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JP4239638B2 - オレフィン系熱可塑性エラストマーおよびその成形体 - Google Patents

オレフィン系熱可塑性エラストマーおよびその成形体 Download PDF

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JP4239638B2 JP2003081084A JP2003081084A JP4239638B2 JP 4239638 B2 JP4239638 B2 JP 4239638B2 JP 2003081084 A JP2003081084 A JP 2003081084A JP 2003081084 A JP2003081084 A JP 2003081084A JP 4239638 B2 JP4239638 B2 JP 4239638B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に耐油性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーおよび該エラストマーを成形して得られる成形体に関するものである。本発明の熱可塑性エラストマーや成形体は、自動車・車両部品、電気・電子機械部品、装置・器具部品、工業部品、建築部品等の広い分野で有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
アクリルゴムは耐油性、耐熱性、耐オゾン性等に優れていることから、各種ホース類、パッキン、ガスケット、シール材等のシール類に使用されている。アクリルゴムを用いた成形体は、アクリルゴムに充填剤、老化防止剤、加工助剤、加硫剤等の各種配合剤を混合したものを加硫成形し、その後更に二次加硫を行うという工程を経て製造されている。このように、アクリルゴムは成形体の製造工程において加硫という煩雑な工程があるうえ、製造工程で発生したスクラップ、製品を再加工することが困難であるといった問題があった。
【0003】
近年、加硫ゴムに代わりうる素材として、オレフィン系熱可塑性エラストマーが優れた機械的物性、成形性およびリサイクル性を有していることから、自動車の内外装部品や電機分野で幅広く使用されている。例えば、ポリプロピレンとエチレン−プロピレン系ゴムとからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーや、ポリプロピレンとアクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(以下NBRと略称する)とからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーが知られている。
【0004】
しかしながら、前者のオレフィン系熱可塑性エラストマーは耐油性に劣り、後者のオレフィン系熱可塑性エラストマーは耐油性に優れるものの、耐熱性や耐候性に劣るという欠点を有している。このため、自動車のエンジンルーム内等の、耐油性と耐熱性の両方が要求される分野で使用するにはその特性が十分ではないという問題があった。
【0005】
前記のようなオレフィン系樹脂とゴムとからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーは本質的に非相溶性であり、単純にブレンドしたのでは良好な材料は得られないため、両者の相溶性を高めるような相溶化剤を添加したものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。その相溶化剤は、オレフィン重合体とカルボン酸を含む硬化酸性アクリル酸エステル共重合体ゴムとを相溶化するものである。すなわち、相溶化剤はオレフィン重合体相溶性セグメントと酸性アクリル酸エステル共重合体ゴム相溶性付与セグメントとから構成されるグラフト共重合体である。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−156738号公報(第1頁及び第14頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の特許文献1に開示された相溶性付与重合体組成物は耐油性がいまだ不十分なものであった。その理由は、オレフィン系重合体およびアクリル系ゴムに対するグラフト共重合体の分散性が低く、かつ架橋密度が小さいことから、耐油性が十分に向上されないものと推定される。また、用いられるアクリル系ゴムは極性が低いことから、重合体組成物として耐油性等の性能を十分に発揮することができないものと考えられる。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、耐油性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーおよびその成形体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、第1の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、プロピレンを主体とするエチレン−プロピレン共重合体より形成されるオレフィン系重合体セグメントおよびビニル系単量体より形成されるビニル系重合体セグメントからなり、二つのセグメントのうち一方が他方に粒子径0.01〜1μmの微細な粒子として分散相を形成しているグラフト共重合体と、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%、アクリル酸アルキルエステル5〜85重量%、アクリロニトリル5〜15重量%およびアリルメタクリレート0.1〜10重量%を含有する単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、架橋剤と、共架橋剤とを溶融混練して得られることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、プロピレンを主体とするエチレン−プロピレン共重合体より形成されるオレフィン系重合体粒子中にビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が分散した構造体であるグラフト化前駆体と、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%、アクリル酸アルキルエステル5〜85重量%、アクリロニトリル5〜15重量%およびアリルメタクリレート0.1〜10重量%を含有する単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、架橋剤と、共架橋剤とを溶融混練して得られることを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第2の発明において、前記グラフト化前駆体が、プロピレンを主体とするエチレン−プロピレン共重合体より形成されるオレフィン系重合体粒子中に、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を含浸させた後、ビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物とを共重合させて得られることを特徴とするものである。
【0012】
第4の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第2または第3の発明において、前記ラジカル重合性有機過酸化物が、下記一般式(1)または(2)で示される化合物であることを特徴とするものである。
【0013】
【化3】
Figure 0004239638
(式中、R1は水素原子または炭素数1もしくは2のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。mは1または2である。)
【0014】
【化4】
Figure 0004239638
(式中、R6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子またはメチル基、R8およびR9はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。nは0、1または2である。)
第5の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜4のいずれかの発明において、前記ビニル系重合体セグメントまたはビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が、架橋性官能基を有していることを特徴とするものである。
【0015】
第6の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜5のいずれかの発明において、更にプロピレンを主体とするエチレン−プロピレン共重合体より形成されるオレフィン系重合体を含み、溶融混練されるものである。
【0016】
第7の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜6のいずれかの発明において、更に可塑剤、伸展剤、滑剤、充填剤、難燃剤および老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含み、溶融混練されるものである。
【0018】
の発明の成形体は、第1〜のいずれかの発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られるものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、特定のグラフト共重合体と、メトキシエチルアクリレート、アクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリルおよびアリルメタクリレートを主成分とする単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、架橋剤と、共架橋剤とを溶融混練して得られるものである。
