JP4336524B2 - 情報記録媒体用ガラス基材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の情報記録媒体、液晶又は有機ELディスプレー、フォトマスク、各種光学機器等の情報電子基材として使用される情報記録媒体用ガラス基材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記のようなガラス基材は、表面の平坦性の向上を図る、微小な傷を除去する等の目的で所定形状に成形されたガラス素材の表面に研磨処理を施して製造される。当該研磨処理では、主に酸化セリウムを含む研磨剤が使用される。これは、酸化セリウムがガラス材料に対して化学的に強い相互作用を有し、単位時間あたりの研磨量を示す研磨レートが高いためである。しかし、酸化セリウムを含む研磨剤を使用した場合、ガラス材料に対する酸化セリウムの化学的な相互作用により、研磨後のガラス素材の表面には、酸化セリウムの粒子が強固に付着したり、埋まったり等して高い割合で残留してしまう。そして、残留する酸化セリウムの粒子が欠点となり、製品としてのガラス基材の品質に悪影響を及ぼすことから、これを除去するために研磨後のガラス素材には洗浄処理が施される。
【0003】
一般にガラス材料の洗浄処理には、洗浄薬液として界面活性剤、キレート剤等を含むアルカリ性水溶液が使用されていた。だが、アルカリ性水溶液は、無機物である酸化セリウムへの化学的な作用力が弱く、ガラス素材の表面に残留する酸化セリウムの粒子を十分に除去できないおそれがあった。このため、アルカリ性水溶液を洗浄薬液として用いるとともに、洗浄時間を長くしたり、洗浄温度を高めたり等したり、あるいはフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸等の酸性水溶液を洗浄薬液として用いる洗浄方法が提案された(例えば、特許文献1参照。)。つまり、洗浄薬液として用いるアルカリ性水溶液及び酸性水溶液のガラス材料に対するエッチング作用を利用する洗浄方法である。そして、この洗浄方法によれば、洗浄薬液のガラス材料に対するエッチング作用によってガラス素材の表面を僅かに溶かすことで、残留する酸化セリウムの粒子が除去される。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−109727号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のように洗浄薬液のエッチング作用を利用して洗浄を行う場合、却ってガラス素材の表面が荒れ、製品としてのガラス基板の品質が低下するおそれがあった。これは、研磨後のガラス素材の表面には研磨応力が加わったり、研磨痕が形成されたり等して極微小な傷が存在しており、この傷がエッチング作用により顕在化し、潜傷が発生して同潜傷が欠点となるためである。特に、エッチング作用を利用する場合、アルカリ性水溶液ならば洗浄時間の長時間化、洗浄温度の管理の煩雑化等により生産効率の向上を図りにくく、また酸性水溶液ならばガラス材料に対するエッチング能が高く、潜傷がより高い確率で発生してしまう可能性がある。
【0006】
一方、酸性水溶液を洗浄薬液として用いるとともに、同洗浄薬液に酸化セリウムの分解能を有する還元剤を添加して研磨後のガラス素材を洗浄する方法が提案されている。この場合、酸性水溶液のみを洗浄薬液に用いる場合と比較し、潜傷の発生を抑えつつ、酸化セリウムを溶解させて除去することが可能である。しかし、この場合、ガラス素材の表面に付着した酸化セリウムは十分に除去されるが、表面に埋まった酸化セリウムを十分に除去することができず、埋まった酸化セリウムを除去するため、洗浄に長時間を要し、生産効率の向上が図りにくくなっていた。
【0007】
また、還元剤を添加した酸性水溶液を洗浄薬液に用いて洗浄を行った後、さらにフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸等の酸性水溶液のみを洗浄薬液に用いて洗浄を行う等というように、複数の段階に分けて洗浄を行う方法も提案されている。この場合、表面に付着した酸化セリウムを前段階の洗浄で除去した後、表面に埋まった酸化セリウムをエッチング作用により後段階の洗浄で除去することにより、酸化セリウムの除去力を高めることが可能である。しかし、この場合、酸化セリウムの除去力が効果的に高まるとは必ずしもいえず、むしろ後段階の洗浄で潜傷が発生するおそれがあった。
【0008】
さらに近年は、その表面が平滑でさらに品質の高いガラス基材が求められており、これに応えるため、ガラス素材の研磨処理において研磨剤の粒子の粒径をより小さくし、研磨圧力を高めようとする傾向がある。すると、酸化セリウムの粒子はガラス素材の表面に対してより強固に付着したり、より深く埋まったり等してしまい、上記のように還元剤を添加するのみでは、これらの除去に十分に対応することができないおそれがあるという問題があった。
