本発明におけるポリエステルユニットを有する樹脂では、下記式(1)
(RCOO)2Sn 式(1)
で表される錫化合物(以下、単に「錫化合物」と称すこともある)が触媒として使用される。この錫化合物はエステル化反応及びエステル交換反応において好適な触媒であり、樹脂の軟化点や物性調整などが行いやすいとともに、比較的短時間での重合を可能にするものである。また重合後のポリエステルユニットを有する樹脂中に上記錫化合物が存在することによって、トナー製造時の熱溶融混練工程において以下に述べる効果により、樹脂と磁性体との分散性及び密着性を向上させるものと考えられる。
第一の効果としては、錫と結合したアルキルカルボン酸成分(RCOO−)の効果により、熱溶融混練時におけるポリエステル樹脂の粘度を局所的に低下させることで磁性体が均一に分散しやすくなり、また無機錫化合物が存在することで、磁性体の磁気凝集性が低減し、樹脂中での磁性体の微分散性が良化するものである。特に個数平均粒径が0.1〜0.3μmの小粒径磁性体を使用した場合、樹脂中への均一分散性が飛躍的に向上し、環境による帯電特性の変化が少なく、樹脂からの磁性体の脱離を発生せず、さらには高着色力なトナーを得ることができる。
また本発明で用いられる錫と結合したアルキルカルボン酸成分(RCOO−)の第二の効果として、ポリエステルユニットを含有する樹脂中への離型剤の分散性を向上させる働きがある。これは元来極性が高く離型剤との相溶性の点で不利であるポリエステルユニットを含有する樹脂中において、離型剤と似た構造をもつアルキルカルボン酸成分が樹脂と離型剤との間で相溶化剤的な働きをすることで、ポリエステルユニットを含有する樹脂中に離型剤を均一に分散させることができる。特に本発明で使用されるような融点70〜120℃の低融点離型剤を使用する時に効果的である。
低融点離型剤は低温定着性が良好な反面、トナーの粘度を下げるために、トナー中の分散性が悪いと高温高湿下などの過酷な条件下で長期使用した時に、遊離した離型剤や離型剤を多量に含むトナーが摩擦による熱と圧力でスリーブ上へ付着してしまい、それを核にトナーが更に付着して汚染が発展しやすい。また、ポリエステルユニットを含有する樹脂への相溶性が悪いために、ポリエステルユニットを含有する樹脂を用いたトナーにおいては、分散粒径や表面存在率が不均一となりやすく、充分な離型効果が得られにくい。しかし本発明によれば、上記の効果により低融点離型剤がトナー中に均一に分散するため、環境変動や長期耐久によるトナーの組成変化が少なく、優れた低温定着性と高離型効果を発揮することができる。
ここで本発明で使用されるアルキルカルボン酸錫化合物のアルキル基の炭素数としては、エステル化反応に対する触媒効果の観点から、5〜15のものが最適なものである。
また錫化合物の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して0.05〜2.0質量部、好ましくは0.1〜1.0質量部がよい。0.05質量部未満となると、ポリエステル重合時の反応時間が長くなるとともに、磁性体の分散性を向上させる効果が得られなくなる。また2質量部を超えて含有すると、トナーの帯電特性に影響を及ぼすようになり、環境による帯電量の変動が大きくなりやすい。
本発明において好ましく使用される式(1)で表される錫化合物としては以下のものが挙げられる。
例示化合物(1) ヘキサン酸錫〔CH3(CH2)4COO〕2Sn
例示化合物(2) オクタン酸錫〔CH3(CH2)6COO〕2Sn
例示化合物(3) 2−エチルヘキサン酸錫
例示化合物(4) デカン酸錫〔CH3(CH2)8COO〕2Sn
例示化合物(5) ラウリン酸錫〔CH3(CH2)10COO〕2Sn
本発明で使用される結着樹脂は、ポリエステルユニットを有する樹脂を主成分とするものであり、ポリエステル樹脂、及びポリエステルユニットとスチレン−アクリル系樹脂ユニットとが化学的に結合したハイブリッド樹脂が好適なものである。尚、本発明において、「結着樹脂の主成分」とは、結着樹脂中の50質量%超を占める成分のことと定義する。
ポリエステル樹脂或いはポリエステルユニットを得るためのモノマーとしては以下のものが挙げられる。
二価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また下記(ア)式で表されるビスフェノール誘導体、及び下記(イ)式で示されるジオール類が挙げられる。
また、二価のカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等のベンゼンジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;またさらに炭素数6〜18のアルキル基またはアルケニル基で置換されたコハク酸若しくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
また、ポリエステル樹脂或いはポリエステル樹脂ユニットを得るためのその他のモノマーとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、さらには例えばノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル等の多価アルコール類;トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸類等が挙げられる。
ハイブリッド樹脂において、スチレン−アクリル系樹脂ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては次のようなものが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体が挙げられる。
またアクリル酸系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸及びアクリル酸エステル類や、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸及びそのエステル類や、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、スチレン−アクリル系樹脂のモノマーとしては、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシルプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
またスチレン−アクリル系樹脂ユニットには、ビニル重合が可能な種々のモノマーを必要に応じて併用することができる。このようなモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類:ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸の酸無水物;該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