【0020】
まず、グラフト共重合体について説明する。このグラフト共重合体は、α-オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体セグメントとビニル系単量体より形成されるビニル系重合体セグメントとから構成されている。そして、二つのセグメントのうち一方が他方に対し粒子径が0.01〜1μmの微細な粒子となった分散相を形成している。このグラフト共重合体は、通常オレフィン系重合体セグメントを幹成分とし、ビニル系重合体セグメントを枝成分とする構造を有しているが、製造条件によってはH型構造のものが含まれたり、不規則な構造を有するものが含まれる。すなわち、グラフト共重合体は多相構造型のものであって、一方のセグメントが他方のセグメントのマトリックス(海)中に粒子径0.01〜10μmの微細な粒子として分散相(島)を形成している。α-オレフィン単量体は非極性である。微細な粒子の粒子径は、好ましくは0.1〜1μmである。この粒子径が0.01μm未満の場合あるいは1μmを超える場合、アクリル系ゴムにグラフト共重合体をブレンドしたときの相溶性が不十分となり、外観の悪化あるいは機械的物性(本明細書では圧縮永久歪み、引張強度、破断点伸び、硬度等の物性を意味する。)が低下するため好ましくない。
【0021】
オレフィン系重合体とは、α-オレフィン単量体より形成されるもので、高圧ラジカル重合、中低圧イオン重合などで得られる非極性α-オレフィン単量体の単独重合体または2種類以上のα-オレフィン単量体の共重合体である。上記α-オレフィン単量体としてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。その中でもエチレン、プロピレンが好ましい。
【0022】
オレフィン系重合体の具体例としては、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超超低密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などを挙げることができる。これらの中で、耐油性、機械的物性の点で好ましいのは、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体である。
【0023】
特に好ましいのは、耐油性エチレン−プロピレン共重合体である。耐油性エチレン−プロピレン共重合体とは、ポリプロピレン単独重合体、エチレンの含有量が10重量%以下のエチレン-プロピレンブロック共重合体またはエチレンの含有量が5重量%以下のエチレン-プロピレンランダム共重合体である。この耐油性エチレン−プロピレン共重合体はプロピレンを主体とし、特に耐油性に優れている。これらのオレフィン系重合体は、混合して使用することもできる。また、オレフィン系重合体の重量平均分子量は好ましくは5,000〜3,000,000、更に好ましくは10,000〜2,000,000、特に好ましくは50,000〜1,000,000である。重量平均分子量が5,000未満であったり、3,000,000を超えると、オレフィン系熱可塑性エラストマーの機械的物性、成形性が低下する傾向となる。
【0024】
次に、ビニル系重合体セグメントについて説明する。ビニル系重合体セグメントはビニル系単量体より形成されるもので、ビニル系単量体の単独重合体または複数のビニル系単量体の共重合体より形成されるものである。前記ビニル系単量体としては、アクリル系ゴムとの相溶性が良好なものが好ましい。
【0025】
具体的には、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレン等のビニル芳香族;α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のα−置換スチレン;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート等のアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;アクリロニトリルもしくはメタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有単量体であり、これらの単独、または2種以上が用いられる。
【0026】
これらの中で特に好ましいのは、アクリル系ゴムとの相溶性に優れている点からスチレン、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリロニトリルおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。
【0027】
また、ビニル系重合体中に前記ビニル系単量体などと一緒に、多官能性単量体や架橋性官能基を有する単量体を共重合しても良い。架橋性官能基を有する単量体としては、具体的には活性塩素含有単量体、エポキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、不飽和基含有単量体等である。具体例を挙げると、多官能性単量体としては、二官能性アクリレート類、二官能性メタクリレート類、三官能性アクリレート類、三官能性メタクリレート類、ジビニルベンゼン等である。
【0028】
活性塩素含有単量体としては、例えば2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロルアセテート、アリルクロルプロピオネート、アリルクロルアセテート、アリルクロルプロピオネート等が挙げられる。好ましくは、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロルアセテートである。エポキシ基含有単量体としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシブテン、3,4−エポキシ−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチルペンテン、p−グリシジルスチレン等が挙げられる。好ましくは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルである。カルボキシル基含有単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、桂皮酸が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
【0029】
不飽和基含有単量体としては、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。好ましくは、アリルメタクリレートである。これら多官能性単量体、架橋性官能基を有する単量体の使用量は、ビニル系共重合体中に好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。この共重合割合が20重量%を超える場合、成形性と機械的物性が低下する傾向となるため好ましくない。尚、これらの架橋性官能基を有する単量体は架橋剤の種類により適宜選択して使用される。
【0030】
ビニル系重合体セグメントとなるビニル系重合体の数平均重合度は通常5〜10,000、好ましくは10〜5,000、最も好ましくは100〜2,000である。数平均重合度が5未満であると、オレフィン系熱可塑性エラストマーの成形性を向上させることは可能であるが、アクリル系ゴムとの相溶性が低下し外観が悪化する傾向にある。また、数平均重合度が10,000を超えると、溶融粘度が高く、成形性が低下したり、表面光沢が低下する傾向にある。
【0031】
グラフト共重合体中に含まれるα-オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体セグメントの割合は通常5〜95重量%、好ましくは20〜90重量%、最も好ましくは30〜80重量%である。したがって、ビニル系重合体の割合は通常95〜5重量%、好ましくは80〜10重量%、最も好ましくは70〜20重量%である。オレフィン系重合体の割合が5重量%未満であると、成形性改良効果が不十分となり、また、オレフィン系重合体の割合が95重量%を超えると、成形性改良効果は得られるが、アクリル系ゴムとの相溶性が悪化し、機械的物性が低下する傾向にある。
【0032】
次に、オレフィン系熱可塑性エラストマーはグラフト化前駆体と、アクリル系ゴムと、架橋剤と、共架橋剤とを溶融混練することによっても得られることから、前記グラフト共重合体に代えてグラフト化前駆体を使用することもできる。グラフト化前駆体は、α-オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体粒子中にビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が分散された構造体である。すなわち、グラフト化前駆体は、上記α-オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体粒子中にビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体(以下、過酸化物結合を有するビニル系共重合体と略記する。)が分散された構造体である。本実施形態で使用するラジカル重合性有機過酸化物とは、エチレン性不飽和基と過酸化物結合基を有する単量体である。好ましくは下記一般式(1)または(2)で示されるものである。
【0033】
【化5】
Figure 0004239638
