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JP4200841B2 - チェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー - Google Patents

チェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー Download PDF

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JP4200841B2
JP4200841B2 JP2003202879A JP2003202879A JP4200841B2 JP 4200841 B2 JP4200841 B2 JP 4200841B2 JP 2003202879 A JP2003202879 A JP 2003202879A JP 2003202879 A JP2003202879 A JP 2003202879A JP 4200841 B2 JP4200841 B2 JP 4200841B2
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智仁 太田
富仁 橋本
眞 加納
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Nissan Motor Co Ltd
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
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    • F16H57/00General details of gearing
    • F16H57/04Features relating to lubrication or cooling or heating
    • F16H57/041Coatings or solid lubricants, e.g. anti-seize layers or pastes

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、自動車用内燃機関において、動弁機構に設けたカムチェーンを案内したり、カムチェーンに張力を付加したりして、当該チェーンが外れたり、振動したりするのを防止するチェーンガイドやチェーンテンショナーに用いられるシューと、このようなシューを用いたチェーンシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、摺動に伴う騒音の低減、軽量化、摺動部の無潤滑化という観点から、軸受け、ローラー、ギア等の摺動部品についても熱可塑性樹脂の適用が進んでいるが、摺動部品の小型化等の要求から樹脂摺動材料の使用環境(面圧、使用温度)はますます苛酷なものとなって来ている。
特に、自動車の内燃機関で使用されるチェーンガイドやチェーンテンショナーのシュー材には、摺動特性に加えて140℃以上における耐熱性及び耐油性が要求されることから、このような部品の樹脂化に当たっては耐熱・耐油性、機械的強度、耐摩耗性に優れるポリアミド樹脂が適用されている。
【0003】
しかしながら、ポリアミド樹脂は上記のような材料特性には優れるものの、摺動時の摩擦抵抗が高いという問題がある。
ポリアミド樹脂の摺動フリクションの低減手法としては、ポリアミド中にポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂(例えば、特許文献1参照)や二硫化モリブデン等の固体潤滑材を添加する方法が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−53761号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリアミド中に上記のような固体潤滑材を添加する方法では、摺動相手材の表面粗さが大きかったり、摺動時の面圧及びすべり速度が高かったりした場合には、固体潤滑材が母材であるポリアミド樹脂から脱落し、脱落部が起点となってピッチング摩耗が発生したり、耐摩耗性に劣る固体潤滑材存在部が部分的に摩滅したりすることによって、結果的に樹脂組成物全体の摩耗が促進されてしまうという問題がある。
また、樹脂組成物の摩耗を抑制するために、組成物中にガラス繊維等の繊維系充填材を添加することも一般的に行われているが、摺動条件によっては組成物中から脱落した繊維充填材が摺動面に挟まり研磨材として作用するため、かえって摩耗が促進してしまうことがあるという問題点があって、これらの問題点を解消することがポリアミド樹脂から成る従来のチェーンガイドやチェーンテンショナー用シューにおける課題となっていた。
【0006】
本発明は、従来技術における上記のような課題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、耐摩耗性に優れるとともに摩擦抵抗が少なく、相手部材の摩耗を減少させることができ、搭載機器の性能向上に寄与することができるチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シューと、このようなシューを用いたチェーンシステムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく表面コーティングを含めて摺動材料について検討すると共に、摺動材料と潤滑組成物の組合わせについても意検討を重ねた結果、シューの摺動面をダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」と称する)薄膜で被覆すると共に、潤滑油に特定の無灰摩擦調整剤を添加することによって、耐摩耗性と低摩擦抵抗を両立させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シューは、潤滑油の存在下でチェーンと摺動するものであって、上記潤滑油が脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有すると共に、当該シューの摺動表面に、DLC薄膜から成る被覆が施してあることを特徴としている。
