[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の一形態に係る照明制御システムの電気的構成を示すブロック図である。この照明制御システムは、大略的に、多数の照明器具L1,L2,‥(総称するときは、以下参照符号Lで示す)が、通信路1によって相互に接続されるとともに、その照明器具Lが、識別装置であるIDカード2と通信を行うことで、点灯および調光制御を行うように構成されている。各照明器具Lには、図示しない電源線によって電力供給が行われる。各照明器具Lは、放電灯やランプなどの照明手段3に、その点灯制御を行い、受信制御手段である照明制御装置4を備えて構成される。
前記IDカード2は、利用者によって携帯され、たとえば図2で示すような外観形状を有する名札状のIDカードから成り、図3で示すように構成されている。すなわち、FlashROMなどの不揮発性メモリおよびその周辺回路などから成る記憶部11と、マイクロコンピュータおよびその周辺回路などから成る処理部12と、たとえば13.56MHzや13.75MHzの無線タグの無線通信技術などを用いて構成される送信部14および電波受信部15とを備えて構成される。
一方、前記各照明器具Lは、たとえば図4で示すような外観形状を有し、前記照明制御装置4は、図5で示すように構成されている。すなわち、FlashROMなどの不揮発性メモリおよびその周辺回路などから成る記憶部21と、マイクロコンピュータおよびその周辺回路などから成り、前記記憶部21に保存されたプログラムを読出して実行する処理部22と、前記照明手段3の点灯/消灯を制御することができるとともに輝度を変化させることができる照明制御部23と、前記無線タグの無線通信技術などを用いて構成される送信部24および電波受信部25と、電力線通信やBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信技術などを用いて構成され、前記通信路1を介して他の照明器具と通信を行う通信部27と、熱線センサなどから成る人感センサ28とを備えて構成される。
照明制御手段である処理部22は、人感センサ28からの出力に応答して、人の存在が検知されたときには、前記照明制御部23を介して照明手段3を点灯制御する。また、処理部22は、大略的に、後述するように記憶部21に記憶されているプログラムやテーブルなどに従って、予め定める周期で、前記IDカード2へ向けて、第2の送信手段である送信部24から、後述する探索信号を送信している。それに応答してIDカード2からの探索返信信号が第2の受信手段である電波受信部25において予め定める閾値以上の強度で受信されると、処理部22は、その探索返信信号中の識別情報(以下、IDと言う)を第2の記憶手段である記憶部21に記憶されている前記照明手段3の点灯制御を許容すべきIDと比較し、一致する場合には、前記照明制御部23を介して照明手段3を、そのIDに対応付けて予め登録されている態様で点灯および/または調光制御する。さらにまた、処理部22は、器具間通信手段である通信部27を通して近隣の他の照明器具との間で通信を行い、その近隣の他の照明器具にも連動して、後述するような照明手段3の点灯および/または調光制御を行わせる。こうして、全体の照明器具Lを統括制御する手段を設けなくても、分散している照明器具Lの内、最もIDカード2、したがって利用者に近い照明器具が主体となって、該利用者の直上だけでなく、周辺も合わせて点灯および/または調光制御を行うことができる自律分散型の照明制御システムが構築されている。
前記IDカード2の処理部12は、第1の受信手段である電波受信部15で前記照明制御装置4からの探索信号を受信すると、第1の記憶手段である記憶部11に記憶している自己のIDを読出し、該IDを含めた前記探索返信信号を、第1の送信手段である送信部14から前記照明制御装置4へ返信する。
このIDカード2は、前記無線タグの技術を用い、電源を搭載しておらず、前記照明制御装置4からの探索信号を受信することで前記電波受信部15で起電力を得て、各部へ供給するが、電源を搭載するようにしてもよい。また、利用者の識別に用いる手段は、IDカードに限らず、照明器具L側での受信電界強度が弱く、利用者が近くにいることを認識できるものであればよい。たとえば、工場内で使用されるPHS(パーソナルハンディフォンシステム)端末やPDA(パーソナルデータアシスタント)端末などのように、公衆回線とは異なり、多くの利用者で共通の識別情報を使用するようなものが望ましく、利用者の増加のたびに、照明器具L側で、記憶部21に記憶しているIDを書込む必要がなく、煩雑な識別処理の必要のないもので、利用者によって携帯されるものが望ましい。
前記照明器具Lにおいて、送信部24や電波受信部25は、該照明器具Lに一体で設けられていなくてもよく、近傍に別途設けられていてもよい。また、照明手段3と照明制御装置4とが分離されていてもよい。IDカード2との通信品質を確保したり、意匠的な点から、このように照明器具Lに総ての構成が一体で搭載されている必要はなく、IDカード2からの探索返信信号を受信する電波受信部25が、対を成す照明器具Lの近傍に設けられていればよい。
以下に、本実施の形態における動作の概要を説明する。
先ず、照明制御手段である処理部22は、少なくとも第2の受信手段である電波受信部25からの出力を用いて、照明器具Lから利用者までの距離を検出し、予め定める距離以内であれば、前記照明手段3を点灯および調光制御する。前記距離の検出は、第2の送信手段である送信部24から前記探索信号が送信されてから、前記電波受信部25で前記探索返信信号が受信されるまでの時間差および/または電波受信部25で得られる前記探索返信信号の受信電界強度レベルなどから求めることができる。
そして、前記調光制御の態様は、該照明器具Lが利用者に比較的近い位置にある場合にはフル点灯し、比較的遠い位置にある場合には輝度を落とすというものである。これによって、利用者付近の照度を確保しつつ、省エネルギ化を進めるといった照明器具Lと利用者との距離に応じた細かな調光制御を行うことができるようになっている。
また、前記点灯制御の態様は、概略的には、利用者が点灯すべき制御範囲内に入ると、人感センサ28または電波受信部25で前記探索返信信号が受信されることで検知され、点灯を開始するが、その後、利用者の動きがなくなっても、少なくとも前記電波受信部25で前記探索返信信号が受信されている間は点灯を継続し、前記探索返信信号が受信されなくなると、前記探索返信信号のIDに対応した時間だけ点灯した後、消灯するというものである。具体的には、受信されたIDがその部屋に所属する定常ユーザを表す場合には、該IDが受信されなくなっても再び戻ってくる可能性が高いので、消灯するまでの遅延時間を長く、たとえば5分に設定することで、頻繁な点滅を防止して照明器具L側の負担を減らしたり、あるいは利用者にとって快適な(入室し易い)環境を実現し、逆に前記IDが部外の者をなどの非定常ユーザを表す場合には、一時的な入室や通行などで、用件を済ますと再び戻ってくる可能性が低いので、該IDが受信されなくなると、前記定常ユーザよりも短い、たとえば1分で消灯させ、前記IDカードを携帯しない者の場合には、さらに短い、たとえば30秒で消灯させ、省エネルギ化を進めるというように、前記IDに対応付けて、予め設定されている態様に切換えるというものである。