(式中、R1は水素原子または炭素数1もしくは2のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数1〜12のアルキル 基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。mは1または2である。)
【0034】
【化6】
Figure 0004239638
(式中、R6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子またはメチル基、R8およびR9はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。nは0、1または2である。)
中でも好ましくは、tert−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシアリルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタリルカーボネート等のラジカル重合性有機過酸化物である。
【0035】
グラフト化前駆体中に含まれるα-オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体部分の割合は通常5〜95重量%、好ましくは20〜90重量%、最も好ましくは30〜80重量%である。したがって、ビニル系重合体の割合は通常95〜5重量%、好ましくは80〜10重量%、最も好ましくは70〜20重量%である。オレフィン系重合体の割合が5重量%未満であると、成形性改良効果が不十分となる。また、オレフィン系重合体の割合が95重量%を超えると、成形性改良効果は得られるが、アクリル系ゴムとの相溶性が悪化し、機械的物性が低下する傾向にある。
【0036】
ビニル系重合体セグメントに形成される過酸化物結合を有するビニル系重合体の数平均重合度は通常5〜10,000、好ましくは10〜5,000、最も好ましくは100〜2,000である。数平均重合度が5未満であると、オレフィン系熱可塑性エラストマーの成形性を向上させることは可能であるが、アクリル系ゴムとの相溶性が低下し、外観が悪化する傾向にある。また、数平均重合度が10,000を超えると、溶融粘度が高く、成形性が低下したり、表面光沢が低下する傾向にある。
【0037】
グラフト共重合体は、グラフト化前駆体を溶融混練することにより得ることができる。溶融混練時の加熱により、ビニル系重合体中の過酸化物結合が開裂し、生成したラジカルがα-オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体に対して水素引き抜き反応を行い、それに引き続くグラフト化反応によりグラフト共重合体が製造される。このような製造方法は簡便で、グラフト効率が高く、加熱によるビニル系重合体セグメントの二次的凝集が起こらず、グラフト共重合体がアクリル系ゴムと混合しやすくなり、両者の相互作用に優れている。
【0038】
溶融混練する際の混練機としては、具体的には、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロール等が使用される。混練温度としては通常100〜300℃、好ましくは120〜280℃の範囲である。この温度が100℃未満の場合、溶融が不完全であったり、また溶融粘度が高いため、混合が不十分となって、成形体に相分離や層状剥離が現れるため好ましくない。また300℃を超えると、混合される樹脂の分解もしくはゲル化が起こり易くなるため好ましくない。
【0039】
次に、グラフト化前駆体の製造方法を具体的に説明する。
グラフト化前駆体は、α-オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体粒子中に、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機化酸化物およびラジカル重合開始剤を含浸させた後、ビニル系単量体とラジカル重合性有機化酸化物とを共重合させて得られる。
【0040】
すなわち、α-オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体100重量部を水に懸濁させる。そこへ少なくとも1種のビニル系単量体にラジカル重合性有機過酸化物の1種または2種以上の混合物とラジカル重合開始剤とを溶解せしめた溶液を加える。この溶液は、ビニル系単量体5〜1,900重量部に、ラジカル重合性有機過酸化物を該ビニル系単量体100重量部に対して0.1〜10重量部と、ラジカル重合開始剤をビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との合計100重量部に対して0.01〜5重量部とを溶解したものである。ラジカル重合開始剤は10時間の半減期を得るための分解温度が40〜90℃のものである。α-オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体の形状は、粒子状が好ましく、その粒径は10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0041】
次に、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱し、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤をオレフィン系重合体に含浸せしめる。その後、この水性懸濁液の温度を上昇させることにより、ビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物とをオレフィン系重合体中で共重合させて、グラフト化前駆体を得ることができる。
【0042】
得られたグラフト化前駆体は、その中にブレンドされているビニル系重合体が、活性酸素として0.003〜0.73重量%を含有していることが好ましい。活性酸素量が0.003重量%未満であるとグラフト化前駆体のグラフト化能が極度に低下し、好ましくない。また、0.73重量%を超えた場合、グラフト化の際ゲルの生成が多くなるため好ましくない。尚、この場合の活性酸素量は、グラフト化前駆体から溶剤抽出によりビニル系重合体を抽出し、このビニル系重合体の活性酸素量をヨードメトリー法により求めることによって算出することができる。
【0043】
次に、アクリル系ゴムとは、メトキシエチルアクリレート、アクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリルおよびアリルメタクリレートを主成分とする単量体混合物を共重合することにより得られるゴムである。ここで主成分とは、これら4種の必須単量体の混合物がその他の単量体に比べて最も含有量が多いことをいう。4種の必須単量体の混合物が通常50重量%以上であることをいう。4種の必須単量体を用いることにより、得られるアクリル系ゴムの耐油性、耐熱性、機械的物性、成形性等の物性を向上させることができる。
【0044】
各必須単量体の含有量として、メトキシエチルアクリレートは10〜90重量%が好ましく、アクリル酸アルキルエステルは5〜85重量%が好ましく、アクリロニトリルは5〜15重量%が好ましく、アリルメタクリレートは0.1〜10重量%が好ましい。これらの成分の含有量をこの範囲に設定することにより、アクリル系ゴムのもつ耐油性、耐熱性、機械的物性、成形性等の物性をバランス良く発揮させることができる。
【0045】
前記アクリル酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上が適宜使用される。これらの中で特に好ましいのは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートである。
【0046】
また、耐油性、機械的物性等の物性を向上させる目的で、スチレン、ジビニルベンゼン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、炭素数1〜12アルキル鎖を持つメタクリル酸アルキルエステル、二官能性アクリレート類、二官能性メタクリレート類、三官能性アクリレート類、三官能性メタクリレート類、エチレン、プロピレンまたはイソブテン等のα−オレフィン類、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類などを共重合しても良い。これらの共重合量としては40重量%以下が好ましく、30重量%以下が更に好ましい。共重合量が40重量%を超えるとアクリル系ゴムの耐油性、機械的物性、成形性等の物性のバランスを損なう傾向にある。ここで、グラフト共重合体中のビニル系重合体と同様に、活性塩素含有単量体、エポキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体を更に共重合しても良い。
【0047】
次に、アクリル系ゴムの製造方法を具体的に詳述する。
メトキシエチルアクリレートとアクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルとアリルメタクリレートを主成分とする単量体成分を、界面活性剤、水、重合開始剤を含む水中に滴下して、乳化共重合させる。この際、単量体成分の一部をあらかじめ添加する手順であっても良い。乳化重合終了後、塩析を行い、アクリル系ゴムを得る。乳化重合時の重合温度は、通常40〜100℃、好ましくは60〜90℃であり、重合時間は通常2〜12時間、好ましくは4〜10時間である。
【0048】
前記界面活性剤は特に限定されるものでなく、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、反応性乳化剤等の全ての界面活性剤が使用できる。
【0049】
