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JP4415551B2 - 希土類合金、希土類焼結磁石およびその製造方法 - Google Patents

希土類合金、希土類焼結磁石およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、R−Fe−B系焼結磁石の製造に用いられる希土類合金およびその製造方法ならびに希土類焼結磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
希土類合金の焼結磁石(永久磁石)は、一般に、希土類合金の粉末をプレス成形し、得られた粉末の成形体を焼結し、必要に応じて時効処理することによって製造される。現在、サマリウム・コバルト系磁石と、ネオジム・鉄・ボロン系磁石の二種類が各分野で広く用いられている。なかでも、ネオジム・鉄・ボロン系磁石(以下、「R−Fe−B系磁石」と称する。RはYを含む希土類元素、Feは鉄、Bはボロンである。)は、種々の磁石の中で最も高い最大磁気エネルギー積を示し、価格も比較的安いため、各種電子機器へ積極的に採用されている。
【0003】
R−Fe−B系焼結磁石は、主にR2Fe14Bの正方晶化合物からなる主相、Nd等からなるRリッチ相、およびBリッチ相から構成されている。なお、Feの一部がCoやNiなどの遷移金属と置換されてもよく、Bの一部がCで置換されてもよい。本発明が好適に適用されるR−Fe−B系焼結磁石は、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0004】
このような磁石となるR−Fe−B系合金を作製するために、従来は、インゴット鋳造法が用いられてきた。一般的なインゴット鋳造法によると、出発原料である希土類金属、電解鉄およびフェロボロン合金を高周波溶解し、得られた溶湯を鋳型内で比較的ゆっくりと冷却することによって合金インゴットが作製される。
【0005】
近年、合金の溶湯を単ロール、双ロール、回転ディスク、または回転円筒鋳型の内面などと接触させることによって、比較的速く冷却し、合金溶湯から、インゴットよりも薄い凝固合金(「合金フレーク」と称することにする。)を作製するストリップキャスト法や遠心鋳造法に代表される急冷法が注目されている。このような急冷法によって作製された合金片の厚さは、一般に、約0.03mm以上約10mm以下の範囲にある。急冷法によると、合金溶湯は冷却ロールに接触した面(ロール接触面)から凝固し始め、ロール接触面から厚さ方向に結晶が柱状に成長してゆく。その結果、ストリップキャスト法などによって作製された急冷合金は、短軸方向のサイズが約0.1μm以上約100μm以下で、長軸方向のサイズが約5μm以上約500μm以下のR2Fe14B結晶相と、R2Fe14B結晶相の粒界に分散して存在するRリッチ相とを含有する組織を持つにいたる。Rリッチ相は希土類元素Rの濃度が比較的高い非磁性相である。
【0006】
急冷合金は、従来のインゴット鋳造法(金型鋳造法)によって作製された合金(インゴット合金)に比較して相対的に短い時間(冷却速度:10K/sec以上、104K/sec以下)で冷却されているため、組織が微細化され、結晶粒径が小さいという特徴を有している。また、Rリッチ相も合金組織内に微細に分散している。これらの特徴が故に、急冷合金を用いることによって、優れた磁気特性を有する磁石を製造することができる。
【0007】
プレス成形に供される合金粉末は、これらの合金塊(鋳造合金や急冷合金)を、例えば水素化粉砕法および/または種々の機械的粉砕法(例えば、ボールミルやアトライターが用いられる)で粉砕し、得られた粗粉末(例えば、平均粒径10μm〜500μm)を例えばジェットミルを用いた乾式粉砕法で微粉砕することによって得られる。プレス成形に供せられる合金粉末の平均粒径は、磁気特性の観点から、1.5μm〜7μmの範囲内にあることが好ましい。なお、粉末の「平均粒径」は、特にことわらない限り、ここでは、FSSS粒径を指すことにする。
【0008】
R−Fe−B系磁石の用途が広がるにつれて、さらなる磁気特性の向上が望まれている。特に、モータ等に用いられるために、保磁力(HcJ)を向上することが望まれている。
【0009】
従来から種々の方法が検討されており、NdやPrなどの軽希土類元素LRに加えてDy、HoおよびTbなどの重希土類元素HRを添加することによって、異方性磁界を高める手法が有力な方法として知られている。
【0010】
【特許文献1】
