JP4401887B2 - マスキング装置 - Google Patents

Description

本発明は、マスキング装置に関する。より詳細には面ファスナーの係合力を利用し、マスキング材を張設するマスキング装置に関するものである。

面ファスナーの係合力を利用して、壁下地材に内装材を付設したり、絵画または写真などの装飾、意匠材を壁に懸架することが提案されている。（特許文献１および特許文献２参照）

しかしながらこれら従来の面ファスナーによる被覆材の付設は固定的なものであり、面ファスナーを接着剤やねじ込み器具により被着体に設置し、一度被覆材を面ファスナーに付設すると被覆材を変更しないことが多い。かかる使用法では、面ファスナー本来の反復着脱可能の機能を十分利用しているとはいえず、面ファスナーのより多面的な利用が望まれている。

特開２００３−２２１９１２号公報 特開２００３−２７８３５７号公報

本発明の目的は、マスキング材とそれを付設する面ファスナー部材を提供することにある。

すなわち本発明は、裏面に粘着剤層を設けた成形フック面ファスナーと、裏面にループ面ファスナーを有するマスキング材からなり、該フック面ファスナーのフック状係合素子の高さが０.２０〜１．０ｍｍであって、該フック面ファスナーとループ面ファスナーを係合するように構成した、塗装の際に用いるマスキング装置である。

本発明によれば、壁または物品表面などの被着体に粘着剤層によりフック面ファスナーを添着し、該フック面ファスナーに、裏面にループ面ファスナーを有する機能性表面層を係合して、被覆装置を短期間使用する。被覆材を使用した後は面ファスナーの係合を外して被覆材を除くとともに、フック面ファスナーの粘着剤を剥離してフック面ファスナーも容易に回収できるので、被着体に取付穴や接着剤残渣などの損傷を与えることがない。また、各部材の再使用が容易であるという利点もある。

本発明に用いるフック面ファスナーは、比較的短期間使用するものであるため薄手かつ安価なものが望ましく、樹脂成形により得られる成形フック面ファスナーが用いられる。かかる成形フック面ファスナーは、かぎ状係合素子を形成する突条を有する樹脂成形テープを製造し、該突条に連続的に小間隔の切れ目を入れ、該成形テープを長さ方向に延伸して、突条から多数のかぎ状係合素子を形成する方法により得られる。さらに他の方法として、表面にかぎ状の微細孔を多数設けたローラーに溶融樹脂を圧入し冷却した後、該ローラーからかぎ状フックが立設したフック面ファスナーテープを巻き取る方法が挙げられる。
成形フック面ファスナーは、布製フック面ファスナーに比して、係合素子を小さくすることおよび基板を薄くすることが容易であり、本発明の目的に特に適している。好ましい例としては、フック面ファスナー基板の厚さが０．０５〜０．３０ｍｍ、フック状係合素子の高さが０．２０〜１．０ｍｍ、フック状係合素子の密度が２０〜２００個／ｃｍ^２程度である。フック状係合素子の頭部の形状は、かぎ状、矢じり状、キノコ状、円板状などにすることができる。

成形フック面ファスナーはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン６などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等の熱可塑性樹脂から成形される。コスト、成形性の点からは、ポリプロピレンが好ましく、耐熱性の点からはポリエチレンテレフタレートが好ましい。

成形フック面ファスナーの裏面に設ける粘着剤層は、被着体と強固に接着するものではなく、フック面ファスナーを剥離するときに、フック面ファスナーと一体的に剥離することが望ましい。本発明において、接着剤でなく粘着剤を用いるのは、フック面ファスナーを長期間付設することが目的でなく、数時間ないし数週間程度付設し、使用後は被着体に損傷を与えずにフック面ファスナーを容易に剥離することを目的とするためである。かかる性能を有する粘着剤として公知の粘着剤が使用できる。その具体例としては、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコン系粘着剤などが挙げられ、特に再剥離型粘着剤が好ましく用いられる。

本発明の機能性被覆装置は、内装材、外装材、ガラス面、塗装面、家具などに上記フック面ファスナーを粘着剤層により貼着し、該フック面ファスナーに機能性表面層を、該機能性表面層の裏面に設けられたループ面ファスナーを介して係合する。
表面層の一例として樹脂フィルム、特に水または有機溶媒不透過性のフィルムが挙げられる。該表面層の裏面には、フック状係合素子と係合するループ面ファスナーが接着または融着して設けられ、機能性表面層を構成する。ループ面ファスナーは、係合する表面層の大きさや重さに応じて、必要な係合力を有するものが選択される。その具体例としては、布製ループ面ファスナー、ループ織物、不織布、起毛不織布、ループ糸条からなる網状体等が挙げられる。

