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JP4231928B2 - 氷核蛋白質の配列を含む不凍蛋白質 - Google Patents

氷核蛋白質の配列を含む不凍蛋白質 Download PDF

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JP4231928B2 JP2005505033A JP2005505033A JP4231928B2 JP 4231928 B2 JP4231928 B2 JP 4231928B2 JP 2005505033 A JP2005505033 A JP 2005505033A JP 2005505033 A JP2005505033 A JP 2005505033A JP 4231928 B2 JP4231928 B2 JP 4231928B2
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Description

本発明は、氷核蛋白質の繰り返し配列の一部を利用して設計し、新たに調製して得られた不凍蛋白質またはペプチドに関するもので、さらに該蛋白質またはペプチドの製造方法、その用途、該蛋白質またはペプチドをコードするDNA、該DNAを含むベクター、および該ベクターを含む形質転換体に関する。
不凍蛋白質は、1)温度ヒステリシス、2)氷の再結晶阻害、3)氷結晶形状の制御等の特性を示すため、保冷により周囲の水分子が付着再結晶することで風味や味が損なわれるアイスクリームへの添加や、細胞や臓器の冷凍保存剤に用いることが提案されている(Greffith M and Ewart KV,1995.Biotechnology Advance 13:375−402)。また、氷スラリーを使用する冷熱供給システムまたは冷熱蓄熱等において、氷の再結晶による配管系の閉塞を解消し得る有効な添加剤としても期待されている。これまでは、動植物由来の不凍蛋白質を用いてアイスクリーム等の冷凍食品の品質保持、血液や細胞、卵子や精子、移植臓器の冷凍保存耐性の向上、冷熱供給システムまたは冷熱蓄熱等への応用が試みられている。
しかし、現状では不凍蛋白質類は、極地方に生息する特定の魚種にしか見いだされておらず、また、冬季間にしか大量には発現されないので、年間を通して安定にかつ大量に生産することができない。また、魚類からの不凍蛋白質の回収においては漁獲した時期および場所、ならびに個体により不凍蛋白質の発現量が異なるためにロット間の品質のばらつきを生じる等の問題がある。
前述のとおり不凍蛋白質は魚や菌類など多くの生物から発見されている。これらの中でも特に幅広く研究が行われている不凍蛋白質として、北極海や南極海に生息する魚類由来の不凍蛋白質が挙げられる。
不凍蛋白質における、1)温度ヒステリシス、2)氷の再結晶阻害、3)氷結晶形状の制御等の特性は、不凍蛋白質が氷表面に結合することにより新たな水分子の結合を阻害し氷核の成長を妨げることによるものと考えられている。そして、魚類由来の不凍蛋白質はその構造により4種類に分類されている。I型の不凍蛋白質はAla残基を多く含みThr残基とAsp残基が等間隔で配置されたアルファ・ヘリックス型の蛋白質である。II型の不凍蛋白質はジスルフィド結合を含みC型−レクチン様の蛋白質である。III型の不凍蛋白質は特徴的な構造モチーフから成る球状蛋白質である。IV型の不凍蛋白質はGln残基を多く含み立体構造未知の蛋白質である。また、近年明らかにされたチャイロコメノゴミムシダマシ由来の不凍蛋白質(Liou Y et al.,2001.Nature,406:322−324;Graether SP et al.,2001,Nature.406:325−328)は、ベータ・シート構造からなる蛋白質である。このように、不凍蛋白質の構造にはバリエーションがあり、このことが不凍蛋白質の氷結晶結合とその成長抑制メカニズムの理解を困難にしている。
不凍蛋白質が氷の結晶成長を抑制するのに対して、氷核蛋白質は氷の結晶成長を促進する蛋白質である。このため、氷核蛋白質と不凍蛋白質はともに凍結状態にある水分子と結合できる構造を有すると考えられている。氷核菌の一種であるシュウドモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)由来の氷核蛋白質はおよそ1200残基の膜蛋白質であり、N末端領域(〜19kDa)、中心領域(〜94kDa)、C末端領域(〜7kDa)の3つの領域から構成される。これら3つの領域のうち、中心領域は特徴的な繰り返しアミノ酸配列から構成されており、この配列が氷結晶との結合に関わる部位と考えられている(Abe K et al.,1989.FEBS Lett.,258:297−300;Green RL et al.,215,Mol.Gen.Genet.,215:165−172;Corotto LV et al.,1986,EMBO J.,5:231−236)。従って、本発明者らは、この氷核蛋白質の中心領域の配列を参考にして不凍蛋白質と同程度の大きさをもつペプチドを人工的に合成した場合、そのペプチドは、不凍蛋白質のような氷結晶成長抑制機能を有すると考えた。
