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JP4207165B2 - 鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼およびその製造方法 Download PDF

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JP4207165B2 JP2006036573A JP2006036573A JP4207165B2 JP 4207165 B2 JP4207165 B2 JP 4207165B2 JP 2006036573 A JP2006036573 A JP 2006036573A JP 2006036573 A JP2006036573 A JP 2006036573A JP 4207165 B2 JP4207165 B2 JP 4207165B2
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Description

本発明は、耐食性に優れたステンレス鋼の鏡面性、及び硬さを向上させたことで、特に光ディスクや光学レンズ等の、極めて高い表面精度を要求されるプラスチックやガラス部品の超鏡面成形に使用する耐腐食摩耗金型等に最適なステンレス鋼と、その製造方法に関するものである。
従来、CD、DVDメディア等の光ディスク樹脂成形の分野、光学レンズ用樹脂又はガラス成形の分野、液晶導光板等の光学部品用樹脂成形の分野には、JIS鋼種のSUS420J2又はそれに類似するステンレス鋼を切削加工及び研削加工した金型が用いられていた。プラスチックの光学部品など極めて精度の要求される場合には、上記SUS420J2相当鋼にNi−Pなどのアモルファスめっきを行ったのち、ダイヤモンドバイトによる切削加工を行って成形面に仕上げる場合もあった。不純物の少ない銅合金を同様に切削加工して仕上げる場合もあった。
一方、耐食性と硬度を両立させる材料として、SKD11系やSUS440C系がある。そして、例えばCが0.08質量%(以下、%と示す)以下でSiを2.0〜5.0%、Crを6.0〜10.0%含む析出硬化系ステンレスが提案されている。そして、このステンレス鋼に、さらに適量のMn,Ni,Mo,Cu,Nb,Ta,Ti,Coを添加して、高硬度の達成を目的とした改良鋼が提案されている(特許文献1)。
特開2001−107194号公報
上述した光ディスクや光学部品成形用の金型のうち、SUS420J2からなるものは耐食性と高硬度の点である程度のレベルが得られる点では有利であるものの、達成される硬度はせいぜい55HRCが限界であり、使用中の成形ショットを重ねた際の耐摩耗性が不十分であるという問題があった。Ni−Pめっきや銅合金を適用したものでは、更に硬さが低く、長期安定成形に不利となる。
また、SUS420J2レベルの耐食性は、水冷を要する光ディスク成形用や、使用中に腐食性ガスを発生するようなプラスチック成形用といった金型の場合だと、長期量産する為に十分とはいえない問題もあった。更に、SUS420J2は組織中にミクロンオーダーの大きなクロム炭化物析出を伴う為、成形面には厳密な平滑鏡面が得られにくい問題点もあった。この問題は、サブナノオーダーの平均面粗さを目指す次世代高密度光ディスクを実用化する上で大きな問題となる。
一方、高硬度(58HRC以上)と耐食性を求められる用途に従来使用されているSKD11系やSUS440C系の溶製鋼、または粉末鋼においても、水冷を要する光ディスク成形用や、使用中に腐食性ガスを発生するようなプラスチック成形用といった金型において、長期量産する為に耐食性は十分ではなかった。また、これらの材料は硬質の合金炭化物を含んでいるため、超鏡面仕上性となると、改良の余地がある。
そして、特許文献1に記載の改良鋼は、高硬度と高耐食性の両立という点で従来鋼より優れた材料ではあるが、その達成される最高硬さは、径20mmの丸棒という小さな鋼片を用いての、しかも固溶化処理時の冷却条件には高硬度化に有利な水冷(急冷)を採用してでさえ、その後の時効処理で58HRCの辺りが限界である。実際に使用される光ディスクや光学部品成形用の金型となれば、このような小さな鋼片では対応が難しく、しかも固溶化処理時の冷却条件も熱処理歪を抑制するための空冷等の徐冷が望ましい。特許文献1の改良鋼の場合、実際に想定される上記の実金型条件を適用すれば、それこそ達成硬さは58HRCにも満たない。
