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JP4343517B2 - アルカリ電池用セパレータ及びこれを用いたアルカリ電池 - Google Patents

アルカリ電池用セパレータ及びこれを用いたアルカリ電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルカリ電池用セパレータ及びこれを用いたアルカリ電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、アルカリ電池の正極と負極とを分離して短絡を防止するために、正極と負極との間にセパレータが使用されている。このセパレータは前記分離作用に加えて、起電反応を円滑に行なうことができるように、電解液の保持性に優れていることも重要である。
【0003】
セパレータの電解液の保持性を高める手段の1つとして、セパレータ構成繊維の表面積を広くする方法があり、例えば、繊維表面積の広い多孔質繊維を使用したセパレータが公知である。
【0004】
この多孔質繊維を使用したセパレータとして、例えば、(1)多孔質繊維を構成する樹脂と多孔質繊維を構成する樹脂とは或る溶媒に対する溶解性の異なる樹脂(異種樹脂)とを混合して紡糸した後に、前記異種樹脂を除去して製造した多孔質繊維を使用したセパレータ(例えば、特開平7−130347号公報、特開平6−196144号公報)、(2)多孔質繊維を構成する樹脂と発泡剤とを混合して紡糸した後に発泡剤を発泡させて製造した多孔質繊維を使用したセパレータ(例えば、特開昭59−196556号公報、特開昭60−65449号公報)、(3)ポリオレフィン系繊維を特定の条件下で延伸する際に多孔質化して製造した多孔質繊維を使用したセパレータ(例えば、特開平2−304862号公報)、などが知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−130347号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平6−196144号公報(段落番号0011)
【特許文献3】
特開昭59−196556号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開昭60−65449号公報(第2頁右上欄第16行〜第18行)
【特許文献5】
特開平2−304862号公報(第3頁左上欄第7行〜第19行)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法によって製造された多孔質繊維はいずれも繊維の内部から繊維表面にわたる広い範囲に微細孔を有するものであったため、多孔質繊維自体の機械的強度が低いばかりでなく、圧力によって潰れやすいものであった。そのため、この多孔質繊維を用いたセパレータは機械的強度が弱いため電池製造時の取り扱い性の悪いものであるばかりでなく、圧力によって潰れやすく、電池製造時又は充放電時に十分な量の電解液を保持できないため、高率放電性能が良くないものであった。
【0007】
特に、近年においては、電池の高容量化のために、活物質を多く使用することが好ましいため、セパレータの占める体積も小さくならざるを得ない状況下において、前述のような多孔質繊維を使用して、薄いセパレータを製造した場合には、機械的強度が弱い点、及び十分な量の電解液を保持できないという点は致命的であった。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、機械的強度及び電解液の保持性に優れるアルカリ電池用セパレータ、及びこれを用いたアルカリ電池を提供することを目的とする。
【0009】
請求項1に係る発明は、「繊維表面に、繊維表面側から孔を観察した際に繊維の厚さ方向における孔の最深部を、孔の開孔部から確認できる状態にある孔のみを有する表面多孔繊維を含む繊維シートからなることを特徴とするアルカリ電池用セパレータ。」である。このように表面多孔繊維は繊維表面に、繊維表面側から孔を観察した際に繊維の厚さ方向における孔の最深部を、孔の開孔部から確認できる状態にある孔のみを有するため、圧力によって潰れにくく、しかも機械的強度の優れるものである。また、繊維表面に孔を有するため繊維表面積が広く、電解液の保持性にも優れている。したがって、このような表面多孔繊維を含む繊維シートからなるアルカリ電池用セパレータは、電池製造時の取り扱い性に優れ、また電池製造時又は充放電時に圧力がかかったとしても、十分な量の電解液を保持できるものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、「孔の平均深さが0.1〜10μmであることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ電池用セパレータ」である。孔の平均深さがこの範囲内にあると、特に圧力によって潰れにくく、機械的強度が優れている。
【0011】
請求項3に係る発明は、「繊維表面における孔の平均径が0.1〜10μmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のアルカリ電池用セパレータ」である。孔の平均径がこの範囲内にあると、特に電解液の保持性に優れている。
【0012】
請求項4に係る発明は、「繊維表面における孔の個数が100μmあたり10〜1000個であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のアルカリ電池用セパレータ」である。孔の個数がこの範囲内にあると、特に電解液の保持性に優れている。
【0013】
請求項5に係る発明は、「表面多孔繊維のみから構成される繊維シートからなることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のアルカリ電池用セパレータ」である。表面多孔繊維のみから構成されているため、繊維表面積が広く、特に電解液の保持性に優れている。
