JP4206598B2 - 質量分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は質量分析装置に関し、更に詳しくは、電子衝撃イオン化(EI)や化学イオン化(CI)等の熱電子を利用するイオン化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
質量分析装置では、気体試料をイオン化するために電子衝撃イオン化(EI)や化学イオン化(CI)などの各種イオン化法によるイオン化装置が用いられる。例えば、EIでは、フィラメントに加熱電流を供給してフィラメントから熱電子を放出させると共に、該フィラメントとトラップ電極(電子コレクタ、ターゲット等とも呼ばれる)との間に適宜の電位差を生じさせて熱電子に運動エネルギを与える。これにより、フィラメントから放射された熱電子はトラップ電極に向けて飛行し、その途中のイオン化室内で熱電子が試料分子に接触すると、試料分子から電子が叩き出されて該試料分子は正イオンになる。通常、トラップ電極に捕捉される電子の数はフィラメントから放射された電子数に依存している。そこで、トラップ電極に到達した熱電子により流れるトラップ電流が所定値になるようにフィラメントに流す加熱電流をフィードバック制御することにより、フィラメントでの熱電子の発生量はほぼ一定になり、その結果、安定したイオン化が達成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような熱電子流を利用したイオン化においては、イオン化を行うためのイオン化室に対して、フィラメントとトラップ電極とが所定の位置に適切に装着されていないと、フィラメントに最大源の加熱電流を供給してもトラップ電流が所望値に達せず、上述したような加熱電流の制御を行うことができなくなる。そこで、従来の質量分析装置では、トラップ電流の大きさをモニタし、フィラメントを点灯して加熱電流のフィードバック制御を行った状態でトラップ電流が所定値に達しない場合には、異常状態であると判断して例えばエラーの表示を行うようにしている。
【0004】
上述したような加熱電流の制御が異常である原因としては、フィラメントやトラップ電極の取付位置のずれの他、フィラメントやトラップ電極とイオン化室との接触、或いはフィラメントの断線など、種々の原因が考え得る。しかしながら、上記のような従来の質量分析装置では、単にトラップ電流が正常でないことを検出できるのみであって、その異常の原因を特定することはできない。そのため、どのような異常であるのかを確認するには、真空状態に保たれた質量分析装置の真空チャンバ内を大気圧に戻し、その内部を目視で確認するという作業が必要であった。そのため、異常原因の確認作業や再調整の作業はたいへんに面倒なものであった。
【0005】
また、上記構成では、フィラメントに加熱電流を流さないと異常の有無の確認が行えないが、異常の状態に依っては、フィラメントに加熱電流を供給してフィードバック制御を行おうとすると、フィラメントや回路の一部に過大な電流が流れ、更なる故障の原因となるという恐れもあった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、フィラメントに電流を流す以前にフィラメントやトラップ電極の一部の異常を診断し、更にフィラメントに電流を流した状態ではより詳細な異常箇所の診断が行えるようなイオン化装置を備えた質量分析装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明は、真空室内に配設されたイオン化室と、該イオン化室内で気体分子をイオン化するための熱電子を発生するフィラメントと、該フィラメントとの間の電位差により熱電子を加速すると共に、イオン化室内を通過した該熱電子を捕集するトラップ電極とを含むイオン化装置を具備する質量分析装置において、該イオン化装置は、
a)前記トラップ電極に到達した熱電子により流れる電流であるトラップ電流を測定する第1電流測定手段と、
b)前記フィラメントから放射された熱電子により流れる全電流であるトータル電流を測定する第2電流測定手段と、
c)前記トラップ電流又はトータル電流が所定値になるように前記フィラメントに流す加熱電流を制御する電流制御手段と、
d)前記フィラメントに通電せずに前記第1及び第2電流測定手段によりそれぞれ電流値を測定し、その電流値に基づいて異常を判定する第1異常診断手段と、
