図9に記載の従来技術1における配管構成方法によると、手動弁201、211は安全装置の機能を有するが、エアオペレート弁205、210と手動弁201、211との二種類の弁が必要となるため、弁の設置スペースの省スペース化が図れないため問題である。また図10に記載の従来技術2における手動機構付エアオペレート弁では、手動機構とエアオペレート弁とを一体に形成できるが、手動機構が安全装置としての機能を有さないため問題である。これは従来技術2の手動機構(開閉ノブ141)の使用目的が、手動により開弁することを主目的とするため、手動で閉弁できないためである。よって、手動により閉弁可能な手動弁とエアオペレート弁とを一体化した複合弁が必要である。さらに従来技術2の開閉ノブ141による手動機構では、開閉ノブ141の位置を所定の位置に固定保持する機構を簡便に実現するのが難しく、ノブを固定するストッパ132等が必要であるため、機構が複雑になり問題である。また開閉ノブ141の機構ではエア圧やスプリング等から受ける力に抗するための強度を得ることが難しく、耐久性を保つことが難しいため問題である。
本発明は前記従来技術の課題を解消するためになされたものであり、安全装置として動作する手動弁とパイロット弁とを一体化した複合弁を提供することを目的とする。すなわち、手動弁による安全装置が解除状態のときにのみパイロット弁の開閉が有効であり、またパイロット弁が開弁状態であっても手動弁を閉状態にすることで流体の流れを遮断可能である複合弁を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために請求項1に係る複合弁では、弁座に当接または離間して流体の流れを制御するダイアフラム弁体と、付勢手段により当接されている前記ダイアフラム弁体と前記弁座とを空気圧により離間させるパイロット弁機構と、前記パイロット弁機構と同軸上に備えられ、前記パイロット弁機構を手動により作動させる手動機構とを有する複合弁において、前記手動機構は、ハンドルを備えた手動ステムの軸方向の移動を可能にするネジ部を備えると共に、前記ダイアフラム弁体と前記弁座とが離間しているときに、前記手動機構により前記パイロット弁機構に作用している空気圧に抗して前記パイロット弁機構を前記ダイアフラム弁体に当接させることにより、前記ダイアフラム弁体と前記弁座とを当接させ、前記ダイアフラム弁体と前記弁座とが当接しているときに、前記手動機構により前記パイロット弁機構の位置を固定することにより、前記パイロット弁機構に作用する空気圧に抗して前記ダイアフラム弁体と前記弁座とが当接する状態を保持することを特徴とする。
従って手動機構により、パイロット弁機構へのエア供給のいかんに関わらず複合弁を閉弁状態に保持することが可能である。すなわちパイロット弁機構にエア圧がかけられてパイロット弁機構とダイアフラム弁体とが離間している(複合弁が開弁状態)場合に、手動機構をネジ機構によって移動させることによりパイロット弁機構をダイアフラム弁体に当接させ、かつ当接する状態で固定して複合弁を閉弁状態に保つことが出来る。またパイロット弁機構にエア圧がかけられず、付勢手段によってパイロット弁機構とダイアフラム弁体とが当接している(複合弁が閉弁状態)場合に、手動機構をネジ機構によって移動させることによりパイロット弁機構の位置を固定することで、パイロット弁機構へエア供給が行われパイロット弁機構にダイアフラム弁体から離れる方向への力が加わった場合においてもパイロット弁機構の位置を固定できるため、複合弁を閉弁状態に保つことが出来る。なお、手動機構をネジ機構によってパイロット弁機構の位置を固定しない場所へ移動させておけば、パイロット弁機構は遠隔操作に応じた通常の弁の開閉動作を行うことも可能である。
これにより、安全装置として機能する手動弁とパイロット弁とを一体化して1つの複合弁として構成することが可能となるため、弁の設置スペースの省スペース化が可能である。また配管に設置される弁数を減らすことで低価格化が図れる。また本発明の手動機構は、手動機構の軸方向の移動を可能にするネジ部を備えるため、特に手動機構の位置を固定するためのストッパ等を備えなくてもその位置を保持することができ、機構を簡略化でき低価格化、小型化、軽量化が可能である。またピストンロッドをダイアフラム弁体に押し付ける際の反力や、エア圧力による力などが合わさった合力が手動機構にかかるが、この合力をノブ機構等よりも強度を得やすいネジ部により支えるため、破壊等を防ぐことが可能となり、耐久性向上が図れる。
