JP4204295B2 - 自動車足廻り部品用アルミニウム合金熱延板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
この発明は自動車の足廻り部品、例えばアッパーアーム、ロアーアーム等のアーム類、リンク類、あるいはサスペンションメンバー(サブフレーム)等に使用されるアルミニウム合金熱延板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の足廻り部品、例えばアッパーアーム、ロアーアーム等としては、従来は鋼材を使用するのが一般的であったが、最近では自動車車体を軽量化し、これにより排ガス量を低減して地球温暖化防止に努めたり、低燃費化して省エネルギ化を図るべく、足廻り部品についても鋼材に代えてアルミニウム材料を用いることが押し進められている。
【0003】
従来、自動車の足廻り部品にアルミニウム合金材料を使用した例としては、溶湯鍛造材を含む鍛造材を使用した場合がほとんどである。しかしながら溶湯鍛造材やその他の鍛造材は、一般に製造コストが高く、そのためこのような鍛造材を使用した場合、足廻り部品の高コスト化を招かざるを得なかったのが実情である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
アッパーアーム、ロアーアーム等の自動車の足廻り部品の軽量化を図るために鋼材に代えてアルミニウム材料を使用し、しかもコスト上昇を抑えるべく、本発明者等はアルミニウム合金の板材(圧延板)を自動車足廻り部品に使用することを検討している。このように板材をアッパーアーム、ロアーアーム等の自動車足廻り部品に使用する場合、板材としては通常は3〜6mm程度の厚板が必要となり、そこで熱間圧延板(熱延板)を用いることが考えられる。またこの場合、熱延板に対して曲げ加工で代表される成形加工を施すことが必須であり、したがってその熱延板には、成形性、特に曲げ加工性が優れていることが要求され、また強度も自動車足廻り部品として必要な程度に高いことが要求される。
【0005】
ところでアルミニウム合金のうちでもAl−Mg系合金は、強度と延性バランスに優れていて、良好な成形性を有するところから、従来から種々の用途に使用されており、自動車足廻り部品にも適用し得る可能性があると考えられる。またAl−Mg系合金の熱延板については、本発明者等は熱延後の焼鈍を省略しながらも、強度と延性のバランスに優れたものを得るプロセスを既に開発しており、このように焼鈍を省略したプロセスによれば、省エネルギ化を図ることができるばかりでなく、地球環境保護にもつながると考えられる。
【0006】
しかしながら従来のAl−Mg系合金の熱延板では、成形性、特に曲げ加工性が必ずしも充分ではなかったのが実情である。そこで本発明者等は、Al−Mg系合金のうちでも特に熱延板として自動車の足廻り部品に適した材料を得る方法を見出すべく、種々実験・検討を重ねた結果、この発明をなすに至った。
【0007】
したがってこの発明は、自動車足廻り部品用の材料として、軽量なアルミニウム合金を用い、かつコスト上昇を招かないように板材(熱延板)を用いることを前提とし、その場合に成形性、特に曲げ加工性および強度に優れていて自動車の足廻り部品に最適な性能を有するAl−Mg系合金熱延板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等が自動車足廻り部品に適したAl−Mg系合金熱延板の成分組成、製造プロセス、金属組織について鋭意実験・検討を重ねた結果、合金成分としてMg、Mn、Fe、Si、Crの各量を適切に調整すると同時に、製造プロセスとして熱間圧延条件、特に熱間圧延の最終パスの圧延率および圧延速度、熱間圧延終了温度を適切に制御して、再結晶組織、特に板の表面近くの部分の再結晶率と再結晶粒のアスペクト比を適切に調整することにより、成形性特に曲げ加工性が優れかつ強度も自動車足廻り部品として充分なアルミニウム合金熱延板が得られること見出し、この発明をなすに至った。
【0009】
