以下、本発明の実施の形態について、図1〜図35を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態による多方向入力装置を用いた電子機器としての携帯電話の要部断面図、図2は同多方向入力装置部分の分解斜視図である。
同図において、11は携帯電話の外装部材となる上ケース、12は同下ケース、そして13は多層配線部を有する平板状の配線基板で、下ケース12に保持されている。
そして、上ケース11は上面が操作面となっていて、その中間に設けられた円形の貫通孔11Aから操作部材となる円板状の操作つまみ14の上面14Aが露出しており、配線基板13上には、各種機能の操作用スイッチの固定接点15等が配設されている。
また、操作つまみ14は、下面中心の突部14Bの先端が可撓性絶縁基板16および下面のスペーサ16Aを挟んで配線基板13に当接することによって全方向に傾倒可能に支持されると共に、外周のフランジ部14Cの上面と上ケース11の貫通孔11A周囲下面の間に配設された、上下方向に反発する弾性体としてのリング状の板ばね17の付勢力によって略垂直状態に保たれており、この状態において、操作つまみ14下面の突部14Bを中心とする円形リング状の突出部14Dは、下方の配線基板13上に貼り付けられた可撓性絶縁基板16の上面と、全周において所定の間隔を空けて対峙している。
この可撓性絶縁基板16の下面には、図2に示すような、一様な比抵抗の一様な幅の円形リング状の抵抗素子層18が印刷形成され、その中心に対して対称な位置に、導電部となる所定幅の良導電体部18C,18Dが設けられ、ここから一対の導出部18A,18Bが出されている。
そして、この導出部18A,18Bは、リード部により端部の接続部19A,19Bにそれぞれ導かれ、可撓性絶縁基板16の上面から押圧ばね20により押さえられて、配線基板13上の接続接点21A,21Bに圧接触している。
なお、上記の操作つまみ14下面の円形リング状の突出部14Dの径は、この円形リング状の抵抗素子層18の幅の中間部の径とほぼ等しく設定されている。
そして、可撓性絶縁基板16は、上述のように配線基板13上に貼り付けられているが、円形リング状の抵抗素子層18の部分が配線基板13との間に所定の絶縁ギャップを保つように、抵抗素子層18の内・外周に対応する配線基板13上には、二つの所定厚さの絶縁スペーサ16Bが設けられ、更に、配線基板13上の抵抗素子層18と対向する部分には、第一導電体層22と第二導電体層23が配設されている。
なお、この絶縁スペーサ16Bは、可撓性絶縁基板16に設けてもよい。
そして、上記の第一、第二導電体層22,23は、抵抗素子層18の一対の導出部18A,18Bと対応する位置に設けられた二ヶ所の絶縁部24A,24Bにより、互いに絶縁された太幅の円弧状で、それぞれに導出部22A,23Aを有している。
なお、この二ヶ所の絶縁部24A,24Bの幅は、上記抵抗素子層18の一対の導出部18A,18B根元の良導電体部18C,18Dの幅よりも狭く設定されている。
そして、この導出部22A,23Aは配線基板13の多層配線部(図示せず)を介して、この携帯電話に装着されたマイクロコンピュータ25(以下、マイコン25と表わす)に接続されている(後述の図4参照)。
本実施の形態による多方向入力装置を用いた携帯電話の、多方向入力装置部分は以上のように構成されている。
なお、図2において、26は携帯電話の各種機能の操作用スイッチの可動接点、27は操作釦であり、前記の固定接点15上に可動接点26を貼り付けて構成されるスイッチ接点部を、上ケース11の小孔11Bから露出した操作釦27を押圧することにより動作させるものである。
次に、以上のように構成される多方向入力装置部分の動作について説明する。
図3は本実施の形態による多方向入力装置を用いた携帯電話の外観斜視図、図4は同多方向入力装置の構成を説明する概念図である。
図4に示すように、可撓性絶縁基板16下面の抵抗素子層18の導出部18A,18Bの間に、配線基板13上の接続接点21A,21B(図2参照)を介して、所定の直流電圧が印加された状態において、図3に示す、上ケース11の上面に露出した操作つまみ14の上面14Aの、所望の角度方向である左側(表示部28側)の押圧点29を下方に押圧すると、図1に示した通常状態から図3のP−P線における断面図である図5に示すように、操作つまみ14が、板ばね17の付勢力に抗して、下面の突部14B先端を中心として左側に傾倒する。
そして、押圧点29に対応する、下面の円形リング状の突出部14Dの下押圧点29Aが可撓性絶縁基板16の上面を押して部分的に下方に撓ませ、その下面の抵抗素子層18の接触点30を部分的に下方の第一導電体層22に接触導通させ、抵抗素子層18の導出部18Aと接触点30の間の抵抗値による出力電圧(出力I)が、第一導電体層22の導出部22Aを経由してマイコン25に伝達される(図4参照)。
この時、第二導電体層23の導出部23Aからの出力電圧(出力II)は発生しない。
そして、この状態から、操作つまみ14の上面14Aに加える押力を除くと、板ばね17の付勢力によって、操作つまみ14は元の略垂直状態すなわち図1に示す通常状態に復帰し、可撓性絶縁基板16下面の抵抗素子層18の接触点30は、可撓性絶縁基板16自身の弾性力により第一導電体層22から離れる。
同様にして、操作つまみ14の上面14Aの右側(操作釦27側)を下方に押して右側に傾倒させると、第二導電体層23の導出部23Aからの出力電圧(出力II)がマイコン25に伝達されるが、第一導電体層22の導出部22Aからの出力電圧(出力I)は発生しない。
そして、図4の概念図において、絶縁部24Aを基点(0°)、絶縁部24Bを中点(180°)として、抵抗素子層18の接触点30の角度方向を時計方向に連続的に変化させる場合の、第一導電体層22の導出部22Aからの出力電圧(出力I)および第二導電体層23の導出部23Aからの出力電圧(出力II)の状態を示すのが、図6の多方向入力装置の出力電圧のグラフである。
同図に示すように、操作つまみ14を傾倒させる角度方向が0°〜180°の範囲では出力Iのみが、180°〜360°(0°)の範囲では出力IIのみが発生し、その境界である基点(0°)および中点(180°)においては、抵抗素子層18の接触点30がそれぞれ導出部18A,18B根元の良導電体部18C,18Dの部分となり、この良導電体部18C,18Dの幅は、上述のように、二ヶ所の絶縁部24A,24Bの幅よりも広いので、第一導電体層22と第二導電体層23は良導電体部18Cまたは18Dにより短絡されて両者は同電位となり、出力Iと出力IIはどちらもゼロか同じ大きさの最大値となる。
