JP4280874B2 - Hstを備えた車輌の伝動構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、HST(静油圧式無段変速装置)を備えた作業車等の車輌における伝動構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
旋回半径の縮小化や操作容易性の向上、さらには、コスト低減等の為に、車輌前後方向長さを短くすることは、種々の作業車に対する共通した要望である。これは、エンジン等の駆動源からの動力をHSTを介して駆動車軸に伝達するように構成された車輌に対しても同様に求められている。
【0003】
しかしながら、HSTを備えた従来の車輌は斯かる要望を十分に満足するものではなかった。以下に、HSTを備えた従来の作業車における問題点を、フロントマウント型モアトラクタを例に説明する。
【0004】
従来の作業車は、図8に示すように、車体前後方向に沿って前方から順に配設されたHST100及びエンジン101間の動力伝達を、HST100から後方へ突出させたポンプ軸100aとエンジン101から前方へ突出されたエンジン駆動軸101aとを軸連結させて行っていた。
【0005】
ところで、前記エンジン101は防震ゴムを介して車体に設置されるため、該エンジン101とHST100との間には振動差が生じる。従って、該振動差を吸収しつつ、両者間を軸連結するために、エンジン駆動軸101a及びポンプ軸間の軸連結は、図8に示すように、自在継手102を介して行われる。そのため、前記従来の構成では、HST100後端面とエンジン101前端面との間に、自在継手を2個直列に配置させ得る距離Lを確保できるように、エンジン101を後方へ配設させなければならず、これにより、車輌全長が長くなってしまうものであった。
【0006】
また、車輌全長を短くするために、エンジンをHSTの上方へ設置することも可能であるが、これによると、エンジンの上方に位置する運転席等の他の部材の設置位置も上方へ移動せざるを得ないこととなり、車輌重心の上昇による走行安定性の低下を招くことになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、HSTを備えた作業車において、車輌重心の上昇を防止しつつ、車輌全長の短縮化を図ることのできる構造簡単な伝動構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、車体内に設置された駆動源からの動力を、該駆動源より車体前後方向一方側の第1方向側に設置されたHSTを介して少なくとも第1方向側の車軸を駆動するデファレンシャルギア装置に伝達する動力伝達経路を備えた車輌の伝動構造であって、前記HSTと前記デファレンシャルギア装置との間にトランスミッションを備え、該トランスミッションは、ケーシングと、前記駆動源の駆動軸と軸連結される入力軸と、前記デファレンシャルギア装置と接続される出力軸とを有し、且つ、前記入力軸は前記ケーシングから前記第1方向と反対方向の第2方向側へ延びるようにされており、前記HSTは、前記トランスミッションケーシング内に延びるポンプ軸を有する油圧ポンプと、前記トランスミッションケーシング内に延びるモータ軸を有し、前記油圧ポンプと協働する油圧モータとを備え、前記トランスミッションは、ケーシング内に、それぞれ、前記入力軸及び前記ポンプ軸、並びに、前記モータ軸及び前記出力軸を連結して、前記走行系動力伝達経路を構成する第1,第2機械式動力伝達機構を備えた車輌の伝動構造を提供するものである。
【0009】
好ましくは、前記駆動軸と入力軸とを略同軸上に配置させることができる。
【0010】
好ましくは、前記ポンプ軸及びモータ軸は略同一水平面内に配置され、前記入力軸は、車体幅方向位置が前記ポンプ軸及びモータ軸の間であって、且つ、上下方向位置が前記ポンプ軸及びモータ軸より上方に配置されており、前記第1機械式動力伝達機構は、前記入力軸に相対回転不能に支持される第1歯車と、該第1歯車と噛合するように前記ポンプ軸に相対回転不能に支持される第2歯車とを備え、前記第2機械式動力伝達機構は、前記モータ軸に相対回転不能に支持される第3歯車と、該第3歯車と噛合するように前記出力軸に相対回転不能に支持される第4歯車とを備えるものとすることができる。
【0011】
また、前記ポンプ軸及び出力軸は略同軸上で且つ互いの端面が相互に突き合わされるように配置され、前記第2歯車は、第1方向側の端面に係合部を有し、前記出力軸には、第4歯車及び第2歯車間を軸方向摺動自在とされた環状の連結部材が相対回転不能に支持され、且つ、該連結部材は、前記第2方向側の端面に前記第2歯車の係合部に対応する係合部を有しており、前記連結部材を摺動させて前記第2歯車と係合させることにより、両者を一体回転させ得るように構成することができる。
