JP4192458B2 - インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノズルからインク滴を吐出して文字や画像の記録を行うインクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電アクチュエータ等の圧力発生手段を用いて、インクが充填された圧力発生室内に圧力波(音響波)を発生させ、その圧力波によって圧力発生室に連通したノズルからインク滴を吐出するドロップオンデマンド型インクジェットは一般によく知られている(特公昭53−12138号公報、特開平10−193587号公報)。
【0003】
図23は、上記公報などで公知のインクジェット記録装置におけるイジェクタの一例を示している。イジェクタ10は、共通流路4、エアダンパ26、インク供給路5、振動板8、圧電アクチュエータ3、圧力発生室1、及びノズル2により構成される。通常1つのイジェクタ10は、1つのノズル2を持つ。圧力発生室1には、インクを吐出するためのノズル2と、共通流路4を介してインクタンク(図示せず)からインクを導くためのインク供給路5が連通している。エアダンパ26は、共通流路4の上方に設けられ、圧力を吸収する。また、圧力発生室1の底面には振動板6が設けられ、振動板6の外部には圧電アクチュエータ7が取り付けられている。
【0004】
インク滴8の吐出時には、圧電アクチュエータ7は、振動板6を変位させ、圧力発生室1に体積変化を生じさせ、圧力波を発生させる。この圧力波によって、圧力発生室1の中に充填されていたインクの一部がノズル2を通って外部に噴射され、インク滴8となって飛翔する。飛翔したインク滴8は記録紙等の記録媒体上に着弾し、記録ドットを形成する。こうした記録ドットの形成を、画像データに基づいて繰り返し行うことによって、記録媒体上に文字や画像が記録される。
【0005】
図24は、インク滴8の吐出前後におけるノズル2のメニスカス動作を模式的に示している。同図(a)に示すように、初めほぼ平坦な状態であったメニスカス9は、圧力発生室1が圧縮されるとノズル2の外部に向かって移動し、インク滴8を吐出させる(同図(b))。インク滴8の吐出直後は、ノズル2内部のインク量が減少するため、凹形状のメニスカス9が形成される(同図(c))。図中に示すyは、この吐出後のメニスカス9の変位量である。凹形状になったメニスカス9は、インクの表面張力の作用によって同図(d)、(e)に示す状態を経て、徐々にノズル2の開口部まで復帰し、やがて吐出前の状態に回復する(同図(f))。
【0006】
図25は、インク滴8の吐出直後におけるメニスカス9の位置変化を示す。吐出直後(t=0)に大きく後退したメニスカス9(y=−60μm)は、同図に示すように振動しながら初期位置(y=0)に復帰する。こうしたインク滴8の吐出後におけるメニスカス9の復帰動作のことを、リフィルと呼び、インク滴8の吐出後に、最初にメニスカス9がノズル2の開口面に復帰するまでの時間をリフィル時間(tr)と呼ぶ。
【0007】
インクジェット記録ヘッドでは、記録速度を左右する最大のパラメーターは、ノズル2の数である。ノズル2の数が多いほど、単位時間当たりに形成できるドット数が多く、記録速度を向上することができる。そのため、通常のインクジェット記録装置では、イジェクタ10を複数連結したマルチノズル型の記録ヘッドが多く用いられる。図26は、イジェクタ10を1次元配列した記録ヘッドを示している。記録ヘッドは、インクタンク20、インク管路18a、18b、フィルタ19、及びイジェクタ10により構成される。インクタンク20は、インク管路18a、18b及びフィルタ19を介して共通流路4と接続されており、この共通流路4に複数のイジェクタ10が連通している。
【0008】
しかし、このようなイジェクタ10を1次元的に配列する構造では、イジェクタ10の数をそれほど増やすことはできず、通常100個程度が上限といわれている。そこで、イジェクタを2次元的にマトリクス配列させることによってイジェクタの数を増加させたインクジェット記録ヘッド(以下、マトリクス配列ヘッドと呼ぶ)がこれまでいくつか提案されている(特開平1−208146号公報、特表平10−508808号公報など)。
【0009】