また、前記スチレン−アクリル系樹脂成分は、必要に応じて以下に例示するような架橋性モノマーで架橋された重合体であってもよい。架橋性モノマーには、例えば芳香族ジビニル化合物、アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、芳香族基及びエーテル結合を介して連結されたジアクリレート化合物類、ポリエステル型ジアクリレート類、及び多官能の架橋剤等が挙げられる。
芳香族ジビニル化合物としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
ポリエステル型ジアクリレート類としては、例えば商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
これらの架橋性モノマーは、他のモノマー成分100質量%に対して、0.01〜10質量%(さらに好ましくは0.03〜5質量%)用いることができる。またこれらの架橋性モノマーのうち、定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)や、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
また前記スチレン−アクリル系樹脂ユニットを得る際には、以下の如き重合開始剤を用いることができる。このような重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−カーバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロビルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
前記ハイブリッド樹脂は、ポリエステル樹脂ユニット及びスチレン−アクリル系樹脂ユニットが直接又は間接的に化学的に結合している樹脂であり、上述のポリエステル樹脂成分、スチレン−アクリル系樹脂成分、及びこれらの樹脂成分の両方と反応し得るモノマー成分から構成される。ポリエステル樹脂ユニットを構成するモノマーのうちスチレン−アクリル系樹脂ユニットと反応し得るものとしては、例えばフマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
スチレン−アクリル系樹脂ユニットを構成するモノマーのうちポリエステル樹脂ユニットと反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ハイブリッド樹脂を得る方法としては、先に挙げたポリエステル樹脂及びスチレン−アクリル系樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方若しくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
本発明の効果を満足するためには、ハイブリッド樹脂成分中にポリエステル樹脂成分を好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上含有する。
本発明において用いられる、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂は、3価以上の多価カルボン酸またはその無水物及び/又は3価以上の多価アルコールで架橋された樹脂を含有することが、低温定着性と耐高温オフセット性の両立を達成するために好ましい。
3価以上の多価カルボン酸またはその無水物としては例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられ、3価以上の多価アルコールとしては例えば、1,2,3−プロパントリオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等が挙げられるが、好ましくは1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及びその無水物である。
また本発明においては、定着領域の拡大のために軟化点の異なるポリエステル樹脂またはハイブリッド樹脂を2種以上混合して使用することが好ましい。
本発明においては、定着領域の拡大のために軟化点の異なるポリエステルユニットを含有する樹脂を2種以上混合して使用することが好ましい。具体的には、80℃〜120℃、及び120〜160℃の軟化点を有する樹脂を混合して使用することが好ましい。
また、本発明において用いる結着樹脂は、ガラス転移点が45℃〜65℃であることが好ましい。この範囲である場合には、低温定着性と保存安定性の両立という点で好ましいものである。
また、結着樹脂の酸価は、1〜50mgKOH/gであることが好ましい。この範囲である場合には、良好な帯電特性及び環境安定性の両立という点で好ましいものである。
本発明のトナーで使用される磁性体としては、従来公知の磁性材料が用いられる。磁性トナーに含まれる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属あるいはこれらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金;及びこれらの混合物等が挙げられる。
磁性材料としては、従来、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛(ZnFe2O4)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe5O12)、酸化鉄カドミニウム(CdFe2O4)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe5O12)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ニッケル(NiFe2O4)、酸化鉄ネオジム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄マンガン(MnFe2O4)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が知られているが、本発明では上述した磁性材料として少なくとも磁性酸化鉄が含有され、必要に応じて一種又は二種以上を任意に選択して使用することが可能である。
これらの磁性材料の795.8kA/m(10kエルステッド)印加での磁気特性は、抗磁力が1.5kA/m〜12kA/m、飽和磁化が50〜200Am2/kg(好ましくは50〜100Am2/kg)、残留磁化が2〜20Am2/kgのものが好ましい。磁性材料の磁気特性は、25℃、外部磁場769kA/mの条件下において振動型磁力計、例えばVSM P−1−10(東英工業社製)を用いて測定することができる。