また請求項2に係る複合弁では、請求項1に記載の複合弁において、 手動機構とパイロット弁機構との間に備えられる弾性体を有し、手動機構とパイロット弁機構とが弾性体を介して当接することを特徴とする。
従来の手動による単体弁では、金属ダイアフラムの弾性反力と樹脂弁シートの弾性反力との合力が手動ステムのネジ部に常に加わるため、ネジ部の摺動抵抗が確保されていた。よって振動等によるネジ部のゆるみが防止されるために流体の漏れ発生の防止が可能であった。しかし請求項1にかかる複合弁では、パイロット弁機構に空気圧が加えられないときにおいて、パイロット弁機構がダイアフラム弁体と弁座とから受ける反力は、その反力と反対向きの付勢手段による付勢力によって抑え込まれる。従って手動機構とパイロット弁機構とが当接する場合においても両者は接するのみであり、パイロット弁機構から手動機構には力が加わらないためネジ部の摺動抵抗が確保しにくく、従来の手動による単体弁と比してネジ部がゆるみやすくなる。そこで請求項2に係る複合弁では手動機構とパイロット弁機構との間に弾性体を備え、手動機構とパイロット弁機構とが当接する場合には弾性体を介して当接するようにしている。これにより、手動機構とパイロット弁機構とが当接するときに弾性体に発生する反力が手動機構に加わり、ネジ部の摺動抵抗が確保されることで、振動等によるネジ部のゆるみの発生を防止することができる。
また請求項3に係る複合弁では、請求項1に記載の複合弁において、中心軸を有し、中心軸に対して円柱状に形成される弁座において、弁座は当接面を備え、当接面によって区切られた弁座の内径側の面積に比して、当接面の面積が40%から60%の範囲内であることを特徴とする。
これにより、弁座とダイアフラム弁体との当接時に弁座にかかる集中荷重を分散することができるため、弁座へたり量が低減し、繰り返し荷重による変形に対して強くなるため、弁の繰り返し開閉数の保証回数値を増やす事ができる。
また請求項4に係る複合弁では、請求項3に記載の複合弁において、弁座が有する当接面の形状は、高温度環境下において該弁座に荷重をかけることにより形成されることを特徴とする。
これにより、切削加工する場合に比してあらかじめ初期塑性変形が済んだ状態で当接面を形成できるため、弁座へたり量が低減し、また繰り返し荷重による変形に対して強くなる。よって耐久性を向上させることが可能であり、弁の繰り返し開閉数の保証回数をさらに増やす事ができる。またこれにより、へたり量が低減するため、ダイアフラム弁体が弁座に当接している時のダイアフラム弁体と弁座の密着性が高まる(ダイヤフラム弁体が弁座から受ける反発力が大きい)ため、流体の漏れ量を小さくすること等ができる。
また請求項5に係る複合弁では、請求項1に記載の複合弁において、パイロット弁機構よりも手動ステム側に、手動ステムのダイアフラム弁体方向への回転移動を制限するストッパ部を備えることを特徴とする。
すなわち、ネジ機構によって手動ステムをダイアフラム弁体方向へ移動させる場合に、所定量以上移動させようとした場合にストッパ部が機能し手動ステムの移動が制限される。これにより、パイロット弁機構をダイアフラム弁体に当接させることにより、ダイアフラム弁体と弁座とを当接する状態で固定して複合弁を閉弁状態に保つ場合に、ダイアフラム弁体を必要以上に弁座に当接させてしまう事態を防止できる。よって弁座に必要以上の力が加わることがないため弁座がへたりにくくなり、複合弁の耐久性を向上させることができるため、複合弁の繰り返し開閉数の保証回数をさらに増やす事などが可能である。
また、手動ステムのダイアフラム弁体方向への移動がストッパ部によって制限される場合にあっても、パイロット弁機構はストッパ部よりもダイアフラム弁体側にあるため、パイロット弁機構の移動は制限されない。これにより、付勢手段によりパイロット弁機構をダイアフラム弁体に当接させることができ、複合弁を閉弁状態にすることが可能である。