e)前記電流制御手段により所定の制御を行っている状態で前記第1及び第2電流測定手段によりそれぞれ電流値を測定し、その電流値に基づいて異常を判定する第2異常診断手段と、
を備えることを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係る質量分析装置のイオン化装置において、トータル電流は、トラップ電流の他に、フィラメントから放射された熱電子がトラップ電極でなくイオン化室に接触することにより流れる電流を少なくとも含んでいる。従って、第2電流測定手段は、例えば、フィラメントをトラップ電極及びイオン化室に対して負の電位にバイアスするバイアス電源に流れる電流を測定することによりトータル電流を取得することができる。
【0009】
第1異常診断手段は、フィラメントに通電しない状態でトラップ電流とトータル電流とをそれぞれ測定する。この場合、フィラメントで熱電子は発生しないから、トラップ電流及びトータル電流は共に零である筈であるが、フィラメント及びトラップ電極にはイオン化室自体の電位(通常は接地電位)と異なる所定電位が印加されているので、フィラメント又はトラップ電極がイオン化室と接触しているとトラップ電流又はトータル電流が流れる。そこで、第1異常診断手段は、測定されたトラップ電流及びトータル電流が零でない場合には、トラップ電極又はフィラメントとイオン化室との接触による異常があるものと判断を下す。
【0010】
第2異常診断手段は、フィラメントに通電を行い電流制御手段により加熱電流の制御を行っている状態において、トラップ電流とトータル電流とをそれぞれ測定する。フィラメントに供給可能な加熱電流には上限があるが、正常な状態であれば、電流制御手段は、フィラメントにその上限値よりも小さな加熱電流を供給した状態でトラップ電流を略所定値に安定させることができる。しかしながら、フィラメントやトラップ電極の取付位置が大きくずれていると、フィラメントから放射された熱電子がトラップ電極に到達する割合が極端に少なくなり(つまり、多くの熱電子がイオン化室へと到達してしまう)、加熱電流を増加させてもトラップ電流があまり増加しない。そのため、フィラメントに上記加熱電流の上限値を流したとしてもトラップ電流は上記所定値に達しない。そこで、第2異常診断手段は、測定されたトラップ電流が例えばその所定値よりも小さいときにトラップ電極やフィラメントの取付位置のずれによる異常があると判断する。また、フィラメントが断線している場合には加熱電流が流れないから、熱電子は発生せず、トラップ電流、トータル電流は共に零になる。そこで、第2異常診断手段は、トラップ電流及びトータル電流が零である場合にはフィラメントが断線しているものと判断する。
【0011】
上記第1及び第2異常診断手段の診断結果に基づいて、表示又は音等で異常の有無や異常箇所をユーザに警告する構成としておけば、ユーザは異常箇所を認識して必要な処置を速やかにとることができる。また、第1異常診断手段により正常であると判断された場合にのみ第2異常診断手段による異常診断を実行する構成とすれば、フィラメント又はトラップ電極とイオン化室とが接触している場合に、フィラメントに通電を行わずに済む。
【0012】
【発明の効果】
本発明に係る質量分析装置によれば、イオン化装置の異常箇所やその原因が詳細に検知され、その結果がユーザに報知される。従って、ユーザは異常箇所を迅速に点検し、必要に応じて再調整や交換等の適切な作業に取り掛かることができる。そのため、このような作業を迅速に行うことができるので、分析作業の効率化が図れる。また、本発明に係る質量分析装置によれば、フィラメントを点灯させる以前に、フィラメントやトラップ電極とイオン化室との接触による異常を検知し、これをユーザに報知することができる。このような異常状態でフィラメントを点灯させると回路に過大電流が流れる恐れがあるが、フィラメントを点灯させることなくこれら異常を見つけることができるので、そのような過大電流による不所望の回路の損傷を回避することができる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明に係る質量分析装置の一実施例を図面を参照して説明する。図1は本実施例の質量分析装置におけるイオン化装置の要部の構成図である。
【0014】
