JP4378042B2 - 検体試料中の対象成分の検出方法、およびそれに用いる検出用基板 - Google Patents
検体試料中の対象成分の検出方法、およびそれに用いる検出用基板 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既知の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを検出用プローブとして、この検出用プローブ用オリゴヌクレオチドとの間で、分子間結合により結合した複合体形成の有無を検出する方式により、検体試料中に、当該検出用プローブとの結合能を有する成分が含有されるか否かを検出する方法と、この検出方法に専ら利用される、検出用プローブ用オリゴヌクレオチドを表面に固定した検出用基板に関する。より具体的には、複数の検体サンプルについて、例えば、それに特定の塩基配列を有する核酸分子が含有されるか否かについて、同時に検査を行う目的に利用される、プローブ・ハイブリダイゼーション法を用いた核酸分子の検出方法、ならびに前記の核酸分子の検出方法に専ら使用される、複数種のDNAプローブを基板上にマトリクス状に固着したDNAプローブ・マトリクスに関する。
【0002】
【従来の技術】
核酸分子の塩基配列に含まれる部分配列の特定、生体に由来するサンプル中に含有される標的核酸の検出、あるいは、種々の細菌について、その遺伝子DNAの特徴に基づく属・種の同定においては、既知の塩基配列を有するプローブDNA複数種を用いて、各プローブDNAと特異的な結合する、すなわち、各プローブDNAとハイブリダイゼーションする核酸分子か否かを検出する手段が利用できる。このプローブDNA複数種に対するハイブリダイゼーション法による検定を、迅速に、また正確に行う上で有効な手法として、プローブDNA複数種を固相上に規則的に並べたプローブ・アレイを利用し、各プローブDNAとの特異的な結合する核酸分子か否かを同時に検出する手段が提案されている。
【0003】
このようなプローブ・アレイの一般的な製造方法としては、例えば、ヨーロッパ特許第373203号公報(EP 0373203 B1)にも記載されるているように、固相上で所定の核酸プローブをアレイ状に合成していく方法や、予め合成した核酸プローブ複数を、固相上にアレイ状に供給する方法などが知られている。
【0004】
前者の方法を開示している先行技術文献としては、例えば、米国特許第5405783号公報(USP 5,405,783)が挙げられる。また、後者の方法の一例として、例えば、米国特許第5601980号公報(USP 5,601,980)や「サイエンス(Science)」、第270巻、467頁、(1995)には、マイクロピペッテイングを用いて、固相上にcDNAをアレイ状に並べる方法が開示されている。
【0005】
これらの方法で調製されるプローブ・アレイは、核酸プローブを固相上に1インチ角当たり10000以上の高い密度で並べてあるアレイとすることができる。この高密度プローブ・アレイを検体溶液中に浸すことにより、一度に、多数種プローブとのハイブリダイゼーション反応を同時に行い、その際、ハイブリダイゼーションを起こした核酸プローブの塩基配列に基づき、遺伝子の塩基配列の解析がなされる。この方法は、プローブを小さな面積の基板に高密度に配置することで、少量のサンプルによる同時多項目検査を可能にし、被験者からのサンプル採取に伴う負担を少なくできるという利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記用途の高密度プローブ・アレイをDNA合成法により基板上に作製する方法として、フォトリソグラフィー技術を応用した手法が前述の米国特許第5405783号公報に開示されているが、この手法を実施するには高度な設備が必要となり、誰もが簡単に利用できるものではない。
【0007】
また、検体数は多いものの、必要とされる検査項目はそれほど多くない場合には、検査項目数に相当する、プローブ・アレイ上へのDNAプローブの集積度はそれほど高い必要はない。寧ろ、より簡便な方法を用いて、所望のDNAプローブ少数を固定したプローブ・アレイを多数作製することが必要な場合もある。
【0008】
実際、臨床検査の領域においても、10000を越える項目の検査が必要となるケースは必ずしも多くない。例えば、集団検診の場合などでは、ある限られた数の項目に絞って、多数の検体を調べることがより重要なこともある。このように多数の検体を検査する際には、各検体に関して、標準試料との比較により病気の有無等を迅速に検査できるシステムが必要となる。
【0009】
加えて、プローブに用いる合成可能なオリゴヌクレオチドに比べ、一般に、検体のDNA量は少ない。ハイブリダイゼーション反応の際、プローブ・アレイ基板を検体溶液に浸す通常の形態を用いるには、基板が充分浸るだけの検体DNA量が必要となる。従って、検体DNA量に応じて、DNAプローブ・アレイ基板の大きさに制限が生じ、アレイの高密度化が必要となる。あるいは、プローブ・アレイ基板の大きさに合わせて、検体溶液の容量を確保するため希釈を行う結果、検体溶液中のDNA濃度が低くなり、それを補うため、反応時間を長くするといった手法も採られる。
【0010】
また、検体は組織からの抽出物であるため、元来、そのサンプル量に限りがある上に、さらに、ハイブリダイゼーション反応に用いる検体溶液とする前処理、具体的には、核酸の抽出、その一本鎖化、さらには、標識化の処理などを経るため、最終的に得られるサンプル量は僅かな量である。それを補う目的で、PCR反応による増幅処理など、DNA量の増幅処理を施した後、検査や研究に用いられる。しかし、PCR反応を行う際には、別途調製したプライマーを必要とするため、プライマー配列が判明している、特定の遺伝子についてしか適用できないという欠点が残っている。そのほか、PCR反応の過程で増幅されやすい配列と増幅されにくい配列とがあり、反応の効率(増幅率)は一律ではない。例えば、抽出した総mRNA量に対する、特定のmRNAの含有率を調べ、それに基づき、病気等の判定を実施する際には、常に基準となる標準サンプルを準備し、前記増幅率に対する補正を行う必要がある。
【0011】
基板の大きさを小さくすればするほど、ハイブリダイゼーション反応に要する検体溶液の量は減少するものの、取り扱い操作上、基板の大きさの小型化にも自ずから限界がある。具体的には、アレー密度の高密度化を行ったり、アレー上に載せるプローブ数を減らして、基板の大きさをより小さくすることは原理的に可能であるものの、極端に小さな基板を用いると、ハイブリダイゼーション反応ならびにその後の検出などの処理過程において、専用のハンドリング装置が必要となり、実用的とはいえない。
【0012】
また、ある生物の発生過程を反映して転写されるmRNAに対するcDNA、ある細胞の培養過程中に各フェーズを反映して転写されるmRNAに対するcDNA、薬剤との相互作用により転写されるmRNAに対するcDNAなどを調べる際には、多種類の検体試料を並べたDNAアレイが利用される。この検体試料をアレー化した例として、例えば、上記「サイエンス(Science)」、第270巻、467頁、(1995)がある。この場合、特定の働きを持つ遺伝子に由来する、標識を施した既知配列のDNAをプローブ溶液として、基板上にアレー化した検体試料を浸すことで、ハイブリダイゼーション反応を行う。
【0013】
この手法を用いて、複数の項目について同時に調べようとすると、項目の数だけ、異なる種類の蛍光試薬(蛍光色素)でラベルを施したDNAプローブを用意する必要がある。検出の際、それら異なる種類の蛍光試薬(蛍光色素)は、互いに区別して検出されなければならないため、当然ながら、その波長等が異なることが必要である。勿論のことながら、検出器にも、それぞれの蛍光試薬(蛍光色素)に対応する検出用のフイルターが必要となる。
【0014】
このような多項目・多検体同時検査のニーズは、遺伝子(DNA)間のハイブリダイゼーション反応に限らない。
【0015】
例えば、遺伝子と蛋白質との相互作用(DNA結合性蛋白質)、遺伝子に結合する化学物質のスクリーニングなど、遺伝子と他の物質との相互作用に関しても、少量のサンプルで多項目にわたる検討を行うことが重要である。前者のDNA結合性蛋白質の検出は、転写促進因子などの蛋白質による遺伝子発現の制御機構解明などに利用されるが、現状は、DNA断片と蛋白質とを結合させ、その後、複合体をゲル電気泳動で解析する方法が採られている。この手法では、ゲル電気泳動を用いることに因って、一度に解析可能な検体数は限られ、また、かなりの解析時間を要する。
【0016】
創薬の分野でも、遺伝子と投与された薬剤との相互作用を調べることは、研究を進める上で重要な項目となる場合もあるが、研究対象である薬剤に用いられる化学合成品を得ること自体なかなか手間のかかることもあり、スクリーニングに使用される薬剤量の低減は、その研究効率を著しく向上させると考えられる。
【0017】
以上に紹介したように、DNA相互のハイブリダイゼーション、DNAと蛋白質との複合体形成、遺伝子DNAに対する薬剤化合物の相互作用など、両者間の相互作用を利用して複合体を形成させる、あるいは、複合体を形成させるような相互作用の有無を検証する際、その一方の試料量が限られており、その限られた試料量を用いて、目的とする多数種にわたる、複合体形成の有無に関する一連の評価を実施することが必要となる場合がある。すなわち、個々の評価に要する試料の消費量をより僅かな量とし、限られた試料量の範囲で、多数種にわたる検査をより効率的に実施することが可能な検査方法の開発が望まれている。
【0018】
本発明は前記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、塩基配列が既知であり、また、相対的に入手が容易なオリゴヌクレオチドを検出用プローブとして用い、限られた試料量の検体について、検出用プローブの前記オリゴヌクレオチドに対する結合性の有無、あるいは、その結合能の強弱を、両者間での複合体形成の有無、あるいは、その効率を評価する際、検出用プローブである各オリゴヌクレオチド一種当たりの評価に要する検体の消費量をより僅かな量とすることが可能な、新規な検出方法を提供することにある。加えて、本発明は、かかる検出方法に専ら利用される、検出用プローブの前記オリゴヌクレオチドを表面の所定領域に固定した検出用基板、ならびにその調製方法の提供をもその目的とする。
【0019】