【0012】
また、前記トランスミッションケーシングは、前記デファレンシャル装置と向き合う中央部と、該中央部から車輌幅方向一方側に延びるように設けられた延在部とを有しており、前記トランスミッションは、ケーシング延在部から第2方向へ延びる第2方向側車軸駆動用の第2出力軸を有し、さらに、ケーシング内に、前記モータ軸及び前記第2出力軸を連結する機械式動力伝達機構を備えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る伝動構造の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。図1及び図2は、それぞれ、本実施の形態に係る伝動構造を適用したフロントマウント型モアトラクタの概略側面図及び概略平面図であり、図3は該モアトラクタにおける伝動構造部分の斜視図である。また、図4は本実施の形態に係る伝動機構を示す展開平面断面図であり、図5〜図7は、それぞれ、図3におけるA−A線,B−B線及びC−C線断面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施の形態におけるモアトラクタ1は、前後方向一方側の第1方向及び該第1方向と反対側の第2方向に沿って延びる車体2と、該車体の第1方向側及び第2方向側に、それぞれ設置される左右一対の非操向型車輪3,3及び操向型車輪4,4と、これらの車輪3,3及び4,4の各々を支持し且つ前記車体2を支持する左右一対の第1方向側車軸5,5′及び第2方向側車軸6,6′と、前記車体2の第1方向外方に支持されたフロントモア7とを備えている。なお、以下の本実施の形態における説明においては、前記第1方向及び第2方向を、それぞれ、前方及び後方として説明する。
【0015】
前記車体2の前輪3及び後輪4間には、駆動源となるエンジン7が防震ゴム(図示せず)を介して設置されている。さらに、該車体2には、該エンジン7の前方に、エンジン出力を入力して変速を行うHST8,該HSTの油路が形成された油圧ブロック9及び前記HST8からの出力を受ける機械式トランスミッション10が順に設置されている。さらに、トランスミッション10の前方には、該トランスミッションからの出力を受けて前記一対の前車軸5,5′に動力を伝達するデファレンシャルギア装置11が配設されている。即ち、図4に示すように、デファレンシャルギア装置11、トランスミッション10、HST8及びエンジン7は、車体幅方向略中央部分において、車体前方から順に配設されている。
【0016】
前記トランスミッション10は、図2及び図4に示すように、デファレンシャルギア装置11と向き合う中央部分10aと、該中央部分10aから車体幅方向一方側に延在した延在部10bとを有している。該延在部10bの前方にはモア駆動用PTO軸21が突設されている。該PTO軸21は自在継手22,22′及び伝動軸23を介してモア入力軸24に連結されている。さらに、図2,図4及び図7に示すように、該延在部10bの後方からは後輪駆動用出力軸31が後方へ向かって突設されている。
【0017】
まず、このように構成されたモアトラクタにおける,エンジン7からHST8への伝動構造について説明する。図1及び図2に示すように、前記エンジン7は前方へ突出した水平駆動軸41を有しており、該駆動軸の先端は自在継手42を介して伝動軸43に連結されている。
【0018】
前記トランスミッション10は、図3及び図4に示すように、前ケーシング51a及び後ケーシング51bを有するケーシング51を備え、さらに、先端が前ケーシング51aに軸受支持され且つ後端が後ケーシング51bから後方へ突出した入力軸52を備えている。該入力軸52は前記エンジン駆動軸41と略同軸上に配置されており、後端が自在継手42′を介して前記伝動軸43に連結されている。前記ケーシング51内において、入力軸52には歯車53及び歯車54が相対回転不能に支持されている。
【0019】
前記HST8は油圧ポンプ71及び油圧モータ72を有しており、ポンプ軸73の回転を所望速度に変速してモータ軸74に出力し得るようになっている。該ポンプ軸73及びモータ軸74は共に車体前後方向に沿うようにされており、好ましくは、図5に示すように、両軸を通る平面が略水平となるように配置される。斯かる構成によってHST8の高さ寸法を小さくでき、これにより、該HST8の上方で車体に設置されるシート等の取付位置を低くして車輌重心を下げることができる。本実施の形態においては、この効果を得る為に、前記ポンプ軸73及びモータ軸74を略同一水平面内に配設し、前記入力軸52を、その車体幅方向位置が前記両軸の間であって且つ高さが前記水平面より上方となるように配設されている。