これまで、主に植物、魚類由来の不凍蛋白質を用いてアイスクリーム等の冷凍食品の品質保持、細胞の冷凍保存耐性の向上が試みられてきたが実用化には至っていない。また、冷熱供給システム、冷熱蓄熱等を含め、その期待される有効性の高さにもかかわらず実用化に結びつかない主な理由は、不凍蛋白質が北極や南極に生息する魚類の血液等から得られる極めて高価な抽出物であること、およびこれらを安定的に生産する技術が存在しないことである。
本発明は、このような従来の問題を解決しようとするものであり、遺伝子発現、化学合成などにより、年間を通じて安定的に生産可能であって、不凍能力を有する蛋白質またはペプチドを新たに提供するものである。
かかる状況において、本発明者らは、ベーター・シート構造から構成される不凍蛋白質の片面に−Thr−Xxx−Thr−のアミノ酸配列からなる部分が存在し、更にこのThrの水酸基が氷結晶面と水素結合を形成できる位置に規則的に配置されているという知見を基に、−Thr−Xxx−Thr−の配列をふくむ蛋白質が他に存在するか否かを検討してきた。その結果、−Thr−Xxx−Thr−の配列が氷核蛋白質の中心領域に存在することを見出した。この領域の配列を含むようなペプチドを遺伝子工学的手法により合成し、得られたペプチドが実際に不凍機能を有することを確認して、本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
(1)配列番号12で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、不凍機能を有する蛋白質またはペプチド。
(2)配列番号13で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、不凍機能を有する蛋白質またはペプチド。
(3)配列番号12または13で表されるアミノ配列が複数回繰り返されているアミノ酸配列を含む(2)に記載の蛋白質またはペプチド。
(4)次の(A)または(B)で表される蛋白質またはペプチド。
(A)配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質またはペプチド。
(B)配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなり、かつ、不凍機能を有する蛋白質またはペプチド。
(5)氷核蛋白質における繰り返しアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなる不凍機能を有する蛋白質またはペプチド。
(6)氷核蛋白質を化学的または生化学的に部分分解することを含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の蛋白質またはペプチドの製造方法。
(7)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の蛋白質またはペプチドをコードするDNA断片。
(8)(7)に記載のDNA断片を含むベクター。
(9)ベクターが発現ベクターである(8)に記載のベクター。
(10)(8)〜(9)のいずれか1項に記載のベクターによって形質転換された形質転換体。
(11)宿主が大腸菌である(10)に記載の形質転換体。
(12)(10)または(11)に記載の形質転換体を培養して不凍機能を有する蛋白質またはペプチドを産生せしめ、該蛋白質またはペプチドを採取することを特徴とする不凍機能を有する蛋白質またはペプチドの製造方法。
(13)蛋白質またはペプチドをペプチド合成機により化学的に合成することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の蛋白質またはペプチドの製造方法。
(14)(1)〜(5)のいずれかに記載の蛋白質またはペプチドを含むことを特徴とする氷再結晶防止剤または凝固点降下剤。
(15)(1)〜(5)のいずれかに記載の蛋白質またはペプチドを含むことを特徴とする氷スラリー。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、不凍蛋白質または不凍ペプチドの機能について述べる。ここで、ペプチドとは、アミノ酸が2個以上ペプチド結合で連結した物質のことであり(岩波書店発行「理化学辞典」(第5版)、第1254頁、右欄(1998年2月20日))、蛋白質もペプチドの一種である。ここでは、慣例に従い、30残基程度の小さいペプチドをペプチドと称し、それ以上の大きなペプチドを蛋白質と称することにする。すなわち、不凍能力を有する蛋白質を不凍蛋白質と呼び、不凍能力を有するペプチドを不凍ペプチド呼んで区別する。また、簡略化の為に、これらをまとめて「不凍蛋白質類」と呼称する。