真空雰囲気中に配設されるイオン化室1には試料導入管2が接続されており、ここからイオン化室1内へ気体試料分子が導入される。イオン化室1壁面に開口した熱電子照射孔3の外側には熱電子発生用のフィラメント4が配置されており、熱電子照射孔3に対面して開口した熱電子出射孔5の外側にはトラップ電極6が配置されている。フィラメント4には加熱電流源7が接続されており、加熱電流源7からフィラメント4に加熱電流が供給されるとフィラメント4の温度が上昇して熱電子が放出される。また、フィラメント4は第3バイアス電圧源12により、接地電位に対してV3なる負電位にバイアスされており、更に、この第3バイアス電圧源12に流れる電流(以下「トータル電流」と呼ぶ)Itを検出して電圧に変換する第2電流/電圧変換部13が接続されている。
【0015】
トラップ電極6は第1バイアス電圧源8によりV1なる正電位にバイアスされており、更に、この第1バイアス電圧源8に流れるトラップ電流Irを検出して電圧に変換する第1電流/電圧変換部9が接続されている。この第1電流/電圧変換部9の電圧出力は誤差増幅器10の一方の入力端子に入力されると共に、切替スイッチ14の端子aに与えられている。誤差増幅器10の他の入力端子は第2バイアス電圧源11により接地電位に対してV2なる正の電位にバイアスされており、誤差増幅器10はこの電位V2と第1電流/電圧変換部9の電圧出力との差に応じた電圧を出力し、制御電圧として加熱電流源7に与える。切替スイッチ14の端子bには第2電流/電圧変換部13の出力電圧が与えられており、切替スイッチ14により選択された電圧はA/D変換器15を介して制御部16へと入力される。制御部16はCPUなどを含むマイクロコンピュータ等により構成され、加熱電流源7や切替スイッチ14を制御すると共に、A/D変換器15から得られる信号を後述のように処理し、表示部17に対して所定の表示を行わせる。
【0016】
次いで、上記構成における熱電子流の制御について説明する。ここでは、例えば、第1、第2、第3バイアス電圧源8、11、12の電圧V1、V2、V3をそれぞれ10V、6V、70Vであるものとする。また、第1、第2電流/電圧変換部9、13の変換感度は共に1V/10μAであるものとし、トラップ電流Irの制御目標値は60μAであるとする。
【0017】
加熱電流源7から供給される加熱電流によりフィラメント4が加熱され熱電子(図1中のe−)が発生すると、フィラメント4とイオン化室1及びトラップ電極6との間の電位差によって熱電子はトラップ電極6に向けて加速される。試料導入管2からイオン化室1内部へ導入された気化試料分子(又は原子)にこの熱電子が接触すると試料分子から電子が飛び出し、該分子はイオン化される。熱電子がトラップ電極6に到達するとこれによりトラップ電流Irが流れ、このトラップ電流Irに応じた電圧が第1電流/電圧変換部9で発生し、誤差増幅器10の一方の入力端子にこの電圧が加わる。
【0018】
トラップ電流Irが60μAであるとき第1電流/電圧変換部9の出力電圧は6Vとなり、誤差増幅器10の両入力端子間の電圧差は零となり、これに対応して誤差増幅器10は所定電圧を出力する。トラップ電流Irが60μAよりも少なくなり第1電流/電圧変換部9の出力電圧が6Vよりも低下すると、それに応じて誤差増幅器10は出力電圧を増加させる。逆に、トラップ電流Irが60μAを越えて第1電流/電圧変換部9の出力電圧が6Vよりも上昇すると、それに応じて誤差増幅器10は出力電圧を減少させる。加熱電流源7はこのような電圧の増減に応じて電流値を調整し、誤差増幅器10の両入力端子間の電圧差が縮小するようにしている。而して、このようなフィードバック制御によって、予め決められたトラップ電流Ir(ここでは60μA)になるように熱電子の発生量が制御される。
【0019】
なお、フィラメント4から放出された熱電子の全量がトラップ電極6に到達し得るわけではなく、その一部はイオン化室1の壁面に衝突する。従って、トータル電流Itは、このようにフィラメント4から発してイオン化室1に到達する熱電子流により流れる電流と、トラップ電流Irとが加算されたものとなる。
【0020】
次に、本実施例によるイオン化装置における異常診断処理を図3のフローチャートを参照して説明する。この異常診断処理は、例えばイオン化室1、フィラメント4、トラップ電極6を含むイオン化装置の組立調整の後などに、質量分析装置で所定のキー操作が行われることにより実行するようにしてもよいし、或いは、質量分析装置の起動時に自動的に行うようにしてもよい。
【0021】