米国特許第4,770,723号明細書
【特許文献2】
米国特許第4,792,368号明細書
【特許文献3】
特許第2787580号公報
【特許文献4】
特開2002−88451号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、重希土類元素は、軽希土類元素よりもさらに高価であり、希土類焼結磁石の価格を上昇させるという問題がある。また、重希土類元素を添加すると残留磁束密度が低下するのでその添加量には限界がある。
【0012】
重希土類元素の添加に代えて、または、重希土類元素の添加に加えて、V(特許文献3)を添加する方法やNbやMo(特許文献4)を添加する方法も検討されているが、十分な保磁力を得るには至っていない。また、これらの特許文献に記載されている希土類焼結磁石の製造方法は生産性が悪いという問題もある。
【0013】
本発明は、上記の諸点に鑑みてなされたものであり、本発明の主な目的は、重希土類元素を必須としなくとも従来よりも保磁力の高い希土類焼結磁石を得ることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の希土類合金は、11原子%以上18原子%以下のR(Rは、Yを含む希土類元素の内から選択される少なくとも1種の希土類元素であって、少なくとも1種の軽希土類元素を含む)と、5原子%以上12原子%以下のQ(Qはボロンまたはボロンと炭素との混合物)と、0原子%超6原子%未満のM(Mは、VおよびMoの内の少なくとも1種の元素)とを含み、T(Tは、FeまたはFeとFe以外の少なくとも1種の遷移金属元素との混合物)および不純物が残部を占める組成を有するとともに、R2Fe14B型結晶構造の主相を有し、前記主相中にMが過飽和に固溶していることを特徴とする。
【0016】
ある実施形態において、Fe−M型二元系固溶体を実質的に有しない。
【0017】
ある実施形態において、M−Fe−B型三元系化合物相を実質的に有しない。
【0018】
ある実施形態において、MはV(バナジウム)を含む。
【0019】
ある実施形態において、Mの組成比率が2原子%未満である。
【0021】
本発明による希土類合金の製造方法は、11原子%以上18原子%以下のR(Rは、Yを含む希土類元素の内から選択される少なくとも1種の希土類元素であって、少なくとも1種の軽希土類元素を含む)と、5原子%以上12原子%以下のQ(Qはボロンまたはボロンと炭素との混合物)と、0原子%超6原子%未満のM(Mは、VおよびMoの内の少なくとも1種の元素)とを含み、T(Tは、FeまたはFeとFe以外の少なくとも1種の遷移金属元素との混合物)および不純物が残部を占める組成を有する合金溶湯を準備する工程と、前記合金溶湯を10K/sec以上10、000K/sec以下の速度で冷却凝固する工程とを包含することを特徴とする。
【0023】
ある実施形態において、前記合金溶湯を前記冷却凝固する工程は、ストリップキャスト法で実行される。
【0024】
本発明の希土類合金は、上記のいずれかの方法によって製造されることを特徴とする。
【0025】
本発明の希土類焼結磁石は、11原子%以上18原子%以下のR(Rは、Yを含む希土類元素の内から選択される少なくとも1種の希土類元素であって、少なくとも1種の軽希土類元素を含む)と、5原子%以上12原子%以下のQ(Qはボロンまたはボロンと炭素との混合物)と、0原子%超6原子%未満のM(Mは、VおよびMoの内の少なくとも1種の元素)とを含み、T(Tは、FeまたはFeとFe以外の少なくとも1種の遷移金属元素との混合物)および不純物が残部を占める組成を有するとともに、R2Fe14B型結晶構造の主相と、M−Fe−B型三元系化合物相とを少なくとも有し、前記三元系化合物相は前記主相の周辺に偏在していることを特徴とする。
【0027】
ある実施形態において、MはV(バナジウム)を含む。
【0028】
ある実施形態において、Mの組成比率が2原子%未満である。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるR−Fe−B系希土類焼結磁石およびその製造方法の実施形態を説明する。
【0032】
本発明の実施形態のR−Fe−B系希土類焼結磁石は、11原子%以上18原子%以下のR(Rは、Yを含む希土類元素の内から選択される少なくとも1種の希土類元素)と、5原子%以上12原子%以下のQ(Qはボロンまたはボロンと炭素との混合物)と、0原子%超6原子%未満のM(Mは、VおよびMoの内の少なくとも1種の元素)とを含み、T(Tは、FeまたはFeとFe以外の少なくとも1種の遷移金属元素との混合物)、必要に応じて添加される微量添加元素および不純物が残部を占める組成を有するとともに、R2Fe14B型結晶構造の主相を有し、主相中にMが過飽和に固溶している合金を用いて製造される。