また、処理部22は、器具間通信手段である通信部27を介して、近隣の他の照明器具との間で、各照明器具Lで受信したIDおよびそれに対応して行う制御内容を表す制御信号をやりとりし、得られた受信電界強度の情報から、自機が利用者に最も近い場合は自機が主機となって、前記通信部27を通して前記近隣の他の照明器具へ、前記制御信号の1種である調光指示信号を送信して調光制御を行い、そうでない場合は従機となって、前記通信部27を通して与えられる調光指示信号に応答して、調光制御を行う。したがって、総ての照明器具Lの送信部24および電波受信部25が利用者の携帯するIDカード2との間で通信が可能になる可能性は少なくても、上述のように、全体の照明器具Lの制御を統括する手段を設けることなく、分散している各照明器具Lの内、利用者に最も近い照明器具が主体となって自律分散型のネットワークを構築し、前記IDを受信できた照明器具から連携して、適切に調光制御を行うことができるようになっている。
さらにまた、器具間通信手段である前記通信部27は、各照明器具Lによる探索返信信号の受信電界強度などは、システム全体の照明器具Lとの間でデータのやりとり(ブロードキャスト送信)を行うが、前記調光指示信号は、隣接する照明器具との間で通信する。このため、記憶部21には各照明器具L間の距離テーブルが格納されており、自機が利用者に最も近い場合、制御を行うべき範囲の照明器具の距離情報を含む調光指示信号を、自機の前後の照明器具から順に経由して、最終段の照明器具に伝達させる。したがって、前記のように従機となって前記調光指示信号を受信した場合、その調光指示信号の送信元と自機との距離を前記距離テーブルを参照して読出し、読出した結果を送信されてきた調光指示信号の距離情報から減算し、結果が0ではない場合、次の照明器具へ減算した距離情報を送信する。このようなパイプライン式の動作を繰返すことで、比較的狭い範囲の点灯制御の場合に好適で、各照明器具L間のトラヒックを減少させて信号の衝突が起る可能性を減少させ、通信プロトコルを細かに規定する等の前記衝突を防止するための対策を簡略化しつつも、主機からの規定の制御範囲内で、調光制御を行うことができるようになっている。また、各照明器具Lの記憶部21に要するデータ容量を少なくすることができる。なお、器具台数が少ないなどの理由で、トラヒックに問題がなければ、主機となる照明器具が、直接最終段までの照明器具を制御するようにしてもよい。
また、処理部22は、上述のように、伝達されてきた調光指示信号から、自機が制御範囲内であり、さらに最終段の照明器具でないと判断した場合は、次段の照明器具へ調光指示信号を伝達するが、その次段の照明器具に、ランプ切れや器具故障などが発生して、前記調光指示信号に対する応答がない場合には、自機が代理の主機となって、隣接する他の照明器具に対して、前記制御信号の1種である代理制御指示信号を、他の照明器具に向けて一斉にブロードキャスト送信し、制御範囲を拡げることで、前記ランプ切れや器具故障などの不具合に対しても、他の照明器具によって補償を行うようになっている。
以下に、上述の各動作について、詳述する。先ず、前記図4に示すような形状の照明器具Lが、図6に示すように、3行×3列のマトリクス状に配置されているものとする。各行および各列間の間隔が、たとえば2mの等間隔であるとき、前記記憶部21に格納される前記距離テーブルの内容は、表1に示すようになる。
この表1は、各照明器具Lが主機となった場合に、直接制御する照明器具(制御対象範囲)を、すぐ隣に隣接しているものだけ(器具間距離が2mまで)とした例を示しており、したがって図6で示す3行×3列の場合、最も制御する台数が多い中心位置の照明器具L5でも、L2,L4,L6,L8の4台である。また、前記主機からの距離に応じて、照明制御範囲の輝度を段階的に調光制御するようにした場合の制御内容の一例を表2に示す。
この表2の例では、照明制御範囲を、たとえば6mとすると、主機は100%点灯し、主機から4mまで(すなわち、2m,4m)は70%点灯し、主機から6mで30%点灯となり、それ以遠では消灯となる。ただし、器具故障によって、その故障している器具の上流(親)側となる器具から代理制御の指示があり、その故障している器具が自機の制御対象範囲にある場合には、100%で代理点灯する。
図7〜図17は、上述の動作をさらに詳しく説明するための各照明器具Lの点滅状態を示す図である。ここでは、説明の簡略化のために点滅状態のみで示しているが、実際には前記表2で示すように、得られた調光レベルのデータのうち、高いレベルに従って調光制御が行われる。図6で示す器具配列で、照明器具L1〜L3は、廊下51に直線状に配列されているものとし、残余の照明器具L4〜L9は、オフィス52内に2行×3列で配置されているものとする。オフィス52への出入り口53は、オフィス52の中央に設けられており、その出入り口53には、オフィス52側では照明器具L5が臨み、廊下51側では照明器具L2が臨む。また、説明を分かり易くするために、経過時間や制御時間を例示しているが、一例であることは言うまでもない。
先ず、図7〜図12は、本照明制御システムの定常ユーザであり、そのオフィス52に所属するIDがC1のIDカードを携帯する利用者が、照明器具L9付近に在席している状態から、出入り口53から廊下51を抜けて一時的に席を外す場合の点滅状態を示す図である。この経路を参照符54で示す。一般に、人感センサ28は、検知範囲内における温度分布の変化を検出し、変化量が一定量以上である場合に、検知範囲内で人が移動したとして、処理部22へ通知する。通知は、検知範囲内へ人が入ってきた場合と、検知範囲から人が出て行った場合に行われる。検知範囲内へ人が入ってきた場合、処理部22は、自機の照明手段3を点灯する。この図7では、参照符54で示す経路を逆に入室してきた利用者を、最終的に照明器具L9の人感センサ28が検知し、所定時間動きがなく、非検知状態となっているものとする。
一方、処理部22は、送信部24からの前記探索信号に応答して電波制御部25で前記探索返信信号が受信されると、受信したIDカードのIDが定常ユーザであるか否かを判断し、記憶部21の制御中IDテーブルに、制御開始時点での時刻を併せて記憶し、点灯制御を開始する。この図7の例では、利用者は照明器具L9に近く、前記探索返信信号は、照明器具L6,L8,L9で受信される。この場合、照明器具L9が最高の受信電界強度を持ち、照明器具L6,L8が中程度または受信されたと判定できる閾値をかろうじて上回る程度の電界強度で受信、もしくは照明器具L9のみで前記閾値を上回り、受信することになる。残余の照明器具L1〜L5,L7は受信電界強度が前記閾値を超えるに至らない。