【0014】
請求項6に係る発明は、「表面多孔繊維が、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤付与処理、放電処理、親水性樹脂付与処理の中から選ばれる親水化処理が施されていることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のアルカリ電池用セパレータ」である。親水化処理が施されていることによって、更に電解液の保持性に優れている。また、本発明の表面多孔繊維に親水化処理を施した場合、その耐久性も優れていることを見出したため、アルカリ電池の長寿命化に寄与することができる。
【0015】
請求項7に係る発明は、「請求項1〜請求項6のいずれかに記載のアルカリ電池用セパレータを備えたアルカリ電池」である。そのため、本発明のアルカリ電池は高率放電性能に優れ、生産性良く製造できるものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のアルカリ電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ということがある)は繊維表面のみに孔を有する表面多孔繊維を含む繊維シートからなるため、繊維表面積が広く、電解液の保持性に優れている。また、繊維表面のみに孔を有する表面多孔繊維を含んでいるため、本発明のセパレータは圧力によって潰れにくく、しかも機械的強度が優れている。
【0017】
本発明の表面多孔繊維はセパレータの電解液保持性を高めるために含んでいるが、機械的強度に優れ、圧力によって潰れにくいように、繊維表面のみに孔を有している。本発明における「繊維表面のみ」とは、表面から見える(例えば、走査型電子顕微鏡で繊維の表面を撮影した映像で見える)孔のみが、表面多孔繊維の表面に形成されていることを意味する。この繊維表面のみに孔を有する表面多孔繊維の一部拡大断面図である図1(a)、(b)から明らかなように、繊維表面側から孔を観察した際に、繊維の厚さ方向における孔の最深部を、孔の開孔部から確認できる状態にある。別の見方をすると、孔は繊維表面が陥没した、又は繊維表面の一部をくりぬいたような形状にある。これに対して、従来の方法により製造した多孔質繊維は繊維表面に開孔を有しているものの、繊維表面から繊維の厚さ方向における孔の最深部を観察することができない。このような従来の多孔質繊維は表面積が広いものの、繊維内部にまで孔が到達しているため、機械的強度が低く、圧力によって潰れやすいものである。
【0018】
本発明の表面多孔繊維の孔の形状は、孔の概念から外れない限り(孔の概念から外れるものとしては、例えば、筋状、線状、帯状、山脈状、溝状、又は皺状などがある)、特に限定されるものではなく、半円球状であるのが好ましい。この「半円球状」とは、略半円球、略半楕円球、又は半多面体である形状を含み、更に略半円球、略半楕円球、又は半多面体を形成する面に凹凸を有する形状も含む。
【0019】
本発明の表面多孔繊維の孔の繊維表面における開孔部の形状は特に限定するものではないが、略円形、略多角形などを挙げることができる。ここで、開孔部とは、図1(a)、(b)に示すように、表面多孔繊維の表面12に形成されている孔11の開孔によって形成される輪郭をいう。
【0020】
また、前記開孔部(繊維表面における孔)の平均径は0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましく、0.1〜3μmであることが更に好ましい。前記開孔部の平均径が0.1μm未満であると、電解液の保持性を低下させる傾向があり、10μmを超えると、繊維表面積があまり広くならないばかりか、表面多孔繊維の機械的強度を低下させる傾向があるためである。ここで、「開孔部の平均径」とは、繊維の側面を走査型電子顕微鏡等で拡大して撮影し、その繊維の映像で確認しうる開孔部の外接円の直径について、繊維側面の任意の500箇所以上からのサンプリングによる数平均開孔部径をいう。
【0021】
また、前記開孔部の長径と短径の比は特に限定するものではないが、前記開孔部の長径は短径の5倍以下であるのが好ましく、3倍以下であるのがより好ましく、2倍以下であるのが更に好ましい。なお、「開孔部の長径」とは、繊維側面の走査型電子顕微鏡等による映像上に現れる孔において、開孔部の輪郭上の任意の2点間を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さを指し、「開孔部の短径」とは、前記開孔部の長径に直交する直線と開孔部の輪郭とが交わる2点を結ぶ任意の直線のうち最も長い直線の長さを指す。なお、前記開孔部の長径に直交する1つの直線に対して、開孔部の輪郭とが交わる点が3点以上存在する場合は、それらの点のうち任意の2点を結ぶ直線のうち最も長い直線を前記2点を結ぶ直線とする。また、前記開孔部の長径と短径との比較値は、任意の500箇所以上の孔からのサンプリングによる数平均比較値とする。
【0022】
また、前記孔の深さは、繊維の表面のみに孔が形成されている限り特に限定されるものではないが、表面多孔繊維の機械的強度に優れ、結果としてセパレータの機械的強度が優れているように、前記孔の平均深さは0.1〜10μmであるのが好ましく、0.1〜5μmであるのがより好ましく、0.1〜3μmであるのが更に好ましい。ここで、「孔の平均深さ」は、表面多孔繊維の断面をレーザー顕微鏡等で拡大して撮影し、その表面多孔繊維の映像で確認しうる各孔の最も深い部分の深さについて、繊維断面の任意の500箇所以上の孔からのサンプリングによる数平均孔深さをいう。ここで、「孔の最も深い部分の深さ」とは、図1(a)、(b)に示すように、繊維断面の映像上に現れる繊維表面を表す直線12に対して垂線を引いた時に、この垂線と孔の内壁が交わる交点と、この垂線と繊維表面を表す直線12とが交わる交点とを結ぶ直線のうち最も長い直線の長さ(図1(a)、(b)におけるbの長さ)を指す。