本発明の磁性トナーでは、磁性体は磁性酸化鉄であることが好ましく、例えば四三酸化鉄やγ−三二酸化鉄の微粉末が挙げられる。またこの磁性酸化鉄は、結着樹脂100質量部に対して20〜150質量部がトナー粒子に含まれることが、流動性を維持しつつトナー飛散を防止する良好な磁性を示し、かつ十分な着色力を発現する上で好ましい。
なお、本発明において着色剤は、トナーの初期物性やトナー粒子の製造条件等に応じて、適切な表面疎水化処理剤を用いて適切に表面疎水化処理されたものであっても良い。
本発明において、磁性体の個数平均粒径は0.1乃至0.3μmである。0.1μm未満になると、磁性体自身が赤みを帯びることによりトナーの色味も赤みを増してしまうとともに、樹脂中での分散性が悪化する事で、耐久による現像性の低下や、脱離した磁性体による潜像担持体の削れなどを発生しやすくなる。また0.3μmより大きくなると、トナーの着色力が低下し、高品位な画像を得ようとするとトナー消費量の増加を招くようになる。
また本発明においては、磁性体の内部及び/または表面に、ケイ素、亜鉛、チタンなどの異種金属を含有させることが好ましい。これはアルキルカルボン酸の錫化合物との相互作用により、溶融混練時の磁気凝集をさらに低下させることが可能になり、トナー中での磁性体の分散性を向上できるからである。
本発明においては必要に応じて他の着色剤を含有することもできる。着色剤としては、カーボンブラックやその他従来知られているあらゆる顔料や染料の一種又は二種以上を用いることができる。
本発明においては、他の添加剤を必要に応じてトナー粒子に添加することも可能である。このような他の添加剤としては、トナー粒子の内部に添加することが従来知られている種々の添加剤を用いることができ、離型剤や電荷制御剤等が挙げられる。
前記離型剤として好ましいものとしては、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス等の、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックス等の、脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の飽和アルコール類;ソルビトール等の多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリド等の、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加等によって得られる、ヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;炭素数12以上の長鎖アルキルアルコール又は長鎖アルキルカルボン酸;等が挙げられる。
本発明において特に好ましく用いられる離型剤としては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。このような脂肪族炭化水素系ワックスとしては、例えば、アルキレンを高圧化でラジカル重合し、又は低圧化でチーグラー触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス及びそれを水素添加して得られる合成炭化水素ワックス;これらの脂肪族炭化水素系ワックスをプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により分別したもの;が挙げられる。
前記脂肪族炭化水素系ワックスの母体としての炭化水素としては、例えば、金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物);ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレン等のアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素;が挙げられる。このような炭化水素の中でも、本発明では、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であることが好ましく、特にアルキレンの重合によらない方法により合成された炭化水素がその分子量分布からも好ましい。
本発明において離型剤は、離型剤を含有するトナー粒子を示差走査熱量計で測定したときに、得られるDSC曲線において70〜140℃の領域に吸熱メインピークが現れるようにトナー粒子に含まれていることが、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性の点で好ましい。
また、本発明のトナーには、示差走査型熱量計(DSC)測定による昇温時の吸熱ピーク温度で規定される融点が70〜120℃である離型剤を含有することが好ましい。離型剤の融点は、より好ましくは80〜115℃、更に好ましくは90〜110℃であることが良い。融点が70℃未満の場合はトナーの粘度が低下して離型効果が低下し、耐久による現像部材・クリーニング部材への汚染が発生してしまい、融点が120℃を超える場合は求める低温定着性が得られ難い。
また該離型剤のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される分子量分布に関し、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)が1.2〜2.0であることが好ましい。Mw/Mnが1.2未満である場合には、結着樹脂中への分散性が低下してトナー中に遊離し、現像部材・クリーニング部材への汚染が発生してしまう。Mw/Mnが2.0を超える場合には、迅速溶融性が低下して求める定着性が得られ難い。
また該離型剤は結着樹脂100質量部に対して、1乃至30質量部添加することが好ましい。1質量部未満の場合は望まれる離型効果が十分に得られず、30質量部を超えて含有される場合はトナー中での分散が悪く、感光体へのトナー付着や、現像部材・クリーニング部材の表面汚染などが起こり、トナー画像が劣化するなどの問題を引き起こしてしまう傾向がある。
本発明において該離型剤を添加するタイミングは、結着樹脂製造時であることが好ましい。樹脂製造時に触媒として用いられるアルキルカルボン酸成分の相溶化剤的な効果がより発揮されやすいため、低融点ワックスをより均一に分散させることができる。またあらかじめ離型剤を分散させておくため、トナー溶融混練時における磁性体の分散効果が高まるので好ましい。
前記吸熱ピーク温度は、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7を用い、ASTM D3418−82に準じて測定することができ、前記のピークが出現する温度は、融点やガラス転移点、及び重合度等を適切に調整された離型剤を用いることによって調整することが可能である。なお、前記DSC−7は、前記ピーク温度の他、結着樹脂のガラス転移点、軟化点、ワックスの融点等の、トナー粒子やトナー粒子材料の熱的物性を示す温度の測定に適用することができる。
離型剤は、結着樹脂100質量部あたり2〜15質量部がトナー粒子中に含まれることが、定着性や帯電特性の点で好ましい。
