JP4366826B2 - エンジンの排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンの排気浄化装置に関し、特に、リーン運転時に発生する排ガス中のNOxを浄化するNOx吸蔵還元型触媒を備えたエンジンの排気浄化装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
車両用等のエンジンに備えられる三元触媒は、排ガス中に含まれるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)等の有害成分を効率よく浄化するものであるが、ウィンドウが理論空燃比(λ=1)近傍の狭い範囲に限られるため、近年における燃費性能の向上を目的とした直噴成層燃焼方式を採用するいわゆるリーンバーンエンジン等ではNOx浄化率が低下するという問題がある。そこで、空燃比がリーン(酸素過剰状態)のときに排ガス中のNOxを吸蔵し、空燃比がリッチ(酸素不足状態)になれば吸蔵していたNOxを還元して放出するNOx吸蔵還元型触媒(リーンNOx触媒)が排気通路に備えられる。
【0003】
この場合、リーン運転が長く継続するとNOx触媒がNOxで飽和状態となるから、触媒のNOx吸蔵能力を回復させるために、定期的に、あるいは、吸蔵NOx量が所定の吸蔵量以上となったときに、排ガスの空燃比をリッチ化することによって、触媒からNOxを放出させることが行なわれる。もちろん運転者の運転操作に応じてリッチ運転や理論空燃比運転が行われたときにもNOxが放出され、触媒のNOx吸蔵能力が回復する。
【0004】
一方、NOx触媒はバリウム(Ba)を用いるため、燃料中に含有されるSOx(イオウ酸化物)等のイオウ成分が付着しやすく、その付着量の増大によりNOx吸蔵能力、すなわちNOx浄化能力が低下するというイオウ被毒の問題がある。これに対処するものとして、NOx触媒に付着したイオウ成分の量が所定の付着量以上となれば、例えば点火時期を遅角したり燃料を分割噴射して排ガス温度を上昇させることによりNOx触媒を昇温させて、イオウ成分をNOx触媒から放出させることが知られている。
【0005】
その場合に、イオウ放出処理を開始するかどうかの判断基準となるイオウ付着量は直接測定することができないため、一般に推定により求められる。したがって、その推定精度が低下し、推定量に誤差があると、いろいろと不具合が生じる。
【0006】
例えば、実際よりも多い量のイオウ付着量が推定されたときは、まだイオウがそれほど付着していないのに早々とイオウ放出処理が開始されたり、すでにイオウが完全に除去されているのに無駄にイオウ放出処理が続けられて、いずれも燃費の点から好ましくない。一方、実際よりも少ない量のイオウ付着量が推定されたときには、すでにイオウが相当量付着しているのになかなかイオウ放出処理が開始されなかったり、まだイオウが完全には除去されていないのに早々とイオウ放出処理が終了してしまって、いずれもイオウ被毒解消の点から好ましくない。
【0007】
そこで、イオウ成分がNOx触媒に吸蔵されずに通過してしまう量を推定値から除いたり、推定イオウ付着量を排ガス温度やすでに触媒に付着しているイオウ付着量に基いて補正する等、イオウ付着量の推定の正確化を図る数々の提案がなされているのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特開平10−100639号公報に開示されるように、推定イオウ付着量は、まず、イオウ成分の発生源である燃料の供給量に基いてその基本値が求められる。しかし、燃料中に含まれるイオウの量は一定ではなくバラツキがあるのが通例であるから、単に燃料供給量に基いてイオウ付着量の基本値を推定している限りは、いくらそれに対して種々の補正を施しても推定精度の抜本的な向上は図られない。また、そうかといって、燃料のイオウ含有量をいちいち測定するわけにもいかず、仮にイオウ含有量を知り得たとしても、その値を燃料が変わるたびに車載コンピュータに入力しなければならない。
【0009】
そこで、本発明は、燃料のイオウ含有量のバラツキによってイオウ付着量の推定精度が低下するという不具合に、合理的、且つ効率的に対処することを課題とする。以下、その他の課題を含め、本発明を詳しく説明する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明者等は、排ガス空燃比がリーンからリッチに切り換わったときにNOx触媒に吸蔵されていたNOxが還元されて発生する酸素に着目した。そして、その酸素濃度が吸蔵NOx量と比例関係にあり、且つ、吸蔵NOx量がNOx触媒に付着したイオウ付着量によって影響を受けることから、結局、リッチ化したときの酸素濃度がNOx触媒のイオウ被毒状態を反映するものであることを利用して、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するため、本願の特許請求の範囲における請求項1に記載の発明は、
酸素過剰雰囲気で排ガス中のNOx成分を吸蔵し、酸素濃度の低下により吸蔵していたNOx成分を還元して放出するNOx吸蔵還元型触媒を排気通路に備えると共に、該触媒に付着したイオウ成分の量を燃料供給量に関連する値に基いて推定する推定手段と、該推定手段で推定されたイオウ成分付着量が所定の付着量以上となったときに該イオウ成分を上記触媒から放出させる放出手段とを備えるエンジンの排気浄化装置であって、上記触媒の下流の酸素濃度を検出する検出手段と、燃焼室から排出される排ガスの空燃比を強制的にリッチ化するイオウ成分推定リッチ化手段と、該イオウ成分推定リッチ化手段により排ガスの空燃比がリッチ化されたときの上記検出手段により検出された酸素濃度に基いて上記推定手段で推定されたイオウ成分付着量を補正する補正手段とを有することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、燃焼室から排出される排ガスの空燃比を強制的にリッチ化し、そのときNOx触媒の下流で検出される酸素濃度に基いて、該触媒への推定イオウ付着量が補正される。これをより具体的に説明すると、まず、図30に示すように、リーン雰囲気ではNOx触媒のバリウムに排ガス中のNOxが吸蔵される。このとき、吸蔵NOx量は触媒のイオウ被毒の影響を受け、イオウ被毒量が多いほど吸蔵NOx量が少なくなる。次に、図31に示すように、リッチ雰囲気になると、吸蔵されていたNOxが、酸化還元反応触媒としての白金(Pt)で反応が促進されつつ、CO,HCで窒素(N2)と酸素(O2)とに還元されて放出される。このとき、放出される酸素は吸蔵NOxに由来するから、このリッチ雰囲気での酸素濃度は吸蔵NOx量に比例する。
【0013】
したがって、このリッチ雰囲気での酸素濃度は、NOx触媒が現にイオウ被毒している程度によって変化し、また、そのイオウ被毒の程度を反映する。それゆえ、燃料供給量に関連する値に基いて推定したイオウ付着量を上記酸素濃度に基いて補正することにより、燃料のイオウ含有量のバラツキに起因する推定精度への影響が是正されることになる。
【0014】
その結果、燃料のイオウ含有量をいちいち測定したり入力操作したりすることなく、空燃比のリッチ化という普通に行なわれる手法を用いて、燃料のイオウ含有量のバラツキによってイオウ成分付着量の推定精度が低下するという不具合に、合理的、且つ効率的に対処することが可能となり、ひいては、過不足なく良好にイオウ放出処理を実行することが可能となる。
【0015】
本発明者等は、NOx触媒下流の酸素濃度を検出する手段として、例えば、酸素濃度が多いほど、すなわちリーン側で出力値が小さく、酸素濃度が少ないほど、すなわちリッチ側で出力値が大きくなる特性のO2センサを用いて鋭意研究、検討を重ねたところ、図32に示すような知見を得た。図中、実線aは、イオウ被毒量が多く、したがって吸蔵NOx量が少ない場合のセンサ出力であり、破線bは、逆にイオウ被毒量が少なく、したがって吸蔵NOx量が多い場合のセンサ出力である。つまり、後者の場合bほど、リーン状態からリッチ状態に切り換えたときに、センサ出力の小から大への立上りxが遅れること、リッチ時間を一定cとしたときのセンサ出力の波形で囲まれる面積yが小さくなること、及びセンサ出力の最大値zが小さくなることを見出したものである。
【0016】
この知見に基き、本発明の好ましい一の態様においては、少なくとも、上記の遅れ時間x、面積(積分値)y、又は出力最大値zの一つを、吸蔵NOx量ないしイオウ被毒量を表わす指標として採用し、その値に応じてイオウ成分の付着量が補正される。
【0017】
なお、ここでいう「強制的に」とは、運転状態を考慮すると本来の燃費性能向上を図るためにリーン運転をすべきところであるが、別異の目的を達成するためにリーン運転を中断して意図的にというほどの意味である。
【0018】
次に、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、定期的に、又は触媒に吸蔵されたNOx成分の量が所定の吸蔵量以上となったときに、触媒からNOx成分を放出させるために排ガスの空燃比をリッチ化するNOx成分放出手段が備えられ、上記イオウ成分推定リッチ化手段は、上記NOx成分放出手段であることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、NOx触媒のNOx吸蔵能力の回復を図るために本来的に必ず行なわれるリッチ化(吸蔵能力回復のためのリッチ化)を利用して、触媒下流の空燃比を検出し、推定イオウ付着量を補正することができるから、空燃比をリッチ化する回数が徒に増えることがなく、リーン運転がむやみに阻害されて燃費性能が損なわれることが抑制される。
【0020】
次に、請求項3に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、定期的に、又は触媒に吸蔵されたNOx成分の量が所定の吸蔵量以上となったときに、触媒からNOx成分を放出させるために排ガスの空燃比をリッチ化するNOx成分放出手段が備えられ、上記イオウ成分推定リッチ化手段は、上記NOx成分放出手段が行うリッチ化の頻度よりも少ない頻度で排ガスの空燃比をリッチ化することを特徴とする。
【0021】
上記請求項2に記載の発明に対して、この発明によれば、まず、吸蔵能力回復のためのリッチ化とはまた別に、本発明に係る推定付着量補正のためのリッチ化、つまり、触媒下流の酸素濃度を検出し、推定イオウ付着量を補正するためのリッチ化が行なわれる。したがって、推定イオウ付着量の補正にとって適切な酸素濃度検出値が得られ、該補正の精度が向上する。
【0022】