【0023】
なお、繊維軸方向の繊維断面の走査型電子顕微鏡等による映像上に現れる孔において、孔の長さと開孔巾との比は特に限定するものではないが、孔の長さは開孔巾の0.6〜3倍であるのが好ましく、0.7〜2倍であるのがより好ましい。この「孔の長さ」とは、図1(c)、(d)に示すように、開孔部の輪郭を表す両端の点(図1(c)、(d)におけるA、B)の一方の点から、孔の内壁を表す線に沿って、もう一方の点へ至るまでの道のりの長さの半分を指し、「開孔巾」は前記開孔部の輪郭を表す両端の点を結ぶ直線の長さ(図1(c)、(d)におけるa)を指す。なお、開孔の長さと開孔巾との比較値は、任意の500箇所以上の孔からのサンプリングによる数平均比較値とする。
【0024】
また、前記繊維表面における孔の個数は、繊維の表面100μmあたり10〜1000個であることが好ましく、20〜500個であることがより好ましく、40〜200個であることが更に好ましい。前記孔の個数が、繊維の表面100μmあたり10個以上であることによって、電解液の保持性に優れており、他方、繊維の表面100μmあたり1000個以下であることによって、表面多孔繊維の機械的強度に優れている。この繊維表面における孔の個数は、繊維の側面を走査型電子顕微鏡等で拡大して撮影し、その繊維の映像をもとに孔の個数を数えることができる。
【0025】
なお、本発明の表面多孔繊維は繊維表面全体に均一に孔を備えている必要はない。例えば、表面多孔繊維のセパレータの面壁側表面においては多数の孔を有するものの、表面多孔繊維のセパレータの側壁側表面においては前記面壁側表面よりも孔の数が少ない状態にあっても良い。このような表面多孔繊維は、例えば、繊維シートを形成した後に後述のような方法により表面多孔繊維を形成した場合に形成されやすい。
【0026】
本発明の表面多孔繊維は上述のような構造からなるが、どのような樹脂から構成されていても良い。しかしながら、強アルカリである電解液によっても侵されることがないように、少なくとも繊維表面(両端部を除く)がポリオレフィン系樹脂から構成されているのが好ましい。このポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂(例えば、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン)、エチレン系共重合樹脂(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸など)、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン)、プロピレン系共重合体(例えば、エチレン−ブテン−プロピレン共重合体、エチレン−ブタジエン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体など)、ポリメチルペンテン系樹脂(例えば、ポリメチルペンテン)、メチルペンテン系共重合体などを挙げることができる。これらの中でも、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を繊維表面を構成する樹脂として含んでいるのが好ましい。
【0027】
また、表面多孔繊維の平均繊維径は特に限定されるものではないが、平均繊維径は電解液の保持性に優れているように、55μm以下であるのが好ましく、25μm以下であるのがより好ましく、15μm以下であるのが更に好ましい。また、機械的強度に優れているように、0.2μm以上であるのが好ましく、1μm以上であるのがより好ましく、5μm以上であるのが更に好ましい。ここで、「平均繊維径」とは、繊維の任意の500箇所以上の繊維径の数平均繊維径をいう。なお、市販されている繊維の場合、カタログや仕様書に数平均繊維径が明示されている場合は、その値を繊維の平均繊維径としてもよいし、カタログや仕様書に繊度が明示されている場合には、繊度から換算した値を平均繊維径としてもよい。なお、「繊維径」とは、繊維の横断面形状が円形である場合にはその直径をいい、円形以外の場合には、横断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とみなす。
【0028】
なお、表面多孔繊維の「繊維長」は、表面多孔繊維の分散性に優れ、電極間の隔離性に優れているように、100mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。なお、表面多孔繊維の繊維長の下限は特に限定するものではないが、1mm程度が適当である。この「繊維長」は、JIS L 1015(化学繊維ステープル試験法)B法(補正ステープルダイヤグラム法)により得られる値をいう。
【0029】
本発明の表面多孔繊維の横断面形状は円形である必要はなく、非円形(例えば、三角形などの多角形、長円、楕円、T状などアルファベット形状など)でも良い。また、一部又は全部がフィブリル化した状態にある表面多孔繊維であっても良い。
【0030】
本発明のセパレータを構成する繊維シートは上述のような表面多孔繊維を含むものであるが、表面多孔繊維量が多ければ多いほど、繊維表面積が広く電解液の保持性に優れているため、表面多孔繊維は繊維シート中、60mass%以上を占めているのが好ましく、70mass%以上を占めているのがより好ましく、90mass%以上を占めているのが更に好ましく、表面多孔繊維のみから構成されているのが最も好ましい。なお、表面多孔繊維以外の繊維としては、例えば、表面以外にも孔を有する繊維や、孔を全く備えていない繊維などを挙げることができる。
【0031】