診断が開始されると、まず、制御部16は、フィラメント4を消灯した状態、つまり加熱電流源7からフィラメント4への加熱電流の供給を停止した状態で(ステップS1)、切替スイッチ14を端子a側へ倒し、第1電流/電圧変換部9の出力電圧、つまりトラップ電流Irに対応する出力電圧を測定する(ステップS2)。次に、制御部16は切替スイッチ14を端子b側へ倒し、第2電流/電圧変換部13の出力電圧、つまりトータル電流Itに対応する出力電圧を測定する(ステップS3)。そして、制御部16は測定されたトラップ電流Ir及びトータル電流It(に対応する電圧)に基づいて第1異常判定処理を実行する(ステップS4)。ここでの異常判定処理は次の通りである。
【0022】
いま、フィラメント4には加熱電流が流れていないから、当然、熱電子は発生せず、正常な状態であれば、トラップ電流Ir及びトータル電流Itは零になる筈である。しかしながら、フィラメント4がイオン化室1に接触しているという異常があると、フィラメント4はイオン化室1よりも電位が低いから、イオン化室1からフィラメント4に向かって電流が流れ込む。そのため、トータル電流Itは零よりも大きくなる。一方、トラップ電極6がイオン化室1に接触しているという異常があると、トラップ電極6はイオン化室1よりも電位が高いから、トラップ電極6からイオン化室1に向かって電流が流れ込む。そのため、トラップ電流Irは零よりも大きくなる。このようなことから、図2の上部に示したように、測定されたトラップ電流Ir及びトータル電流Itの値を判定し、フィラメント4とトラップ電極6の何れか一方又は両方がイオン化室1に接触しているか、原因不明の異常であるか、或いは正常であるかを判断する。
【0023】
この第1異常判定処理において正常でないと判断された場合には(ステップS5で「N」)、上述のような異常判定結果に従って予め定められたエラー状態表示を表示部17に行い、診断処理を終了する。従って、第1異常判定処理で異常が見つかった場合には、フィラメント4には加熱電流が供給されない。
【0024】
第1異常判定処理において正常であると判断された場合には(ステップS5で「Y」)、次に、制御部16は、加熱電流源7からフィラメント4への加熱電流の供給を行い、フィラメント4を点灯させる(ステップS6)。そして、切替スイッチ14を端子a側へ倒し、第1電流/電圧変換部9の出力電圧、つまりトラップ電流Irに対応する出力電圧を測定する(ステップS7)。次に、制御部16は切替スイッチ14を端子b側へ倒し、第2電流/電圧変換部13の出力電圧、つまりトータル電流Itに対応する出力電圧を測定する(ステップS8)。制御部16は測定されたトラップ電流Ir及びトータル電流It(に対応する電圧)に基づいて第2異常判定処理を実行する(ステップS9)。ここでの異常判定処理は次の通りである。
【0025】
この場合、フィラメント4で熱電子が発生し、上述したようにトラップ電流Irが所定値になるように加熱電流のフィードバック制御が実行される。従って、正常な状態であれば、トラップ電流Irは60μA又はそれにきわめて近い値となり、トータル電流Itは熱電子がイオン化室1に到達して流れる電流が該トラップ電流Irに加わるため、60μAよりも大きな値となる筈である。これに対し、フィラメント4やトラップ電極6の取付位置が適当でないため、フィラメント4で発生した熱電子のうちトラップ電極6に到達する熱電子の割合がかなり低い場合(換言すれば、イオン化室1へ到達する熱電子の割合が高い場合)、誤差増幅器10はトラップ電流Irが目標値まで増加するように出力電圧を増加させようとするが、加熱電流源7が最大限の加熱電流をフィラメント4に供給してもトラップ電流Irは目標値に達しない。従って、トラップ電流Irは目標値である60μAよりも小さくなる。更に、フィラメント4が断線していて加熱電流自体が流れない場合には、トラップ電流Irもトータル電流Itも零となる。
【0026】
このようなことから、制御部16は、図2の下部に記したように測定されたトラップ電流Ir及びトータル電流Itの値を判定し、フィラメント4やトラップ電極6の位置ずれであるか、フィラメント4が断線しているか、原因不明の異常であるか、或いは正常であるかを判断する。なお、実際には、熱電子流のフィードバック制御が正常であっても種々の誤差要因によりトラップ電流Irは60μAになるとは限らないから、60μAに対して所定の許容範囲を見込んでトラップ電流Irがその範囲に収まっており、トータル電流Itが60μAよりも所定値だけ大きな値よりも更に大きい場合に正常であると判断すればよい。
【0027】