すなわち、本発明に係る推定付着量補正のためのリッチ化は、結局のところ、触媒に吸蔵されたNOxを放出させるものであるから、前述したように、吸蔵能力回復のためのリッチ化を利用してもよい。しかし、本発明に係るリッチ化は、燃料のイオウ含有量を問題とし、触媒のイオウ被毒状態をみるものであるから、あまりイオウ被毒が進んでいないときにリッチ化を行っても、有意義な酸素濃度検出値は得られないことになる。
【0023】
ところが、本来的に行なわれる吸蔵能力回復のためのリッチ化は、触媒のイオウ被毒状態とは無関係に、定期的に、あるいは吸蔵NOx量が所定値以上となったときに行なわれるので、あまりイオウ被毒が進んでいないときに行なわれることもあり、このときのNOxの放出を利用して酸素濃度を検出しても、推定イオウ付着量の補正という観点からは適切な検出値が得られない場合が生じ得る。しかも、NOxの吸蔵速度はイオウの付着速度に比べて一般にはるかに大きく、したがって吸蔵能力回復のためのリッチ化は、イオウ被毒がある程度の状態にまで進行する間に何度も頻繁に行なわれるから、この吸蔵能力回復のためのリッチ化は、あまりイオウ被毒が進んでいないときに行なわれることが確率として多い。
【0024】
それゆえ、本発明に係る推定付着量補正のためのリッチ化を、この吸蔵能力回復のためのリッチ化と兼用させた場合は、補正精度の維持、向上に有用でない酸素濃度検出値しか得られない可能性が高く、無駄であると共に、その検出結果に基いて推定イオウ付着量を補正したときには、得られたイオウ付着量の信憑性も低下してしまう。
【0025】
これに対し、この請求項3に記載の発明では、吸蔵能力回復のためのリッチ化とは別に独立して推定付着量補正のためのリッチ化を行なうから、例えばイオウ被毒がある程度の状態にまで進んだ時期を選択して本発明に係るリッチ化を行うことができ、その結果、推定イオウ付着量の補正にとって適切な酸素濃度検出値が得られ、該補正の精度が向上し、ひいては、過不足のない良好なイオウ放出処理の実行が担保される。
【0026】
しかも、その場合に、イオウ被毒がある程度の状態にまで進んだ時期を選択してリッチ化を行うから、吸蔵能力回復のためのリッチ化に比べてはるかに少ない頻度でリッチ化を行えば済む。それゆえ、空燃比をリッチ化する回数が徒に増えることもなく、リーン運転がむやみに阻害されて燃費性能が損なわれることも抑制される。
【0027】
次に、請求項4に記載の発明は、上記請求項3に記載の発明において、上記イオウ成分推定リッチ化手段は、少なくとも、給油がされた後、放出手段が最初にイオウ成分の放出を実行した後において、推定手段が推定したイオウ成分の付着量が所定量以上増加したときに、排ガスの空燃比をリッチ化することを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、推定付着量補正のためのリッチ化を行う時期の一例が示される。まず、この場合、イオウ放出処理が実行されていったんゼロになった推定イオウ付着量が再び所定量まで増加した時期にリッチ化が行なわれるから、イオウ被毒がある程度の状態にまで進んだ時期を選択して本発明に係るリッチ化が行なわれることになり、前述したように、推定イオウ付着量の補正にとって適切な酸素濃度検出値が得られ、該補正の精度が向上する。また、その場合に、推定イオウ付着量の起算値がゼロであることから、該付着量が所定量以上増加したかどうかの判定精度が増す。
【0029】
併せて、給油後に最初にイオウ放出処理が行われた場合において上記のタイミングでリッチ化が行なわれるから、給油によって変化する燃料のイオウ含有量のバラツキによる影響が早い時期に是正される。
【0030】
次に、請求項5に記載の発明は、上記請求項1ないし4のいずれかに記載の発明において、上記イオウ成分推定リッチ化手段は、推定手段で推定されたイオウ成分の付着量に基いてリッチ化の度合又はリッチ化する時間の少なくともいずれかを決定することを特徴とする。
【0031】
この発明によれば、リッチ化度合やリッチ化時間等のリッチ化条件が、推定イオウ付着量に基いて定められる。より具体的には、例えば、推定イオウ付着量に基いて吸蔵NOx量が修正され、該修正吸蔵NOx量に基いて、この吸蔵NOxを放出するためのリッチ化条件が決定される。
【0032】
したがって、NOxの放出という観点からは、吸蔵NOxが、過不足のないリッチ化度合で、あるいは過不足のない時間だけ、適正に放出処理される。その結果、未処理の吸蔵NOxが触媒に残存したり、逆に、過度にリッチ化されて燃費性能が低下するというような不具合が抑制される。
【0033】
一方、推定イオウ付着量の補正という観点からは、吸蔵NOxが全て酸素に還元分解され、充分量の酸素が発生するから、ノイズの少ない明確な酸素濃度検出値が得られ、上記補正の精度が向上する。以下、発明の実施の形態を通して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0034】
【発明の実施の形態】
[システム構成]
図1は本実施の形態に係る直噴成層燃焼式エンジン1の制御システム構成図である。エンジン1の本体2にはピストン3によって画成された複数の燃焼室4(そのうちの一つのみ図示)が設けられている。燃焼室4の上部中央には点火プラグ5が、また側部には燃焼室4内に燃料を直接噴射するインジェクタ6が臨まれている。
【0035】
燃焼室4には吸気弁7及び排気弁8を介して吸気通路9及び排気通路10が接続されている。吸気通路9には上流側からエアクリーナ11、エアフローセンサ12、スロットルバルブ13、及びサージタンク14が配設されている。サージタンク14の下流側は各気筒ごとに分岐した独立吸気通路9aとされ、各独立吸気通路9aの燃焼室4を臨む下流端部が第1通路9bと第2通路9cとに分割されている。第2通路9cにはスワール生成弁15が備えられ、この弁15を閉じると第1通路9bから導入される吸気によって燃焼室4内にスワールが生成する。
【0036】
排気通路10には理論空燃比(A/F=14.7)近傍で排ガス中のCO,HC,NOxを同時に除去する三元触媒16と、排ガス中のNOxを吸蔵して還元浄化するNOx吸蔵還元型触媒(以下単に「NOx触媒」という)17とが直列に配置されている。NOx触媒17は空燃比が例えば理論空燃比よりリーンの状態(λ>1)での運転時に三元触媒16で浄化されずに流れ込んでくるNOxを吸蔵して外部への排出を抑制すると共に、空燃比が例えば理論空燃比近傍ないしそれよりリッチの状態(λ≦1)になったときに吸蔵していたNOxを排ガス中のCO,HCと酸化還元反応させて酸素と窒素とに分解する。
【0037】
NOx触媒17はバリウムを主成分とし、カリウム、マグネシウム、ストロンチウム、ランタン等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、あるいは希土類と、白金等の化学反応触媒作用を有する貴金属とが担持されたNOx吸収材を内装する。
【0038】
排気通路10における三元触媒16の上流側と吸気通路9におけるサージタンク14の上流側との間には排気通路10内を流れる排ガスの一部を吸気通路9に還流する排気還流通路18が設けられている。排気還流通路18には吸気通路9との合流部近傍において排ガスの還流量を調節する排気還流量調節弁19が備えられている。
【0039】
このエンジン1のコントロールユニット(ECU)20は、吸入空気量を検出するエアフローセンサ12からの信号、スロットルバルブ13の開度を検出するスロットル開度センサ21からの信号、排気還流量調節弁19の開度を検出する還流量センサ22からの信号、サージタンク14内の吸気負圧を検出するブーストセンサ23からの信号、インジェクタ6に供給される燃料の圧力を検出する燃圧センサ24からの信号、エンジン本体2内の冷却水の温度を検出する水温センサ25からの信号、三元触媒16の上流側に設けられ、燃焼室4から排出される排ガス中の残存酸素濃度から燃焼室4に供給されている混合気の空燃比が理論空燃比よりリッチかリーンかを検出するO2センサでなる第1空燃比センサ26からの信号、三元触媒16とNOx触媒17との間に設けられ、NOx触媒17に流入する直前の排ガス温度を検出する排気温センサ27からの信号、NOx触媒17の下流側に設けられ、NOx触媒17を通過した排ガス中の残存酸素濃度を検出するO2センサでなる第2空燃比センサ28からの信号、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転センサ29からの信号、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量を検出するアクセル開度センサ30からの信号、吸気の温度を検出する吸気温センサ31からの信号、大気圧を検出する大気圧センサ32からの信号等を入力し、これらの信号が示すエンジン1の運転状態等に応じて、スロットルバルブ13を駆動するアクチュエータ33、排気還流量調節弁19、インジェクタ6、スワール生成弁15を駆動するアクチュエータ34、点火プラグ5を点火させる点火回路35等に制御信号を出力することにより、スロットル開度制御、排ガス還流制御、燃料噴射量制御、燃料噴射時期制御、スワール生成制御、点火時期制御等のほか、NOx触媒17によるNOx浄化制御、NOx触媒17のイオウ被毒解消制御等を総合的に行う。
[空燃比マップ]
図2はエンジン1の目標空燃比マップである。エンジン回転数とエンジン負荷とをパラメータとするエンジンの運転領域が、低回転〜中回転且つ低負荷〜中負荷領域に設定された第1領域Aと、高回転且つ高負荷領域に設定された第2領域Bと、これらの領域A,B間に設定された第3領域Cと、所定エンジン回転数以上の低負荷領域に設定された第4領域Dとに分割されている。
【0040】
最も運転頻度の高い第1領域Aは空燃比を理論空燃比より大きくする(λ>1)リーン運転領域である。この領域Aでのリーン運転時は燃料を圧縮行程中に噴射し(後期噴射)、燃料を点火プラグ5の近傍に偏在させて成層燃焼させる。リーン運転時は排ガス中のNOxがNOx触媒17に吸蔵されて燃費性能と排気性能とが共に向上する。
【0041】
高速運転時や加速時等の運転領域である第2領域Bは空燃比を理論空燃比より小さくする(λ<1)リッチ運転領域である。この領域Bでのリッチ運転時は燃料を吸気行程中に噴射し(前期噴射)、燃料を燃焼室4内で充分に気化霧化させる。リッチ運転時はNOx触媒17に吸蔵されていたNOxとCO,HCとが酸化還元反応して良好なトルクが得られると共に排気性能が向上する。
【0042】