具体的には、請求項1の発明の自動車足廻り部品向け成形加工用アルミニウム合金熱延板は、Mg2.2〜3.3%、Mn0.2〜1.0%、Fe0.05〜0.5%、Si0.05〜0.4%、Cr0.01〜0.2%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物によりなるアルミニウム合金の鋳塊に対し、均質化処理を兼ねた加熱処理を行なってから熱間圧延を行なうにあたり、最終パスの圧延率が30〜55%の範囲内、最終パスの圧延速度が215m/分以上、熱間圧延終了温度が300〜360℃の範囲内となるように圧延し、圧延方向断面から組織観察した場合に板表面から300μmの深さまでの領域における再結晶率が85%以上でかつ再結晶粒の平均アスペクト比が10以下であり、しかも耐力が80〜175MPaの範囲内でかつ引張強さTSと耐力YSとの差(TS−YS)が75MPa以上である熱延板を得ることを特徴とするものである。
【0010】
また請求項2の発明は、Mg2.2〜3.3%、Mn0.2〜1.0%、Fe0.05〜0.5%、Si0.05〜0.4%、Cr0.01〜0.2%を含有し、さらにTi0.005〜0.2%、Cu0.01〜0.2%、Zn0.01〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物によりなるアルミニウム合金の鋳塊に対し、均質化処理を兼ねた加熱処理を行なってから熱間圧延を行なうにあたり、最終パスの圧延率が30〜55%の範囲内、最終パスの圧延速度が215m/分以上、熱間圧延終了温度が300〜360℃の範囲内となるように圧延し、圧延方向断面から組織観察した場合に板表面から300μmの深さまでの領域における再結晶率が85%以上でかつ再結晶粒の平均アスペクト比が10以下であり、しかも耐力が80〜175MPaの範囲内でかつ引張強さTSと耐力YSとの差(TS−YS)が75MPa以上である熱延板を得ることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
先ずこの発明におけるアルミニウム合金の成分組成の限定理由について説明する。
【0013】
Mg:
Mgの添加は、Mgそれ自体の固溶による強度向上効果があり、またMgは転位との相互作用が大きいため、加工硬化による強度向上が期待でき、したがって自動車足廻り部品として必要とされる強度を得るために不可欠な元素である。但し、Mg量が2.2%未満では必要強度を得ることができないこともある。一方3.3%を越える多量のMgの添加により得られる高強度は、自動車足廻り部品では必要としないのが通常であり、また高Mg合金では耐SCC性が低下してしまう。そこでMg添加量は2.2〜3.3%の範囲内とした。
【0014】
Mn:
Mnの添加は熱延板の再結晶率の調整と強度調整に不可欠である。しかしながら、Mnの添加量が0.2%未満では必要強度を得ることが困難となる。一方Mn添加量が1.0%を越えれば、Al−Mn−(Si)−(Fe)系の微細金属間化合物が多くなり過ぎ、再結晶に対する抵抗が大きくなって再結晶しにくくなり、後述する再結晶率の条件を満たせなくなるおそれがあり、さらには再結晶した結晶粒でも平均アスペクト比が10を越えてしまって、成形性を大きく低下させてしまう。またMn量が多ければAl−Mn−(Fe)−(Si)系の粗大金属間化合物が多くなって、その点からも成形性を低下させてしまう。そこでMn添加量は、0.2〜1.0%の範囲内とした。なおMn添加量は、上述の範囲内でも、特に0.71〜1.00%の範囲内とすることが好ましい。
【0015】
Fe:
Feの添加も熱延板の再結晶率の調整と強度調整に不可欠である。しかしながらFe添加量が0.05%未満では必要強度を得ることが困難となる。また高純度の地金を使用しなければならなくなって、生産コストが高くなる。一方Fe量が0.5%を越えれば、熱延板の再結晶率の条件を満たすことが困難となり、さらにAl−Fe−(Mn)−(Si)系の粗大金属間化合物が多くなって成形性を低下させてしまう。そこでFe添加量は、0.05〜0.5%の範囲内とした。
【0016】
Si:
Siの添加も熱延板の再結晶率の調整と強度調整に不可欠である。しかしながら、Si添加量が0.05%未満では必要強度を得ることが困難となり、また高純度の地金を使用しなければならなくなって、生産コストが高くなる。一方Si添加量が0.4%を越えれば、熱間圧延板の再結晶率の条件を満たすことが困難となる。またAl−Fe−Si−(Mn)系の粗大金属間化合物が多くなって成形性を低下させてしまう。そこでSi添加量は0.05〜0.4%の範囲内とした。