本発明は、弁座に当接または離間して流体の流れを制御するダイアフラム弁体と、付勢手段により当接されているダイアフラム弁体と弁座とを空気圧により離間させるパイロット弁機構と、パイロット弁機構と同軸上に備えられ、パイロット弁機構を手動により作動させる手動機構とを有する複合弁において、ハンドルを備えた手動機構は、手動ステムの軸方向の移動を可能にするネジ部を備えると共に、ダイアフラム弁体と弁座とが離間しているときに、手動機構によりパイロット弁機構に作用している空気圧に抗してパイロット弁機構をダイアフラム弁体に当接させることによりダイアフラム弁体と弁座とを当接させ、ダイアフラム弁体と弁座とが当接しているときに、手動機構によりパイロット弁機構の位置を固定することによりパイロット弁機構に作用している空気圧に抗してダイアフラム弁体と弁座とが当接する状態を保持する。
そのため、手動弁とエアオペレート弁とを一体化した複合弁を構成することができ、安全装置を備えた配管を構成するにあたり、手動弁とパイロット弁とを併設する必要のあった従来技術と比して、本実施の形態の複合弁では1つの複合弁で安全装置を構成することが可能となった。またこれにより弁の設置スペースの省スペース化が可能であり、また配管に設置される弁数を減らすことで低価格化が可能となった。
以下、本発明にかかる複合弁について具体化した実施形態を図1乃至図10に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。第1実施形態の第1実施例を図1乃至図3を用いて説明する。図1乃至図3は、本発明の複合弁の一実施の形態を示した断面図である。なお本実施形態で「上方」とは本複合弁における手動ステム32側、「下方」とは弁本体1側を指すものとする。図1における本実施の形態の複合弁は、弁本体1、カバー4、下部シリンダ2及び上部シリンダ3が一体になって構成されている。弁本体1は、入力ポート11と出力ポート12とが弁座13を介して連通部14にて連通されている。そして、弁座13に当接・離間するダイアフラム弁体16が、弁本体1とステム保持体5との間で挟持固定されている。そのため、弁本体1とカバー4とはダイアフラム弁体16によって気密に仕切られ、連通部14内を流れる流体がカバー4側へ漏れることはない。またステム保持体5にはステム6が揺動可能に挿着され、ステム6の下面はダイアフラム弁体16に当接する。ダイアフラム弁体16は、ステム6により下方へ付勢されない場合には弁座13と離間し、ステム6により下方へ付勢される場合には弁座13と当接するように配置される。そして弁本体1、ダイアフラム弁体16、弁座13、入力ポート11、出力ポート12によって弁機構が構成される。下部シリンダ2及び上部シリンダ3はシリンダ分離部28によって分離され密閉容器を構成し、その中を摺動するピストン21aおよび21bがそれぞれ装填されている。ピストン21aによって上部シリンダ3内の空間は上下2室に分割され、下室が加圧室22aとされる。同様にピストン21bによって下部シリンダ2内の空間は上下2室に分割され、下室が加圧室22bとされる。加圧室22aおよび22bには操作ポート23がサブロッド29およびピストンロッド26の通連孔を介して連通されている。一方、ピストン21a上方には、そのピストン21aを下方へ付勢するスプリング24が装填されている。また、ピストン21aおよび21bは、その軸心上に突設されたピストンロッド26を有し、ピストンロッド26はOリング25aを介して貫通孔27,39内に嵌挿され、気密に摺動するよう構成されている。ピストンロッド26の下部は弁本体1側にまで延び、その先端はステム6の近傍に位置する。そして下部シリンダ2、上部シリンダ3、ピストン21aおよび21b、ピストンロッド26、スプリング24によってパイロット弁機構が構成される。