通常の場合、氷結晶は、水溶液中において氷核が表れると、まず扁平な六角の板状に成長する。板状平面に対し垂直方向への成長は、板状平面方向に対する成長に比べ100倍程度遅い。これに対して、不凍蛋白質(AFP)が存在すると円盤平面方向への氷晶の成長は阻止され、最初に形成された板状体を基底面として、この基底面に対し垂直方向に、順次、より小さい板状体が積み重ねられていき、最終的には図1に示すようなピラミッドを二つ重ねたバイピラミッド型の氷晶にゆっくりと成長していく。
したがって、注目する検体中にAFPが存在している場合に限り、検体液を0℃以下にした場合、その検体液中には図1に示すようなバイピラミッド型氷結晶、結晶学的には六方両錐体とよばれる氷結晶が顕微鏡下に観測される。AFPが有する氷結晶上の12枚の氷層平面に特異的に結合する能力の結果として、このようなバイピラミッド型氷結晶が生成する。このことが、巨視的には、検体の非凍結現象(不凍活性)として観測される。この現象は、浸透圧計(オスモメーター)を用いることにより検体液の凝固点降下または温度ヒステリシスとして定量化することもできる。凝固点降下の測定法を用いて不凍活性を評価する為には、高純度のAFPの水溶液を得る必要がある。これに対してバイピラミダル氷結晶観測による不凍活性評価法は、AFPさえ存在していれば観測される。つまり、検体すなわち注目する蛋白質の水溶液中にAFPが存在するか否かを評価する為のもっとも簡便で迅速な手法は、検体液のバイピラミッド型氷結晶を観測することである。
チャイロコメノゴミムシダマシ由来のベーター・シート型不凍蛋白質の構造モデルを図2に示し、同蛋白質の氷結晶面結合モデルを図3に示す。これらの分子表面には−Thr−Xxx−Thr−なる氷結晶結合部位が存在する。この面は氷結晶の表面と相補的な構造を有し、Thrの水酸基は氷結晶面上に規則的に配列する酸素原子との間で水素結合を形成する。図4および配列番号14に、グラム陰性菌の一種であるシュウドモナス・シリンガエが有する氷核蛋白質のアミノ酸配列を示す。該氷核蛋白質は分子量約120kDaの膜蛋白質であり、N末端領域(〜19kDa)、中心領域(〜94kDa)、C末端領域(〜7kDa)の3つの領域から構成されている。なお、これらの各アミノ酸配列は、図4のほか配列表の配列番号1〜3にも記載した(N末端領域−配列番号1、中心領域−配列番号2、C末端領域−配列番号3)。
図4の中心領域のアミノ酸配列から明らかなように、氷核蛋白質の中心領域においては、48アミノ酸残基からなる同一または類似する配列が20回繰り返されている繰り返しアミノ酸配列が存在する。また、この48アミノ酸残基の繰り返しは、16アミノ酸残基(配列番号13)の3回の繰り返しから構成されている。この配列の中の配列番号12で表されるアミノ酸配列は、チャイロコメノゴミムシダマシ由来不凍蛋白質の氷結晶結合に関与するアミノ酸配列である−Thr−Xxx−Thr−を含んでいる(図4中の2重下線部)。
本発明者は、上記の知見に基づき、氷核蛋白質の中心領域の−Thr−Xxx−Thr−を含むアミノ酸配列部分が、チャイロコメノゴミムシダマシ由来の不凍蛋白質と同様に、氷結晶表面に結合できるのではないかと予測した。この予測に基づき、図4中の一重下線部の96アミノ酸残基からなる配列を有する蛋白質(INP96;配列番号4に記載)を遺伝子組み換え手法を用いて合成した。この96残基の合成蛋白質の水溶液中には、図10に示すように、バイピラミッド型の氷結晶が生成した。こうして、氷核蛋白質の中心領域を構成する配列番号12で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質は、不凍機能を有することが示された。
したがって、本発明における蛋白質は、少なくとも配列番号12で表されるアミノ酸配列、または配列番号13で表されるアミノ酸配列を有し、かつ不凍機能を有する蛋白質またはペプチドを包含し、さらには配列番号13で表されるアミノ酸配列が複数回繰り返されている蛋白質またはペプチド、および配列表の配列番号4に示される上記96アミノ酸残基からなる蛋白質を包含する。また。この96アミノ酸残基からなる蛋白質のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換もしくは付加されたものであっても、不凍機能を有する蛋白質は本発明に含まれる。
例えば、配列番号4で示されるアミノ酸配列の1〜7個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個のアミノ酸が欠失してもよく、又は配列番号4で表されるアミノ酸配列の1〜7個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個のアミノ酸が付加してもよく、または、配列番号4で表されるアミノ酸配列の1〜7個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されていてもよい。