【0017】
Cr:
Crの添加も熱延板の再結晶率の調整と強度調整に不可欠である。しかしながらCr添加量が0.01%未満では必要強度を得ることが困難となる。一方Cr添加量が0.2%を越えれば、熱間圧延板の再結晶率の条件を満たすことが困難となる。またAl−Cr系の粗大金属間化合物が多くなって成形性を低下させてしまう。そこでCr添加量は0.01〜0.2%の範囲内とした。
【0018】
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良いが、請求項2の発明の熱延板の場合は、上述の各元素のほか、さらにTi、Cu、Znのうちの1種または2種以上を添加する。これらの添加理由および添加量限定理由は次の通りである。
【0019】
Ti:
Tiは結晶粒微細化に有効である。Tiの添加量が0.005%未満では、その効果が現れにくく、一方0.2%を越えて添加すれば粗大金属間化合物が多くなって成形性を低下させてしまう。そこでTiを添加する場合には、Ti量は0.005〜0.2%の範囲内とする。なおTiに併せてBを加えて添加する場合もあるが、その場合のB量は300ppm以下にすることが望ましい。
【0020】
Cu:
Cuの添加は熱延板の再結晶率の調整と強度調整に有効である。しかしながらCu添加量が0.01%未満では強度に対してほとんど影響が現れず、添加する意味がない。一方Cu量が0.2%を越えれば、熱延板の再結晶率の条件を満たすことが困難となる。そこでCu添加量は、0.01〜0.2%の範囲内とした。
【0021】
Zn:
Znの添加も熱延板の再結晶率の調整と強度調整に効果的である。しかしながら、Zn添加量が0.01%未満では強度に対してほとんど影響が現れず、添加する意味がない。一方Zn添加量が1.0%を越えれば。熱延板の再結晶率の条件を満たすことが困難となり、また耐食性が低下する。そこでZn添加量は0.01〜1.0%の範囲内とした。
【0022】
さらにこの発明の自動車足廻り部品用熱延板の製造方法では、合金の成分組成を前述のように調整するばかりでなく、後述するように製造プロセス条件、とりわけ熱間圧延条件を適切に制御することにより、熱延板の再結晶状態、特に再結晶率と再結晶粒のアスペクト比を適切に調整する必要がある。
【0023】
すなわち、先ず再結晶率については、板表面から板厚方向へ300μmの深さの位置までの領域における再結晶率が85%以上である必要がある。その理由は次の通りである。
【0024】
熱延板を自動車足廻り部品に使用するにあたっては、種々の成形加工を施すのが通常であるが、代表的なものは曲げ加工である。曲げ加工においては、曲げR部の先端に張力が働いて、その部位に多量の転位が導入される。一方、熱延板の製造過程、特に熱間圧延の初期段階では材料に転位が導入され、その転位は熱間圧延後期や巻取り中に再結晶が生じれば消滅するが、再結晶率が85%未満では、材料内の残存転位密度が高く、そのため曲げ加工で導入された転位密度と合わせると過多になり、曲げ加工時に直ちに破断応力に達してしまう。その結果、所望とする曲げRまで成形できずに材料に割れが発生してしまう。
【0025】
またここで、板の表層領域の方が板の中心部(板厚方向内部)よりも再結晶が起こりやすいから、表面から300μmの深さの領域での再結晶率が85%以上となっていなければ、板厚内部では再結晶率がより低くなってしまって、板の耐力が175MPaを越えてしまい、また引張強さ−耐力の差の値が75MPa未満になることがあり、そのため良好な成形性を得ることができなくなる。また曲げ加工では板の曲げR部の表面付近から割れが発生するの通常である。そこで熱延板の再結晶率については、圧延方向断面から組織観察した場合における、板の表面から300μm板厚方向に入った位置までの領域での再結晶率を85%以上と限定した。
【0026】
次に再結晶粒のアスペクト比(長径と短径との比)については、前記と同じ表層領域(板表面から300μmの深さの位置までの領域)の再結晶粒について、平均アスペクト比が10以下である必要がある。このように平均アスペクト比を定めた理由は次の通りである。
【0027】