アニオン性界面活性剤としては、例えばナトリウムドデシルサルフェートもしくはカリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエ−テルサルフェート、ナトリウムスルホリシノエート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩もしくはスルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエートもしくはトリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートもしくはアルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属塩サルフェート等のアルキルアリールスルホネート等が挙げられる。
【0050】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。
【0051】
カチオン性界面活性剤としては、オクタデシルアミン酢酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、またはジオレイルジメチルアンモニウムクロライド等が例として挙げられる。
【0052】
両性界面活性剤としては、ジメチルラウリルベタイン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、アミドベタイン型、またはイミダゾリン型等が例として挙げられる。高分子界面活性剤としては、ポリビニルアルコ−ル、或いは、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の水溶性高分子が例として挙げられる。
【0053】
反応性乳化剤としては、花王(株)社製のラムテルS−180もしくはS−180A、第一工業製薬(株)社製のアクアロンRNシリ−ズもしくはHSシリ−ズもしくはニューフロンティアA−229EもしくはN−177E(日本乳化剤(株)社製のAntoxMS−60、MS−2NもしくはRA−1120もしくはRA−2614もしくはRMA−564もしくはRMA−568もしくはRMA1114、旭電化工業(株)社製のアデカリアソープNE−10もしくはNE−20もしくはNE−40、または新中村化学工業(株)社製のNKエステルM20GもしくはM−40GもしくはM−90GもしくはM−230G等が例として挙げられる。
【0054】
これらのうち好ましくは、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤である。前記のアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、反応性乳化剤等の界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。その使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜25重量部、更に好ましくは0.5〜20重量部である。0.1重量部未満では乳化が不安定となって凝集物を生じてしまい、25重量部を超えると乳化液の粘度が上昇しすぎる傾向にある。
【0055】
前記重合開始剤は、特に限定されるものでなく、例えばナトリウムパーサルフェート、カリウムパーサルフェート、アンモニウムパーサルフェート、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカ−ボネ−ト、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアジピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。
【0056】
これらの重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。0.05重量部未満では重合開始能が低下してしまい、10重量部を超えると重合安定性が低下してしまう傾向にある。前記塩析に用いる塩析剤種は、特に限定されるものでなく、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム等の多価金属塩、ジメチルアミン酢酸塩、エチルアミン酢酸塩、シクロヘキシルアミン酢酸塩等の有機酸アミン塩類等が挙げられる。
【0057】
グラフト共重合体とアクリル系ゴムの混合比(グラフト共重合体/アクリル系ゴム)またはグラフト化前駆体とアクリル系ゴムの混合比(グラフト化前駆体/アクリル系ゴム)は、重量基準で好ましくは95/5〜5/95、更に好ましくは90/10〜10/90、特に好ましくは85/15〜15/85である。アクリル系ゴムが95重量%を超えると成形加工性が低下したり、得られる成形体の機械的物性が低下し、また5重量%未満では成形体の圧縮永久歪みが悪く、硬度も高くなる傾向にある。
【0058】
次に架橋剤は、オレフィン系熱可塑性エラストマーが架橋構造を有するものとし、耐油性および機械的物性を向上させるものである。この架橋は、例えば有機過酸化物を用いた場合にはそれ自体の作用によってオレフィン系熱可塑性エラストマーに架橋構造が形成される。また、架橋剤がグラフト共重合体、グラフト化前駆体またはアクリル系ゴムに含有される架橋用官能基と反応することによって、オレフィン系熱可塑性エラストマーに架橋構造が形成される。この場合、架橋剤はグラフト共重合体、グラフト化前駆体またはアクリル系ゴムに導入されている官能基(架橋部位)によって使い分けられる。
【0059】
従って、架橋部位が活性塩素、エポキシ基、カルボキシル基、不飽和基である場合の架橋剤の具体例としては、これらの官能基と反応しうる官能基が挙げられる。例えば硫黄、含硫黄有機化合物、アミノ基含有化合物、酸無水物基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、樹脂架橋剤、有機過酸化物等が挙げられる。これらの架橋剤には公知の架橋促進剤を併用することが好ましい。
【0060】
含硫黄有機化合物としては、例えばテトラメチルチウラムジサルファイド、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトラブチルチウラムジサルファイド、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等のチウラム類、sec−ジエチルジチオカーバメート、tert−ジエチルジチオカーバメート、sec−ジメチルジチオカーバメート等のジチオ酸塩類、モルホリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
【0061】
アミノ基含有化合物としては、例えばトリメチルヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン等の脂肪族ジアミン類、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ポリアミン類、フェニレンジアミン、4,4'−メチレンジアニリン、トルエンジアミン、ジアミノジトリルスルホン等の芳香族アミン類等が挙げられる。酸無水物基またはカルボキシル基含有化合物としては、例えば無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、シアヌル酸等が挙げられる。
【0062】
イソシアネート含有化合物としては、例えばトルエンジイソシアネート、イソシアナート基を末端基とするプレポリマーのイソシアナート類等が挙げられる。エポキシ基含有化合物としては、例えばビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン等のジグリシジルエーテルのようなエポキシド類が挙げられる。樹脂架橋剤としては、例えばアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物およびトリアジン−ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル−メラミン樹脂等が挙げられる。
【0063】
有機過酸化物としては、例えばケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネイト類、パーオキシエステル類が挙げられる。これらの中で、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類が好ましい。
【0064】
架橋部位が非共役ジエン等の不飽和基である場合や官能基を含まない場合、有機過酸化物による架橋が有効である。架橋反応に用いる有機過酸化物としては、特に制限を受けず公知の有機過酸化物の全てが使用可能である。例えばジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α'−ビス(tert−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、tert−ブチルパーオキシクメン等が挙げられる。
【0065】
これらの中で好ましくはジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α'−ビス(tert−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3である。
【0066】
架橋剤の添加量は、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量、またはグラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量に対し、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。この添加量は、架橋点の濃度および架橋剤の種類によって適宜変更される。0.01重量%未満では、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーの耐油性および機械的物性が悪くなり、また10重量%を超えると成形加工性が低下する傾向にある。
【0067】