より具体的には、前記検出用基板を、検出用プローブの前記オリゴヌクレオチド複数種が、マトリクス状に配置されてなるDNAプローブ・マトリクスを利用し、マトリクスの各区画に固着されている既知の塩基配列を有するDNAプローブに対して、ハイブリダイゼーションするか否かを検出して、多数の検体サンプルについて、その中に特定の塩基配列を有する核酸分子が含有されるか否かの検定を同時に行う場合、各DNAプローブ当たりに要する検体の消費量を低減した際にも、十分に高い検出感度を達成することが可能な核酸分子の検出方法の形態として好適に利用可能な、新規な検出方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、鋭意研究・検討を行い、検出用プローブとして、その塩基配列が既知のオリゴヌクレオチドを用いて、このオリゴヌクレオチドと結合能を有する対象成分、例えば、核酸分子を検出する際、従来、表面に検出用プローブとなるオリゴヌクレオチドを固定した検出用基板を、対象成分、例えば、核酸分子を含む溶液に浸し、ハイブリダイゼーション反応を行い、プローブのオリゴヌクレオチドと対象成分、例えば、核酸分子との複合体を形成し、この複合体を然るべき標識を利用して検出する手法が利用されるが、検出用基板を、対象成分、例えば、核酸分子を含む溶液に浸す代わりに、所定の区画にプローブのオリゴヌクレオチドを固定しておき、この区画上に、対象成分、例えば、核酸分子を含む溶液を一定の液量をスポット状に載せ、かかる微小液滴内でハイブリダイゼーション反応を行い、その結果得られる複合体を顕微検出系などを利用して、スポット位置を選択しつつ検出する手法を採用すると、その検出精度、また、感度自体も、十分に高くなることを見出した。また、この手法を用いると、プローブのオリゴヌクレオチドに作用させる試料溶液は、各プローブのオリゴヌクレオチド当たり、前記スポットの微小液滴に用いる液量を要するのみであり、プローブのオリゴヌクレオチドが複数種あったとしても、その合計液量は、検出用基板全体を浸すに要する液量よりは、遥かに僅かとできることを見出した。加えて、各検体試料毎に、それぞれ一定の液量スポット状に載せるため、隣接するスポット間で、互いの液滴が混合を生じないように、スポット径とスポット間隔を選択することにより、一度に複数の検体試料に関して、本質的に同じ条件の下で、各プローブのオリゴヌクレオチドに対して結合能を示す対象成分、例えば、核酸分子の有無を、同じ感度、精度で検出・評価できることを確認した。従って、検出用基板上に、各プローブのオリゴヌクレオチドを所定の区画内に均一に固定し、その区画相互間で、プローブのオリゴヌクレオチド間の混合・汚染を生じないようにし、さらに、この区画複数を整然とマトリクス状に配置し、また、各区画内にスポットする検体試料複数に関して、そのスポットをも整然と並んだアレイ・マトリクス状に行うと、結果として、検出用プローブ多種に対し、検体試料多数に関して、一度にその検出操作を実施することも可能となることを本発明者らは見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明の検体試料中の対象成分の検出方法は、
塩基配列が既知のオリゴヌクレオチドを検出用プローブとして用い、液状の検体試料中に、前記オリゴヌクレオチドに対する結合能を有する対象成分が含有されるか否か、あるいは、その結合能の強弱を評価するため、前記オリゴヌクレオチドと対象成分との間で形成される複合体を検出する方法であって、
検出用プローブとして用いる、前記塩基配列が既知のオリゴヌクレオチドが、少なくとも一種以上であり、
また、評価の対象となる検体試料が少なくとも二種以上であり、
前記一種以上の検出用プローブ用オリゴヌクレオチドが、所定の固相基板上、それぞれ所定の区画に予め結合してなる検出用基板を用い、
前記検出用プローブ用オリゴヌクレオチドが予め結合されている各区画内に、前記二種以上の検体試料それぞれについて、スポット位置が規定のアレイ形状をなすように、各スポット毎に所定の試料液量を複数個スポットする工程と、
各検体試料に対する前記複数個のスポットについて、それぞれ前記オリゴヌクレオチドと対象成分との間で形成される複合体の有無を検出する工程と、
前記検出結果に基づき、前記オリゴヌクレオチドに対する結合能を有する対象成分が含有されるか否か、あるいは、その結合能の強弱を判定する工程とを含むことを特徴とする検体試料中の対象成分の検出方法である。その際、検出用基板上の所定区画に結合している前記オリゴヌクレオチドの有する、既知の塩基配列の長さが2〜100塩基長であるとき、本発明の方法は、より好適な検出方法となる。
【0022】
なお、本発明の検出方法は、
評価の対象となる前記液状の検体試料が、それぞれ塩基配列未知の核酸を少なくとも一種含む溶液であり、
各検体試料について、前記オリゴヌクレオチドそれぞれとの間で複合体形成の有無を検出することにより、
前記検体試料に含有される塩基配列未知の核酸中に、それぞれのオリゴヌクレオチドに対する結合能を有する対象成分として、前記オリゴヌクレオチドそれぞれの既知塩基配列に対し、相補性を有する塩基配列を有する核酸分子が含まれるか否かを、その評価の目的とする検出方法として実施すると好ましいものとなる。具体的には、評価の対象となる前記液状の検体試料がそれぞれ含む前記核酸中に、生体組織から抽出したmRNAのセットが含有されている際に、好適な検出方法である。同様に、評価の対象となる前記液状の検体試料がそれぞれ含む前記核酸中に、生体組織から抽出したmRNAのセットを基に調製されたcDNAライブラリーが含有されている際にも、好適な検出方法である。その際、評価の対象となる前記液状の検体試料がそれぞれ含む前記核酸が、100〜5000塩基長の核酸であることが望ましい。
【0023】
加えて、検出の対象成分として、核酸分子以外にも、例えば、評価の対象となる前記液状の検体試料が、それぞれ互いに異なる蛋白質少なくとも一種を含む溶液である際にも、本発明の検出方法は好適に利用できる。また、評価の対象となる前記液状の検体試料が、それぞれ互いに異なる化学物質少なくとも一種を含む溶液である際にも、本発明の検出方法は好適に利用できる。本発明の検出方法は、特には、評価の対象となる前記液状の検体試料が、それぞれ異なる生物種、組織、細胞からの抽出物である際に、その実用上の利点・効果が一層発揮される。
【0024】
本発明の検出方法において、複数の対象成分の検出を実施する際には、
検出用プローブに用いる前記オリゴヌクレオチドとして、それぞれ互いに異なる既知の塩基配列を有する複数種を用い、それぞれが結合される区画が基板上に複数個マトリクス状に配置されてなる検出用基板を用いることを特徴とする態様とすることができる。
【0025】
本発明の検出方法を、この態様とする際には、
互いに異なる既知の塩基配列を有する前記オリゴヌクレオチド複数種が結合される区画が構成するマトリクスは、
そのマトリクスを構成する各区画は等しい面積を有し、
マトリクスの区画の配置密度を400/cm2以下とすることが望ましい。加えて、
互いに異なる既知の塩基配列を有する前記オリゴヌクレオチド複数種が結合される各区画に対して、
前記二種以上の検体試料について、それぞれのスポット位置が同じ配置となるようにアレイ形状にスポットすることが望ましい。
【0026】
本発明の検出方法において、
検出用基板に用いる前記固相基板がガラスであることが好ましい。
【0027】
なお、検出用基板上への前記オリゴヌクレオチドの固定が、共有結合によりなされていることがより好ましい。例えば、検出用基板上への前記オリゴヌクレオチドの固定が、
前記固相基板に用いるガラス基板表面に導入したマレイミド基と、
前記オリゴヌクレオチドがその分子内に有するチオール基との化学反応により形成される共有結合によりなされている検出用基板を用いると好適である。なお、その際、ガラス基板表面に導入される前記マレイミド基は、
先ず、ガラス表面にアミノ基を導入し、
そのアミノ基にスクシイミジル−4−(マレイミドフェニル)ブチレートを反応させて導入することが好ましい。あるいは、
検出用基板上への前記オリゴヌクレオチドの固定が、
前記固相基板に用いるガラス基板表面に導入したエポキシ基と、
前記オリゴヌクレオチドがその分子内に有するアミノ基との化学反応により形成される共有結合によりなされている検出用基板を用いると好適である。
【0028】
通常、本発明の検出方法においては、
基板表面は予めマトリクス状に区画されていて、
この予め形成されているマトリクス状の区画に、異なる複数種の塩基配列の既知なオリゴヌクレオチドがそれぞれ予め結合されている検出用基板を用いることが好ましい。例えば、基板表面に予め形成されている前記マトリクス状の区画は、各区画相互は、疎水性のwall(壁面)部で区分され、各区画の底面部分は親水性である固相基板を利用することができる。なお、その際、各区画相互を区分する前記wall(壁面)部の厚さが、1〜20μmであることが望ましい。
【0029】
本発明の検出方法では、その目的からして、
前記検出用プローブ用オリゴヌクレオチドが予め結合されている各区画内に、
前記二種以上の検体試料について、それぞれ形成する各スポットの径が200μm以下であることが好ましい。加えて、
前記検出用プローブ用オリゴヌクレオチドが予め結合されている各区画内に、
前記二種以上の検体試料について、形成するスポットの面密度が400/cm2以上であることがより好ましい。
【0030】
本発明の検出方法では、例えば、前記二種以上の検体試料について、それぞれ形成する各スポットに対する試料液の供給は、インクジェット法による所定液量の供給により行うことができ、また、この手段を用いることが好ましい。
【0031】
その場合には、スポットに際して、インクジェット法によりそれぞれ供給される前記二種以上の検体試料は、それぞれ100〜5000塩基長の核酸を含む溶液であるならば、好適にこの手段を用いることができる。加えて、インクジェット法によりそれぞれ供給される前記二種以上の検体試料は、それぞれ含まれる核酸の総濃度が0.05μM〜500μMであることがより好ましい。具体的には、スポットに用いる前記インクジェット法にバブルジェット法を採用すると、好ましいものとなる。
【0032】
本発明の検出方法では、その他に、検体試料のスポット形成は、
各検体試料溶液を保持する試料溶液貯蔵部位の液面に、試料溶液採取用のピンを接触させて、前記ピンの先端に試料溶液を付着させ、所定の液量を分取し、
次いで、前記ピン先端を基板表面に物理的に接触させて、前記分取された所定の液量を基板表面に転写することで供給することができる。
【0033】
さらには、検体試料のスポット形成は、
各検体試料溶液を供給する検体供給部から毛細管を利用して吸入し、
試料溶液を吸入した前記毛細管の先端を基板表面に物理的に接触させて、所定の液量を基板表面に転写することで供給することもできる。
【0034】
一方、本発明は、上記の本発明の検出方法を実施する際に、専ら利用される検出用基板をも提供する。すなわち、本発明の検出用基板は、
固相基板上に、互いに異なる既知の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド複数種を固定した検出用基板であって、
前記オリゴヌクレオチド複数種は、それぞれ、各一区画にオリゴヌクレオチド一種類が存在するように、所定の区画内に結合させて固定され、
オリゴヌクレオチドが固定されている前記区画複数が、前記固相基板表面において、マトリクス状に配置されてなることを特徴とする検出用基板である。その際、所定の区画内に結合させる前記オリゴヌクレオチド複数種は、それぞれが有する既知の塩基配列は2〜60塩基長であることが好ましい。
【0035】
また、固相基板表面にマトリクス状に配置される前記複数の区画は、
そのマトリクスの区画の配置密度を400/cm2以下とされていることが望ましい。
【0036】
本発明の検出用基板では、固相基板がガラス基板であることが好ましい。一方、基板表面上への前記オリゴヌクレオチドの固定が、共有結合によりなされているものとできる。