加えて、特許文献1に記載の改良鋼が達成する鏡面性は、従来鋼よりは優れてはいるものの、組織中に炭化物より軟らかいラーベス相が多く析出している。高硬度の組織を得ることは、優れた鏡面性の達成に重要な要件であることから、光ディスクや光学部品成形用の超鏡面仕上性が要求される分野において、特許文献1の改良鋼には更なる改良の余地がある。
本発明の目的は、上記の課題を解決した、特には極めて高い表面精度が要求されるプラスチックまたはガラス部品を成形する特殊な金型等の、工具や部品分野に最適な、鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼およびその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記の課題を検討した結果、耐食性と高硬度、そして他の金型用途には類のない極めて平滑鏡面の成形面こそが求められる、上記のような特殊な金型材料にも適用するためにこそ、Mo量の規制、及び最適量のSi量が添加されたステンレス鋼が最適であることを突きとめた。そして、固溶化処理の冷却に空冷といった徐冷条件を適用しても59HRC以上、それこそ水冷といった急冷条件であれば61HRCもの高硬さが達成できる成分組成を見いだすと共に、これらのステンレス鋼こそは、消耗電極式再溶解法により得ることが、本発明の効果を発揮するために最適であることも見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、質量%でC:0.01%以下、Si:1.5〜3.0%未満、Mn:3.0%以下、Cr:6.0〜12.0%、Ni:4.0〜10.0%、Co:10.0%以下、Cu:6.0%以下、Ti:0.5〜3.0%、Al:0.07〜2.0%を含有し、Moは1.0%以下に、Nは0.01%以下に規制され、残部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼である。好ましくはSi:2.0〜3.0%未満あるいはさらにMoは0.5%以下に規制される。1.0%以下のNbあるいはさらに1.0%以下のTaまたは、0.1%以下のZrを含有してもよい。更に好ましくは、硬さが59HRC以上のステンレス鋼である。
そして本発明は、消耗電極式再溶解法を行うことにより得た、質量%でC:0.01%以下、Si:1.5〜3.0%未満、Mn:3.0%以下、Cr:6.0〜12.0%、Ni:4.0〜10.0%、Co:10.0%以下、Cu:6.0%以下、Ti:0.5〜3.0%、Al:0.07〜2.0%を含有し、Moは1.0%以下に、Nは0.01%以下に規制され、残部はFeおよび不可避的不純物のステンレス鋼を、59HRC以上の硬さに調質することを特徴とする鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼の製造方法である。ステンレス鋼は1.0%以下のNbあるいはさらに1.0%以下のTaまたは、0.1%以下のZrを含有してもよい。上記の調質に好ましくは、1000〜1150℃の固溶化処理を行い、400〜550℃の時効処理を行うものである。
本発明によれば、耐食性に優れる高硬度ステンレス鋼の超鏡面仕上性と耐摩耗性を飛躍的に改善することができることから、特に金型に適用することで、光ディスクや光学レンズ等の極めて表面精度を要求されるプラスチックまたはガラス部品の長期安定成形の実用化にとって欠くことのできない技術となる。
上述したように、本発明の重要な特徴は、優れた耐食性に加えて、最適量のSi量を添加したステンレス鋼とし、更には他の構成元素の種類および最適量、特にはMoの作用効果を見直したステンレス鋼とすることで、高硬度と超鏡面仕上性、そして耐摩耗性をも大きく改善できたところ、更には、このステンレス鋼に最適な製造方法をも見いだしたところにある。