第3領域Cは空燃比を理論空燃比にする(λ=1)理論空燃比運転領域である。この領域Cでの理論空燃比運転時はリッチ運転時と同様に燃料を吸気行程中に噴射し(前記噴射)、燃料を燃焼室4内で充分に気化霧化させる。理論空燃比運転時は排ガス中のCO,HC,NOxが三元触媒16によって同時に浄化される。
【0043】
第4領域Dは燃焼室4内への燃料噴射を停止する燃料カット(F/C)領域である。
[NOx触媒によるNOx浄化制御−NOx放出処理]
図3はNOx浄化制御のために行う空燃比制御の具体的動作の一例を示すタイムチャートである。リーン運転領域Aでのリーン運転の継続に伴いNOx触媒17に吸蔵されるNOx量が増加していく。これをそのまま放置するとそのうち飽和状態となり、NOx触媒17の浄化能力が低下するから、吸蔵したNOxを酸素と窒素とに分解放出させて触媒17の吸蔵能力を回復させるための処理、すなわち吸蔵能力回復のための空燃比のリッチ化が行なわれる。
【0044】
このリッチ化は、例えば、図中破線アで示したように、所定の周期T1で、所定の時間t1だけ、排ガスの空燃比を少なくともリーン運転時の空燃比よりもリッチ側にシフトする(例えば図例のように理論空燃比とする。あるいはそれ以上にリッチとする)ことで達成される。この場合、処理周期T1は、NOx触媒17がNOx飽和状態になるより短い周期に予め実験的に設定される。また、処理時間t1は、リッチ化の度合との関係で吸蔵NOxが全て還元放出される時間に予め実験的に設定される。
【0045】
このような定期的なリッチ化に代えて、吸蔵NOxの還元放出をより良好に過不足なく行うために、例えば、図4に示したフローチャートに従ってリッチ化を行ってもよい。この場合のNOx吸蔵量の時間変化を図3に実線イで示す。
【0046】
すなわち、ステップS1で、エンジン回転数やエンジン負荷等のエンジン1の運転状態に基いてNOx吸蔵量の基本値(基本NOx吸蔵量)Qnoxaを推定する。次に、ステップS2で、数1に従って、その基本NOx吸蔵量Qnoxaを後述するイオウ被毒解消制御で用いる推定イオウ付着量Qssに基いて修正することにより修正NOx吸蔵量Qnoxsを算出する。
【0047】
【数1】
【0048】
ここで、上記推定イオウ付着量Qssは、NOx触媒17に実質的にNOxがまったく吸蔵されなくなるときの付着量を1とし、まったく付着していないときの付着量をゼロとした場合におけるゼロから1までの値(割合)として上記式に代入される。
【0049】
そして、ステップS3で、その修正NOx吸蔵量Qnoxsが所定の吸蔵量Qnox1以上となれば、ステップS4で、排ガスの空燃比を上記のように少なくともリーン運転時の空燃比よりもリッチ側にシフトする(例えば図3に例示したように理論空燃比とする。あるいはそれ以上にリッチとする)。
【0050】
そして、ステップS5で、このリッチ化時間が所定時間t2を経過したときに、ステップS6で、リッチ化を終了し、空燃比を元のリーンの状態に復帰させる。この場合、上記処理時間t2は、リッチ化の度合との関係で上記所定NOx吸蔵量Qnox1が全て還元放出される時間に予め実験的に設定される。
【0051】
NOx触媒17に吸蔵されたNOxは、このように定期的あるいは不定期的に放出処理されるほか、運転者の運転操作に応じて、例えば、図3に鎖線ウ、エで示したように、運転領域がリーン運転領域Aから理論空燃比運転領域Cに切り換わったときやリッチ運転領域Bに切り換わったときにもNOx触媒17から放出され、該触媒17のNOx吸蔵能力が回復する。
【0052】
さらに、吸蔵NOxは、後述するイオウ被毒解消制御や該制御で用いられる推定イオウ付着量Qssの補正制御においても空燃比がリッチ化されて同様にNOx触媒17から放出される。
[NOx触媒のイオウ被毒解消制御]
図5はNOx触媒17のイオウ被毒解消制御の具体的動作の一例を示すタイムチャートである。NOx触媒17はバリウムを含有するので、燃料中のイオウ成分が触媒17に付着するというイオウ被毒の問題がある。これをそのまま放置するとNOx浄化能力が低下するから、付着したイオウを放出させて触媒17の浄化能力を回復させるための処理、すなわちイオウ被毒解消のためのNOx触媒17の昇温が行なわれる。
【0053】
このNOx触媒17の昇温は、燃料の分割噴射や点火時期の遅角により排ガス温度を上昇させることで達成される。イオウ被毒は空燃比がリーンのときほど進行しやすく、リッチになるほど遅くなる。例えば、図中鎖線カで示したように、空燃比が理論空燃比のときはイオウ被毒がほとんど停滞し、図中鎖線キで示したように、空燃比が理論空燃比よりリッチになると却ってイオウの放出が始まる。したがって、このイオウ被毒解消制御では空燃比をリッチ化したうえでNOx触媒17を昇温してイオウの放出を促進する。
【0054】
また、リーン状態でのイオウの付着速度はNOxの吸蔵速度に比べてはるかに遅い。したがって、このイオウ被毒解消制御は前述のNOx浄化制御に比べて実行される頻度が少なく、例えばこのイオウ被毒解消制御が一回行われる間にNOx浄化制御は何度も繰り返し行われる。図5と図3のタイムチャートでは時間間隔は必ずしも同一には表わしていない。
【0055】
図6はイオウ被毒解消制御の具体的動作の一例を示すメインフローチャートである。このプログラムはイグニッションスイッチがオンである期間中、例えば、燃料噴射量制御、燃料噴射時期制御、点火時期制御等と無関係に繰り返し実行される。
【0056】
まず、ステップS11で、イオウ被毒時間Tsを計測する。このイオウ被毒時間Tsは、NOx触媒17のイオウ被毒がほぼ完全に解消した時刻からの経過時間である。すなわち、イオウ被毒がほぼ完全に解消したのち初めてこのステップS11に進んだときは、イオウ被毒時間Tsはあらためてゼロから起算され、それ以外のときは以前からの計測が続行される。
【0057】
次に、ステップS12で、リーン運転の連続継続時間Tlnを計測する。すなわち、図7に示すように、ステップS41でリーン運転か否かを判定し、リーン運転のときはステップS42でリーン継続時間Tlnを計測する一方、リーン運転でないときはステップS43でリーン継続時間Tlnをリセットする。ただし、リーン継続時間Tlnをリセットしたときは、それまでステップS42で計測したリーン継続時間Tlnの最後の値をメモリに格納する。これにより、リーン運転がNOx浄化制御によって中断したり、運転者の運転操作に応じて中断したり、あるいは後述する推定イオウ付着量Qssの補正制御によって中断したときは、それまで行なわれていたリーン運転の連続継続時間Tlnがメモリに残存する。
【0058】
メインフローに戻り、次に、ステップS13で、NOx触媒17へのイオウ付着量Qss、すなわちNOx触媒17のイオウ被毒状態を推定する。このイオウ付着量Qssの推定は、図8のフローチャートに従って行われ、ステップS51で、各種のデータを読み込んだうえで、ステップS52で、前回イオウ付着量Qssを推定してから今回イオウ付着量Qssを推定するまでの間にインジェクタ6から噴射された燃料の量(燃料供給量)Qfを算出する。
【0059】
次に、ステップS53で、上記燃料供給量Qfに基づいて、前回イオウ付着量Qssを推定してから今回イオウ付着量Qssを推定するまでの間に増加したイオウ付着量(すなわち、単位時間当たりにNOx触媒17に付着したイオウ付着量の瞬時値)の基本値(基本イオウ増加量)Qsaを推定する。ここで、この基本イオウ増加量Qsaは、図9に示すように、イオウの発生源である燃料の供給量Qfにほぼ比例するように推定される。
【0060】
次に、ステップS54で、数2に従って、上記基本イオウ増加量Qsaを後述する推定イオウ付着量Qssの補正制御で算定される燃料のイオウ含有量予測値Kfssに基いて補正することにより補正基本イオウ増加量Qsbを算出する。
【0061】
【数2】
【0062】
ここで、上記予測値Kfssは、いままで考慮していた燃料のイオウ含有量を1とした場合の係数(割合)として上記式に代入される。すなわち、燃料のイオウ含有量にはバラツキがあるから、単に燃料供給量Qfに基いて推定した上記の基本イオウ増加量Qsaには実際のイオウ付着量との間にずれがあるので、そのずれを是正してイオウ付着量の推定精度の向上を図るのである。
【0063】
なお、例えば同じ燃料を使っていてイオウ含有量が変わらなければ、この燃料イオウ含有量予測値(係数)Kfssはほぼ1となる。この予測値Kfssの算定については推定イオウ付着量の補正制御で詳しく述べる。
【0064】
次に、ステップS55〜S57で、上記補正基本イオウ増加量Qsbに対する補正係数K1,K2,K3をそれぞれ設定する。すなわち、ステップS55では排気温センサ27で検出された排ガス温度Tmpに基づいて第1補正係数K1を、ステップS56では上記ステップS42で計測されたリーン運転継続時間Tlnに基づいて第2補正係数K2を、そして、ステップS57では推定イオウ付着量の前回値(既イオウ付着量)Qss[i−1]に基づいて第3補正係数K3を設定する。
【0065】
ここで、第1補正係数K1は、図10に示すように、所定の排ガス温度Tmpaをピークにそれより高くなってもまた低くなっても小さい値に設定される。また、第2補正係数K2は、図11に示すように、所定のリーン運転継続時間Tlnaをピークにそれより長くなってもまた短くなっても小さい値に設定される。また、第3補正係数K3は、図12に示すように、所定の既イオウ付着量Qssa[i−1]より多くなったときに小さい値に設定される。
【0066】
特に第2補正係数K2が上記のような特性であるのはおよそ次のような理由による。すなわち、リーン運転継続時間Tlnが長いときは、図13に示すように、NOx触媒17に用いられているバリウムにすでに多量のNOxやイオウが付着している。そのため、新規にイオウがバリウムに付着し難くなり、単位時間あたりのイオウ付着量が減少する。
【0067】
また、リーン継続時間Tlnが短いときは、図14に示すように、イオウとバリウムとの接触時間が短くなり、これらの間に強固な結合が生成し難くなる。そのため、次に理論空燃比運転やリッチ運転に切り換わったときに、イオウがNOx同様放出されやすくなり、やはり単位時間あたりのイオウ付着量が減少する。
【0068】
つまり、時間の経過とともに累積のイオウ付着量Qssは増加するにしても、例えば、同じ5分間のリーン運転であっても、1分間のリーン運転を5回行ったときに比べて、5分間のリーン運転(図11に示す所定のリーン運転継続時間Tlnaに相当する)を1回行ったときのほうが、イオウ付着量の累積総量が多くなる。また、例えば、同じ20分間のリーン運転であっても、20分間のリーン運転を1回行ったときに比べて、5分間のリーン運転(同じく図11に示す所定のリーン運転継続時間Tlnaに相当する)を4回行ったときのほうが、やはりイオウ付着量の累積総量が多くなる。