本発明のトナーには、その帯電性を安定化させるために電荷制御剤を用いることができる。電荷制御剤は、電荷制御剤の種類や他のトナー粒子構成材料の物性等によっても異なるが、一般にトナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1〜10質量部含まれることが好ましく、0.1〜5質量部含まれることがより好ましい。このような電荷制御剤としては、トナーを負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するものとが知られており、トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
トナーを負帯電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効で、その例としては、モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体;芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属化合物;が挙げられる。その他にも、トナーを負帯電性に制御するものとしては、例えば芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩や無水物;エステル類やビスフェノール等のフェノール誘導体;等が挙げられる。
トナーを正帯電性に制御するものとしては、例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物等);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート;等が挙げられる。本発明ではこれらの一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。また、電荷制御樹脂も用いることができ、上述の電荷制御剤と併用することもできる。トナーを正帯電性に制御するものとしては、これらの中でもニグロシン系化合物、四級アンモニウム塩等の電荷制御剤が特に好ましく用いられる。
なお、本発明のトナーはトナー材料の物性等の観点から、負帯電性であることが好ましく、荷電制御剤としてはアゾ系鉄錯体或いは芳香族オキシカルボン酸金属化合物が結着樹脂及び磁性体との分散性の点から好ましく使用される。
本発明のトナーは、周波数100kHzで測定した誘電正接(tanδ)が1×10−3〜6×10−3の範囲にあることが好ましい。誘電正接がこの範囲にあると、トナー中での磁性体の分散性が良好となり、環境による帯電特性の変動を抑制し、磁性体の脱離による潜像担持体の削れなどを効果的に抑制することが可能となる。トナーの誘電正接は、4284AプレシジョンLCRメーター(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、1kHz及び1MHzの周波数を校正後、周波数100kHzにおける複素誘電率の測定を行うことで得られる。
本発明のトナーは、前述したトナー粒子に、トナーの種類に応じた種々の材料を外添して用いられる。外添される材料としては、例えば無機微粉体等のようにトナーの流動性を向上させる流動性向上剤や、金属酸化物微粒子等のようにトナーの帯電性を調整するための導電性微粉体等の外添剤が挙げられる。
前記流動性向上剤としては、トナー粒子に外添することによりトナーの流動性を向上し得るものが挙げられる。このような流動性向上剤としては、例えばフッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ;これらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナ;等が挙げられる。
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましい。流動性向上剤は、流動性向上剤の種類によって異なるが、例えばトナー粒子100質量部に対して0.01〜8質量部を配合することが好ましく、0.1〜4質量部を配合することがより好ましい。
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。このようなシリカは、例えば、四塩化ケイ素ガスの酸素、水素中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンの如き他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、本発明で流動性向上剤として利用されるシリカ微粉体はそれらも包含する。その粒径は、平均一次粒径として0.001〜2μmの範囲内であることが好ましく、特に0.002〜0.2μmの範囲内であることがより好ましい。
ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下のような商品名で市販されているもの、すなわちAEROSIL(日本アエロジル社)130、200、300、380、TT600、MOX170、MOX80、COK84;Ca−O−SiL(CABOT Co.社)M−5、MS−7、MS−75、HS−5、EH−5;Wacker HDK N 20(WACKER−CHEMIE GMBH社)V15、N20E、T30、T40;D−C Fine Silica(ダウコーニングCO.社);Fransol(Fransil社)等が挙げられる。
本発明では、前記シリカ微粉体は、疎水化処理されていることが好ましい。また前記シリカ微粉体は、メタノール滴定試験によって測定される疎水化度が30〜80度の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが、環境変動に対しても安定したトナー物性を発現させる上で特に好ましい。なお前記疎水化度は、水中で撹拌されている所定量のシリカ微粉体にメタノールを滴下し、シリカ微粉体の沈降終了時におけるメタノール及び水の液状混合物中におけるメタノールの体積基準の百分率として表される。
シリカ微粉体の疎水化方法としては、例えばシリカ微粉体と反応し、又はシリカ微粒子に物理吸着する有機ケイ素化合物やシリコーンオイルでシリカ微粒子を化学的に処理する方法が挙げられる。より好ましくは、有機ケイ素化合物による疎水化処理である。
前記有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当り2か12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位においてSiに結合する水酸基を有するジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらは一種あるいは二種以上の混合物で用いられる。