したがって、照明器具L9は、先ず人感センサ28からの出力に応答して自機を点灯させた後、受信したIDと受信電界強度とを通信部27を通じて他の照明器具と通信した結果、自機がマスターであると判断して、前記表1の距離テーブルにおける制御対象範囲内の照明器具L6,L8に前記調光指示信号を送信し、点灯させ、図7で示す状態となる。その後、一定時間毎に、記憶している制御中ID毎に探索返信信号の受信を行い、受信されなくなり、かつ人感センサ28の検知範囲から人が出て行った場合(最終制御)、その時刻を記憶部21に記憶して、処理部22はそれからの経過時間を計算し、以下に示すように、ID毎に対応した時間で消灯制御を行う。
利用者C1が着席(静止)した状態では、一定時間毎にIDカード探索処理および制御中IDテーブル更新処理が実施されるが、IDカードがほぼ静止した状態にあるので、結果として各照明器具Lの点滅状態は図7で示す初期の状態のままで維持される。
利用者C1が前記参照符54で示す経路で移動し、10秒経過時点で、照明器具L6の近傍を通過するタイミングでIDカード探索信号発信タイミングが到来すると、次はこの照明器具L6がマスターとなって照明制御が実施される。その結果、図8で示すように、照明器具L3,L5が新たに点灯するとともに、照明器具L9はこの照明器具L6で制御され、前記制御中IDテーブル更新処理が実施され、継続して点灯するが、照明器具L9によって制御されていた照明器具L8は、前回の探索タイミングを最終制御タイミングとして、10秒が経過している。しかしながら、本実施の形態では、上述のように利用者C1は定常ユーザであるので、前記経過時間の10秒はこの定常ユーザの遅延時間の5分以内であり、照明器具L8は点灯したままとなる。
さらに10秒後、利用者C1は図9で示すように出入り口53に到達し、照明器具L5の近傍を通過するタイミングでIDカード探索信号発信タイミングが到来すると、次はこの照明器具L5がマスターとなって照明制御が実施される。その結果、照明器具L2が新たに点灯するとともに、照明器具L6,L8はこの照明器具L5で制御され、前記制御中IDテーブル更新処理が実施され、継続して点灯するが、照明器具L6によって制御されていた照明器具L3,L9は、前回の探索タイミングを最終制御タイミングとして、10秒が経過しているが、点灯したままとなる。
さらに10秒後、利用者C1は図10で示すように廊下51の出口に到達し、照明器具L1の近傍を通過するタイミングでIDカード探索信号発信タイミングが到来すると、次はこの照明器具L1がマスターとなって照明制御が実施される。その結果、照明器具L4が新たに点灯するとともに、照明器具L2はこの照明器具L1で制御され、前記制御中IDテーブル更新処理が実施され、継続して点灯するが、照明器具L5およびこの照明器具L5によって制御されていた照明器具L6,L8は、前回の探索タイミングを最終制御タイミングとして、10秒が経過し、点灯したままとなる。また、利用者C1が近くを通過するときにIDカード探索信号発信タイミングが到来しなかったために、照明器具L2はマスターとなることはなく、照明器具L3および照明器具L9は最終制御から20秒が経過しているが、点灯したままとなる。
したがって、利用者C1が移動を開始してから1分が経過した時点での点灯状態は図11で示すようになり、結果として、利用者C1に終始離れていた照明器具L7を除き、残余の照明器具L1〜L6、L8、L9は、上述の順で点灯することになる。たとえば3分後、利用者C1が図7の経路を逆に辿って戻ってくると、この時点では、まだ最終制御時点からの遅延時間内であるので、点灯状態は図11のままである。結果的に新規の点灯制御は発生せず、照明器具の負担を軽減してランプ寿命を延ばしたり、利用者にとってオフィス52に入り易い環境を実現することができる。前記最終制御時点から前記遅延時間の5分が経過すると、その順に消灯してゆき、図12の全消灯状態となる。
次に、図13および図14ならびに前述の図12は、本照明制御システムの非定常ユーザであるそのオフィス52に所属はしないけれども、社内の者で、IDがC2のIDカードを携帯する利用者が、廊下51を参照符55で示す経路で通過する場合の点滅状態を示す図である。利用者C2が廊下51の入口の照明器具L3で検知されると、この照明器具L3がマスターとなって照明制御が実施される。その結果、図13で示すように、照明器具L2,L6が点灯する。
10秒後、照明器具L2の近傍を通過するタイミングでIDカード探索信号発信タイミングが到来すると、次はこの照明器具L2がマスターとなって照明制御が実施され、照明器具L1,L5が新たに点灯するとともに、照明器具L3はこの照明器具L2で制御され、前記制御中IDテーブル更新処理が実施され、継続して点灯するが、照明器具L3によって制御されていた照明器具L6は、前回の探索タイミングを最終制御タイミングとして、10秒が経過し、点灯したままとなる。さらに10秒後、利用者C2は図14で示すように廊下51の出口に到達し、照明器具L1の近傍を通過するタイミングでIDカード探索信号発信タイミングが到来すると、次はこの照明器具L1がマスターとなって照明制御が実施される。その結果、照明器具L4が新たに点灯するとともに、照明器具L2はこの照明器具L1で制御され、前記制御中IDテーブル更新処理が実施され、継続して点灯するが、この照明器具L2によって制御されていた照明器具L3,L5は、前回の探索タイミングを最終制御タイミングとして、10秒が経過し、点灯したままとなる。また、照明器具L6も最終制御から20秒が経過し、点灯したままとなる。その後、前記定常ユーザC1よりも短い、遅延時間の1分が経過した順に消灯してゆき、前記図12の全消灯状態となる。こうして、一層省エネルギ化を図ることができる。
続いて、図15〜図17ならびに前述の図12は、本照明制御システムの非定常ユーザであるIDカードを携帯しない全くの部外の利用者C3が、前記廊下51を参照符55で示す経路で通過する場合の点滅状態を示す図である。利用者C3が廊下51の入口の照明器具L3の人感センサ28で検知されると、この照明器具L3がマスターとなって照明制御が実施される。その結果、図15で示すように、照明器具L2,L6が点灯する。この状態は、前述の図13と同様である。