【0009】
また、本発明のチェーンシステムにおいては、本発明の上記チェーンガイド用シュー及び/又はチェーンテンショナー用シューを適用したものであって、当該シューの摺動相手部材、すなわち金属製チェーンの表面粗さが最大粗さRzで5μm以下であることを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シューの製造方法は、本発明の上記シューを製造するのに適用する方法であって、例えばポリアミドなどの熱可塑性樹脂を含有するシュー母材のチェーンとの摺動面に、プラズマCVD法によってDLCを成膜することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。なお、本明細書において「%」は、特記しない限り質量百分率を示すものとする。
【0012】
本発明のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シューにおいては、そのチェーンとの摺動面にDLC薄膜から成る被覆が施してあるので、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油のもとで、耐摩耗性及び低摩擦特性が発揮され、摩擦係数及び摩耗量が大幅に減少することになる。
【0013】
ここで、上記DLC薄膜は、炭素原子を主として構成され、例えばプラズマCVD法により成膜することができる。
このDLC材料は、非晶質のものであって、炭素同士の結合形態がダイヤモンド構造(SP結合)とグラファイト結合(SP結合)の両方から成る。具体的には、炭素元素だけから成るa−C(アモルファスカーボン)、水素を含有するa−C:H(水素アモルファスカーボン)、及びチタン(Ti)やモリブデン(Mo)等の金属元素を一部に含むMeCなどを好適に用いることができる。
【0014】
また、本発明のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シューの母材(基材)としては、200℃以上の融点を有する熱可塑性樹脂、例えばポリアミド樹脂を含有するものを用いることが望ましい。ここで、上記熱可塑性樹脂の融点を200℃以上としたのは、この種のシューにおいては、運転中の摺動面における表面温度が200℃近くまで上昇することがあることから、200℃未満の融点の樹脂を基材として用いた場合には、軟化や溶損の危険性が高くなることによる。
【0015】
上記樹脂には、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や二硫化モリブデン(MoS)などの固体潤滑材、あるいは繊維強化材としてのガラス繊維や炭素繊維などを添加することができるが、シューとしての所望形状にするための成形・加工性及び耐摩耗性を確保する観点から、融点200℃以上の熱可塑性樹脂の含有量を最低限40%とすることが望ましい。
【0016】
なお、本発明のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シューは、例えば自動車用内燃機関の動弁機構に好適に用いることができ、カムチェーンとの間の摩擦特性を良好に保持し、内燃機関の燃費改善に寄与することができる。
【0017】
そして、本発明のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シューは、例えば上記のような熱可塑性樹脂を含有し、所望のシュー形状に成型した母材のチェーンとの摺動面に、プラズマCVD法によってDLCを成膜することによって製造することができる
【0018】
本発明のチェーンシステムにおいては、本発明の上記チェーンガイド用シュー及び/又はチェーンテンショナー用シューを用いたものであって、これらシューの摺動相手であるチェーンの表面粗さをJIS B0601−2001に規定される最大高さ粗さRzで5μm以下としたものであるから、摩擦調整剤を含有する潤滑油のもとで、チェーン−シュー間の摩耗を最小限のものとし、両者間の摺動状態が長期に亘って安定に維持されることとなる。なお、チェーンのシューとの摺動面の最大高さ粗さRzを5μm以下にするのは、最大高さ粗さRzが5μmを超えると、チェーン摺動面がと石として作用し、シュー材表面に被膜されたDLC薄膜が削り取られ易くなることによる。
【0019】
次に、本発明に用いる潤滑油の組成について詳細に説明する。
上記潤滑油は、潤滑油基油に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有させたものが用いられる。
【0020】
ここで、上記潤滑油基油としては特に限定されるものではなく、鉱油、合成油、油脂及びこれらの混合物など、潤滑油組成物の基油として通常使用されるものであれば、種類を問わず使用することができる。
鉱油としては、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系又はナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用でき、溶剤精製、水素化精製処理したものが一般的であるが、芳香族分をより低減することが可能な高度水素化分解プロセスやGTL Wax(ガス・トウー・リキッド・ワックス)を異性化した手法で製造したものを用いることがより好ましい。
【0021】
合成油としては、具体的には、ポリ−α−オレフィン(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)、ポリ−α−オレフィンの水素化物、イソブテンオリゴマー、イソブテンオリゴマーの水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジオクチルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンイソステアリネート等のトリメチロールプロパンエステル;ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のペンタエリスリトールエステル)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフイン又はその水素化物が好ましい例として挙げられる。