シリカ微粉体の疎水化処理においては、前記有機ケイ素化合物の中でもさらに窒素原子を有するシランカップリング剤の一種又は二種以上を用いることが可能である。このような含窒素シランカップリング剤としては、例えばアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジルアミン等が挙げられる。
なお本発明において、好ましいシランカップリング剤としてはヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
またシリカ微粉体の疎水化処理で好ましく使用されるシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が0.5〜10000mm2/sであることが好ましく、1〜1000mm2/sであることがより好ましく、10〜200mm2/sであることがより一層好ましい。また、特に好ましいシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが挙げられる。
シリコーンオイルを用いるシリカ微粉体の表面疎水化処理の方法としては、例えばシランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合する方法;ベースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法;適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解又は分散せしめた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法;が挙げられる。
シリコーンオイルによってシリカ微粉体の表面疎水化処理を行う場合では、シリコーンオイルの処理後にシリカ微粉体を不活性ガス中で200℃以上(より好ましくは250℃以上)に加熱し、表面のコートを安定化させることがより好ましい。
本発明においては、シリカ微粉体の表面疎水化処理に、前述したシランカップリング剤及びシリコーンオイルの両方を用いることが可能であり、このような表面疎水化処理方法としては、シリカ微粉体を予めシランカップリング剤で処理した後にシリコーンオイルで処理する方法、又はシリカ微粉体をシランカップリング剤とシリコーンオイルで同時に処理する方法等が挙げられる。
本発明のトナーは、その製造方法については特に限定されないが、前述した結着樹脂、磁性体、及び必要に応じて他の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により十分混合し、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び練肉して樹脂類を互いに相溶せしめ、溶融混練物を冷却固化し、その後、固化物を粉砕し、粉砕物を分級することによりトナー粒子を得る方法が好ましい。このトナー粒子と流動性向上剤等の外添剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により必要に応じて十分混合することにより得ることができる。
また本発明のトナーを製造するに当たって、分級はトナー粒子生成後の任意の時期に行うことができ、例えば外添剤との混合後に分級を行っても良い。また、生成したトナー粒子に、例えば機械的又は熱的等の適切な衝撃を加え、トナー粒子の粒子形状を制御(より具体的には、球形化)しても良い。
本発明においては、前記固化物を粉砕する方法としては、機械的衝撃力を加える方法が好ましい。機械的衝撃力を与える処理としては、例えば川崎重工業(株)製粉砕機KTM、ターボ工業(株)製ターボミルのごとき機械式粉砕機を用いる方法、及びホソカワミクロン社製のメカノフュージョンシステムや、奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム等の装置により処理する方法が挙げられる。これらの装置をそのまま、あるいは適宜改良して使用することが可能である。
また本発明のトナーは、画像濃度、解像度などの点から、重量平均粒径が3乃至9μmであることが好ましい。
以下にトナー製造用装置として一般的に使用されるものを示すが、これらに限定されるものではない。
本発明のトナーに係る物性の測定方法は以下に示す通りである。後述の実施例もこの方法に基づいている。
(i)磁性体の粒径測定
磁性体の平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布計(堀場製作所株式会社製)を用いて測定することができる。
(ii)樹脂の軟化点の測定方法
樹脂の軟化点はJIS K 7210に示される測定方法に則り、降下式フローテスタにより測定される。具体的な測定方法を以下に示す。
降下式フローテスタ(島津製作社製)を用いて1cm3の試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1960N/m2(20kg/cm2)の荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするとき、h/2に対する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
(iii) ガラス転移点(Tg)及びワックスの融点の測定
測定装置として、示差走査型熱量計(DSC)、MDSC−2920(TA Instruments社製)を用い、ASTM D3418−82に準じて測定する。
測定試料は2〜10mg、好ましくは3mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いて、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下測定を行う。2回目の昇温過程で得られる、温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線をもって解析を行う。
ガラス転移点(Tg)については、得られたDSC曲線より中点法で解析を行った値を用いる。また、ワックスの融点ついては、得られたDSC曲線の吸熱メインピークの温度値を用いる。
(iv)粒度分布の測定
測定装置:コールターマルチサイザーIIe(ベックマン・コールター社製)
電解液としては、1級塩化ナトリウムを用いて、1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(ベックマン・コールター社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100乃至150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1乃至5ml加え、更に測定試料を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して、体積分布と、個数分布とを算出した。それから、本発明に係る重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)(それぞれ各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求めた。