10秒後、照明器具L2の近傍を通過すると、再び人感センサ28で検知され、次はこの照明器具L2がマスターとなって照明制御が実施され、照明器具L1,L5が新たに点灯するが、先の照明器具L3,L6の制御はなくなり、前回の検知タイミングを最終制御タイミングとして、10秒が経過し、点灯したままとなる。さらに10秒後、利用者C3は図16で示すように廊下51の出口に到達し、照明器具L1の近傍を通過することで人感センサ28で検知され、次はこの照明器具L1がマスターとなって、照明器具L4が新たに点灯するが、先の照明器具L2,L5の制御もなくなり、前回の検知タイミングを最終制御タイミングとして、10秒が経過し、点灯したままとなる。このとき、照明器具L3,L6も、最終制御タイミングから20秒が経過しているが、点灯したままとなる。
さらに10秒以上が経過すると、この利用者C3の遅延時間は前記利用者C1,C2よりも短い30秒であるので、図17で示すように照明器具L3,L6が消灯し、照明器具L2,L5は最終制御タイミングから十数秒が経過し、点灯したままとなり、照明器具L1,L4も最終制御タイミングから数秒が経過し、点灯したままとなる。その後、30秒近くが経過すると、前記図12の全消灯状態となる。こうして、さらに省エネルギ化を図ることができる。
図18〜図28は、上述の動作をさらに詳しく説明するためのフローチャートである。これらの図を用いて、以下に、本実施の形態における動作を詳しく説明する。
先ず、図18は前記処理部22による照明器具Lの全体の制御動作を説明するものである。ステップS1では、電波受信部25で、自機が直接IDカード2からの探索返信信号を受信し、かつそのIDが前回の受信タイミングで受信されていない新規のIDカードのものである新規直接受信IDであるか否かが判断され、探索返信信号が受信されないとき、および受信されても既に受信されているIDカードからの探索返信信号である場合はステップS01に移る。ステップS01では、人感センサ28によって閾値以上の人の動きが検知されたか否かが判断され、検知されないときにはステップS2に移る。
ステップS2では、現在調光制御中のIDの中に、後述するような制御終了対象IDがあるか否かが判断され、ない場合はステップS3に移り、通信部27で他の照明器具からの信号を受信したか否かが判断され、受信されないときにはステップS4に移る。ステップS4では、送信部24からの予め定める周期の探索信号の送信タイミングになったか否かが判断され、そうでないとき、すなわち何も変化がない場合はステップS02に移り、さらに前記制御中IDテーブルの更新タイミングとなったか否かが判断され、更新タイミングでない場合は前記ステップS1に戻って上述の処理を繰返し、何らかの変化が生じるまで待機する。
前記ステップS4で探索信号の送信タイミングになると、ステップS5の図19で示すIDカード2の探索処理に移る。先ず、ステップS11で探索信号を送信し、ステップS12で探索返信信号が受信されたか否かが判断され、受信されないときにはステップS13で、予め設定されている前記探索信号の送信から前記探索返信信号を待受ける待ち時間が終了したか否かが判断され、待ち時間が経過していないときには前記ステップS12に戻り、探索返信信号の待受けを継続する。
これに対して、前記ステップS12で探索返信信号が受信されると、ステップS14に移り、その探索返信信号中のIDが、記憶部21に記憶されている現在調光制御中のIDを格納した制御中IDテーブル中に含まれているか否かが判断され、含まれていない場合には前記新規直接受信IDとして、ステップS15において前記記憶部21に記憶され、前記ステップS13に移る。前記ステップS14において、受信された探索返信信号中のIDが前記制御中IDテーブル中に含まれている場合にはステップS16に移り、その制御中IDテーブルにおいて、前記IDに対応付けて記憶されている受信電界強度(前記電波受信部25で測定)に対して、今回受信された探索返信信号の受信電界強度が予め定める規定値以上変化したか否かが判断され、変化している(利用者が移動している)場合は、前記ステップS15に移って、そのIDが前記新規直接受信IDとして前記記憶部21に更新して記憶された後、前記ステップS13の待ち時間判定が行われ、前記規定値以上変化していない(利用者の移動のない)場合は、前記IDの更新は行われず、直接前記ステップS13の待ち時間判定に移る。
前記ステップS13で、規定の待ち時間が終了するとステップS17に移り、前記制御中IDテーブルから、前記新規直接受信IDもしくは後述する継続制御対象IDのいずれでもないIDを前記制御終了対象IDに設定して、IDカード2の探索処理を終了する。
一方、前記ステップS1において、新規直接受信IDがある場合はステップS6に移り、自機が前記主機(マスター)となるべきか、前記従機(スレーブ)となるべきかを判定するマスター決定処理を行い、その判定の結果をステップS7で判断し、自機かマスターである場合はステップS8で能動式の照明制御処理を行って前記ステップS1に戻り、スレーブである場合は直接ステップS1に戻る。
図20は、前記ステップS6におけるマスター決定処理を詳しく説明するためのフローチャートである。前記ステップS14またはS16からステップS15で保存された新規直接受信IDのそれぞれについて、以下の処理が行われる。ステップS21では規定の単位時間だけ待機し、ステップS22では他の照明器具からの受信電界強度通知信号が受信されたか否かが判断され、受信されない場合はステップS23において、受信時の電界強度に対応(比例)した待機時間が経過したか否かが判断され、経過していない場合には前記ステップS21に戻る。前記受信電界強度通知信号には、発信元(探索返信信号を受信した照明器具)のIDおよびその照明器具で受信された探索返信信号を発信したIDカードのIDに、その照明器具と利用者との距離を表す情報である受信電界強度を示す情報が少なくとも含まれている。そして、前記待機時間は、前記受信時の電界強度が高い程、短く設定される。したがって、この待機時間の間に、他の照明器具、すなわち自機よりも受信電界強度が高く、待機時間が早く終了した照明器具からの受信電界強度通知信号を待受ける。待受けた後、ステップS24において、後述するようにして、同じIDカードからの探索返信信号を受信した照明器具間で、受信電界強度の確認処理が行われて処理を終了する。
前記ステップS22において他の照明器具からの受信電界強度通知信号が受信されると、ステップS25に移り、その受信した受信電界強度通知信号におけるIDカードのIDが現在自機で処理中の新規直接受信IDと一致するか否かが判断され、一致しない場合には、ステップS26で後述する別途通信内容対応処理として処理し、前記ステップS23に移って待機を継続する。これに対して、受信した受信電界強度通知信号中のIDカードのIDが現在自機で処理中の新規直接受信IDと一致するとステップS27に移り、受信した受信電界強度通知信号が表す受信電界強度が自機の受信した受信電界強度よりも高いか否かが判断され、そうである場合(前記のように、通常、受信電界強度が高い程、待機時間が短く設定されるので、殆どのケース)は、自機がマスターの権利を持たないものと判断してステップS28に移り、該当する新規直接受信IDを削除し、処理を終了する。これに対して、前記ステップS27において、受信した受信電界強度通知信号が表す受信電界強度が自機の受信した受信電界強度よりも低い場合、自機がマスターとなる可能性があり、前記ステップS24の受信電界強度の確認処理に移る。