本発明のセパレータを構成する繊維シートの構造としては、例えば、織物構造、編物構造、不織布構造などを挙げることができるが、網目状の構造をもつことができ、構造的に電解液の保持性に優れている不織布構造であるのが好ましい。
【0032】
また、本発明のセパレータを構成する表面多孔繊維は電解液の保持性に優れるように、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤付与処理、放電処理、親水性樹脂付与処理の中から選ばれる親水化処理が施されているのが好ましい。また、このような親水化処理を施した表面多孔繊維を含む繊維シートは、親水性の耐久性も優れていることを見出した。そのため、アルカリ電池の長寿命化に寄与することができる。これら親水化処理の中でも、放電処理が特に親水性の耐久性に優れているため好適である。
【0033】
スルホン化処理としては、特に限定するものではないが、例えば、発煙硫酸、硫酸、三酸化イオウ、クロロ硫酸、又は塩化スルフリルからなる溶液中に表面多孔繊維を浸漬してスルホン酸基を導入する方法や、一酸化硫黄ガス、二酸化硫黄ガス或いは三酸化硫黄ガスなどの存在下で放電を作用させて表面多孔繊維にスルホン酸基を導入する方法等がある。
【0034】
フッ素ガス処理についても、特に限定するものではないが、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)で希釈したフッ素ガスと、酸素ガス、二酸化炭素ガス、及び二酸化硫黄ガスなどの中から選ばれる少なくとも1種類のガスとの混合ガスに、表面多孔繊維をさらすことにより表面多孔繊維を親水化することができる。なお、表面多孔繊維に二酸化硫黄ガスをあらかじめ付着させた後に、フッ素ガスを接触させると、より効率的に恒久的な親水性を付与することができる。
【0035】
ビニルモノマーのグラフト重合としては、ビニルモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、或いはスチレンを使用することができる。なお、スチレンをグラフト重合した場合には、電解液との親和性を付与するために、スルホン化するのが好ましい。これらの中でも、アクリル酸は電解液との親和性に優れているため好適に使用できる。
【0036】
これらビニルモノマーの重合方法としては、例えば、ビニルモノマーと重合開始剤を含む溶液中に表面多孔繊維を浸漬して加熱する方法、表面多孔繊維にビニルモノマーを塗布した後に放射線を照射する方法、表面多孔繊維に放射線を照射した後にビニルモノマーと接触させる方法、増感剤を含むビニルモノマー溶液を表面多孔繊維に付着させた後に紫外線を照射する方法などがある。なお、ビニルモノマー溶液と表面多孔繊維とを接触させる前に、紫外線照射、コロナ放電、プラズマ放電などにより、表面多孔繊維を表面改質すると、ビニルモノマー溶液との親和性が高いため、効率的にグラフト重合できる。
【0037】
界面活性剤処理としては、例えば、アニオン系界面活性剤(例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸塩、もしくはスルホコハク酸エステル塩など)、又はノニオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、もしくはポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルなど)の溶液中に表面多孔繊維を浸漬したり、この溶液を表面多孔繊維に塗布又は散布して付着させることができる。
【0038】
放電処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、沿面放電処理又は電子線処理などがある。なお、繊維シートを形成した後に放電処理を実施する場合、空気中の大気圧下で、それぞれが誘電体を担持する一対の電極間に、これら両方の誘電体と接触するように繊維シートを配置し、これら両電極間に交流電圧を印加して、繊維シートの内部空隙で放電を発生させる方法であると、繊維シートの外側だけではなく、繊維シートの内部を構成する表面多孔繊維の表面も処理することができる。したがって、セパレータの内部における電解液の保持性に優れている。
【0039】
親水性樹脂付与処理としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、架橋可能なポリビニルアルコール、又はポリアクリル酸などの親水性樹脂を付着させることができる。これらの親水性樹脂は適当な溶媒に溶解又は分散させた後、この溶媒中に表面多孔繊維を浸漬したり、この溶媒を表面多孔繊維に塗布又は散布し、乾燥して付着させることができる。なお、親水性樹脂の付着量は、表面多孔繊維全体の0.3〜5mass%であるのが好ましい。
【0040】
この架橋可能なポリビニルアルコールとしては、例えば、水酸基の一部を感光性基で置換したポリビニルアルコールがあり、より具体的には、感光性基としてスチリルピリジニウム系のもの、スチリルキノリニウム系のもの、スチリルベンゾチアゾリウム系のもので置換したポリビニルアルコールがある。この架橋可能なポリビニルアルコールも他の親水性樹脂と同様にして表面多孔繊維に付着させた後、光照射によって架橋させることができる。このような水酸基の一部を感光性基で置換したポリビニルアルコールは耐アルカリ性に優れ、しかもイオンとキレートを形成できる水酸基を多く含んでおり、放電時及び/又は充電時に、極板上に樹枝状の金属が析出する前のイオンとキレートを形成し、電極間の短絡を生じにくいので好適に使用できる。
【0041】
本発明のセパレータは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0042】