すなわち、マイコン25に伝達された出力電圧(出力IまたはII)に対し、導出部22Aまたは23Aのどちらが出力電圧を発生したのか、およびその出力電圧の大きさの情報を、マイコン25で組み合わせて演算処理することによって操作つまみ14を傾倒させた角度方向を認識することができるので、操作つまみを繰り返し傾倒操作をすることによって所望の角度方向等の項目を選択することができるものである。
以上のように本実施の形態によれば、多方向入力用の電子部品としての構成が、可撓性絶縁基板16に形成された円形リング状の抵抗素子層18と、これに対向して電子機器の配線基板13に設けられた第一導電体層22、第二導電体層23と、操作つまみ14のみの簡単なものであるから、小型化が容易であると共に、操作つまみ14を所望の方向に傾倒させる際に抵抗素子層18が第一、第二導電体層22,23の一方のみと接触し、その接触点30の抵抗値による出力電圧により、操作つまみ14を傾倒させた角度方向を認識するものであるから、マイコン25等による処理が容易で精度が高く、しかも操作つまみ14を傾倒させる角度方向の分解能すなわち入力方向の分解能が高い多方向入力装置を、配線基板13、上ケース11等の部材を共用して装着した電子機器を実現できるという効果を有するものである。
なお、以上の説明において、多方向入力装置の抵抗素子層18は個別の可撓性絶縁基板16に設けるものとして説明したが、図7の他の構成による、多方向入力装置を用いた電子機器の多方向入力装置部分の分解斜視図に示すように、各種機能の操作用スイッチの可動接点26を可撓性配線基板31に一括して装着する構成とし、この可撓性配線基板31の下面に多方向入力装置の抵抗素子層18を一体に形成することにより、多方向入力装置を用いた電子機器である携帯電話全体としての構成部材数および組立工数が更に少なく、抵抗素子層18の導出部18A,18Bからの配線も容易で、安価な多方向入力装置を用いた携帯電話とすることができる。
さらに、以上の説明においては、円形リング状の抵抗素子層18に一対の導出部18A,18Bを設けた場合について説明したが、図8の他の構成による多方向入力装置の接点部分の分解斜視図に示すように、抵抗素子層32に一対の導出部33A,33Bと、これらとは別の角度位置にもう一対の導出部34A,34Bを設けることによって、操作つまみ14を各導出部の近傍方向へ傾倒する場合の角度方向の分解能を更に高めることができる。
その内容について、簡単に説明すると、まず、上記の抵抗素子層18に一対の導出部18A,18Bを設けた場合には、前記の図5に示すように操作つまみ14を傾倒させると、同図のQ−Q線における断面図であり接点部分の平面図である図9に示すように、操作つまみ14下面の円形リング状の突出部14Dに押圧された可撓性絶縁基板16下面の抵抗素子層18の接触点30は、ある程度の長さの線接触となるが、この傾倒方向が抵抗素子層18の導出部18A,18Bの近傍方向以外の矢印Sの方向である場合には、線接触した接触点30の両側方の抵抗値によって按分された出力電圧が発生し、線接触の中央方向すなわち操作つまみ14を傾倒させた矢印Sの角度方向に対応した出力電圧となる。
しかし、操作つまみ14を導出部18Aの近傍方向である導出部18Aの角度方向から少しだけ時計方向へずれた矢印Tの方向へ傾倒させた場合に、抵抗素子層18の第一導電体層22との接触点30は、導出部18Aが出された良導電体部18Cの端部を含むことになり、この時、第一導電体層22に接続された導出部22Aからの出力電圧(出力I)は、抵抗素子層18の導出部18Aの位置における抵抗値による出力電圧すなわち導出部18Aの電位そのものが出力されることになって、操作つまみ14を傾倒した角度方向が矢印Tの方向ではなく導出部18Aの方向であることを示すことになり、導出部18A,18Bの近傍での操作つまみ14を傾倒させる角度方向の分解能は高くし難いものである。
そこで、前記の図8に示すように、抵抗素子層32に二対の良導電体部33C,33Dおよび34C,34Dと、それぞれから出された導出部33A,33Bおよび34A,34Bを設け、マイコン等を利用してそれぞれ対の導出部33A,33Bおよび34A,34Bへの直流電圧の印加を短い周期で切り換えて、その周期と同期して第一導電体層22および第二導電体層23の導出部22Aおよび23Aの出力を検出するようにすれば、図8に示す接点部分の組立て後の平面図である図10の可撓性絶縁基板の上面から見た平面図に示すように、例えば、操作つまみ14を抵抗素子層32の導出部33Aの近傍方向である矢印U1またはU2点の方向へ傾倒させた場合においても、導出部34A,34Bに直流電圧が印加された時の第一導電体層22の導出部22Aまたは第二導電体層23の導出部23Aの出力電圧は、抵抗素子層32の導出部34A,34Bに印加された電圧を線接触した接触点35の両側方の抵抗値によって按分したものに近いものとなり、線接触している接触点35のほぼ中央、すなわち操作つまみ14を傾倒させた角度方向に対応して出力電圧とすることができて、操作つまみ14を抵抗素子層32の導出部33Aの近傍方向へ傾倒させる角度方向の分解能を高くすることができるものである。
(実施の形態2)
図11は本発明の第2の実施の形態による多方向入力装置を用いた電子機器としての携帯電話の要部断面図、図12は同多方向入力装置の構成を説明する概念図である。
同図に示すように、本実施の形態による多方向入力装置は前記の実施の形態1によるものにおいて、対向して形成された可撓性絶縁基板16下面の円形リング状の抵抗素子層18と配線基板13上の第一導電体層22および第二導電体層23の間の絶縁スペーサ16Bに代えて、導電部として異方性導電体からなる平板状の導通板36を介在させて、両者の間に所定の絶縁ギャップを保つようにしたものであり、その他の部分の構成は、実施の形態1によるものと同じである。
この導通板36は、ゴム基材の厚さ方向に金属粒子を配列させた異方性導電体のシートを円形リング状に加工したものであり、厚さ方向に押圧されることにより、押圧された位置の上下面間の抵抗値が絶縁状態(10MΩ以上)から導通状態(数10Ω以下)へと急激に変化するものである。
次に、この多方向入力装置部分の動作について説明する。
図12に示すように、可撓性絶縁基板16下面の抵抗素子層18の導出部18A,18Bの間に所定の直流電圧が印加された状態において、図11に示す、上ケース11の上面に露出した操作つまみ14の上面14Aの押圧点29を下方に押すと、図13の断面図に示すように、操作つまみ14が板ばね17の付勢力に抗して下面の突部14Bを中心として左側に傾倒し、押圧点29に対応する突出部14Dの下押圧点29Aが可撓性絶縁基板16の上面を押して部分的に下方に撓ませることは、実施の形態1と同じである。
しかし、可撓性絶縁基板16の下方に撓んだ部分の下面の抵抗素子層18の接触点30は下方の導通板36を部分的に押圧し、導通板36の押圧された部分の上下面間のみの抵抗値が急激に低下して絶縁状態から導通状態となり、この部分において、抵抗素子層18の接触点30は導通板36下方の第一導電体層22に導通される。