【0022】
本発明に用いる潤滑油における基油は、鉱油系基油又は合成系基油を単独あるいは混合して用いる以外に、2種類以上の鉱油系基油、あるいは2種類以上の合成系基油の混合物であっても差し支えない。また、上記混合物における2種類以上の基油の混合比も特に限定されず任意に選ぶことができる。
【0023】
潤滑油基油中の硫黄分について、特に制限はないが、基油全量基準で、0.2%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、さらには0.05%以下であることが好ましい。特に、水素化精製鉱油や合成系基油の硫黄分は、0.005%以下、あるいは実質的に硫黄分を含有していない(5ppm以下)ことから、これらを基油として用いることが好ましい。
【0024】
また、潤滑油基油中の芳香族含有量についても、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油組成物として長期間低摩擦特性を維持するためには、全芳香族含有量が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。即ち、潤滑油基油の全芳香族含有量が15%を超える場合には、酸化安定性が劣るため好ましくない。
なお、ここで言う全芳香族含有量とは、ASTM D2549に規定される方法に準拠して測定される芳香族留分(aromatics fraction)含有量を意味している。
【0025】
潤滑油基油の動粘度にも、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油として使用する場合には、100℃における動粘度が2mm/s以上であることが好ましく、より好ましくは3mm/s以上である。一方、その動粘度は、20mm/s以下であることが好ましく、10mm/s以下、特に8mm/s以下であることが好ましい。潤滑油基油の100℃における動粘度が2mm/s未満である場合には、十分な耐摩耗性が得られない上に蒸発特性が劣る可能性があるため好ましくない。一方、動粘度が20mm/sを超える場合には低摩擦性能を発揮しにくく、低温性能が悪くなる可能性があるため好ましくない。本発明においては、上記基油の中から選ばれる2種以上の基油を任意に混合した混合物等が使用でき、100℃における動粘度が上記の好ましい範囲内に入る限りにおいては、基油単独の動粘度が上記以外のものであっても使用可能である。
【0026】
また、潤滑油基油の粘度指数にも、特別な制限はないが、80以上であることが好ましく、100以上であることがさらに好ましく、特に内燃機関用潤滑油として使用する場合には、120以上であることが好ましい。潤滑油基油の粘度指数を高めることでよりオイル消費が少なく、低温粘度特性、省燃費性能に優れた内燃機関用潤滑油を得ることができる。
【0027】
上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤としては、炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24、特に好ましくは炭素数10〜20の直鎖状又は分枝状炭化水素基を有する脂肪酸エステル、脂肪酸アミン化合物、及びこれらの任意混合物を挙げることができる。炭素数が6〜30の範囲外のときは、摩擦低減効果が十分に得られない可能性がある。
【0028】
炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状炭化水素基としては、具体的には、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基などを挙げることができる。
なお、上記アルキル基及びアルケニル基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基における二重結合の位置は任意である。
【0029】
また、上記脂肪酸エステルとしては、かかる炭素数6〜30の炭化水素基を有する脂肪酸と脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステルなどを例示でき、具体的には、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレートなどを特に好ましい例として挙げることができる。
上記脂肪族アミン化合物としては、脂肪族モノアミン又はそのアルキレンオキシド付加物、脂肪族ポリアミン、イミダゾリン化合物等、及びこれらの誘導体等を例示できる。具体的には、ラウリルアミン、ラウリルジエチルアミン、ラウリルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン、オレイルアミン、オレイルプロピレンジアミン、オレイルジエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の脂肪族アミン化合物や、これら脂肪族アミン化合物のN,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキル(又はアルケニル)(炭素数6〜28)等のアミンアルキレンオキシド付加物、これら脂肪族アミン化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したりアミド化した、いわゆる酸変性化合物等が挙げられる。好適な例としては、N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン等が挙げられる。
【0030】