まず、表面非多孔繊維を用意する。この表面非多孔繊維は繊維表面に少なくとも熱可塑性樹脂を備えた繊維表面に孔のない繊維であり、後述の手段によって繊維表面のみに孔を形成して表面多孔繊維となる。この熱可塑性樹脂の繊維表面に占める面積は特に限定するものではないが、広ければ広いほど表面多孔繊維の表面積を広くすることができるため、繊維表面積の50%以上であるのが好ましく、60%以上であるのがより好ましく、70%以上であるのが更に好ましく、90%以上であるのが更に好ましく、100%熱可塑性樹脂からなるのが最も好ましい。
【0043】
この表面非多孔繊維としては、例えば、従来の繊維の製法である溶融紡糸法により得られる合成繊維、従来の不織布の製法であるスパンボンド法、メルトブロー法、若しくはフラッシュ紡糸法などによって得られる繊維、又は、芯部分が天然繊維若しくは無機繊維からなり鞘部分が熱可塑性樹脂からなる繊維、などを挙げることができるが、アルカリ電池用に使用するため、電解液の侵される心配のないように、少なくとも繊維表面(両端部を除く)はポリオレフィン系樹脂から構成されているのが好ましい。
【0044】
前記合成繊維としては、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、又はポリアミド系樹脂など)からなる合成繊維を挙げることができる。また、合成繊維は1種類の熱可塑性樹脂からなる合成繊維であっても、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂が複合又は混合された複合繊維であっても良い。後者の複合繊維としては、融点の異なる2種類以上の熱可塑性樹脂が複合された複合繊維を挙げることができ、例えば、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、又はポリエチレン/ポリエステルなどの樹脂の組み合わせからなる複合繊維を挙げることができる。なお、芯に高融点樹脂を有し、鞘に低融点かつポリオレフィン系樹脂を有する芯鞘型複合繊維であると、鞘成分が融着することによって繊維シート形態を維持することができ、また耐電解液性に優れているため好適である。
【0045】
次いで、上述のような表面非多孔繊維の表面に固体粒子を固着させて固体粒子固着繊維を形成する。
【0046】
この固体粒子は、前記表面非多孔繊維の表面を構成する熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有し、かつ固着後に除去することができる固体粒子である限り、無機質又は有機質のいずれであることもできる。このような固体粒子としては、例えば、表面非多孔繊維の表面を構成する熱可塑性樹脂を実質的に溶解しない溶媒(例えば、水、水溶液、酸、アルカリ性水溶液など)に対して溶解する固体粒子(例えば、水溶性無機物、金属塩、水溶性樹脂、金属など)がある。このような固体粒子は前記溶媒を用いて抽出除去することができる。また、抽出除去以外に、振動、超音波洗浄、繊維の収縮、若しくは繊維表面の剥離性向上加工などによって、除去できる固体粒子であっても良い。より具体的には、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、その他各種金属塩、水溶性樹脂、金属粒子、セラミックス、ゼオライト、その他各種無機物など、を挙げることができる。
【0047】
前記固体粒子の融点又は分解温度は、加熱した固体粒子の熱によって表面非多孔繊維の表面が溶けて又は変形して、固体粒子が繊維表面に固着されるように、表面非多孔繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の中で、最も低い融点を有する樹脂の融点よりも高いことが必要である。本発明における「融点」は示差走査熱量分析(DSC)法により得られる値をいい、「分解温度」は熱重量分析(TGA)法により得られる値をいう。
【0048】
前記固体粒子の平均粒子径は特に限定するものではないが、前述のように、表面多孔繊維の孔の平均深さが0.1〜10μmであるのが好ましく、孔の平均径が0.1〜10μmであるのが好ましいため、固体粒子の平均粒子径は0.1〜10μmであるのが好ましく、0.1〜5μmであるのがより好ましい。この固体粒子の平均粒子径は、固体粒子の数平均粒子径をいう。なお、この「数平均粒子径」は、固体粒子を走査型電子顕微鏡等で拡大して撮影し、任意の500個以上の固体粒子の粒子径を測定した後に、これら固体粒子の粒子径から算出した算術平均値をいう。この際に固体粒子が球形でない場合には、撮影した固体粒子の映像で確認しうる個々の固体粒子の外接円の直径を個々の粒子の粒子径とみなす。なお、市販されている固体粒子の場合、カタログや仕様書に数平均粒子径が明示されている場合はその値を固体粒子の平均粒子径としてもよい。
【0049】
表面非多孔繊維の表面に固体粒子を固着させて固体粒子固着繊維を形成するが、固体粒子を固着させる方法としては、例えば、前述のような固体粒子を、表面非多孔繊維の表面を構成する熱可塑性樹脂の融点以上、固体粒子の融点又は分解温度未満の温度までの、固体としての形状を保持する範囲の温度で加熱した固体粒子を表面非多孔繊維と接触させ、表面非多孔繊維表面の融着又は変形により固着させる方法がある。また、表面非多孔繊維表面を前記熱可塑性樹脂の融点以上の高い温度に加熱した状態で、前記のような固体粒子と接触させることにより、表面非多孔繊維表面の融着又は変形により固着させる方法でも良い。前者の方法によると、固体粒子が埋没してしまうことがなく、孔の平均深さを浅くすることができるためより好適である。
【0050】
この表面非多孔繊維と固体粒子との接触方法は、表面非多孔繊維に固体粒子を固着させることができる限り、特に限定されるものではないが、例えば、(1)加熱した固体粒子を含有する気流を表面非多孔繊維に吹き付ける方法、(2)加熱した固体粒子を表面非多孔繊維に対して自然落下させる方法、(3)加熱した固体粒子と表面非多孔繊維とを装入した容器を振盪する方法、(4)加熱した固体粒子の中に表面非多孔繊維を浸漬する方法、あるいは(5)加熱した固体粒子の流動層中に表面非多孔繊維を曝す方法、などを挙げることができる。