図5と配列番号15および図6と配列番号16はチャイロコメノゴミムシダマシ由来不凍蛋白質およびINP96の配列を示すが、どちらの蛋白質においても−Thr−Xxx−Thr−の配列が4回繰り返されていることがわかる。また、近年の研究から氷結晶と不凍蛋白質の結合において、不凍蛋白質と氷結晶面上の酸素原子との間の水素結合よりは、むしろ氷結晶面と不凍蛋白質表面の形状の相補性の方が優性であることが示されており、不凍蛋白質の氷結晶結合面に存在する水素結合性残基をValに置換しても不凍活性はほとんど変化しないことが示されている(Haymet ADJ et al.,1998,FEBS Lett.,430:301−306;Chao H et al.,1997,Biochemistry 36:14652−14660)。それゆえ、−Thr−Xxx−Thr−の配列中のThrをValに置換しても−Thr−Xxx−Thr−の場合と同様の活性を示す。また、Spruce Budwormにおいては配列中に含まれる−Thr−Xxx−Thr−(ThrをValに置換されているものも含む)の回数が4〜6回のアイソマーが数種類見つかっており(Doucet D et al.,2000,Eur.J.Biochem.,267:6082−6088;Leinala EK et al.,2002,J.Biol.Chem.,277:33349−33352)、それらがいずれも不凍活性を有していることが示されており、−Thr−Xxx−Thr−(ThrをValに置換されているものも含む)の回数が4回に限定されたものではなく、複数回繰り返されていれば不凍活性を有することが示されている。また、−Thr−Xxx−Thr−(ThrをValに置換されているものも含む)の回数を増やすことで不凍活性が強くなることが示されており(Doucet D et al.,2000,Eur.J.Biochem.,267:6082−6088;Leinala EK et al.,2002,J.Biol.Chem.,277:33349−33352)、配列番号13で表されるアミノ酸配列の繰り返しの回数を変えることで、任意の強さの不凍活性を有する不凍蛋白質の作成が可能である。
これら蛋白質またはペプチドを製造するには、常法の遺伝子組み換え技術を用いることができる。すなわち、これら蛋白質またはペプチドをコードするDNAを調製し、該DNAを発現ベクターに導入し、このベクターを用いて大腸菌等の適当な宿主を形質転換し、この形質転換体を培養することにより上記不凍機能を有する蛋白質またはペプチドを得ることができる。
また、他の製造方法としては、ペプチド合成機を用いて本発明の蛋白質またはペプチドを合成してもよいし、氷核蛋白質またはそのC末端ドメインペプチダーゼまたは酸、アルカリ等の加水分解試薬を用いて限定的に部分分解することによっても製造しうる。なお、この部分分解を行う場合においては、不凍機能を有する蛋白質のほかに不凍機能を有しないペプチドも同時に生成しうるが、少なくとも一定長以上の長さを有し、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質は不凍機能を有する蛋白質と見なしうる。該蛋白質を常法により精製してもよいが、これ以外の蛋白質またはペプチドを含有していてもよく、特に精製しなくとも不凍機能を発揮しうる。
この際、得られる蛋白質等が不凍機能を有するか否かは、上記したように、これら蛋白質等の水溶液において、凍結温度で上記バイピラミッド型氷結晶の有無を観察することにより、簡単迅速にスクリーニングすることができる。INP96の不凍活性は、再結晶阻害活性を顕微鏡で観察すること、または、凝固点降下度を氷点降下法浸透圧計で測定することにより確認できる。
また、本発明の不凍蛋白質またはペプチドは、前述したように、氷の再結晶化防止剤ないしは凝固点降下剤として使用できる。具体的な用途としては、例えばアイスクリームまたは冷凍食品などに混入することによりその品質を持続させるために使用できる。さらに、近年、エネルギー密度が大きい氷スラリーを熱媒体として使用する冷熱供給システムまたは冷熱蓄熱等が提案されているが、これらにおいては、氷の再結晶による配管系の閉塞の問題があり、本発明の不凍蛋白質は氷の再結晶化を有効に防ぐものであるから、この問題を解決するために有望な手段となりうる。このほか卵子や精子などの細胞の低温長期保存も応用技術として期待できる。
また、本発明の不凍蛋白質遺伝子の応用としては植物および魚類などへの不凍蛋白質遺伝子の組込みにより、それらの耐冷性を向上させることが期待される。
図1は、バイピラミッド型氷結晶の模式図である。
図2は、チャイロコメノゴミムシダマシ由来不凍蛋白質の立体構造モデルを示した図である。
図3は、チャイロコメノゴミムシダマシ由来不凍蛋白質の氷結晶面結合モデルを示した図である。
図4は、氷核蛋白質inaZのN末端領域、中心領域およびC末端領域の各アミノ酸配列、ならびに該中心領域中のINP96部分(下線部)を示す図である。
図5は、INF96のアミノ酸配列を示す図である。下線部はTXT配列の部分を示す。
図6は、チャイロコメノゴミムシダマシ由来不凍蛋白質のアミノ酸配列を示す図である。下線部はTXT配列の部分を示す。