そして、抵抗素子層18の導出部18Aと接触点30の間の抵抗値による出力電圧が第一導電体層22の導出部22Aを経由してマイコン25に伝達されること、および、この時に第二導電体層23からの出力電圧が発生しないことも実施の形態1の場合と同じである。
また、操作つまみ14の上面14Aに加える押力を除くと、板ばね17の付勢力によって、操作つまみ14は元の垂直状態すなわち図11に示す通常状態に復帰し、可撓性絶縁基板16下面の抵抗素子層18の接触点30は可撓性絶縁基板16自身の弾性力により元の水平状態に戻り、導通板36に部分的に加えられていた押圧力も加わらなくなるため、導通板36の上下面間は全体的に絶縁状態に戻る。
ここで、上記の導通板36を押圧する際に、図13に示すように導通板36の厚さを押し縮めることにより、上下面間の抵抗値を低下させるようにするか、導通板36の厚さは殆ど変わらずに、圧力的な刺激を感じて上下面間の抵抗値を低下させるようにするかは、必要に応じて異方性導電体の材料を変更すればよいものである。
以上のように本実施の形態によれば、操作つまみ14を所望の方向に傾倒させる際に抵抗素子層18が第一、第二導電体層22,23の一方のみと導通し、その接触点30の抵抗値による出力電圧により、操作つまみ14を傾倒させた角度方向を高い分解能で認識することができると共に、抵抗素子層18と第一、第二導電体層22,23の間に所定の絶縁ギャップを確実に確保でき、更に導通板36の押圧された位置の上下間が導通するので、導通板36およびこれを挟む抵抗素子層18と第一、第二導電体層22,23の径を小さくしかも細幅にした小型の多方向入力装置を、配線基板13、上ケース11等の部材を共用して装着した電子機器を実現できるという効果を有するものである。
なお、本実施の形態による多方向入力装置においても、抵抗素子層に二対の導出部を設けることによって、操作つまみ14を各導出部の近傍方向へ傾倒する場合の角度方向の分解能を更に高めることができる。
(実施の形態3)
図14は本発明の第3の実施の形態による多方向入力装置を用いた電子機器としての携帯電話の要部断面図、図15は同多方向入力装置部分の分解斜視図である。
同図に示すように、本実施の形態による多方向入力装置は前記の実施の形態1によるものに対して、多層配線部を有する配線基板37上の円弧状の第一、第二導電体層22,23の中央部およびこれに対向する可撓性絶縁基板38下面の円形リング状の抵抗素子層18の中央部にそれぞれ電気的に独立して、固定接点39および可動接点40を配設してスイッチ接点部41を設けると共に、操作部材となる操作つまみ42の中央に設けた貫通孔42B内にスイッチ駆動用の押釦43を配設してプッシュスイッチ部を付加したものであり、その他の部分の構成は実施の形態1によるものと同じである。
そして、スイッチ接点部41の固定接点39は、図15に示すように、配線基板37上に金属箔の貼付けまたは良導電性インクの印刷等により形成された中心部の小円形の中心接点44とその周辺に設けられたリング状の外側接点45からなり、配線基板37の多層配線部(図示せず)を介して、この携帯電話に装着されたマイクロコンピュータ46(以下、マイコン46と表わす)に接続されている(後述の図16参照)。
また、スイッチ接点部41の可動接点40は、弾性金属薄板を上方凸状の円形ドーム状に打抜き絞り加工したものであり、その外周下端部40Aが上記の外側接点45上に載り、中央凸部40B下面が中心接点44と所定の間隔を空けて対峙するように、可撓性の粘着テープ47により配線基板37上に貼り付けられると共に、中央凸部40B上面が可撓性絶縁基板38の抵抗素子層18中心の丸孔38Aから上方に突出している。
一方、押釦43は、樹脂成形された多段円盤形で、操作つまみ42中央の貫通孔42Bにより、操作つまみ42とは独立して上下動可能に保持されており、操作部材は操作つまみ42と押釦43とにより構成されている。
そして、この押釦43は、通常状態において、下面中心の突部43Bが粘着テープ47を介して上記可動接点40の中央凸部40B上端部に当接することにより、上面43Aが操作つまみ42の貫通孔42Bから露出すると共に、外周のフランジ部43Cが操作つまみ42の下面を所定寸法だけ押し上げていることによって、操作つまみ42外周の板ばね17を少し撓ませて、操作つまみ42をガタツキなく略垂直状態に保っている。
次に、この多方向入力装置部分の動作について説明する。
本実施の形態による多方向入力装置の構成を説明する概念図である図16に示すように、可撓性絶縁基板38下面の抵抗素子層18の導出部18A,18Bの間に所定の直流電圧が印加された状態において、図14に示す、上ケース11の上面に露出した操作つまみ42の上面42Aの所望の角度方向の一点を下方に押圧すると、図17の断面図に示すように、操作つまみ42は中央の貫通孔42Bに保持された押釦43下面中心の突部43Bを中心として押圧された方向に傾倒し、操作つまみ42下面に形成された突出部42Cが可撓性絶縁基板38の上面を押して部分的に下方に撓ませて、その下面の抵抗素子層18を下方の第一導電体層22または第二導電体層23に接触導通させる。
そして、抵抗素子層18の導出部18Aと接触した点の間の抵抗値による出力電圧が第一導電体層22または第二導電体層23の導出部22Aまたは23Aを経由してマイコン46に伝達されること、および、この状態から、操作つまみ42の上面42Aに加える押力を除くと、板ばね17の付勢力によって、操作つまみ42は元の略垂直状態すなわち図14に示す通常状態に復帰し、可撓性絶縁基板38下面の抵抗素子層18は、可撓性絶縁基板38自身の弾性力により第一導電体層22または第二導電体層23から離れることは、実施の形態1の場合と同じである。
なお、この操作つまみ42の傾倒操作時に、可動接点40の反転動作力は、円形ドーム状の可動接点40の中央凸部40Bの上端部に当接した押釦43下面の突部43Bが支点となって操作つまみ42が回動して操作つまみ42外周の板ばね17が撓む大きさに設定されているので、プッシュスイッチ部は動作しない。
以上のようにしてマイコン46に伝達された出力電圧に対し、マイコン46で演算処理することによって操作つまみ42を傾倒させた方向を認識し、認識された角度方向が所望の方向であれば、次に、この方向をマイコン46に記憶させた状態で、操作つまみ42中央の押釦43の上面43Aを押圧する。
この時の状態を示すのが図18の断面図であり、押釦43下面の突部43Bがプッシュスイッチ部の円形ドーム状の可動接点40の中央凸部40Bを下方に押し下げて、可動接点40を節度感を伴って弾性反転させ、中央凸部40B下面を中心接点44に接触させる。
これによって、スイッチ接点部41の外側接点45と中心接点44の間が短絡され、その信号がマイコン46に伝達されて、上記の記憶していた方向が決定と判断される。