【0037】
例えば、検出用基板上への前記オリゴヌクレオチドの固定が、
前記固相基板に用いるガラス基板表面に導入したマレイミド基と、
前記オリゴヌクレオチドがその分子内に有するチオール基との化学反応により形成される共有結合によりなされているものとできる。この場合、ガラス基板表面に導入される前記マレイミド基は、例えば、
先ず、ガラス表面にアミノ基を導入し、
そのアミノ基にスクシイミジル−4−(マレイミドフェニル)ブチレートを反応させて導入することができる。
【0038】
あるいは、検出用基板上への前記オリゴヌクレオチドの固定が、
前記固相基板に用いるガラス基板表面に導入したエポキシ基と、
前記オリゴヌクレオチドがその分子内に有するアミノ基との化学反応により形成される共有結合によりなされているものとできる。
【0039】
加えて、本発明の検出用基板においては、
マトリクス状の各一区画にオリゴヌクレオチド一種類が存在するようになされている、所定の区画内へのオリゴヌクレオチド複数種それぞれの固定は、
固相基板表面上に、前記オリゴヌクレオチド複数種をそれぞれ、インクジェット法によるプリンティングにより所定の区画内へ供給してなされいる検出用基板とすることが好ましい。
【0040】
特には、予めマトリクス状に区分された複数の区画を形成した固相基板表面において、
前記オリゴヌクレオチド複数種がそれぞれ、この予め形成されているマトリクス状の区画に結合されている検出用基板とすることが望ましい。その時、基板表面に予め形成されている前記マトリクス状の区画は、
各区画相互は、疎水性のwall(壁面)部で区分され、各区画の底面部分は親水性であることが好ましい。さらに、各区画相互を区分する前記wall(壁面)部の厚さが、1〜20μmであることがより好ましい。
【0041】
また、予め形成されている前記マトリクス状の区画へのオリゴヌクレオチド複数種それぞれの固定は、例えば、
前記オリゴヌクレオチド複数種をそれぞれ、インクジェット法により前記区画の底面部分上にのみ供給してなされているものとすることができる。
【0042】
本発明の検出用基板の調製方法は、上記の本発明の検出用基板の作製に好適な方法であり、具体的には、
固相基板上に、互いに異なる既知の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド複数種を固定した検出用基板を調製する方法であって、
前記固相基板に、その表面に予めマトリクス状に区分された複数の区画を形成された基板を用い、
前記オリゴヌクレオチド複数種をそれぞれ、各一区画にオリゴヌクレオチド一種類が存在するように、インクジェット法によるプリンティング手法により所定の区画内に所定量を供給し、
その所定の区画内に、供給されたオリゴヌクレオチドを固定することを特徴とする検出用基板の調製方法である。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明の検出方法は、液状の検体試料中に、検出用プローブとして用いる塩基配列が既知のオリゴヌクレオチドに対する結合能を有し、それと複合体を形成する成分が存在するか否か、また、そのような成分が存在する際には、その結合能の強弱に関して、評価・検査する目的で利用される、検出用プローブ用のオリゴヌクレオチドと対象成分との間で形成される複合体を検出する方法である。この複合体を検出する際、検出用プローブ用のオリゴヌクレオチドを固相基板表面上に予め固定しておくことにより、この固定されているオリゴヌクレオチドと、検体試料中に含まれる対象成分とが結合して、形成する複合体も固相基板上に固定した状態で分離し、然るべき検出手段を用いて複合体を検出する手法を基礎とし、その際に必要となる検体試料量を極僅かなものとし、しかも、十分に検出精度、感度自体を高く保つものである。
【0044】
すなわち、本発明がその基礎とする、この手法では、固相基板表面上に固定される検出用プローブ用のオリゴヌクレオチドの面密度は予め所定の値とできるため、形成される複合体量は、対象成分の結合能に比例し、また、その固相基板表面に接触させ、オリゴヌクレオチドに作用させている検体試料中に含有される対象成分の濃度にも比例する。この特徴を利用して、検出用プローブ用のオリゴヌクレオチドが現に固定されている表面とのみ、検体試料を接触させるようにし、また、その接触面積を限定されたものとすることにより、使用される検体試料の液量も限定されたものとしている。具体的には、所定の微少液量を液滴状にして、スポットする手段を採用することにより、接触面積とその上に載る液量を再現性よく制御している。この限られた接触面積当たり、形成に伴い、自動的に固相基板表面上に固定されたものとなる複合体量を検出することで、その表面に検出用プローブ用のオリゴヌクレオチドを固定した固相基板全体を、液状の検体試料の中に浸す場合と、本質的に同じ検出精度、感度を達成している。
【0045】
また、複合体の検出自体は、複合体自体に標識を施し、複合体に従って表面上に固着されるこの標識を検出することにより、付随する複合体の存在を検出する方式を利用するが、この標識として、蛍光色素標識などを用いることで、個々スポット間に一定の間隔を置く構成とすると、各スポット毎に互いに独立して検出を行うことが可能となる。従って、隣接するスポット相互の間隔を一定間隔以上とすると、異なる検体試料に対するスポットがその周囲にあったとしても、それらの影響を受けることなく、目的の検体試料に対するスポットのみを選別しつつ、検出作業を行うことが可能である。この隣接するスポット相互の間隔を一定間隔以上とする要件を確実に達成するため、本発明の検出方法では、スポット相互の間隔を所定の間隔とする結果、スポット位置が規定のアレイ形状をなすようにし、また、スポット面積(接触面積)、一般に、スポット(接触面)形状は円形であるので、スポット径を一定で、再現性あるものとするため、各スポット毎に所定の試料液量をスポットするようにしている。勿論のことであるが、この隣接するスポットの影響を排除するためには、スポット径に従って適宜選択される検出系の被測定面積(測定範囲の径)を考慮し、隣接するスポットに由来する光信号(蛍光など)などが、検出系に混入することのないスポット相互の間隔を選択する。また、当然のことであるが、本発明の検出方法は、検体試料の種類が複数ある際、それらを同時に検出に供する場合にその利点が真に発揮されるものである。
【0046】
一方、このようなアレイ状の複数スポットがなされる表面には、検出用プローブ用オリゴヌクレオチド一種類が均一な面密度で固定されている必要がある。また、その検出用プローブ用オリゴヌクレオチドが固定される区画は、前記のアレイ間隔と、一連のアレイに含まれるべき総スポット数とに応じて、その面積と形状とを適宜選択する。用いる検出用基板上、互いに異なる領域に、異なるオリゴヌクレオチドが固定されている区画を設け、一つの検出用基板上に、複数種のオリゴヌクレオチドがそれぞれ固定されている区画複数を配置することもできる。すなわち、本発明の検出方法は、複数種のオリゴヌクレオチドを検出用プローブに用いて、それぞれに対応する対象成分複数種に関して、複数の検体試料に対して、同時に、一連の評価を実施する際に、利用するとより好適な方法となる。
【0047】
一般に、この種の評価においては、検出用プローブ用のオリゴヌクレオチドの種類は、予め決定されており、一方、評価すべき検体試料数は、概数しか判明していない場合が多い。このような場合、検出用プローブ用のオリゴヌクレオチドを予め固定してある検出用基板として、各オリゴヌクレオチドが固定される区画を、基板表面上にマトリクス状に配置した、複数種の検出用プローブを整然と載せた検出用基板を用いることが好ましい。この固定される区画がマトリクス状に配置された検出用基板では、個々の区画内にアレイ形状にスポットする総スポット数単位は決まったものとなるが、実際に評価すべき検体試料数に応じて、このスポット数単位を複数枚を用いて、評価を実施することができ、実用上より利便性の高いものとなる。なお、このマトリクス状に配置される各区画は、その境界に疎水性化合物で形成されるパターンを設けて、相互の領域を区分する形態とするとよい。
【0048】
本発明の検出方法において、対象成分として、核酸分子を選択して、検出用プローブ用のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション反応によって、二本鎖形成をしてハイブリッド体となるか否かの評価に適用することができる。この場合、検出用プローブ用のオリゴヌクレオチドが有する既知の塩基配列と相補性を有する塩基配列を含む核酸分子が、検体試料中に含有されているか否かを、多数の検体試料についても、一度に評価する有効な方法となる。あるいは、検出用プローブ用のオリゴヌクレオチドを複数種とし、各検体試料中にはそれぞれ一種の核酸分子を含むようにすると、かかるその塩基配列が判明していない核酸分子について、各オリゴヌクレオチドが有する既知の塩基配列と相補性を有する塩基配列を含むか否かの評価が行え、例えば、一連の相同性を有する遺伝子群を探索する手段に有効となる。
【0049】
本発明の検出用基板は、プローブに用いるオリゴヌクレオチドを予めマトリクス状に配置された区画にそれぞれ結合させたDNAプローブ基板、特に、その基板自体を、予め疎水性化合物により形成される枠構造マトリクスパターンのウエル(壁)で区切られた区画の底部を親水性表面とすることで、オリゴヌクレオチドの結合をより容易にしている。また、この疎水性ウオール(壁)を設けることによって、隣接する区画間で、DNAプローブが互いに混合を引き起こすことをより確実に抑制できるものとなる。
【0050】
また、これらのDNAプローブ基板を用いて、オリゴヌクレオチドのマトリクス上に検体試料をアレイ状にスポットしてハイブリダイゼーション反応を行うことにより、ある特定のオリゴヌクレオチドプローブに対する各検体試料中に相補性を有する核酸分子が含まれるか否かを迅速に調べる手段となる。
【0051】
この方法では、ハイブリダイゼーション反応に用いる検体試料の量がスポットの数にのみ依存して決まるために、検出用基板の大きさについての制限はなく、大面積の基板を用いることにより、各プローブを固定する区画を広くでき、高密度化の必要もなくなる。従って、各プローブを固定する区画を広くできるため、基板上にプローブ・オリゴヌクレオチドを結合する手段には、プローブを含む液体を基板上の規定された領域に、塗布、インクジェット法による「べた塗りパターン」としてプリント、あるいは基板上での化学合成などの広範な方法を利用することが可能となる。
【0052】
また、検体試料よりプローブ・オリゴヌクレオチドの方が安価で入手が容易であることを考えると、オリゴヌクレオチドの結合領域の面積は多少広くても問題はなく、その際には、スポットする各種検体試料に関しても、必ずしも高密度でスポットする必要はなくなる。なお、検体試料を少量ずつをスポットする際、検体試料に含有させる対象成分の濃度を高くすることにより、ハイブリダイゼーション反応を促進することもでき、短時間で高感度な検出をも可能となる。加えて、本発明の検出方法を適用すると、これまで十分なサンプル量が得られず、検討できなかった領域、例えば、組織から得られたmRNAを直接調べるといった、新しい検査領域に道を開くものである。