【0009】
この発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、欠点の発生を抑え、品質を高く維持しつつ、研磨後に残留する研磨剤の粒子を効率よく除去することができる情報記録媒体用ガラス基材の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基材の製造方法の発明は、ガラス素材の表面を、酸化セリウムの粒子を含有する研磨剤を用いて研磨した後、酸、還元剤及びフッ素イオンの3成分を含む洗浄薬液を使用して洗浄する情報記録媒体用ガラス基材の製造方法であって、前記洗浄薬液中における還元剤の濃度が、0.01〜3質量%であり、前記洗浄薬液中におけるフッ素イオンの濃度が、1〜50質量ppmであることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を詳細に説明する。
ガラス基材は、情報電子基材として使用されるものである。すなわち、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の情報記録媒体用ガラス基板、液晶及び有機ELディスプレー用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、各種光学機器用ガラスレンズ等として使用されている。これらガラス基材で用いられるガラス材料としては主に、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとアルカリ金属酸化物とを主成分とするアルミノシリケートガラス、及び二酸化ケイ素とアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物とを主成分とするソーダライムガラスが挙げられる。その他にも、二酸化ケイ素とボロン酸化物とを主成分とするボロシリケートガラス、結晶化ガラス等が挙げられる。この結晶化ガラスとしては、酸化リチウムと二酸化珪素を主成分とするLi2O−SiO2系ガラス、酸化リチウム、二酸化ケイ素及び酸化アルミを主成分とするLi2O−Al2O3−SiO2系ガラス、アルカリ土類金属酸化物等と酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素とを主成分とするRO−Al2O3−SiO2系ガラス等が挙げられる。但し、ROは酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化マンガン(MnO)等を示す。
【0014】
情報電子基材として使用されるガラス基材のうち、情報記録媒体用ガラス基板(以下、略して「ガラス基板」ともいう)、特には磁気ディスクに用いられるガラス基板としては、その表面にアルカリ金属塩が析出しにくいガラス材料を用いることが好ましい。このようなガラス材料としては、次のような組成のアルミノシリケートガラスが挙げられる。すなわち、このアルミノシリケートガラスの組成をモル分率で示すと、
二酸化ケイ素(SiO2):55〜70mol%、
酸化アルミニウム(Al2O3):1.0〜12.5mol%、
酸化リチウム(Li2O):5〜20mol%、
酸化ナトリウム(Na2O):0〜14mol%、
酸化カリウム(K2O):0〜3mol%、
酸化マグネシウム(MgO):0〜8mol%、
酸化カルシウム(CaO):0〜10mol%、
酸化ストロンチウム(SrO):0〜6mol%、
酸化バリウム(BaO):0〜2mol%、
二酸化チタン(TiO2):0〜8mol%及び
酸化ジルコニウム(ZrO2):0〜4mol%である。
【0015】
ガラス基板は、JIS B0601−1994に規定されるその表面の算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは0.7nm以下である。Raが0.7nmより大きいと、表面の少なくとも一部に他のものよりも極端に突出する突起(アスペリティー)が生じ、品質が低下するおそれがある。Raが0.7nm以下であればガラス基板は十分に高品質であるが、さらに品質を高めるためにはRaをより小さくすることが好ましい。このため、Raは、より好ましくは0.4nm以下である。
【0016】
また、ガラス基板は、その使用目的にもよるが、表面のうねりの高さが、好ましくは0.8nm以下であり、より好ましくは0.5nm以下であり、さらに好ましくは0.4nm以下である。このうねりの高さは、多機能ディスク干渉計を用い、測定波長(λ)を0.4〜5.0mmに設定して測定された値である。うねりの高さが低いものほどガラス基板の品質が高いため好ましく、逆にうねりの高さが高いものほどガラス基板に歪みが発生するため、品質が低下する。特に、情報記録媒体用ガラス基板の場合、高記録密度化を図るため、表面のうねりの高さの低い、高品質のものを要求される傾向が高い。