【0020】
前記ポンプ軸73及びモータ軸74の先端部分は、図4に示すように、HST8から前方へ突出しており、油圧ブロック9を貫通してトランスミッションケーシング51内に突入している。前記ポンプ軸73の突入部分には歯車55が相対回転不能に支持されている。該歯車55は前記入力軸52上の歯車53と噛合している。即ち、本実施の形態においては、入力軸52、該入力軸52に相対回転不能に支持された歯車53、及び該歯車53と噛合するように、ポンプ軸73に相対回転不能に支持された歯車55が、エンジン出力を自在継手42,42′及び伝動軸43を介してHST8へ伝達する動力伝達機構を構成している。
【0021】
このように、本実施の形態においては、エンジン駆動軸41をHST8より前方に位置するトランスミッションの入力軸52と連結し、該入力軸52及び前方突出のポンプ軸73を歯車53,55を介して連結して、エンジン7の動力をHST8の前方から入力するようにしており、これにより、以下の効果を得ている。
【0022】
即ち、ポンプ軸を後方へ突出させ、該後方へ突出させたポンプ軸とエンジン駆動軸とを自在継手及び伝動軸を介して連結する従来の構成においては、HST後方壁とエンジン前方壁との間に自在継手を2個備える必要があり、そのため、エンジンをHSTから所定距離後方へ離間させる必要があった。従って、斯かる従来の構成においては、車輌自体の全長が長くなるという不都合を有していた。
【0023】
これに対し、本実施の形態においては、前述にように、エンジン7からHST8への動力伝達を、該HST8より前方に位置するトランスミッション10内の動力伝達機構を介してHST8の前方から行うように構成しているので、エンジン7をHST8に近接して配置させることができ、これにより、車輌全長の短縮化が可能になる。
【0024】
次に、HST8からデファレンシャルギア装置11への伝動構造について説明する。モータ軸74は、前述のように、前端部分が前方へ突出してトランスミッションケーシング51内に突入されている。トランスミッションケーシング51には、中間軸56が前記モータ軸74と同軸上となるように、支持されている。該中間軸56には後端面から軸方向に沿った中央孔56aが形成されている。前記モータ軸74の前端部分は前記中間軸の中央孔56aに突入され、両軸は軸線回り相対回転不能にスプライン結合されている。
【0025】
中間軸56には歯車57が相対回転不能に支持されている。該歯車57は、前記出力軸58の軸方向略中央部分に相対回転不能に支持された歯車59と噛合している。該出力軸58は、図4及び図6に示すように、前記ポンプ軸73と略同軸上となるように、前方部分が前ケーシング51aによって且つ後端部が前記ポンプ軸73上の歯車55に形成された中央孔55a内に突入されて、支持されている。該出力軸58の前端部はトランスミッションケーシング51から前方へ突出してデファレンシャルギア装置11のケーシング内に突入している。該出力軸58の突入部分には出力ギア67が設けられており、該出力ギア67はデファレンシャルギア装置11の入力ギア12に噛合している。
【0026】
即ち、本実施の形態においては、モータ軸74と軸線回り相対回転不能に連結された中間軸56、該中間軸56に相対回転不能に支持された歯車57、該歯車57と噛合する歯車59、該歯車59を相対回転不能に支持する出力軸58、及び該出力軸前端部に設けられた出力ギア67が、モータ軸74からデファレンシャルギア装置11へ動力を伝達する走行系動力伝達機構を構成している。
【0027】
さらに、図4及び図6に示すように、前記出力軸58のうち歯車57より後方部分には、環状の連結部材60が相対回転不能且つ軸方向摺動自在に支持されている。該連結部材60は後端面(ポンプ軸73上の歯車55との対向面)に係合部60aが突設されており、外周面には径方向外方へ突出した環状の突起60bが形成されている。該連結部材60の環状突起60bにはシフター61(図4,図6参照)の一端が係合している。該シフター61の他端はトランスミッションケーシング50から外方へ突出しており、該シフター61の他端を操作することによって、前記連結部材60を前記出力軸58上で摺動させ得るようになっている。前記ポンプ軸73上の歯車55の前端面(連結部材60との対向面)には前記連結部材の係合部60aと係合し得る係合部55bが形成されている。従って、前記シフター61を操作して連結部材60を摺動させ、該連結部材の係合部60aを前記歯車の係合部55bと係合させることによって、両者を連結回転させることができる。