樹脂フィルムを用いた機能性表面層は、塗装をする際に塗装すべきでない面を被覆するマスキング材として使用できる。塗装終了後に、機能性表面層のみまたはフック面ファスナーとともに機能性表面層を被着体から剥離すれば、目的とする塗装が効率的に行える。また、本発明の機能性被覆装置は、表面保護材としても使用することができ、各種機械、部品、電気器具、家具などの表面保護に使用できる。
従来、粘着剤層をもつ紙テープからなるマスキング材が用いられているが、かかるマスキング材は、粘着剤層が不用意に貼着し、必要個所に的確に付設しにくい難点があり、また被覆面積が大きい場合は、狭いテープを複数貼着するか、幅広のテープを貼着することになり、その作業はさらに困難となる。勿論一度使用したマスキングテープを再使用することは事実上不可能である。

一方、本発明の機能性被覆装置によるマスキングは、機能性表面層が被着体に直接貼着せず、フック面ファスナーに係合して付設されるので、機能性表面層の位置調整は面ファスナーの着脱により自由にできる。また、機能性表面層自体は粘着性を有しないので、自己粘着したり不用意に他の部位に粘着することがなく、再使用が容易である。さらに、作業の効率化とコストの低減も図られる。成形フック面ファスナーについては、付与する粘着剤の耐久性や、粘着剤層の保護の程度により、その再使用度は異なるが、紙テープに比して成形フック面ファスナーは硬く変形し難いので、粘着剤層の自己粘着を防ぎやすく、粘着剤層を保護する剥離紙を適宜利用すれば、再使用度を上げることができる。成形フック面ファスナーの位置調整も粘着剤層により容易であることも利点の一つである。

機能性表面層の他の一例として、繊維層、フィルムなどで表面材を構成し、その面に彩色、印刷などを施した意匠層として用いることができる。意匠層に使用する繊維層は、編織布、不織布、各種樹脂加工した繊維層、樹脂フィルムとの積層体を含む。フィルムはフィルム単体、積層フィルムまたはフィルムと上記した繊維層との複合体を含む。該繊維層等の少なくとも一部に、意匠的な加工が行われる。該意匠層の大きさ、厚さは必要に応じて選択される。
この意匠層は上記のマスキング装置と同一の成形フック面ファスナーにより、任意の個所に貼着することができる。意匠層を設けた機能性被覆装置は、屋外の掲示、宣伝用意匠装置、屋内の内装の一時的変更に使用する意匠装置として使用できる。屋内の内装は、イベントやパーテイの雰囲気に応じて構成することが望ましいが、従来は広い面積の内装を簡単に変更することは困難であり、変更には多大の時間と費用を要した。本発明によれば、成形フック面ファスナーを粘着した後に、意匠層をループ面ファスナーを介して係合すれば直ちに内装を変更することができる。一度係合した意匠層を再度変更することも容易である。例えば、写真撮影の場合、背景としての意匠層を顧客の希望に応じて、特定の意匠や写真として、特殊な背景効果を与える装置として使用できる。使用後にフック面ファスナーを剥離する際に、被着体に傷を与えない利点は上記と同様である。

また、機能性表面層の他の一例は、多孔性繊維層または多孔性樹脂層で構成した吸湿性または緩衝性の表面層であり、多孔性繊維層の具体例としては空隙率の高い布帛、不織布、網状繊維層、ボイドを含む繊維層およびそれらの樹脂加工品などである。また多孔性樹脂層としては、連続または独立の気泡またはボイドを含むポリオレフィン系樹脂や、ポリウレタン系の樹脂層が挙げられる。該多孔性繊維層は、吸湿、吸音、断熱または衝撃緩衝に要する厚さや密度となるよう選択される。なお多孔性繊維層は柔軟であるものが好ましい。また多孔性繊維層や多孔性樹脂層に他の繊維層やフィルムを積層し、複合体としてもよい。
吸湿性を有する層として用いる場合は、室内の高湿度や結露しやすい面に機能性表面層を付設し、吸湿した後で、該機能性表面層だけを取り外し、天日乾燥などにより乾燥してから、再度成形フック面ファスナーに係合して使用することができる。吸音性を有する層を表面層として用いる場合は、室内での楽器演奏時などに壁面等に付設し使用することで、演奏者は音色を正しく把握することが可能である。

また従来、各種器具、家具などの移送、保管時に、該物品を保護するために布帛、毛布、空気層を含んだエアーキャップと呼ばれるシートなどが使用されている。これらは、被覆体から外れないように、接着テープを使用したり紐やバンドでしばることが必要であり、作業が煩雑である。
多孔性繊維層または多孔性樹脂層を用いた本発明の機能性被覆装置は、粘着剤層により貼着される成形フック面ファスナーに多孔性層が面ファスナーにより係合されるので、固定のための紐やベルトを必要としない。被覆体の形状や大きさによっては、複数の成形フック面ファスナーと複数の表面層が必要であるが、被覆体を被覆する作業は面ファスナーの係合だけなので、従来の方法に比してはるかに簡単である。そして被覆を解除する時は、粘着剤層をはがして成形フック面ファスナーを除去すればよく、被覆体表面に傷をつける恐れもない。