この第2異常判定処理において正常でないと判断された場合には(ステップS10で「N」)、上述のような異常判定結果に従って予め定められたエラー状態表示を表示部17に行い(ステップS12)、診断処理を終了する。一方、正常であると判断された場合には(ステップS10で「Y」)、正常である旨の表示を表示部17に行い(ステップS11)、この診断処理を終了する。勿論、正常である場合には何も表示しない等の適宜の変形は容易に行える。
【0028】
このように、本実施例によるイオン化装置では、まずフィラメント4に通電しない状態でフィラメント4及びトラップ電極6とイオン化室1との接触の有無を診断することができ、また、そのときに正常であると判断された場合に、フィラメント4に通電を行ってフィラメント4及びトラップ電極6の位置ずれやフィラメント4の断線の有無を診断することができる。従って、フィラメント4又はトラップ電極6とイオン化室1とが接触しているときにフィラメント4への通電を避けることができるので、回路に不所望の過大電流が流れる恐れがなく、無用の損傷を回避することができる。また、従来の質量分析装置と異なり、不具合の原因、つまり異常箇所が具体的にユーザに指示されるので、指示された箇所を点検し、再調整又は交換等の適切な処置を迅速に行うことができる。
【0029】
なお、上記実施例は一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜修正や変更を行なえることは明らかである。
【0030】
例えば、上記実施例は電子衝撃イオン化法を用いたイオン化装置であるが、本発明は、熱電子を発生するためのフィラメントと、この熱電子を捕集するためのトラップ電極を備えたイオン化装置全般に、例えば化学イオン化法を用いたイオン化装置にも適用できる。但し、化学イオン化法によるイオン化装置の場合、一般にイオン化室1の密閉性が高いため、熱電子がイオン化室1を通り抜けてトラップ電極6に到達する割合がもともと小さい。そのため、上述したようなトラップ電流を用いたフィードバック制御は困難で、その代わりにトータル電流を利用したフィードバック制御を行うことになる。
【0031】
図4は、図1に示したイオン化装置の構成を化学イオン化装置に適用するように変形した例である。この構成では、第1電流/電圧変換部9と第2電流/電圧変換部13の出力電圧が切替スイッチ14により選択されて誤差増幅器10の一方の入力端子とA/D変換器15とに入力されるようになっている。従って、フィラメント4に加熱電流を供給した状態でトータル電流Itを測定する際には、このトータル電流Itが所定値になるように加熱電流がフィードバック制御され、上記実施例と同様の異常診断が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の質量分析装置の一実施例によるイオン化装置の要部の構成図。
【図2】 本実施例のイオン化装置における異常診断の判定内容を示す図。
【図3】 本実施例のイオン化装置における異常診断処理のフローチャート。
【図4】 本発明の質量分析装置の他の実施例によるイオン化装置の要部の構成図。
【符号の説明】
1…イオン化室
2…試料導入管
3…熱電子照射孔
4…フィラメント
5…熱電子出射孔
6…トラップ電極
7…加熱電流源
8、11、12…バイアス電圧源
9…第1電流/電圧変換部
10…誤差増幅器
13…第2電流/電圧変換部
14…切替スイッチ
15…A/D変換器
16…制御部
17…表示部
Claims (1)
- 真空室内に配設されたイオン化室と、該イオン化室内で気体分子をイオン化するための熱電子を発生するフィラメントと、該フィラメントとの間の電位差により熱電子を加速すると共に、イオン化室内を通過した該熱電子を捕集するトラップ電極とを含むイオン化装置を具備する質量分析装置において、該イオン化装置は、
a)前記トラップ電極に到達した熱電子により流れる電流であるトラップ電流を測定する第1電流測定手段と、
b)前記フィラメントから放射された熱電子により流れる全電流であるトータル電流を測定する第2電流測定手段と、
c)前記トラップ電流又はトータル電流が所定値になるように前記フィラメントに流す加熱電流を制御する電流制御手段と、
d)前記フィラメントに通電せずに前記第1及び第2電流測定手段によりそれぞれ電流値を測定し、その電流値に基づいて異常を判定する第1異常診断手段と、
e)前記電流制御手段により所定の制御を行っている状態で前記第1及び第2電流測定手段によりそれぞれ電流値を測定し、その電流値に基づいて異常を判定する第2異常診断手段と、
を備えることを特徴とする質量分析装置。
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