(v)ワックスの分子量分布の測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定装置:GPC−150C(ウォーターズ社)
カラム:GMH−HT30cm2連(東ソー社製)
温度:135℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
流速:1.0ml/min
試料:0.15%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算することによって算出される。
(vi)酸価の測定方法
本発明では、常法にしたがって結着樹脂の酸価を測定することができ、例えばサンプル2〜10gを200〜300mlの三角フラスコに秤量し、メタノール:トルエン=30:70の混合溶媒約50mlを加えて樹脂を溶解する。溶解性が悪いようであれば少量のアセトンを加えてもよい。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用い、あらかじめ標定された0.1モル/l水酸化カリウム−アルコール溶液で滴定し、水酸化カリウム−アルコール溶液の消費量から下記式より酸価を求める。
酸価=KOH(ml)×n×56.1/試料重量(g)
(nは0.1モル/lKOHのファクター)
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(結着樹脂の製造例1−1)
ポリエステルを得るためのモノマー及びアルキルカルボン酸の錫化合物を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着し、窒素雰囲気下にて230℃に昇温して反応を行った。反応終了後、生成物を容器から取り出し、冷却後粉砕し、軟化点138℃の結着樹脂1−1を得た。用いたモノマー及び錫化合物の種類、得られた樹脂の物性を表6に示す。
(結着樹脂の製造例1−2〜1−10)
製造例1において、モノマー及びアルキルカルボン酸の錫化合物の量及び種類を表6に示すように変更し、また軟化点を確認しながら反応を行い、表5に示す軟化点となった時点で反応を終了したこと以外は製造例1−1と同様にして、結着樹脂1−2〜1−10を得た。得られた結着樹脂の物性を表6に示す。
(結着樹脂の製造例1−11)
ポリエステルユニットを得るためのモノマー及びアルキルカルボン酸の錫化合物を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着し、窒素雰囲気下にて130℃の温度で撹拌しつつ、表6に示すビニル系共重合体モノマー及び重合開始剤(ジクミルパーオキサイド)を混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。これを130℃で3時間保持し、その後230℃に昇温して反応を行った。反応終了後、生成物を容器から取り出し、その後粉砕し、ポリエステル樹脂成分、ビニル系重合体成分及びハイブリッド樹脂を含有する、軟化点140℃の結着樹脂1−11を得た。用いたモノマー及び錫化合物の種類、得られた樹脂の軟化点を表6に示す。
(結着樹脂の製造例1−12〜1−14)
結着樹脂の製造例1−11において、モノマー及びアルキルカルボン酸の錫化合物の種類及び量を表6に示すように変更する以外は、上記製造例1−11と同様の方法を用いて、表6に示す結着樹脂1−12〜1−14を得た。
(比較用結着樹脂の製造例1−a〜1−h)
結着樹脂の製造例1−1において、モノマー及びアルキルカルボン酸の錫化合物の種類及び量を表7に示すように変更する以外は、製造例1−1と同様の方法を用いて、表7に示す比較用結着樹脂1−a〜1−hを得た。
<実施例1−1>
(トナーの製造例)
・結着樹脂1−1 60質量部
・結着樹脂1−6 40質量部
・磁性酸化鉄1−1 90質量部
(平均粒径:0.18μm、Hc(保磁力):11.1kA/m、σs(飽和磁化):83.3Am2/kg、σr(残留磁化):13.9Am2/kg、磁性体中に0.4質量%のTiを含有)
・T−77(モノアゾ鉄錯体、保土ヶ谷化学社製) 2質量部
・ポリプロピレンワックス(融点140℃) 3質量部
上記混合物を、120℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混合物をハンマーミルで粗粉砕した。この粗粉砕物をターボミル(ターボ工業社製)で微粉砕し、得られた微粉砕物を風力分級機で分級して磁性トナー粒子を得た。
この磁性トナー粒子100質量部に、疎水性乾式シリカ(BET150m2/g)1.0質量部をヘンシェルミキサーにて外部添加し、重量平均粒径7.4μmのトナー1−1を得た。
(トナーの評価)
市販のキヤノン製デジタル複写機iR3300を使用し、本発明のトナー1−1を用いて、常温常湿環境(温度23℃,湿度60%)において5万枚の通紙耐久試験を行った。原稿は画像比率5%のチャートを使用した。画像評価、感光ドラムの削れ評価、及びトナー消費量評価は以下のようにして行った。各評価の結果を表10に示す。
(画像評価)
1.画像濃度
5mm丸(1.1濃度)のオリジナルチャートを用いて、複写原稿を作成し、その反射濃度を耐久試験前後で測定した。画像濃度は、マクベス濃度計(マクベス社製)を使用し、SPIフィルターを用いて測定した。
2.デジタル画像の鮮鋭度
ライン及び文字を含む原稿を使用し、耐久試験初期及び耐久試験後の画像を、目視または拡大鏡を使用して、以下の基準で評価した。
A:文字画像及びライン画像ともに、細部まで忠実に再現している。
B:細部に多少の乱れまたは飛び散りが生じているが、目視では問題ないレベルである。
C:目視でも乱れや飛び散りがわかるレベルである。
D:乱れ、飛び散りが多数発生し、原稿を再現していない。
(感光ドラム削れ)
通紙耐久の初期、耐久中及び耐久後の感光ドラムを目視で観察するとともに画像欠陥を観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
A:ドラム表面、画像ともに欠陥は全く認められない。
B:耐久後半、ドラム表面光沢の低下が若干認められるが、画像には現れない。
C:耐久後半、ドラム表面に傷が若干認められ、画像にも若干のムラが生ずる。
D:耐久後半、ドラム表面に深い傷が認められ、画像にもムラが生ずる。
(トナー消費量)
画出し試験において、初期の現像器質量と2000枚出力後の現像器質量から下式にて求めた。
トナー消費量={(初期の現像器質量)−(2000枚出力後の現像器質量)}/2000
その結果、表10に示すように良好な結果が得られた。
<実施例1−2、1−3、1−6〜1−13、参考例1−1、1−2>
実施例1−1において樹脂の種類及び配合比を表8に示すとおりに変更した以外は、上記実施例1−1と同様の方法を用いてトナー1−2〜1−7を得た。