【0017】
さらに、うねり上には微小うねりが形成されるが、ガラス基板は、その微小うねりの高さが、好ましくは0.3nm以下であり、より好ましくは0.2nm以下であり、さらに好ましくは0.1nm以下である。この微小うねりの高さは、三次元表面構造解析顕微鏡を用い、測定波長(λ)を0.2〜1.4mmに設定して測定された値である。微小うねりの高さが低いものほどガラス基板の品質が高いため好ましく、逆に微小うねりの高さが高いものほど品質が低下する。特に、ガラス基板の場合には、高記録密度化を図るため、微小うねりの高さの低い、高品質のものを要求される傾向が高い。
【0018】
次いで、前記ガラス基材の製造方法について説明する。
上記のガラス基材の製造時においては、まずフロート法、ダウンドロー法、リドロー法、プレス法等の製造方法でシート状をなすガラス材料が作製される。その後、例えばガラス基板ならばドーナツ状、ディスプレー用ガラス基板ならば平面長方形状、各種光学機器用レンズならば円盤状等のように、目的とするガラス基材に合わせ、ガラス材料からガラス素材が所定形状をなすように切り出される。そして、同ガラス素材の表面に研磨処理を施した後、洗浄処理を施すことによってガラス基材が製造される。
【0019】
前記研磨処理は、例えばガラス素材の歪み、撓み、反り等によって形成されるうねり、搬送時等に形成される擦過傷、欠け(チッピング)、ひび(クラック)等のような凹凸を取り除き、製造されるガラス基材の表面の平坦性を向上させるために行われる。具体的に、同研磨処理では、研磨装置を使用することにより、ガラス素材の表面が平坦となるように研磨剤で研磨される。この研磨装置にはガラス素材を一枚ずつ研磨する枚葉式のものと、複数枚のガラス素材を一度に研磨するバッチ式のものとが挙げられるが、どちらの方式のものを使用するかは特に限定されず、いずれを用いてもよい。
【0020】
また、研磨時のガラス素材の表面には、研磨装置の機械的歪み、研磨応力等によって形成されるうねりや、同うねり上に形成される微小うねり、あるいは研磨痕等のような、微小な凹凸が発生してしまう場合がある。この場合、ガラス基材の使用目的にもよるが、微小な凹凸を取り除くため、研磨処理が複数段階の工程に分けて行われる。例えば、ガラス基板の場合、高記録密度化を図るには、情報を読み出すためのヘッドを情報記録媒体の表面に出来る限り接近させる必要がある。この場合、情報記録媒体の表面の微小な凹凸にヘッドが衝突し、エラーが発生することを防止するためには、表面を平坦とするだけでは不十分であり、表面を平滑、あるいは超平滑とする必要がある。このため、ガラス基板は、研磨処理を複数段階の工程に分け、段階的にガラス素材の表面が研磨されることにより、その表面が平滑、あるいは超平滑とされる。なお、微小な凹凸を取り除く必要がなければ、研磨処理は一段階の工程で行ってもよい。
【0021】
ガラス素材に対する研磨処理において、前記研磨剤には、研磨粒子として酸化セリウムの粒子を用い、同研磨粒子を溶媒としての水に分散させてスラリー状としたものが使用される。また、複数段階の工程に分けて研磨処理を施す場合、酸化セリウム以外にも、酸化ランタン等の希土類酸化物、アルミナ砥粒、酸化ジルコニウム、二酸化マンガン、酸化アルミニウム、コロイダルシリカ等を研磨粒子として各工程で用いてもよい。
【0022】
ガラス素材は、表面のうねりの高さが、酸化セリウムを含む研磨剤で研磨される前の状態で5μm以下とされることが好ましく、0.3nm〜1μmとされることがより好ましく、0.8〜10nmとされることがさらに好ましい。ガラス素材は、その表面のうねりの高さが高いほど、酸化セリウムを含む研磨剤で研磨するとき、研磨圧力を高く、研磨時間を長く等する必要がある。すると、酸化セリウムがガラス素材の表面に強固に残留しやすくなり、その後の洗浄処理で残留する酸化セリウムを除去しにくくなる。これとは逆に、ガラス素材は、その表面のうねりの高さが低いほど、酸化セリウムを含む研磨剤で研磨するとき、研磨圧力を低く、研磨時間を短く等することができる。この場合、ガラス素材の表面に酸化セリウムが残留しにくくはなるが、しかし研磨処理の前段階の工程までに必要とされる作業時間が長くなり、生産性が低下してしまうおそれがある。
【0023】
また、微小うねりの高さは、酸化セリウムを含む研磨剤で研磨される前の状態で1μm以下とされることが好ましく、0.2〜10nmとされることがより好ましく、0.2〜0.4nmとされることがさらに好ましい。前に挙げたうねりの高さと同様に、ガラス素材は、その表面の微小うねりの高さが高いほど、洗浄処理で残留する酸化セリウムを除去しにくくなり、低いほど生産性が低下してしまうおそれがある。加えて、Raは、酸化セリウムを含む研磨剤で研磨される前の状態で1μm以下とされることが好ましく、0.1nm〜10nmとされることがより好ましく、0.3〜1.0nmとされることがさらに好ましい。前に挙げたうねりの高さと同様の理由で、ガラス素材は、その表面のRaが大きいほど、洗浄処理で残留する酸化セリウムを除去しにくくなり、低いほど生産性が低下してしまうおそれがある。
