JP4219352B2 - 両面非球面型累進屈折力レンズ - Google Patents
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Description
「レンズの倍率SMは、一般的に次の式で表される。
SM=Mp×Ms…(1)
ここで、Mpはパワーファクター、また、Msはシェープファクターと呼ばれる。レンズの眼球側の面の頂点(内側頂点)から眼球までの距離を頂間距離L、内側頂点の屈折力(内側頂点屈折力)をPo、レンズの中心の厚みをt、レンズの屈折率をn、レンズの物体側の面のベースカーブ(屈折力)をPbとすると以下のように表される。
Mp=1/(1−L×Po)…(2)
Ms=1/(1−(t×Pb)/n)…(3)
なお、式(2)および(3)の計算にあたっては、内側頂点屈折力Po及びベースカーブPbについてはディオプトリ(D)を、また、距離Lおよび厚みをtについてはメートル(m)をそれぞれ用いる。」
a.上記従来技術1で用いている基本評価パラメータには、「レンズの眼球側の面の頂点から眼球までの距離L」と「レンズの中心の厚みt」という記載からも明らかなように、本来ならばレンズの中央近傍に対してのみ適用されるべきパラメータが含まれている。即ち、従来技術1の実施例では、レンズの中央近傍にある遠用部に対してのみ適用されるべき基本評価パラメータが、レンズ中心から大きく下方に位置する近用部に対しても適用されていることになるので、それによる誤差の可能性が残る。
e.倍率計算において、プリズム作用による影響が考慮されていないので、これによる誤差の可能性もある。
このように、従来技術は、特に、「倍率」の算出をより正確に行うという視点からみると、必ずしも十分でない可能性を有するものである。
物体側表面である第1の屈折表面と、眼球側表面である第2の屈折表面とに分割配分されている累進屈折力作用を備えた両面非球面型累進屈折力レンズであって、
前記第1の屈折表面の遠用度数測定位置F1及び近用度数測定位置N1における表面非点収差成分を、前記第2の屈折表面の遠用度数測定位置F2及び近用度数測定位置N2にて相殺し、前記第1と第2の屈折表面とを合わせて、処方値に基づいた遠用度数と加入度数とを与えるようにし、かつ、第2の屈折表面は、遠用度数測定位置F2から近用度数測定位置N2にかけて縦方向の表面屈折力が増加することを特徴とする両面非球面型累進屈折力レンズである。更に好ましくは、
前記第1の屈折表面が前記遠用度数測定位置F1を通る一本の子午線を境に左右対称であり、前記第2の屈折表面が、この第2の屈折表面の遠用度数測定位置F2を通る一本の子午線を境に左右非対称であって、かつ、この第2の屈折表面の近用度数測定位置N2の配置は所定の距離だけ鼻側に内寄せされている両面非球面累進屈折力レンズである。
更に好ましくは、
前記第1の屈折表面が、前記遠用度数測定位置F1を通る一本の子午線を母線とした回転面であり、前記第2の屈折表面が、この第2の屈折表面の遠用度数測定位置F2を通る一本の子午線を境に左右非対称であって、かつ、この第2の屈折表面の近用度数測定位置N2の配置は所定の距離だけ鼻側に内寄せされていることを特徴とする両面非球面型累進屈折力レンズである。
更に好ましくは、
前記第1と第2の屈折表面とを合わせて処方値に基づいた遠用度数(Df)と加入度数(ADD)とを与える構成とする上で、装用状態における視線とレンズ面とが直交しえないことに起因する非点収差の発生や度数の変化を低減したことを特徴とする両面非球面型累進屈折力レンズである。