そして、押釦43に加える押圧力を除くと、可動接点40は自身の弾性復元力によって元の円形ドーム形状に復帰して図14の状態に戻り、スイッチ接点部41も元のOFF状態に戻る。
なお、このプッシュスイッチ部の操作時に、押釦43は操作つまみ42とは独立して動くように設定されているので、操作つまみ42は下方に少し動くが、可撓性絶縁基板38を押し下げることはない。
以上のように本実施の形態によれば、外径寸法を大きくすることなく、操作つまみ42を傾倒させた角度方向の認識信号に加えて、押釦43を押圧することにより節度感を伴って別の信号を発することができるプッシュスイッチ部を備えた多方向入力装置を、配線基板37、上ケース11等の部材を共用して装着した電子機器を実現できるという効果を有するものである。
(実施の形態4)
図19は本発明の第4の実施の形態による多方向入力装置を用いた電子機器としての携帯電話の要部断面図である。
同図に示すように、本実施の形態による多方向入力装置は前記の実施の形態3によるものに対して、円形リング状の操作つまみ48上面の押圧部48Aが下面の円形リング状の突出部48Cよりも内側にあると共に、押釦43が操作つまみ48中央の貫通孔48Bに小さい隙間で同心状に係合しているものであり、その他の部分の構成、例えば押釦43と操作つまみ48とで操作部材を構成することなどは、実施の形態3によるものと同じである。
すなわち、図19に示すように、携帯電話の上ケース11の貫通孔11Aにリング状の板ばね17を介して支持された操作つまみ48下面の突出部48Cは、操作つまみ48の最大径部分であるフランジ部48Dの外周下面に設けられていて、上面の押圧部48Aの位置は突出部48Cよりもかなり内側となっている。
そして、多層配線部を有する配線基板49上の円弧状の第一、第二導電体層50,51の中央部およびこれに対向する可撓性絶縁基板52下面の円形リング状の抵抗素子層53の中央部に、それぞれ電気的に独立した固定接点39および可動接点40を配設してスイッチ接点部41を設け、操作つまみ48の中央の貫通孔48B内にスイッチ駆動用の押釦43を配設したプッシュスイッチ部を有していることは実施の形態3と同じであるが、配線基板49上の第一、第二導電体層50,51および可撓性絶縁基板52下面の抵抗素子層53の径は、上記の操作つまみ48下面の突出部48Cの径に対応した大きな径となっている。
また、操作つまみ48の貫通孔48B内に小さい隙間で同心状に係合している押釦43は、操作つまみ48に対して独立して上下動可能であるが、通常状態において、下面中心の突部43Bが上記可動接点40の中央凸部40B上端部に当接することにより、上面43Aが操作つまみ48の貫通孔48Bから露出すると共に、外周のフランジ部43Cが操作つまみ48の下面を所定寸法だけ押し上げていることによって、操作つまみ48外周の板ばね17を少し撓ませて、操作つまみ48をガタツキなく略垂直状態に保っていることも実施の形態3の場合と同じである。
次に、この多方向入力装置部分の動作について説明する。
本実施の形態による多方向入力装置を備えた携帯電話において、可撓性絶縁基板52下面の抵抗素子層53の二つの導出部(図示せず)の間に所定の直流電圧が印加された状態において、図19に示す、上ケース11の上面に露出した操作つまみ48の上面の所望の押圧部48Aを下方に押圧すると、まず、図20の断面図に示すように、操作つまみ48は中央の貫通孔48Bに保持した押釦43下面中心の突部43Bを中心として押圧された方向に傾倒し、対応する位置の操作つまみ48下面の突出部48Cが可撓性絶縁基板52の上面を押して部分的に下方に撓ませて、その下面の抵抗素子層53を下方の第一導電体層50または第二導電体層51に接触導通させ、抵抗素子層53の導出部(図示せず)と接触点53Aの間の抵抗値による出力電圧が第一導電体層50または第二導電体層51の導出部(図示せず)を経由してマイコン(図示せず)に伝達され、マイコンで演算処理することによって操作つまみ48を傾倒させた角度方向を仮認識する。
そして、この状態から更に、操作つまみ48の同じ押圧部48Aを下方に押し下げると、今度は、図21の断面図に示すように、操作つまみ48が上記接触点53A上方の突出部48Cの先端を支点として反対方向に傾倒し、中央の貫通孔48Bに保持した押釦43が下方に動き、その下面中心の突部43Bがスイッチ接点部41の円形ドーム状の可動接点40の中央凸部40Bを下方に押し下げて、可動接点40を節度感を伴って弾性反転させ、中央凸部40B下面を中心接点44に接触させる。
これによって、スイッチ接点部41の外側接点45と中心接点44の間が短絡され、その信号がマイコンに伝達されて、上記の仮記憶された角度方向がマイコンに認識される。
すなわち、操作つまみ48を傾倒させた角度方向が節度感を伴ってマイコンに認識される。
ここで、押釦43は操作つまみ48中央の貫通孔48Bに小さい隙間で同心状に係合しているので、操作つまみ48を傾倒させた角度方向に関係なく、プッシュスイッチ部は確実に動作する。
そして、操作つまみ48の押圧部48Aに加える押圧力を除くと、可動接点40は自身の弾性復元力によって元の円形ドーム形状に復帰してスイッチ接点部41はOFF状態に戻り、板ばね17の付勢力によって、操作つまみ48が元の略垂直状態に復帰すると共に、可撓性絶縁基板52下面の抵抗素子層53は可撓性絶縁基板52自身の弾性力により第一導電体層50または第二導電体層51から離れ、元の図19の状態となる。
以上のようにしてマイコンに認識された角度方向が所望の方向であれば、次に、この方向をマイコンに記憶させた状態で、操作つまみ48中央の押釦43の上面43Aを押圧する。
この時の状態を示すのが図22の断面図であり、押釦43下面の突部43Bが円形ドーム状の可動接点40の中央凸部40Bを下方に押し下げて、可動接点40を節度感を伴って弾性反転させ、中央凸部40B下面を中心接点44に接触させる。
これによって、スイッチ接点部41の外側接点45と中心接点44の間が短絡され、その信号がマイコンに伝達されて、上記の記憶していた方向が決定と判断される。
そして、押釦43に加える押圧力を除くと、可動接点40は自身の弾性復元力によって元の円形ドーム形状に復帰して図19の状態に戻り、スイッチ接点部41も元のOFF状態に戻る。
なお、このプッシュスイッチ部の操作時に、押釦43は操作つまみ48とは独立して動くように設定されているので、操作つまみ48は下方に少し動くが、可撓性絶縁基板52を押し下げることはない。
以上のように本実施の形態によれば、操作つまみ48上面の押圧部48Aを押して所望の角度方向に傾倒させることにより抵抗素子層53が第一または第二導電体層50または51と接触して角度方向を認識する際に、節度感によりその認識を感知することができると共に、押釦43のみを押圧することによっても、プッシュスイッチ部が節度感を伴って動作して信号を発する多方向入力装置を、配線基板49、上ケース11等の部材を共用して装着した電子機器を実現できるという効果を有するものである。