まず、本発明の成分組成について説明する。
ステンレス鋼の高硬度化手法としては、その組織中への硬質炭化物の析出作用を採用すると、超鏡面性が得られ難いことは上述の通りである。そこで、本発明のステンレス鋼では、その組織中には炭化物よりは適度に軟らかい金属間化合物を微細に析出させ、炭化物は低減かつ微細にすることにより、超鏡面性及び高硬度を得るものである。このためにステンレス鋼中のC量の調整は重要であり、Cを0.01%以下に管理することによって鋼組織中の硬質炭化物を低減しかつ、析出サイズをサブミクロンオーダーに抑え、超鏡面仕上性を実現することができる。好ましくは0.01%未満である。
Siは、本発明のステンレス鋼に強度を与える主要な元素である。そして、本発明の想定する金型用途にも適用するためには重要な、鏡面仕上性を実現するための根幹元素である。即ち、従来の炭化物による析出強化機構に頼らずに、Cr、Ni、Co、Tiと共にG相を形成するという析出強化機構に寄与することで、優れた鏡面仕上性を得るものである。また、マトリックスに固溶したSiは耐食性(特に耐硫酸)を高める効果もある。1.5%未満ではその効果が不十分であるが、3.0%以上であると数十ミクロンオーダーの大きなラーベス相が多く析出して、それ自体が鏡面仕上性を劣化させると共に、Siや他の強化元素もラーベス相にとられるため、過剰に添加しても効果はない。よって、本発明では1.5〜3.0%未満と規定した。好ましくは2.0〜3.0%未満である。
Mnは、鋼の脱酸剤として働き、0.05%以上の含有が好ましいが、多すぎると組織中のオーステナイト量が増加しすぎて、所定の硬度が得られにくくなる。よって、Mnは3.0%以下とする。好ましくは0.8%以下である。
Crは、ステンレス鋼の耐食性を確保するための不可欠な成分であって、本発明の金型用途をも考慮すれば、6.0%未満では耐食性が不十分である。また、Si、Ni、Co、Tiと共にG相を形成し、析出強化に寄与する。しかし、12.0%を超えると所定の硬度、望ましくは59HRC以上の硬度が得られにくくなるため為、Crは6.0〜12.0%とした。
Niは、鋼に耐食性を付与するとともに、Crとのバランスで鋼の相変態を望ましい形態に、すなわち固溶化熱処理冷却時にオーステナイト単相から低炭素マルテンサイト単相へと変態させる作用を有する元素である。そして、Si、Cr、Co、Tiと共にG相を形成し、析出強化に寄与する。しかし、多過ぎるとオーステナイト量が増大しすぎて、所定の硬度が得られにくくなる。よって、本発明のNiは、4.0〜10.0%とする。
Coは、耐食性の改善に加えて、Si、Cr、Ni、Tiと共にG相を形成し、析出強化に寄与する重要な元素である。しかし、過多の含有は機械加工性を損なうので、10.0%以下とする。
Cuは、固溶化処理後の時効の際には、析出硬化に寄与すると共に、耐食性も向上させる。しかしながら、多くの含有は熱間加工性を損なうので、規制管理の重要な元素でもある。本発明では6.0%以下とするが、実金型に要する素材寸法に対応し得るためにも、望ましくは2.0%以下である。
Tiは、固溶化および時効処理による硬さ調質の際の、時効硬化に寄与する主要な元素の一つである。即ち、Si、Cr、Ni、Coと共にG相を形成し、析出強化に寄与する重要な元素である。従って、0.5%以上の含有とする。しかし、多く含有すると靭性を低下させ、更に、数十ミクロンオーダーの大きなラーベス相が多くなり、それ自体が鏡面仕上性を劣化させると共に、Tiや他の強化元素もラーベス相にとられるため、過剰に添加しても効果はない。さらに、過剰のTiは炭化物や窒化物等を形成し、鏡面仕上性に悪影響を及ぼす。よって、本発明では0.5〜3.0%とする。望ましくは1.0〜2.5%である。
Alは、鋼の脱酸剤として働く元素である。すなわち、本発明が採用する強化機構は硬質炭化物の導入に頼るものではなく、逆に炭化物は鏡面仕上性に悪影響を及ぼすことから低減する必要がある為、Cは0.01%以下、望ましくは0.01%未満にまで規制する。従って、Cによる脱酸が行えないため、Alによる脱酸は有効である。しかし、多くのAl含有は靭性を低下させるので、本発明のAlは0.07〜2.0%とする。望ましくは0.07〜0.5%である。