上述の手段は、以下の解明結果に基づいて案出されたものである。以下、図面を参照にしながら説明する。図1は眼鏡レンズ表面の各位置における各種の表面屈折力の説明図、図2は眼球と視線とレンズとの位置関係の説明図、図3−1、図3−2及び図3−3並びに 図4−1、図4−2及び図4−3はプリズムの倍率Mγに関する説明図であってプラスレンズとマイナスレンズによる違いや主としてレンズの下部である近用部を用いて眺めた場合の倍率の違いに関する説明図、図5−1は累進屈折力レンズの光学的レイアウトの説明図であって累進屈折力レンズを物体側表面から眺めた正面図、図5−2は累進屈折力レンズの光学的レイアウトの説明図であって縦方向の断面を表す側面図、図5−3は累進屈折力レンズの光学的レイアウトの説明図であって横方向の断面を表す立面図、図6は「加入度数」の定義の違いを示す説明図である。なお、これらの図において、符号Fは遠用度数測定位置、Nは近用度数測定位置、Qはプリズム度数測定位置を示す。また、図1等に記した他の符号は、DVf:Fを通る縦方向断面曲線の、Fにおける表面屈折力
DVn:Nを通る縦方向断面曲線の、Nにおける表面屈折力
DHf:Fを通る横方向断面曲線の、Fにおける表面屈折力
DHn:Nを通る横方向断面曲線の、Nにおける表面屈折力
を表している。さらに、図の屈折表面が物体側表面である第1の屈折表面である場合には全ての符号に添字1を付し、眼球側表面である第2の屈折表面である場合には全ての符号に添字2を付して識別する。
SM=Mp×Ms…(1’)
で表される。ここで、視標までの対物パワー(m単位で表した対物距離の逆数)をPxとし、レンズの近用部における眼球側の面から眼球までの距離をL、近用部における屈折力(近用部における内側頂点屈折力)をPo、レンズの近用部における厚みをt、レンズの屈折率をn、レンズの近用部における物体側の面のベースカーブ(屈折力)をPbとすると、以下の関係が成立する。
Mp=(1−(L+t)Px)/(1−L×Po)…(2’)
Ms=1/(1−t×(Px+Pb)/n)…(3’)
近用部における縦方向の内側頂点屈折力:
Pov=Po×(1+Sin2α×4/3)
近用部における横方向の内側頂点屈折力:
Poh=Po×(1+Sin2α×1/3)
近用部における物体側表面の縦断面屈折力:
Pbv=Pb×(1+Sin2β×4/3)
近用部における物体側表面の横断面屈折力:
Pbh=Pb×(1+Sin2β×1/3)
となる。このように、角αやβ、及びPoやPbがゼロでない限り、屈折力やパワーファクター、シェープファクターなどは縦横で異なる値となり、その結果、縦方向と横方向との倍率に差が生じてくるのである。
近用部における縦方向の内側頂点屈折力:Pov
近用部における横方向の内側頂点屈折力:Poh
近用部における物体側表面の縦断面屈折力:Pbv
近用部における物体側表面の横断面屈折力:Pbh
について、Martinの近似式を用いるよりも更に高い精度で求められるのである。
SMv=Mpv×Msv…(1v’)
SMh=Mph×Msh…(1h’)
Mpv=(1−(L+t)Px)/(1−L×Pov)…(2v’)
Mph=(1−(L+t)Px)/(1−L×Poh)…(2h’)
Msv=1/(1−t×(Px+Pbv)/n)…(3v’)
Msh=1/(1−t×(Px+Pbh)/n)…(3h’)
Mγ=γ×γ’=(Cos i×Cos i’)/(Cos r×Cos r’)
となる。これは、レンズ表面の屈折力とは無関係であり、プリズムの倍率として知られている。
Mγ=γ×γ’=1
となり、プリズムを通して見た像の倍率に変化がないことになる。ところが、図3−2の如く、眼鏡レンズの物体側表面に垂直に光線が入射した場合は、
Mγ=γ’=Cos i’/Cos r’≧1
となり、逆に、図4−2の如く、眼鏡レンズの眼球側表面から光線が垂直出射した場合は、
Mγ=γ=Cos i/Cos r≦1
となる。
SMv=Mpv×Msv×Mγv…(1v″)
SMh=Mph×Msh×Mγh…(1h″)
なお、これらのMγvやMγhは、前述の厳密な光線追跡の計算過程において求めることが出来る。これにより、前述の眼鏡の倍率計算におけるプリズム作用による影響の課題を解決することが出来た。
一般に「累進面」の側方部には非点収差が存在しているため、水平方向の良好な視界に限界のあることが知られているが、「累進面」を眼球側表面に配置すれば「累進面」そのものが眼に近付くことになり、良好な視界が水平方向に広がるという利点が生ずる。ところが垂直方向においては遠近の視野領域が遠のく結果となり、遠方視から近方視へと眼球を回旋させる際の労力が増すという不都合が生ずる。即ち、裏面累進(または凹面累進)は従来の表面累進(または凸面累進)に比べて、水平方向には視界が広がるという利点があるが、垂直方向には遠方視から近方視に至る際の眼球回旋角が増すという欠点がある。