【0053】
さらに、得られたハイブリダイゼーション反応に関する反応性の情報を、ある特定の検体試料に含有される核酸分子に対する、各種オリゴヌクレオチド・プローブとの相補性の有無の観点で、解析・評価を行うことにより、従来のDNAアレイ(一検体に対し多種プローブとのハイブリダイゼーション反応)と同様な機能も兼ね備えた検出も可能となる。
【0054】
さらに、本発明の検出方法は、対象成分として、化学物質、特に薬剤とオリゴヌクレオチドとの相互作用、蛋白質とオリゴヌクレオチドの結合性などを評価する手段となり、従って、多数の検体に関し、それに含まれる対象成分について、多項目にわたる評価を、同時に検査できる手段としても利用可能となる。さらに、同じ基板上で、化学物質、蛋白質、及び核酸という、性質が異なる対象成分に対しても、同時に同じ反応条件で検討することも可能な手段ともなる。
【0055】
以下に、本発明の検出方法とそれに専ら用いられる検出用基板について、より詳しく説明する。
【0056】
図1に、本発明の検出方法を、cDNAを対象成分として、検出用プローブに用いる既知の塩基配列オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション反応により、ハイブリッド体を形成させる態様に適用した一例を示す。図1に示す検出用基板では、矩形形状の固相基板表面に、予めマトリクス状に整然と区分された複数の矩形区画が設けてある。その矩形区画はそれぞれに、周囲を囲む壁(wall)となるマトリクス区分によって、空間的に隔絶されている。その矩形区画の底部面上に、均一にハイブリダイゼーション・プローブに用いるDNAプローブがそれぞれ結合されている。
【0057】
また、このDNAプローブが固定されている区画内に、対象成分としてcDNAを含む検体試料複数、例えば、それぞれ採取されたm−RNAに基づき、調製されたcDNA溶液複数種について、正方マトリクス様の二次元アレイ状にスポットをした状態を模式的に示す拡大図を添えてある。本発明の検出方法に利用される検出用基板、検出用プローブ、検出対象となる成分などに関して、より詳しく説明する。
【0058】
(検出用プローブに利用されるオリゴヌクレオチドの種類)
本発明の検出方法において、検出用プローブに利用されるオリゴヌクレオチドには、デオキシリボ核酸を用いることができる。その他に、リボ核酸、ベプチド核酸などを用いることも可能である。所望の塩基配列を有し、その部分において、他の分子と結合が可能な構成である限り、また、同時に、固相基板上に、固定が可能である限り、その種類を問わない。また、その核酸鎖を除く部分は、非核酸原子団による修飾や、付加構造などを有するものも、前記の要件を満たすならば利用可能である。
【0059】
なお、この検出用プローブに利用されるオリゴヌクレオチドは、人為的に所望量を調製、または採取する必要があり、その塩基配列自体は既知である必要がある。ただし、その核酸部は、少なくとも2以上の塩基を有するものである。原理的には、その塩基長に上限はないものの、100塩基を超えると、固相基板上に固定を図る際、その塩基長が増すに従って、困難さが増すため、100塩基以下に留めることが好ましい。
【0060】
例えば、このオリゴヌクレオチドを、例えば、100塩基を超える核酸分子とハイブリダイゼーション反応させる際には、十分な結合性を得る上では、少なくとも10mer以上とすることが好ましい。一方、50merを超えると、ミスマッチの検出を制御するための条件設定が難しく、完全にマッチしたもののみを選別して検出することが困難になる。従って、50mer以下とすることが好ましい。
【0061】
なお、10mer以上50mer以下の範囲であれば、化学合成によって、目的の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド、例えば、DNAを調製する際にも、好ましい範囲である。
【0062】
(マトリクス状に配置する、オリゴヌクレオチドを固定する区画の形状)
検出用プローブに利用されるオリゴヌクレオチドを結合させ、固定する区画の形状自体には、特に制限はない。しかし、この区画上に、検体試料をアレイ状にスポットすることを考慮すると、複雑な外形形状よりも、より単純な形状を選択することが一般に望ましい。加えて、オリゴヌクレオチドを結合させ、固定する際にも、かかる区画内において、その面密度を均一にする上でも、より単純な形状を選択することが、作業効率、利便性の観点から一般に好ましい。具体的には、矩形形状、例えば、線形(ライン状)、正方形、長方形といった形状を採用すると好ましい。勿論、円形、楕円形など、外周が曲線で形成される形状であっても、原理的には、何ら問題は生じない。
【0063】
一方、本発明の検出用基板においては、検出用プローブに利用されるオリゴヌクレオチド複数種を一つの基板上に載せる際には、作業効率、利便性の観点から、それを固定する区画をマトリクス状に配置することが好ましい。また、各区画の形状を統一し、その占める面積をも統一することが好ましい。
【0064】
(マトリクス状に配置される区画の密度)
マトリクス状に配置される区画の密度は、検出用基板内に同時に載せるオリゴヌクレオチドの種類数により、適宜選択するものではあるが、1cm2当たり400以下に選択することが好ましい。仮に、密度を400/cm2とし、各区画の形状を正方形とする場合、各区画の大きさは500μm角となる。検体試料を100μmの径のスポットとして、この区画内に緻密にアレイ状に並べると、縦横それぞれ5スポット、計25スポットとなる。また、スポットの径を20μmとした場合は、一辺に並べうるスポットの数は25になり、計625スポットとなる。本発明の検出方法は、検体試料数が多数ある際、それを同時に評価する際に、より大きな利点を持つものであるので、少なくともスポット可能な検体試料数上限が、前記の値程度となるように、配置される区画の密度を選択することが、より発明の最終的な目的に合致するものである。
【0065】
例えば、cDNAを含む検体試料に本発明の検出方法を適用する際には、一度に評価すべき検体試料数、具体的には、cDNAの種類総数は、3600種程度に達することもしばしばである。その際、スポット径を100μmとした場合には、縦横を、それぞれ60スポット分とする際、一区画の大きさは6mm角程度になる。また、スポット径を20μmとした場合でさえ、一区画の大きさは1.2mm角が必要である。このように、本発明の検出方法に用いる検出用基板において、マトリクス状に配置される区画の密度は、1cm2当たり400以下に選択することが好ましい適用対象が数少なくない。
【0066】
なお、本発明の検出方法では、検体試料を液滴状にスポットとするが、例えば、スポット径100μmの場合、1スポット当たり液滴に要する液量は約25ピコリットルとなる。このスポット・サイズで、評価に用いるプローブの数を400に選択する(例えば、基板上に設けるマトリクスの区画数を400とする)場合であっても、各検体試料毎に、全体のスポットに要する液量の合計は10ナノリットルに留めることができ、極めて微量で目的とする評価項目を実施することが可能となっている。
【0067】
また、検体試料の溶液に検出用基板を浸すという従来の方法では、要する溶液の液量は基板の大きさに依存するため、検体試料が元々少量しかない場合には、その液量に見合うように基板サイズを小さくすることが必要となり、基板上に固定するプローブを高集積化すること必須となっていた。それに対して、本発明の検出方法においては、基板の大きさ自体は、検体試料の液量を考慮することなく、任意に選択できる。加えて、検出用プローブに利用されるオリゴヌクレオチドを固定する際、その面密度は均一にすることが勿論必要であるが、複数のプローブを高集積化して固定する必要はないため、その固定操作はより容易になる。
【0068】
(オリゴヌクレオチドの基板上への固定)
検出用プローブに利用されるオリゴヌクレオチドを基板表面上に固定する手段として、予め別途に調製してあるオリゴヌクレオチドを塗布、あるいは、プリンティングにより、所定の区画内に供給し、結合させる方法、または、基板上で各オリゴヌクレオチド、具体的には、DNAプローブなどを固相合成し、元々結合されたDNAを調製する方法を用いることができる。なお、オリゴヌクレオチドが、DNA以外であって、例えば、リボ核酸、ベプチド核酸の場合にも、後述するように、基板上の合成を行い結合することが可能である。
【0069】
一方、予め、別途に合成された、あるいは、採取されたオリゴヌクレオチド、具体的には、DNA、あるいは、リボ核酸、ベプチド核酸などを、プローブに利用する際には、基板表面に、共有結合により固定化を行う方法、あるいは、静電結合を利用して、固着を行う方法を利用することが可能である。
【0070】
(基板上でのオリゴヌクレオチドの合成)
基板上でのDNA合成には、例えば、US5445934号公報に開示されている手法のように、フォトリソグラフィーを利用したシリコン基板上での合成が挙げられる.US5445934号公報では、シリコン基板表面を極めて小さなエリアに分割し、プローブ用のDNA合成を行うことによって、高密度DNAプローブ・アレイの作製方法を示している。一方、本発明の検出方法に用いる検出用基板では、例えば、各プローブが固定される区画サイズは0.5mm角以上とすることができ、必ずしも高密度化を必要としない。しかしながら、光分解性保護基、化学物質により分解される保護基等を予め、核酸に結合させておき、マスキング、露光、反応の工程を繰り返すことにより、4種の核酸塩基を一塩基毎結合させ、所望の塩基配列を有するDNA鎖の伸長を行う、US5445934号公報に記載される手法を利用して、本発明の検出用基板においても、各区画上にDNA鎖を合成することができる。
【0071】
(予め、合成された、あるいは、採取されたオリゴヌクレオチドの固定)
静電結合を利用する固定の手段として、DNAの負の荷電を利用して、固相基板表面のポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミンアオンをブロッキングする手法が、一般的に利用されている。
【0072】
しかしながら、塩基長50以下の、十分に長くないオリゴヌクレオチドの場合には、そのリン酸基の電荷も小さく、前記の手法による基板上への結合は必ずしも強力とはいえない。この塩基長が十分に長くないオリゴヌクレオチドに対しては、予め核酸の末端に共有結合のための官能基を導入したオリゴヌクレオチドを合成しておき、基板にはその官能基に合わせた表面処理を施し、前記官能基を用いて共有結合させる手法を用いると、より強固な結合が達成でき、より好ましい。
【0073】
また、オリゴヌクレオチドがRNAの場合にも、前記DNAに利用される手法を応用することができる。あるいは、ペプチド核酸の場合にも、その核酸部を用いて、前記DNAに利用される手法を応用することができる。
【0074】
(固相基板とオリゴヌクレオチドとの共有結合による固定に利用される官能基の種類)