【0033】
ここで、希土類元素Rは、軽希土類元素LRの少なくとも1種を含む。軽希土類元素LRは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gdなどであり、NdおよびPrの少なくとも1種を含むことが好ましい。希土類元素Rは、少なくとも1種の軽希土類元素とともに、少なくとも1種の重希土類元素を含んでも良く、重希土類元素HRは、Y、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどであり、Dy、HoおよびTbの内から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、特にDyが好ましい。
【0034】
また、遷移金属元素はTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niなどであり、Tは、Fe、またはFeの一部がNiおよびCoの少なくとも一方で置換されたものが好ましい。
【0035】
必要に応じて添加される微量添加元素は、Al、Cu、Ga、CrおよびNbの少なくとも1種であることが好ましい。添加量は微量添加元素の合計が2原子%以下であることが好ましい。磁気特性の観点からこれら元素の組成比率は上記の範囲にあることが好ましい。この基本的な組成比率は公知である。
【0036】
本発明による実施形態の合金の特徴は、0原子%超6原子%未満のM(Mは、VおよびMoの内の少なくとも1種の元素)を含み、R2Fe14B型結晶構造の主相中にMが過飽和に固溶していることにある。同じ組成の合金溶湯を用いても、鋳造法で合金塊(鋳造合金)を作製すると、Fe−M型二元系固溶体(デンドライト組織の初晶)が生成し、この合金塊は粉砕性が悪く、このままでは量産することができない。具体的には、Fe−V相は粘性が強く、Fe−Mo相は硬すぎるので、成形体を作製するための粉末を得ることが困難である。また、Fe−M型二元系固溶体を含まない粉末を作製するためには、一旦溶体化し、Fe−M型二元系固溶体を反応させるための熱処理をすることになるが、この熱処理を施すと、結晶粒の粗大化を招き、磁気特性が低下するという問題がある。
【0037】
本発明者が種々検討した結果、例えば、上記組成を有する合金溶湯を10K/sec以上、好ましくは100K/sec以上の速度で冷却凝固すると、Fe−M型二元系固溶体を実質的に含まない合金を得ることができる。また、組成に依存するが、M−Fe−B型三元系化合物相を実質的に有しない合金を得ることもできる。M−Fe−B型三元系化合物相は非磁性相なので、磁気特性の観点からはその量は多くない方が好ましく、焼結前の状態ではM−Fe−B型三元系化合物相を実質的に含まないことが好ましい。そのためには、Mの組成比率が6原子%未満であることが好ましく、4原子%未満、さらに2原子%未満であることがさらに好ましい。なお、冷却速度が10、000K/secを超えると、チル晶や等軸晶などが生成し、結晶方位がランダムに成長した組織となるため、プレス形成時に印加する配向磁界によって配向させることが困難となり、得られる焼結磁石の残留磁束密度が低下することがあるので好ましくない。冷却法としては、ストリップキャスト法、ガスアトマイズ法や遠心鋳造法などを用いることが可能で、特に量産性の観点から、ストリップキャスト法が好ましい。
【0038】
上述したような組成の合金溶湯を上述の冷却速度で急冷することによって得られる合金は、Mのほとんどが主相中に固溶しており、すなわち過飽和状態となっている。その結果、Fe−M型二元系固溶体やM−Fe−B型三元系化合物相を実質的に含まないか、含んだとしても非常に僅かであり、合金の粉砕性は、Mを添加しない合金と同等である。
【0039】
また、この合金を粉砕することによって得られた粉末を用いて形成した成形体を例えば1000℃以上で焼結すると、主相中に過飽和に固溶したMが主相外に拡散し、B(またはC)と反応し、M−Fe−B型三元系化合物相を生成する。その結果、三元系化合物相は主相の周辺に微細に分散することになる。焼結過程で生成される三元系化合物相は、主相の周辺に均一に生成され、主相が粗大化することを抑制するように作用する。従って、本発明による実施形態の希土類焼結磁石の主相の平均粒径は、Mを添加していない希土類焼結磁石に比べて、10%〜30%程度小さくなる。なお、Mの組成比率が多くなると、比較的大きな三元系化合物相が生成されるので、微細なM−Fe−B型三元系化合物相が主相の周辺に偏在した組織を得るためには、Mの組成比率は2原子%未満であることが好ましい。