得られた各トナー1−2〜1−7について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。評価結果を表10に示す。
得られた各トナー1−2〜1−7について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。評価結果を表10に示す。
<実施例1−8>
実施例1−2において使用する磁性体を磁性酸化鉄1−2に変更した以外は、実施例1−2と同様の方法を用いてトナー1−8を得た。
磁性酸化鉄1−2は、個数平均粒径が0.12μm、Hcが12.0kA/m、σsが82.2Am2/kg、σrが15.3Am2/kgであり、磁性体中に0.4質量%のTiを含有する。
得られたトナー1−8について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。その結果、表10に示すように良好な結果が得られた。
<実施例1−9>
実施例1−2において使用する磁性体を磁性酸化鉄1−3に変更した以外は、実施例1−2と同様の方法を用いてトナー1−9を得た。
磁性酸化鉄1−3は、個数平均粒径が0.23μm、Hcが10.6kA/m、σsが83.9Am2/kg、σrが12.6Am2/kgであり、磁性体中に0.4質量%のTiを含有する。
得られたトナー1−9について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。その結果、表10に示すように良好な結果が得られた。
<実施例1−10>
実施例1−2において使用する磁性体を磁性酸化鉄1−4に変更した以外は、実施例1−2と同様の方法を用いてトナー1−10を得た。
磁性酸化鉄1−4は、個数平均粒径が0.27μm、Hcが9.9kA/m、σsが84.3Am2/kg、σrが11.1Am2/kgであり、磁性体中に0.4質量%のTiを含有する。
得られたトナー1−10について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。その結果、表10に示すように良好な結果が得られた。
<実施例1−11>
実施例1−6において使用する磁性体を磁性酸化鉄1−5に変更した以外は、実施例1−6と同様の方法を用いてトナー1−11を得た。
磁性酸化鉄1−5は、個数平均粒径が0.23μm、Hcが10.2kA/m、σsが82.8Am2/kg、σrが12.6Am2/kgであり、磁性体中に0.3質量%のSiを含有する。
得られたトナー1−11について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。その結果、表10に示すように良好な結果が得られた。
<実施例1−12>
実施例1−6において使用する磁性体を磁性酸化鉄1−6に変更した以外は、実施例1−6と同様の方法を用いてトナー1−12を得た。
磁性酸化鉄1−6は、個数平均粒径が0.23μm、Hcが11.0kA/m、σsが82.1Am2/kg、σrが12.4Am2/kgであり、磁性体中に0.3質量%のZnを含有する。
得られたトナー1−12について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。その結果、表10に示すように良好な結果が得られた。
<実施例1−13>
実施例1−6において使用する磁性体を磁性酸化鉄1−7に変更した以外は、実施例1−6と同様の方法を用いてトナー1−13を得た。
磁性酸化鉄1−7は、個数平均粒径が0.23μm、Hcが10.2kA/m、σsが83.0Am2/kg、σrが12.8Am2/kgであり、磁性体中に0.3質量%のSi、0.3質量%のZnを含有する。
得られたトナー1−13について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。その結果、表10に示すように良好な結果が得られた。
<比較例1−1〜1−4>
実施例1−9において、表9に示す樹脂に変更した以外は、実施例1−1と同様の方法を用いて比較用トナー1−1〜1−4を得た。
得られた比較用トナー1−1〜1−4について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。評価結果を表10に示す。
<比較例1−5>
実施例1−4において使用する磁性体を磁性酸化鉄1−8に変更した以外は、実施例1−1と同様の方法を用いて比較用トナー1−5を得た。
磁性酸化鉄1−8は、個数平均粒径が0.08μm、Hcが15.0kA/m、σsが80.0Am2/kg、σrが17.3Am2/kgであり、磁性体中に0.4質量%のTiを含有する。
得られた比較用トナー1−5について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。評価結果を表10に示す。
<比較例1−6>
実施例1−4において使用する磁性体を磁性酸化鉄1−9に変更した以外は、実施例1−1と同様の方法を用いて比較用トナー1−6を得た。
磁性酸化鉄1−9は、個数平均粒径が0.36μm、Hcが9.0kA/m、σsが84.8Am2/kg、σrが10.9Am2/kgであり、磁性体中に0.4質量%のTiを含有する。
得られた比較用トナー1−6について、上記実施例1−1と同様に評価を行った。評価結果を表10に示す。
(1)結着樹脂の製造例
(結着樹脂2−1の製造)
トリメリット酸 :365g
フマル酸 :336g
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 :1060g
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 :966g
上記モノマーを表12に示すようなワックス(2)の存在下で表1の例示化合物(3)14gと共に4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着して窒素雰囲気下にて230℃に昇温して反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕し、結着樹脂2−1を得た。
(結着樹脂2−2〜2−7の製造)
上記結着樹脂2−1の製造方法において、表11に示すようなモノマーに変更し、また軟化点を確認しながら反応を行い、表11に示す軟化点となった時点で反応を終了したこと以外は同様にして、結着樹脂2−2〜2−7を得た。
(結着樹脂2−8の製造)
テレフタル酸 :400g
トリメリット酸 :400g
ドデセニルコハク酸 :500g
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 :700g
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 :300g
