JP4364319B2 - ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリフェニレンエーテル(以下では、PPEと称することがある)系樹脂を含有する樹脂組成物に関し、さらに詳しくは自動車用部材、電気・電子用部材、家庭台所・浴室・建築用資材、洗面所用品などの産業用または家庭用資材分野に於いて耐薬品性を必要とするプラスチック用途に非常に有用な前記樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に非晶性(アモルファス)樹脂はそのアモルファス構造特性により射出成形時、成形寸法精度に優れているので、その特徴を生かし、大型成形品や、組み立て精度等を必要とする産業分野に多く使用されている。しかしながら、アモルファス構造がゆえに有機薬品浸透性、即ち耐薬品性に劣り、オイル、有機溶媒等に簡単に侵されるという欠点を有している。
【0003】
一方、結晶性樹脂はその結晶性特性により、耐薬品性に非常に優れ、多くのオイル、有機溶媒等の触れる用途に使用されているが、成形冷却過程に結晶化が進行する際、成形収縮現象が起きて成形寸法精度が悪いので、大型成形品には適していない。それを改善する為、ガラス繊維等の無機フィラーなどを添加する試みが行われているが、高比重化、延性衝撃強度の低下、又は射出成形流動方向および流動垂直方向に於いて違った収縮を示し、ソリや変形という欠陥を生じてしまう。
【0004】
ポリフェニレンエーテル樹脂は高軟化点を有する非晶性熱可塑性樹脂の代表であり、バランスのとれた機械的性質と優れた電気的性質を有し、かつ吸水性が低く寸法安定性も良好である。しかもポリフェニレンエーテル樹脂は同じく非晶性熱可塑性樹脂のポリスチレン樹脂と非常に良く相溶し、変性を行うことが簡単にできる。PPE系樹脂とスチレン系重合体とからなるその樹脂組成物(以下では、PPE/PS樹脂組成物と称することがある)は成形加工性および耐衝撃性にも優れる(米国特許第3,383,435号明細書)ことから、従来自動車用部材や電気・電子部材などに広く用いられている。しかしながら、このPPE/PS樹脂組成物はアモルファス樹脂であり、前述のように耐薬品性、特に芳香族炭化水素系溶剤に対する耐性が十分ではなく、たとえば溶剤が歪みが加えられている部位や成形残留歪みのある部位に触れると、そこからクレーズや亀裂(クラック)が発生し、部材の破断に至ってしまうケースがある。そのため、その用途に制限が加えられているのが実状であり、例えばワックス、機械油・エンジンオイル、防錆剤、芳香剤などが付着する恐れのある自動車外装、エンジンルーム部品、客室内インテリア;揩動用潤滑油、グリース、クリーナーが付着する恐れのある事務機器、コンピューター関連機器などの部品(例えば内部パーツ、ファンモーターケース、プラスチックシャーシー);サラダ油、天麩羅油、その他の有機溶媒の付着の可能性のある家電、商業用電化製品部品;あるいは油煙、有機ガスが立ち込めるような環境(例えば工場環境、建築関連)で使用される電気電子機器の部品のような用途には、適用が避けられている。これは、ポリフェニレンエーテル樹脂が非晶性であることに起因する本質的な欠点であると考えられる。
【0005】
この欠点を改良するため過去より多くの試みがなされているが、いまだにPPE/PS樹脂組成物の特性をまったく損なわずに耐薬品性を向上させる技術は得られていない。代表的な従来技術としては例えば、PPE/PS樹脂組成物に、結晶性樹脂、例えばポリオレフィン、(たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、EEA)、ポリエステル、ナイロン等;低分子量のオレフィン類(たとえば、ポリブテン、エチレンオリゴマー、等);又はゴム状重合体(たとえばSEBS、SBS,SEPSラバー等)を配合する方法が挙げられる。しかしこの技術では、少量の添加により耐薬品性が若干改善されるが、実用レベルの耐薬品性を発揮させる為添加量を増やすと、従来PPE/PS樹脂組成物の持つ優れた機械的強度、耐熱性、難燃性の低下を招くばかりか、不十分な相溶性に起因する射出成形時の層状剥離現象を引き起こしたり、成形時の寸法精度に欠陥を生じてしまう。
【0006】
また、近年の試みとして、結晶性樹脂と非晶性熱可塑性樹脂とをアロイ化する技術が盛んに行われており、その代表としてポリフェニレンエーテル樹脂とナイロン樹脂とを、相溶化剤を用いて押出し時にアロイ化したものが商品化されている。この技術はナイロンのマトリックスの中にポリフェニレンエーテル樹脂を機械的に微細に分散させ、その分散状態を相溶化剤により抑制するものであり、非相溶型のアロイと呼ばれている。すなわち、ポリフェニレンエーテル樹脂をナイロンマトリックスにより覆うことによりポリフェニレンエーテル樹脂の薬品浸透性を抑え、耐薬品性を改善するものである。ナイロン側より見た場合、ナイロンにポリフェニレンエーテル樹脂を分散させることにより、ナイロンの成形時収縮からくる寸法安定性の悪さは、ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量の分だけ改善される。しかしながら、この技術に於いては、ナイロンの結晶性からくる寸法精度の改善効果は不十分である。