【0040】
また、上述の傾向は、焼結温度に依存しないため、従来、主相の粗大化を抑制するために行われていた2段階焼成(例えば1回目:800℃以上900℃以下、2回目:1000℃以上1200℃以下)を行う必要がない。本発明の実施形態によると、従来の製造方法では、酸化反応が激し過ぎるために製造することが困難であった、主相の平均結晶粒径が1μm超5μm未満(典型的には4μm以上5μm未満)の希土類焼結磁石を得ることができる。
【0041】
本発明の実施形態によると、Mの添加によって、主相の粗大化が抑制されるので、主相の粗大化による磁気特性(特に保磁力)の低下が抑制される結果、重希土類元素を添加しなくとも保磁力を向上することが可能で、従来よりも少ない量の重希土類元素の添加で従来と同等の保磁力を得ること、あるいは、従来よりも高い保磁力を得ることが可能となる。さらに、本発明の希土類焼結磁石の製造に用いられる希土類合金は、ストリップキャスト法などの急冷法で作製されるため、量産性に優れ、また、M添加による粉砕性の低下もない。
【0042】
なお、焼結磁石の時効処理の最適温度は、Mの組成比率に依存するので、適宜設定することが好ましい。MとしてVを用いる場合、時効処理の温度は、500℃以上660℃以下の範囲内で設定することこが好ましい。
【0043】
【実施例】
以下、本発明による希土類焼結磁石の製造方法について、実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0044】
Nd:14.5原子%、B:6.0原子%、残部:Feおよび不可避不純物である組成を基本組成とし、Feの一部をVで置換した。
【0045】
Vの組成比率が、0原子%、0.5原子%、2原子%、4原子%および6原子%の合金溶湯(約700℃から約1300℃)を調製し、この合金溶湯をストリップキャスト法(冷却速度:500K/sec)で冷却することによって、合金を得た。比較のために、鋳造法(平均冷却速度:1K/sec)で鋳造合金を作製した。
【0046】
得られた合金塊をそれぞれ水素化粉砕法で粗粉砕した後、ジェットミルを用いて微粉砕することによって希土類合金粉末(平均粒径3μm)を得た。得られた合金粉末を配向磁界(約1.0T)中でプレス成形(約0.5〜2ton/cm2)し、成形体を得た。得られた成形体を1040℃〜1100℃で約4時間、減圧希ガス雰囲気下で焼結した後、540℃から640℃で2時間にわたって時効処理を行い、焼結磁石を得た。
【0047】
まず、得られた合金塊の組織を光学顕微鏡(1000倍)で観察した結果を図1Aから図1Dおよび図2Aから図2Dに示す。図1Aから図1Dはストリップキャスト法を用いて作製した合金塊の組織を示し、図2Aから図2Dは鋳造法を用いて作製さした合金塊の組織を示す。Vの組成比率は、図1Aおよび図2Aは0原子%、図1Bおよび図2Bは2原子%、図1Cおよび図2Cは4原子%、図1Dおよび図2Dは6原子%である。
【0048】
図1Aから図1Dと図2Aから図2Dとを比較するとわかるように、鋳造法で作製した合金には、α−Fe相(V=0原子%)やFe−V相(V=2〜6原子%)の初晶やV−Fe−B相が生成しているのに対し、ストリップキャスト法で作製した合金では、α−Fe相やFe−V相の初晶やV−Fe−B相の生成は認められなかった。すなわち、ストリップキャスト法で作製した本発明の実施例による合金では、Vが主相中に過飽和に固溶している。なお、Vの組成比率が6原子%を超えるとストリップキャスト法で作製した合金においてもV−Fe−B化合物相が認められた。従って、V−Fe−B化合物相を生成させないためには、Vの組成比率が6原子%以下であることが好ましい。
【0049】
次に、ストリップキャスト合金から作製した焼結体の断面をEPMA(1000倍)を用いて観察した結果を図3Aから図3Dおよび図4Aから図4Dに示す。図3Aから図3Dは組成像(反射電子像)であり、図4Aから図4DはVのKα線の強度分布を示す。Vの組成比率は、図3Aおよび図4Aは0.5原子%、図3Bおよび図4Bは2原子%、図3Cおよび図4Cは4原子%、図3Dおよび図4Dは6原子%である。また、比較のために、従来の鋳造法で得られた合金を用いて作製した焼結体の断面をEPMAで観察した結果を図5Aおよび図5Bに示す。図5Aは組成像(3000倍)であり、図5BはVのKα線の強度分布を示す。なお、この焼結体の合金組成は、Nd:15原子%、B:8.0原子%、V:4原子%、残部:Feおよび不可避不純物であるが、上記の組成との差は僅かであり、形成される組織に対する影響は小さい。