オリゴヌクレオチドを固相基板表面上に、共有結合により固定する際には、予め、オリゴヌクレオチドと固相基板表面に、それぞれ官能基を導入し、その間で反応を行うことが一般的である。この官能基の組み合わせに関しては、基板表面にマレイミド基を、オリゴヌクレオチドにチオール基(−SH)を導入する組み合わせが、好ましい一例としてが挙げられる。具体的には、オリゴヌクレオチドの末端にチオール基(−SH)を結合させておき、一方、固相表面には、マレイミド基を有する被覆を形成する処理を施しておき、固相表面にオリゴヌクレオチドを供給した際、チオール基(−SH)をマレイミド基に作用、反応させて、共有結合の形成による固定化がなされる。
【0075】
固相表面へのマレイミド基導入には、種々の手法が利用できるが、例えば、ガラス基板にアミノシランカップリング剤を反応させ、次に、下記式(II):
【0076】
【化1】
【0077】
で示されるN−(6−マレイミドカプロイロキシ)スクシンイミド(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide)を含む試薬(EMCS試薬:Dojin社製)を用い、シランカップリングのアミノ基に反応させることで、マレイミド基を有する被覆層を形成することが可能である。
【0078】
また、チオール基を導入したオリゴヌクレオチドは、例えば、DNA自動合成機を用いてDNAを合成する際、5’末端の試薬として5’−Thiol−Modifier C6(Glen Research社製)を用いることにより合成することができる。なお、合成後、通常の脱保護反応の後、高速液体クロマトグラフィーによる精製処理を施す。
【0079】
共有結合による固定化に利用可能な、官能基の組み合わせとしては、前記のチオール基とマレイミド基との組み合わせ以外に、例えば、エポキシ基(固相表面上)とアミノ基(オリゴヌクレオチドの末端)の組み合わせなども挙げられる。固相表面へのエポキシ基の導入は、例えば、エポキシ基を有するポリグリシジルメタクリレート樹脂からなる固相表面に塗布したり、エポキシ基を有するシランカップリング剤をガラス製の固相表面に塗布してガラスと反応させる手法などが挙げられる。
【0080】
(インクジェット法によるオリゴヌクレオチド溶液の供給)
固相基板表面の所定の区画に、その上に固定するオリゴヌクレオチドを含む溶液を供給する手段は、単位面積当たり均一な液量が供給される限り、特に限定はない。例えば、インクジェット法などによるプリンティングを利用する場合には、「べた塗りパターン」を作製しておいて、インクジェット・プリンター用に用いられるインクジェット型プリンター・ヘッドを利用し、そのインクのカートリッジに、インクの代わりにオリゴヌクレオチド溶液を充填し、規定された面積をプリントする手法を用いる。供給すべき液量が少ない場合には、インク・カートリッジのような容量の大きなものを用いず、代わりに、ヘッドにチューブなどの試料供給部を接続する構成とし、オリゴヌクレオチド溶液をヘッドに供給する構造としたものを利用してもよい。
【0081】
この手法で用いる、吐出用のオリゴヌクレオチド溶液には、インクジェット様に吐出可能であって、また、ヘッドから吐出した微少液滴が所望の位置に着弾するに適する粘度を有する溶液を用いる。さらに、利用する溶媒は、前記の要件を満たす上に、目的のオリゴヌクレオチドを混合した状態、ならびに、吐出時において、目的のオリゴヌクレオチドに損傷を与えない溶媒から選択される。
【0082】
具体的には、インクジェット・ヘッド、特にバブルジェット・ヘッドからの吐出性という観点からは、溶液の特性として、例えば、その粘度が1〜15cps、表面張力が30dyn/cm以上とすることが好ましい。なかでも、粘度を1〜5cps、表面張力を30〜50dyn/cmの範囲に選択する際には、固相基板上への着弾位置が極めて正確なものとなり、バブルジェット・ヘッドを用いる供給法が特に好適に利用できる。
【0083】
加えて、吐出時におけるオリゴヌクレオチドの安定性などを考慮すると、オリゴヌクレオチド溶液中に、例えば、2〜100mer、特には、2〜60merのオリゴヌクレオチドを、0.05〜500μM、好ましくは2〜50μMの濃度範囲で含有させる溶液を用いる際、インクジェット方式の供給手段がより好ましいものとなる。
【0084】
インクジェット方式の吐出法を適用する上で、オリゴヌクレオチド溶液の液組成は、上記したように、目的のオリゴヌクレオチドを混合した状態、ならびに、吐出時においても、目的のオリゴヌクレオチドに実質的に損傷を与えないことは勿論であるが、さらに、インクジェットを用いて固相基板表面に対して正常に吐出することが可能であれば、その組成は、特に限定されるものではない。なお、目的のオリゴヌクレオチドに加えて、例えば、グリセリン、尿素、チオジグリコール又はエチレングリコール、イソプロピルアルコール、あるいは下記式(I):
【0085】
【化2】
【0086】
(式中、R1、R2、R3、R4はアルキル基、例えば、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、m、nは、それぞれ0又は正の整数であり、1≦m+n≦30を満たす)で示されるアセチレンアルコールを含む溶液とすることが好ましい。さらに、具体的には、尿素を5〜10wt%、グリセリンを5〜10wt%、チオジグリコールを5〜10wt%、ならびに式(I)で示されるアセチレンアルコールを0.02〜5wt%、より好ましくは0.5〜1wt%を含む溶液組成とすると、インクジェット方式の吐出法が好適に用いられる。
【0087】
(疎水性のwallと親水性のwellとからなるマトリクス構成)
また、固相表面上に設けるマトリクス状の区画は、例えば、親水性のwell(窪み底部)を囲む疎水性のwall(障壁部)とからなるマトリクス状の区画を形成し、隣接する区画間での連結を防止するような構成とすることができる。その疎水性のwall(障壁部)で囲まれた親水性のwell(窪み底部)にオリゴヌクレオチドの溶液を供給して、親水性のwell(窪み底部)の底面部のみにオリゴヌクレオチドが固定される構成も利用できる。
【0088】
(ウォール/ウェルの素材)
マトリクス状に配置される区画として、wall(障壁部)パターンで区分されているwell(窪み底部)の底面部にオリゴヌクレオチドの溶液を供給して、結合反応を行う際には、well(窪み底部)の底面部は溶液で密に濡れるが、wall(障壁部)は、溶液との濡れ性が乏しいことが望ましい。例えば、well(窪み底部)の底面部分の表面を構成する固相素材は親水性に富むものとし、wall(障壁部)の壁面と、隣の区画と分離仕切りに相当する部分は、親水性が乏しくすることが好ましい。これにより、well(窪み底部)の底面部分に供給されるオリゴヌクレオチドの水溶液は、底面部分全体に広がるが、wall(障壁部)を超えて、隣接する区画に混入することは防止される。また、仮にwall(障壁部)に掛かる位置に誤って供給された液滴は、濡れ性とよい目的のwell(窪み底部)に速やかに移行する結果、所定液量のオリゴヌクレオチド溶液をwell(窪み底部)により確実に供給できる。
【0089】
図5に、本発明の検出用基板に設ける、マトリクス状に配置されている区画の一例を示す。この正方マトリクス状の区画は、固相基板の表面上に枠体構造を有する凸部(ウォール)を設け、配置された矩形の凹部(ウェル)を区分する構造を有する。具体的には、枠体構造を有する凸部(ウォール)によって互いに隔離される凹部(ウェル)は、固相基板の表面上に凸部(ウォール)を形成する材料を一面に被覆した後、矩形形状の貫通孔(くりぬき部)を設け、凹部(ウェル)を開口したものである。従って、凹部(ウェル)の底面部には、固相基板の表面が露出した状態である。固相基板の表面露出部分は、オリゴヌクレオチドと結合可能な表面とする処理が施されている。その結果、この凹部(ウェル)の底面部にのみ、オリゴヌクレオチドが固定される。
【0090】
枠体構造を有する凸部(ウォール)を形成する材料としては、例えば、金属(クロム、アルミ、金等)や樹脂等が挙げられる。樹脂としては、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル酸モノマー、ウレタンアクリレートなどの樹脂や、フォトレジスト等の感光性の樹脂に、黒色の染料や黒色の顔料を含有させたものが挙げられる。なお、感光性樹脂の具体例としては、例えば、UVレジスト、DEEP−UVレジスト、紫外線硬化樹脂などを用いることができる。UVレジストとしては、環化ポリイソプレン−芳香族ビスアジド系レジスト、フェノール樹脂−芳香族アジド化合物系レジストなどのネガ型レジスト、ノボラック樹脂−ジアゾナフトキノン系レジストなどのボジ型レジストを挙げることができる。
【0091】
DEEP−UVレジストとしては、ポジ型レジストとして、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメチレンスルホン、ポリヘキサフルオロブチルメタクリレート、ポリメチルイソプロベニルケトン、及び、臭化ポリ1−トリメチルシリルプロピンなどの放射線分散型ポリマーレジスト、コール酸o−ニトロベンジルエステル等の溶解抑制剤系レジストを挙げることができ、ネガ型レジストとして、ボロビニルフェノール−3,3’−ジアジドジフェニルスルホン、及び、ポリメタクリル酸グリシジルなどを挙げることができる。
【0092】
紫外線硬化樹脂としては、ベンゾフェノン、及び、その置換誘導体、ベンジルなどのオキシム系化合物等の中から選ばれる、1種、又は2種以上の光重合開始剤を2〜10重量%程度含有した、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、及びウレタンジアクリレートなどを挙げることができる。
【0093】
蛍光標識を用いる検出の際、この枠体構造を有する凸部(ウォール)を形成する素材による光反射を抑制するためには、用いる素材を遮光性のものとすることが効果的である。遮光性を付与するためには、上記の樹脂に黒色の顔料を加えることが有効であり、その際、利用可能な黒色の顔料としては、カーボンブラックや黒色有機顔料を挙げることができる。
【0094】
なお、枠体構造を有する凸部(ウォール)を、上記の疎水性を示す樹脂材料により形成した際には、凸部(ウォール)の表面は疎水性となる。この疎水性を示す材料で形成される枠体構造を有する凸部(ウォール)を設ける構成は、凹部(ウェル)の基板表面に供給するオリゴヌクレオチドを含む溶液として、水系の溶液を用いる場合には、より好ましいものである。仮に、凸部(ウォール)の表面に掛かるような位置に水系の溶液が供給されたとしても、凸部(ウォール)表面にそのまま付着することなく、次第に、より低い位置にある凹部(ウェル)の底部に移行することになる。また、隣接する凹部(ウェル)には、互いに異なる種類のオリゴヌクレオチドの溶液が供給されるが、疎水性を示す凸部(ウォール)で分離されているため、液のしみ出しによる溶液間での混じり合い(クロスコンタミネーション)の防止がなされている。
【0095】