図21は、前記ステップS24における受信電界強度の確認処理を詳しく説明するためのフローチャートである。ステップS31では、自機のIDおよび探索返信信号を受信したIDカードのIDに、受信電界強度を示す情報を含む受信電界強度通知信号を、他の照明器具に向けて一斉にブロードキャスト送信する。ステップS32では、他の照明器具からの受信電界強度通知信号を受信しているか否かが判断され、受信していないとき、すなわち前記図20において、ステップS21〜S23を繰返したときにはステップS33に移り、前記待機時間が経過したか否かが判断され、経過していないときには前記ステップS32に戻って処理を繰返し、経過するとステップS34に移って、該当する新規直接受信IDについては自機がマスターであると判断して処理を終了する。
一方、前記ステップS32において、他の照明器具からの受信電界強度通知信号を受信している場合にはステップS35に移り、受信した受信電界強度通知信号中のIDが現在自機で処理中の新規直接受信IDと一致するか否かが判断され、一致するとステップS36に移り、受信した受信電界強度通知信号が表す受信電界強度が自機の受信した受信電界強度よりも高いか否かが判断され、そうでない場合は、自機がマスターとなる可能性が高いと判断し、前記ステップS33,S32で待機した後、前記ステップS34に移り、そうである場合は、自機がマスターの権利を持たないものと判断してステップS37に移り、該当する新規直接受信IDを削除し、処理を終了する。
また、前記ステップS35において、受信した受信電界強度通知信号のIDが現在自機で処理中の新規直接受信IDと一致しない場合には、ステップS38で後述する別途通信内容対応処理として処理し、前記ステップS33に移って待機を継続する。こうして、受信電界強度通知信号を発信した照明器具が、一定時間他の照明器具からの受信電界強度通知信号を受信しない、あるいは自機よりも高い受信電界強度を持つという応答がない場合には、自機がマスターとなって、以下に示すような調光指示信号を、前記照明制御範囲内の他の照明器具へ届くように、通信部27を通じて順次伝送させてゆき、前記受信電界強度が最も高い照明器具以外はスレーブとなって、前記通信部27を介して伝送されてきた調光指示信号に応答して調光制御を行う。
図22は、前記ステップS8における能動式の照明制御処理を詳しく説明するためのフローチャートである。前記ステップS7で自機がマスターであると判定されると、処理部22は、ステップS41で、前記照明制御部23を通じて照明手段3を100%フル点灯する。さらにステップS46で、自機が受信したIDカードのIDと、現在の時刻と、前記100%の調光レベルとを、記憶部21の前記制御中IDテーブルに記憶する。
その後、前記表1で示すような自機の記憶部21に保持する距離テーブルを参照し、制御対象範囲内となる各照明器具に対して、以下の処理を行う。ステップS42では、前記調光指示信号を送信し、ステップS43では該当する照明器具から送信した前記調光指示信号に対する調光返信信号を受信したか否かが判断され、受信した場合は処理を終了し、受信しない場合はステップS44に移り、前記調光返信信号に対して予め定められる待ち時間が経過したか否かが判断され、経過していないときには前記ステップS43に戻って待受けを継続する。前記ステップS44において、規定の待ち時間が経過すると、該当する照明器具が故障であると判断して、ステップS45において、その故障であると思われる照明器具のIDと、代理制御が必要であることを表す代理制御指示信号をブロードキャスト送信して処理を終了する。前記代理制御指示信号を受信した各照明器具は、代理制御が必要である照明器具のIDから、前記距離テーブルを参照し、自機に隣接した器具であり、制御対象範囲内であると、たとえば前記表2で示すように、代理で100%フル点灯する。
前記ステップS3において、他の照明器具からの信号を受信した場合、および前記ステップS6においてマスター決定処理を行い、もしくはステップS25,S35で受信した受信電界強度通知信号のIDが現在自機で処理中の新規直接受信IDと一致しない場合の次の処理タイミングでは、ステップS9に移り、図23で示す通信内容対応処理が行われる。この通信内容対応処理では、自機はIDカードからの探索返信信号を受信していない状態(S1−S2−S3)または他の照明器具から受信電界強度通知信号を受信しても、自機は別のIDカードからの探索返信信号を受信している状態(S25−S26,S35−S38)であるので、ステップS51では受信した信号は前記受信電界強度通知信号であるか否かが判断され、そうであるときにはステップS52で受信した信号の内容を破棄して処理を終了し、そうでないときにはさらにステップS53に移って、調光指示信号であるか否かが判断される。
前記ステップS53において、調光指示信号である場合はステップS54に移って後述する受動式の照明制御処理を行って処理を終了し、調光指示信号でない場合はさらにステップS55に移って、代理制御指示信号であるか否かが判断される。代理制御指示信号である場合はステップS56に移って後述する代理制御処理を行って処理を終了し、代理制御指示信号でない場合は前記ステップS52で受信した信号の内容を破棄して処理を終了する。
図24は、前記ステップS54における受動式の照明制御処理を詳しく説明するためのフローチャートである。ステップS61aでは、受信した調光指示信号の残距離に応じて、たとえば前記表2から、調光レベルを算出する。続いてステップS61bでは、自機が受信した調光指示信号中のIDカードのIDと、受信時刻と、前記ステップS61aで求めた調光レベルとを前記制御中IDテーブルに記憶する。続いてステップS61cでは、その制御中IDテーブル中の記憶内容の内、最も高い調光レベルで、照明手段3を調光制御する。
その後、前記距離テーブルを参照し、受信した調光指示信号の送信元を除いた他の照明器具に対して、以下の処理をそれぞれ行う。先ず、ステップS62では、前記調光指示信号の残距離から、送信元と自機との間の距離を減算して、新たな残距離を求める。ステップS63では、その新たな残距離が0より小さいか否かが判断され、そうであるときには自機が前記照明制御範囲の最終段の照明器具であると判断し、他の照明器具への調光指示信号の送信を行わずに処理を終了し、そうでないときには自機が前記照明制御範囲の最終段の照明器具でない可能性があると判断し、前記ステップS42〜S45と同様に、ステップS64〜S67において、代理制御信号の場合も含めて、調光指示信号を送信する。