図27は、マトリクス配列ヘッドの一例を示している。図26の記録ヘッドとは、第2共通流路16を新たに備え、共通流路4が複数存在する点で相違する。それぞれの共通流路4は、第2共通流路16に連通しており、イジェクタ10は各共通流路4に複数接続されている。こうしたマトリクス配列ヘッド構造は、イジェクタ10の数を増加させるのに非常に有効である。例えば、共通流路4の数を26とし、各共通流路4に10個のイジェクタ10を接続することにより、260個のイジェクタ10を配列させることが可能となる。
【0010】
図28は、特表平10−508808号公報に記載されているインクジェット記録ヘッドを示しており、(a)はイジェクタ10の断面を、(b)はイジェクタ10の配置を模式的に示している。同図(a)に示すように、インクジェット記録ヘッドは、圧力発生室1、ノズル2、運通路3、インク供給路5、振動板6、圧電アクチュエータ7、及び流路23から構成される。このインクジェット記録ヘッドは、ノズルプレート11、流路プレート25、及び振動板6を張り合わせることにより形成される。隔壁27は、圧力発生室1の圧力が、流路23へ伝わらない厚みを有している。同図(b)に示すように、流路23は、流路24に連通している。この流路23は、図27の共通流路4に相当し、流路24は第2共通流路16に相当する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図27、28に示したような従来のマトリクス配列ヘッドでは、第1の課題として、共通流路4を挟んだノズル2の間隔(ノズルピッチPc)を小さく設定することができず、結果的にイジェクタ10の配列密度(単位面積当たりのノズル数)をあまり高くすることができないという問題があった。
【0012】
図29は、マトリクス配列ヘッドの等価電気回路を示す。mはイナータンス[kg/m4]、rは音響抵抗[Ns/m5]、cは音響容量[m5/N]、φは圧力[Pa]を表わし、添字のdは駆動部、cは圧力発生室、iはインク供給路、nはノズル、pは共通流路、p’は第2共通流路をそれぞれ意味している。イジェクタ10を2次元的に配列したマトリクス配列ヘッドでは、図29に示すように、多数のイジェクタ10が共通流路4及び第2共通流路16によって連通している。そのため、同一共通流路4に連通したイジェクタ10の数が多い場合は、近接するイジェクタ10間のクロストーク(圧力干渉)等を抑制する必要があり、共通流路4には大きな音響容量を確保する必要がある。
【0013】
しかし、後述するように、共通流路4の音響容量を増加させるためには、共通流路4の幅を大きく設定する必要がある。そのため、従来のマトリクス配列ヘッドでは、共通流路4を挟んで対向するノズル2間のノズルピッチPcが大きくなり、高いノズル配列密度を実現することができなかった。
【0014】
更に、従来のマトリクス配列ヘッドにおける第2の課題として、大径のインク滴8を複数イジェクタ10から短い周期で複数のイジェクタ10から同時に吐出(高周波同時吐出)させた場合に、吐出状態が不安定化するという問題があった。図30は、従来のマトリクス配列ヘッドを用いて、インク滴8の滴体積、吐出周波数を変化させて、吐出の安定性を調べた結果の一例であり、(A)はインク滴体積20pl、(B)はインク滴体積30plの時の結果を示す。なお、吐出の安定性はインク滴8の飛翔速度(滴速)の変化として評価した。
【0015】
グラフ(A)に示すように、滴体積20plのインク滴をマトリクス配列された260個のイジェクタ10から同時に吐出した場合には、10kHz以上の吐出周波数で滴速の不安定化が確認され、15kHz以上で不吐出となった。このときのインク滴8の吐出状態をストロボ観察した結果、10kHz以上の吐出周波数では、大径の滴と小径の滴が交互に吐出されるような吐出状態が多く観察され、滴径や滴速がランダムに変化する場合も観測された。また、滴体積を30plに増加した場合には、グラフ(B)に示すように7kHz以上の吐出周波数で同様の吐出不安定化が観察された。
【0016】
実験評価の結果、上記の吐出不安定化現象は、同時吐出させるイジェクタ10の数が多い場合や、吐出周波数が高い場合、あるいは吐出させるインク滴8の径が大きい場合などに発生しやすいことがわかった。また、吐出不安定化が発生すると、同じ共通流路4に接続された全てのイジェクタ10がほぼ同様に不安定化することが確認された。こうした観察結果から考えると、上記吐出不安定化現象は、各イジェクタ10間の音響的なクロストークに起因したものではなく、従来問題視されたことのない新たな吐出不安定化現象であるといえる。
【0017】