図7は、INP96のDNA配列を示す図である。
図8は、キチンカラムにおけるINP96の溶出パターンを示すクロマトグラムである。
図9は、キチンカラムにおけるINP96の溶出フラクションのSDS−PAGEである。
図10は、INP96の9mg/ml水溶液について観測されたバイピラミッド型氷結晶の写真である。
図11は、ニワトリ卵白リゾチームとINP96についての凝固点の濃度依存性のの測定結果を示す図である。
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2003−038751号の明細書に記載された内容を包含する。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は特にこれにより限定されるものではない。
実施例1 不凍活性の確認
(1)検体試料(不凍蛋白質INP96の調製)
(a)プラスミドpTYB12INP96の調製
まずINP96をコードするDNAをデザインした。氷核蛋白質の繰り返し配列中に現れる96残基のアミノ酸配列をそれに対応する塩基配列に変換した。この際、大腸菌の繁用コドンを参考にした(Bennetzen,JL,Hall,BD,Codon selection in yeast,J.Biol.Chem.,257,3026−3031(1982))。このようにデザインしたINP96のアミノ酸配列とそれをコードするDNAの塩基配列を図7、配列番号17および配列番号5に示す。このDNAを全合成することは困難であったため、互いに一部相補的な4本のDNAに分割し、DNA自動合成機によってINP96aa1f(配列番号6)、INP96aa1r(配列番号7)、INP96aa2f(配列番号8)およびINP96aa2r(配列番号9)を合成した。
次いで、これら4本の合成DNAをその相補的領域でアニールさせると共に、結合させるためにPCR反応を行った。この反応は、INP96aa1fとINP96aa2r 600nM、INP96aa1rとINP96aa2f 1nM、dNTP(4種のデオキシヌクレオチド三リン酸の混合溶液)200mM、エクスパンド・ハイ・ヒィデリティPCRシステム(Expand High Fidelity PCR system)(Roche)に添付されたバッファー(1X)、エクスパンド・HiFi DNAポリメラーゼ(Expand HiFi DNA polymerase)1.3Uを含む反応溶液50mlで行った。この反応溶液を0.2mlのPCR反応用チューブに6本作り、タカラPCRサーマル サイクラーMP(Takara PCR Thermal cycler MP)を用いて、第一ステップ:94℃で2分、第二ステップ:94℃で30秒(変性)、スロープを設定して1分かけて65℃まで温度を下げ、65℃で30秒(アニーリング)、72℃で1.5分(伸長)のサイクルを35回、第三ステップ:72℃で5分でPCR反応を行った。
次いで互いに連結させることによって作製した二本鎖DNAをpT7Blue T−ベクター(Novagen社)と連結し、該ベクターを用いて大腸菌DH5a((独)産業技術総合研究所・生物機能工学研究部門で保存)を形質転換した。1mM IPTG、0.02% X−Gal、100mg/mlアンピシリンを含むLBプレートに形質転換体を塗布し、37℃でおよそ20時間培養した。出現した白色のコロニーの内8コロニーを100mg/mlアンピシリンを含むLB培地3mlで37℃で一晩試験管で培養した後、クオンタムプレプ・プラスミド・ミニプレプ・キット(QuantumPrep Plasmid MiniPrep kit)(Bio−Rad社)を用いてプラスミドを調製し、制限酵素による切断パターンから目的のDNAを含んでいると思われるプラスミドを保有した形質転換体3個を判別した。これらについて、ビッグダイ・ターミネーター・サイクル・シークエンシング・レディー・リアクション・キット(BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction kit)ver.2.0(Applied Biosystems社)を用いて塩基配列を確認した。その結果、合成一本鎖DNA中の合成ミスまたはPCR中の誤りによると考えられる塩基置換が認められたので、これを2回目のPCRによって修正した。
2回目のPCR反応に利用したプライマーの配列はINP96f2(配列番号10)およびINP96r2(配列番号11)である。
このPCR反応では、PCR反応中にエラーが起こる可能性をできるだけ低くするためにエラー頻度が低いことが知られているKODポリメラーゼ(KOD polymerase)(東洋紡社)を用いた。PCRは5000倍に希釈した上記のプラスミド溶液、dNTP 200mM、塩化マグネシウム1mM、INP96f2、INP96r2それぞれ300nM、KOD−プラスー(KOD−Plus−)に添付されたバッファー(1X)、KOD−プラス−ポリメラーゼ(KOD−Plus−polymerase)1Uを含む反応溶液50mlで行った。この反応溶液を0.2mlのPCR反応用チューブに2本作り、Takara PCR Thermal cycler MPを用いて、第一ステップ:94℃で2分、第二ステップ:94℃で15秒、60℃で30秒、68℃で1分(伸長)のサイクルを30回、第三ステップ:68℃で5分でPCR反応を行った。