成形性に優れる条件の一つとして、結晶粒には等方的な応力が負荷されることが望まれる。再結晶粒のアスペクト比が大きいことは、再結晶粒の異方性が強いことを意味するが、平均アスペクト比が10を越えるような異方性の大きい再結晶粒からなる組織では、等方的に応力が負荷されないため、成形時に材料が割れやすくなってしまう。そこで再結晶粒の平均アスペクト比を10以下と規定した。
【0028】
さらにこの発明の方法により得られる熱延板では、機械的性能として、耐力が80〜175MPaの範囲内、引張強さTSと耐力YSとの差(TS−YS)の値が75MPa以上である必要がある。その理由は次の通りである。
【0029】
耐力が80MPa未満では、自動車足廻り材として強度が不足する。一方175MPaを越えるような高強度では、熱延板に残留している転位密度が高いため、成形時、例えば曲げ加工時において直ちに破断応力に到達して、材料が割れてしまう。また、引張強さと耐力との差の値が75MPa未満でも、成形時に直ちに破断応力に到達してしまい、良好な成形性を得ることができない。
【0030】
以上のように、熱延板の成分組成を適切に調整するのみならず、後述するように製造プロセス条件、とりわけ熱間圧延条件を適切に制御して、再結晶状態、特に板表層領域における再結晶率と再結晶粒の平均アスペクト比を適切に規制し、併せて機械的特性を適切に調整することによって、自動車足廻り部品として望まれる成形性、特に曲げ加工性が、3〜6mm程度の厚板でも優れていて、しかも自動車足廻り部品として必要な強度を有することとなるのである。
【0031】
次にこの発明の熱延板の製造方法について説明する。
【0032】
先ず前述のような成分組成の合金を常法に従って鋳造し、得られた鋳塊に対し均質化処理を兼ねた加熱処理を行なって熱間圧延に供する。
【0033】
ここで、熱間圧延前に行なう均質化処理を兼ねた加熱処理としては、次の▲1▼〜▲3▼の手法があり、いずれを適用しても良いが、再結晶粒サイズを小さくして、より成形性を高めるには、▲1▼、▲2▼のいずれかの手法を適用することが好ましい。
▲1▼ 2ステージ法:均質化処理を施したスラブを冷却して、面削等を行ない再度熱処理(加熱処理)する。
▲2▼ インライン2ステージ法:均質化処理を施したスラブを、同じ炉内で炉温を変えて熱処理(加熱処理)する。
▲3▼ 1ステージ法:均質化処理と加熱処理を同時に行なう。なおこの場合は炉温は同じである。
【0034】
なお均質化処理を兼ねた加熱処理の温度、時間は特に限定されるものではないが、前記▲1▼、▲2▼の手法の場合は、第1ステージ(均質化処理)を500〜580℃程度で3〜15間程度行ない、第2ステージ(熱間圧延前予備加熱)を460〜530℃程度で0.5〜13時間程度行なうことが好ましく、また▲3▼の手法の場合、460〜580℃程度で3〜15時間加熱することが好ましい。
【0035】
次いで熱間圧延を行なうが、この発明で規定している成分組成付近の合金では、従来の一般的な条件で熱間圧延を行なっても熱間圧延上りの状態で再結晶組織を得ることは困難である。しかしながら、この発明の場合、熱間圧延条件、特に最終パスの圧延率および圧延速度、熱間圧延上り温度を適切に制御することにより、厚板化した場合でも熱間圧延末期から熱延コイル巻取中およびその後のコイル保持中に再結晶が生じて、熱間圧延上りで再結晶組織を得ることが可能となった。またこのように熱間圧延上りで再結晶組織を得ることができるため、熱間圧延後に改めて再結晶のための焼鈍を行なう必要がなくなったのである。次に熱間圧延の条件について説明する。
【0036】
先ず熱間圧延の最終パスの圧延率は、30〜55%の範囲内とする必要がある。最終パスの圧延率が30%未満では、熱間圧延時の加工発熱量が小さいため、熱間圧延終了温度が300℃を下回ってしまう場合があり、熱延板再結晶率の条件を満たすことが困難となる。また最終パスの圧延率が30%未満の場合、再結晶への駆動力が小さいため、再結晶した結晶粒でも、結晶粒形状がパンケーキ状になって、アスペクト比が10を越えてしまうことが多い。一方最終パスの圧延率が55%を越える場合、再結晶への駆動力が大きいため、再結晶率条件を容易に満たすことは可能であり、また再結晶粒形状も等軸状になってアスペクト比条件を満たすことが容易となる。しかしながらこの場合、材料の加工発熱量が過大となるため、熱延ロール温度が高くなってロール焼けが生じ、熱延板表面にコーティングが発生してしまうおそれがある。このようにコーティングが発生すれば、製品としての価値はなくなってしまう。そこで熱間圧延における最終パスの圧延率は30〜55%の範囲内に限定した。