一方、ピストンロッド26の上部はサブロッド29に当接する。サブロッド29は、Oリング25bを介して貫通孔39内に嵌挿され、気密に摺動するよう構成されている。サブロッド29の上方には、サブロッド29と当接・離間が可能である手動ステム32が備えられる。手動ステム32はハンドル30を備え、ネジ部31により上部シリンダ3に回転可能に歯合して設置されている。そして手動ステム32、ネジ部31により手動機構が構成される。また手動機構とパイロット弁機構と弁機構とによって複合弁が構成される。
上記のような構成からなる本実施の形態の複合弁は、次のように作用する。先ず、図1の弁機構の開弁状態(ダイアフラム弁体16と弁座13と離間し、流路スペースができる状態)を説明する。図1では手動ステム32とサブロッド29とは図1の領域Aで示すように離間している。このように、弁機構が閉弁状態時において手動ステム32とサブロッド29との間に離間空間が発生するような手動ステム32の下面の位置を、手動ステム32の安全機構解除位置Rと定義する。図1ではピストン21aがスプリング24により下方へ付勢され、ピストンロッド26の下端部がステム6に当接する。そしてステム6によりダイアフラム弁体16が下方に付勢され弁座13へ当接される状態となる。従って、入力ポート11から流入した流体は、ダイアフラム弁体16によって遮断された連通部14を通過することはなく、出力ポート12側へ流れることはない。
次に遠隔操作により弁機構を開弁状態にする場合には、不図示のコンプレッサによって操作ポート23からエアを供給する。すると図2に示す様に、加圧室22a、22b内のエア圧の上昇によって上方への力を受けたピストン21a、21bがそれぞれ上部シリンダ3、下部シリンダ2内を摺動し、スプリング24の付勢力に抗して上昇する。ピストン21a、21bの上昇に伴ってピストンロッド26も上昇し、ピストンロッド26とステム6とが離間するため、ダイアフラム弁体16が下方に付勢されなくなることにより、ダイアフラム弁体16は弁座13から離間する。従って、弁座13とダイアフラム弁体16との間に流路スペースができ、入力ポート11と連通部14と出力ポート12とが連通するので、入力ポート11から供給される流体が出力ポート12から吐出される。
そして遠隔操作によって弁機構を閉弁状態(ダイアフラム弁体16と弁座13とが当接する状態)にする場合には、加圧室22a、22b内へ供給されたエアを抜いて減圧させる。ピストン21a、21bを上方へ付勢する加圧室内のエア圧を減圧させれば、ピストン21aが上方に嵌装されたスプリング24の付勢力によって押し下げられる。そのため、ピストンロッド26の下端部がステム6に当接し、ステム6によりダイアフラム弁体16が下方に付勢され弁座13へ当接するので、流路が遮断され流体の流れが止められる。よって手動ステム32の下面が安全機構解除位置Rに存在する場合には、遠隔操作によって弁機構の開閉動作を行うことが可能であることが分かる。
次に、図2の開弁状態から手動機構によって閉弁状態にする場合を図2および図3を用いて説明する。図2では手動ステム32は安全機構解除位置Rに存在し、手動ステム32とサブロッド29とは図2の領域Bで示すように当接している。この図2の開弁状態からハンドル30に力を加えることにより手動ステム32をステム上面から見て時計方向に回転させる。すると手動ステム32と上部シリンダ3とはネジ部31により歯合しているため、手動ステム32は回転に応じて下方へ移動する。手動ステム32の移動に応じてサブロッド29およびピストンロッド26も一体にシリンダ下方へ移動し、ピストンロッド26の下端部がステム6に当接するため、ステム6によりダイアフラム弁体16が下方に付勢され弁座13へ当接される状態となり、図3に示す閉弁状態となる。そしてこのように弁機構が閉弁状態時において手動ステム32とサブロッド29とが当接するような手動ステム32の下面の位置を、手動ステム32の安全機構セット位置Sと定義する。よって、弁機構が開弁状態の場合においても、手動ステム32を安全機構解除位置Rから安全機構セット位置Sへ移動させることにより強制的に弁機構を開弁状態から閉弁状態に遷移させ、かつ閉弁状態を保持することができることが分かる。