以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものでない。

＜参考例１＞
裏面にアクリル系再剥離型粘着剤層が設けられた全厚さ０．６ｍｍ、フック密度１２０個／ｃｍ^２のオレフィン系素材からなる幅５０ｍｍの成形フックファスナーテープと、ループ編物が裏面に一体化され、表面に風景写真の印刷が施された幅１３００ｍｍのポリエステル系意匠フィルムを用いて、１８００ｍｍ×２７００ｍｍのスクリーン中央部（１３００ｍｍ×２２００ｍｍ）に意匠フィルムを被覆し、記念写真を撮影した。その後、異なった風景写真印刷が施された同様のポリエステル系意匠フィルムに張り替えて再度記念写真を撮影した。意匠フィルムの被覆方法は、先ず、フックファスナーテープ裏面の離形紙を剥がし、該テープをスクリーン中央部周囲に貼り付け、その後、意匠フィルムの裏面（ループ面ファスナー）をフックテープに重ね合わせ徐々に展着し、貼り付けた。取り換えは被覆フィルムのみを取り外し、その後、異なった風景写真印刷が施されたフィルムを同様の方法で被覆した。２度の撮影を終え、元の状態に復帰するまで要した時間は約１０分であった。

＜比較例１＞
参考例１と同じ場で、５０ｍｍ幅の片面再剥離型粘着テープを用いて、表面に風景写真の印刷が施された裏面にループ材が付与されていない幅１３００ｍｍのポリエステル系フィルムを用いて同様の記念写真撮影を実施した。参考例１と同じく、フィルムを換えて実施し、２度の撮影を終え、元の状態に復帰するまでに要した時間はフィルムにしわが入らない様に、慎重に被覆作業を実施しなければならなかったため、倍の約２０分を要した。また、取り外したフィルムの再使用は困難な状態であった。

＜比較例２＞
参考例１と同じ場で、５０ｍｍ幅の両面再剥離型粘着テープを用いて、表面に風景写真印刷が施された裏面にループ材が付与されていない幅１３００ｍｍのポリエステル系フィルムを用いて同様の記念写真撮影を実施した。参考例１と同じく、フィルムを換えて実施し、２度の撮影を終え、元の状態に復帰するまでに要した時間は約１５分であった。参考例１より多くの時間を費やしたのは、粘着テープの粘着力が徐々に低下したため、フィルムのしわを展ばし再固定を繰り返す作業が困難であったためと思われる。

＜参考例２＞
参考例１で用いた幅５０ｍｍの成形フックファスナーテープと厚さ６ｍｍのループ毛羽を裏面に有するポリエステルニードルパンチフェルトを用いて箪笥を被覆し、引越し作業を実施した。箪笥の被覆方法は、箪笥背面にフックファスナーテープを縦２列に貼り付け、次に、ニードルパンチフェルト裏面ループ面をフックファスナーテープにしっかり重ね合わせて押し付け十分に係合させた後、箪笥側面および前面を該フェルトで覆い、背面のもう一方のフックファスナーテープで端部を係合固定する方式にて実施した。本方式では、箪笥全面を確実に短時間で被覆でき、引越し作業中の箪笥の損傷もなく実施できた。
＜実施例１＞

参考例１と同一の素材からなる幅３０ｍｍの成形フックファスナーテープと厚さ１ｍｍ、幅２００ｍｍのループ不織布がラミネートされたポリエチレンフィルムを用いて壁面塗装を実施した。壁面の柄付き部（２００ｍｍ幅）を該フィルムで覆い、吹き付け塗装した。フィルムの被覆方法は、先ず柄付き部の周囲を３０ｍｍ幅フックファスナーテープで貼り付け、次に、ループ不織布がラミネートされたポリエチレンフィルムをフックテープがはみ出さないように重ね合わせ係合固定した。本方式では、ループ不織布が押し圧により、フックと強固に固定し、隙間が殆ど発生せず、また不織布が塗装液の染み込みを防ぐため、保護面の汚れの発生も無く、良好なマスキング性能を発揮していた。

Claims (3)

1. 裏面に粘着剤層を設けた成形フック面ファスナーと、裏面にループ面ファスナーを有するマスキング材からなり、該フック面ファスナーのフック状係合素子の高さが０.２０〜１．０ｍｍであって、該フック面ファスナーとループ面ファスナーを係合するように構成した、塗装の際に用いるマスキング装置。
2. 該マスキング材が、樹脂フィルムとその裏面に付設されたループ面ファスナーからなる請求項１記載のマスキング装置。
3. 粘着剤層が再剥離型粘着剤により形成されてなる請求項１または２に記載のマスキング装置。