(実施の形態5)
図23は、本発明の第5の実施の形態による多方向入力装置を備えた電子機器の要部断面図、図24は、同多方向入力装置部分の分解斜視図である。
同図に示すように、本実施の形態による多方向入力装置は、操作部材200以外の部分を半田付け装着可能な個片の電子部品102として形成したものにより構成されるものである。
まず、その多方向入力用の電子部品102から説明すると、103は絶縁樹脂製からなる電子部品用のケースであり、その上面には、一枚の平坦な導電金属板からなる平面基板104が配されている。
そして、この平面基板104の上方に所定ギャップを空けて可撓性を有する絶縁基板105が固定されている。
この絶縁基板105の下面には、円形リング状の抵抗素子層106および、その抵抗素子層106から外周に向かう放射状に導出部107が90°間隔で形成されていると共に、その抵抗素子層106および導出部107以外の部分には、絶縁スペーサ108が形成されている。
この抵抗素子層106は、一様な比抵抗の一様な幅に形成されている。
なお、図24においては、絶縁基板105の下面に配された抵抗素子層106を判り易くするためにハッチングを施して表記している。
そして、上記絶縁スペーサ108を介在させることによって、平面基板104と絶縁基板105の抵抗素子層106とは、所定間隔を保っている。
そして、109は、円形リング状の抵抗素子層106の外径よりも若干大きく形成された操作用孔109Aを上面部に備えた金属カバーであり、その操作用孔109Aと抵抗素子層106との位置を対応させた状態で、絶縁基板105の抵抗素子層106が形成されていない上面側から被せられ、その上面部に一体形成されたカシメ固定脚部109Bが、絶縁基板105と平面基板104とケース103とを抱き込みケース103底面でカシメ固定されることによって、それらの部材を結合させている。
また、このときケース103に設けられた上方に突出した位置決め突起103Aが、平面基板104、絶縁基板105、金属カバー109のそれぞれに設けられた位置決め孔104A,105A,109Cに同軸上で挿通されて、金属カバー109上に突出した部分をカシメられている。
そして、上記状態において、ケース103に位置決め装着された絶縁基板105下面の抵抗素子層106の導出部107には、ケース103に固定された上方に延出している弾性脚110がそれぞれ所定圧力で弾接している。
そして、この弾性脚110は、図25のケースの上面図に示すように、上面視四角形状のケース103の四箇所の角部に位置するようにインサート成形によって固定され、それぞれの弾性脚110の他方の端部は、ケース103から外方に延出されており、この延出部分が、入力用端子110Aとなっている。
一方、平面基板104には出力用端子111が一体形成され、その出力用端子111は、上記入力用端子110Aと同一面でケース103の外方に突出している。
なお、平面基板104は、上記弾性脚110と接することが無いように、弾性脚110が設けられた位置に対応することとなる角部が加工形成されて切除された形状となっている。
一方、ケース103の中央部には、スイッチ用の中心および外側接点112および113が配設固定され、それぞれのスイッチ端子112Aおよび113Aも、入力用端子110Aおよび出力用端子111と高さ位置を合わせてケース103から外方に導出されている。
そして、この外側接点113上に、上方に突出した円形ドーム状で金属薄板からなる可動接点114が載せられ、その可動接点114上部およびケース103上面部を粘着テープ115で粘着固定することにより、可動接点114は平面基板104と電気的に絶縁された状態でケース103に位置決め装着されている。
そして、この状態で可動接点114の中央部下面は、中心接点112と所定間隔を維持している。
また、この可動接点114の径は、抵抗素子層106の円形リングの内部で構成される円形部の径よりも小さく、かつ両者は中心位置が同軸上で合わされて組込まれている。
そして、その可動接点114の中央部上に対応する平面基板104および絶縁基板105の位置には、押下用孔104Bおよび105Bが構成されている。
この多方向入力操作用の電子部品102は、以上のように構成されるものであり、以下図23を用いて、この電子部品102を組込んだ多方向入力装置について説明する。
同図に示すように、この電子部品102は、ケース103の底部のボス103Bを使用機器の配線基板120の基板貫通孔120Aに挿通させて位置決めされ、それぞれの端子110A,111,112A,113A(同図には出力用端子111しか図示せず。)を配線基板120上の所定配線部にハンダ付け固定することにより装着されている。
そして、この電子部品102の上方に、所定の上下動および傾倒操作が可能な操作部材200が配されている。
この操作部材200は、半球状の球体部201の下面に同心的に形成されたリング状突起202および、その中心にリング状突起202よりも高さの高い中心凸部203を備えている。
そして、この操作部材200の外周部205が、上ケースなどに相当する外装部材206で押え込まれることにより、リング状突起202が、電子部品102の抵抗素子層106に対応した上方位置に、また中心凸部203が、電子部品102の可動接点114中央に対応する上方に位置するように操作部材200は装着されている。
そして、その外装部材206で押え込まれた操作部材200の外周部205と球体部201とは、下方全方位に広がるスカート状の弾性部207で連結され、この弾性部207の作用によって、リング状突起202と絶縁基板105との間、および中心凸部203と可動接点114上の粘着テープ115との間に、所定間隔が維持できるようになっている。
また、球体部201の上面中央部には、操作部208が設けられ、外装部材206の操作用孔206Aから突出している。
そして、この操作用孔206Aの下端部は、球体部201の形状に合わせた球状に加工されており、操作部208に操作力を加えていない図23に示す通常状態では、弾性部207の作用によって押し上げられている状態の球体部201の上方中間部分が、操作用孔206Aの下端部に当接することにより、操作部材200は中立位置を保っている。
本実施の形態による多方向入力装置は、以上のように構成されるものであり、次に、その動作について説明する。
まず、図23に示す操作部材200が中立位置にある通常状態に対し、操作部208に操作部材200を図23中で左側に傾倒させる力を加えると、その方向に対応する左側の弾性部207が撓みながら操作部材200の球体部201が操作用孔206Aの下端部に沿って回動していく。