また図1に示すように弁機構が閉弁状態であり、手動ステム32が安全機構解除位置Rに存在する場合に、手動ステム32を安全機構解除位置Rから安全機構セット位置Sへ移動させる場合を説明する。図1ではスプリング24の付勢力によってピストンロッド26が押し下げられ、ピストンロッド26と当接するステム6により弁機構が閉弁状態となっている。このとき手動ステム32とサブロッド29とは領域Aで示すように離間しており、ピストンロッド26の上方への移動は制限されない。ここでハンドル30に力を加えることにより手動ステム32をステム上面から見て時計方向に回転させると、手動ステム32は回転に応じてシリンダ下方へ移動し、図3に示す様にサブロッド29に当接する位置(安全機構セット位置S)で停止する。この図3の状態では、手動ステム32とサブロッド29とは領域Cで示すように当接しピストンロッド26の上方への移動は制限され、弁機構は閉弁状態であるため、操作ポート23からエアを供給しても弁機構は閉弁状態が維持される。よって、手動ステム32が安全機構セット位置Sに存在する場合には、遠隔操作によって弁機構の開閉動作を行うことが出来なくなることが分かる。
このように、手動ステム32が安全機構解除位置Rに存在する場合には、操作ポート23へのエア供給の有無により弁機構の開閉を遠隔操作することができ、手動ステム32が安全機構セット位置Sに存在する場合には、操作ポート23へのエア供給に関わらず常に弁機構を閉状態に維持することができる。さらに、手動ステム32が安全機構解除位置Rに存在し、弁機構が開状態の場合においても、手動ステム32を安全機構セット位置Sへ移動させることにより強制的に弁機構を閉状態に遷移させることができる。
また図3に示すように、サブロッド29は手動ステム32との当接面の周方向に突起してなるストッパ部29bを備え、上部シリンダ3は貫通孔39の上面にストッパ当接面3bを備える。また図3ではピストンロッド26の下端部がステム6に当接し、ステム6によりダイアフラム弁体16が弁座13へ当接されるため、弁機構は閉弁状態である。このとき、図3の閉弁状態から手動ステム32をステム上面から見て時計方向に回転させ、手動ステム32を安全機構セット位置Sからさらに下方へ移動させると、サブロッド29のストッパ部29bがストッパ当接面3bへ当接し、それ以上手動ステム32を下方へ移動することができない。すなわち手動機構の過締付け防止機構を構成する。これにより、ピストンロッド26を必要以上に下方へ移動させ、ステム6に当接させてしまう事態を防止できる。よって弁座13に必要以上の力が加わることがないため弁座13がへたりにくくなり、複合弁全体としての耐久性を向上させることができるため、複合弁の繰り返し開閉数の保証回数をさらに増やす事などが可能である。
またサブロッド29とピストンロッド26とは当接および離間可能に構成される。よって手動機構の過締付け防止機構が作用している場合(サブロッド29のストッパ部29bがストッパ当接面3bに当接している場合)においても、ピストンロッド26はサブロッド29と離間することにより自由に下方へ移動することができる。これにより、パイロット弁機構は手動機構の過締付け防止機構の作用を受けることがない。すなわちストッパ部が働いている場合にも、スプリング24によりピストンロッド26が下方へ付勢され、弁機構を閉弁状態(ダイアフラム弁体16と弁座13とが当接する状態)とすることができる。
尚、手動ステム32とサブロッド29とが一体に形成されても手動機構の過締付け防止機構は機能する。また、ハンドル30のハンドル下面30bと、ナット押さえ42のナット押さえ上面42bとが当接することにより、手動ステム32の下方へ移動が制限され、手動機構の過締付け防止機構を構成してもよい。
また図4に示すように手動ステム32bは、その下面の外周部にサブロッド29cとは当接しないように突起してなるストッパ部32cを備える構成でもよい。このような構成をとれば、ストッパ部32cがストッパ当接面3bへ当接し、それ以上手動ステム32を下方へ移動することができないため手動機構の過締付け防止機構を構成することができる。
また図5に示すように、ナット押さえ42の上面にハンドル30の回転を制限するピン43を備える構成でもよい。これにより、ハンドル30を時計方向に必要以上に回転させようとする場合にはハンドル30がピン43に当接する。よってそれ以上手動ステム32を下方へ移動することができないため手動機構の過締付け防止機構を構成することができる。