【0024】
前記洗浄処理は、洗浄薬液を使用し、研磨後のガラス素材の表面に残留する研磨粒子、ガラス粉、微細な塵埃等の異物をその表面から除去するために施される。これら異物のうち、特に研磨粒子である酸化セリウムは、化学的な相互作用により、ガラス素材の表面に強固に付着したり、埋まったり等して残留している。そして、ガラス素材の表面に対する影響を抑えながら、この酸化セリウムの粒子を効率よく除去するため、洗浄薬液には、酸、還元剤及びフッ素イオンの3成分を含むものが使用される。
【0025】
洗浄薬液に含まれる3成分のうち、酸成分は、洗浄薬液にエッチング能を付与するために含まれる。そして、洗浄薬液は、そのエッチング作用によりガラス素材の表面に食い込んだ研磨粒子、極微細な欠片、ガラスの変質部等を除去する機能を有する。この実施形態で酸成分は、洗浄薬液に酸性水溶液を混合することによって含まれる。酸性水溶液は、一般的なガラス製品の精密洗浄で用いられるものであればいずれであっても使用することが可能であるが、酸化セリウムの溶解能を高めることを主な目的とするのであれば、強酸の酸性水溶液を使用することが好ましい。この強酸の酸性水溶液としては、硝酸、硫酸、塩酸、スルファミン酸、リン酸等が挙げられる。なかでも、硝酸は、洗浄槽の材料に一般的に使用されるステンレス鋼を腐食させにくく、また還元剤との組み合わせによっては洗浄薬液中で亜硝酸となり、この場合には酸化セリウムの還元能をも有するため、強酸の酸性水溶液として好ましい。また、洗浄薬液中における酸成分の濃度は、特に限定はされず、ガラス素材に用いられるガラス材料の耐酸性、所望とする清浄度等に応じて適宜設定される。但し、酸成分以外の2成分との相乗効果を高めることを主な目的とするのであれば、洗浄薬液のpHが2以下となるような濃度とすることが好ましい。
【0026】
前記3成分のうち、還元剤は、洗浄薬液に還元能を付与するために含まれる。そして、洗浄薬液は、その還元力により酸化セリウムを化学的に活性化させて分解を促進することにより、洗浄薬液中に溶解させやすくする機能を有する。この還元剤は、一般的なガラス製品の精密洗浄で用いられるものであればいずれであっても使用することが可能である。このような還元剤としては、過酸化水素水、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化アンモニウム等が挙げられる。
【0027】
ここで、還元剤として用いることができるアスコルビン酸を列挙しておく。一般に、アスコルビン酸には、還元型アスコルビン酸と、酸化型アスコルビン酸とがある。また、構造異性の観点からは、キシロ体とアラボ体が存在し、さらに光学異性の観点から、L体とD体とが存在する。通常、アスコルビン酸と総称されているものは、還元型アスコルビン酸である。この還元型アスコルビン酸としては、ビタミンCであるL−(キシロ)アスコルビン酸、エリソルビン酸であるD−アラボ(D−イソ)アスコルビン酸等が挙げられる。還元性を有する酸化型アスコルビン酸としては、デヒドロアスコルビン酸、モノデヒドロアスコルビン酸等が挙げられる。これら酸化型アスコルビン酸は、酸化型ではあるものの、さらに当該酸化型アスコルビン酸自身が酸化されることにより、還元剤としても作用するものである。
【0028】
還元剤としては前に挙げた他に、水素、ギ酸、シュウ酸、アセトアルデヒド、ヨウ化水素、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、硫酸第一鉄、酸化第一銅、塩化第二スズ等も挙げられる。還元剤として挙げたものの中でも、過酸化水素水及びアスコルビン酸は、還元力に優れるととに、ガラス素材の表面から洗浄薬液を洗い流す際の濯ぎ(リンス)性に優れているため、還元剤として好ましい。また、洗浄薬液中における還元剤の濃度は特に限定はされず、洗浄時間、洗浄温度等に応じて適宜設定されるが、リンス性を考慮し、酸化セリウムの分解に必要十分な量に留めるのであれば、0.01〜3質量%とすることが好ましい。
【0029】
前記3成分のうち、フッ素イオン成分は、洗浄薬液にフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸等を混合することによって含まれる。また、これ以外にも、洗浄薬液中に不溶性の沈殿が生じない程度であれば、例えばフッ化アンモニウム等のフッ化塩を洗浄薬液に溶解させてもよい。
【0030】