次に、共架橋剤とは、得られる熱可塑性エラストマーの耐油性および機械的物性を更に向上させるために添加するものである。例えばp−ベンゾキノンジオキシム、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、マレイミド、フェニ−ルマレイミドN,N’−m−フェニレンビスマレイミド、無水マレイン酸、イタコン酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、1,2−ポリブタジエン等が挙げられる。
【0068】
この中で好ましいのはp−ベンゾキノンジオキシム、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼンである。
【0069】
更に好ましいのはp−ベンゾキノンジオキシム、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼンである。
【0070】
これら共架橋剤の使用量は、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量、またはグラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量に対し0.01〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%である。0.01重量%未満では、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーの機械的物性および耐油性が悪くなり、また20重量%を超えると成形性が著しく低下する傾向にある。
【0071】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーはα−オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体が更に添加されて溶融混練されたものであっても良い。オレフィン系重合体の具体例としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超超低密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体等を挙げることができる。
【0072】
これらの中で、耐油性、機械的物性の点で好ましいのは、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体である。特に好ましいのは、耐油性エチレン−プロピレン共重合体である。耐油性エチレン−プロピレン共重合体とは、ホモポリプロピレン、エチレンの含有量が10重量%以下のエチレン-プロピレンブロック共重合体またはエチレンの含有量が5重量%以下のエチレン-プロピレンランダム共重合体である。
【0073】
前記追加するα−オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体の添加量としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー中、好ましくは90重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。90重量%を超えると、成形体の圧縮永久歪みが低下するため好ましくない。また、前記オレフィン系重合体は2種以上を混合して使用することもできる。
【0074】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、添加剤として可塑剤、伸展剤、滑剤、充填剤、難燃剤および老化防止剤から選ばれる少なくとも1種が配合されて溶融混練されたものであってもよい。これらの添加剤により、オレフィン系熱可塑性エラストマーの性能を目的に応じて向上させることができる。更に、着色剤、スコーチ防止剤、カップリング剤、発泡剤等の添加剤を必要に応じて使用することができる。
【0075】
可塑剤としては、例えばジメチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル類;トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル類;スルホンアミド等が挙げられる。
【0076】
この中で好ましいのはジメチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル類;ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル類である。
【0077】
伸展剤としては、例えば鉱物油(パラフィン系、ナフテン系、芳香族系)等が挙げられる。滑剤としては、例えばシリコーンオイル、オレフィンワックス類、縮合重合系ワックス類、脂肪酸、脂肪酸金属類、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、アルキレンオキサイド誘導体等が挙げられる。
【0078】
充填剤としては、例えばカーボンブラック、ホワイトカーボン、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。難燃剤としては水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等に代表される無機難燃剤、ハロゲン系、リン系等に代表される有機難燃剤が挙げられる。
【0079】
老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤を必須とする1種以上の老化防止剤である。フェノール系老化防止剤のみを使用しても良いが、他の老化防止剤を併用してもかまわない。フェノ−ル系と併用可能な老化防止剤としてはリン系、硫黄系、アミン系等を挙げることができる。
【0080】
フェノール系老化防止剤としては、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、3−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノ−ル系老化防止剤;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等のビスフェノール系老化防止剤;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ビス〔3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、D−α−トコフェノール等の高分子型フェノール系老化防止剤等を挙げることができる。
【0081】
また、リン系老化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、オクタデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等を挙げることができる。
【0082】
また、硫黄系老化防止剤としては、例えばジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンズイミダゾール等を挙げることができる。
【0083】
更にアミン系老化防止剤としては、アルキル置換ジフェニルアミン等を挙げることができる。これらの老化防止剤は、少なくとも1種類のフェノール系老化防止剤が含まれておれば、複数併用することができる。その他の添加剤として、スコーチ防止剤としては、スルホンアミド誘導体、ジフェニルウレア、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド等が挙げられる。
【0084】
これらの添加剤は、熱可塑性樹脂組成物に対して、好ましくは200重量%以下、更に好ましくは150重量%以下配合することができる。配合量が200重量%を超えると成形体の機械的物性が低下するので好ましくない。更に本発明の要旨を逸脱しない範囲において、他の熱可塑性樹脂やゴムを添加しても差し支えない。
【0085】
他の熱可塑性樹脂やゴムとしては、例えばポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセアール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアリレート系樹脂等のエンジニアリングプラスチックス;エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂等のスチレン系樹脂;アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の汎用プラスチックス;エステル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラスト―等の熱可塑性エラストマー;ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、ヒドリンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ウレタンゴム、ケイ素ゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム等の合成ゴム;天然ゴム等を挙げることができる。
【0086】
耐油性を向上させるために好ましいものは、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等である。また低温特性および機械的物性を向上させるために好ましいものは、エステル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラスト―等の熱可塑性エラストマー、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、シリコーンゴム等である。
【0087】