よって以上により、第1実施形態の複合弁では、弁座13に当接または離間して流体の流れを制御するダイアフラム弁体16と、スプリング24により当接されている弁座13とダイアフラム弁体16とを空気圧により離間させるパイロット弁機構と、パイロット弁機構と同軸上に備えられる手動機構とを有する複合弁において、手動機構は、手動ステムの軸方向の移動を可能にするネジ部31を備えると共に、ダイアフラム弁体16と弁座13とが離間しているときに、手動機構によりパイロット弁機構に作用している空気圧に抗してパイロット弁機構をダイアフラム弁体16に当接させることによりダイアフラム弁体16と弁座13とを当接させ、ダイアフラム弁体16と弁座13とが当接しているときに、手動機構によりパイロット弁機構の位置を固定することによりパイロット弁機構に作用している空気圧に抗してダイアフラム弁体16と弁座13とが当接する状態を保持する。そのため、手動弁とエアオペレート弁とを一体化した複合弁を構成することができる。すなわち手動機構と弁機構との組み合わせにより手動弁が構成され、この手動弁が安全装置として機能する。
これにより、安全装置を備えた配管を構成するにあたり、手動弁とパイロット弁とを併設する必要のあった従来技術と比して、本実施の形態の複合弁では1つの複合弁で安全装置を構成することが可能となるため、弁の設置スペースの省スペース化が可能であり、また配管に設置される弁数を減らすことで低価格化が図れる。また本発明の手動機構は、手動ステム32の軸方向の移動を可能にするネジ部31を備えるため、特に手動ステム32の位置を固定するためのストッパ等を備えなくてもその位置を保持することができる。これにより複合弁の機構を簡略化でき低価格化、小型化、軽量化が可能である。またピストンロッド26をダイアフラム弁体16に押し付ける際の反力や、エア圧力によりピストン21a、21bが受ける力などが合わさった大きな合力が手動ステム32にかかるが、この合力を(ノブ機構等よりも強度を得やすい)ネジ部31により支えるため、手動機構の破壊等を防ぐことができる。これにより耐久性向上が可能となる。
第1実施形態の第2実施例を図6および図7を用いて説明する。図6における第1実施形態の第2実施例の複合弁は、弾性体付サブロッド29aを備え、その上面にはウレタンシートで作成され、リング状に形成された弾性体50が嵌合されている。弾性体付サブロッド29aの上方には、該サブロッドと当接・離間が可能である手動ステム32aが備えられる。また弁機構が閉弁状態時において手動ステム32aと弾性体付サブロッド29aとの当接面の間に離間空間が発生するような手動ステム32aの当接面の位置を、手動ステム32aの安全機構解除位置R1と定義し、逆に両者が当接するような手動ステム32aの当接面の位置を、手動ステム32aの安全機構セット位置S1と定義する。その他の構造は第1実施形態の第1実施例(図1)と同様であるためここでは説明を省略する。
作用を説明する。図6は手動ステム32aの当接面が安全機構解除位置R1に存在し、遠隔操作によって弁機構が閉弁状態にされている(エアが供給されない)場合を示している。この場合には、スプリング24の付勢力によってピストンロッド26が押し下げられ、ピストンロッド26と当接するステム6により弁機構が閉弁状態となっている。このとき手動ステム32aと弾性体付サブロッド29aとは領域Dで示すように離間しており、ピストンロッド26の上方への移動は制限されないため、遠隔操作によって弁機構の開閉動作を行うことが可能である。