【0069】
したがって、リーン運転を連続して行う時間を、上記所定時間Tlnaを避けてそれより短くするかあるいは長くすることが、NOx触媒17にイオウを付着させ難くする観点からは有利となる。例えば、前述のNOx浄化制御において吸蔵能力回復のための空燃比のリッチ化を定期的に行う場合に(図3における符号ア)、その周期T1を上記所定時間Tlnaより短く設定するとよい。
【0070】
図8のサブフローに戻り、次に、ステップS58で、数3に従って、補正基本イオウ増加量Qsbに上記第1〜第3補正係数K1,K2,K3を乗算することにより補正イオウ増加量Qscを算出する。
【0071】
【数3】
【0072】
そして、ステップS59で、数4に従って、上記補正イオウ増加量Qscを既イオウ付着量Qss[i−1]に加算することにより今回の推定イオウ付着量Qssを算出する。
【0073】
【数4】
【0074】
なお、イオウ被毒は、排ガスが先に流入するNOx触媒17の上流部分から優先して始まる。つまり、NOx触媒17にはイオウ成分が一様には付着せず、イオウ成分は排ガスの通過経路に沿って偏って付着する。それゆえ、イオウ付着量Qssを推定するにあたり、NOx触媒17を排ガスの通過経路に沿って一般にn個のブロックに分割して考え、各ブロック毎にイオウ付着量Qss[j](j=1〜分割数n)を推定して、その総和(Qss[1]+…+Qss[n])を触媒17全体のイオウ付着量Qssとすることができる。この場合、上流側のブロックのイオウ付着量Qss[j]は下流側のブロックのそれに比べて多く推定される。あるいは、各ブロック毎に推定したイオウ付着量Qss[j]の平均値((Qss[1]+…+Qss[n])/n)を触媒17のイオウ付着量Qssを代表する値として取り扱うこともできる。このような考え方については後のステップS21のイオウ残存量Qzsの推定でさらに詳しく述べる。
【0075】
メインフローに戻り、次に、ステップS14で、フラグFが1にセットされているか否かを判定する。このフラグFは、要するに、NOx触媒17がイオウ被毒を解消すべき状態にあるかどうかの指標となるフラグであり、解消すべき状態にあるときは1にセットされ、ないときはゼロにリセットされる。
【0076】
そして、このステップS14で、フラグFが1にセットされていないときは、ステップS15において、ステップS13で推定したイオウ付着量Qssが予め設定された判定基準量Qs1以上か否かを判定し、判定基準量Qs1以上のときは、ステップS16で、上記フラグFを1にセットしたうえで、ステップS17以下に進む。これに対し、ステップS15で、推定イオウ付着量Qssが判定基準量Qs1未満のときは、ステップS12に戻る。また、ステップS14で、フラグFがすでに1にセットされているときは、ステップS15,S16をスキップして、直ちにステップS17以下に進む。
【0077】
ここで、上記判定基準量Qs1は、例えば、NOx触媒17のNOx浄化能力が80%にまで低下するときのイオウの付着量等に設定される。すなわち、上記フラグFは、NOx触媒17のNOx浄化能力がNOxエミッションに影響を及ぼすほどに低下するぐらいの量のイオウ成分が該触媒17に付着しているかどうかを表示するイオウ除去要求フラグである。
【0078】
次に、ステップS17では、NOx触媒17に対するイオウ放出処理実行時の排ガス温度Tmpの標準的な目標値である第1目標温度Tmp1を設定する。この第1目標温度T1は、ステップS11で計測したイオウ被毒時間Tsに基づいて設定される。その場合に、図15に示すように、第1目標温度Tmp1は、例えば650℃と700〜750℃との間の温度に設定され、イオウ被毒時間Tsが長いときは、短いときに比べて、高い温度に設定される。また、第1目標温度Tmp1を、さらに、ステップS13で推定したイオウ付着量Qssに基づいて補正してもよい。その場合も、図15に準じて、第1目標温度Tmp1は、推定イオウ付着量Qssが多いときは、少ないときに比べて、高い温度に補正される。
【0079】
次に、ステップS18で、イオウ放出処理実行時の排ガス温度Tmpの最終目標値Tmpsを設定する。すなわち、上記ステップS17で設定した第1目標温度Tmp1と、後述するステップS29で設定した第2目標温度Tmp2とを比較し、高いほうを最終的に目標排ガス温度Tmpsとして選択するのである。
【0080】
なお、第2目標温度Tmp2は第1目標温度Tmp1よりも一般に高い値に設定される。また、第1目標温度Tmp1が常に設定されるのに対し、第2目標温度Tmp2は常に設定されるとは限らない。つまり、第2目標温度Tmp2が設定されていないときは第1目標温度Tmp1が最終目標温度Tmpsとされ、第2目標温度Tmp2が設定されたときは第2目標温度Tmp2が最終目標温度Tmpsとされる傾向にある。
【0081】
なお、ステップS20のイオウ放出処理では、この最終目標排気ガス温度Tmpsが実現するように、燃料の分割噴射や点火時期のリタードが行なわれ、その結果、NOx触媒17に付着したイオウ成分が除去される。その場合に、ステップS20のイオウ放出処理の開始時における一定期間だけ、正規に設定された上記の最終目標排ガス温度Tmpsよりも所定温度高い温度を最終目標温度としてもよい。これにより、排ガス温度Tmpの立ち上がりが促進され、イオウ成分が放出処理開始後速やかに除去され始める。図15に示す鎖線タは、例えば第1目標温度Tmp1が最終目標排ガス温度Tmpsに選択された場合において、そのようにイオウ放出処理の開始時一定期間だけ採用する高い目標温度を例示するものである。
【0082】
次いで、ステップS19で、イオウ放出実行許可条件が満足されているか否かの判定を行う。ここでは、車速Vがイオウ放出処理を実行しても不具合のない所定車速V1以上であるか否かが判定される。
【0083】
イオウ放出実行許可条件を車速で設定したのは、低車速時にイオウ放出処理のために分割噴射や点火時期のリタードを行っても、排ガス温度Tmpがイオウ放出可能温度である目標温度Tmps(例えばこの実施の形態でいうと、図15よりTmps≧650℃)まで上昇せず、効率のよいイオウ放出処理が実現しないこと、低車速時にイオウ放出処理のために分割噴射や点火時期のリタードを行うと、エンジン出力が過度に不安定化することなどの理由による。
【0084】
しかし、イオウ放出実行許可条件は、これに限られず、一般に、イオウ放出処理を実行することにより何らかの不具合が随伴する、あるいは随伴する不具合が相対的に大きくなるような状況を排除する目的で他のパラメータを用いて設定してもよい。
【0085】
そして、車速Vが上記所定車速V1以上であると判定した場合は、ステップS20に進んでイオウ放出処理を実行する。一方、車速Vが上記所定車速V1以上でないと判定した場合には、イオウ放出処理を実行せずにステップS28に進む。
【0086】
ステップS20のイオウ放出処理は、図16に示すフローチャートに従って行なわれる。まず、ステップS61で、現在用いている図2に示す通常時の目標空燃比マップを、例えば図17に示すようなイオウ放出処理時の目標空燃比マップに切り換える。ここで、このイオウ放出処理時の目標空燃比マップにおいては、全運転領域が理論空燃比領域Cとされている。すなわち、現在行なわれているリーン運転を禁止して強制的に理論空燃比運転とすると共に、燃料カット(F/C)を禁止するのである。理論空燃比運転とすることにより、排ガス中のCO,HC濃度が高くなり、NOx触媒17に付着したイオウ成分が放出され易い環境が生成される。また、燃料カットを禁止することにより、燃料が常に供給され、燃料噴射制御を利用したイオウ放出処理が安定して遂行される。
【0087】
次いで、ステップS62で、現在の運転状態が分割噴射領域にあるか否かを判定する。つまり、現在のエンジン1の運転状態が、イオウ放出のための排ガスの昇温を燃料の分割噴射によって行う運転領域内にあるかどうかを判定するのである。ここで、分割噴射領域は、図17のイオウ放出処理時のマップにおいて、中回転中負荷領域(斜線を施した全部分)に設定されている。
【0088】
分割噴射領域である場合は、ステップS63,S64で、燃料の後期噴射量Qfksおよび後期噴射時期θfksを設定する。ここで、後期噴射とは、図2の通常時マップと同様、燃料を圧縮行程中に噴射することであり、燃料を吸気行程中に噴射する前期噴射に比べて燃料の気化霧化が進まず、未燃成分が増加する。
【0089】
ステップS63での後期噴射量Qfksの設定は、数5に従って、吸入空気量などから別途定められる全燃料噴射量Qftsに、後期噴射量係数K4,K5(いずれも1未満の値)を乗算することにより行なわれる。
【0090】
【数5】
【0091】
ここで、第4の補正係数である第1後期噴射量係数K4は、図18に示すように、目標排ガス温度Tmps(イオウ放出処理の開始時一定期間は目標排ガス温度Tmpsを所定温度だけ高くする場合も含む)に基いて定められ、目標温度Tmpsが高いほど大きな値に設定される。また、第5の補正係数である第2後期噴射量係数K5は、図19に示すように、実排ガス温度Tmpに基いて定められ、実排ガス温度Tmpが低いほど大きな値に設定される。したがって、目標排ガス温度Tmpsが高いほど、また、実排ガス温度Tmpが低いほど、後期噴射量Qfksが多くなる。その結果、燃料の未燃成分が一層増加し、NOx触媒17がより速やかに昇温される。
【0092】
一方、ステップS64では、後期噴射時期θfksは、エンジン負荷が低いときほどより遅くなるように設定される。したがって、低負荷時ほど、後期噴射時期θfksが遅くなり、燃料の気化霧化がなお一層進まず、未燃成分がより増加して、NOx触媒17がより速やかに昇温される。
【0093】
このようにして設定された後期噴射量Qfks及び後期噴射時期θfksはインジェクタ6に制御信号として出力され、エンジン1に対する燃料噴射量及び燃料噴射時期の制御に用いられる。
【0094】
次いで、ステップS65で、リタード(遅角)制御領域か否かを判定する。つまり、現在のエンジン1の運転領域が、イオウ放出のための排ガスの昇温を点火時期のリタードによって行う運転領域内にあるかどうかを判定するのである。ここで、リタード制御領域は、図17のイオウ放出処理時のマップにおいて、分割噴射領域のうちの低負荷側の領域(ラインDより下の密に斜線を施した部分)に重ねて設定されている。すなわち、このリタード制御領域では、燃料の分割噴射と点火時期のリタードとの両方が行なわれる。
【0095】
リタード制御領域である場合は、ステップS66で、リタード量を設定する。特に、このステップS66では、リタード量は、実排ガス温度Tmpが目標温度Tmpsに収束するようにフィードバック制御される。