上記のような吐出不安定化現象が発生すると、インク滴8の滴体積や滴速が非常に不安定となるため、出力画像の品質が大幅に低下してしまう。また、不安定化の度合いが著しい場合には、ノズル2内部に気泡を巻き込み、不吐出を生じさせてしまうこともある。こうした吐出不安定化現象が発生するため、従来のマトリクス配列ヘッドでは、大径のインク滴8を多数のイジェクタ10から高周波同時吐出させることができず、高速記録に有利というマトリクス配列ヘッドの特徴を十分に発揮させることができなかった。
【0018】
本発明は、ノズル配列密度の高いマトリクス配列ヘッドを低い製造コストで実現し、更に大径インク滴を複数イジェクタから高周波同時吐出させる際に発生する吐出不安定化現象を抑制し、安定した高速記録を可能とするマトリクス配列ヘッドを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、インクジェット記録ヘッドのイジェクタ間で発生するクロストークを防止するために、種々の検討を重ねた結果、以下の知見に想到し、本発明を成すに至った。ここで、共通流路4の音響容量と、共通流路4の幅とは密接な関係がある。共通流路4の音響容量cvは、共通流路壁の剛性が高い場合には、下式で表わされる。Vpは共通流路4の容積[m3]、κはインクの弾性係数[Pa]、K1は共通流路壁の剛性に依存する補正係数であり、通常は0.3〜0.7程度の値となる。
cv=Vp/(κ K1) (1)
共通流路4の音響容量は共通流路の容積Vpに比例する。共通流路4の高さには上限があるため(通常100〜200μm程度)、大きな音響容量(容積)を確保するためには、共通流路4の幅を大きく設定する必要がある。
【0020】
また、図23に示すように、共通流路4の一部に剛性の小さなエアダンパ26を付与することによって、共通流路4の音響容量を増加させることもできる。この場合、エアダンパ26によって共通流路4に付与される音響容量cdは、エアダンパ幅をWd[m]、エアダンパ厚さをtd[m]、エアダンパ長さをld[m]、エアダンパの弾性係数をEd[Pa]、エアダンパのポアソン比をνdとすると次式から算出できる。
【数1】
すなわち、エアダンパ26により付与される音響容量cdはエアダンパ幅Wdの5乗に比例する。図23に示すインクジェット記録ヘッドでは、エアダンパ26の幅は、共通流路4の幅であるので、音響容量cdを大きな値に設定するためには、共通流路4の幅を大きく設定する必要がある。共通流路の全体の音響容量cpは、cvとcpを足した値となる。
【0021】
上記のように、共通流路4に大きな音響容量を確保するためには、共通流路4の幅を大きく設定する必要がある。しかし、図28に示したような従来のマトリクス配列ヘッドでは、共通流路4に大きな幅を確保するためには、ノズルピッチPc、を非常に大きく設定しなければならず、そのためノズルの配列密度が減少してしまう。すなわち、共通流路を直線状に形成した図28に示したような従来のマトリクス配列ヘッドでは、構造上の要件から、ノズルピッチPcを次の条件式を満足するように設定するしかなかった。ここで、WPは流路23の所要幅、dTは連通路3の径、WW1は連通路3と流路23の間の隔壁幅である。
Pc≧Wp+dT+2WW1 (3)
これは、このマトリクス配列ヘッドでは、流路23の同一平面内に連通路3が形成されており、両者は隔壁27によって分離されていなければならないためである。
【0022】
連通路3には、ノズル2にインクを低い流体抵抗で導くと同時に、インク滴8の吐出方向を安定化させるという機能が求められる。このため、ある程度大きな径が必要となり、一般的なインクジェット記録ヘッドでは100〜150μm程度である。また、連通路3と流路23の間の隔壁27は、ノズルプレート等との接合を実行するために、ある程度の幅が必要になる。例えば、流路プレート25とノズルプレート11を接着剤によって接合する場合には、隔壁27の幅を100μm以上に設定しないと接着不良が発生しやすくなる。接着不良が発生すると、連通路3と流路23の間で圧力波リークが発生し、正常な圧力波発生が実行できなくなるといった問題が生じる。このように、連通路径dT及び隔壁幅WW1には一定以上の大きさが必要となるため、直線状の流路23を有する従来のマトリクス配列ヘッドでは、ノズルピッチPcを小さく設定し、高いノズル配列密度を実現することが困難であった。
【0023】