【0028】
このように、前記出力軸58をポンプ軸73と略同軸上とし、さらに、該ポンプ軸73上の歯車55と連結回転させ得る連結部材60を前記出力軸58に設けたので、HST8に故障が発生した場合であっても、エンジン7から前車軸5,5′に動力を伝達することができる。即ち、HST8に故障が生じ、そのため、走行系動力伝達経路が遮断状態となり、車輌が走行不能状態になった場合であっても、前記シフター61を操作して連結部材60と前記歯車55とを連結させることによって、入力軸52,歯車53,歯車55,連結部材60及び出力軸58からなる緊急用の走行系動力伝達経路を形成することができる。従って、本実施の形態におけるモアトラクタは、万一、HST8が故障した場合であっても人力で修理工場等まで運ぶ必要は無く、緊急用の前記走行系動力伝達経路によって車輌を走行させることができる。
【0029】
次に、入力軸52からPTO軸21への伝動構造について説明する。図4及び図7に示すように、前記PTO軸21は、先端部が前記トランスミッション延在部10bから前方へ突出するように、前ケーシング51a及び後ケーシング51bによって車体前後方向に沿って支持されている。該PTO軸21にはクラッチ部材62を介して歯車63が支持されている。該歯車63は、アイドル軸64(図4参照)上の遊嵌歯車65を介して、前記入力軸52上の歯車54と噛合している。即ち、入力軸52上の歯車54、該歯車54と噛合する遊嵌歯車65、該遊嵌歯車65を支持するアイドル軸64、前記遊嵌歯車65と噛合する歯車63及びクラッチ部材62が、入力軸52からPTO軸21へ動力を伝達するPTO系動力伝達機構を構成している。
【0030】
なお、本実施の形態においては、図4及び図7に示すように、前記PTO軸21の後端部に、前記クラッチ部材62と連動するブレーキ部材66を設け、クラッチを接続するとブレーキが解除され、逆に、クラッチを遮断するとブレーキが作動するように構成している。斯かるブレーキ部材66を備えることにより、モアへの駆動力の遮断と同時に該モアの回転をその慣性力に抗して停止させることができる。
【0031】
本実施の形態においては、前述のように、PTO軸21をトランスミッション延在部10bから突出させるようにしており、これにより、以下の効果を得ている。
【0032】
即ち、PTO軸を前車軸より上方位置で前車軸ケースから前方に突設させつつ、フロントモア先端までの距離を本実施の形態におけると同じにしようとすると、PTO軸とモア入力軸とを連結する伝動軸の傾きが大きくなる(図7におけるZ参照)。伝動軸の傾きが大きくなると、該伝動軸の耐久性が悪化すると共に、モアを昇降等する際の騒音増大を招くことになる。
【0033】
一方、前記伝動軸の傾きを抑える為に、PTO軸を前車軸より下方位置で前車軸ケースから前方に突設させることは(図7におけるX参照)、前記前車軸ケースの前方に配設される作業機用リフトリンクの支点の存在によって、非常に困難であり、走行系動力伝達経路から動力を分岐してPTO軸まで動力を伝達するPTO系動力伝達機構が複雑となって、コストの高騰やメンテナンス性の悪化を招くことになる。さらに、前記リフトリンクの支点より下方からPTO軸を突設させると、前記伝動軸の地上高が極めて小さくなって、該伝動軸が石等の地上物と抵触し易くなり、また、前記作業機を上昇させた場合の該伝動軸の傾斜角が大きくなりすぎるという不都合が生じる。
【0034】
これに対し、本実施の形態によれば、前車軸5,5′より後方に位置するトランスミッション10を、デファレンシャルギア装置11と向き合う中央部分10aと、該中央部分10aから幅方向一方側へ延在した延在部10bとを有するものとし、PTO軸21を該延在部10bに突設支持させている。斯かる構成によれば、走行系動力伝達経路から動力を分岐させてPTO軸21へ伝達するPTO系動力伝達機構をトランスミッション10内において簡単な構造で形成することができると共に、PTO軸21を前車軸より後方へ配置させたことにより伝動軸23の傾きを抑えることができる。従って、伝動軸の傾きに起因する耐久性の悪化や騒音増大という不都合を招くことなく、前車輪及びフロントモア間隔を短くし得るモアトラクタを、安価に得ることができる。
【0035】