【0096】
ステップS66のリタード量の設定およびそのフィードバック制御は図20に示すフローチャートに従って行なわれる。まず、ステップS71で、排気温センサ27で検出される実排ガス温度Tmpを読み込んだうえで、ステップS72で、リタード制御の実行開始時か否かを判定する。
【0097】
そして、リタード制御の開始時の最初の一回だけステップ73に進み、実排ガス温度Tmpが目標温度Tmps以上であるか否かを判定する。その結果、実排ガス温度Tmpが目標温度Tmps以上のときは、ステップS74で、基本リタード量として、予め設定された高温用リタード量を設定する。一方、実排ガス温度Tmpが目標温度Tmps以上でないときには、ステップS75で、基本リタード量として、予め設定された低温用リタード量を設定する。
【0098】
ここで、低温用リタード量は、高温用リタード量に比べて、大きなリタード量に設定されている。これにより、排ガス温度Tmpが低いときは、高いときに比べて、より程度の大きい昇温が図られる。
【0099】
一方、リタード制御の開始時でないとき、つまりリタード制御がすでに開始しているときは、ステップS76に直接進み、実排ガス温度Tmpが目標温度Tmps以上であるか否かを判定する。その結果、実排ガス温度Tmpが目標温度Tmps以上のときは、さらにステップS77で、実排ガス温度Tmpが目標温度Tmpsよりヒステリシスの増分ΔTmpだけ高い温度(Tmps+ΔTmp)以上であるか否かを判定する。そして、そうであるときには、ステップS78で、リタード量を所定量だけ減量する。
【0100】
一方、ステップS77で、実排ガス温度Tmpが目標温度Tmps以上で、ヒステリシスの増分ΔTmpだけ高い温度(Tmps+ΔTmp)未満であるときには、リタード量をそのまま維持する。
【0101】
さらに、ステップS76で、実排ガス温度Tmpが目標温度Tmps以上でないと判定されたときは、ステップS79で、リタード量を所定量だけ増量する。
【0102】
このようにして設定された点火時期のリタード量は点火プラグ5の点火回路35に制御信号として出力され、エンジン1に対する点火時期の制御に用いられる。
【0103】
以上により、図16のイオウ放出処理のフローチャートおよび図17のイオウ放出処理時の空燃比マップから明らかなように、エンジン1の運転状態が中回転中負荷領域のうちの高負荷側にある場合(ステップS62で肯定的判定およびステップS65で否定的判定の場合)は、排ガスの昇温のために分割噴射のみ行われる。また、エンジン1の運転状態が中回転中負荷領域のうちの低負荷側にある場合(ステップS62で肯定的判定およびステップS65でも肯定的判定の場合)は、分割噴射と点火時期のリタードとが併せて行われる。
【0104】
しかし、エンジン1の運転状態がもともと中回転中負荷領域にない場合(ステップS62で否定的判定の場合)には、分割噴射も点火時期のリタードも行なわれない。つまり、低回転低負荷時、および高回転高負荷時には、排ガスの昇温が実質的に行なわれないのである。
【0105】
これは、低回転低負荷領域では、排ガス温度Tmpがもともと低く、排ガスの昇温を行ってもイオウ放出処理実行可能な目標温度Tmpsまで上昇しない可能性があると共に、排ガスの昇温を行うとエンジン1の出力状態が不安定となる可能性があるから、そのような無駄を回避する目的である。
【0106】
一方、高回転高負荷領域では、排ガス温度Tmpがもともと高く、わざわざ排ガスの昇温を行わなくてもイオウ放出が行なわれる可能性があると共に、排ガスの昇温を行うとNOx吸収材ひいてはNOx触媒17が過度に高温となって損傷する可能性があるから、やはりそのような無駄を回避する目的である。
【0107】
そして、このような対策を講じることにより、分割噴射やリタードを用いた排ガスの昇温に随伴して発生する燃費の悪化やトルクの低下などの不具合もまた必要最小限に抑制される。
【0108】
さらに、エンジン1の運転状態が中回転中負荷領域にあり、排ガスの昇温を行う場合においても、基本的には、排ガスの昇温を分割噴射で行い、排ガス温度が相対的に低く、より大きな程度に昇温する必要のある低負荷時においてのみ、リタードも併せて行うから、リタードによるトルクの低下の不具合がやはり必要最小限に抑制される。
【0109】
メインフローに戻り、次いで、ステップS21で、NOx触媒17に残存しているイオウ残存量Qzsを推定する。このイオウ残存量Qzsの推定は、図21のフローチャートに従って行なわれ、まず、ステップS81で、排ガス温度Tmpがイオウ放出可能温度の最低値(例えばこの実施の形態でいうと650℃)以上であるか否かを判定し、その結果、排ガス温度Tmpが650℃未満のときは、ステップS82でイオウ放出処理時間Trをリセットする一方、650℃以上のときは、ステップS83でイオウ放出処理時間Trを計測する。
【0110】
つまり、上記ステップS17で、図15を用いて第1目標温度Tmp1を設定したときと同様に、排ガス温度TmpひいてはNOx触媒17の温度が最低限650℃以上のときにイオウ成分が放出され得るものとして、この650℃をイオウ成分の放出可能温度の最低温度としているのである。もちろん、例えばNOx触媒17に流入する排ガスの空燃比などのその他の条件により、このイオウ放出可能温度はいろいろな値に設定され得るものである。
【0111】
次いで、ステップS84以下において、上記イオウ放出処理時間Trと、排気温センサ27によって検出された排ガス温度Tmpとに基づいて、イオウ放出量を推定し、該イオウ放出量からイオウ残存量Qzsを推定する。
【0112】
まず、このステップS84以下で行うイオウ残存量Qzsの推定動作の概略を説明する。ステップS13のイオウ付着量Qssの推定動作で述べたように、排ガスは図22に示すようにNOx触媒17の上流部分から先に流れ込む。したがって、上記ステップS20で実行するイオウ放出処理においても、イオウ放出可能温度にまで昇温された排ガスはNOx触媒17の上流部分から先に流れ込み、該上流部分が先に昇温されて、イオウの放出は該上流部分において優先して始まる。つまり、NOx触媒17は一様にはイオウ成分が放出除去されず、イオウ成分は排ガスの通過経路に沿って偏って除去され、偏って残存する。
【0113】
それゆえ、イオウ放出量ないし残存量Qzsを推定するにあたり、NOx触媒17を、図22に示すように、排ガスの通過経路に沿って一般にn個のブロック(図例では10個)に分割して考え、各ブロック毎にイオウ残存量Qzs[j](j=1〜分割数n)を推定して、その総和(Qzs[1]+…+Qzs[n])を触媒17全体のイオウ残存量Qzsとするのである。これにより、精度のよいイオウ放出量ないしイオウ残存量の推定を図ることが可能となる。明らかに、図22において左側の上流側ブロックのイオウ残存量Qzs[j]は、下流側ブロックのそれに比べて少なく推定される。
【0114】
なお、各ブロック毎に推定したイオウ残存量Qzs[j]の総和(Qzs[1]+…+Qzs[n])に代えて、各ブロック毎に推定したイオウ残存量Qzs[j]の平均値((Qzs[1]+…+Qzs[n])/n)を触媒17のイオウ残存量Qzsを代表する値として取り扱うようにしてもよい。
【0115】
この実施の形態においては、一例として、図22に示すように、NOx触媒17を10個のブロックに分割して考えている(j=1〜10)。ステップS84では、イオウ放出処理時間Trと排ガス温度Tmpとに基づいて、全NOx触媒17の容積のうち、イオウ成分が完全に放出除去された領域(完全除去領域)SAの割合(%)、換言すればイオウ成分が完全に放出除去されたブロックの数を、図23に示すような特性のマップから設定する。図23に示すように、完全除去領域SAは、放出処理時間Trが長くなるほど、また、排ガス温度Tmpが高くなるほど大きくなる。つまり、完全除去領域SAに属するブロックの数が多くなる。
【0116】
図23のマップは、例えば、排ガス温度Tmpが700℃のときは、イオウ放出処理時間Trが時刻t11に到達したときに、また、排ガス温度Tmpが650℃のときは、それより遅い時刻t12に到達したときに、10個のブロック全部からイオウが放出され、完全除去領域SAが100%となることを示している。
【0117】
次のステップS85では、同じくイオウ放出処理時間Trと排ガス温度Tmpとに基づいて、NOx触媒17のうち、イオウ成分が部分的に放出除去された領域(部分除去領域)SBの割合(%)(ブロック数)を、図24に示すような特性のマップから設定する。図24に示すように、部分除去領域SBは、少なくとも放出処理時間Trが長くなるに従って小さくなり、上記の時刻t11又はt12で、完全除去領域SAが100%となったときに消滅する。
【0118】
なお、イオウ成分が全く除去されていない未除去領域SCの割合(%)(ブロック数)は、上記完全除去領域SAの割合と部分除去領域SBの割合とを加えた値を、全NOx触媒17の容積から減算することにより求められる。
【0119】
次のステップS86では、同じくイオウ放出処理時間Trと排ガス温度Tmpとに基づいて、部分除去領域SBにおけるイオウ除去率α(%)を、図25に示すような特性のマップから設定する。図25に示すように、部分除去領域SBにおけるイオウ除去率α(%)は、この実施の形態においては、放出処理時間Trとは無関係に、排ガス温度Tmpが高くなるほど大きくなるように設定されている。
【0120】
なお、部分除去領域SBにおけるイオウ残存率β(%)は、(100−α)%であり、また、完全除去領域SAにおけるイオウ除去率は100%(イオウ残存率は0%)、未除去領域SCにおけるイオウ除去率は0%(イオウ残存率は100%)である。
【0121】
次のステップS87では、以上得られた各データから最終的にNOx触媒17全体のイオウ残存量Qzsを算出する。そのためには、例えば、各領域SA,SB,SC毎に放出されたイオウ成分の量を推定し、その総和を求め、そして、その値をステップS13で推定したイオウ付着量Qssから減算する。あるいは、各領域SA,SB,SC毎に放出されたイオウ成分の量を推定し、その値を各領域SA,SB,SC毎に付着したイオウ成分の量(例えば「Qss/j(ブロックの数)」とする)から減算し、そして、その総和を求めてもよい。
【0122】
ここで、完全除去領域SAに属するブロック(上流側ブロック)の各イオウ残存量Qzs[j]はゼロであり、未除去領域SCに属するブロック(下流側ブロック)の各イオウ残存量Qzs[j]はステップS13で推定された各イオウ付着量(Qss/j)のままであり、そして、部分除去領域SBに属するブロック(中央部のブロック)の各イオウ残存量Qzs[j]は、((Qss/j)×(100−α))であるから、NOx触媒17全体の総イオウ残存量Qzsは、例えば数6に従って求められる。
