する組換えベクター。
  3. 請求項1に記載の遺伝子を有する組換えベクターが導入された組換体。
  4. 請求項3に記載の組換体を用いて非還元末端に位置するフコシルα1,2−ガラクトース結合に特異的な1,2-α-L-フコシダーゼを生産する方法。
  5. 請求項4に記載の組換体を用いて生産された非還元末端に位置するフコシルα1,2−ガラクトース結合に特異的な1,2-α-L-フコシダーゼ。
  6. 配列表の配列番号2に示されたアミノ酸配列からなる非還元末端に位置するフコシルα1,2−ガラクトース結合に特異的な1,2-α-L-フコシダーゼ活性を有する酵素タンパク質。
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