また、本発明に用いる潤滑油に含まれる脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、0.05〜3.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.0%、特に好ましくは0.5〜1.4%であることがよい。上記含有量が0.05%未満であると摩擦低減効果が小さくなり易く、3.0%を超えると潤滑油への溶解性や貯蔵安定性が著しく悪化し、沈殿物が発生し易いので、好ましくない。
【0031】
一方、本発明に用いる潤滑油は、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有することが好適である。
上記ポリブテニルコハク酸イミドとしては、次の一般式(1)及び(2)
【0032】
【化1】
Figure 0004200841
【0033】
【化2】
Figure 0004200841
で表される化合物が挙げられる。これら一般式におけるPIBは、ポリブテニル基を示し、高純度イソブテン又は1−ブテンとイソブテンの混合物をフッ化ホウ素系触媒又は塩化アルミニウム系触媒で重合させて得られる数平均分子量が900〜3500、望ましくは1000〜2000のポリブテンから得られる。上記数平均分子量が900未満の場合は清浄性効果が劣り易く、3500を超える場合は低温流動性に劣り易いため、望ましくない。
また、上記一般式におけるnは、清浄性に優れる点から1〜5の整数、より望ましくは2〜4の整数であることがよい。更に、上記ポリブテンは、製造過程の触媒に起因して残留する微量のフッ素分や塩素分を吸着法や十分な水洗等の適切な方法により、50ppm以下、より望ましくは10ppm以下、特に望ましくは1ppm以下まで除去してから用いることもよい。
【0034】
更に、上記ポリブテニルコハク酸イミドの製造方法としては、特に限定はないが、例えば、上記ポリブテンの塩素化物又は塩素やフッ素が充分除去されたポリブテンと無水マレイン酸とを100〜200℃で反応させて得られるポリブテニルコハク酸を、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンと反応させることにより得ることができる。
【0035】
一方、上記ポリブテニルコハク酸イミドの誘導体としては、上記般式(1)又は(2)で表される化合物に、ホウ素化合物や含酸素有機化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性又は酸変性化合物を例示できる。その中でもホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミド、特にホウ素含有ビスポリブテニルコハク酸イミドが最も好ましいものとして挙げられる。
【0036】
上記ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル等が挙げられる。具体的には、上記ホウ酸として、オルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸などが挙げられる。また、上記ホウ酸塩としては、アンモニウム塩等、具体的には、例えばメタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウムが好適例として挙げられる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸と好ましくは炭素数1〜6のアルキルアルコールとのエステル、より具体的には例えば、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリププロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル、ホウ酸トリブチル等が好適例として挙げられる。なお、ホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミドにおけるホウ素含有量Bと窒素含有量Nとの質量比「B/N」は、通常0.1〜3であり、好ましくは、0.2〜1である。
また、上記含酸素有機化合物としては、具体的には、例えばぎ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸等の炭素数1〜30のモノカルボン酸や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルポン酸並びにこれらの無水物、又はエステル化合物、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等が挙げられる
【0037】
なお、本発明に用いる潤滑油において、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の含有量は特に制限されないが、0.1〜15%が望ましく、より望ましくは1.0〜12%であることが好ましい。0.1%未満では清浄性効果に乏しくなることがあり、15%を超えると含有量に見合う清浄性効果が得られにくく、抗乳化性が悪化し易い。
【0038】
更にまた、本発明に用いる潤滑油は、次の一般式(3)
【0039】
【化3】
Figure 0004200841
で表されるジチオリン酸亜鉛を含有することが好適である。
上記式(3)中のR、R、R及びRは、それぞれ別個に炭素数1〜24の炭化水素基を示す。これら炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等のいずれかであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであってもよい。
【0040】