次に、後輪への伝動構造について説明する。図4及び図7に示すように、トランスミッション延在部10bの後端面下方部には、後輪駆動用出力軸81が後方へ向かって突設されている。該後輪駆動用出力軸81は前後のケーシング51a,51bによって車体前後方向に沿うように支持されている。該後輪駆動用出力軸81はケーシング51内において歯車82を相対回転自在に支持している。後輪駆動用出力軸81と歯車82との間にはクラッチ83が間挿されている。前記歯車82は、トランスミッションの中間軸56に相対回転不能に支持された歯車57と噛合している。即ち、モータ軸56,該モータ軸に相対回転不能に支持された歯車57,該歯車と噛合する歯車82,該歯車82を支持する後輪駆動用出力軸81及び該後輪駆動用出力軸81と歯車82との間に位置する一方向クラッチ83が、後輪への動力伝達機構を構成している。
【0036】
なお、本実施の形態においては、前述のように、後輪駆動用出力軸81と歯車82との間に一方向クラッチを介在させているが、これは、前輪3,3がスリップ等して後輪4,4に所定以上の負荷が掛かった場合にのみ、後輪4,4に駆動力を伝達し得るようにし、これにより、後輪4,4のスリップによる地面の荒れ等を防止するためである。即ち、常時、4輪駆動とすると、車輌旋回時に、前輪及び後輪間における旋回半径差によって、操向車輪たる後輪がスリップし、これにより、地面が荒らされることとなる。これに対し、前記一方向クラッチ83を設けておけば、斯かる不都合を防止しつつ、前輪スリップ時には後輪によって車輌を駆動させることが可能になる。
【0037】
以上のように、本実施の形態においては、車体前方から順に、デファレンシャルギア装置11、HST8及びエンジン7を配設したフロントマウント型モアトラクタにおいて、デファレンシャルギア装置11及びHST8間にトランスミッション10を設け、前記エンジン7からHST8への動力伝達をトランスミッション10内に設けた機械式動力伝達機構を介してHST8の前方から行うように構成したので、エンジン7をHST8に近接配置させることができ、これにより、車輌全長の短縮化を図ることができる。
【0038】
また、前記トランスミッション10を車体幅方向一方側へ延在させ、該延在部10b前方からPTO軸21を突出させるように構成したので、PTO軸21とモア入力軸24とを連結する伝動軸23の水平度を確保しつつ、車輌全長の短縮化を図り得るモアトラクタを簡単な構造で安価に提供することができる。
【0039】
さらに、前記ポンプ軸及びモータ軸を略同一水平面内に配置させているので、HSTの高さ寸法を小さくでき、これにより、車輌重心を下げることができる。
【0040】
なお、本実施の形態においてはフロントマウント型モアトラクタを例に説明したが、本発明はこれに限られるものではない。特に、駆動源からの動力をHSTの前方に配設したトランスミッションを経由させて該HSTの前方から入力させるようにすることは、HSTを備えた種々の作業車に適用することができる。また、前記トランスミッションを車体幅方向一方側に延在させ、該延在部分にPTO軸を設けるようにすることは、前記HSTへの入力方法とは関係なく、HSTを備えた作業車であって、車体後方側外方に作業装置を設けた種々の作業車に適用することができる。
【0041】
また、本実施の形態においては、各動力伝達機構を歯車によって構成したが、本発明はこれに限られるものでは無く、チェーン等種々の機械式動力伝達機構を用いることができる。
【0042】
さらに、本実施の形態においては、デファレンシャルギア装置,トランスミッション,HST及びエンジンを車体幅方向略中央に配置するようにしたが、これは、車輌バランスを考慮したものであり、本発明は斯かる配置に限られるものでは無い。即ち、前記構成部材の車体前後方向位置が前記順番である限り、これらの部材の幅方向設置位置は種々のものが適用できる。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係る伝動構造によれば、車体前後方向一方側の第1方向からこれと反対方向の第2方向に向かって順にデファレンシャルギア装置,HST及び駆動源が配設された車輌において、前記デファレンシャルギア装置及びHST間にトランスミッションを設け、前記駆動源からの動力を前記トランスミッションを介して第1方向からHSTに入力するようにしているので、駆動源をHSTに近接させて配置させることが可能となり、これにより、車輌全長の短縮化を図ることができる。
【0044】
前記駆動源の駆動軸とトランスミッションの入力軸とを同軸上に配置すれば、駆動源及びHST間の距離をより短縮化させることができる。
【0045】
また、HSTのポンプ軸及びモータ軸を略同一水平面内に配置させるようにすれば、HSTの高さ寸法を小さくでき、これにより、車輌重心を下げることができる。
【0046】