一方、図25は、前記ステップS56における代理制御処理を詳しく説明するためのフローチャートである。ステップS71では、受信した代理制御指示信号による代理制御対象器具のIDが自機の距離テーブルの制御対象範囲内にあるか否かが判断され、範囲内にある場合にはステップS72で100%フル点灯して処理を終了し、範囲内にない場合には直接処理を終了する。
さらにまた、前記ステップS01において、人感センサ28によって前記一定量以上の変化が検出されると、ステップS03の人感センサ対応処理を行った後、前記ステップS1に戻る。図26は、前記ステップS03における人感センサ対応処理を詳しく説明するためのフローチャートである。ステップS91では、前記変化が検知範囲内へ人が入ってきた変化であるか否かが判断され、そうである場合はステップS92に移り、照明制御部23を通じて照明手段3を100%フル点灯する。さらにステップS93で、IDカードを携帯しないユーザであることを表すフラグと、現在の時刻と、前記100%の調光レベルとを、記憶部21の前記制御中IDテーブルに記憶する。
その後、前記表1で示すような自機の記憶部21に保持する距離テーブルを参照し、制御対象範囲内(この場合は隣接する照明器具のみ)となる各照明器具に対して、前記ステップS42〜S45と同様に、ステップS94〜S97において、代理制御信号の場合も含めて、調光指示信号を送信する。
また、前記ステップS02において、制御中IDテーブルの更新タイミングとなると、ステップS04の制御中IDテーブルの更新処理を行った後、前記ステップS1に戻る。図27は、前記ステップS04における制御中IDテーブルの更新処理を詳しく説明するためのフローチャートである。自機が保持する制御中IDテーブル内の各要素について、それぞれ以下の処理を実行する。ステップS101では、調光制御を行うべききっかけとなったトリガIDに対応した遅延時間(前記5分、1分、30秒)を確認し、ステップS102では、制御終了タイミングから前記遅延時間が経過したか否かが判断され、経過しているときにはステップS103で、そのIDを前記制御中IDテーブルから削除してステップS104に移り、経過していないときには直接ステップS104に移る。ステップS104では、前記制御中IDテーブルの記憶内容の内、最も高い調光レベルに対応して前記照明手段3を調光制御して処理を終了する。
さらにまた、前記ステップS2において、現在調光制御中のIDの中に、制御終了対象IDがある場合はステップS10に移り、自機が保持する制御終了対象IDについて、図28で示すような制御終了処理が行われる。すなわち、ステップS81で、照明制御部23を通じて照明手段3を消灯する。
ここで、図29および図30を用いて、前記IDカード2からの探索返信信号の受信による具体的な調光制御動作を説明する。これらの図は、前述の図6で示す器具配列で、C1のIDを有するIDカードを携帯した利用者が、照明器具L1に最も接近して存在する場合を示している。
図29は、各照明器具Lが正常な状態を示しており、IDカードからの探索返信信号は、照明器具L1,L2,L4,L5で受信される。この場合、照明器具L1が最高の受信電界強度を持ち、照明器具L2,L4が中程度、照明器具L5が、受信されたと判定できる閾値をかろうじて上回る程度の電界強度で受信することになる。残余の照明器具L3,L6〜L9は、受信電界強度が前記閾値を超えるに至らない。
そして、ステップS24の受信電界強度の確認処理やステップS6のマスター決定処理等によって、照明器具L1がマスターとなって100%点灯するとともに、通信部27から前記表1で示す制御対象範囲の照明器具L2,L4に、照明制御範囲を表す残距離が4mの調光指示信号を送信する。これによって、スレーブとなる照明器具L2,L4は、前記残距離から、前記距離テーブルを参照して、自機と照明器具L1との間の距離を減算し、その更新後の残距離が2mであることから、前記表2から70%点灯するとともに、前記調光指示信号の送信元である照明器具L1を除き、隣接する照明器具L3;L5,L7に、残距離の値が2mの調光指示信号を転送する。これによって、それらの照明器具L3;L5,L7も30%で点灯するけれども、そこで前記残距離の値が0mとなって調光指示信号の転送が行われず、残余の照明器具L6,L8,L9は消灯したままとなる。このようにして、図29の状態となる。. 以降、各照明器具Lは定期的に探索信号を発信し、それに対するC1のIDカードからの探索返信信号の受信状態が変化しない限り、現在の調光状態を保持し続ける。
これに対して、図30は、照明器具L2が故障している状態を示しており、IDカードからの探索返信信号は、照明器具L1,L4,L5で受信され、前記照明器具L1がマスターとなって100%点灯するとともに、前記調光指示信号の伝送に問題の生じなかった照明器具L4,L5,L7は、前記図29の場合と同様に、それぞれ70%、30%、30%で点灯する。しかしながら、照明器具L2からの前記調光指示信号に対する調光返信信号が受信できなかった照明器具L1は、前記IDカードのIDのC1に、照明器具L2のIDのIL2を付して、代理制御指示信号をブロードキャスト送信する。これを受信した照明器具の内、表1で示すように、照明器具L3,L5は自機の制御対象範囲内に前記照明器具L2が含まれているので、本来は前記の30%点灯のところ、代理で100%点灯する。残余の照明器具L4,L6,L7,L8,L9は、自機の制御対象範囲に前記照明器具L2が含まれていないので、状態は変化せず、照明器具L4,L7は、それぞれ70%、30%点灯のままであり、照明器具L6,L8,L9は、消灯したままである。このようにして、図30の状態となる。
以上のように、本発明の照明制御システムでは、利用者の存在の有無を認識して、自動的に照明手段3の点灯および調光制御を行うにあたって、照明器具L自体またはその近傍に照明制御装置4を設け、この照明制御装置4からの探索信号に応答して、利用者が携帯するIDカード2が探索返信信号を返信している間は、前記照明制御装置4は照明手段3を点灯および調光制御するので、利用者の動きがなくても、また利用者が意識することなく、該利用者の存在の有無を照明器具L側で認識でき、利用者付近の比較的狭小な範囲を、適切に点灯および調光制御することができる。このようにして、利用者の位置に応じた調光を自動的に実施し、利便性の向上および省エネルギ化の両立を簡易に実現することができる。また、認識されたID(前記C1,C2)に応じて制御態様を変化するので、より適切な点灯および調光制御を行うことができる。
さらにまた、人感センサ28を備え、その人感センサ28で利用者の存在が検出されると、前記照明制御装置4は前記照明手段3を点灯するので、前記IDカード2を携帯していない利用者C3が接近してきても、従来から用いられている構成と同様に、自動的に点灯制御を行うことができる。これによって、前記IDカード2を携帯していない利用者C3の利便性を損なうことなく、前記IDカード2を携帯している利用者C1,C2には、前記のように、意識させずに、適切な制御を行うことができるようになる。