PCR反応液を用いてヌシーブGTGアガロース(NuSieve GTG Agarose)(タカラ社)を用いたアガロース電気泳動を行い、およそ300bpの位置に出現したDNAのバンドをアガロースゲルから回収した。次いで、回収したDNAを、あらかじめEco RVで切断したpZErO2ベクター(Invtrogen社)と連結し、該ベクターを用いて大腸菌DH5aを形質転換した。1mM IPTG、50mg/mlカナマイシンを含むLS−LB(1%トリプトン(Trypton)、0.5%イースト・エキストラクト(Yeast Extract)、0.5%塩化ナトリウム)プレートに形質転換体を塗布し、37℃でおよそ20時間培養した。出現したコロニーの内8コロニーを50mg/mlカナマイシンを含むLS−LB培地3mlで37℃で一晩試験管で培養した後、クオンタムプレプ・プラスミド・ミニプレプ・キット(QuantumPrep Plasmid MiniPrep kit)を用いてプラスミドを調製し、制限酵素による切断パターンから目的のDNAを含んでいると思われるプラスミドを保有した形質転換体3個を判別した。これらについて、ビッグダイ・ターミネーター・サイクル・シークエンシング・レディー・リアクション・キットver.2.0を用いて塩基配列を確認した。その結果、図7に示した目的の塩基配列を有するDNAが挿入されたプラスミド(pZErO2INP96)を得ることができた。次に該プラスミドを保持する形質転換体を50mlの培養液で培養し、クオンタムプレプ・プラスミド・ミニプレプ・キット(Bio−Rad社)を用いてプラスミドを調製した。
次に、得られたDNAを用いてINP96を大腸菌で発現させるために、IMPACT−CNシステム(system IMPACT−CN system)(New England Biolabs社)を用いた。該システムでは、目的の蛋白質をキチン結合蛋白質、プロテアーゼであるインテインとの融合蛋白質として生産する。このため、該システムで用いられる発現ベクターにはあらかじめ、発現蛋白質の精製を容易にするキチン結合ドメインをコードする塩基配列、および目的の蛋白質を切り離すための自己消化プロテアーゼ・インテインをコードする塩基配列が組み込まれてある。pZErO2INP96をNde IとEco RIで切断し、およそ300bpのINP96をコードするDNAをヌシーブGTGアガロースを用いたアガロース電気泳動により分離・回収した。一方、該システムに含まれている発現ベクターpTYB12をNde IとEco RIで切断した。両者をタカラ・DNA・リゲイション・キット(Takara DNA Ligation kit)(タカラ社)を用いて、添付のプロトコルに従って連結し、大腸菌DH5aを形質転換した。100mg/mlアンピシリンを含むLBプレートに形質転換体を塗布し、37℃でおよそ18時間培養した。出現したコロニーの内18コロニーを100mg/mlアンピシリンを含むLB培地3mlで37℃で一晩試験管で培養した後、クオンタムプレプ・プラスミド・ミニプレプ・キットを用いてプラスミドを調製し、制限酵素による切断パターンから目的のDNAを含んでいると思われるプラスミドを保有した形質転換体10個を判別した。これらのうち1つの形質転換体を50mlの培養液で培養し、クオンタムプレプ・プラスミド・ミニプレプ・キットを用いてプラスミドを調製した。さらに、ビッグダイ・ターミネーター・サイクル・シークエンシング・レデイー・リアクション・キットver.2.0を用いて塩基配列を確認した。その結果、図7に示した目的の塩基配列を有するDNAがpTYB12に挿入されたプラスミド(pTYB12INP96)を得ることができた。
(b)大腸菌によるINP96の発現
INP96はキチン結合ドメインおよびインテインとの融合蛋白質として大腸菌体内に発現させた。プラスミドpTYB12INP96で大腸菌ER2566(DE3)(New England Biolab社)を形質転換した。プラスミドpYT12INP96にはアンピシリン耐性遺伝子が導入されているため、アンピシリン含有LB寒天培地に大腸菌を広げ、一晩37℃でインキュベートすることで形質転換体を選択した。形成されたコロニーの一つを100μg/mlのアンピシリンを含んだLB培地15mlに植え28℃で一晩培養した。
この培養液を100μg/mlのアンピシリンおよび0.5mMイソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシドを含んだTB培地1.5lに植え継ぎし、さらに28℃で一晩培養した。培養液を3600×g、4℃で15分遠心分離し、菌体を回収した。菌体を20mMトリス−塩酸緩衝液/1mMエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム(pH8.0)に懸濁し、氷中で超音波破砕した。これを11900×g、4℃で60分遠心分離し、可溶性画分と不溶性画分に分離した。