【0037】
次に熱間圧延における最終パスの圧延速度は、215m/分以上とする必要がある。最終パスの圧延速度が215m/分未満であれば、熱間圧延時の加工発熱量が小さいため、熱間圧延の終了温度が300℃を下回ってしまう場合があり、熱延板再結晶率の条件を満たすことが困難となる。またこの場合、再結晶への駆動力が小さいため、再結晶した結晶粒でも、結晶粒形状がパンケーキ状になって、アスペクト比が10を越えてしまうことが多い。そこで最終パスの圧延速度は215m/分以上とした。
【0038】
さらに熱間圧延の終了温度は300〜360℃の範囲内とする必要がある。すなわち熱間圧延の終了温度が300℃未満では、熱延上りで再結晶率の条件を満たすことが困難となり、また再結晶への駆動力が小さいため、再結晶した結晶粒でも結晶粒形状がパンケーキ状になって、アスペクト比が10を越えてしまうことがある。一方熱間圧延の終了温度が360℃を越えれば、再結晶には効果的であるが、熱延ロール温度が高くなってロール焼けが生じ、熱延板表面にコーティングが発生してしまうおそれがある。このようにコーティングが発生すれば、製品としての価値がなくなってしまう。そこで熱間圧延の終了温度は300〜360℃の範囲内に規制することとした。
【0039】
なお上記以外の熱間圧延条件、例えば熱間圧延開始温度等は特に限定されるものではなく、要は最終パスの圧延率および圧延速度、熱間圧延終了温度が上記の条件を満たすようにその他の条件も定めれば良いが、熱間圧延開始温度は通常は450〜530℃程度とすることが好ましい。また熱間圧延上り板厚(製品板厚)は適用される自動車足廻り部品によっても異なるが、通常は3〜6mm程度とすることが多い。
【0040】
前述のように熱間圧延の条件を厳しく制御することによって、熱間圧延末期から熱延板コイル巻取の段階において材料に再結晶を充分に生起させて、前述の再結晶率条件を満たしかつ平均アスペクト比も前述の条件を満たす熱延板を得ることができる。
【0041】
なお上述のようにして得られた熱延板は、熱間圧延上りで前述の条件を満たすように再結晶しているため、改めて再結晶のための焼鈍を行なう必要はない。
【0042】
【実施例】
表1の合金No.1〜No.5に示す種々の化学成分のAl合金鋳塊を、表2の製造番号1〜7に示す種々のプロセスで熱間圧延し、熱延板とした。以上のようにして得られた各熱延板から、圧延方向に対して平行な方向に試験片を切り出して、機械的性質(引張強さTSおよび耐力YS)と曲げ加工性を調べたので、その結果を表3に示す。なお熱間圧延後には板を平坦にするためにレベリングを行なうのが通常であり、ここで調べた熱延板の機械的性質も、レベリング後の特性である。
【0043】
また曲げ加工性については、圧延方向に対して平行な方向および直角な方向からそれぞれ試験片を切り出し、R/t(R:曲げ治具先端の曲率、t:試験材の板厚)が2.0の条件で180°曲げを行なって、目視で割れの有無を調べた。割れが全く生じていない場合を合格として○印を付し、1ケ所でも割れが発生した場合を不合格として×印を付した。
【0044】
さらに、各熱延板からOM観察用試料を切り出してバーカーエッチングを行ない、圧延方向でかつ板厚方向に沿った平行でかつ板厚方向に沿った断面で組織観察を行なって、板表面から300μmの深さの領域における再結晶率と平均アスペクト比を調べたので、その結果を表3中に併せて示す。
【0045】
ここで再結晶率は、画像解析処理装置を用いて50視野の平均値を求めた。また再結晶粒の平均アスペクト比は、圧延方向に対して平行な方向の結晶粒長さXLと、圧延方向に対し直角な方向の結晶粒の長さ(板厚方向の結晶粒の長さ)YLとを測定し、XL/YLを100個の再結晶粒に対してランダムに測定した。そしてXL/YLが10以下の場合を合格として○印を付し、XL/YLが10を越える場合を不合格として×印を付した。なお等軸再結晶粒の場合にはXL/YLは、ほぼ1となる。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表3に示すように、この発明で規定する成分組成範囲内の合金を用いかつ熱間圧延条件もこの発明で規定する条件を満たした製造番号1,3の場合は、再結晶率、平均アスペクト比がこの発明で規定する条件を満たし、そのため曲げ加工性が良好でかつ機械的性質も適切な範囲内であることが確認できた。