また、利用者の比較的近隣にある照明器具L2が故障している中で、周囲の照明器具L3,L5がそれを補完するように点灯制御することで、利便性の低下を最低限に留めることができる。
なお、上述の説明では、利用者までの距離に応じて照度を制御(調光)することまで行っているけれども、点灯/消灯のみの制御だけでもよく、または常時点灯状態で、利用者が存在する場合には照度をアップする等の調光制御のみを行うようにしてもよい。
[実施の形態2]
図31は、本発明の実施の他の形態に係る照明制御システムにおけるIDカード2aの外観形状を示す斜視図であり、図32は、その電気的構成を示すブロック図であり、図33は、本発明の実施の他の形態に係る照明制御システムにおける照明器具Laの外観形状を示す斜視図であり、図34は、その照明器具Laにおける照明制御装置4aの電気的構成を示すブロック図である。これらのIDカード2aおよび照明器具Laは、前述の図2および図3ならびに図4および図5で示すIDカード2および照明器具Lにそれぞれ類似しており、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。
注目すべきは、本実施の形態では、IDカード2aには、押釦スイッチなどから成り、利用者によって操作される操作部31が設けられるとともに、それに対応して、記憶部11aは、該IDカード2aのIDとともに、前記定常ユーザC1を設定するためのモードとなるべき制御コードを記憶しており、処理部12aは、前記操作部31が操作されると、前記IDに前記制御コードを合わせた設定モード信号を送信することである。また、照明器具Laは、発光ダイオードなどから成る動作状態表示部32を備え、前記設定モード信号を受信すると、設定手段である処理部22aは、記憶部21aに格納されている手順に従って、前記動作状態表示部32を点灯して前記定常ユーザ設定モードにおける状態表示を行うとともに、通信部27を介して他の照明器具との間で送受信を行い、以下の設定を自動的に行うことである。
すなわち、前記設定モードでは、前記IDカード2aからの設定モード信号を受信した照明器具の内、前述のマスター決定処理によってマスターとなった照明器具からは、他の照明器具へモード移行信号がブロードキャスト送信され、これを受信した他の照明器具の処理部22aも一斉に設定モードとなり、前記動作状態表示部32を点灯し、予め定める期間内で探索信号を送信し、受信した返信信号のIDを自機の記憶部21aに格納するとともに、そのIDを通信部27を介して相互にやりとりし、各照明器具Laで受信された総てのIDを、前記オフィス52内に所属する定常ユーザC1として登録する。定常ユーザC1として登録されたIDについては、通常制御時に、前述のように消灯までの遅延時間を長くして制御を行う。
前記操作部31は、利用者の押下によって接触する電極部と、そのカバーから構成されており、利用者がカバー部分を押下することで電極が接触し、通電するようになる。処理部12aがこれを定期的に読取り、電圧変化によって入力があったことを検知し、前記設定モードへモード移行する。前記操作部31が操作されないときは、このIDカード2aは、前述のIDカード2と同様に、探索信号に応答して探索返信信号を返信し、前述の点灯および調光制御を実現させるだけであるが、前記操作部31が操作されると、上述のようにIDに制御コードを合わせた設定モード信号を送信し、照明器具Laを設定モードへモード移行させる。
このIDカード2aは、前述のように電源を備えておらず、したがって操作部31が押下されている状態で電波受信部15に探索信号の受信があった場合、および探索信号の受信がある状態で操作部31が押下されると、送信部14を通じて、前記設定モード信号を送信する。しかしながら、キャパシタなどの2次電池となる手段を備えておき、前記探索信号が受信されない状態で、操作部31が押下されたことを記憶しておき、その後一定時間以内に電波受信部15に探索信号の受信があった場合に、前記設定モード信号を返信する構成としてもよい。
以下に、本実施の形態の設定動作の概要を説明する。
図35で示すように、前記定常ユーザC1として利用したいと希望する利用者C11〜C14が、本システムの照明器具Laの検知位置にいる。うち、利用者C11は設定モードへ移行することができる前記IDカード2aを保持している。そのIDカード2aが、システム中のいずれかの照明器具Laと通信可能な状態になると、探索信号に応答して返信信号を返信し、図35の状態では、照明器具L9が最高の受信電界強度を持ち、L6,L8が中程度、L5が閾値をかろうじて上回る程度の電界強度で受信し、残余の照明器具L1〜L4,L7は、受信電界強度が閾値を超えるに至らなかったものとする。これによって、各照明器具L5,L6,L8,L9は、前述の図20で示すマスター決定処理を行い、照明器具L9をマスターと決定し、前述のような点灯および調光制御が行われる。
利用者が操作部31を押下すると、前記設定モード信号が送信され、照明器具L9は前記制御コードを受信したことから、利用者の指示が設定モード移行であると判断し、他の照明器具L1〜L8に、設定モードへの移行指示を送信する。設定モード移行指示を受信した各照明器具L1〜L8およびこの照明器具L9は、前記動作状態表示部32を点灯するとともに、それぞれの記憶部21aに保存されている定常ユーザを初期化する。あるいは、設定モード用の一時的領域を記憶部21aに確保してもよい。
設定モードに移行した各照明器具L1〜L9は、それから一定時間の間、定常ユーザID探査処理のみを実施する。または、再度IDカード2aを保持するユーザC11の操作部31の押下によって、該IDカード2aからの探査返信信号を受信する、もしくはそれを受信した照明器具L9からの通常モード移行指示を受信するまで、前記定常ユーザID探査処理を行うようにしてもよい。そして、各照明器具L1〜L9は、前記一定時間の間に1つ以上のIDを受信することがある。図36では、照明器具L5がユーザC14を受信、照明器具L6がユーザC12,C14を受信、照明器具L8がユーザC13を受信、照明器具L9がユーザC11,C13を受信、その他の照明器具L1〜L4,L7はIDを1つも受信していないものとしている。このようにして、ユーザIDを探査する。
各照明器具L1〜L9は、設定モードに移行してから一定時間経過時点でID探査処理を終了する。その後、その時点で記憶している受信したIDを、定常ユーザ通知信号のデータとして設定し、システム内の他の照明器具にブロードキャスト送信する。ブロードキャスト時における信号衝突は、送信開始時刻を各照明器具のIDを用いて決定するなどの手法によって回避することができる。各照明器具L1〜L9は、他の照明器具から前記定常ユーザ通知信号を受信したら、信号内に設定されているデータを解析し、IDカード2,2aのIDを取得する。そのうち、自機がまだ定常ユーザIDとして記憶していないIDがある場合には、それを定常ユーザIDとして前記記憶部21aに記憶する。その結果、全照明器具L1〜L9のブロードキャスト通信が終了した時点では、システム中の全照明器具L1〜L9が、定常ユーザとしてC11〜C14のIDを記憶していることになる。このようにして、ユーザIDを交換する。