通常、フッ化水素酸等のようなフッ素イオン成分を含む薬液は、ガラス材料に対するエッチング作用をその目的として使用される。これに対し、本発明では、洗浄薬液にフッ素イオン成分を含ませることにより、ガラス材料に吸着した酸化セリウムが洗浄薬液中に溶解することを促進する、いわば触媒作用を付与することを目的としている。フッ素イオン成分により酸化セリウムの溶解が促進される理由は、まだ明確なものとなってはいないが、本発明者等はこの理由を次のように推定している。すなわち、フッ素イオンが酸化セリウムあるいはセリウムイオンに吸着(結合)し、ガラス素材の表面でガラス材料と酸化セリウムとの化学的な結合を切断することにより、酸化セリウムの洗浄薬液中への拡散及び溶解が促進されると推定される。従って、フッ素イオン成分は、エッチング作用を発揮することができないような極めて低い濃度であっても、洗浄薬液中に含まれてさえいればその触媒作用を発揮することができる。そして、酸、還元剤及びフッ素イオンの3成分を含む洗浄薬液は、これらの相乗効果により、ガラス素材の表面に対しては酸化セリウムを除去するために必要十分なエッチング能を、酸化セリウムに対しては高い溶解力を有している。従って、当該洗浄薬液は、酸化セリウムの粒子を含有する研磨剤に対して極めて高い洗浄力を有しており、潜傷を発生させない程度の極僅かなエッチング量でガラス素材の表面の異物を除去することが可能となる。
【0031】
洗浄薬液中におけるフッ素イオンの濃度は、ガラス素材に用いられるガラス材料の耐酸性、所望とする清浄度等に応じて適宜設定されることが好ましく、具体的には1〜50質量ppmとすることが好ましい。フッ素イオンの濃度が1質量ppm未満の場合、酸化セリウムの溶解を十分に促進することができなくなるおそれがある。また、50質量ppmより高い場合、その濃度の上昇に伴って洗浄薬液のエッチング能が高まるため、潜傷の発生を十分に抑えることができなくなるおそれがある。なお、情報電子基材として使用されるガラス基材のうち、ガラス基板は、その表面にテクスチャーと呼ばれる微小な凹凸が形成される場合があり、このテクスチャーの形成には主にフッ素イオンを含む薬液が使用される。そして、洗浄処理中にテクスチャーの形成を行うのであれば、洗浄薬液中におけるフッ素イオンの濃度を50質量ppmより高くしてもよい。
【0032】
当該洗浄処理における洗浄方法としては、浸漬洗浄法、シャワー洗浄法、ブラシ洗浄法、超音波洗浄法、スクラブ洗浄法等が挙げられ、これらのうち少なくとも一種又は二種以上が組み合わされて実施される。浸漬洗浄法とはガラス素材を洗浄薬液に浸漬し、静置して洗浄する方法である。シャワー洗浄法とはガラス素材に洗浄薬液を所定圧力で噴射して洗浄する方法である。ブラシ洗浄法とはガラス素材の表面の異物をブラシで擦り落として洗浄する方法である。超音波洗浄法とは洗浄薬液に浸漬されたガラス素材に超音波を照射し、キャビテーション効果等の物理的な力を利用して洗浄する方法である。スクラブ洗浄法とはポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン(PU)等の発泡樹脂、スウェード等よりなるスクラブ材をガラス素材の表面に擦り付けて異物を除去する方法である。これらのなかでも、特に超音波洗浄法及びスクラブ洗浄法は、ガラス素材の表面を傷付けにくく、物理的に異物を除去するため、平滑度を維持しながら清浄度を高めやすく、洗浄方法として好ましい方法である。
【0033】
当該洗浄処理において、ガラス素材の洗浄は複数段階の工程に分けて行われる。この場合、上記の3成分を含む洗浄薬液以外に、前に挙げた酸性水溶液、あるいはアルカリ性水溶液、水、湯、有機溶液等を各工程の洗浄薬液として用いてもよい。アルカリ性水溶液としては、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)に代表されるテトラメチル水酸化物等のような有機アルカリ水溶液及び水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ水溶液が挙げられる。有機溶液としては、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。また、必要に応じて洗浄薬液にカチオン性、アニオン性又はノニオン性界面活性剤、緩衝剤(バッファー)、pH調整剤、キレート剤等のような一般的なガラス製品の洗浄で用いられる洗浄補助剤(ビルダー)を添加してもよい。
【0034】
洗浄処理が複数段階の工程に分けて行われる場合、上記の3成分を含む洗浄薬液を使用した洗浄は、1段階目の工程で行われることが好ましい。これは、洗浄処理の初期の工程でガラス素材の表面に潜傷が発生することを抑制するためである。また、3成分を含む洗浄薬液を使用した洗浄の次の工程では、市水、純水等を濯液として使用し、濯ぎ(リンス)洗浄が行われる。このリンス洗浄は、ガラス素材の表面から洗浄薬液を洗い流すことにより、洗浄後のガラス素材に対する洗浄薬液の影響を抑えるとともに、洗浄薬液中の異物がガラス素材の表面に再び付着することを防止するために行われる。リンス洗浄の方法としては、静置条件下又は超音波照射条件下でガラス素材を薬液に浸漬する方法、ガラス素材に薬液をシャワーする方法等が挙げられる。