【0050】
一方製造番号2は、合金成分組成はこの発明で規定する範囲内であるが、熱間圧延最終パスの圧下率が小さくかつ熱間圧延終了温度も低かった例であり、この場合は再結晶が生起されず、強度が高過ぎて曲げ加工性が著しく悪くなってしまった。
【0051】
また製造番号4は、合金成分組成はこの発明で規定する範囲内であるが、熱間圧延の最終パスの圧延速度が低くかつ熱間圧延終了温度も低かった例であり、この場合は再結晶はある程度生じたものの、再結晶率が低く、かつ再結晶粒の平均アスペクト比が高過ぎ、その結果、熱延板の強度が高過ぎ、曲げ加工性が劣っていた。
【0052】
さらに製造番号5,6,7は、成分組成がこの発明で規定する範囲を外れた比較合金を用いた例であり、熱間圧延条件はこの発明で規定する範囲内としたが、強度が高過ぎて曲げ加工性に劣るか、または逆に強度が低過ぎ、いずれにしても自動車足廻り部品用材料として不適当となってしまった。
【0053】
【発明の効果】
この発明の製造方法により得られた自動車足廻り部品用アルミニウム合金熱延板は、3〜6mm程度の厚板でも、成形性、特に曲げ加工性に優れており、また強度面も自動車足廻り部品に必要な強度を備えていて、アッパーアーム、ロアーアーム等の自動車足廻り部品向けに成形加工、特に曲げ加工を施して使用される用途に最適である。またこの発明の製造方法により得られた自動車足廻り用アルミニウム合金熱延板は、アルミニウム材料であるため軽量であって、自動車の車体軽量化を通じて省エネルギ、地球環境保護等にも貢献することができ、しかも鍛造等の高コストの製造プロセスを必要とせず、また熱間圧延後の焼鈍も省略しているため、自動車足廻り部品の低コスト化を図れるのみならず、製造プロセス面からも省エネルギ化を図って地球環境保護に貢献することができる。
Claims (2)
- Mg2.2〜3.3%(mass%、以下同じ)、Mn0.2〜1.0%、Fe0.05〜0.5%、Si0.05〜0.4%、Cr0.01〜0.2%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物によりなるアルミニウム合金の鋳塊に対し、均質化処理を兼ねた加熱処理を行なってから熱間圧延を行なうにあたり、最終パスの圧延率が30〜55%の範囲内、最終パスの圧延速度が215m/分以上、熱間圧延終了温度が300〜360℃の範囲内となるように圧延し、圧延方向断面から組織観察した場合に板表面から300μmの深さまでの領域における再結晶率が85%以上でかつ再結晶粒の平均アスペクト比が10以下であり、しかも耐力が80〜175MPaの範囲内でかつ引張強さTSと耐力YSとの差(TS−YS)が75MPa以上である熱延板を得ることを特徴とする、自動車足廻り部品用アルミニウム合金熱延板の製造方法。
- Mg2.2〜3.3%、Mn0.2〜1.0%、Fe0.05〜0.5%、Si0.05〜0.4%、Cr0.01〜0.2%を含有し、さらにTi0.005〜0.2%、Cu0.01〜0.2%、Zn0.01〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物によりなるアルミニウム合金の鋳塊に対し、均質化処理を兼ねた加熱処理を行なってから熱間圧延を行なうにあたり、最終パスの圧延率が30〜55%の範囲内、最終パスの圧延速度が215m/分以上、熱間圧延終了温度が300〜360℃の範囲内となるように圧延し、圧延方向断面から組織観察した場合に板表面から300μmの深さまでの領域における再結晶率が85%以上でかつ再結晶粒の平均アスペクト比が10以下であり、しかも耐力が80〜175MPaの範囲内でかつ引張強さTSと耐力YSとの差(TS−YS)が75MPa以上である熱延板を得ることを特徴とする、自動車足廻り部品用アルミニウム合金熱延板の製造方法。
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