また、これらのことは前述の如く遠用部と近用部の像の倍率差を減らし、像の歪みや揺れを改善する上でも同様であり、本発明の利点と言うことが出来る。
実施の形態にかかる両面非球面累進屈折レンズの光学設計方法の概略手順は、以下のとおりである。
(1)入力情報の設定
(2)凸累進屈折力レンズとしての両面設計
(3)本願発明の凸面形状への転換とそれに伴う裏面補正
(4)透過設計、リスティング則対応設計などに伴う裏面補正
以下、個々の手順をさらに細かいステップに分解して詳述する。
入力情報は下記の2種類に大別される(光学設計以外は省略)。
(1)−1:アイテム固有情報
レンズアイテムに固有のデータである。素材の屈折率Ne、最小中心肉厚CTmin、最小コバ厚ETmin、累進面設計パラメータなど。
(1)−2:装用者固有情報
遠用度数(球面度数S、乱視度数C、乱視軸AX、プリズム度数P、プリズム基底方向PAXなど)、加入度数ADD、フレーム形状データ(3次元形状データが望ましい)、フレーム装用データ(前傾角、あおり角など)、頂点間距離、レイアウトデータ(遠用PD、近用CD、アイポイント位置など)、その他、眼球に関するデータなど。なお、装用者から指定される累進帯長や加入度数測定方法、近用部内寄せ量などの累進面設計パラメータは装用者固有情報に分類される。
最初に従来型の凸累進屈折力レンズとして、凸面と凹面とに分けて設計する。
(2)−1:凸面形状(凸累進面)設計
入力情報として与えられた加入度数ADDや累進帯長を実現するために、入力情報である累進面設計パラメータに従って従来型の凸累進の面形状を設計する。このステップにおける設計では従来の様々な公知技術を利用することが可能であり、本願発明の設計技術は必要としない。
Dn=(N−1)/R
ここに、Dn: 第n面の表面屈折力(単位:ジオプター)、N:レンズ素材の屈折率、R:曲率半径(単位:m)である。従って、表面屈折力の分布を曲率の分布に換算する方法は、上記の関係式を変形した、
1/R= Dn/(N−1)
を用いる。曲率の分布が得られたことにより、「主子午線」の幾何学的形状が一義的に確定し、レンズ面を構成する際の背骨にあたる「主子午線」が設定されたことになる。
入力情報として与えられた遠用度数を実現するために、凹面形状を設計する。遠用度数に乱視度数があれば乱視面となり、無ければ球面となる。このとき、度数に適した中心肉厚CTや凸面と凹面との面相互の傾斜角も同時に設計し、レンズとしての形状を確定する。このステップにおける設計も従来の様々な公知技術を利用することが可能であり、本願発明の設計技術は必要としない。
入力情報として与えられた遠用度数や加入度数ADDなどに応じ、従来型の凸累進屈折力レンズから本願発明のレンズとしての形状に転換する。
(3)−1:凸面形状(本願発明)設計
入力情報として与えられた遠用度数や加入度数ADDなどに応じ、従来型の凸累進面から本願発明の凸面形状に転換する。即ち、前述の従来型凸累進のレンズの表面(物体側表面である第1の屈折表面)において、遠用度数測定位置F1における、横方向の表面屈折力をDHf、縦方向の表面屈折力をDVf、近用度数測定位置N1における、横方向の表面屈折力をDHn、縦方向の表面屈折力をDVnとするとき、
DHf+DHn<DVf+DVn 、かつ DHn<DVn
となる関係式を満足させるか、
DVn−DVf>ADD/2 、かつ DHn−DHf<ADD/2
となる関係式を満足させる屈折力表面とする。このとき、凸面全体の平均的な表面屈折力は変えないで本願発明の凸面形状に変換することが望ましい。例えば、遠用部と近用部との縦横の表面屈折力の総平均値を維持することなどが考えられる。ただし、物体側表面が凸であり、眼球側表面が凹であるメニスカス形状を保つ範囲内であることが望ましい。