【0123】
【数6】
【0124】
なお、式中に記した「SB」、「SC」は、それぞれNOx触媒17のうちの部分除去領域、未除去領域の割合(%)を示すものとする。そして、同じく式中に記した「(j×SB/100)」,「(j×SC/100)」は、それぞれ部分除去領域、未除去領域に属するブロックの数を示すものとする。
【0125】
ここで求められたNOx触媒17全体の総イオウ放出量または総イオウ残存量Qzsは、一回一回のイオウ放出処理について放出されたイオウ放出量またはイオウ残存量であって、各イオウ放出処理の結果放出されたイオウ放出量またはイオウ残存量の累積量ではない。そして、該放出量あるいは残存量を求めるためのパラメータであるイオウ放出処理時間Trは、ステップS81,S82で、排ガス温度Tmpがイオウ放出可能温度(650℃)以上とならなくなったときにリセットされるから、イオウ放出が連続して実行された時間を示し、途切れ途切れにイオウ放出が行なわれた時間の累積ではない。
【0126】
例えば、1分間のイオウ放出処理を5回行っても、採用されるイオウ放出処理時間Trは、各イオウ放出処理すべてにおいて1分間であるから、図23〜図25に示すマップからは、排気ガス温度Tmpが同じであれば、常に同じ完全除去領域SAの割合、同じ部分除去領域SBの割合、および同じ部分除去領域SBにおけるイオウ除去率αが読み出される。したがって、結果的に、同じイオウ放出量、同じイオウ残存量が算定されることになり、イオウ放出量またはイオウ残存量が更新されることはない。つまり、各1分間のイオウ放出処理の結果算定された各イオウ放出量またはイオウ残存量をすべて累積総和するものではないのである。
【0127】
したがって、例えば、同じ5分間のイオウ放出処理であっても、このように1分間のイオウ放出処理を5回行ったときに比べて、5分間のイオウ放出処理を1回行ったときの方が、イオウ放出量が多くなり、イオウ残存量が少なくなる。
【0128】
そして、例えば、1分間のイオウ放出処理が行なわれたのちに、次に2分間のイオウ放出処理が行なわれたときに、イオウ放出量あるいは残存量の値が、その2分間のイオウ放出の結果算定された、より大きいイオウ放出量、あるいは、より小さい残存量の値に更新されることになる。
【0129】
つまり、イオウ放出処理は、前述したように、昇温された排ガスが先に流れ込むNOx触媒17の上流部分から優先して始まり、加熱が遅れるNOx触媒17の下流部分は時間がある程度経過しないとなかなかイオウが除去されない。そして、一回のイオウ放出処理が終了して、次に再びイオウ放出処理が行われるまでの間に、NOx触媒17はまた温度が低下するから、この二回目のイオウ放出処理においても、再度、NOx触媒17は上流部分から加熱され始める。したがって、このときに、また前回と同じ、またはそれ以下の時間で、この二回目のイオウ放出処理が終了すると、この二回目のイオウ放出処理では、全く何も新しくイオウが除去されることのないまま終わることになるのである。したがって、イオウ放出連続時間Trが短くなればなるほど、全体のイオウ除去率が低下し、イオウ放出連続時間Trが長くなればなるほど、全体のイオウ除去率が向上するということができる。
【0130】
ところで、一般に、リッチ運転時及び理論空燃比運転時は、リーン運転時に比べて、排ガス温度Tmpが高くなり、自然にイオウ放出可能温度(例えば650℃)またはそれ以上にまで上昇することがある。つまり、ステップS20のイオウ放出処理を行わなくても、リッチ運転時又は理論空燃比運転時は、イオウ放出処理をしているのと同じ効果が得られる場合があるのである(図5における符号カ、キ)。
【0131】
したがって、例えば、リッチ運転時又は理論空燃比運転時(λ≦1)であって、且つ、排ガス温度がイオウ放出可能温度以上のとき(Tmp≧650℃)は、イオウ放出処理時における上記ステップS21のイオウ放出量ないしイオウ残存量Qzsの推定手法と同じ手法を用いて、放出除去されたイオウ成分の量を推定し、それをステップS13で推定したイオウ付着量Qssから減じる等して該推定イオウ付着量Qssを修正するとよい。
【0132】
これにより、イオウ付着量Qssの推定精度がより向上し、無駄に早い時期にイオウ放出処理が開始されたり、あるいは無駄に長くイオウ放出処理が続行されるという、実際より多い量のイオウ付着量Qssを推定した場合に生じる不具合が回避されることになる。
【0133】
メインフローに戻り、次に、ステップS22で、上記のステップS21で求めた総イオウ残存量Qzsがゼロであるか否かを判定する。つまり、付着したイオウ成分がすべて除去され、NOx触媒17のNOx吸蔵能力ないし浄化能力が完全に回復したか否かを判定するのである。
【0134】
そして、イオウ残存量Qzsがゼロとなるまでは、ステップS23で、車速Vが第二のイオウ放出実行許可条件としての第二の判定用所定車速V2以上であることを確認しつつ、ステップS20のイオウ放出処理およびステップS21のイオウ残存量Qzsの推定を繰り返す。ここで、図5に示すように、上記第二所定車速V2は、第一所定車速V1よりも低い車速に設定されている。これにより、ステップS19で肯定的判定がなされて、いったんイオウ放出処理が開始したのちは、車速が第一所定車速V1程度にまで低下しても、該イオウ放出処理が解除され難くなり、排ガス温度の低下が最小限度にくいとめられる。
【0135】
そして、ステップS22でイオウ残存量Qzsがゼロであると判定されたときに、ステップS27に進んで、イオウ除去要求フラグFを0にリセットし、また、イオウ付着経過時間を示すイオウ被毒時間Ts、および後述する運転特性カウンタをそれぞれリセットする。そののち、ステップS11にリターンして、イオウ被毒時間Tsを再び最初から計測していくことになる。
【0136】
ここで、ステップS27に到達するにはいろいろなパターンがある。そのうちの最善のパターンは、第一、第二の両イオウ放出実行許可条件(車速Vが判定用所定車速V1,V2以上であること)が、ステップS16でフラグFが1にセットされた当初から継続して満足され続け、ステップS19およびステップS23で一度も否定的判定がなされず、イオウ放出処理が当初から円満に遂行され、そして終了した場合である(図5における符号ク)。このパターンにおいては、NOx触媒17の機能低下が最も低く抑制される。この第一のパターンは、ステップS19およびステップS23で常に肯定的判定がなされることから明らかなように、走行中、より多くの時間、より高い車速を維持する傾向の多い運転者の場合に該当する確率が大きい。
【0137】
残るステップS24〜S26、およびステップS28〜S30は、そのような上記第一パターン以外の経路を経るときの処置である。
【0138】
すなわち、上記ステップS23で、車速Vが第二所定車速V2以上でないと判定されたとき、つまり、イオウ放出処理実行中にかなり減速状態となり、分割噴射やリタード制御を実行しても、排ガス温度Tmpが目標温度Tmpsまで上昇せず、効率のよいイオウ放出処理が続けられなくなったとき、あるいはエンジン出力が不安定になる可能性が生じたときは(図5における符号ケ)、ステップS24,S25を実行して、排ガス昇温のための燃料の分割噴射および点火時期のリタード制御を解除し、また、図17のイオウ放出処理時の空燃比マップから図2の通常時の空燃比マップに切り換えて、強制的な理論空燃比運転を解除し、燃料カット(F/C)を復活させる。
【0139】
そのうえで、ステップS26で、イオウ残存量Qzsが所定のイオウ放出処理終了許可判定量Qs2以下であるか否かを判定する。ここで、この終了許可判定量Qs2は、ゼロではない比較的小さい値に設定されている。その結果、イオウ残存量Qzsが上記終了許可判定量Qs2以下である場合(図5における破線コ)は、ステップS27に進んで、イオウ放出処理が当初から円満に遂行され、そして終了した場合と同じに扱う。すなわち、イオウ除去要求フラグF、イオウ被毒時間Ts、および後述する運転特性カウンタをそれぞれリセットし、ステップS11にリターンしたときには、イオウ被毒時間Tsを再び最初から計測していくのである。
【0140】
これに対し、ステップS26で、イオウ残存量Qzsがイオウ放出処理終了許可判定量Qs2以下でないとき(図5における実線サ)、つまり、まだ多くのイオウ成分が除去されずに残っているときは、前述のステップS19でイオウ放出実行許可条件が満足されていないと判定されたときと同様に、ステップS28以下に進む。
【0141】
ステップS28では、運転特性カウンタをカウントアップする。すなわち、ステップS19で、イオウ放出実行許可条件が運転者の運転操作により満足されず、その結果、NOx触媒17のイオウ付着量Qssが所定量Qs1以上となってイオウを除去する必要が生じていても、イオウ放出処理を実質的に開始できない状況や、あるいは、ステップS23で、第二のイオウ放出実行許可条件が運転者の運転操作により満足されず、その結果、いったん開始したイオウ放出処理を、未だ多くのイオウ成分が残存しているけれども(Qzs>Qs2)、途中で中断しなければならない状況が発生した回数を計測するのである。
【0142】
したがって、この運転特性カウンタのカウント数が多いほど、運転者の運転操作は、より多くの時間をより低い車速で走行する傾向のものであるといえる。換言すれば、フラグFが1にセットされたのちイオウ放出処理が速やかに円満に終了し難い運転特性のものであるといえる。
【0143】
次いで、ステップS29で、上記運転特性カウンタのカウント数に基づいて、イオウ放出処理実行時の排ガス温度Tmpの補強的な目標値である第2目標温度Tmp2を設定する。この第2目標温度Tmp2は、上記カウント数が多いほど、つまり、イオウ放出処理が速やかに円満に終了し難いときほど、例えば700〜750℃などに高く設定される。
【0144】
そして、上記ステップS18において、この補強的な第2目標温度Tmp2と、ステップS17で設定される標準的な第1目標温度Tmp1とのうち、高いほうの温度が最終的な目標排ガス温度Tmpsに選択されるから(図5の符号シ参照)、これにより、実行され難いイオウ放出処理がいったん実行されたときには、排ガスないしNOx触媒17がより高い温度に昇温されて、イオウ成分が効率よく速やかに放出除去され、イオウ放出処理が短時間で確実に円満に終了することが図られることになる。
【0145】