【0007】
これらのことから、ポリフェニレンエーテル樹脂に完全相溶し、しかも耐薬品性を向上する新規技術が待ち望まれてきた。
【0008】
近年技術革新とともに、立体構造にシンジオタクチック構造を有する結晶性スチレン系重合体(以下、シンジオタクチックスチレン系重合体と称する)が開発商業化されるに至っている(特開昭62−10481号公報)。当然の結果として、このシンジオタクチックスチレン系重合体をさまざまな樹脂と配合する試みもなされている。
【0009】
シンジオタクチックスチレン系重合体は結晶性を有すると共に、分子構造上はスチレン骨格を主体にしている為、従来のアタクチック型スチレン系重合体と同様、ポリフェニレンエーテル樹脂との相溶性も良好と予測され、ポリフェニレンエーテル樹脂とシンジオタクチックなスチレン系重合体のブレンド組成物も知られている。例えば特開平1−182344号公報、特開平1−82350号公報、特開平2−64140号公報、特開平02−92948号公報、特開平2−218724号公報、特開平3−126743号公報、特開平5−86296号公報、特開平5−209098号公報、特開平5−279530号公報、特開平6−93151号公報、特開平6−93153号公報、特開平7−53815号公報、特開平7−62175号公報、特開平7−138433号公報、特開平7−292184号公報、特開平7−331003号公報、特開平8−143699号公報、特開平8−311196号公報、特開平9−52958号公報および特開平9−52959号公報などに開示されている。しかし、上記公報では、シンジオタクチックスチレン系重合体とポリフェニレンエーテル樹脂をアロイ化するという単純なものが多く、耐薬品性の改善とその組成相乗効果を明確にする具体的事例は少ない。わずかに、特開平2−64140号公報、特開平2−92948号公報、特開平9−52958号公報および特開平9−52959号公報に、耐薬品性の改善が記載されているにすぎない。これらの公報においては、単にシンジオタクチックスチレン系重合体と添加型のゴム状弾性体とをポリフェニレンエーテル樹脂に添加し、結晶性成分を増加させることにより、耐薬品性を向上させようとするものであり、アモルファスであるポリフェニレンエーテル樹脂の特徴である寸法精度を保持することについては考慮されていないので、実用性に乏しい。しかも、何れの場合も、溶剤中に成形試験片を浸漬し一定時間後の外観を目視で評価するといった定量性の低い溶剤浸漬法で耐薬品性を評価している。ところが、前述したように、ポリフェニレンエーテル樹脂の使用環境を考慮した場合、溶剤に常時浸漬または接触するような用途は皆無である。自動車のエンジン周りや電気・電子機器の駆動部周辺のように、使用時に何等かの要因で溶剤、オイル等が付着し、特に部品固定のために締め付け歪みのかかった部位が割れるという問題から、その用途に制限が加えられていることに考慮すると、歪みのかかった部位での耐薬品性に優れた、すなわちクレーズや亀裂(クラック)を生じないようなポリフェニレンエーテル樹脂が望まれる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリフェニレンエーテル樹脂の特徴である高い寸法精度および優れた諸特性を保持しつつ、実用的な耐薬品性を有するPPE系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリフェニレンエーテル樹脂について、前記したような歪みのかかった部位でのクレーズや亀裂(クラック)を抑制することを検討した。試験方法には、成形物に1%以上の強制歪みをかけ溶剤塗布法(成形試験片を強制的に歪みがかけられる治具に固定し、その歪み部に溶剤を浸したガーゼ等を置いて溶剤によるアタック度を見る手法)を用いて耐薬品性を調べると同時に、ポリフェニレンエーテル樹脂の本来有する機械的特性、寸法精度安定性の両局面を観察して実験を行った。その結果、驚くべきことに、従来のような結晶性重合体(シンジオタクチックスチレン系重合体)をポリフェニレンエーテル樹脂に添加する場合、多ければ多いほど耐薬品性改良効果があるのではなく、ある特定な範囲において、しかもハイインパクトスチレン系樹脂と組合せて使用したときに、耐薬品性改良効果が得られると共に、ポリフェニレンエーテル樹脂が本来有する優れた寸法精度および機械的強度を保持し得ることを見出した。かくして本発明に到達した。
【0012】
すなわち本発明は、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂および(B)シンジオタクチックスチレン系重合体を含む樹脂組成物において、
(1) さらに(C)ハイインパクトスチレン系樹脂を含み、
(2) (A)10〜90重量部に対して(C)90〜10重量部、かつ(A)および(C)の合計40重量部より多く95重量部以下に対して(B)5重量部以上60重量部未満が含まれる