前記定常ユーザ通知信号のブロードキャスト通信が完了した照明器具は、通常モードに復帰する。この復帰処理を、前記ブロードキャスト通信が完了した順に行うと、前述のようにブロードキャスト通信において信号衝突回避の手法をとった場合、ある照明器具は既に通常モードに復帰しているが、別の照明器具はブロードキャスト通信中または開始前という状態が起こりえるが、これは通常モードにおいても定常ユーザ通知信号を受理するようにすることで解決される。もしくは、定常ユーザ設定モード移行時にマスターとなった照明器具が、一定時間毎に定常ユーザ通知完了確認信号をブロードキャスト通信し、各照明器具はそれに対し定常ユーザ通知信号のブロードキャスト通信が完了したか、未だ終了していないかの応答を返し、マスターは全ての応答が完了を表している場合に通常モード復帰通知信号をブロードキャスト送信し、これを受信した各照明器具が通常モードに復帰する、という方法を採ってもよい。このようにして、通常モードへ復帰する。
通常モードへ復帰すると、動作状態表示部32は消灯される。これによって、利用者に定常ユーザの設定が正常に終了したことを報知する。また、正常に設定できなかった場合は、点滅させるなどして、設定の異常を利用者に通知するようにしてもよい。利用者は、各照明器具L1〜L9の動作状態表示部32を確認し、設定をやり直したい場合には、再びIDカード2aの操作部31を押下することで、同様の設定が行われる。上述の説明では、IDカード2aからの設定モード信号を受信すると設定モードへ移行したけれども、専用のIDカード2aを設けず、一部または全部の照明器具Laに前述の距離設定および感度設定を行うスイッチなどを設けるようにしてもよい。
図37〜図39は、上述の動作をさらに詳しく説明するためのフローチャートである。これらの図を用いて、以下に、本実施の形態における動作を詳しく説明する。
先ず、図37は、前記処理部22aによる定常ユーザ設定処理を詳しく説明するためのフローチャートである。この処理は、前述の図18の処理において、ステップS1→S01→S2→S3→S4→S02の経路のどこかに、設定モード信号を受信したか否かの判定を挿入することで分岐して開始される。ステップS111では、IDカード2,2aへの探索信号の送信タイミングとなったか否かが判断され、そうであるときにはステップS112で後述する定常ユーザ探索処理を行った後ステップS113に移り、そうでないときには直接ステップS113に移る。ステップS113では、探索処理を開始してから予め定める探索時間が経過したか否かが判断され、経過していないときには前記ステップS111に戻って探索処理が継続して行われ、経過しているとステップS114の後述する定常ユーザID交換処理を行い、ステップS115で通常モードへ移行した後、処理を終了する。
図38は、前記ステップS112における定常ユーザ探索処理を詳しく説明するためのフローチャートである。ステップS121では、前記探索信号を送信し、ステップS122では、それに応答したIDカード2,2aからの探索返信信号を受信したか否かが判断され、受信した場合にはステップS123に移ってそのIDを記憶部21aに一時記憶して前記ステップS122に戻って受信を繰返し、こうして新たな探索返信信号が受信されなくなるとステップS124に移る。ステップS124では、前記探索返信信号の規定の待受け時間が経過したか否かが判断され、経過していないときには前記ステップS122に戻って受信動作が継続して行われ、経過しているとステップS125において、前記ステップS123で一時記憶したIDを定常ユーザIDとして記憶部21aに記憶して、処理を終了する。
図39は、前記ステップS114における定常ユーザID交換処理を詳しく説明するためのフローチャートである。ステップS131では、前述のように信号の衝突を防止するために各照明器具に予め規定されている通知開始タイミングとなったか否かが判断され、開始タイミングとなるとステップS132に移り、前記記憶部21aに記憶したIDがあると、そのIDを元に、前記定常ユーザ通知信号を作成し、ブロードキャスト送信を開始した後ステップS133に移り、開始タイミングとなっていなければ、直接ステップS133に移る。ステップS133では、他の照明器具から定常ユーザ通知信号を受信したか否かが判断され、受信した場合にはステップS134に移り、その定常ユーザ通知信号中のユーザIDを前記記憶部21aに定常ユーザIDとして記憶した後ステップS135に移り、受信しない場合には直接ステップS135に移る。ステップS135では、前記定常ユーザIDの規定の通信時間が経過したか否かが判断され、経過していないときには前記ステップS131に戻って送信および/または受信動作が継続して行われ、経過しているとステップS136において、ブロードキャスト送信を終了して処理を終了する。
このようにして、設定モードとなると、各IDカード2,2aのIDを自動的に探索し、得られたIDデータを各照明器具La間で交換し、登録することで、前記IDカード2,2aを保持したユーザが検知範囲にいるだけで定常ユーザの登録が可能になり、該定常ユーザの設定を容易に行うことができる。これによって、前述の定常ユーザC1のグループと、非定常ユーザC2のグループと、IDカードを保持しないユーザC3のグループとにグループ分けして、前述のようなグループ毎に対応した態様の制御が可能になる。また、登録すべきIDカード2を集めて上述の登録作業を行い、その後登録されたIDカード2を各利用者に配布することで、さらに登録作業を簡略化することができる。
ここで、特開2002−289369号公報には、コントローラからの特定小電力無線によって制御信号を親器具で受信し、さらに微弱無線で子器具へ転送することで、簡単な設置工事で、複数の照明器具を連動して制御できるようにした照明装置が提案されている。したがって、器具間の通信は開示されているけれども、本発明のように電界強度や距離情報を通信することによる格別の作用効果は到底期待できないものである。
また、前記特開平7−122368号公報には、照明器具側の総ての受信機が応答すべきコードをリモコンから送信すると、照明器具は探索信号を送信し、リモコンがそれに応答することで、行方が分からなくなったリモコンの所在を知らせることも開示されている。
したがって、探索信号は開示されているけれども、本発明のようにそれに応答した探索返信信号を利用して、利用者の真上付近の照明器具を中心とした段階的な調光を実施するという格別な作用効果も到底期待できないものである。