上記(3)−1において、従来型の凸累進面から本願発明の凸面形状に転換した際の変形量を、(2)−2で設計した凹面形状に加算する。即ち、(3)−1のプロセスで加えられたレンズの表面(物体側表面である第1の屈折表面)の変形量を、レンズの裏面(眼球側表面である第2の屈折表面)側にも同じ量だけ加えるのである。この変形はレンズそのものを曲げる「ベンディング」と似ているが、全面に均一な変形ではなく、(3)−1に記載した関係式を満足させる表面としていることに留意されたい。なお、これらの裏面補正は本願発明の範疇ではあるが、一次近似的な補正にすぎず、(4)の裏面補正を加えることが望ましい。
入力情報として課せられた光学的な機能を、装用者が実際に装用した状況において実現するために、(3)において得られた本願発明のレンズに対して更に裏面補正を加えることが望ましい。
(4)−1:透過設計のための凹面形状(本願発明)設計
透過設計とは、装用者がレンズを実際に装用した状況において本来の光学的な機能を得るための設計方法であり、主として視線とレンズ面とが直交しえないことに起因する非点収差の発生や度数の変化を、除去もしくは低減するための「補正作用」を加える設計方法である。
我々が周囲を見渡すときの眼球の3次元的な回旋運動は「リスティング則」と呼ばれる規則に則っていることが知られているが、処方度数に乱視度数がある場合、眼鏡レンズの乱視軸を「正面視での眼球の乱視軸」に合わせたとしても、周辺視をした場合には双方の乱視軸が一致しない場合がある。このように周辺視におけるレンズと眼との乱視軸方向が一致しないことに起因する非点収差の発生や度数の変化を、除去もしくは低減するための「補正作用」を、本発明によるレンズの乱視矯正作用を有する側の表面の曲面に加えることが出来る。
また、本発明は両面非球面という面構成であるが、本発明の効果を得るにあたり、必ずしも受注後に初めて両面を加工する必要はない。例えば本発明の目的にかなう物体側表面の「半完成品」をあらかじめ準備しておき、受注後にそれらの中から処方度数や上述のカスタムメイド(個別設計)などの目的に適合した物体側表面の「半完成品」を選び、眼球側表面のみを受注後に加工して仕上げることも、コストと加工スピードの点で有益である。
図7の表1−1は本発明による実施例1の表面屈折力に関する一覧表である。この実施例1の度数はS0.00 Add3.00に対応しており、比較のために同度数の3種類の従来技術例を併記してある。なお、従来技術例Aは物体側表面が累進面である「凸面累進屈折力レンズ」に、従来技術例Bは物体側表面と眼球側表面との両方が累進面である「両面累進屈折力レンズ」に、従来技術例Cは眼球側表面が累進面である「凹面累進屈折力レンズ」に、それぞれ対応している。また、表1−1で用いた項目の意味は下記の通りである。
DVf1:物体側表面の遠用度数測定位置F1における縦方向の表面屈折力
DHf1:物体側表面の遠用度数測定位置F1における横方向の表面屈折力
DVn1:物体側表面の近用度数測定位置N1における縦方向の表面屈折力
DHn1:物体側表面の近用度数測定位置N1における横方向の表面屈折力
DVf2:眼球側表面の遠用度数測定位置F2における縦方向の表面屈折力
DHf2:眼球側表面の遠用度数測定位置F2における横方向の表面屈折力
DVn2:眼球側表面の近用度数測定位置N2における縦方向の表面屈折力
DHn2:眼球側表面の近用度数測定位置N2における横方向の表面屈折力
F1:物体側表面の遠用度数測定位置、
F2:眼球側表面の遠用度数測定位置
N1:物体側表面の近用度数測定位置、
N2:眼球側表面の近用度数測定位置
CV1:物体側表面の主注視線に沿った縦方向の表面屈折力分布を表すグラフ(実線にて表示)
CH1:物体側表面の主注視線に沿った横方向の表面屈折力分布を表すグラフ(点線にて表示)
CV2:眼球側表面の主注視線に沿った縦方向の表面屈折力分布を表すグラフ(実線にて表示)
CH2:眼球側表面の主注視線に沿った横方向の表面屈折力分布を表すグラフ(点線にて表示)
Msv:縦方向のシェープファクター 、
Msh:横方向のシェープファクター
Mpv:縦方向のパワーファクター 、