【0050】
従来の鋳造合金を用いて作製した焼結体においては、図5Aおよび図5Bをみると明らかなように、結晶粒径が15μmを超える粗大なV−Fe−B相(図5Aの黒い部分、図5Bの白い部分)が形成されていることがわかる。
【0051】
これに対し、図3Aから図3Dおよび図4Aから図4Dからわかるように、本発明による合金から作製された焼結磁石においては、比較的小さなV−Fe−B相が主相の周辺に分散していることがわかる。なお、Vの組成比率が増加するにつれてV−Fe−B相の結晶粒径が大きくなり、Vを6原子%含む焼結磁石では結晶粒径が約10μmに達するものも見られる(図4D)。一方、図4Aからわかるように、Vの組成比率が0.5原子%であると、V−Fe−B相は主相の周辺にのみ形成されている。微細なV−Fe−B相が主相の周辺に偏在した組織を得るためには、Vの組成比率は2原子%未満であることが好ましい。
【0052】
次に、得られた焼結磁石の磁気特性を評価した結果を表1に示す。なお、表1中の平均粒径は、カット法を用いて測定した焼結磁石の配向方向(配向磁界を印加し方向)に平行な断面における結晶粒(主相)の平均粒径を示している。
【0053】
【表1】
Figure 0004415551
【0054】
表1の結果からわかるように、Vを添加した本実施例の合金を用いて作製した焼結磁石は、1050kA/m以上の保磁力を有し、また、最大磁気エネルギー積も270kJ/m3以上の値を有する。これは、Vを添加したことによって、主相の平均粒径が小さくなった(15%から30%程度)ためと考えられる。このことから、保持力の改善効果を得るためには、主相の平均粒径が5μm未満となるようVの組成比率を調整することが好ましいと考えられる。
【0055】
上記の実施例では、MとしてVを添加した例を示したが、MoはVと同様に、三元系化合物相を生成し、実質的に同様の傾向を有する。従って、実施例で示したのと同様に、10K/sec以上10、000K/sec以下の冷却速度で合金塊を作製することによって、保磁力を改善する効果を得ることができる。
【0056】
また、上記の実施例では、重希土類元素を添加していない組成について説明したが、軽希土類元素の一部を重希土類元素(好ましくはDy)に置換しても、M(Vおよび/またはMo)の添加効果は実質的に同じであり、重希土類元素の添加による保磁力改善効果に加えて、主相の微細化によって保磁力を改善する効果を得ることができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によると、重希土類元素を必須としなくとも従来よりも保磁力の高い希土類焼結磁石を得ることができる。従って、本発明によると、従来の重希土類元素添加系の保磁力を維持しつつ、重希土類元素の使用量を減少させること、あるいは、従来よりも保磁力の高い希土類焼結磁石を提供することができる。本発明の希土類焼結磁石は、モータなど高い保磁力が要求される用途に好適に用いることができる。また、本発明による希土類合金の製造方法は、特許文献3および4に記載されている製造方法に比べ量産性に優れるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1A】ストリップキャスト法を用いて作製した合金塊(V=0原子%)の組織を示す顕微鏡写真である。
【図1B】ストリップキャスト法を用いて作製した合金塊(V=2原子%)の組織を示す顕微鏡写真である。
【図1C】ストリップキャスト法を用いて作製した合金塊(V=4原子%)の組織を示す顕微鏡写真である。
【図1D】ストリップキャスト法を用いて作製した合金塊(V=6原子%)の組織を示す顕微鏡写真である。
【図2A】鋳造法を用いて作製した合金塊(V=0原子%)の組織を示す顕微鏡写真である。
【図2B】鋳造法を用いて作製した合金塊(V=2原子%)の組織を示す顕微鏡写真である。
【図2C】鋳造法を用いて作製した合金塊(V=4原子%)の組織を示す顕微鏡写真である。
【図2D】鋳造法を用いて作製した合金塊(V=6原子%)の組織を示す顕微鏡写真である。
【図3A】ストリップキャスト合金から作製した焼結体(V=0.5原子%)の断面のEPMAによる組成像を示す写真である。