また、トランスミッションの出力軸とHSTポンプ軸とを同軸上として、互いに端面を突き合わせ、該出力軸上にポンプ軸と連結回転し得る連結部材を軸方向摺動自在に設ければ、HSTが故障した場合であっても、緊急用の走行系動力伝達経路を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図l】図1は、本発明に係る伝動構造の好ましい実施の形態を適用したフロントマウント型モアトラクタを概略的に示す側面図である。
【図2】図2は、図1に示すフロントマウント型モアトラクタの概略平面図である。
【図3】図3は、図1に示すフロントマウント型モアトラクタにおける伝動構造部分の斜視図である。
【図4】図4は、本発明に係る伝動構造を示す展開断面平面図である。
【図5】図5は、図4におけるA−A線断面図である。
【図6】図6は、図4におけるB−B線断面図である。
【図7】図7は、図4におけるC−C線断面図である。
【図8】図8は、従来のフロントマウント型モアトラクタを示す概略側面図である。
【符号の説明】
1 モアトラクタ
2 車体
3 前輪
4 後輪
5,5′ 前車軸
7 エンジン
8 HST
10 トランスミッション
11 デファレンシャルギア装置
14 モア
21 PTO軸
41 エンジン駆動軸
53 入力軸
58 出力軸
73 ポンプ軸
74 モータ軸
Claims (5)
- 車体内に設置された駆動源からの動力を、該駆動源より車体前後方向一方側の第1方向側に設置されたHSTを介して少なくとも第1方向側の車軸を駆動するデファレンシャルギア装置に伝達する動力伝達経路を備えた車輌の伝動構造であって、
前記HSTと前記デファレンシャルギア装置との間には、前記HSTよりも前記第1方向側にトランスミッションが設けられ、該トランスミッションは、ケーシングと、前記駆動源の駆動軸と軸連結される入力軸と、前記デファレンシャルギア装置と接続される出力軸とを有し、且つ、前記入力軸は前記ケーシングから前記第1方向と反対方向の第2方向側へ延びるようにされており、
前記HSTは、前記トランスミッションケーシング内に延びるポンプ軸を有する油圧ポンプと、前記トランスミッションケーシング内に延びるモータ軸を有し、前記油圧ポンプと協働する油圧モータとを備え、
前記トランスミッションは、ケーシング内に、それぞれ、前記入力軸及び前記ポンプ軸、並びに、前記モータ軸及び前記出力軸を連結して、前記走行系動力伝達経路を構成する第1,第2機械式動力伝達機構を備えていることを特徴とする車輌の伝動構造。 - 前記駆動軸と前記入力軸とは略同軸上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車輌の伝動構造。
- 前記ポンプ軸及びモータ軸は略同一水平面内に配置され、前記入力軸は、車体幅方向位置が前記ポンプ軸及びモータ軸の間であって、且つ、上下方向位置が前記ポンプ軸及びモータ軸より上方に配置されており、
前記第1機械式動力伝達機構は、前記入力軸に相対回転不能に支持される第1歯車と、該第1歯車と噛合するように前記ポンプ軸に相対回転不能に支持される第2歯車とを備え、
前記第2機械式動力伝達機構は、前記モータ軸と一体で回転する軸に対し相対回転不能に支持される第3歯車と、該第3歯車と噛合するように前記出力軸に相対回転不能に支持される第4歯車とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車輌の伝動構造。 - 前記ポンプ軸及び出力軸は略同軸上で且つ互いの端面が相互に突き合わされるように配置され、前記第2歯車は、第1方向側の端面に係合部を有し、
前記出力軸には、第4歯車及び第2歯車間を軸方向摺動自在とされた環状の連結部材が相対回転不能に支持され、且つ、該連結部材は、前記第2方向側の端面に前記第2歯車の係合部に対応する係合部を有しており、
前記連結部材を摺動させて前記第2歯車と係合させることにより、両者を一体回転させ得るように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の車輌の伝動構造。 - 前記トランスミッションケーシングは、前記デファレンシャル装置と向き合う中央部と、該中央部から車輌幅方向一方側に延びるように設けられた延在部とを有しており、
前記トランスミッションは、ケーシング延在部から第2方向へ延びる第2方向側車軸駆動用の第2出力軸を有し、さらに、ケーシング内に、前記モータ軸及び前記第2出力軸を連結する機械式動力伝達機構を備えていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の車輌の伝動構造。
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