なお、枠体構造を有する凸部(ウォール)の厚さ(固相基板表面からの高さ)は、凹部(ウェル)に供給するオリゴヌクレオチドの溶液の液量を考慮して、凹部(ウェル)の容量を選択し、その容量を満たすように適宜決められる。また、凸部(ウォール)の形成方法にもよるが、1〜20μmの範囲で、前記の要件を満たすように選択することが好ましい。このように選択した凸部(ウォール)の厚さは、インクジェット法によりオリゴヌクレオチドの溶液を各ウェルに供給する際、隣接するウェル間でのクロス・コンタミネーションを有効に防止する厚さ領域となる。
【0096】
(検体の種類)
本発明の検出方法が適用可能な、検体試料中に含まれる対象成分として、mRNA、cDNA、蛋白質、細胞抽出物、ならびに薬剤を初めとする化学物質が挙げられる。
【0097】
なお、cDNAを対象成分とする際には、二本鎖のままで用いることも可能ではあるが、予め標識を施した一本鎖とすることが、効率の良いハイブリッド体の形成と、その検出を簡便に行う上では、好ましい。
【0098】
一方、mRNAは元来一本鎖であり、何らかの方法で標識化を行い、標識されたmRNAとすることにより、効率の良いハイブリッド体の形成と、その検出を行うことができる。なお、検体試料中のmRNAは一般に少量であり、本発明の検出方法の特徴である、検出に要する試料溶液量を少量とすることができるという利点がより顕著となる対象成分である。ただし、取り扱いの際、RNA分解酵素の混入を生じ易いため、検体試料の溶液中に、ジエチルピロカルボネート等のRNA分解酵素阻害剤など、mRNAの分解を抑制する物質を所定量添加することが望ましい。mRNA以外にも、RNAウイルスのゲノムも、同様に対象成分となる。加えて、tRNAやリボゾーマルRNAなども、対象成分となる。
【0099】
一方、蛋白質を対象成分とする際には、蛋白質自体が発する蛍光を利用して、形成された複合体の検出を行うこともできる。
【0100】
また、化学物質も、場合によっては、それ自体の蛍光を発するものもあり、形成する複合体をその蛍光を利用し、検出することもできる。蛍光を発しない化学物質に関しては、化合物の官能基を利用した手法で標識を施すことができる。本発明の検出方法が適用可能なものには、一本鎖のDNAと結合可能な化学物質の例などを挙げることができる。加えて、一本鎖のRNAと結合可能な化学物質の例なども挙げることができる。
【0101】
(検体試料をアレイ状にスポットする手段)
本発明の検出方法においては、検体試料を検出用基板上の定められた位置にアレイ状にスポットする。要する液量を僅かとするため、そのスポット径は、数10μm〜100μm程度の範囲に選択するが、このようなスポット径で、スポット量の均一性が高く、また、高い位置精度でスポットすることが必要となる。この要件を満足するスポット手段として、ピン方式、インクジェット方式、キャピラリー方式のスポット装置が挙げられる。
【0102】
ピン方式は、ピン先端に検体試料を付着させ、その先端を固相表面へ機械的に接触させることにより、一定量の検体試料を写し取る方法である。毛細管を利用するキャピラリー方式は、一旦、毛細管に吸い上げられた検体試料の溶液を、ピン方式と同様、毛細管の先端を固相表面へ機械的に接触させることにより、一定量の検体試料を写し取る方法である。この二つの方式を採用するスポット装置は、各種市販されており、市販の装置を利用することができる。
【0103】
このピン方式、キャピラリー方式のスポット装置は、検体試料の種類に依らずスポットが可能であり、未知の検体試料に対しては、最も好ましい方法と考えられる。但し、例えば、検体試料中に含まれるDNAの長さや含有濃度に依存して、検体試料溶液の粘度に差異が生じ、そのため、スポットされる液量に変動が生じる。従って、定量性の観点では問題を含むものである。蛋白質に関しても、その分子の大きさや濃度に依存して、検体試料溶液の粘度に差異が生じ、定量性の観点では問題を残している。しかしながら、後述するインクジェット法のように、液滴を吐出する際、専断力等の物理的な刺激が検体試料に加わることはなく、検体自体の分子量に制限がないという大きな利点をもっている。
【0104】
(インクジェット法による検体試料のアレイ状スポット)
インクジェット法で吐出可能な検体として挙げられるのは、核酸、蛋白質の他、化学薬品があげられる。
【0105】
インクジェット法では専断力が働くために、吐出できる核酸の長さ、蛋白質の大きさに制限が加わる。しかし、その定量性は他のピン方式、キャピラリー方式より優れたものであり、特に化学物質の吐出に関しては他の方式よりも好適に用いられる。吐出可能な核酸としては、塩基対長1kbp以下のものであり、蛋白質としては100Kダルトン以下のものが好ましい。化学物質に関しては、一般に分子量は、核酸や蛋白質と較べると充分に小さく、従って、分子量が極端に大きなポリマーを除き、どのようなものでも吐出可能である。
【0106】
図6は、本発明の方法において、検体試料溶液のスポットに利用される手段の一つである、インクジェット法、特にバブルジェット法により検体溶液を吐出する方法を概略的に説明する図である。図6において、101は吐出液としての検体を含む溶液を吐出可能に保持している液体供給系(ノズル)、103は検体が反応する対象である核酸プローブが結合されている固相、105はインクジェットヘッドの一種である、吐出液体に熱エネルギーを付与して吐出させる機能を備えるバブルジェット・ヘッドである。104は、バブルジェット・ヘッドから吐出された検体を含む液体(液滴)である。図7は、図6に説明したバブルジェット・ヘッド105の断面図である。図7において、107はバブルジェット・ヘッド105から吐出されるべき検体溶液を含む液体、また、117は前記液体に吐出エネルギーを付与する発熱部を有する基板部分である。基板部分117は、酸化シリコン等で形成されている保護膜109、アルミニウム等で形成されている電極111−1,111−2,ニクロム等で形成されている発熱抵抗帯層113,蓄熱層115及び放熱性の良好なアルミナ等で形成されている支持帯116を含んでいる。検体を含む液体107は吐出オリフイス(吐出口)119まできており、所定の圧力によってメニスカス121を形成している。この状態において、電極111−1,111−2に電気信号が加わると、123で示す領域(発泡領域)が急激に発熱し、ここに接している液体107が吐出し、固相103の表面に向かって飛翔する。このような構造を備えるバブルジェット・ヘッドを用いて吐出可能な液体の量は、そのノズルのサイズ等によって異なるが、例えば4〜50ピコリットル程度に制御することが可能であり、基板表面上に高密度にプローブをマトリクス状に配置させる手段として極めて有効である。
【0107】
そしてインクジェット、特にバブルジェット・ヘッドからの吐出性という観点からは、吐出させる液体の特性としては、例えば、その粘度が1〜15cps、表面張力が30dyn/cm以上が好ましい。また、粘度を1〜5cps、表面張カを30〜50dyn/cmとした場合、固相上での液滴着弾位置(スポット位置)が極めて正確なものとなり特に好適に用いられる。
【0108】
加えて、吐出時の核酸の安定性等を考慮すると、溶液中には、例えば100〜10000mer、特には100〜5000merの一本鎖核酸、あるいは、二本鎖核酸が好ましい。例えば、c−DNA断片を、10μM以下、特には、1μM以下の濃度で含有させることが好ましい。
【0109】
吐出液の組成としては、上記したように核酸プローブと混合したとき、及びインクジェットから吐出されたときに核酸プローブに対して影響を実質的に与えないものであって、かつインクジェットを用いて固相に対して正常に吐出可能である条件を満たせば、特に液体組成を限定するものではないが、例えばグリセリン、尿素、チオジグリコール又はエチレングリコール、イソプロピルアルコール及び下記式(I):
【0110】
【化3】
【0111】
(式中、R1、R2、R3、R4はアルキル基、例えば、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、m、nは、それぞれ0又は正の整数であり、1≦m+n≦30を満たす)で示されるアセチレンアルコールを含む液体は好ましいものである。
【0112】
さらに具体的には尿素を5〜10wt%、グリセリンを5〜10wt%、チオジグリコールを5〜10wt%、及び上記式(I)で示されるアセチレンアルコールを0.02〜5wt%、より好ましくは0.5〜1wt%を含む液体が好適に用いられる。
【0113】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、ここに示す実施例は、本発明の最良の実施の形態の一例であるが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
【0114】
(実施例1)
オリゴヌクレオチド結合基板を作製する手順の一例を述べる。本実施例では、ガラス基板上に、2mm角の領域にオリゴヌクレオチドを結合した検出用基板を下記する手順により作製した。
【0115】
1.基板洗浄
1インチ角のガラス基板をラックに入れ、超音波洗浄用洗剤に一晩浸した。その後、前記洗剤中で20分間超音波洗浄を行い、その後、水洗により洗剤を除去した。更に、蒸留水ですすいだ後、蒸留水のはいった容器中でさらに超音波処理を20分間行った。
【0116】
次に、このガラス板を、予め加温してあった1N水酸化ナトリウム溶液に10分間浸した。取り出した後、表面の付着する1N水酸化ナトリウム溶液を水洗した後、引き続き、蒸留水洗浄を行った。
【0117】
2.表面処理
前記洗浄済みのガラス基板を、1%シランカップリング剤水溶液(信越化学工業社製、商品名KBM603)に室温で20分浸し、その後、窒素ガスを両面に吹き付けて、水分を飛ばし、乾燥させた。120℃に加熱したオーブンで1時間ベークし、ガラス基板表面に対するシランカップリング剤処理を完結させた。
【0118】
一方、EMCS(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide:Dojin社製)を2.7mg秤量し、DMSO/エタノールの1:1溶液に溶解した(最終濃度0.3mg/ml)。シランカップリング剤処理を行ったガラス基板を、このEMCS溶液に2時間浸し、基板表面を被覆しているシランカップリング剤のアミノ基とEMCS溶液のカルボキシル基を反応させた。この反応に伴い、シランカップリング剤を介して、EMCSによる被覆がなされる。得られるガラス表面には、EMCS由来のマレイミド基が表面に存在することになる。EMCS溶液と反応を終えた後、取り出されたガラス基板は、蒸留水で洗浄後、窒素ガスで乾燥させる。このマレイミド基を導入する表面処理を施したガラス基板が、後に述べるDNAとの結合反応に用いられる。
【0119】
3.ガラス基板固定用DNAの合成
ガラス基板上に固定するために、下記の配列1の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを化学合成した。この配列1は、癌抑制遺伝子として知られているp53遺伝子がコードする遺伝子産物(ペプチド鎖)のアミノ酸配列において、248及び249番目のアミノ酸をコードする塩基長6の塩基配列を、その中心部分に含む18mer配列である。また、ガラス基板上への固定のため、その5’末端にSH基を導入してある。
【0120】
配列1 5'HS−GATGGGCCTCCGGTTCAT3'