(c)INP96の精製
可溶性画分から抽出したキチン結合ドメインおよびインテインとの融合蛋白質の状態のINP96は20mMトリス−塩酸緩衝液/1mMエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム/0.5M NaCl水溶液(pH8.0)で緩衝化したキチンカラムに吸着させた。カラムボリュームの20倍量の20mMトリス−塩酸緩衝液/1mMエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム/0.5M NaCl水溶液(pH8.0)を流し、その後、カラムボリュームの3倍量の20mMトリス−塩酸緩衝液/1mMエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム/0.5M NaCl/50mM β−メルカプトエタノール水溶液(pH8.0)を流し、室温で48時間以上放置し、INP96と、キチン結合ドメインおよびインテインからなるタグの部分とを切断した。その後、3倍量の20mMトリス−塩酸緩衝液/1mMエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム/0.5M NaCl水溶液(pH8.0)を流しINP96を溶出させた。この際、タグが切断されたINP96のみが溶出してくる。図8にクロマトグラムを示した。各フラクッションのボリュームは約1.5〜2mlである。
(d)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
一般的な手順に従い、電気泳動装置(ATTO)用いて精製したINP96を15%ポリアクリルアミドゲルで泳動した。分子量測定のためブロード・レンジSDS−PAGEスタンダード(broad range SDS−PAGE standard)(BIO−RAD)を同時に泳動した。サンプル緩衝液は、0.065Mトリス−塩酸緩衝液(pH6.8)/2%ドデシル硫酸ナトリウム/10%ショ糖/5%β−メルカプトエタノール/0.001%ブロモフェノールブルーを用いた。濃縮ゲルは0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH6.8)0.75ml、30%アクリルアミド/ビス(37.5:1)混合液0.45ml、10%ドデシル硫酸ナトリウム0.12ml、蒸留水1.78mlを混合して作製し、分離ゲルは1.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)2.25ml、30%アクリルアミド/ビス(37.5:1)混合液4.5ml、10%ドデシル硫酸ナトリウム0.36ml、蒸留水1.89mlを混合して作製した。泳動用緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン3.03g、グリシン14.4gおよびドデシル硫酸ナトリウム1gを合計11の蒸留水中に溶解させたものを用いた。ゲルの染色はメタノール20ml、硫酸アンモニウム12.5g、リン酸2.5ml、0.04%クマシーブリリアントブルーG−250を100mlの蒸留水の溶液に溶かした染色液を用いて一晩行い、蒸留水で脱染色した。図9より、分子量11KDaのINP96が純度高く精製されているのが確認できる。
(2)バイピラミダル氷結晶の観察
(a)INP96を20mMトリス−塩酸緩衝液/1mMエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム/0.5M NaCl水溶液(pH8.0)に対して透析し、緩衝液置換を行った後に9mg/mlになるまで限外濾過により濃縮を行った。なお、注目する検体液が不凍活性を有するか否かの評価は、わずか1ulの液に対しても低温顕微鏡下でのバイピラミッド型氷結晶観察実験をすることで行い得る。
(b)上記のように調製した試料溶液1ulをライカ社製DMLB100型顕微鏡(Leica DMLB 100 photomicroscope)の直径16mmのカバーガラス上に滴下した。これをそのままもう1枚の直径12.5mmのカバーガラスによりはさみ、これをDMLB100型顕微鏡のステージ部に設置した冷却箱内にセットした。冷却箱の上下には直径1mmの光取り入れ穴をあけ、顕微鏡光源からの光は下側の穴から箱内を通り上側の穴を抜けてレンズに入光させるようにした。この上下の穴により規定される光軸上に検体液をセットすることで、光軸上にある検体液中の物質を顕微鏡観察することができる。検体液がセットされた冷却箱の中の温度は、リンカム社製LK600温度制御装置(Linkam LK600 temperature controller)により+/−0.1℃の誤差で制御される。室温下で検体液をセットした後、温度制御装置により冷却箱内の温度を毎秒0.2℃で−22℃まで下降させた。およそ−14℃から−22℃の間の温度のどこかで検体液の全体が凍結する。凍結の後に毎秒0.2℃で冷却箱内温度を上昇させ零度で上昇を停止し、そのまま1〜10秒程度の間、−3℃を維持していると凍結が溶け、無数のきれつの入った氷結晶状態を経たのちに、数えられる程度の氷結晶が水中に浮かぶのが観測された。その瞬間に、冷却箱内の温度を−2℃〜3℃程度に下降させて止め、氷結晶の形状を観察した。観察結果を図10に示す。試験に使用したINP96においてバイピラミッド型の氷晶が観察され、この蛋白質は不凍活性を有することが確認された。