上記ポリエステルモノマーを表1の例示化合物(3)と共に4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着して窒素雰囲気下にて130℃の温度で撹拌しつつ、ビニル系重合モノマー(スチレン472g、2−エチルヘキシルアクリレート103g、ジビニルベンゼン0.1g)を混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。130℃に保持したまま3時間熟成し、230℃に昇温して反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して、結着樹脂2−8を得た。
(結着樹脂2−9、2−10、2−16の製造)
上記結着樹脂2−8の製造方法において、表11に示すようなモノマー及びワックスに変更し、また軟化点を確認しながら反応を行い、表11に示す軟化点となった時点で反応を終了したこと以外は同様にして、結着樹脂2−9、2−10、2−16を得た。
(結着樹脂2−11〜2−15の製造)
上記結着樹脂2−1の製造方法において、モノマー、ワックス及びアルキルカルボン酸の錫化合物の種類及び量を表11に示すように変更し、また軟化点を確認しながら反応を行い、表11に示す軟化点となった時点で反応を終了したこと以外は同様にして、結着樹脂2−11〜15を得た。
(2)離型剤の製造例
(ワックス(1)の製造)
ポリエチレンワックスPOLYWAX1000(東洋ペトロライト社製)から分留法によって、融点115℃、GPC測定によるMw/Mn=1.31のワックス(1)を得た。
(ワックス(2)の製造)
石炭系フィッシャートロプシュワックスC105(サゾール社製)から分留法によって、融点100℃、GPC測定によるMw/Mn=1.45のワックス(2)を得た。
(ワックス(3)、(4)の製造)
パラフィンワックスHNP−10及びHNP−5(日本精鑞社製)から分留法によって、それぞれ融点75℃と60℃、GPC測定によるMw/Mn=1.22、1.00のワックス(3)、(4)を得た。
(ワックス(5)の製造)
ユニリンワックスES844P(東洋ペトロライト社製)から分留法によって、融点110℃、GPC測定によるMw/Mn=1.75のワックス(5)を得た。
(ワックス(6)の製造)
アルコールワックスユーメックス1210(三洋化成社製)から分留法によって、融点140℃、GPC測定によるMw/Mn=2.33のワックス(6)を得た。
<実施例2−1>
(トナー2−1の製造)
結着樹脂2−1(表11): 105質量部
磁性体2−3(表13): 90質量部
3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸Al化合物: 0.5質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで混合した後、120℃に加熱された二軸式エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混合物をハンマーミルで粗粉砕した。粗粉砕物をジェットミルで微粉砕し、得られた微粉末を風力分級機で分級し、磁性トナー粒子を得た。
この磁性トナー粒子100質量部に、疎水性オイル処理シリカ(BET140m2/g)1.0質量部をヘンシェルミキサーにて外部添加し、重量平均粒径7.0μmのトナー2−1を得た。
次に得られたトナー2−1について以下の評価を行った。評価結果を表15に示す。
A)トナー耐久試験
キヤノン製デジタル複写機iR3300を用いて、高温高湿下(30℃,80%)、画像印字比率20%の画像をA4サイズで5万枚の耐久画出し試験を行った。耐久前後でのスリーブ上のトナー帯電量変化を評価した。さらに、前記耐久画出し試験後、20万枚まで画出しを進め、耐久後の現像スリーブ汚染及び定着ローラー汚染を評価した。
(スリーブ上トナー帯電性)
スリーブ上に担持されたトナーを金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集する。その際、金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Qを測定し、また捕集されたトナー質量Mを測定する。測定された電荷量Qとトナー質量Mから単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)を計算し、トナー帯電量(Q/M)とした。
(スリーブ汚染)
20万枚耐久後、現像スリーブ上のトナーコートを掃除機及びエアブローにより除去し、目視にてスリーブ汚染を評価した。また、画像への影響もあわせて評価した。
A:スリーブ上、画像上ともに問題なし。
B:スリーブ上の非画像部に若干の汚染があるが、画像上問題なし。
C:スリーブ上端部に汚染があるが、画像上問題なし。
D:スリーブ上に明らかに汚染があり、画像端部に濃度薄などが発生する。
E:スリーブ上に明らかに汚染があり、画像上全面に濃度薄などが発生する。
(定着ローラー汚染)
20万枚耐久後、定着ローラー上をテーピングして付着したトナー量を目視にて比較評価した。また、耐久中の画像裏面へのトナー付着についてもあわせて評価した。
A:定着ローラー、画像上ともに問題なし。
B:定着ローラー上に若干トナー付着があるが、画像上問題なし。
C:定着ローラー上にトナー付着があり、耐久後半で画像裏面に若干トナー付着(数百枚に1枚位の割合)があるが実用上問題なし。
D:定着ローラー上にトナー付着があり、耐久後半で画像裏面にトナー付着(数十枚に1枚位の割合)がある。
E:定着ローラー上にトナー付着があり、耐久後半で毎画像に裏面にスジ状のトナー付着がある。
B)低温定着性試験
キヤノン製デジタル複写機iR3300を用いて未定着画像を得た後、外部定着器(iR3300の定着器を取り出し、外部駆動及び定着器の温度制御装置をつけ、プロセススピードを230mm/secに改造したもの)を用いて、定着温度を変えて定着を行った。得られた画像上を4900N/m2(50g/cm2)の荷重をかけて5回摺擦した時の摺擦前後の濃度を測定することにより濃度低下率を測定した。その濃度低下率が20%以下となる温度を最低定着温度とし、以下の評価基準で低温定着性を評価した。
A:最低定着温度が145℃未満。
B:最低定着温度が145〜150℃未満。
C:最低定着温度が150〜155℃未満。
D:最低定着温度が155〜160℃未満。
E:最低定着温度が160℃以上。
<実施例2−4、2−5、2−7〜2−10、参考例2−1〜2−3>
(トナー2−2〜2−10の製造)
上記トナー2−1の製造方法において、表14に示した原料に変更したこと以外は同様にして、トナー2−2〜2−10を得た。また実施例2−1と同様な評価を行った。評価結果を表15に示す。
<比較例2−1〜2−6>
(比較用トナー2−1〜2−6の製造)
上記トナー2−1の製造方法において、表14に示した原料に変更したこと以外は同様にして、比較用トナー2−1〜2−6を得た。また実施例2−1と同様な評価を行った。評価結果を表15に示す。