【図3B】ストリップキャスト合金から作製した焼結体(V=2原子%)の断面のEPMAによる組成像を示す写真である。
【図3C】ストリップキャスト合金から作製した焼結体(V=4原子%)の断面のEPMAによる組成像を示す写真である。
【図3D】ストリップキャスト合金から作製した焼結体(V=6原子%)の断面のEPMAによる組成像を示す写真である。
【図4A】ストリップキャスト合金から作製した焼結体(V=0.5原子%)の断面のEPMAによるVのKα線の強度分布を示す写真である。
【図4B】ストリップキャスト合金から作製した焼結体(V=2原子%)の断面のEPMAによるVのKα線の強度分布を示す写真である。
【図4C】ストリップキャスト合金から作製した焼結体(V=4原子%)の断面のEPMAによるVのKα線の強度分布を示す写真である。
【図4D】ストリップキャスト合金から作製した焼結体(V=6原子%)の断面のEPMAによるVのKα線の強度分布を示す写真である。
【図5A】従来の鋳造法で得られた合金を用いて作製した焼結体(V=4原子%)の断面のEPMAによる組成像を示す写真である。
【図5B】従来の鋳造法で得られた合金を用いて作製した焼結体(V=4原子%)の断面のEPMAによるVのKα線の強度分布を示す写真である。

Claims (9)

  1. 11原子%以上18原子%以下のR(Rは、Yを含む希土類元素の内から選択される少なくとも1種の希土類元素であって、少なくとも1種の軽希土類元素を含む)と、5原子%以上12原子%以下のQ(Qはボロンまたはボロンと炭素との混合物)と、0原子%超6原子%未満のM(Mは、VおよびMoの内の少なくとも1種の元素)とを含み、T(Tは、FeまたはFeとFe以外の少なくとも1種の遷移金属元素との混合物)および不純物が残部を占める組成を有するとともに、R2Fe14B型結晶構造の主相を有し、前記主相中にMが過飽和に固溶しており、且つ、Fe−M型二元系固溶体およびM−Fe−B型三元系化合物相を実質的に有しない焼結磁石用の希土類合金。
  2. MはV(バナジウム)を含む、請求項1に記載の焼結磁石用の希土類合金。
  3. Mの組成比率が2原子%未満である、請求項1または2に記載の焼結磁石用の希土類合金。
  4. 11原子%以上18原子%以下のR(Rは、Yを含む希土類元素の内から選択される少なくとも1種の希土類元素であって、少なくとも1種の軽希土類元素を含む)と、5原子%以上12原子%以下のQ(Qはボロンまたはボロンと炭素との混合物)と、0原子%超6原子%未満のM(Mは、VおよびMoの内の少なくとも1種の元素)とを含み、T(Tは、FeまたはFeとFe以外の少なくとも1種の遷移金属元素との混合物)および不純物が残部を占める組成を有する合金溶湯を準備する工程と、
    前記合金溶湯を700℃以上1300℃以下の温度範囲において、10K/sec以上10、000K/sec以下の速度で冷却凝固する工程と、
    を包含し、
    2 Fe 14 B型結晶構造の主相を有し、前記主相中にMが過飽和に固溶しており、且つ、Fe−M型二元系固溶体およびM−Fe−B型三元系化合物相を実質的に有しない焼結磁石用の希土類合金の製造方法。
  5. 前記合金溶湯を前記冷却凝固する工程は、ストリップキャスト法で実行される、請求項に記載の焼結磁石用の希土類合金の製造方法。
  6. 請求項1から3のいずれかに記載の焼結磁石用の希土類合金を粉砕することによって、希土類合金粉末を得る工程と、
    前記希土類合金粉末を焼結する工程と
    を包含する希土類焼結磁石の製造方法。
  7. 11原子%以上18原子%以下のR(Rは、Yを含む希土類元素の内から選択される少なくとも1種の希土類元素であって、少なくとも1種の軽希土類元素を含む)と、5原子%以上12原子%以下のQ(Qはボロンまたはボロンと炭素との混合物)と、0原子%超6原子%未満のM(Mは、VおよびMoの内の少なくとも1種の元素)とを含み、T(Tは、FeまたはFeとFe以外の少なくとも1種の遷移金属元素との混合物)および不純物が残部を占める組成を有するとともに、R2Fe14B型結晶構造の主相と、M−Fe−B型三元系化合物相とを少なくとも有し、前記三元系化合物相は前記主相の周辺に偏在している、希土類焼結磁石。
  8. MはV(バナジウム)を含む、請求項に記載の希土類焼結磁石。
  9. Mの組成比率が2原子%未満である、請求項またはに記載の希土類焼結磁石。
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