そして、所定角度まで操作部材200が回動すると、リング状突起202の下方側に移動した部分が対応する絶縁基板105上面に当接してその部分を押し下げ、図26に示すように、その下面に配されている抵抗素子層106の対応部分を平面基板104に接触させる。
このとき、電子部品102の入力用端子110Aの内、所定の二つの入力用端子110A間に所定電圧を印加することによって、上記所定の二つの入力用端子110Aに繋がった二つの弾性脚110および二つの導出部107を介し、抵抗素子層106に上記所定電圧を印加する。
なお、弾性脚110は、導出部107に所定の圧力で弾接しているため、印加電圧は損失少なく抵抗素子層106に確実に伝達されて印加される。
そして、この状態で平面基板104の出力用端子111から第一の出力電圧値を検出する。
この第一の出力電圧値をマイクロコンピュータ等で演算処理することによって、抵抗素子層106が、平面基板104に接触した部分の候補として二箇所を特定する。
さらに、マイクロコンピュータなどを用いて、上記二つの入力用端子110Aの印加を止め、短い高速の周期で上記二つの入力用端子110Aとは異なる二つの入力用端子110Aを介して抵抗素子層106に所定電圧を印加し、出力用端子111から第二の出力電圧値を検出する。
この第二の出力電圧値をも、マイクロコンピュータ等で演算処理することによって、抵抗素子層106が平面基板104に接触した部分の候補として二箇所を特定する。
そして、上記第一の出力電圧値で特定された候補および上記第二の出力電圧値で特定された候補を、マイクロコンピュータ等を用いて比較し、両者で合致する位置を、抵抗素子層106が平面基板104に接触した位置と判定して、操作された操作方向を決定させ、それに合わせて電子機器における所定の制御を行うようにする。
そして、上記操作部材200の操作部208への操作力を除くと、図26に示す撓んだ左側近傍の弾性部207が元の形状に復元し、その復元力で操作部材200は図23に示す中立状態に戻る。
なお、上記には操作部材200を左側に傾倒させた場合について説明したが、抵抗素子層106は、円形リング状に構成されているため、上記に説明した以外の方向に傾倒させても同様な動作となって、360°の全周方向で傾倒操作方向を検出することができる。
また、その接触位置を特定するための第一および第二の出力電圧値の分解能を調節することにより、傾倒操作方向の分解能を設定することも可能となる。
なお、上記の傾倒操作時に、可動接点114は操作部材200の中心凸部203で少し押下力を受けるが、この可動接点114は、上記押下力で作動しない動作力のもので構成されているため、スイッチの状態は切り換わることはない。
一方、操作部材200の操作部208に対して垂直下方への押下力を加えて、球体部201を下方に移動させると、スカート状の弾性部207が全方位に亘って撓んでいき、球体部201下面の中心凸部203の先端が粘着テープ115上面に当接し、粘着テープ115を介して可動接点114を押下していく。
そして、その押下力が所定の力を越えると、可動接点114は、節度感を持って反転動作し、その下面が中心接点112に接し、図27の断面図に示すように、可動接点114を介して中心および外側接点112および113の間、つまりスイッチ端子112Aおよび113A(共に図示せず)間が電気的に導通する。
そして、上記操作部材200の操作部208に対する垂直下方への押下力を除くと、可動接点114およびスカート状の弾性部207が元の形状に復元し、それらの復元力で操作部材200は図23に示す中立状態に戻る。
なお、上記の押下操作時には、操作部材200のリング状突起202は、絶縁基板105に当接しないように構成されている。
このように、本実施の形態による多方向操作装置およびそれを用いた電子機器は、操作部材200に対する傾倒操作方向が、360°の全方向で高分解能に検出できると共に、押下操作によってスイッチの状態を切り換えることができるものである。
そして、この多方向操作装置を備えた電子機器は、操作部材200に対する傾倒操作方向に合わせて制御することにより、例えば表示部に表示されたカーソルを、表示画面上で斜め方向などに容易かつ自在に移動させることができるものとなるため、使い勝手のよいものにでき、さらに、操作部材200に対する押下操作で得られるスイッチ信号を決定・確定信号として用いると、さらに利便性に優れたものにできる。
さらに、操作部材200を傾倒操作した状態を計時して、所定時間以上、同一方向に操作された状態が検出された際、または、所定時間内に同一方向に複数回操作された状態が検出された際に、制御状態を変える、例えば表示部に表示されたカーソルやアイコンの移動速度を可変させるようにしてもよく、上記操作形態は、片手で容易に操作可能なものであるため、さらに使い勝手がよく利便性の優れたものにできる。
なお、本実施の形態による多方向入力装置においては、抵抗素子層106への印加を所定周期で高速に切り換えつつ行うものであるため、上述の計時時間の設定は、上記印加電圧の切換え周期の倍数の時間で設定することが好ましい。
そして、本実施の形態による多方向操作装置は、その傾倒方向や押下の検出部となる部材を電子部品102として小型・薄型に構成したものであるため、取扱いが容易で、他の搭載部品と共に使用機器の配線基板120に実装機等を用いて実装することもできる。
なお、上記の電子部品102においては、スイッチを付加しているものを説明したが、スイッチを構成していないものであってもよい。
(実施の形態6)
図28は、本発明の第6の実施の形態による多方向入力装置を備えた電子機器の要部断面図、図29は同多方向入力装置部分の分解斜視図である。
同図に示すように、本実施の形態による多方向入力装置も、実施の形態5によるものと同様に、操作部材200以外の部分を個片の電子部品302として構成したものであるため、実施の形態5と同様の部分の説明は省略する。
同図において、303は、絶縁樹脂製の電子部品用のケースであり、その上部には絶縁基板304が固定され、その絶縁基板304上には、一様な比抵抗で一様な幅に形成された円形リング状の抵抗素子層305が上面側に露出している。
なお、図29中においても抵抗素子層305を判り易くするためにハッチングを施している。
そして、その抵抗素子層305から外周に向かう放射状に90°間隔で形成された導出部(図示せず)に固定された入力用端子306は、ケース303の側部から外方に突出している。
また、ケース303の上部には、抵抗素子層305から若干の間隔を空けてその外方部分に抵抗素子層305の高さ位置よりも高い平坦外周段部307が構成されており、その平坦外周段部307上に重ねて弾性導電金属板からなる平面基板308が配設されている。
この平坦外周段部307により、抵抗素子層305と平面基板308とは所定ギャップを保っている。
そして、この平面基板308には、出力用端子309が一体形成されており、入力用端子306と同じ高さ位置でケース303の外方に突出している。