SH基の導入は、DNA自動合成機上、市販の合成用試薬Thiol−Modifier(GlenResearch社製)を用いる事によりなされる。続いて、通常の脱保護を行いDNAを回収し、高速液体クロマトグラフイーにて精製した後、以下の工程に用いた。
【0121】
4.BJプリンター・ヘッドを利用するDNA吐出、および基板への結合
前記の合成オリゴヌクレオチド(DNA)を水に溶解し、SGクリア(グリセリン7.5%、尿素7.5%、チオジグリコール7.5%、アセチレノールEH1%を含む水溶液)を用いて、最終濃度8μMになるよう希釈した。
【0122】
少量のサンプル(吐出量)に適するようにノズルを改造したBJプリンター用ヘッドBC62(キヤノン社製)のノズルに、このオリゴヌクレオチド溶液を100μl充填した。この改造プリンター・ヘッドを描画機にセットして、ガラス基板表面に2mm角の「べた塗り」の面として、オリゴヌクレオチド溶液による印字を行った。なお、用いた改造プリンター・ヘッドは、バブルジェット型インクジェット印字に用いられ、360×720dpiの解像度で印字可能である。
【0123】
その後、オリゴヌクレオチド溶液をしたガラス基板を、30分間、加湿チャンバー中に放置し、基板表面のマレイミド基とオリゴヌクレオチドのチオール基(HS−)との反応を行った。その後、未反応のオリゴヌクレオチドは、除去した。調製された検出用基板は、上記配列1の合成DNA(オリゴヌクレオチド)が共有結合により、ガラス基板上、所定の2mm角の区画に結合された基板となる。
【0124】
(実施例2)
オリゴヌクレオチド結合基板表面へのcDNA溶液の供給、及びハイブリダイゼーション反応
癌組織から取得された各種cDNAライブラリーから、p53遺伝子断片をPCR増幅し、次に、予め標識を付したプライマーを用いて、片側鎖のみを再増幅し、検体試料とする標識を施した一本鎖cDNAを作製した。このp53遺伝子由来の標識を施した一本鎖DNAと、実施例1で作製した検出用基板上に結合されているDNAプローブとのハイブリダイゼーション反応を行った。
【0125】
1.検体試料の調製
癌の組織から得られた64種のcDNAライブラリーから、PCR反応によりp53遺伝子断片を取得した。
【0126】
具体的には、先ず、バイオプシーで採取した各組織からCatrimox−14(Biotechnology社)を用いて、全RNAサンプルを分離・採取した。この全RNAサンプル溶液を基に、First−Strand cDNA Synthesis Kit(Life Sciences 社製)を用いて、cDNAライブラリーを調製した。このcDNAライブラリーに、p53遺伝子増幅用プライマーを加え、P53遺伝子断片をPCR増幅した。次に、このPCR増幅産物をテンプレートとして、標識された5’側のプライマーを用いて、片鎖のみを増幅するようなPCR反応(DNA合成反応)を行った。この再増幅により、標識されたp53遺伝子由来の一本鎖DNAを調製することができる。
【0127】
(1)PCR法によるT3結合サイトを末端に持つp53遺伝子断片の増幅
前記の標識されたプライマーとして、T3プロモーターを利用するオートシーケンサー用のプライマー(宝酒造)を利用するため、先ず、末端にT3サイトを持ち、その下流にp53遺伝子部分が増幅可能であるような塩基配列を連結したプライマーを合成した。このプライマーを用いて、PCR反応を行い、p53遺伝子部分に、T3プロモーター部位が連結されたPCR増幅産物を得た。
【0128】
この例では、p53遺伝子増幅用の5’末端プライマーに対して、その5’側にT3プロモーター部位を連結した、塩基配列のプライマー(T3−P53)を作製した。その塩基配列を下に示す。
5’AATTAACCCTCACTAAAGGGAACCTGAGGTTGGCTCTGACTGTACCACCATCC3’
配列中、5’末端側の下線部がT3ポリメラーゼ結合サイトである。一方、増幅用の3’末端プライマーには、市販の増幅キット、CLONTECH 社の「Human p53 Amplimer Set」中に添付される3’末端プライマーを用いた。PCR反応溶液には、「one shot LA PCR Mix」(宝酒造)を用いた。
【0129】
PCR反応における溶液組成は、下記の比率であり、
one shot LA PCR Mix 25μl
T3-P53primer (20μM) 1μl
3'primer (20μM) 1μl
cDNAライブラリー溶液 lμl
DW 22μl /50μ1
PCRサイクルは、95℃で5分間熱変性後、95℃30秒、55℃30秒、72℃60秒のサイクルを29回行い、最後に72℃で5分間保持しする条件を用い、反応物を冷却後、4℃で一時保存した。
【0130】
反応後、ゲル電気泳動を行い、300mer程度の分子量域にPCR産物があることを確認した。このPCR産物を、Micro Spin Column S200 (Pharmacia)で精製して、T3プライマーが結合可能なp53遺伝子断片(T3-1inked p53 DNA)を得た。
【0131】
(2)標識T3プライマー(Rho-T3)を利用する標識一本鎖DNAの合成
(1)で得られたp53遺伝子断片を鋳型に、Rho−T3プライマー(宝酒造)を用いてPCR反応により、一本鎖標識DNAを得た。反応溶液の組成は、
one shot LA PCR Mix 25μl
Rho-T3primer (10μM) 1μl
T3-linked p53 DNA 1μl
DW 23μl /50μl
とし、反応サイクルは、96℃で30秒、50℃で15秒、60℃で4分を24回繰り返す条件を用い、反応物を冷却後、4℃で一時保存した。Micro Spin Column S200 で精製後、ゲル電気泳動で、PCR反応により目的のローダミン標識一本鎖DNAが合成されていることを確認した。
【0132】
2.検体試料溶液の供給
前記工程で得られた検体試料、すなわちp53遺伝子由来のローダミン標識一本鎖DNAの溶液に食塩を最終濃度1Mになるように加えた。各cDNAライブラリー64種から調製した、p53遺伝子由来のローダミン標識一本鎖DNAの溶液を、96穴マイクロタイタープレートのそれぞれのウエルに注入した。これらのローダミン標識一本鎖DNA溶液を、実施例1で得られた配列1のDNAプローブが2mm角に結合された検出用ガラス基板に、Cartesian Technologies 社製マイクロアレイ作製装置(ピン方式)を用いて8×8の並びとしてスポットした。それぞれのスポットの径は100μmである。
【0133】
3.ハイブリダイゼーション反応
検体試料であるローダミン標識一本鎖DNA溶液計64種をスポットしたこの検出用基板を、40℃に設定した加湿チヤンバー内に放置し、ハイブリダイゼーション反応を3時間行った。その後、検出用基板を100mMNaClを含む10mMリン酸緩衝液にて洗浄し、ハイブリッド体形成に関与しなかった検体試料を除去した。
【0134】
ハイブリダイゼーション反応後、8×8の二次元アレイ状にスポットした検体試料を、蛍光標識ローダミンに適する、励起光、蛍光用のフイルター・セットを装着した倒立型蛍光顕微鏡を用いて観察した。大部分のスポットでは、ハイブリッド体形成に伴い、蛍光標識ローダミンに由来する赤色の蛍光が観察された。しかしながら、6カ所のスポットで蛍光強度が弱く、1カ所のスポットでは蛍光が観察されなかった。
【0135】
このことは、対応する6種類の癌細胞由来のp53遺伝子においては、p53遺伝子産物(p53蛋白質)のアミノ酸配列248及び249番目に対応する塩基配列のどこかに変異があるため、そのミスマッチによりハイブリッド体形成量が少なく、それを反映して蛍光標識からの蛍光強度が弱くなっていると考えられる。蛍光が観察されなかった検体試料では、ハイブリッド体形成が起こっていないことから、それに含まれるp53cDNA断片では、前記アミノ酸配列248及び249番目をコードすべき塩基配列中に欠失が生じている結果、ハイブリッド体形成ができなくなったと考えられる。
【0136】
(実施例3)
多種オリゴヌクレオチドを固定したプローブ・マトリクス検出用基板上への、検体試料のアレイ状スポットの作製
1.64種プローブ・マトリクスの作製
実施例1と同様な処理を行い、マレイミド基を有するガラス基板を作製した。その上に、実施例1と同様のバブルジェット・プリンター・ヘッドを利用して、表1にその塩基配列を示す64種のDNAを、それぞれ2mm角の面積にプリント(塗布)し、64種のプローブDNAが固定される区画がマトリクス状に配置された検出用基板を調製した。
【0137】
表1にその塩基配列を示す64種のDNAは、癌抑制遺伝子であるp53遺伝子の遺伝子産物(p53蛋白質)のアミノ酸配列248及び249番目に注目し、この2アミノ酸をコードする塩基配列を基に、種々の塩基変異が加わった配列となるように選ばれた。具体的には、基となる塩基配列CGGAGGの中で変異頻度が高いのは、248番目のアミノ酸をコードするCGGの1番目のCがTに、2番目のAがGに、そして248番目のアミノ酸をコードするAGGの3番目のGがTに、それぞれ変異している場合であることが知られている。そこで、この3カ所の塩基が種々に変異した塩基配列と結合可能な配列を有するように、64種のプローブを設計した。
【0138】
実際には、プローブ全長を18merとし、その中央にこの変異を含む6塩基を位置させ、その前後に、各塩基長6の共通な塩基配列を置く構造とした。より具体的には、5’末端から、ATGAACの共通塩基配列、続く変異を含む部分として、塩基配列NNGAGN、さらに、3’末端側に、CCCATCの共通塩基配列を有する、
配列 5’ATGAACNNGAGNCCCATC3’ に対する相補的な塩基配列とした。つまり、配列 5’GATGGGNCTCNNGTTCAT3’で示されるプローブとした。なお、DNAプローブとするため、前記塩基配列中、Nと表記した部位は、4種のDNA核酸塩基であるA、G、C、Tの何れかを意味する。
【0139】
【表1】
【0140】
次に、この64種のDNAのそれぞれを、グリセリン、尿素、及びチオジグリコールをそれぞれ最終濃度7.5%、アセチレノールEHを最終濃度1%含む8μMの溶液に調製した。実施例2と同様に、BJプリンター用ヘッドBC62(キヤノン社製)を利用し、その6個のノズルのそれぞれに異なるDNAプローブ溶液を各100μlずつ充填し、このような複数個のヘッドを用いて、計64種類のDNAプローブを、各2mm角の区画に「べた塗り」塗布、固定し、マトリクス(8×8)状に配置した検出用基板とした。図2に、検出用基板上にマトリクス(8×8)状に配置した、この64種DNAプローブの配置図を示す。
【0141】
2.検体試料のアレイ状スポットの作製
実施例2と同様に、64種類の標識cDNAを、各2mm角のプローブ固定領域に、8×8の二次元アレイ状にスポットした。具体的には、ピン方式アレイ作製装置を用いて、図3に模式的に示すように、8×8の二次元アレイ状のスポットを、マトリクス(8×8)状に配置されている各DNAプローブを固定する区画上に形成した。
【0142】
3.ハイブリダイゼーション反応