ことを特徴とする樹脂組成物を提供するものである。
【0013】
ハイインパクトスチレン系樹脂は、従来耐衝撃性改良を目的として配合されており、これを単独でポリフェニレンエーテル樹脂に添加しても、ポリフェニレンエーテル樹脂の耐薬品性改善効果は示さなかった。それが、シンジオタクチックスチレン系重合体とポリフェニレンエーテル樹脂を含む系にハイインパクトスチレン系樹脂を配合すると、耐薬品性がさらに改良されることは、驚くべきことである。またさらに、シンジオタクチックスチレン系重合体は、上記範囲より多い系では寸法精度を低下させ、さらに多量な結晶性からくる組成物の不透明感や物性低下を生じてしまうことも、従来技術からは予測されなかったことである。すなわち、ポリフェニレンエーテル樹脂にシンジオタクチックスチレン系重合体を上記の範囲で配合し、かつハイインパクトスチレン系樹脂を組合せて配合したときにはじめて、高い寸法精度と優れた耐薬品性との両方を備えた組成物が得られることが見出された。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物において使用される(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂はそれ自体公知のものであり、例えば一般式(I)
【0015】
【化1】
(上記式中、R1 、R2 、R3 およびR4 はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、置換炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、フェノキシ基またはニトロ基を表し、nは重合度を表す整数である)で示される重合体の総称であって、上記一般式で示される重合体の一種単独であっても、二種以上が組み合わされた共重合体であってもよい。
【0016】
R1 、R2 、R3 およびR4 の具体例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル、エチル、プロピル、アリル、フェニル、ベンジル、メチルベンジル、クロロメチル、ブロモメチル、シアノエチル、シアノ、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、ニトロ等の基が挙げられる。
【0017】
好ましいPPE系樹脂は、上記式(I)におけるR1 およびR2 が炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R3 、R4 は水素もしくは炭素原子数1〜4のアルキル基のポリマーである。nは通常50以上が好ましい。
【0018】
具体例としては、ポリ(2 ,6 −ジメチル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,6 −ジエチル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 −メチル−6 −エチル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 −メチル−6 −プロピル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,6 −ジプロピル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 −エチル−6 −プロピル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,6 −ジメトキシ−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,6 −ジクロロメチル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,6 −ジブロモメチル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,6 −ジフェニル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,6 −ジトリル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,6 −ジクロロ−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,6 −ジベンジル−1 ,4 −フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,5 −ジメチル−1 ,4 −フェニレン)エーテルなどが挙げられる。中でも特に好ましいPPEはポリ (2 ,6 −ジメチル−1 ,4 −フェニレン)エーテルである。
【0019】
またPPE系の共重合体としては上記ポリフェニレンエーテル繰り返し単位中にアルキル三置換フェノール例えば2 ,3 ,6 −トリメチルフェノールを一部含有する共重合体を挙げることができる。