上記R、R、R及びRとしては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等のアルキル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オレイル基等のオクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等のアルケニル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジ−プロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロへキシル基、ジメチルシクロへキシル基、エチルシクロへキシル基、プロピルシクロへキシル基、エチルメチルシクロへキシル基、トリメチルシクロへキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジ−プロピルシクロへキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジ−プロピルシクロヘプチル基、プロピルエチルメチルシクロヘプチル基等のアルキルシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基等のアリールアルキル基、等が例示できる。
なお、R、R、R及びRがとり得る上記炭化水素基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造をが含まれ、また、アルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキル基への結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意である。また、上記炭化水素基の中でも、その炭化水素基が、直鎖状又は分柱状の炭素数1〜18のアルキル基である場合若しくは炭素数6〜18のアリール基、又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基である場合が特に好ましい。
【0041】
上記ジチオリン酸亜鉛の好適な具体例としては、例えば、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−オクチルジチオリン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−デシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛、及びこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。
【0042】
また、上記ジチオリン酸亜鉛の含有量は、特に制限されないが、より高い摩擦低減効果を発揮させる観点から、潤滑油全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下であることが好ましく、また0.06%以下であることがより好ましく、更にはジチオリン酸亜鉛が含有されないことが特に好ましい。ジチオリン酸亜鉛の含有量がリン元素換算量で0.1%を超えると、DLC部材と鉄基部材との摺動面における上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤や上記脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の優れた摩擦低減効果が阻害されるおそれがある。
【0043】
上記ジチオリン酸亜鉛の製造方法としては、従来方法を任意に採用することができ、特に制限されないが、具体的には、例えば、上記R、R、R及びRに対応する炭化水素基を持つアルコール又はフェノールを五二硫化りんと反応させてジチオリン酸とし、これを酸化亜鉛で中和させることにより合成することができる。なお、上記ジチオリン酸亜鉛の構造は、使用する原料アルコールによって異なることは言うまでもない。
本発明においては、上記一般式(3)に包含される2種以上のジチオリン酸亜鉛を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0044】
上述のように、本発明に用いる潤滑油は、DLC薄膜とチェーンなど金属材料との摺動面に用いた場合に、極めて優れた低摩擦特性を示すものであるが、特に内燃機関用潤滑油として必要な性能を高める目的で、金属系清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、他の無灰摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤若しくは極圧剤、防錆剤、非イオン系界面活性剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等を単独で又は複数種を組合せて配合し、必要な性能を高めることができる。
【0045】
上記金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用できる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレート、ナフテネート等を単独で又は複数種を組合せて使用できる。ここで、上記アルカリ金属としてはナトリウム(Na)やカリウム(K)等、上記アルカリ土類金属としてはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等が例示できる。また、具体的な好適例としては、Ca又はMgのスルフォネート、フェネート及びサリシレートが挙げられる。
なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は、要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択できる。通常、全塩基価は、過塩素酸法で0〜500mgKOH/g、望ましくは150〜400mgKOH/gであり、その添加量は潤滑油全量基準で、通常0.1〜10%である。
【0046】
また、上記酸化防止剤としては、潤滑油用の酸化防止剤として通常用いられる任意の化合物を使用できる。例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤、並びにこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。また、かかる酸化防止剤の添加量は、潤滑油全量基準で、通常0.01〜5%である。
【0047】