次に図6の状態で、手動ステム32aを安全機構解除位置R1から安全機構セット位置S1へ移動させる場合を説明する。手動ステム32aをステム上面から見て時計方向に回転させシリンダ下方へ移動させ、図7に示す様に弾性体付サブロッド29aに当接する位置(安全機構セット位置S1)で停止させる。このとき弾性体50は手動ステム32aが当接することにより圧縮力を受け変形する。このとき手動ステム32aが受ける力を考えると、手動ステム32aは弾性体50からの弾性力による反力のみを受け、弾性体付サブロッド29aからは力を受けない。これはピストンロッド26が受ける上方への反力(ダイアフラム弁体16と弁座13とから受ける弾性反力の合力)はスプリング24の下方への付勢力によって打ち消され、弾性体付サブロッド29aまで伝わらないためである。よって手動ステム32aに弾性体50から力がかかるため、ネジ部31の摺動抵抗が確保され、振動等によるネジ部31のゆるみの発生を防止することができる。
一方、第1実施形態の第1実施例の図3において、遠隔操作によって弁機構が閉弁状態にされている(エアが供給されない)場合を考えると、手動ステム32はサブロッド29からほとんど力を受けない。これは両者が接している(メタルタッチしている)のみであり反力を生じないためと、ピストンロッド26が受ける上方への反力はスプリング24の下方への付勢力によって打ち消され、サブロッド29まで伝わらないためである。よって手動ステム32にほとんど力がかからないため、ネジ部31の摺動抵抗が確保されず、振動等によるネジ部31のゆるみが発生し易くなるおそれがある。
よって以上により、複合弁が閉弁状態の場合に手動ステム32aと弾性体付サブロッド29aとを当接させたときに、弾性体50からの反力が手動ステム32aにかかるため、ネジ部31の摺動抵抗が確保され、振動等によるネジ部31のゆるみの発生を防止することができる。
第2実施形態を図8(イ)(ロ)を用いて説明する。図8(イ)は第1実施形態における弁座1近傍の断面拡大図、図8(ロ)は第2実施形態における弁座1近傍の断面拡大図である。第1実施形態を示す図8(イ)において、弁本体1は流体が流れ込む入力ポート11を備える。弁座13は弁座中心軸Oを中心に円筒状に形成され、入力ポート11を囲うように形成された弁座設置孔40にはめ込まれて弁本体1に設置される。弁本体1の上方へ飛び出た、弁座13の飛び出し部の頂上部には、弁座中心軸Oにほぼ垂直な面で形成された当接面M1が備えられ、該当接面M1は中心軸O方向に幅L1を持ったドーナツ形状を構成する。この当接面M1のもつドーナツ形状部分の面積を当接面面積SM1とする。また当接面M1の内径側端面から中心軸Oまでの距離を当接面内径RR1とし、当接面内径RR1により求まる円状部分の面積を当接面内径面積SR1と定義する。ここで当接面内径面積SR1に対する当接面面積SM1の割合は10%から20%までの範囲内の値を有する。
次に、第2実施形態にかかる弁座13bを備える弁本体1の近傍断面図を図8(ロ)において説明する。弁座13b以外の構造は第1実施形態の図8(イ)と同様であるためここでは説明を省略する。弁座13bの飛び出し部の頂上部には、弁座中心軸Oにほぼ垂直な面で形成された当接面M2が備えられ、該当接面M2は中心軸O方向に幅L2を持つ。この当接面M2のもつドーナツ形状部分の面積を当接面面積SM2とする。ここで幅L2は、前記幅L1に対して2倍から4倍の範囲内の値であり、好ましくは約3倍の値を有する。また当接面M2の内径側端面から中心軸Oまでの距離を当接面内径RR2とし、当接面内径RR2により求まる円状部分の面積を当接面内径面積SR2と定義する。ここで当接面内径面積SR2に対する当接面面積SM2の割合は40%から60%までの範囲内の値を有する。そして図8(イ)(ロ)において、弁本体1の閉弁時にはダイアフラム弁体16(不図示)が弁座13または弁座13bの飛び出し部上面の当接面M1、M2に当接する。よって入力ポート11の下方から流入した流体は、ダイアフラム弁体16と弁座13(または弁座13b)とによって遮断され、弁本体1は閉弁状態となる。
弁座13(図8(イ))の加工方法について説明する。原料は三フッ化塩化エチレン樹脂である。そして弁座13の当接面M1は切削加工によって作成される。一方、弁座13b(図8(ロ))の加工方法について説明する。弁座13bの加工方法には2種類あり、弁座13と同様に切削加工により作成した弁座13bを弁座13b1と、加熱状態で荷重をかけて形成した弁座13bを弁座13b2と定義する。ここで幅L2の当接面M2をもつ弁座13b2を、加熱状態で荷重をかけて形成する方法を述べる。まず切削加工により図8(イ)に示す弁座13(当接面M1、幅L1)を作成する。次に、弁座中心軸Oに対してほぼ垂直な面を備える金属製のジグを摂氏80度に加熱し、中心軸Oに対して同軸な状態を保ったまま、588(N)の荷重で弁座13の当接面M1に押し付ける。そして当接面M1の幅L1が幅L2に変形するまで荷重を負荷し続けた後にジグを離間させると、幅L2の当接面M2を備えた弁座13b2が得られる。