Mph:横方向のパワーファクター
Mγv:縦方向のプリズムファクター 、
Mγh:横方向のプリズムファクター
SMv:縦方向の倍率、
SMh:横方向の倍率
であり、前述の如く、縦方向の倍率SMv及び、横方向の倍率SMhは、
SMv=Msv×Mpv×Mγv
SMh=Msh×Mph×Mγh
という関係にある。
SMvf :遠用測定点を通過する視線上の縦方向倍率
SMvn :近用測定点を通過する視線上の縦方向倍率
SMvfn:縦方向倍率差(SMvn−SMvf)
SMhf :遠用測定点を通過する視線上の横方向倍率
SMhn :近用測定点を通過する視線上の横方向倍率
SMhfn:横方向倍率差(SMhn−SMhf)
縦方向の倍率SMv=Msv×Mpv×Mγv
横方向の倍率SMh=Msh×Mph×Mγh
にあるように、グラフ1−3−SMvは3つの要素、グラフ1−3−Msvとグラフ1−3−Mpvとグラフ1−3−Mγvの値を掛け合わせて得られ、同様に、グラフ1−3−SMhは3つの要素、グラフ1−3−Mshとグラフ1−3−Mphとグラフ1−3−Mγhの値を掛け合わせて得られる。ここで各々の要素の縦方向と横方向を比べると、シェイプファクターであるMsvとMsvには明確な差が見られないが、MpvとMphでは近用部より下方(眼球回旋角で−25°近辺以下)に違いが見られる。また、MγvとMγhでは近用部とその下方(眼球回旋角で−15°近辺以下)に顕著な違いがある。即ち、グラフ1−3−SMvとグラフ1−3−SMhの違いの主たる原因は、MγvとMγhの違いであり、副次的な原因はMpvとMphの違いであって、MsvとMshには明確な差が見られず、ほとんど無関係であることがわかる。つまり、従来技術1に対応した特許明細書に縦方向や横方向の倍率の違いが見られないのは、倍率の違いの主たる原因であるプリズムファクターMγvとMγhを全く考慮しておらず、副次的な原因であるパワーファクターMpvとMphについても対物距離や視線とレンズとの角度を無視しているので差が出ないのである。更に、従来技術1において改善の根拠とされているシェイプファクターMsvとMshについても、本発明の実施例1で用いた縮尺で見る限り、遠近の倍率差に各例相互の違いが見られない。
図8の表2−1は本発明による実施例2の表面屈折力に関する一覧表である。この実施例2の度数はS+6.00 Add3.00に対応しており、比較のために同度数の3種類の従来技術例を併記してある。なお、従来技術例Aは物体側表面が累進面である「凸面累進屈折力レンズ」に、従来技術例Bは物体側表面と眼球側表面との両方が累進面である「両面累進屈折力レンズ」に、従来技術例Cは眼球側表面が累進面である「凹面累進屈折力レンズ」に、それぞれ対応している。また、表2−1で用いたDVf1 〜DHn2などの用語の意味は、前記表1−1と同一である。グラフ2−1と2は本発明による実施例2の主注視線に沿った表面屈折力分布を表すグラフであり、横軸は向って右側がレンズ上方、左側がレンズ下方を、また、縦軸は表面屈折力を表す。ここでグラフ2−1は物体側表面に対応し、グラフ2−2は眼球側表面に対応している。また、実線のグラフは主注視線に沿った縦方向の表面屈折力分布を表し、点線のグラフは主注視線に沿った横方向の表面屈折力分布を表す。なお、これらは面構成の基本的な違いを説明するグラフであり、周辺部の非点収差除去のための非球面化や、乱視度数対応のための乱視成分付加などの場合などは省略してある。
図9の表3−1は本発明による実施例3の表面屈折力に関する一覧表である。この実施例3の度数はS−6.00 Add3.00に対応しており、比較のために同度数の3種類の従来技術例を併記してある。なお、従来技術例Aは物体側表面が累進面である「凸面累進屈折力レンズ」に、従来技術例Bは物体側表面と眼球側表面との両方が累進面である「両面累進屈折力レンズ」に、従来技術例Cは眼球側表面が累進面である「凹面累進屈折力レンズ」に、それぞれ対応している。また、表3−1で用いたDVf1 〜DHn2などの用語の意味は、前記表1−1や表2−1と同一である。