オレフィン系熱可塑性エラストマーを溶融・混合する方法としては、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロール等の通常用いられる混練機により行うことができる。
【0088】
混練温度としては通常100〜300℃、好ましくは120〜280℃の範囲である。上記温度が100℃未満の場合、溶融が不完全であったり、また溶融粘度が高いため、混合が不十分となって、成形体に相分離や層状剥離が現れるため好ましくない。また300℃を超えると、混合される樹脂の分解またはゲル化が起こりやすくなるため好ましくない。
【0089】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、射出成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法の何れの成形法でも成形することができ、所定形状の成形体が得られる。中でも射出成形法は流動性、成形体外観の観点から、押出成形法は成形シートの成形性、シート外観の観点から、また真空成形法は深絞り成形性の観点からより好ましい。このようにして得られた成形体は、使用後に回収して再度成形用の原料とすることができ、リサイクル性に優れている。
【0090】
さて、グラフト共重合体はオレフィン系重合体セグメントおよびビニル系重合体セグメントからなり、一方のセグメントが他方のセグメントに粒子径0.01〜1μmの微細な粒子として分散された多相構造を有している。一方、アクリル系ゴムは、メトキシエチルアクリレート、アクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリルおよびアリルメタクリレートを必須単量体として形成され、メトキシエチルアクリレート等により極性が付与されている。グラフト共重合体のビニル系重合体セグメントがアクリル系ゴムに対して相溶性の良いセグメントとなることにより、アクリル系ゴムがマトリックス相(連続相)となり、そのマトリックス相中にグラフト共重合体が良好に分散された分散相となる。従って、アクリル系ゴムとグラフト共重合体中のオレフィン系重合体の両物性、特に耐油性および機械的物性が十分に発揮される。
【0091】
更に、グラフト共重合体、グラフト化前駆体またはアクリル系ゴムに架橋用官能基を導入することにより、架橋剤または共架橋剤による架橋反応が生成され、オレフィン系熱可塑性エラストマーの架橋密度が高められる。従って、本実施形態のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐油性のほか機械的物性が一層向上される。
【0092】
以上の実施形態によって発揮される効果を以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系重合体セグメントおよびビニル系重合体セグメントからなる多相構造を有するグラフト共重合体と、アクリル系ゴムと、架橋剤と、共架橋剤とを溶融混練して得られるものである。グラフト共重合体は一方のセグメントが他方のセグメントに粒子径0.01〜1μmの微細な粒子として良好に分散されている一方、ビニル系重合体セグメントがアクリル系ゴムに相溶性(親和性)を示す。このため、グラフト共重合体はアクリル系ゴムに対する分散性に優れ、しかも架橋剤および共架橋剤によってオレフィン系熱可塑性エラストマーは架橋密度が向上されている。従って、オレフィン系熱可塑性エラストマーは耐油性をはじめ機械的物性に優れている。加えて、耐熱性および耐候性も良好である。
【0093】
・ オレフィン系熱可塑性エラストマーは、グラフト化前駆体用いた前述の製造方法により、グラフト共重合体のグラフト効率が高く、アクリル系ゴムとの混合を容易に行なうことができる。
【0094】
・ また、グラフト共重合体、グラフト化前駆体またはアクリル系ゴムに架橋用官能基を導入することにより、架橋剤による架橋を容易に行なうことができ、オレフィン系熱可塑性エラストマーの耐油性および機械的物性をより一層向上させることができる。加えて、オレフィン系熱可塑性エラストマーの耐熱性、成形性およびリサイクル性も良好である。
【0095】
・ オレフィン系熱可塑性エラストマーを射出成形法等によって成形体を得ることにより、その成形体にオレフィン系熱可塑性エラストマーの効果を発揮させることができる。従って、その成形体を自動車部品、電気・電子部品、装置・器具部品、建築部品等の広い分野で使用することができる。
【0096】
【実施例】
以下、実施例および比較例により前記実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(参考例1、アクリル系ゴム(A)の製造)
攪拌機、温度計、冷却器、滴下装置、窒素ガス導入管のついたフラスコにイオン交換水2300g、ナトリウムドデシルサルフェート20gを仕込んだ後、窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に70℃まで昇温した。その後、重合開始剤としてカリウムパーサルフェート5gを添加した。そこへ、70℃の温度条件を維持しながら、単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、エチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート8g)1608gを3時間かけて滴下した後、更に3時間重合を行うことにより乳化液を得た。この状態での動的光散乱(DLS)による平均粒径は90nmであった。
【0097】
次に、この乳化液を同重量の1%塩化カルシウム水溶液に、1時間かけて滴下することにより塩析を行った。そして水洗後、70℃で乾燥してアクリル系ゴム(A)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
(参考例2、アクリル系ゴム(B)の製造)
参考例1において、単量体混合物1608gの組成をメトキシエチルアクリレート480g、エチルアクリレート480g、ブチルアクリレート480g、アクリロニトリル160g、アリルメタクリレ−ト8gに変更する以外は、参考例1に準じてアクリル系ゴム(B)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
(参考例3、アクリル系ゴム(C)の製造)
参考例1において、単量体混合物1608gの組成をエチルアクリレート1440g、アクリロニトリル160g、アリルメタクリレ−ト8gに変更する以外は、参考例1に準じてアクリル系ゴム(C)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
(参考例4、アクリル系ゴム(D)の製造)
参考例1において、単量体混合物1608gの組成をメトキシエチルアクリレート320g、エチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g)に変更する以外は、参考例1に準じてアクリル系ゴム(D)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
【0098】
【表1】
Figure 0004239638
(参考例5、グラフト化前駆体(a)の製造)
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水2000gを入れ、更に懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中にポリプロピレンA(ブロック共重合体、粒径:3mm、エチレン含有量 5.9重量%)700gを入れ、攪拌・分散した。そこへベンゾイルペルオキシド(日本油脂(株)製ラジカル重合開始剤、商品名:ナイパーB)1.2g、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート(ラジカル重合性有機過酸化物) 6g、ビニル系単量体混合物300gからなる混合単量体を投入・撹拌した。ビニル系単量体混合物は、スチレン100g、ブチルアクリレート100gおよびヒドロキシプロピルメタクリレート100gよりなるものである。
【0099】
続いて、オートクレーブを60〜65℃に昇温し、2時間攪拌することによりラジカル重合開始剤、ラジカル重合性有機過酸化物およびビニル系単量体をポリプロピレン中に含浸させた。次いで、温度を80〜85℃に上げ、その温度で6時間維持して重合を完結させた後、水洗および乾燥してグラフト化前駆体(a)を得た。このグラフト化前駆体(a)中のビニル系共重合体をトルエンで抽出し、GPCにより数平均重合度を測定したところ、850であった。
【0100】
このグラフト化前駆体(a)を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEOL JSM T300)により観察したところ、粒子径0.3〜0.5μmの真球状樹脂が均一に分散した多相構造体であった。各成分の使用量を表2に示す。
【0101】
【表2】
Figure 0004239638
(参考例6、グラフト化前駆体(b)の製造)
参考例5において、ベンゾイルペルオキシドの添加量を1.2gから2.4gに変更し、ビニル系単量体混合物を(スチレン100g、ブチルアクリレート100g、メトキシエチルアクリレート100gおよびアリルメタクリレート3g(架橋性官能基を有する単量体))303gに変更すること以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(b)を得た。このときグラフト化前駆体(b)中のビニル系共重合体の数平均重合度は600であった。またこのグラフト化前駆体(b)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
(参考例7、グラフト化前駆体(c)の製造)