加えて、Alは、一方では、AlやAl/Mg複合酸化物の形成により鋼としての鏡面仕上性を劣化させることが懸念されるので、例えば脱酸後には、溶湯からは極力除去することが望ましい。または、消耗電極式再溶解法を積極的に導入することで、Al脱酸自体を省略することもできる。
Moは、耐食性を向上させると同時に、固溶化および時効処理による硬さ調質の際の時効硬化に寄与するものとして、従来添加のされてきた元素である。しかし、Moを添加するに伴い、数十ミクロンオーダーの大きなラーベス相が多くなり、これは鏡面仕上性を劣化させる。そして、Moに加え、他の強化元素もラーベス相にとられることから、これは高硬度化に悪影響を及ぼすこととなる。よって、本発明では、Moは1.0%以下に規制することこそが重要であって、望ましくは0.5%以下、さらに望ましくは0.4%未満に規制する。
Nは、Ti等と窒化物、炭窒化物を形成し、鏡面仕上性に悪影響を及ぼすことから、0.01%以下に規制する必要がある。望ましくは0.005%以下、さらに望ましくは0.003%以下に規制する。
そして、本発明の成分組成において特に重要となるのが、含有するSiは低領域で管理すると共に、Moは規制するという、SiとMoの複合管理である。つまり、Moの作用効果を見直して、Moは1.0%以下に規制すること、及び1.5〜3.0%未満という最適量のSi量領域を突きとめることにより、大きなラーベス相の析出を抑えることができる。そして、固溶化処理の冷却条件に水冷や油冷を適用しなくとも、空冷条件で十分な使用硬さ、具体的には59HRC以上という高硬さを達成でき、問題の熱処理歪も小さくすることができる。そして、当然に水冷や油冷を適用してもよく、この場合であれば、61HRCにも達する、更なる高硬さを達成できる。
また、本発明の上記ステンレス鋼は、必要に応じて、Nbおよび/またはTaを含んでもよい。Nbは、ステンレス鋼の時効硬さを上昇させる効果があるが、過多の含有だと数十ミクロンオーダーの大きなラーベス相が多くなり、やはり鏡面仕上性が劣化し、Nbや他の強化元素をとられるため、過剰に添加しても効果はない。よって、添加あるいは含有するとしても1.0%以下が望ましい。更に望ましくは0.5%以下である。なお、上記の効果を得るにあたっては、0.1%以上の含有が望ましい。
Taも、Nb同様に、ステンレス鋼の時効硬さを上昇させる効果があるが、やはり過多の含有は鏡面仕上性に悪影響を生じる。よって、添加あるいは含有するとしても1.0%以下が望ましい。更に望ましくは0.5%以下である。なお、上記の効果を得るにあたっては、0.1%以上の含有が望ましい。
あるいはさらに、本発明のステンレス鋼は、必要に応じて、Zrを含んでもよい。Zrは、鏡面に仕上げた時にピンホールの原因となるAlやAl/Mg複合酸化物をZrOに置換することによってピンホールを発生しないようにする効果があるが、過多の含有の場合、数十ミクロンオーダーの大きなラーベス相やZr系介在物が多くなり、やはり鏡面仕上性が劣化する。よって、添加あるいは含有するとしても0.1%以下が望ましい。更に望ましくは0.08%以下であるが、上記の効果を得るにあたっては、0.01%以上の含有が望ましい。
更に上述したように、本発明のステンレス鋼は、その硬さが59HRC以上のものを採用することが望ましく、そしてこれを達成しているところにも重要な特徴がある。59HRC以上の硬度は鏡面磨きの粗研磨時にキズをつけ難くし、鏡面仕上げを容易にすると同時に耐摩耗性をも改善できるものである。そして、このような高硬度を達成するためにも、上記のステンレス鋼の成分組成は重要な要素である。よって、本発明のステンレス鋼をプラスチックやガラス部品等の、極めて高い表面精度が要求される製品の成形用金型に適用すれば、該硬さに調質し、切削加工又は研削・研磨加工やラッピング加工等の機械加工を施した成形面は、優れた超超鏡面仕上性と成形時の耐摩耗性を有する。