【0020】
またこれらのPPE系樹脂に、スチレン系化合物がグラフトした共重合体であってもよい。スチレン系化合物グラフト化ポリフェニレンエーテルとしては上記PPE系樹脂にスチレン系化合物として、例えばスチレン、α−メチルメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどをグラフト重合して得られる共重合体である。
【0021】
また、PPE系樹脂は極性基を有する変性剤により変性されていてもかまわない。極性基としては、例えば、酸ハイドライド、カルボニル基、酸無水物、酸アミド、カルボン酸エステル、酸アジド、スルフォン基、ニトリル基、シアノ基、イソシアン酸エステル、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基などが挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる(B)シンジオタクチックスチレン系重合体とは、高度のシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体である。シンジオタクチック構造とは、炭素−炭素結合から形成される主鎖に対してフェニル基あるいは置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量される。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。本発明において、シンジオタクチックスチレン系重合体とは、通常はダイアッド率75%以上、好ましくは85%以上、またはラセミペンタッド率30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレン系重合体である。スチレン系重合体は、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)およびこれらの混合物、あるいはこれらを主成分とする共重合体を包含する。尚、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)などがあり、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)などがある。また、ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)などがある。これらのうち特に好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、さらにはスチレンとp−メチルスチレンとの共重合体を挙げることが出来る。
【0023】
また、シンジオタクチックスチレン系重合体は、分子量について特に制限はないが、重量平均分子量で10,000以上のものが好ましく、とりわけ50,000以上のものが最適である。ここで重量平均分子量が10,000未満であると耐薬品性が不足する傾向がある。さらに、分子量分布についてもその広狭は制約がなく、様々なものを充当することが可能である。シンジオタクチックスチレン系重合体は、融点が200〜310℃であって、従来のアタクチック構造のスチレン系重合体に比べて耐熱性が優れている。
【0024】
このようなシンジオタクチックスチレン系重合体は、例えば不活性炭化水素溶媒中または溶媒の不存在下に、チタン化合物、および水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体(上記スチレン系重合体に対応する単量体)を重合することにより製造することができ(例えば特開昭62−104818号公報、特開昭63−268709号公報)、市販のものが使用できる。
【0025】
また、シンジオタクチックスチレン系重合体は、極性基を有する変性剤により変性されていてもかまわない。極性基としては、例えば、酸ハイドライド、カルボニル基、酸無水物、酸アミド、カルボン酸エステル、酸アジド、スルフォン基、ニトリル基、シアノ基、イソシアン酸エステル、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基などが挙げられる。特に好ましい極性基は酸無水物とエポキシ基であり、酸無水物の中では無水マレイン酸基が好ましい。
【0026】
本発明において用いられる(C)ハイインパクトスチレン系樹脂は、それ自体公知であり、弾性体(ゴム状物質)とスチレン系樹脂の一部とがグラフト重合しており、その[弾性体(ゴム状物質)/スチレン系樹脂]グラフト体が、スチレン系樹脂中に、約0.1〜4.0μmの大きさに、通称サラミ構造と呼ばれる形状に、溶融時、固体時共に安定分散しているものである。ハイインパクトスチレン系樹脂は、添加型熱可塑性エラストマー、例えばスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)および水素化・スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)のような、プラスチック溶融時に一旦溶融分散するものではない。