更に、上記粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体やその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、及び更に窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。また、他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びにポリアルキルスチレン等も例示できる。
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートでは5000〜1000000、好ましくは100000〜800000がよく、ポリイソブチレン又はその水素化物では800〜5000、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物では800〜300000、好ましくは10000〜200000がよい。また、かかる粘度指数向上剤は、単独で又は複数種を任意に組合せて含有させることができるが、通常その含有量は、潤滑油基準で0.1〜40.0%であることが望ましい。
【0048】
更にまた、他の無灰摩擦調整剤としては、ホウ酸エステル、高級アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、二硫化モリブデン等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。
また、他の無灰分散剤としては、数平均分子量が900〜3500のポリブテニル基を有するポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、数平均分子量が900未満のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド等及びそれらの誘導体等が挙げられる。
更に、上記磨耗防止剤又は極圧剤としては、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、炭素数2〜20の炭化水素基を1〜3個含有するリン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオ亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩等が挙げられる。
更にまた、上記防錆剤としては、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
また、上記非イオン系界面活性剤及び抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
更に、上記金属不活性化剤としては、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等が挙げられる。
更にまた、上記消泡剤としては、シリコーン、フルオロシリコーン、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
なお、これら添加剤を本発明に用いる潤滑油に含有させる場合には、その含有量は、潤滑油全量基準で、他の摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤又は極圧剤、防錆剤、及び抗乳化剤については0.01〜5%、金属不活性剤については0.005〜1%、消泡剤については0.0005〜1%の範囲から適宜選択できる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例によって、更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
(試験片の作製)
〔1〕試験片A
ポリアミド66樹脂(デュポン社製 ザイテル45HSB、融点:265℃)のペレットを乾燥後、射出成型機を用いて図1に示す寸法・形状のリング試験片1に成型した。成型後、リング試験片1の側面を研磨して表面粗さをRa=3μmとした。
次に、プラズマCVD装置に上記リング試験片1を入れ、真空に引いたのち、Hプラズマにより成膜面であるリング側面を洗浄した後、CHプラズマによりDLCを成膜した。なおDLC薄膜の膜圧は0.7〜0.8μmとした。
【0051】
〔2〕試験片B
上記ポリアミド66樹脂80重量部に対し、炭素繊維(呉羽化学工業製 クレカチョップM−2007S、繊維直径:14.5μm、繊維長:90μm)を20重量部配合し、押し出し機を用いて混練・造粒した。そして、造粒したペレットを射出成型機を用いて、図1に示す寸法・形状のリング試験片に成型した。
。射出成型機を用いて造粒したペレットを同様のリング試験片に成型すると共に、上記同様の操作を繰り返して、リング試験片の側面を研磨した後、DLC薄膜を成膜した。
【0052】
〔3〕試験片C
上記試験片Aと同一の材料を用いて、同様の寸法・形状のリング試験片に加工した後、その側面を研磨して表面粗さをRa=3μmとし、DLC薄膜を成膜することなく試験片Cとした。
【0053】
〔4〕試験片D
上記試験片Bと同一の材料を用いて、同様の寸法・形状のリング試験片に加工した後、その側面を研磨して表面粗さをRa=3μmとし、DLC薄膜を成膜することなく試験片Dとした。
【0054】
(潤滑油の調整)
〔1〕潤滑油A
ベースオイルとしてのポリアルファオレフィン(1−オクテンオリゴマー)に、エステル系無灰摩擦調整剤としてグリセリンモノオレートを1.0%、無灰系分散剤としてポリブテニルコハク酸イミドを5.0%、その他の添加剤として粘度指数向上剤、酸化防止剤、防錆剤、抗乳化剤、非イオン系界面活性剤、金属不活性化剤、消泡剤等を合計量で7.0%それぞれ添加し、作動油Aとした。
【0055】
〔2〕潤滑油B
ベースオイルとしてのポリアルファオレフィン(1−オクテンオリゴマー)のみから成る潤滑油を調整し、これを潤滑油Bとした。
【0056】
(性能評価)