【0035】
さらに、リンス洗浄よりも後段階の工程では、アルカリ性水溶液による洗浄を行うことが好ましい。これは、前記3成分を含む洗浄薬液が、通常は酸性水溶液となるためである。つまり、酸性水溶液中ではガラス素材と異物との間に発生する静電反発力が小さくなるため、酸性水溶液による洗浄後のガラス素材は、その表面に異物が付着しやすくなっている。これとは逆に、アルカリ性水溶液中ではガラス素材と異物との間に発生する静電反発力が大きくなる。従って、酸性水溶液である3成分を含む洗浄薬液を使用した後、アルカリ性水溶液で洗浄することにより、表面に残留する異物がガラス素材から遊離しやすくなるためである。
【0036】
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態のガラス基材の製造方法によれば、ガラス基材は、酸化セリウムの粒子を含む研磨剤でガラス素材を研磨した後、酸、還元剤及びフッ素イオンの3成分を含む洗浄薬液を使用し、洗浄することによって製造される。当該洗浄薬液は、酸成分によるエッチング作用と還元剤による酸化セリウムの還元分解作用とに加え、フッ素イオン成分による洗浄薬液中への酸化セリウムの溶解促進作用を有している。このため、3成分の作用の相乗効果により、該洗浄薬液は酸化セリウムに対して極めて高い洗浄力を有し、潜傷を発生させない程度の極僅かなエッチング量でガラス素材の表面の異物を除去することができる。従って、ガラス基材の表面において、酸化セリウムの残留、潜傷の発生等による欠点の発生を抑え、品質を高く維持しつつ、研磨後に残留する研磨剤の粒子を効率よく除去することができる。また、当該製造方法によって得られたガラス基材は、表面における欠点の発生が抑えられた品質の高いものであり、生産性が高く、良好な歩留まりのものとすることができる。
【0037】
・ また、洗浄薬液中におけるフッ素イオンの濃度を1〜50質量ppmとすることにより、研磨剤の粒子の除去効率を良好に維持しつつ、ガラス基材の表面における欠点の発生を十分に抑えることができる。
【0038】
【実施例】
以下、前記実施形態をさらに具体化した実施例及び比較例について説明する。
(実施例1〜10)
スウェードパッドを使用し、酸化セリウムの粒子を含有する研磨剤(昭和電工製、平均粒径0.2μm)でガラス素材の表面を研磨した。その後、当該ガラス素材を、シャワー洗浄法にて純水で洗浄し、その表面に付着した研磨剤を洗い流した。そして、該ガラス素材に洗浄処理を施した。
【0039】
なお、実施例1〜3及び実施例5〜10ではガラス素材のガラス材料にアルミノシリケートガラスを用いた。アルミノシリケートガラスの主な組成は、SiO2 67mol%、Al2O3 10mol%、Li2O 7.5mol%、Na2O 8.5mol%、MgO 3.0mol%、CaO 4.0mol%であった。実施例4ではガラス材料にソーダライムガラスを用いた。ソーダライムガラスの主な組成は、SiO2 72mol%、Al2O3 1.5mol%、Na2O13mol%、MgO 4mol%、CaO 8mol%であった。
【0040】
洗浄処理は、まず前工程として、表1に示す種類及び濃度で酸、還元剤及びフッ素イオンの3成分を含む洗浄薬液を使用し、超音波洗浄法でガラス素材を洗浄した。その後、次工程として、純水を使用してリンス洗浄を行った。このリンス洗浄の後、後工程として、アルカリ性水溶液であり、濃度が0.5質量%の水酸化カリウム水溶液を使用し、超音波洗浄法でガラス素材を洗浄した。そして、後工程が行われた後のガラス素材の表面から洗浄薬液を純水で洗い流し、乾燥させて実施例1〜10の試料となるガラス基板を得た。なお、洗浄処理の前工程及び後工程において、超音波洗浄法では、48kHz、100Wの卓上超音波洗浄機を用い、55℃で1分間の洗浄を行った。
【0041】
(比較例1〜7)
アルミノシリケートよりなるガラス素材に対し、実施例1〜10と同様に研磨を行った後、複数段階の工程に分けて洗浄処理を施した。この洗浄処理においては、各工程で表2に示す種類及び濃度の洗浄薬液を使用するとともに、洗浄薬液を使用した次の工程ではリンス洗浄を行った。洗浄方法は、実施例1〜10と同様に超音波洗浄法とした。そして、洗浄処理が施された後のガラス素材を乾燥させ、比較例1〜7の試料となるガラス基板を得た。
【0042】
(実施例1〜10及び比較例1〜7の評価)