ハイブリダイゼーション反応を、実施例2と同様な条件、手順によりを行った。図4にその結果を示す。図2に示す配置において、42番の正常な遺伝子の塩基配列に対応するプローブ上へのスポットに関しては、実施例2と同様に6カ所のスポットで蛍光強度が弱かった。また1カ所のスポットでは、蛍光が観察されなかった。これ以外に、10番目のプローブ領域において3カ所、41番目のプローブ領域において2カ所、46番のプローブ領域において1カ所、それぞれスポットが蛍光を発することが観察された。
【0143】
これら変異のある塩基配列を有するプローブ領域において、ハイブリッド体形成に伴う蛍光が観測されたスポット位置は、上記42番目の本来の塩基配列を有するプローブ領域において、蛍光強度が弱いスポット位置と対応していた。従って、両者間でそのプローブの塩基配列を比較すると、42番目のプローブが有する本来の塩基配列 CCTCCG に対して、10番目のプローブの塩基配列は ACTCCG 、41番目のプローブの塩基配列は CCTCCA 、46番目のプローブの塩基配列は CCTCTG である。その相補的配列は、42番目のCGGAGGに対して、10番目ではCGGAGTとGがTに、41番目ではTGGAGGとCがTに、46番目ではCAGAGGとGがAに、それぞれ変異したものであることが判る。すなわち、これら10番目、41番目、46番目のプローブとハイブリッド体形成する検体試料においては、それに含まれるp53遺伝子由来のcDNA断片は、前記の変異によって、42番目のプローブに対しては1塩基ミスマッチを起こしていることが確認された。
【0144】
この方法により、64種の検体試料全てについて、変異の有無、その種類を同時に検出することができた。
【0145】
(実施例4)
パターンで区分けされたプローブ・マトリクス用基板の作製
以下の手順により、表面にエポキシ基が導入され、また、プローブ・マトリクス用ブラック・マトリクス付きガラス基板を調製した。
【0146】
1.基板表面へのエポキシ基導入
合成石英からなるガラス基板(50mm×50mm)を、先ず、2%水酸化ナトリウム水溶液を用いて超音波洗浄し、次いで、UVオゾン処理を行って、表面を清浄化した。エポキシ基を結合したシラン化合物(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を含むシランカップリング剤(商品名:KBM403;信越化学工業株式会社製)を1%含有する50%メタノール水溶液を室温下で3時間攪拌し、前記シラン化合物中のメトキシ基を加水分解する前処理を施した。この加水分解処理済みの溶液を、上記の清浄な基板表面にスピンコーターで塗布し、100度で5分間加熱、乾燥して、基板表面にシランカップリング剤の結合被膜を形成した。この被膜形成により、シラン化合物に含まれるエポキシ基が基板表面に導入された。
【0147】
2.ブラック・マトリクスの形成
次に、基板上に、カーボンブラックを含有するDEEP−UVレジスト(ブラック・マトリクス用ネガ型レジスト)(商品名:BK−739P;新日鐡化学株式会社製)を硬化後の膜厚が5μmとなるようにスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で80℃で5分間加熱して硬化させた。DEEP−UV露光装置を用いたプロキシミティ露光により、露光マスクとして、10mm×10mmの領域に、隣接ウェル間の距離(X)が100μm、ウェルの外形状が1mm×1mmの正方形となるようにパターニングされたネガ用マスクを用いて、パターンを露光した。次いで、無機アルカリ水溶液の現像液で、スピン乾燥機を用いて現像し、さらに純水で洗浄して現像液を完全に除去した。次に、スピン乾燥機を用いて簡単に乾燥し、その後クリーンオーブン中で180℃で30分間加熱してレジストを本硬化させた。基板全体として、所定の配列でウェルが400個配置され、隣接するウェル間がブラック・マトリクス(レジスト壁)で隔離された基板を得た。なお、各ウェルの内容積は液の厚みを5μmとすると、5μlと算定される。また、作製されたブラック・マトリクスの表面では、水に対する接触角は93度であり、水に対する濡れ性は著しく低く、一方、ウェル底面においては、水に対する接触角は35度であり、水に対する濡れ性に優れていた。
【0148】
3.プローブDNAの固定化
DNAプローブとして5’末端の水酸基にリン酸基とヘキサメチレンを介してアミノ基を結合した18merのオリゴヌクレオチド64種を合成した。この64種のプローブは、塩基配列は実施例3で作製したものと同じであり、その5’末端にチオール基に代えて、アミノ基が導入されている点が異なる。
【0149】
これらのDNAプローブ溶液5μlを顕微鏡下で各ウェルに注入し、加湿されたチヤンバー内で一晩放置し、5’末端のアミノ基と基板上のエポキシ基との反応により、基板上に結合させた。
【0150】
(実施例5)
実施例4で作製したパターンで区分けされたプローブ・マトリクス基板を用いた、mRNAから調製されたp53遺伝子由来のcDNAの解析
実施例2と同様に、64種類の標識cDNAを8×8のスポットの並びとして各2mm角のプローブ領域にピン方式アレイ作製装置により図3のようにスポットした。
【0151】
実施例2と同様な方法によりハイブリダイゼーション反応を行った。
【0152】
得られた結果は実施例3と同様であった。
【0153】
【発明の効果】
本発明の検体試料中の対象成分の検出方法では、検出用プローブとして、その塩基配列が既知のオリゴヌクレオチドを用いて、このオリゴヌクレオチドと結合能を有する対象成分、例えば、核酸分子を検出する際、表面の所定の区画に検出用プローブとなるオリゴヌクレオチドを固定し、その検出用プローブが固定された区画をマトリクス状に配置した検出用基板を利用し、対象成分、例えば、核酸分子を含む検体試料の溶液を複数種について、各区画上に検体試料を一定の液量スポット状に載せ、そのスポット位置がアレイ状に整然と配列するようにし、各スポットの微小液滴内でハイブリダイゼーション反応を行い、プローブのオリゴヌクレオチドと対象成分、例えば、核酸分子との複合体を形成する。最終的に、然るべき標識を利用して、この複合体を顕微検出系などでスポット位置を選択しつつ検出する手法を採用することにより、多数の検出用プローブに対するハイブリダイゼーション能を評価する際に要する検体試料の液量を僅かなものとできる利点を有する。
【0154】
加えて、要する液量は僅かであっても、その検出精度、また、感度自体も、十分に高くなるという効果が得られる。更には、多数の検体試料に対して、検出用基板上にマトリクス状に配置されている複数種の検出用プローブについて、一度に同じ条件で、ハイブリダイゼーション反応を行うことができる利点を活かし、検出に用いるプローブの種類が限定されている際に、大面積の検出用基板を用いて本発明の検出方法を適用すると、各試料液量自体は少なくとも、より多数の検体試料についての評価を、検出精度は維持しつつ、短時間で、また、簡便に実施することを可能とする。
【0155】
また、前記の構成をとる本発明の検出方法に専ら利用される、本発明の検出用基板は、ハイブリダイゼーション反応自体は、基板上にスポットされた微少な液滴内で行うため、検体試料自体の液量に関しては、全く考慮を払うことなく、その基板サイズを任意に選択することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の検体試料中の対象成分の検出方法に利用される検出用基板の一例を示し、検出用プローブとなるオリゴヌクレオチドを固定する区画をマトリクス状に配置し、その各区画に検体試料として、cDNA複数を二次元アレイ状にスポットした状態を模式的に示す図である。
【図2】本発明の検出方法に従い、64種のDNAプローブを8×8のマトリクス状に配置した区画にそれぞれ結合している、実施例3にその調製法を記載する検出用基板における各プローブの配置を模式的に説明する図である。
【図3】プローブが固定される区画が8×8のマトリクス状に配置される検出用基板に対して、各区画上に、64種の検体試料を8×8の二次元アレイ状にスポットした、総計64×64のスポット・アレイのパターンを模式的に示す図である。
【図4】実施例3に記載する、8×8のマトリクス状に配置される区画に固定される64種のプローブに対して、各区画上に、64種の検体試料を8×8の二次元アレイ状にスポットし、ハイブリダイゼーション反応を行った結果を模式的に示す図である。
【図5】本発明の検出用基板上に設ける枠構造の疎水性のwall(壁面)部で区分され、8×8のマトリクス状に配置する区画の構成例を示す図である。
【図6】本発明の検出方法において、検体試料溶液のスポットに利用される手段の一例である、インクジェット法、特にバブルジェット法により検体溶液を吐出する方法を概略的に説明する図である。
【図7】検体試料溶液のスポットに利用されるバブルジェット・ヘッドの構成例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
101 液体供給系(ノズル)
103 固相(基板)
105 バブルジェット・ヘッド
104 吐出された液体(液適)
107 吐出液体
109 保護膜
111−1,111−2 電極
113 発熱抵抗帯層
115 蓄熱層
116 支持帯
117 バブルジェット・ヘッドの基板部分
119 吐出オリフイス(吐出口)
121 メニスカス
Claims (3)
- 互いに異なる既知の塩基配列を有する複数種類のオリゴヌクレオチドを検出用プローブとして用い、64〜3600種の液状の検体試料中に、前記オリゴヌクレオチドに対する結合能を有する対象成分が含有されるか否かを評価するため、前記オリゴヌクレオチドと対象成分との間で形成される複合体を検出する方法であって、
(i)前記複数種類のオリゴヌクレオチドの各々が、固相基板上にマトリックス状に配置されている複数の、500μm角〜6mm角の正方形の区画に対して、一区画に一種類のオリゴヌクレオチドが、該区画の表面に均一な面密度で固定されており、且つ該固相基板は該複数の区画を区分する凸部を有していない検出用基板を用意する工程と、
(ii)前記各区画内に、前記64〜3600種の検体試料をそれぞれ、各スポット相互の間隔が一定間隔以上となるように、所定の液量をスポットし、各スポットにおいて、前記オリゴヌクレオチドと対象成分との複合体形成反応を行わせる工程と、
(iii)各区画について、前記検体試料のそれぞれのスポットにおける前記オリゴヌクレオチドと前記対象成分との間で形成される複合体の有無をそれぞれ検出する工程とを含む
ことを特徴とする検体試料中の対象成分の検出方法。 - 前記工程(i)において、
前記検出用基板上の前記検出用プローブ用オリゴヌクレオチドが予め結合されている各区画における、前記検体試料のスポットの配置パターンが、
各区画において、同じ配置パターンとなるように、前記二種以上の検体試料それぞれのスポットを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の検出方法。 - 前記検体試料について、それぞれ形成するスポットに対する試料液の供給は、インクジェット法による所定液量の供給により行うことを特徴とする請求項1または2に記載の検出方法。
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