【0027】
このようなハイインパクトスチレン系樹脂は、例えばスチレン系モノマーに弾性体(ゴム状物質)を溶解し、任意の公知の重合法を行うことによって製造することができる。重合は、バッチ式、連続式を問わない。重合方法としては、例えば乳化重合法、塊状重合法、塊状懸濁2段階法などが挙げられる。
【0028】
上記スチレン系モノマーとしては、例えば一般式(II):
【0029】
【化2】
(上記式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であり、Zはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルキル基である置換基を示し、pは0〜5の整数である)
で示される。
【0030】
上記弾性体(ゴム状物質)としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、EPDM、エチレン−プロピレン共重合体、天然ゴム、エピクロルヒドリンのような天然または合成エラストマー物質が挙げられ、好ましくはポリブタジエンである。
【0031】
(C)ハイインパクトスチレン系樹脂は、ハイインパクトポリスチレン(スチレンとポリブタジエンを使用)が好ましい。
【0032】
(C)ハイインパクトスチレン系樹脂は、市販されていて入手可能であり、例えば三菱化学(株)から発売されているダイアレックスHTシリーズ、三井東圧(株)から発売されているトーポレックスシリーズなどが挙げられる。
【0033】
上記した(A)PPE系樹脂と(C)ハイインパクトスチレン系樹脂とは、 (A)10〜90重量部に対して(C)90〜10重量部、好ましくは(A)20〜90重量部に対して(C)80〜10重量部配合される。(C)の量が少なすぎると、耐薬品性の改良効果が達成できない。また、(A)が少なすぎると、PPE系樹脂の優れた特性が発揮できない。
【0034】
また、(A)および(C)の合計40重量部より上95重量部以下に対して、(B)シンジオタクチックスチレン系重合体は5重量部以上60重量部未満配合される。好ましくは(A)および(C)の合計90〜50重量部に対して、(B)10〜50重量部が配合される。より好ましくは(A)および(C)の合計85〜50重量部に対して、(B)15〜50重量部が配合される。(B)シンジオタクチックスチレン系重合体の割合が多すぎると、寸法精度および機械的強度が低下し、また少なすぎると耐薬品性改良効果が達成されない。
【0035】
本発明の樹脂組成物においては、上記の成分の他にさらに任意的に、(D)スチレン系樹脂を配合することができる。
【0036】
スチレン系樹脂は、それ自体公知のものであり一般式(III):
【0037】
【化3】
(上記式中、R′は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であり、Z′はハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルキル基である置換基を示し、qは0〜5の整数である)
で示されるビニル芳香族化合物から誘導された繰り返し構造単位を、その重合体中に少なくとも25重量%以上有するものでなければならない。かかるスチレン系樹脂としては、例えばホモポリスチレン、スチレン含有共重合体、例えば、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS)などを挙げることができる。ホモポリスチレンは、アタクチック構造およびアイソタクチック構造のものを包含する。またスチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、水素化・スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、水素化・スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SEPS)などが挙げられる。これらスチレン系樹脂は一種単独でも、あるいは二種類以上の組み合わせでも使用できる。極性基を有する変性剤により一部あるいは全部が変性されていてもかまわない。
【0038】
(D)スチレン系樹脂は、(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対して、50重量部以下の量で配合されるのが好ましく、さらに好ましくは5〜50重量部である。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を達成するために、総結晶化度を表すΔEが、ΔE<54を満たすのが好ましい。より好ましくはΔE≦50を満たす。ΔEは、次式(i):
【0040】
【数1】
ΔE(%)=Ec/(Esps ×W)×100 (i)