上記のようにして得られた実施例1〜10及び比較例1〜7の試料について、ガラス基板の表面における酸化セリウムの残留量、エッチング深さ及び潜傷の個数を測定した。酸化セリウムの残留量の測定は、全反射蛍光X線測定法でセリウムの原子数を定量することにより行った。全反射蛍光X線測定法の測定装置にはテクノス社製のTREX601Tを用い、分析エリアを1cmΦ、X線侵入深さを約50〜100とした。また、分析条件は、ターゲットをタングステン、検出器をSi(Li)SSDとし、電圧 30kV、電流 100mA、入射角度 0.05deg、測定時間 500secとした。なお、全反射蛍光X線測定法の測定装置において、分析エリアは1cmΦであるが、測定結果については1cm2当たりのセリウムの原子数に換算した。エッチング深さの測定は、研磨直後のガラス素材の厚みと、洗浄処理後に得られたガラス基板の厚みとを比較することにより行った。潜傷の個数の測定は、光学顕微鏡を用い、暗視野観察にて倍率200倍で1視野当たりの潜傷数を数えることにより行った。その結果を表1及び表2に示す。なお、各表中ではアスコルビン酸をAB酸と略して記載した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1の結果より、実施例1〜10においては、セリウムの原子数が1cm2当たり1.0×1010未満であった。特に実施例1〜8は、1cm2当たり0.01×1010以下と極端に小さな値であった。エッチング深さは4nm以下であり、また潜傷の個数は全ての試料で0個/視野であった。従って、実施例1〜10の試料は、ガラス基板の表面に酸化セリウムがほとんど残留しておらず、また洗浄薬液によるエッチング量も極僅かで、潜傷のない高品質なものであることが示された。また、実施例1、9及び10を比較した場合、還元剤の種類の違いでセリウムの原子数が変化することが示された。そして、これらの結果より、還元剤として最も好ましいものはアスコルビン酸であり、これに次いで好ましいものは過酸化水素水であるこという結論が得られた。
【0046】
これに対し、表2の結果より、アルカリ性水溶液のみを使用して洗浄を行った比較例1は、エッチング量が僅かで、潜傷の個数も0個/視野ではあるが、セリウムの原子数が1cm2当たり125×1010と非常に多く、まだ多くの酸化セリウムが残留していることが示された。比較例2及び3は、酸及び還元剤の2成分を含む洗浄薬液で洗浄を行った後、アルカリ性水溶液で洗浄を行ったものである。この場合、エッチング量が僅かで、潜傷の個数も0個/視野ではあるが、比較例1よりは少ないものの、セリウムの原子数が1cm2当たり7.5×1010と実施例1〜10よりも極端に多く、多くの酸化セリウムが残留していることが示された。
【0047】
比較例4及び5は、酸及び還元剤の2成分を含む洗浄薬液、アルカリ性水溶液、酸性水溶液、アルカリ性水溶液の順番で洗浄を行ったものである。この場合、セリウムの原子数が1cm2当たり1.0×1010未満であり、酸化セリウムは十分に除去されたが、エッチング深さが7nm以上に増え、潜傷の個数が17個/視野以上となった。つまり、エッチング量を増やすことにより、酸化セリウムを十分に除去することはできたが、これに伴って潜傷が発生し、品質が低下したことを示している。
【0048】
比較例6は酸性水溶液、アルカリ性水溶液の順番で洗浄を行ったものである。この場合、1cm2当たりのセリウムの原子数、エッチング深さ及び潜傷の個数の全てが高い数値となり、品質の低いガラス基板であることが示された。比較例7は、還元剤、アルカリ性水溶液の順番で洗浄を行ったものである。この場合、エッチング深さ及び潜傷の個数はそれぞれ良好な値を示すが、1cm2当たりのセリウムの原子数が多く、多くの酸化セリウムが残留していることが示された。
【0049】
以上より、酸及び還元剤にフッ素イオンを加えることで、洗浄薬液は酸化セリウムに対する高い洗浄力を有するとともに、エッチング量も極僅かで、潜傷の発生を抑えることができることが示された。また、セリウムの原子数を1cm2当たり1.0×1010未満とするため、実施例1〜10では洗浄処理中に洗浄薬液を2工程で使用したことに対し、比較例4及び5では洗浄薬液を4工程で使用した。従って、酸、還元剤及びフッ素イオンの3成分を含む洗浄薬液を使用することにより、洗浄処理で必要とする工程数を減らすことができ、洗浄作業の効率化及び短時間化を図ることができる。
【0050】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 研磨処理後又は複数段階の研磨処理を施す途中で、各種用途で要求される耐衝撃性、耐振動性、耐熱性等を向上させるため、ガラス基材に化学強化処理を施してもよい。この化学強化処理とは、ガラス基材の組成中に含まれるリチウムイオンやナトリウムイオン等の一価の金属イオンを、これと比較してそのイオン半径が大きなナトリウムイオンやカリウムイオン等の一価の金属イオンにイオン交換することをいう。そして、ガラス基材の表面に圧縮応力を作用させることによって化学強化する方法である。この化学強化処理は、化学強化塩を加熱溶融した化学強化処理液にガラス素材を所定時間浸漬することによって行われる。化学強化塩の具体例としては、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸銀等をそれぞれ単独、あるいは少なくとも2種を混合したものが挙げられる。化学強化処理液の温度は、ガラス基材に用いたガラス材料の歪点よりも好ましくは50〜150℃程度低い温度であり、より好ましくは化学強化処理液自身の温度が350〜400℃程度である。ガラス基材の材料の歪点よりも150℃程度低い温度未満では、ガラス基材を十分に化学強化処理することができない。一方、ガラス基材の材料の歪点よりも50℃程度低い温度を超えると、ガラス基材に化学強化処理を施すときに、ガラス基材に歪みが発生するおそれがある。