そして、本発明のステンレス鋼は、それを構成する上記の成分組成に加えて、例えばそれが消耗電極式再溶解法により得られたものであることが望ましい。すなわち、真空アーク再溶解法(VAR)やエレクトロスラグ再溶解法(ESR)といった消耗電極式再溶解法を行うことにより得られた本発明のステンレス鋼は、それを機械加工する際には、鏡面仕上げ時のピンホール発生要因となるアルミナ等の非金属介在物が低減されており、より安定した超鏡面仕上性を実現できる。消耗電極式再溶解法は1回又は複数回行ってもよく、それにより得られた鋼塊には鍛造や圧延等による熱間加工を行ってもよい。
上記で得られた、本発明の成分組成の鋼塊を、鏡面仕上性に優れた59HRC以上の高硬度のステンレス鋼に調質するためには、1000〜1150℃の固溶化処理を行った後、400〜550℃の時効処理を行うことが望ましい。1000℃未満の固溶化処理ではラーベス相が固溶せず、鏡面仕上性、及び高硬度化に悪影響を及ぼし、1150℃を超える固溶化処理では、結晶粒が粗大化し、靭性が低下する。また、400℃未満の時効処理では、析出硬化相が析出しない為、59HRC以上の硬さが得られ難く、550℃を超える時効処理では、過時効となり、やはり59HRC以上の硬さが得られ難い。なお、本発明の調質においては、その固溶化処理後、サブゼロ処理を行ってから時効処理を行ってもよい。
本発明のステンレス鋼の効果を示すにあたり、本実施例1では、固溶化処理の冷却条件に従来適用されてきた水冷を適用した場合の評価をする。まず真空誘導炉溶解(試料No.4は真空アーク再溶解)によって得た鋼塊を熱間加工して、表1に示す化学成分(mass%)の、残部Feおよび不可避的不純物でなる試料(寸法は15×15×30mm)を準備した。そして、これら試料に固溶化処理(1100℃)、サブゼロ処理(−78℃)、時効処理(480℃)の調質を行って、達成される硬さを評価した。なお、試料No.10は、真空アーク再溶解によって得た鋼塊を径200mmに熱間加工し、固溶化処理(1100℃)、時効処理(490℃)の調質を行った、大型の試料である。この試料は後述の実施例2,3での評価に用いる。
ここで、上記の固溶化処理の際の冷却は、水冷によるものとは別に、半冷15分の冷却速度に調整しても行った。半冷とは、固溶化処理温度から(固溶化処理温度+室温)の半分の温度まで冷却するのに要する時間のことである。そして、本実施例1においては、本発明のステンレス鋼が既述の実金型に適用された場合の径300mmの鋼材が油冷される時の冷却速度に相当する半冷15分の条件も適用した。得られた硬さを表2に示す。また、試料No.1,2,3,12については、その半冷15分を適用したものにつき、時効処理後のミクロ組織をそれぞれ図1〜4に示す。
そして、硬さを調整した各試料の鏡面仕上性を評価するために、光ディスク用金型の成形面加工に適用されている鏡面研磨を想定した条件(アルミナ艶出し仕上げ)での鏡面加工を施し、加工後面の鏡面度を評価した。鏡面度の評価は、良好な鏡面度を呈しているSUS440C相当粉末鋼(59.8HRC)の鏡面度(顕微鏡拡大写真[×900倍]を図5に示す)を基準“○”とすることで、それより優れた鏡面度を呈したものを“◎”(図6)、若干の劣りが見られるが、使用上差支えのないものを“△”(図7)とした。なお、今回の準備試料においては、使用に耐え難い程の、鏡面度に劣る試料は無かった。結果を表3に示す。
表1の試料No.1〜9は、本発明を満たす鋼であり、試料No.5,6はそれぞれNb,Taを添加したものである。これらの試料は、Siの低域管理とMoの規制による複合効果によって、固溶化処理の冷却条件が半冷15分においても60HRC以上、それこそ水冷においては、試料No.2,3,4で約61HRCの硬さにまで達し、優れた高硬度特性が得られた。さらに、試料No.9の固溶化処理の冷却条件が水冷のものにおいては、61.4HRCもの硬さが得られた。また、Nb,Taを添加した試料No.5,6でも、固溶化処理の温度を1150℃で行うと、試料No.2,3,4と同等の硬さが得られる。そして、本発明を満たす鋼は、図1,2,3に試料No.1,2,3のミクロ組織を示す通りの、本発明のSiとMoの同時管理を採用したことによって、大きなラーベス相の析出がほぼ抑制されており、表3に示す通り、超鏡面仕上性にも優れた結果が得られた。