(c)20mMトリス−塩酸緩衝液/1mMエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム/0.5M NaCl水溶液(pH8.0)に対して透析し、緩衝液置換を行った後に19mg/mlになるまで限外濾過により濃縮を行った。様々な濃度に希釈したINP96のサンプル50μlを用いて総浸透圧値を氷点降下法浸透圧計(VOGEL)を用いて測定し、凝固点を算出した(図11)。
図11において対照化学物質であるニワトリ卵白リゾチームは0.02℃の範囲内で直線的な凝固点降下を示しており、これは一般的な化学物質のモル凝固点降下現象に起因している。一方、INP96については0.12℃までの非直線的な凝固点降下を示しており、これは水溶液中の不凍蛋白質が特異的に氷結晶表面と相互作用をする場合にのみ観測される。この実験により、INP96が不凍蛋白質様の凝固点降下活性を示すことが確認された。
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中に取り入れるものとする。
産業上の利用の可能性
本発明は、氷核蛋白質の構造に基づいて、不凍蛋白質を設計、創出してそれらを供給するものである。そして、本発明においては不凍蛋白質または不凍ペプチドを、ペプチド合成法、遺伝子工学または氷核蛋白質の部分分解等により生産することにより、これらを容易にかつ大量に供給できる。さらに、季節による品質のばらつきがなく、一定の品質の不凍蛋白質または不凍ペプチドを供給することができる。したがって、本発明は、不凍蛋白質または不凍ペプチドの安定的な供給、ならびに不凍蛋白質またはペプチドについての利用促進および応用研究の発展に大いに寄与するものである。
配列番号5:INP96aaをコードDNA配列
配列番号6:INP96aa1fをコードDNA配列を構築するためのプライマー
配列番号7:INP96aa1rをコードDNA配列を構築するためのプライマー
配列番号8:INP96aa2fをコードDNA配列を構築するためのプライマー
配列番号9:INP96aa2rをコードDNA配列を構築するためのプライマー
配列番号10:INP96f2をコードDNA配列を構築するためのプライマー
配列番号11:INP96r2をコードDNA配列を構築するためのプライマー
配列番号12:Xaaは任意のアミノ酸残基を示す。
配列番号13:Xaaは任意のアミノ酸残基を示す。
配列番号15:合成アミノ酸配列
配列番号16:合成アミノ酸配列
配列番号17:合成配列

Claims (11)

  1. 次の(A)または(B)で表される蛋白質またはペプチド。
    (A)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質またはペプチド。
    (B)配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列らなり、かつ、不凍機能を有する蛋白質またはペプチド。
  2. 氷核蛋白質を化学的または生化学的に部分分解することを含む、請求の範囲第1項記載の蛋白質またはペプチドの製造方法。
  3. 請求の範囲第1項記載の蛋白質またはペプチドをコードするDNA断片。
  4. 請求の範囲第項に記載のDNA断片を含むベクター。
  5. ベクターが発現ベクターである請求の範囲第項に記載のベクター。
  6. 請求の範囲第項または第項に記載のベクターによって形質転換された形質転換体。
  7. 宿主が大腸菌である請求の範囲第項に記載の形質転換体。
  8. 請求の範囲第項または第項に記載の形質転換体を培養して不凍機能を有する蛋白質またはペプチドを産生せしめ、該蛋白質またはペプチドを採取することを特徴とする不凍機能を有する蛋白質またはペプチドの製造方法。
  9. 蛋白質またはペプチドをペプチド合成機により化学的に合成することを特徴とする請求の範囲第1項記載の蛋白質またはペプチドの製造方法。
  10. 請求の範囲第1項記載の蛋白質またはペプチドを含むことを特徴とする氷再結晶防止剤または凝固点降下剤。
  11. 請求の範囲第1項記載の蛋白質またはペプチドを含むことを特徴とする氷スラリー。
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