そして、さらに、ステップS30で、NOx触媒17のイオウ被毒の抑制、およびNOx吸蔵の抑制を図る。つまり、NOx触媒17にはかなりな量のイオウ成分が付着していて(Qss≧Qs1またはQzs>Qs2)、NOx吸蔵能力および触媒機能が低下しているのであるから、このような状態でリーン運転を行うと、排ガス中に多量に含まれるNOxが触媒17に吸蔵されずに大気中に放出されることになる。
【0146】
したがって、例えば、図2に示す目標空燃比マップにおけるリーン運転領域Aを縮小して、リーン運転自体を規制又は禁止することにより、排気ガス中にNOxが多量に含まれないようにし、NOx触媒17の触媒機能が低下していることに起因するNOxの大気中への放出を抑制するのである。
【0147】
また、リーン運転を規制、禁止することにより、同時に、イオウの付着速度も鈍化され、さらにイオウがNOx触媒17に付着するのを抑制することもできる(イオウ被毒の抑制)。図5において、実線サの傾き(推定イオウ付着量Qssの傾き)が小さいのはこのことを示している。
【0148】
その場合に、そのリーン領域Aを縮小する程度は、運転特性カウンタのカウント数に応じて決定するとより好ましい。該カウント数の大小がNOx触媒17の触媒機能の低下の程度を表わしているからである。明らかに、該カウント数が大きいほど、触媒機能がより低下しているから、リーン運転領域Aをより大きく縮小する。
【0149】
そして、運転特性カウンタがステップS27でリセットされないうちは、イオウ除去要求フラグFも継続して1にセットされているから、リターンしたときに、ステップS15,S16をスキップし、ステップS19で第1のイオウ放出実行許可条件が満足されたときに、イオウ放出処理が実行されることになる。しかし、例えば、イオウ除去要求フラグFが1にセットされている状態で、運転者の低車速走行傾向によってイオウ放出が一向に最後まで(Qzs=0まで、あるいはQzs≦Qs2まで)遂行されないときは、イグニッションスイッチがOFFされたのち、またはONされたのちに、強制的にイオウ放出処理を実行するようにしてもよい。これにより、走行する必要のない場合に、運転者の走行の支障とならずに、イオウを放出処理することができる。特に、エンジン始動時は、空燃比をリッチにして暖機運転するのが通例であるから、そのことを利用して効率よくイオウ放出が行える。
【0150】
ただし、この場合、例えばブザーや警告灯などの警告手段によって、運転者にイオウ放出処理を実行していることを報知することが好ましい。特に、イグニッションスイッチをOFFとしたのにエンジンが停止しないことの違和感や、故障であるとの誤認を防ぐことができる。
[推定イオウ付着量の補正制御−イオウ含有量予測値Kfssの算出]
図26は推定イオウ付着量Qssの補正制御のために行う空燃比制御の具体的動作の一例を示すタイムチャート、及び図27は同フローチャートである。イオウ被毒解消制御のステップS13(イオウ付着量Qssの推定動作)で述べたように、一般に、燃料中に含まれるイオウの量は一定ではなくバラツキがあるから、例えば給油をすると、エンジン1に供給される燃料のイオウ含有量がそれまでのものとは変化する。
【0151】
したがって、同じ燃料供給量(噴射量)であっても、例えば、図26に例示したように、給油によってイオウ含有量が多くなると、NOx触媒17へのイオウ付着量が多くなり、鎖線で示したように、被毒の状態が推定よりも早く進んで、それまで推定していたイオウ付着量Qss(実線)より多い量のイオウが付着する。その結果、すでにイオウが判定基準量Qs1以上付着しているのに、イオウ放出処理が開始されず、NOx触媒17の浄化能力低下の状態が無駄に続いたり、また、イオウ放出処理が開始された後においても、まだイオウがゼロ又は終了許可判定量Qs2以上残存しているのに、イオウ放出処理が終了され、NOx触媒17の浄化能力が元通りには回復しない等といった不具合が生じる。
【0152】
逆に、給油によってイオウ含有量が少なくなると、NOx触媒17へのイオウ付着量が少なくなり、被毒の状態が推定よりも遅く進んで、それまで推定していたイオウ付着量Qssより少ない量のイオウが付着する。その結果、まだイオウが判定基準量Qs1以上付着していないのに、イオウ放出処理が開始されて、無駄に燃料が費やされたり、また、イオウ放出処理が開始された後においても、すでにイオウがゼロ又は終了許可判定量Qs2以下に除去されているのに、イオウ放出処理が続行され、やはり無駄に燃料が費やされる等といった不具合が生じる。
【0153】
そこで、イオウ放出処理を過不足なく行うために、前述のステップS13、より詳しくはステップS54で、燃料供給量Qfのみに基づいて推定した基本イオウ増加量Qsaを燃料のイオウ含有量Kfssで補正し、推定イオウ付着量と実際のイオウ付着量との間のずれを是正して、イオウ付着量の推定精度を向上させるようにしたのである。そして、そのための処理、すなわち推定付着量補正のための空燃比のリッチ化が行なわれる。
【0154】
その結果、このエンジン1においては、NOx浄化制御における吸蔵能力回復のためのリッチ化、NOx触媒17のイオウ被毒解消制御におけるイオウ放出促進のためのリッチ化、及びこの推定イオウ付着量補正のためのリッチ化というそれぞれ別異の目的のための複数種類の空燃比のリッチ化が行なわれる。なお、図26において、符号ナで示したリッチ化は、イオウ被毒解消制御で行なわれる空燃比のリッチ化、符号ニで示したリッチ化は、吸蔵能力回復のための空燃比のリッチ化、及び符号ヌで示したリッチ化は、この推定付着量補正のためのリッチ化である。
【0155】
このリッチ化は図27のフローチャートに従って行なわれる。このプログラムは前述のイオウ被毒解消制御と独立して実行され、まず、ステップS91で給油直後であること、ステップS92でイオウ除去要求フラグFがゼロにリセットされていること、ステップS93でリーン運転中であること、及び、ステップS94で推定イオウ付着量Qssが予め設定された補正制御を行うための判定基準量Qs3以上であることが確認される。ここで、この判定基準量Qs3は、前述の判定基準量Qs1よりも小さい値である。
【0156】
そして、上記条件が全て満足されているときに、ステップS95に進んで、前述のNOx放出処理における図4のステップS2で算出される修正NOx吸蔵量Qnoxsが読み込まれる。この修正NOx吸蔵量Qnoxsは、前述したように、基本NOx吸蔵量Qnoxaが推定イオウ付着量Qssで修正されたものである。
【0157】
次いで、ステップS96で、上記修正NOx吸蔵量Qnoxsに基いて、この推定付着量補正のためのリッチ化の条件を決定する。その場合に、図28に示すように、リッチ化条件(リッチ化の時間又はリッチ度合の少なくともいずれか)は、修正NOx吸蔵量Qnoxsが多くなるに従い、リッチ化時間が長くなり、あるいはリッチ度合が高くなるように設定される。
【0158】
そして、ステップS97で、そのようにして求められたリッチ化条件が実現するように空燃比のリッチ化を実行すると共に、ステップS98で、そのときのO2センサでなる第2空燃比センサ28の出力値を検出する。特に、ここでは、第2空燃比センサ28の出力最大値Eを検出する。ここで、第2空燃比センサ28は、酸素濃度が多いほど、すなわちリーン側で出力値が小さく、酸素濃度が少ないほど、すなわちリッチ側で出力値が大きくなる特性を有する。
【0159】
なお、図26では、このときの第2空燃比センサ28の出力部分のみを拡大して示した。
【0160】
次いで、ステップS99で、上記出力最大値Eに基いて、NOx吸蔵量の補正係数Knoxを設定する。その場合に、図29に示すように、NOx吸蔵量補正係数Knoxは、出力最大値Eが大きくなるに従い、小さくなるように設定される。つまり、NOx触媒17下流の空燃比が、酸素濃度が低くリッチ側にシフトするに従い、NOx吸蔵量が小さな値に補正されることになる。換言すれば、イオウ付着量が大きな値に補正されることになる。
【0161】
なお、この場合、補正係数Knoxが1に近づくに従って、イオウ付着量の推定値Qssが実際の値にほぼ近似していたことになる。
【0162】
次いで、ステップS100で、数7に従い、上記補正係数Knoxに基いて、修正NOx吸蔵量Qnoxsを補正することにより、NOx吸蔵量の検出値(検出NOx吸蔵量)Qnoxkを算出する。つまり、この推定付着量補正のためのリッチ化の実行の時点で、NOx触媒17に吸蔵されていたNOx吸蔵量を、このリッチ化で得られた酸素濃度の検出結果に基いて補正することになる。
【0163】
【数7】
【0164】
さらに、ステップS101で、数8に従い、上記検出NOx吸蔵量Qnoxkと、修正NOx吸蔵量Qnoxsとに基いて、イオウ付着量の検出値(検出イオウ付着量)Qskを算出する。つまり、この推定付着量補正のためのリッチ化の実行の時点で、NOx触媒17に付着していたと推定していたイオウ付着量Qssを、このリッチ化で得られた酸素濃度の検出結果に基いて補正することになる。
【0165】
【数8】
【0166】
次いで、ステップS102で、数9に従い、上記検出イオウ付着量Qskと、推定イオウ付着量Qssとに基いて、イオウ含有量の予測値Kfssを更新する。この更新値Kfssは、次に行なわれるイオウ被毒解消制御のステップS54で用いられることになる。
【0167】
【数9】
【0168】
さらに、ステップS103で、上記検出イオウ付着量Qskの値をそのまま推定イオウ付着量Qssの値であるとして取り扱うようにする。
【0169】
以上により、第2空燃比センサ28の検出結果から、推定イオウ付着量Qssが補正され、NOx吸蔵量Qnoxsも修正され、燃料のイオウ含有量Kfssも予測されることになる。
【0170】
このように、燃焼室4から排出される排ガスの空燃比を強制的にリッチ化し、そのときNOx触媒17の下流の空燃比センサ28で検出される空燃比に基いて、該触媒17への推定イオウ付着量Qssが補正される。このリッチ雰囲気での酸素濃度は、NOx触媒17が現にイオウ被毒している程度によって変化し、また、そのイオウ被毒の程度を反映するから、燃料供給量Qfに基いて推定したイオウ付着量Qssを、上記酸素濃度に基いて、つまりNOx触媒17下流の空燃比に基いて補正することにより、燃料のイオウ含有量のバラツキに起因する推定精度への影響が是正される。
【0171】
その結果、燃料のイオウ含有量をいちいち測定したりコントロールユニット20に入力操作したりすることなく、空燃比のリッチ化という普通に行なわれる手法を用いて、燃料のイオウ含有量のバラツキによってイオウ成分付着量Qssの推定精度が低下するという不具合に、合理的、且つ効率的に対処することが可能となり、ひいては、過不足なく良好にイオウ被毒解消制御を実行することが可能となる。