試料No.12は、SiおよびMoの高いものであるが、固溶化処理の冷却条件が半冷15分においては57HRC程度であり、水冷においても59HRCの硬さを達成できなかった。さらに、固溶化処理温度を1150℃に上げて、水冷を行った場合でも、59HRCに到達するのが限界である。鏡面仕上性についてはSUS420J2等の従来鋼よりは優れているものの、ミクロ組織を図4に示す通り、数十ミクロンオーダーの大きなラーベス相が数多く析出しており、表3に示す通り、超鏡面仕上性を阻害する。
試料No.13,14は、試料No.12のSiは低く管理したものの、Moは依然として高いものである。試料No.13はSiが低い上にTiまでが比較的少ないため、固溶化処理の冷却条件が水冷においても硬さが57HRCに満たない。試料No.14は試料No.13にTiを増やしたことによって、固溶化処理の冷却条件が半冷15分において59HRCを満足し、水冷においては60HRCをも達成でき、硬度においては実金型への適用に十分満足する結果が得られた。しかし、鏡面仕上性については、Siを少なく制御したことによって、試料No.12よりは大きなラーベス相の析出を抑制することができたが、やはり多量のMoを含有し、超鏡面仕上性を満足するためには不十分である。
次に本実施例2では、固溶化処理の冷却条件に空冷を適用した場合の評価をする。これは、実金型の製造において熱処理歪を抑えるための、有効な冷却条件である。表1の試料No.2及びNo.3において、固溶化処理(1100℃)を行った後、時効処理(480℃)を行った。サブゼロ処理は行わなかった。そして、固溶化処理の冷却条件は、上記の通りの、実金型(径300mm)での油冷を想定した半冷15分のものに加えて、同じく実金型に適用される径200mmの鋼材が空冷される時の、遅い冷却速度に相当する半冷70分の条件を適用した。それぞれの場合の硬さを表4に示す。そして、実際に径200mmの寸法を有する試料No.10については、その固溶化処理の冷却条件に空冷を適用したことから、半冷70分相当の冷却速度である。
そして、硬さを調整した各試料の鏡面仕上性を評価するために、実施例1に同様の鏡面加工を施し、加工後面の鏡面度を評価した。鏡面度の評価は、実施例1においてのSUS440C相当粉末鋼(59.8HRC)の鏡面度を基準“○”としての、実施例1に同じ評価方法による。結果を表5に示す。
表2,4より、本発明を満たす試料No.2,3は、サブゼロ処理をしなくても59HRC以上の硬さが達成できる結果が得られた。さらに、実金型を想定した時の固溶化処理における、空冷以下の冷却速度(半冷70分)であっても、59HRC以上の硬さが達成できる結果が得られた。そして、これらのミクロ組織であっても、図1〜3の試料No.1〜3に同様の、数十ミクロンオーダーのラーベス相の析出は抑えられており、表5に示す通り、超鏡面仕上性をも達成されたものである。試料No.10は、実際に空冷を適用したものであるが、60HRC以上の硬さが得られた。そして、ミクロ組織についても、数十ミクロンオーダーのラーベス相の析出は抑えられており、表5に示す通り、超鏡面仕上性をも達成した。
本実施例3では、本発明を満たす試料No.10(60.5HRC)、及び比較材として、硬さと鏡面仕上性の良いSUS440C相当粉末鋼(59.9HRC)について耐食性の評価を行った。耐食性の評価はJIS−Z−2371の塩水噴霧試験法、及び試料(径10mm、長さ20mm)を50℃、1質量%の酸(塩酸、硫酸、硝酸)200mlに24時間浸漬し、その前後の重量減少分を腐食減量とする腐食減量テストを行った。本実施例3では、試験片有効面を360mmとしたレイティングナンバ法(JIS−Z−2371−付属書1;試験片有効面において、腐食欠陥の寸法及び数を0〜10の数字で評価する方法。腐食面積率50%を超えるものを0、全く腐食していないものを10とする。)を用いて評価した塩水噴霧試験の結果を表6に、腐食減量テストの結果を表7に示す。
表6の塩水噴霧試験結果では、SUS440C相当粉末鋼は、塩水噴霧5時間後の腐食面積率が25%を超えており、24時間以降においては50%を超えている。しかし、本発明の試料No.10は、240時間後においても全く腐食しておらず、優れた耐食性をも有することが分かる。表7の腐食減量テストでは、本発明の試料No.10は、SUS440C相当粉末鋼と比較し、各酸に対して明らかに耐食性があることが分かる。