(上記式中、Ecは、示差走査熱量計により測定した樹脂組成物の結晶化エネルギー(単位:mJ/mg)であり;Esps は、前記Ecと同一条件で測定したシンジオタクチックスチレン系重合体単体の結晶化エネルギー(単位:mJ/mg)であり;Wは、樹脂組成物中におけるシンジオタクチックスチレン系重合体の重量比率である)で示される。このように、ΔEは総結晶化度の尺度である結晶化エネルギーの割合を表す。ここで、Ecは、示差走査熱量計により測定した樹脂組成物の結晶化エネルギーである(単位:mJ/mg)。Ecの値は、次のようにして求める:不活性ガス雰囲気中で溶融させた樹脂組成物を−20℃/分の速度で降温していき、その時の結晶化挙動をプロットして、得られた結晶化ピークの面積を求め、結晶化エネルギー(Ec)とする。Esps は、シンジオタクチックスチレン系重合体単独で測定した結晶化エネルギー(単位:mJ/mg)であり、Ecと同一条件で測定したものである。Wは、樹脂組成物中におけるシンジオタクチックスチレン系重合体の重量比率である。
【0041】
なお、樹脂組成物について結晶化エネルギーのピークが得られない場合、すなわちEcの値が測定できない場合は、Ec=0であり、ΔE値は0である。
【0042】
(B)シンジオタクチックスチレン系重合体の配合量が60重量部以上になると、ΔEが54%以上となり、成形加工中に結晶化が進行しすぎることによる成形収縮による寸法精度の悪化、組成物の脆性化が進み衝撃強度等の機械的強度の低下を引き起こすのみでなく、結晶成分が多いにもかかわらず逆に耐薬品性が低下してしまうことがある。またこの過剰な範囲での配合に於いては、結晶化に伴う白濁、不透明感が組成物に発生し、従来の変性ポリフェニレンエーテル樹脂の持つ透明アモルファス特性を失う。
【0043】
従って成分(B)が前述の組成範囲、すなわちΔE値<54を満たすときに、このアモルファス樹脂であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物の特徴である高い寸法精度、および優れた諸特性を損なうことなく、実用性の有る耐薬品性改良効果を引き出すことができる。
【0044】
また、本発明においては、種々の難燃剤を用いることができる。例えばリン酸エステル系難燃剤、ハロゲン系難燃剤などが挙げられる。中でも、安全衛生上の観点からリン酸エステル系難燃剤が好ましい。リン酸エステル系難燃剤の例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)-2,3- ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、および(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート等のポリホスフェートが挙げられ、好ましくはトリフェニルホスフェート及び各種ポリホスフェートである。
【0045】
また、本発明の樹脂組成物には、上記の成分の他に、本発明の主旨を阻害しない範囲で、樹脂の混合時あるいは成形時に、他の樹脂、ゴム状物質(例えばポリブタジエン、ポリイソプレンなど。ただしスチレン系エラストマーを除く)、慣用の添加剤、例えば顔料、染料、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維など)、充填剤(カーボンブラック、マイカ、タルク、シリカ、酸化チタンなど)、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤、帯電防止剤、抗菌、抗カビ剤などを添加することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物を製造するための方法に特に制限はなく、通常の方法が適宜使用できる。一般には、溶融混練法が望ましい。装置としては特に押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を例として挙げることができ、これらを回分的または連続的に運転する。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形等任意の成型法を用いて、任意の形に成形することによって、任意の成形品を得ることができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、次の条件:
(i) 1%以上の歪み条件で行った耐薬品性クラック試験において、油脂、グリースおよび有機溶剤から選ばれる有機物質に24時間以上さらされても、亀裂破壊を生じない、および
(ii)射出成形にて作成した角板試験片(100 mm×100 mm×厚み3 mm)における成形収縮率が流動方向0.8%以下、かつ流動垂直方向0.8%以下である、
を同時に満たすことが好ましい。ここで、1.5%歪み耐薬品性クラック試験において使用される有機物質の具体例としては、例えば天ぷら油、サラダオイル、エポキシ硬化剤、エンジンオイル、ガソリン、潤滑油、ワックスリムーバー液、防錆剤等が挙げられる。
【0049】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
なお、実施例および比較例において、各成分は以下の物質を使用した。