【0051】
次いで、固体粒子固着繊維の固体粒子を除去して、表面多孔繊維を得る。
【0052】
この固体粒子固着繊維の固体粒子を除去する方法は、固体粒子固着繊維の固体粒子を除去することができる限り特に限定されず、例えば、表面非多孔繊維表面を構成する熱可塑性樹脂を実質的に溶解しない溶媒で溶解する固体粒子を、前記溶媒を用いて固体粒子を除去する方法がある。例えば、固体粒子として、水溶性無機物、金属塩、水溶性樹脂、金属などを用い、溶媒として、例えば、水、水溶液、酸、アルカリ性水溶液などを用いて固体粒子を除去できる。特に、固体粒子として金属塩又は水溶性樹脂を用い、水で除去する方法は、生産コストの負担が少なく好適である。このような金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどがある。また、このような水溶性樹脂として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸などがある。
【0053】
固体粒子固着繊維の固体粒子を除去する他の方法として、例えば、固体粒子固着繊維を振動させて固体粒子を剥離させる方法、固体粒子固着繊維を超音波洗浄によって固体粒子を剥離させる方法、或いは固体粒子固着繊維を伸長又は収縮させて、固体粒子を剥離させる方法などを挙げることができる。
【0054】
このような製造方法により製造された表面多孔繊維は、表面非多孔繊維が本来有する繊維強度などの諸物性を維持したまま、繊維表面のみに孔を有するものである。また、固体粒子の形状及び大きさに応じた孔を形成できるため、適宜固体粒子を選択することによって、適用するアルカリ電池に適した孔を形成できる。
【0055】
なお、このように製造された表面多孔繊維に対して、前述のような方法により、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤付与処理、放電処理、親水性樹脂付与処理の中から選ばれる親水化処理を施すと、電解液の保持性に優れているばかりでなく、その耐久性も優れている。
【0056】
次いで、このようにして得た表面多孔繊維を用いて、常法により繊維シートを形成する。なお、表面多孔繊維だけではなく、表面多孔繊維以外に、表面以外にも孔を有する繊維や孔を全く備えていない繊維などを併用して繊維シートを形成しても良い。
【0057】
例えば、好適である不織布構造とする場合、まず、カード法やエアレイ法などの乾式法、或いは湿式法により繊維ウエブを形成する。特に、湿式法により得られた繊維ウエブは目付及び厚さのばらつきが小さいので、均一なセパレータを得ることができる。次いで、繊維ウエブをそのまま不織布として使用してもよいが、交絡処理及び/又は熱処理を行ってセパレータの機械的強度を高めるのが好ましい。交絡処理としては、例えば、水流交絡処理やニードルパンチによる交絡処理などを挙げることができる。他方、熱処理は、繊維ウエブ構成繊維の互いの接触点を融着させて、機械的強度を高めることができる。なお、熱処理温度は表面多孔繊維の孔を塞がないように適宜調整する必要がある。この熱処理温度は実験的に適宜決定することができる。
【0058】
以上は、表面非多孔繊維から表面多孔繊維を形成した後に、場合により表面多孔繊維の親水化処理、及び繊維シートの形成を順に実施するセパレータの製造方法であるが、本発明のセパレータはこの製造方法に限定されず、例えば、順に(1)表面多孔繊維の形成−繊維シート形成−親水化処理、(2)表面非多孔繊維の親水化処理−親水化表面多孔繊維の形成−繊維シート形成、(3)表面非多孔繊維の親水化処理−繊維シート形成−親水化表面多孔繊維の形成、(4)表面非多孔繊維を用いた繊維シート形成−繊維シートの親水化処理−親水化表面多孔繊維の形成、(5)表面非多孔繊維を用いた繊維シート形成−表面多孔繊維の形成−親水化処理、などを挙げることができる。これらの中でも、前記(3)、(4)及び(5)の方法によると、セパレータの機械的強度を高めるために表面非多孔繊維を融着させたとしても、融着後に表面多孔繊維を形成するため、表面多孔繊維の表面積を減少させることなく、電解液の保持性に優れるセパレータを製造できるため好適である。また、前記(1)又は(5)の方法によると、親水化処理を最終工程としており、その後の処理によって親水性が損なわれないため好適である。したがって、前記両方を満たす前記(5)の方法により製造するのが最も好適である。
【0059】
本発明のアルカリ電池は前述のようなセパレータを使用したものである。前述のセパレータは電池製造時の取り扱い性に優れ、また電池製造時又は充放電時に圧力がかかったとしても、十分な量の電解液を保持できるものであるため、本発明のアルカリ電池は高率放電性能に優れ、生産性良く製造できるものである。
【0060】
本発明のアルカリ電池は前述のようなセパレータを使用したこと以外は、従来のアルカリ電池と全く同様であることができる。
【0061】
例えば、円筒型ニッケル−水素電池は、ニッケル正極板と水素吸蔵合金負極板とを前述のようなセパレータを介して渦巻き状に巻回した極板群を金属のケースに挿入した構造を有する。前記ニッケル正極板としては、例えば、スポンジ状ニッケル多孔体に水酸化ニッケル固溶体粉末からなる活物質を充填したものを使用することができ、水素吸蔵合金負極板としては、例えば、ニッケルメッキ穿孔鋼板、発泡ニッケル、或いはニッケルネットに、AB系(希土類系)合金、AB/AB系(Ti/Zr系)合金、或いはAB(Laves相)系合金を充填したものを使用することができる。なお、電解液として、例えば、水酸化カリウム/水酸化リチウムの二成分系のもの、或いは水酸化カリウム/水酸化ナトリウム/水酸化リチウムの三成分系のものを使用することができる。また、前記ケースは安全弁を備えた封口板により、絶縁ガスケットを介して封口されている。更に、正極集電体や絶縁板を備えており、必要であれば負極集電体を備えている。