第2実施形態にかかる弁座13b1、13b2のへたりに対する効果およびへたりの評価方法について説明する。前述したジグを摂氏40度に加熱し、弁座の飛び出し部上面の当接面に当接するように980(N)の荷重で押し付ける。そして所定時間経過後にジグを離間したときの当接面の位置が、へたりが発生していない荷重をかける前の当接面を基準としてどれだけ低い位置にあるかを弁座へたり量Hと定義する。ここで弁座13(当接面M1、幅L1)の弁座へたり量をH1、弁座13b1(当接面M2、幅L2(切削加工))の弁座へたり量をHb1、弁座13b2(当接面M2、幅L2(加熱荷重形成))の弁座へたり量をHb2とする。このときの弁座へたり量を比較すると、弁座へたり量H1=0.16(mm)、Hb1=0.07(mm)、Hb2=0.0(mm)となった。
すなわち弁座13から弁座13b1へ変更(当接面の幅を幅L1から幅L2へ変更)することにより、ダイアフラム弁体と弁座との当接時に、弁座にかかる集中荷重を分散することができるため、弁座へたり量をH1からHb1へ約半分まで低減できることが分かる。なおこのとき弁座13b1における、当接面内径面積SR2に対する当接面面積SM2の割合は、40%から60%までの範囲内の値であり、好ましくは50%の値を有する。これは、この割合が40%以下の値の場合には、弁座13b1にかかる集中荷重を十分に分散できないため弁座へたり量Hの低減効果が得られず、逆にこの割合が60%以上の場合にはダイアフラム弁体16と弁座13b1との当接面の面圧が低くなり、流体の遮断効果が低下するために流体漏れの発生の危険性が高まるためである。
さらに切削加工方法に代えて、加熱荷重による形成方法を用いて当接面M2を有する弁座13b2を作成すると、弁座へたりを無くすことができることが分かる(Hb2)。これは加熱したジグで与えられる荷重により当接面の幅を幅L1から幅L2へ変形させて加工することにより、あらかじめ初期塑性変形が済んだ状態で当接面M2を作成することができるためである。
このように第2実施形態の複合弁では、弁座13(当接面M1、幅L1)に比して幅広の当接面を持つ弁座13b(当接面M2、幅L2)を備えるため弁座へたり量が低減し、繰り返し荷重による変形に対して強くなるため、弁の繰り返し開閉数の保証回数値を増やす事ができる。また加熱荷重により変形させることで形成することにより、切削加工する場合に比して、弁座へたり量が低減し、繰り返し荷重による変形に対して強くなる。よって弁の繰り返し開閉数の保証回数をより増やす事ができる。またへたり量が低減するため、ダイアフラム弁体16が弁座に当接している時(弁機構の閉弁状態時)のダイアフラム弁体と弁座の密着性が高まり(ダイヤフラム弁体が弁座から受ける反発力が大きい)、流体の漏れ量を小さくすること等が可能となる。
なお、本発明の手動機構付エアオペレート弁は、前記実施の形態のものに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、弁座13および13bは三フッ化塩化エチレン樹脂を原料としたが、ポリイミドなどの樹脂を原料としてもよい。また弾性体50はウレタンシート製の弾性体としたが、その他にもOリング、皿ばね、巻きバネ等の弾性体を用いてもよい。また弾性体50はリング状に形成されるとしたが、弾性が得られる形状であればよく、例えば巻きバネがサブロッド29の上面に備えられる形状でもよい。また弾性体50は弾性体付サブロッド29aの上面に嵌合されるとしたが、手動ステム32a側に固定されていてもよいし、固定されずに載置してあってもよいことは言うまでもない。また、ピストンロッド26はピストン21a、21bとは別体のものとして形成したが、ピストンと一体のものであってもよい。