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂:
PPE:固有粘度(クロロホルム、25℃)0.48dl/gのポリ(2,6-ジメチル-1,4- フェニレン)エーテル、日本ジ−イ−プラスチックス(株)社製
(B)シンジオタクチックポリスチレン:
S−PS:商標;ザレック 70Z(分子量250,000 、13C−NMRの分析によるラセミペンダット率で表したシンジオタクティシティーが97%)、出光石油化学工業(株)製)
(C)ハイインパクトスチレン系樹脂:
HIPS:ハイインパクトポリスチレン(商標;HT644、三菱化成(株)製)
(D)スチレン系樹脂:
A−PS:汎用アタクチックポリスチレン(商標;CR3500、大日本インキ(株)製)
SBS:スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、Kraton D1101CU (シェル社製)
実施例1〜4および比較例1〜11
(1)押し出し工程
各成分を表1〜2に示す割合(重量比)で配合し、ヘンシルミキサーにてブレンドした後、30mmの二軸押出機にて、混練設定温度300℃および回転数300rpmの条件で溶融混練し、ペレットを作った。
(2)成形工程
上記で得られたペレットを、射出成形機(東洋機械金属株式会社製、80トン)にて、シリンダー設定温度300℃および金型温度80℃の条件で射出成形し、試験片を得た。
【0051】
得られた試験片を用いて、以下の試験を行った。結果を表1〜2に示す。
a:耐薬品性試験:
射出成形で得られた3.2mm ×12.7mm×63.5mm の試験片を図1に示す強制1.5%曲げ歪み治具に固定し、耐薬品性テストを行った。
【0052】
溶剤は下記のものを使用した。:
*ワックスリムーバー(WAX REMOVER )液:ユシロ化学工業(株)製、ST−7*エポキシ硬化剤:トシダ(Toshida) 社製、TCG1672
*グリース:共同油脂(株)製、マルテンプSRL
*天ぷら油:(株)昭和製、
*エンジンオイル:(株)シェル プレミアム(SHELL PREMIUM)社製、5W30
*ガソリン:(株)日本石油製、レギュラーガソリン
*防錆剤:クベ(KURE)工業(株)製、CRC556
試験方法は以下の通りであった:
図1に示した1.5%の曲げ歪み治具の歪曲部分(4)に試験片(3)を固定し、試験片湾曲部上面に12.7mm×12.7mmのガーゼ(1)を敷き、このガーゼ全体に溶剤(2)が浸み渡るように溶剤を滴下し、滴下後から試験片が完全に破断するまでの時間を測定し、その時間の長短を耐薬品性の尺度とした。24時間経過しても何ら破壊が起こらないものはNo Breakとしてその時点で実験を終了した。この理由は、実際の使用において1.5%という高い歪みがかかる用途は皆無であり24時間以上実験継続は実用面から見て不要と考えられたからである。また、溶剤がグリースの場合は試験片上に直接塗布し測定を行った。
【0053】
試験は、次の温度で行った:
グリース、天ぷら油、エンジンオイルの場合は85℃エアオーブン中で計測し、ワックス リムーバー液、ガソリン、防錆剤およびエポキシ硬化剤は、揮発性で発火の恐れがあるので、室温ドラフト内で行った。
b:成形収縮率の測定(寸法精度の評価):
図2に示す100mm ×100mm × 3 mm の平板試験片を、FANAC 社製 FAS-T100D (100 トン)成形機で、前述同様の成形条件(シリンダー設定温度300℃および金型温度80℃)のフィルムゲート(5)にて成形した。試験片を、室温23℃、湿度50%下で24時間放置後、三次元測定器(AF211 Mitutoyo製)にて、a 方向およびb 方向を5回測定し、その平均をそれぞれ、成形収縮率流れ方向(図2においてaで示す)および成形収縮率流れ垂直方向(図2においてbで示す)とした。またナイロンの成形時金型温度は無添加一般最適条件の60℃を、またPPE/ナイロンアロイ(NORYL GTX600)においては無添加一般最適条件の80℃を採用した。
c:アイゾット衝撃性試験:
射出成形で得られた3.2mm ×12.7mm×63.5mm の試験片について、ノッチ付きでASTM D-256に従い、アイゾット衝撃強度を測定した。
d:HDT(熱変形温度):
射出成形で得られた6.4mm ×12.7mm×63.5mm の試験片について、ASTM D648 に従い、18.6kg加重の条件下で、油槽の中で2℃/分の速度にて昇温し、熱変形温度を測定した。
e:MI(メルトフローインデックス)
株式会社TAKARA製のメルトインデクサーを用いて、250℃にて10kg加重の条件下で測定を行った。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
表1において、比較例1は、実施例1と同じ量のシンジオタクチックポリスチレン(S−PS)を配合しているが、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)は配合していないPPE組成物である。実施例1と比べて耐薬品性が非常に劣ることがわかる。