本発明の摺動特性改善効果を確認するため、上記試験片A〜Dの摩耗試験を上記潤滑油A及びBと組合わせて実施した。摺接する相手材としては一般的な炭素鋼(S55C調質材 HRA=70)を選定し(HRAは、JISZ2245に規定されるロックウェル硬さのAスケール)、試験装置に取り付けるため、上記炭素鋼の形状を直径60mm、厚さ10mmのディスク形状とし(後述するディスク15)、上記試験片との摺接面の表面粗さをRz(最大粗さ)=5μm程度とした。
【0057】
この摩耗試験に使用した縦型ピンオンディスク方式の摩擦摩耗試験機の概要を図2に示す。
当該試験機は、上部にリングホルダー11を有し、このリングホルダー11は、摺動時にリング試験片1の径方向の移動が生じないように、リング試験片1の内周面側に設置したスナップリング22のバネ力によって、リング試験片1の外周面をリングホルダー11の溝部に押し付けて固定するようになっている。
一方、当該試験機の下部には回転軸13に結合されたディスクホルダー14を備え、炭素鋼から成る上記ディスク15をディスクホルダー14にボルトで固定すると、ディスク15はリング試験片1に対して回転自在となる。次に、リングホルダー14を下降させることでリング試験片1とディスク15を摺接関係とさせ、さらにリングホルダー11の軸線方向から圧力Pを加えることによって、リング試験片1とディスク15とが圧接することになる。この際、シールリング10とディスク15の摺接部は、エンジンオイルO(すなわち、潤滑油A又はB)中に浸漬されている。なお、符号16はロードセル、符号17はトルク検出器を示す。
【0058】
上記試験機を用いて、圧接面圧:2MPa、摩擦速度:7m/秒、試験時間:6時間の試験条件で行った摩耗試験の結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
Figure 0004200841
【0060】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、チェーンとの摺動表面がDLC薄膜によって被覆され、しかも脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油を介して上記チェーンと摺動するようにしているので、耐摩耗性と低摩擦抵抗を両立させたチェーンガイド及びチェーンテンショナーを提供することができ、例えば自動車用の内燃機関に搭載した場合には、当該機関の燃費改善に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において摩耗試験に用いたリング試験片の形状を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例において摩耗試験に用いた縦型ピンオンディスク方式の摩擦摩耗試験機の概略図である。

Claims (11)

  1. 潤滑油の存在下でチェーンと摺動し、当該チェーンのバタツキを防止するチェーンガイド又はチェーンテンショナーに用いられるシューにおいて、
    上記潤滑油が脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有すると共に、上記シューの摺動表面がダイヤモンドライクカーボン薄膜により被覆されていることを特徴とするチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー。
  2. 上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤が炭素数6〜30の炭化水素基を有し、潤滑油中に潤滑油全量基準で0.05〜3.0%含まれていることを特徴とする請求項1に記載のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー。
  3. 上記潤滑油がポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー。
  4. 上記ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の含有量が潤滑油全量基準で0.1〜15%であることを特徴とする請求項3に記載のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー。
  5. 上記潤滑油がジチオリン酸亜鉛を含有し、その含有量が潤滑油全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー。
  6. 上記ダイヤモンドライクカーボン薄膜がプラズマCVD法により成膜されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー。
  7. 母材が200℃以上の融点を有する熱可塑性樹脂を含んでいることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー。
  8. 上記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項7に記載のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー。
  9. 内燃機関の動弁機構に用いられるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載のチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シュー。
  10. 請求項1〜8のいずれか1つの項に記載のチェーンガイド用シュー及び/又はチェーンテンショナー用シューを用いたチェーンシステムであって、当該シューが表面粗さRz=5μm以下の金属製チェーンと摺動することを特徴とするチェーンシステム。
  11. 請求項1〜9のいずれか1つの項に記載のチェーンガイド用シュー又はチェーンテンショナー用シューの製造方法であって、熱可塑性樹脂を含有するシュー母材のチェーンとの摺動面に、プラズマCVD法によりダイヤモンドライクカーボンを成膜することを特徴とするチェーンガイド用又はチェーンテンショナー用シューの製造方法。
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