【0051】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) 前記洗浄薬液を使用した洗浄の後、表面に付着した洗浄薬液を洗い流すためにリンス処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基材の製造方法。このように構成した場合、洗浄の後に表面に付着する洗浄薬液によるガラス基材への影響を抑えることができる。
【0052】
(2) 前記洗浄薬液は酸性水溶液であり、前記リンス処理を行った後、さらにアルカリ性水溶液を使用し、洗浄することを特徴とする(1)に記載の情報記録媒体用ガラス基材の製造方法。このように構成した場合、3成分を含む洗浄薬液を使用した洗浄の後にガラス基材の表面に残留する異物を効果的に除去することができる。
【0053】
(3) 情報記録媒体用ガラス基板として使用されるガラス基材の製造方法であって、前記ガラス素材は、酸化セリウムを含む研磨剤で研磨される前の状態で、多機能ディスク干渉計を用い、測定波長(λ)を0.4〜5.0mmに設定して測定された表面のうねりの高さが5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基材の製造方法。このように構成した場合、酸化セリウムのガラス素材の表面への残留を抑えながら、ガラス基材の生産性を良好なものとしつつ、情報記録媒体用ガラス基板として使用可能な高品質なガラス基材を得ることができる。
【0054】
(4) 情報記録媒体用ガラス基板として使用されるガラス基材の製造方法であって、前記ガラス素材は、酸化セリウムを含む研磨剤で研磨される前の状態で、三次元表面構造解析顕微鏡を用い、測定波長(λ)を0.2〜1.4mmに設定して測定された表面の微小うねりの高さが1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基材の製造方法。このように構成した場合、酸化セリウムのガラス素材の表面への残留を抑えながら、ガラス基材の生産性を良好なものとしつつ、情報記録媒体用ガラス基板として使用可能な高品質なガラス基材を得ることができる。
【0055】
(5) 前記ガラス素材は、酸化セリウムを含む研磨剤で研磨される前の状態で、JIS B0601−1994に規定される算術平均粗さ(Ra)が1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基材の製造方法。このように構成した場合、酸化セリウムのガラス素材の表面への残留を抑えながら、ガラス基材の生産性を良好なものとすることができる。
【0059】
(6) 前記還元剤は、アスコルビン酸又は過酸化水素水であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基材の製造方法。このように構成した場合、さらに効率よく酸化セリウムを除去することができる。
【0060】
(7) 前記酸の成分は洗浄薬液に硝酸を混合することによって含まれるとともに、当該硝酸は、洗浄薬液のpHが2以下となるような濃度で混合されることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基材の製造方法。このように構成した場合、さらに効率よく酸化セリウムを除去することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、ガラス基材の表面における欠点の発生を抑え、品質を高く維持しつつ、研磨後に残留する研磨剤の粒子を効率よく除去することができる。
Claims (1)
- ガラス素材の表面を、酸化セリウムの粒子を含有する研磨剤を用いて研磨した後、酸、還元剤及びフッ素イオンの3成分を含む洗浄薬液を使用して洗浄する情報記録媒体用ガラス基材の製造方法であって、
前記洗浄薬液中における還元剤の濃度が、0.01〜3質量%であり、前記洗浄薬液中におけるフッ素イオンの濃度が、1〜50質量ppmであることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基材の製造方法。
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