本発明の実施例として、前述の実施例1〜3の他にも特許請求の範囲に記載した範囲内で、様々な表面屈折力の分布の組合わせが可能である。ここで、実施例1と同度数の応用例として実施例4〜6を、また実施例2と同度数の応用例として実施例7を示す。これらの実施例の表面屈折力と特定の視線方向に対する厳密な倍率計算結果の一覧表とグラフを、図7の表1−1、表1−2及び図12〜図14のグラフ4−1、グラフ4−2 乃至 グラフ7−1、グラフ7−2 に示す。特に、実施例7は、レンズ度数としては、実施例2と同一であり、同一処方でありながら、図8及び図13に示すように、物体側、眼球側の屈折面のカーブ値の選択及び眼球側の屈折力の変化の状態が実施例2と異なっている設計が開示されていることがわかる。物体側では、実施例2と比較して、遠用度数測定位置では縦、横方向ともに表面屈折力が9.00Dのカーブを採用しており、若干浅くなっているが、近用度数測定位置では、縦方向は表面屈折力15.00Dと深いカーブとなっており、横方向のカーブは若干浅くなっている。屈折力の分布の傾向は、実施例2と同様である。次に、眼球側では、前述したように、実施例2と比較すると屈折力の分布およびカーブにおいて明らかに異なる設計が用いられていることがわかる。実施例2と比較して、遠用度数測定位置では縦、横方向ともに表面屈折力が3.00Dのカーブを採用しており、若干浅くなっているが、近用度数測定位置では、縦方向は表面屈折力が6.00Dと深いカーブとなっており、横方向のカーブは表面屈折力が0.00Dで若干浅くなっている。しかし、屈折力の分布は、縦方向では、遠用度数測定位置から近用度数測定位置にかけて実施例2では一定であったが、ここでは変化しており、カーブとして3.00ジオプターだけ深くなっている。即ち、物体側及び眼球側表面の曲率半径はいずれも下方に向かって小さくなっている。ここで、図6で示した眼球の回旋中心点Cとレンズの断面図との関係を見ればわかるように、この実施例7の物体側及び眼球側表面の曲率半径がいずれも下方に向かって小さくなっているということは、レンズの下方にある近用部分が眼球側に近くなっているということである。従って、実施例7の近方視におけるレンズの位置は、実施例2よりも眼球回旋中心点に近くなっていることがわかる。
更に本発明においては通常の処方値のみならず、これまでレンズメーカーが把握することの少なかった眼鏡装用者の個人的ファクターとして、例えば角膜頂点からレンズ後方頂点までの距離、眼球回旋中心からレンズ後方頂点までの距離、左右眼の不等像視の程度、左右眼の高さの差、最も頻度の高い近方視の対物距離、フレームの前傾角(上下方向)やあおり角(左右方向)、レンズのコバ厚方向に対するヤゲン位置、などを入力情報としてレンズ設計に組み入れることにより、カスタムメイド(個別設計)の要求に応えることも可能である。また、本発明は両面非球面という面構成であるが、本発明の効果を得るにあたり、必ずしも受注後に初めて両面を加工する必要はない。例えば本発明の目的にかなう物体側表面の「半完成品」をあらかじめ準備しておき、受注後にそれらの中から処方度数や上述のカスタムメイド(個別設計)などの目的に適合した物体側表面の「半完成品」を選び、眼球側表面のみを受注後に加工して仕上げることも、コストと加工スピードの点で有益である。
Claims (1)
- 物体側表面である第1の屈折表面と、眼球側表面である第2の屈折表面とに分割配分されている累進屈折力作用を備えた両面非球面型累進屈折力レンズであって、
前記第1の屈折表面の遠用度数測定位置F1及び近用度数測定位置N1における表面非点収差成分を、前記第2の屈折表面の遠用度数測定位置F2及び近用度数測定位置N2にて相殺し、前記第1と第2の屈折表面とを合わせて、処方値に基づいた遠用度数と加入度数とを与えるようにし、かつ、第2の屈折表面は、遠用度数測定位置F2から近用度数測定位置N2にかけて縦方向の表面屈折力が増加することを特徴とする両面非球面型累進屈折力レンズ。
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