【0062】
なお、本発明のアルカリ電池は円筒形である必要はなく、角型、ボタン型などであっても良い。角型の場合には、正極板と負極板との間にセパレータが配置された積層構造を有する。また、本発明のアルカリ電池はニッケル−水素電池に限定されず、アルカリ・マンガン電池、酸化銀電池、水銀電池、ニッケル電池、アルカリ空気電池、酸化水銀−カドミウム電池、空気−亜鉛電池、ニッケル−カドミウム蓄電池、酸化銀−亜鉛蓄電池、酸化銀−カドミウム蓄電池、ニッケル−亜鉛蓄電池、ニッケル−鉄蓄電池であることもできる。
【0063】
以下、本発明のセパレータの実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
【実施例】
(実施例1)
芯成分がポリプロピレンからなり、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点:135℃)からなる、繊度が0.8dtex(平均繊維径:10μm)で繊維長が5mmの芯鞘型複合繊維(表面非多孔繊維、繊維表面全部を鞘成分が占める、横断面形状:円形)100重量%を分散させたスラリーを、湿式抄造法により繊維ウエブを形成した。この繊維ウエブを温度135℃に設定された熱風循環式ドライヤーに供給して、乾燥及び芯鞘型複合繊維の鞘成分を融着させた後、温度60℃のロールプレス機で厚さを調整し、目付が50g/mで厚さが0.12mmの湿式不織布を製造した。
【0065】
次に、塩化ナトリウム(融点:800℃、和光純薬製)を、粉砕機にかけて粉砕して、一次粒子の平均粒子径が2.0μmである塩化ナトリウム微粒子を得た。
【0066】
次に、前記湿式不織布を金網のコンベアーベルトの上に載置して、コンベアーベルトを移動させた。次に、170℃に加熱された前記塩化ナトリウム微粒子と空気が混合された混合気流を準備し、前記湿式不織布の表面全体に対して、この混合気流を均一に吹き付けた。その後、湿式不織布を反転させ、前記吹き付け面とは反対面全体に対して、前記と同様の混合気流を均一に吹き付けて、湿式不織布の両面に塩化ナトリウム微粒子が固着した不織布を得た。
【0067】
次に、前記塩化ナトリウム固着不織布を水中に投入して、固着した塩化ナトリウム微粒子を水に溶解させることにより、塩化ナトリウム固着不織布から塩化ナトリウム微粒子を除去して、繊維の表面のみに孔が形成された表面多孔繊維のみからなる表面多孔不織布を得た。
【0068】
次いで、図2に示すような放電処理装置を用意した。つまり、誘電体2d、2eとしてポリテトラフルオロエチレン膜(厚さ:0.1mm)を担持した、一対の平板状ステンレススチール電極2b、2c(大きさ:150mm×210mm)を、誘電体2d、2e同士が対向するように配置した放電処理装置2を用意した。
【0069】
次いで、前記放電処理装置2の誘電体2d、2eによって、前記表面多孔不織布2fを一方の平板状ステンレススチール電極2bの自重を利用して挟持した状態で、大気圧下、空気中で、両極性正弦波電圧(高周波電源AGI−020(春日電気製)2a、出力:800W、周波数:20kHz)を両電極間に10秒間印加して、表面多孔不織布2fの内部空隙で放電を発生させて、前記表面多孔不織布の親水化を実施して、本発明のセパレータ(目付:50g/m、厚さ:0.12mm、孔形状:半多面形、開口部の平均径:2.0μm、開口部の長径/開口部の短径=1.1、孔の平均深さ:1.0μm、孔長さ:開口巾の0.9倍、孔の個数:100個/100μm)を得た。
【0070】
(実施例2)
塩化ナトリウムを粉砕機により粉砕して、一次粒子の平均粒子径を4.0μmとした塩化ナトリウム微粒子を固体粒子として使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして、繊維の表面のみに孔が形成された表面多孔繊維のみからなる表面多孔不織布を得た。
【0071】
次いで、この表面多孔不織布を実施例1と同様に親水化処理を行い、本発明のセパレータ(目付:50g/m、厚さ:0.12mm、孔形状:半多面形、開口部の平均径:3.0μm、開口部の長径/開口部の短径=1.3、孔の平均深さ:1.0μm、孔長さ:開口巾の0.8倍、孔の個数:60個/100μm)を得た。
【0072】
(比較例1)
実施例1と同様にして製造した湿式不織布を、芯鞘型複合繊維の表面多孔化処理(塩化ナトリウム微粒子の固着及び除去)を行うことなく、実施例1と同様に親水化処理を実施して、比較用のセパレータ(目付:50g/m、厚さ:0.12mm)を得た。
【0073】
(比較例2)
微細孔ポリエチレン繊維(宇部日東化成製、UNK微細孔ポリエチレン繊維、繊度:2.2dtex、繊維長:10mm、繊維径:25μm)50mass%と、バインダー繊維として、鞘成分が低密度ポリエチレンから構成され、芯成分がポリプロピレンから構成される芯鞘型複合繊維(繊度:1.1dtex、繊維長:5mm、繊維径:12μm)50mass%とを混合したスラリーを、湿式抄造法により繊維ウエブを作成した。この繊維ウエブを温度125℃に設定された熱風循環式ドライヤーに供給して、乾燥及び芯鞘型複合繊維の鞘成分を融着させた後、温度60℃のロールプレス機で厚さを調整して湿式不織布を製造した。
【0074】
次いで、この湿式不織布を実施例1と同様に親水化処理を実施して、比較用のセパレータ(目付:50g/m、厚さ:0.12mm)を得た。
【0075】
(引張り強度試験)
たて方向200mm、幅方向50mmの短冊状に切断した各セパレータを、引張り強さ試験機(オリエンテック製、テンシロンUTM−III−100)のチャック間(チャック間の距離100mm)に固定した後、引張り速度300mm/minで引張り、引張り強さを測定した。この結果は表1に示す通りであった。