参考例5において、ポリプロピレンAをポリプロピレンB(ランダム共重合体、粒径:3mm、エチレン含有量 5.6重量%)700gに変更すること以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(c)を得た。このときグラフト化前駆体(c)中のビニル系共重合体の数平均重合度は900であった。またこのグラフト化前駆体(c)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
(参考例8、グラフト化前駆体(d)の製造)
参考例5において、ポリプロピレンAをポリプロピレンC(ランダム共重合体、粒径:3mm、エチレン含有量 4.0重量%)700gに変更し、ベンゾイルペルオキシドの添加量を1.2gから2.4gに変更し、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネートの添加量を6gから9gに変更し、ビニル系単量体混合物をスチレン100g、ブチルアクリレート100gおよびメトキシエチルアクリレート100gの合計300gに変更すること以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(d)を得た。このときグラフト化前駆体(d)中のビニル系共重合体の数平均重合度は650であった。またこのグラフト化前駆体(d)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
(実施例1)
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)600gと、参考例1で得たアクリル系ゴム(A)1800gを、190℃に予熱した加圧型ニーダー(モリヤマ(株)製、容量3リットル)を用いて10分間混練した。その後、架橋剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B、以下パーヘキサ25Bと略記)15gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学(株)製、商品名:BPE−200、以下BPE−200と略記)30gを加えた。そして、更にその温度で5分間混練した。
【0102】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーをシリンダー温度180℃に設定された2軸1軸押出機(2軸で混練、1軸で押出)に供給し、押出後造粒した。造粒した樹脂はプレス成形し(190℃、35MPa/cm2)、シートから打ち抜きにより試験片(3号ダンベル)を作成し、以下の試験法により物性を観察した。その結果を表3に示す。
【0103】
尚、試験方法は以下の方法により行なった。
硬度試験
JIS K−6253に準じ、タイプAデュロメータ試験機で硬度(ショアーA、ShA)を測定した。
【0104】
引張試験
JIS K−6251に準じ、3号ダンベル試験片によって引張試験を行い、引張強度(MPa)および破断点伸び(%)を測定した。
【0105】
圧縮永久歪み試験
JIS K−6262に準じ、120℃で22時間後の圧縮永久歪み(%)を測定した。
【0106】
耐油性試験
試験片(3号ダンベル)を試験用油(IRM903oil)に120℃で72時間浸漬した後、浸漬後の重量および浸漬前の重量を測定して式(膨潤度=[(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量]×100)により膨潤度(%)を測定した。
【0107】
外観試験
射出成形体の表面のフローマーク、肌荒れ、シルバーストリーク(水分等の影響による筋目)およびブルーミング(ブリードアウトによる表面凹凸)などを目視で判定し、次の3段階で評価した。
◎:優れた外観を有する。
○:◎には劣るが成形体として問題なし。
×:成形体として問題あり。
【0108】
メルトフローレート(MFR)試験
JIS K−7210に準じ、温度190℃、荷重10.0kgの条件でMFR(g/10min)を測定した。
(実施例2)
実施例1において、参考例5で得たグラフト化前駆体(a)の代りに、参考例5で得たグラフト化前駆体(a)をラボプラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所製)で180℃にて押し出し、グラフト化反応させることにより得られるグラフト共重合体を用いる以外、すべて実施例1と同様の試験を行なった。その結果を表3に示す。
(実施例3)
参考例7で得たグラフト化前駆体(c)500gと、参考例1で得たアクリル系ゴム(A)1750gを、190℃に予熱した加圧型ニーダー(モリヤマ(株)製、容量3リットル)を用いて10分間混練した。その後、架橋剤としてパーヘキサ25B 10gと、共架橋剤としてトリアリルフォスフェート15gと、フェノール系老化防止剤(商品名:イルガノックス1010、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製、以下イルガノックス1010と略記)20gを加えた。そして、更にその温度で5分間混練した。
【0109】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーをシリンダー温度170℃に設定された2軸1軸押出機に供給し、押出後造粒し、同様の試験を行った。その結果を表3に示す。
(実施例4)
実施例3で、グラフト化前駆体(c)500gの代わりに、参考例5で得たグラフト化前駆体(a)500gを使用する以外は、すべて実施例3と同様の試験を行った。その結果を表3に示す。
(実施例5)
参考例6で得たグラフト化前駆体(b)450gに、参考例2で得たアクリル系ゴム(B)1800gと、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてBPE−200 60gと、可塑剤としてジオクチルフタレート 600gと、フェノール系老化防止剤(イルガノックス1010)20gとを加えた。それを200℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて20分間混練した。
【0110】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例3と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
(実施例6)
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)550gに、参考例1で得たアクリル系ゴム(A)1650gと、可塑剤としてジブチルジグリコールアジペート 400gと、ポリプロピレンE(ブロック共重合体、エチレン含有量 8重量%)200gと、フェノール系老化防止剤(イルガノックス1010)30gを加えた。これを190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した。その後、架橋剤としてα、α’−ビス(tert−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製、商品名:パーブチルP、以下パーブチルPと略記)15gと、共架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート 30gとを加え、更に同温度で5分間混練した。
【0111】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーをシリンダー温度を180℃に変更する以外、実施例3と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
(実施例7)
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)500gに、参考例1で得たアクリル系ゴム(A)1750gと、共架橋剤としてBPE−200 100gと、可塑剤としてジオクチルフタレート 500gと、フェノール系老化防止剤(イルガノックス1010)15gを加えた。これを180℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤としてパーヘキサ25B 15gとポリプロピレンF(ホモポリプロピレン)200gを加え、更に同温度で5分間混練した。
【0112】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例3と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
(実施例8)
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)500gに、参考例2で得たアクリル系ゴム(B)1750gと、共架橋剤としてBPE−200 90gと、可塑剤としてジオクチルフタレート 600gと、ポリプロピレンE(ブロック共重合体、エチレン含有量 8重量%)300gと、フェノール系老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加えた。これを190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤(パーヘキサ25B)15gを加え、更に同温度で5分間混練した。
【0113】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例3と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
(実施例9)