そして、310は、円形リング状の抵抗素子層305の外径よりも若干大きく形成された操作用孔310Aを上面部に備えた金属カバーであり、その操作用孔310Aと抵抗素子層305との位置を対応させた状態で、平面基板308の上面側から被せられ、その上面部に一体形成されたカシメ固定脚部310Bが、平面基板308とケース303とを抱き込みケース303底面でカシメ固定されることによって、両部材を結合させている。
また、このときにケース303の上方に突出した位置決め突起303Aは、それぞれ平面基板308、金属カバー310に設けられた位置決め孔308A,310Cに同軸上で挿通されて、金属カバー310上に突出した部分をカシメられている。
一方、このケース303には、その中央部となる抵抗素子層305の円形リングの内部で構成される円形部よりも内側にリング状の内周段部311を有し、その内周段部311内には、スイッチ用の中心および外側接点312および313が配設固定され、それぞれのスイッチ端子312Aおよび313Aもケース303から他の端子と同一高さで外方に延出されている。
そして、この外側接点313上に、円形ドーム状で金属薄板からなる可動接点314が載せられ、その可動接点314上部およびケース303の上面部に粘着テープ315が粘着固定されることにより、可動接点314は位置決めされると共に、平面基板308と電気的に絶縁されている。
そして、このように装着された可動接点314の中央部下面は、中心接点312に対峙して所定間隔を保っている。
なお、ケース303の内周段部311と平坦外周段部307とは同一高さに構成され、可動接点314を粘着固定した状態での粘着テープ315の上面位置は、それらよりも低い高さ位置となっている。
そして、この可動接点314の中央部上に対応する平面基板308の位置には、押下用孔308Bが構成されている。
本実施の形態による多方向入力用の電子部品302は、以上のように構成されるものである。
そして、この電子部品302は、図28にも示してあるように、ケース303の底部のボス303Bを使用機器の配線基板120の基板貫通孔120Aに挿通させて位置決めされ、それぞれの端子306,309,312A,313A(同図には出力用端子309しか表記せず。)を配線基板120上の所定配線部にハンダ付け固定されて装着されている。
そして、この電子部品302の上方に、所定の上下動および傾倒操作が可能な操作部材200が配されている。
この操作部材200は、実施の形態5によるものと同じであり、その形状や外装部材206との配設ならびに係合状態も同じであるため、その説明は省略するが、上記の所定状態で装着された操作部材200において、その球体部201下面のリング状突起202は平面基板308に、また中心凸部203は粘着テープ315に、所定の間隔を持って対向状態で配置されている。
そして、リング状突起202と抵抗素子層305とは、上下方向で位置が合わせられている。
本実施の形態による多方向入力装置は、以上のように構成されるものであり、次に、その動作について説明するが、実施の形態5と同様の部分は、詳細な説明を省略する。
まず、図28に示す操作部材200が中立位置にある状態に対し、操作部材200の操作部208に図28中で左側に傾倒させる力を加えると、その方向に対応する左側の弾性部207が撓みながら球体部201が回動していき、リング状突起202の下方側に移動した部分が平面基板308の対応部分を押し下げ、図30に示すように、その箇所に対応する平面基板308の下面が抵抗素子層305に接触する。
この状態で、電子部品302の入力用端子306の内、所定の二つの入力用端子306間に所定電圧を印加することによって、抵抗素子層305に上記所定電圧を印加し、平面基板308の出力用端子309から第一の出力電圧値を検出する。
この第一の出力電圧値をマイクロコンピュータ等で演算処理することによって、抵抗素子層305が、平面基板308に接触した部分の候補として二箇所を特定する。
さらに、マイクロコンピュータなどを用いて、上記二つの入力用端子306の印加を止め、短い高速の周期で上記二つの入力用端子306とは異なる二つの入力用端子306を介して抵抗素子層305に印加して出力用端子309から第二の出力電圧値を検出する。
この第二の出力電圧値をも、マイクロコンピュータ等で演算処理することによって、抵抗素子層305が、平面基板308に接触した部分の候補として二箇所を特定する。
そして、上記第一の出力電圧値で特定された候補および上記第二の出力電圧値で特定された候補を、マイクロコンピュータ等を用いて比較し、両者で合致する位置を、抵抗素子層305が平面基板308に接触した位置と判定して、操作された操作方向を決定させ、それに合わせて電子機器における所定の制御を行うようにする。
そして、上記操作部材200の操作部208への操作力を除くと、弾性部207および平面基板308が元の形状に復元し、その復元力で操作部材200は図28に示す中立状態に戻る。
また、本実施の形態による電子部品302は実施の形態5によるものと同様に、抵抗素子層305が、円形リング状に構成されているため、上記に説明した以外の方向に傾倒させても同様な動作となって、360°全周方向で傾倒操作方向を容易かつ高分解能で検出することができる。
なお、上記の傾倒操作時に、操作部材200の中心凸部203は、可動接点314を押下しないように構成されていることは実施の形態5の場合と同じである。
一方、操作部材200の操作部208に対して垂直下方への押下力を加えて、球体部201を下方に移動させると、スカート状の弾性部207が撓んでいき、球体部201下面の中心凸部203の先端が粘着テープ315上面に当接した後、粘着テープ315を介して可動接点314を押下していく。
そして、その押下力が所定の力を越えると、可動接点314は、節度感を持って反転動作し、図31に示すように、その下面が中心接点312に接し、可動接点314を介して中心および外側接点312および313の間、つまりスイッチ端子312Aおよび313A間が電気的に導通する。
そして、上記操作部材200の操作部208に対する下方への押下力を除くと、可動接点314、スカート状の弾性部207が元の形状に復元し、それらの復元力で操作部材200は図28に示す中立状態に戻る。
なお、上記の押下操作時には、操作部材200のリング状突起202は、平面基板308に当接しないように構成されている。
このように、本実施の形態による多方向操作装置およびそれを用いた電子機器においては、実施の形態5によるものと同様に、操作部材200に対する傾倒操作方向が、360°の全方向で高分解能に検出できると共に、押下操作によってスイッチの状態を切り換えるものにでき、その傾倒および押下により得られる信号を用いることにより、使い易い高機能のものを容易に実現することができる。