【0076】
(エッジ式耐貫通指数の測定)
各セパレータを重ねて合計約2mmの厚さとし、その一番上のセパレータに対して、ハンディー圧縮試験機(カトーテック製、KES−G5)に取り付けたステンレス製ジグ(厚さ:0.5mm、先端の刃先角度:60°)を0.01cm/秒の速度で垂直に突き刺し、一番上のセパレータを切断するのに要する力を測定した。この時、比較例1のセパレータを切断するために要する力を基準(100)とした時の、各セパレータを切断するために要する力の百分率を各セパレータの耐貫通指数(%)とした。この結果は表1に示す通りであった。
【0077】
(加圧保液率の測定)
各セパレータから、直径30mmの試験片を採取し、温度20℃、相対湿度65%の状態下で、水分平衡状態に至らせた後、質量(M)を測定した。次に、セパレータ中の空気を水酸化カリウム溶液で置換するために、比重1.30(20℃)の水酸化カリウム溶液中に1時間以上浸漬し、水酸化カリウム溶液を保持させた。次いで、各セパレータを上下3枚ずつのろ紙(40mm×40mm)で挟み、加圧ポンプにより、58kg/cmの圧力を30秒間作用させた後、セパレータの質量(M)を測定した。そして、次の式から、加圧保液率を算出した。この測定は1つのセパレータに対して4回行い、その平均値を加圧保液率とした。この結果は表1に示す通りであった。
加圧保液率(%)={(M−M)/M}×100
【0078】
(吸液高さ試験)
各セパレータから、たて方向180mm、幅方向25mmの短冊状試験片を採取し、温度20℃、相対湿度65%の状態下で、水分平衡状態に至らせた。次いで、比重1.30(20℃)の水酸化カリウム溶液中へ、セパレータのたて方向の端部5mm分が浸るように、一定の高さから垂直に吊り下げ、そのまま30分間静置した。その後、水酸化カリウム溶液の液面からの吸い上げ高さを測定した。この結果は表1に示す通りであった。
【0079】
(親水性の耐性試験)
沸騰させた純水中で、各セパレータ(たて:250mm、幅:50mm)を30分間煮沸処理した後に取り出して、室温で乾燥させた。その後、前記と同様の方法により、(加圧保液率の測定)及び(吸液高さ試験)を行った。この結果は表1に示す通りであった。
【0080】
【表1】
Figure 0004343517
【0081】
この表1の結果から明らかなように、本発明のセパレータは表面多孔繊維を含んでいるため、電解液の保持性や吸液性に優れており、電池の高率放電性能に寄与できることが予測できるものであった。また、表面多孔繊維を含む本発明のセパレータ(実施例1、2)は、全体に孔を有する多孔質繊維を含むセパレータ(比較例2)と比べて、引張り強度、耐貫通性ともに優れているため、電池群構成時に極板エッジでのセパレータ切断によるショートが起こりにくく、電池製造時の不良率を低減できることが予測できるものであった。更に、煮沸前後の加圧保液率及び吸液高さの結果から明らかなように、親水性の耐久性にも優れているため、アルカリ電池を長寿命化できることが期待できるものであった。
【0082】
【発明の効果】
本発明のアルカリ電池用セパレータは、電池製造時の取り扱い性に優れ、また電池製造時又は充放電時に圧力がかかったとしても、十分な量の電解液を保持できるものである。
【0083】
本発明のアルカリ電池は高率放電性能に優れ、生産性良く製造できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) 本発明の表面多孔繊維の一部拡大断面図
(b) 本発明の別の表面多孔繊維の一部拡大断面図
(c) 本発明の表面多孔繊維の繊維軸方向における一部拡大断面図
(d) 本発明の別の表面多孔繊維の繊維軸方向における一部拡大断面図
【図2】 放電処理装置の断面模式図
【符号の説明】
10 表面多孔繊維
11 孔
12 繊維表面
13 開孔部
2 放電処理装置
2a 高周波電源
2b、2c 電極
2d、2e 誘電体
2f 表面多孔不織布

Claims (7)

  1. 繊維表面に、繊維表面側から孔を観察した際に繊維の厚さ方向における孔の最深部を、孔の開孔部から確認できる状態にある孔のみを有する表面多孔繊維を含む繊維シートからなることを特徴とするアルカリ電池用セパレータ。
  2. 孔の平均深さが0.1〜10μmであることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ電池用セパレータ。
  3. 繊維表面における孔の平均径が0.1〜10μmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のアルカリ電池用セパレータ。
  4. 繊維表面における孔の個数が100μmあたり10〜1000個であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のアルカリ電池用セパレータ。
  5. 表面多孔繊維のみから構成される繊維シートからなることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のアルカリ電池用セパレータ。
  6. 表面多孔繊維が、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤付与処理、放電処理、親水性樹脂付与処理の中から選ばれる親水化処理が施されていることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のアルカリ電池用セパレータ。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載のアルカリ電池用セパレータを備えたアルカリ電池。
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