参考例8で得たグラフト化前駆体(d)550gに、参考例2で得たアクリル系ゴム(B)1650gと、可塑剤としてジブチルジグリコールアジペート800gと、ポリプロピレンE(ブロック共重合体、エチレン含有量 8重量%)350gを加えた。これを190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤(パーブチルP)10gと、共架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート 50gと、フェノール系老化防止剤(イルガノックス1010)10gを加え、更に同温度で5分間混練した。
【0114】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例3と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0115】
【表3】
Figure 0004239638
(比較例1)
実施例3において、架橋剤と共架橋剤を使用しない以外は、すべて実施例3と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
(比較例2)
実施例5で、共架橋剤を使用しない以外は、すべて実施例5と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
(比較例3)
実施例6で、アクリル系ゴム(A)1650gの代わりに、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1650gを使用する以外は、すべて実施例6と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
(比較例4)
実施例6で、アクリル系ゴム(A)1650gの代わりに、参考例4で得たアクリル系ゴム(D)1650gを使用する以外は、すべて実施例6と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0116】
【表4】
Figure 0004239638
表3および表4から実施例1〜9のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐油性に優れるほか、引張強度、破断点伸び、圧縮永久歪み等の機械的物性、成形性、外観において優れた性能を有し、架橋剤や共架橋剤を添加することにより、特に耐油性、引張強度および圧縮永久歪みが向上する。更に、非極性α-オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体にエチレンの含有量が5重量%以下のエチレン-プロピレンランダム共重合体またはエチレンの含有量が10重量%以下のエチレン-プロピレンブロック共重合体を用いることにより耐油性が大幅に向上することが明らかになった。
【0117】
それに対して、架橋剤や共架橋剤を添加しない系(比較例1、2)またはメトキシエチルアクリレート、アリルメタクリレートを含んでいないアクリル系ゴムを使用した系(比較例3、4)は、機械的物性および耐油性が低下することを確認できた。
【0118】
尚、本発明は前記実施形態を次のように変更して構成することも可能である。
・ アクリル系ゴムとして、前記必須単量体に加えてメトキシエチルアクリレート以外のアルコキシアルキルアクリレート、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリロニトリル、アリルアクリレート等を共重合させることもできる。
【0119】
・ 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーにポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム等を配合して成形体を調製してもよい。
【0120】
・ グラフト共重合体として、ビニル系単量体よりビニル系重合体を形成し、そのビニル系重合体に対してオレフィン系単量体をグラフト重合して得られたものを用いてもよい。
【0121】
更に、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
・ グラフト共重合体のビニル系重合体セグメントを形成するビニル系単量体は、アクリル系ゴムを形成する単量体を少なくとも一種含むものである。このように構成した場合、グラフト共重合体のビニル系重合体セグメントをアクリル系ゴムと相溶性の高いものにすることができる。
【0122】
・ オレフィン系熱可塑性エラストマー中のアクリル系ゴムは、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とアリルメタクリレート0.1〜10重量%とを主成分とする単量体混合物から形成されるものである。このように構成した場合、アクリル系ゴムのもつ耐油性、耐熱性、機械的物性、成形性等の物性をバランス良く発揮させることができる。
【0123】
・ オレフィン系熱可塑性エラストマー中の架橋剤および共架橋剤の含有量は、各々0.01〜10重量%である。このように構成した場合、機械的物性、耐油性、成形性を向上させることができる。
【0124】
【発明の効果】
第1の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは耐油性に優れている。第2から第の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは耐油性に優れているうえに、グラフト共重合体のグラフト効率が高く、アクリル系ゴムとの混合を容易に行なうことができる。第の発明の成形体は、第1から第の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーに基づく効果を発揮することができる。

Claims (8)

  1. プロピレンを主体とするエチレン−プロピレン共重合体より形成されるオレフィン系重合体セグメントおよびビニル系単量体より形成されるビニル系重合体セグメントからなり、二つのセグメントのうち一方が他方に粒子径0.01〜1μmの微細な粒子として分散相を形成しているグラフト共重合体と、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%、アクリル酸アルキルエステル5〜85重量%、アクリロニトリル5〜15重量%およびアリルメタクリレート0.1〜10重量%を含有する単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、架橋剤と、共架橋剤とを溶融混練して得られることを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマー。
  2. プロピレンを主体とするエチレン−プロピレン共重合体より形成されるオレフィン系重合体粒子中にビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が分散した構造体であるグラフト化前駆体と、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%、アクリル酸アルキルエステル5〜85重量%、アクリロニトリル5〜15重量%およびアリルメタクリレート0.1〜10重量%を含有する単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、架橋剤と、共架橋剤とを溶融混練して得られることを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマー。
  3. 前記グラフト化前駆体が、プロピレンを主体とするエチレン−プロピレン共重合体より形成されるオレフィン系重合体粒子中に、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を含浸させた後、ビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物とを共重合させて得られることを特徴とする請求項2に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
  4. 前記ラジカル重合性有機過酸化物が、下記一般式(1)または(2)で示される化合物であることを特徴とする請求項2または3に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
    Figure 0004239638
    (式中、R1は水素原子または炭素数1もしくは2のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。mは1または2である。)
    Figure 0004239638
    (式中、R6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子またはメチル基、R8およびR9はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。nは0、1または2である。)
  5. 前記ビニル系重合体セグメントまたはビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が、架橋性官能基を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
  6. 更にプロピレンを主体とするエチレン−プロピレン共重合体より形成されるオレフィン系重合体を含み、溶融混練される請求項1〜5のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
  7. 更に可塑剤、伸展剤、滑剤、充填剤、難燃剤および老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含み、溶融混練される請求項1〜6のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られる成形体。
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