【0056】
次に、実施例1と比較例2および3を比べると、S−PSおよびHIPSが含まれない比較例2(PPE/A−PS系)では、耐薬品性が著しく劣ることがわかる。またHIPSを配合せず、その代わりにA−PSを配合している比較例3(PPE/S−PS/A−PS系)では、比較例2よりは耐薬品性改善効果がみられるが、実施例1(PPE/S−PS/HIPS系)に比べるとなお耐薬品性は非常に劣っている。同様のことが、実施例2と比較例5および6とを比較した場合、実施例3と比較例8および9とを比較した場合(表2)、ならびに実施例4と比較例10および11とを比較した場合(表2)についてもいえる。このように、PPEへS−PSを配合することによって耐薬品性の向上効果は認められるが、さらにHIPSを配合することにより、著しい耐薬品性の向上効果が得られる。A−PSとS−PSの組合せでは、このような効果は得られない。耐衝撃性改良を目的として使用される、耐薬品性とは無関係であると考えられていたHIPSの配合によって、このように耐薬品性が向上されることは驚くべきことである。また、いずれの実施例の組成物においても、機械的強度等の特性および成形収縮率(寸法精度)は、PPE/A−PS系と同等である。
【0057】
また、比較例4および7は、S−PSを過剰量添加した場合であり、それぞれ実施例1および2と比較すると、耐薬品性は同等であるが、成形収縮率が非常に高く、寸法精度が悪化していることがわかる。
【0058】
以上のことから、特定範囲の量のS−PSをHIPSと組合せて使用したときに初めて、高い寸法精度を保持しつつ、優れた耐薬品性を有するPPE系樹脂組成物が得られることがわかる。
【0059】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、従来のポリフェニレンエーテル系樹脂(アモルファス樹脂)の有する特性(特に寸法安定性)を損なうことなく、耐溶剤性を著しく向上せしめた。また、難燃剤、充填剤(グラスファイバー、マイカ等)などの添加によっても、このような利点は損なわれない。したがって、本発明の樹脂組成物は、従来、使用が制限されていたワックス、機械油・エンジンオイル、防錆剤、芳香剤などが付着する恐れのある自動車外装、エンジンルーム部品、客室内インテリア;揩動用潤滑油、グリース、クリーナーが付着する恐れのある事務機器、コンピューター関連機器などの部品(例えば内部パーツ、ファンモーターケース、プラスチックシャーシー);サラダ油、天ぷら油、その他の有機溶媒の付着の可能性のある家電、商業用電化製品部品;あるいは油煙、有機ガスが立ち込めるような環境(例えば工場環境、建築関連)で使用される電気電子機器の部品のような用途に好適である。特に、歪みのかかった部位に使用するのに適している。よって工業的に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐薬品性試験において使用した、強制1.5%曲げ歪み治具である。
【図2】成形収縮率の測定において使用した、100mm ×100mm × 3 mm の平板試験片である。
【符号の説明】
a 成形収縮率流れ方向
b 成形収縮率流れ垂直方向
1 ガーゼ
2 溶媒
3 試料
4 歪曲部分
5 ゲート
Claims (5)
- (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂および(B)シンジオタクチックスチレン系重合体を含む樹脂組成物において、
(1) さらに(C)ハイインパクトスチレン系樹脂を含み、
(2) (A)10〜90重量部に対して(C)90〜10重量部、かつ(A)および(C)の合計40重量部より多く95重量部以下に対して(B)5重量部以上60重量部未満が含まれる
ことを特徴とする樹脂組成物。 - (A)20〜80重量部に対して(C)80〜20重量部が含まれる請求項1記載の樹脂組成物。
- (A)および(C)の合計50〜90重量部に対して、(B)10〜50重量部が含まれる請求項1または2記載の樹脂組成物。
- さらに、(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対して、(D)スチレン系樹脂を5〜50重量部以下の量含み、(D)スチレン系樹脂は(B)及び(C)ではない、請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
- 次の条件:
(i) 1%以上の歪み条件で行った耐薬品性クラック試験において、油脂、グリースおよび有機溶剤から選ばれる有機物質に24時間以上さらされても、亀裂破壊を生じない、および
(ii)射出成形にて作成した角板試験片(100 mm×100 mm×厚み3 mm)における成形収縮率が流動方向0.8%以下、かつ流動垂直方向0.8%以下である、
を同時に満たす請求項1〜4のいずれか1項記載の樹脂組成物。
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