また、本実施の形態のものも、操作部材200以外の部分を電子部品302として小型・薄型に構成したものであるため、取扱いが容易で、他の部品と共に使用機器の配線基板120に実装機などを用いて実装することが可能である。
さらに、この電子部品302は、操作部材200によって操作される部材を弾性金属薄板からなる平面基板308で構成しているため、操作部材200と高い組み合わせ精度で組み合わさずとも全方位の操作方向検出が可能なものを容易に実現でき、また操作部材200により繰り返して操作されても、平面基板308の伸びや変形などが少ないため、長期に亘って安定した操作性を備えたものにできる。
なお、この電子部品302においても、スイッチのないものであってもよい。
(実施の形態7)
本実施の形態は、実施の形態5で説明した多方向入力用の電子部品102に対して異なる操作方法によって操作できるように構成された多方向入力装置を説明するものであり、その電子部品102自体は実施の形態5と同じものであるため、説明を省略し、異なる部分を主として説明する。
図32は、本発明の第7の実施の形態による多方向入力装置を備えた電子機器の要部断面図であり、同図に示すように、多方向入力用の電子部品102は、使用機器の配線基板120上の所定位置にハンダ付けにより装着固定されている。
そして、この電子部品102の上方に、所定の上下動および配線基板120面に対して平行な方向への直線動操作が可能な樹脂製の操作部材400が配されている。
この操作部材400は、中央が、鍔状部401Aを有する円形操作部401となり、その外周に同心状に配された複数のリング状部402が、リング毎に角度位置を変えて連結桟403で連結されたものとなっている(図33参照)。
そして、その最外周リング状部404は、外装部材500に装着され、この状態で円形操作部401の下面中心に設けられた中心凸部405は、電子部品102の中心位置に対して所定の間隔を保って対峙すると共に、円形操作部401の上部406は、その上部406よりも所定範囲で大きく形成された外装部材500の操作用孔501から中心位置を合わせて露出または突出状態になっている。
なお、円形操作部401の中心凸部405は、絶縁基板105下面の抵抗素子層106に干渉しない径で構成されている。
また、円形操作部401の鍔状部401Aは、上記外装部材500の操作用孔501よりも大径に形成されており、その上面は外装部材500下面に摺動可能に当接状態になっている。
そして、この円形操作部401下部には、中心凸部405を中心として下方側に広がるすり鉢状の弾性部材407が装着され、その先端部407Aは、円形リング状の抵抗素子層106よりも外周位置に相当する絶縁基板105上面に弾接している。
つまり、すり鉢状の弾性部材407の下端径は、抵抗素子層106の径よりも大きく、操作部材400が操作されない通常状態において、抵抗素子層106に対して、先端部407Aは同心状に弾接している。
そして、この操作部材400は、弾性部材407の弾性力による上方への付勢力で付勢され、その鍔状部401Aの上面が外装部材500の下面に当接されて、上下方向の位置決めがなされている。
本実施の形態による多方向入力装置は、以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
まず図32に示す操作部材400が操作されない通常状態から、操作部材400の円形操作部401の上部406を水平に操作、つまり配線基板120面に対して平行に直線動させると、複数のリング状部402間の連結桟403で連結されていない部分の間が狭まっていくことにより、円形操作部401の側面が外装部材500の操作用孔501に当接するまで、円形操作部401は水平移動していく。
そして、これに伴って、すり鉢状の弾性部材407も同一方向に移動していき、図34の断面図に示すように、その先端部407Aが、抵抗素子層106が形成された部分に相当する絶縁基板105上面に移動し、弾性部材407自身の弾性力で絶縁基板105を押し下げて、抵抗素子層106の所定位置を平面基板104に接触させる。
このときに、操作部材400下面の中心凸部405は、可動接点114などとは全く干渉しないため、スイッチの状態が切り換わることはない。
なお、上記状態で、その接触位置の検出をする方法などは、実施の形態5の場合などと同様であるため説明を省略するが、本実施の形態によるものは、操作方向に対して180°反対の箇所が検出されるため、それを正規の操作方向に補正して使用する。
そして、操作部材400の円形操作部401への水平な操作力を除くと、複数のリング状部402が元の状態に復元することにより、図32に示す通常状態に戻る。
一方、図32に示す通常状態において、操作部材400の円形操作部401の上部406に垂直下方に向かう押し下げ力を加えると、複数のリング状部402間の連結桟403が少しずつ中央側が低い傾斜状態になっていき円形操作部401は下方に移動する。
このときに、弾性部材407は、外方に広がるように弾性変形し、抵抗素子層106は押し下げられることはない。
そして、円形操作部401下面の中心凸部405が、図35の断面図に示すように、電子部品102の中央位置に配されたスイッチの可動接点114を粘着テープ115を介して押下していき、スイッチをON状態とする。
なお、上記スイッチの動作状態は、実施の形態5と同じであるため、詳細な説明を省略する。
そして、上記操作部材400への押し下げ力を除くと、可動接点114が元の形状に復元してスイッチがOFF状態に戻ると共に、弾性部材407も元の形状に復元し、かつ複数のリング状部402間の連結桟403が配線基板120面に平行な元の状態に復元することによって図32の通常状態に戻る。
このとき、操作部材400の鍔状部401Aの上面が外装部材500の下面に当接することにより、操作部材400は、元の位置に停止する。
このように本実施の形態によるものは、操作部材400を配線基板120面に水平な直線動操作または押下操作して電子部品102を操作するものであるため、使用機器の外装形状をよりスリムに構成できるものである。
なお、弾性部材407としてすり鉢状のものを説明したが、それ以外の形状のものであってもよく、例えば扇形のものを複数個装着しても同様の効果を得られる。
また、操作部材400の直線動操作方向を互いに直交する四方向、または等角度に分割された八方向のみに移動可能に規制してもよく、この場合にはその移動方向に対応する弾性部材のみを装着したものとし、その直線移動操作によってその方向のみの簡素な検出のみをするようにしてもよい。
さらに、電子部品102としてスイッチのないものであってもよく、この場合には、操作部材400の鍔状部401Aの径を、操作部材400の直線動操作した際を含めて、外装部材500の操作用孔501を塞ぐ大きさに構成することにより、使用機器の防塵性能を高めることができる。