【0172】
なお、ステップS98では、第2空燃比センサ28の検出結果として、空燃比センサ28の出力最大値Eを検出するようにしたが、これに代えて、あるいはこれと共に、図26に示したように、リーン状態からリッチ状態に切り換えたときの該センサ28の出力値の小から大への立上りの遅れ時間Dや、該センサ28の出力値の波形で囲まれる面積Mを検出してもよい。
【0173】
また、NOx触媒17のNOx吸蔵能力の回復を図るために本来的に必ず行なわれる図4に示すリッチ化を利用して、触媒17下流の空燃比を検出し、推定イオウ付着量Qssを補正してもよい。空燃比をリッチ化する回数が徒に増えることがなく、リーン運転がむやみに阻害されて燃費性能が損なわれることが抑制される。
【0174】
一方、以上説明したように、図4に示すリッチ化と推定付着量補正のためのリッチ化とを独立して実行し、特に、少なくとも、給油がされた後、イオウの放出処理が最初に完了した(F=0)後において、推定イオウ付着量Qssが所定量Qs3以上増加したときに、排ガスの空燃比をリッチ化することにより、推定イオウ付着量の補正にとって適切な時期にリッチ化及び空燃比の検出を行うことができて、補正の精度が一層向上する。その場合でも、吸蔵能力回復のためのリッチ化に比べてはるかに少ない頻度でリッチ化を行えば済むから、空燃比をリッチ化する回数が徒に増えることもなく、リーン運転がむやみに阻害されて燃費性能が損なわれることも抑制される。
【0175】
さらに、イオウの放出処理が完了した(F=0)後であるから、推定イオウ付着量Qssの起算値がゼロとなり、該付着量Qssが所定量Qs3以上増加したかどうかの判定精度が向上する。併せて、給油後に最初にイオウ放出処理が行われた場合において上記のタイミングでリッチ化が行なわれるから、給油によって変化する燃料のイオウ含有量のバラツキによる影響が早期に是正されることになる。
【0176】
そして、ステップS96において、リッチ化度合やリッチ化時間等のリッチ化条件が、結局、その時点での推定イオウ付着量Qssに基いて決定されるから、NOxの放出という観点からは、吸蔵NOxが、過不足のないリッチ化度合で、あるいは過不足のない時間だけ、適正に放出処理され、その結果、未処理の吸蔵NOxが触媒17に残存したり、逆に、過度にリッチ化されて燃費性能が低下するというような不具合が抑制される一方で、推定イオウ付着量の補正という観点からは、吸蔵NOxが全て酸素に還元分解され、充分量の酸素が発生するから、ノイズの少ない明確な空燃比検出値(上記の遅れ時間、面積、出力最大値等)が得られ、補正の精度が向上することになる。
【0177】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、燃焼室から排出される排ガスの空燃比を強制的にリッチ化し、そのときNOx触媒の下流で検出される酸素濃度に基いて、該触媒への推定イオウ付着量が補正される。そして、このリッチ雰囲気での酸素濃度は、NOx触媒が現にイオウ被毒している程度によって変化し、また、そのイオウ被毒の程度を反映するから、燃料供給量に関連する値に基いて推定したイオウ付着量を上記酸素濃度に基いて補正することにより、燃料のイオウ含有量のバラツキに起因する推定精度への影響が是正される。その結果、燃料のイオウ含有量をいちいち測定したり入力操作したりすることなく、空燃比のリッチ化という普通に行なわれる手法を用いて、燃料のイオウ含有量のバラツキによってイオウ成分付着量の推定精度が低下するという不具合に、合理的、且つ効率的に対処することが可能となり、ひいては、過不足なく良好にイオウ放出処理を実行することが可能となる。
【0178】
また、本発明によれば、吸蔵能力回復のためのリッチ化を利用して、触媒下流の酸素濃度を検出し、推定イオウ付着量を補正することができるから、空燃比をリッチ化する回数が徒に増えることがなく、リーン運転がむやみに阻害されて燃費性能が損なわれることが抑制される。
【0179】
一方、本発明によれば、吸蔵能力回復のためのリッチ化とはまた別に、推定付着量補正のためのリッチ化が行なわれる。したがって、推定イオウ付着量の補正にとって適切な酸素濃度検出値が得られ、該補正の精度が向上し、ひいては、過不足のない良好なイオウ放出処理の実行が担保される。しかも、その場合に、吸蔵能力回復のためのリッチ化に比べてはるかに少ない頻度でリッチ化を行えば済むから、空燃比をリッチ化する回数が徒に増えることもなく、リーン運転がむやみに阻害されて燃費性能が損なわれることも抑制される。
【0180】
また、本発明によれば、推定付着量補正のためのリッチ化を行う時期の一例として、イオウ放出処理が行われていったんゼロになった推定イオウ付着量が再び所定量まで増加した時期にリッチ化が行なわれるから、イオウ被毒がある程度の状態にまで進んだ時期を選択してリッチ化が行なわれることになり、前述したように、推定イオウ付着量の補正にとって適切な酸素濃度検出値が得られ、該補正の精度が向上する。また、推定イオウ付着量の起算値がゼロであることから、該付着量が所定量以上増加したかどうかの判定精度が増す。併せて、給油後に最初にイオウ放出処理が行われた場合において上記のタイミングでリッチ化が行なわれるから、給油によって変化する燃料のイオウ含有量のバラツキによる影響が早期に是正される。
【0181】
さらに、本発明によれば、リッチ化度合やリッチ化時間等のリッチ化条件が、推定イオウ付着量に基いて定められるから、NOxの放出という観点からは、吸蔵NOxが、過不足のないリッチ化度合で、あるいは過不足のない時間だけ、適正に放出処理される。その結果、未処理の吸蔵NOxが触媒に残存したり、逆に、過度にリッチ化されて燃費性能が低下するというような不具合が抑制される。一方、推定イオウ付着量の補正という観点からは、吸蔵NOxが全て酸素に還元分解され、充分量の酸素が発生するから、明確な酸素濃度検出値が得られ、上記補正の精度が向上する。
【0182】
本発明は、NOx吸蔵還元型触媒を備えるエンジン一般に広く好ましく適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るエンジンの制御システム構成図である。
【図2】 同エンジンの空燃比マップである。
【図3】 同エンジンのNOx浄化制御の一例を示すタイムチャートである。
【図4】 同フローチャートである。
【図5】 同エンジンのイオウ被毒解消制御の一例を示すタイムチャートである。
【図6】 同メインフローチャートである。
【図7】 同フローチャートのサブルーティンを表わすフローチャートである。
【図8】 同じくサブフローチャートである。
【図9】 同制御で用いられる特性図である。
【図10】 同じく特性図である。
【図11】 同じく特性図である。
【図12】 同じく特性図である。
【図13】 同制御の原理図である。
【図14】 同じく原理図である。
【図15】 同じく特性図である。
【図16】 同じくサブフローチャートである。
【図17】 同じく特性図である。
【図18】 同じく特性図である。
【図19】 同じく特性図である。
【図20】 同じくサブフローチャートである。
【図21】 同じくサブフローチャートである。
【図22】 同じく原理図である。
【図23】 同じく特性図である。
【図24】 同じく特性図である。
【図25】 同じく特性図である。
【図26】 同エンジンの推定付着量補正制御の一例を示すタイムチャートである。
【図27】 同じくフローチャートである。
【図28】 同制御で用いられる特性図である。
【図29】 同じく特性図である。
【図30】 本発明の原理図である。
【図31】 同じく原理図である。
【図32】 同じく原理図である。
【符号の説明】
1 エンジン
4 燃焼室
5 点火プラグ
6 インジェクタ
16 三元触媒
17 NOx触媒(NOx吸蔵還元型触媒)
20 コントロールユニット(推定手段、放出手段、リッチ化手段、補正手段)
28 第2空燃比センサ(検出手段)
Claims (5)
- 酸素過剰雰囲気で排ガス中のNOx成分を吸蔵し、酸素濃度の低下により吸蔵していたNOx成分を還元して放出するNOx吸蔵還元型触媒を排気通路に備えると共に、該触媒に付着したイオウ成分の量を燃料供給量に関連する値に基いて推定する推定手段と、該推定手段で推定されたイオウ成分付着量が所定の付着量以上となったときに該イオウ成分を上記触媒から放出させる放出手段とを備えるエンジンの排気浄化装置であって、上記触媒の下流の酸素濃度を検出する検出手段と、燃焼室から排出される排ガスの空燃比を強制的にリッチ化するイオウ成分推定リッチ化手段と、該イオウ成分推定リッチ化手段により排ガスの空燃比がリッチ化されたときの上記検出手段により検出された酸素濃度に基いて上記推定手段で推定されたイオウ成分付着量を補正する補正手段とを有することを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
- 定期的に、又は触媒に吸蔵されたNOx成分の量が所定の吸蔵量以上となったときに、触媒からNOx成分を放出させるために排ガスの空燃比をリッチ化するNOx成分放出手段が備えられ、上記イオウ成分推定リッチ化手段は、上記NOx成分放出手段であることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 定期的に、又は触媒に吸蔵されたNOx成分の量が所定の吸蔵量以上となったときに、触媒からNOx成分を放出させるために排ガスの空燃比をリッチ化するNOx成分放出手段が備えられ、上記イオウ成分推定リッチ化手段は、上記NOx成分放出手段が行うリッチ化の頻度よりも少ない頻度で排ガスの空燃比をリッチ化することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 上記イオウ成分推定リッチ化手段は、少なくとも、給油がされた後、放出手段が最初にイオウ成分の放出を実行した後において、推定手段が推定したイオウ成分の付着量が所定量以上増加したときに、排ガスの空燃比をリッチ化することを特徴とする請求項3に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 上記イオウ成分推定リッチ化手段は、推定手段で推定されたイオウ成分の付着量に基いてリッチ化の度合又はリッチ化する時間の少なくともいずれかを決定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のエンジンの排気浄化装置。
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