高度の耐食性、鏡面性、及び高硬度を有する本発明のステンレス鋼は、光ディスクや光学レンズの成形用金型に加えて、同様の特性を必要とするガラス繊維等の強化剤を含有するPPS樹脂など、所謂スーパーエンプラの成形用金型としても適用できる。また、刃物や錠剤パンチ、精密機械部品等にも適用できる。
本発明鋼のミクロ組織の一例を示す顕微鏡写真である。 本発明鋼のミクロ組織の一例を示す顕微鏡写真である。 本発明鋼のミクロ組織の一例を示す顕微鏡写真である。 比較鋼のミクロ組織を示す顕微鏡写真である。 SUS440C相当粉末鋼の鏡面加工面(評価○)を示す顕微鏡写真である。 本発明鋼の鏡面加工面(評価◎)の一例を示す顕微鏡写真である。 比較鋼の鏡面加工面(評価△)の一例を示す顕微鏡写真である。

Claims (12)

  1. 質量%でC:0.01%以下、Si:1.5〜3.0%未満、Mn:3.0%以下、Cr:6.0〜12.0%、Ni:4.0〜10.0%、Co:10.0%以下、Cu:6.0%以下、Ti:0.5〜3.0%、Al:0.07〜2.0%を含有し、Moは1.0%以下に、Nは0.01%以下に規制され、残部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼。
  2. 質量%でSi:2.0〜3.0%未満であることを特徴とする請求項1に記載の鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼。
  3. 質量%でMoを0.5%以下に規制したことを特徴とする請求項1または2に記載の鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼。
  4. 質量%でNb:1.0%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼。
  5. 質量%でTa:1.0%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼。
  6. 質量%でZr:0.1%以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼。
  7. 硬さが59HRC以上であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼。
  8. 消耗電極式再溶解法を行うことにより得た、質量%でC:0.01%以下、Si:1.5〜3.0%未満、Mn:3.0%以下、Cr:6.0〜12.0%、Ni:4.0〜10.0%、Co:10.0%以下、Cu:6.0%以下、Ti:0.5〜3.0%、Al:0.07〜2.0%を含有し、Moは1.0%以下に、Nは0.01%以下に規制され、残部はFeおよび不可避的不純物のステンレス鋼を、59HRC以上の硬さに調質することを特徴とする鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼の製造方法。
  9. ステンレス鋼は、質量%でNb:1.0%以下であることを特徴とする請求項8に記載の鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼の製造方法。
  10. ステンレス鋼は、質量%でTa:1.0%以下であることを特徴とする請求項8または9に記載の鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼の製造方法。
  11. ステンレス鋼は、質量%でZr:0.1%以下であることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼の製造方法。
  12. 調質は、1000〜1150℃の固溶化処理を行い、400〜550℃の時効処理を行うことを特徴とする請求項8ないし11のいずれかに記載の鏡面仕上性に優れた高硬度ステンレス鋼の製造方法。
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