上記知見に基づいて、本発明のインクジェット記録ヘッドは、それぞれが圧力発生室、該圧力発生室に連通するノズル、及び、圧力発生手段を含み2次元的に配列された複数個のイジェクタと、イジェクタを複数個連結する共通流路を含むインク供給系とを有し、共通流路を通じて圧力発生室にインクが充填され、圧力発生手段によって圧力発生室内のインクに圧力変化を生じさせ、ノズルからインク滴を吐出させるインクジェット記録ヘッドであって、共通流路が圧力発生室と平面的に重なり合うように配置されており、かつ、幅が広い部分と幅が狭い部分とを有するくびれ形状であることを特徴とする。
【0024】
くびれ形状の形態としては、共通流路を挟んで対向する2つのノズルの間で幅が小さく、それ以外の部分では幅が広くなるように設定されていることが好適である。本発明のインクジェット記録ヘッドでは、共通流路をくびれ形状とすることにより、共通流路の幅を部分的に大きく拡大している。これにより、ノズルピッチPcを従来ヘッドより小さく設定しても、十分な音響容量を確保することが可能となる。本発明のインクジェット記録ヘッドでは、共通流路の幅をW1、共通流路間での隔壁幅をWW2とした場合(図5参照)、ノズルピッチPcを次の範囲に設定することが可能となる。
Pc≧W1+WW2 (4)
WW2はWW1とほぼ同程度の値となるが、共通流路間での圧力波リークは吐出特性に大きな問題を発生させないことから、WW2はWW1よりも小さく設定することも可能である。つまり、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、ノズルピッチPcを従来のマトリクス配列ヘッドに比べ、少なくとも(dT+WW1)の分だけ減少させることができ、ノズルの配列密度を大幅に増加することが可能となる。
【0025】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドは、ノズルを形成する部材が共通流路のエアダンパを兼ねることを特徴とする。
これにより、少ない部材で共通流路のエアダンパを構成することができ、ノズル配列密度の高いインクジェット記録ヘッドを低い製造コストで実現できるという効果が得られる。
【0026】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、ノズルを形成する部材が樹脂フィルムで構成される。
これにより、エアダンパに大きな音響容量を確保することができ、幅の狭い共通流路で所要とする音響容量を得られ、ノズルの配列密度を更に増加させることが可能となる。
【0027】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドは、共通流路の音響容量cpが次の条件式を満足するように設定される。
cp>20cc
これにより、各イジェクタ間の音響的クロストークの発生を防止することができ、吐出特性の均一性及び安定性が高いインクジェット記録ヘッドを実現できるという効果が得られる。
【0028】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドは、共通流路の音響容量cpが次の条件式を満足するように設定される。
cp>10cn
これにより、複数イジェクタを同時吐出させたときのリフィル時間増加を防止することができ、吐出特性の均一性及び安定性を更に向上できるという効果が得られる。
【0029】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、ノズルからインク滴を連続吐出した際のリフィル時間が、インク供給系内の準定常的インク流れによって生じる共通流路内の圧力降下によって、意図する吐出周期よりも大きくならないように、インク供給系の流路抵抗が設定される。
【0030】
更に、ノズルからインク滴を連続吐出した際の共通流路の圧力降下が800Pa以下となるようにインク供給系の流路抵抗が設定される。
【0031】
これにより、大径インク滴を複数イジェクタから高周波同時吐出した際に発生する吐出不安定化現象を抑制でき、高速記録に適したインクジェット記録ヘッドを実現することが可能となる。
【0032】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、くびれ形状部分における共通流路の平面形状が滑らかな曲線によって構成される。
これにより、共通流路内でのインク流れを均一化し、共通流路内での気泡残留を防止することができるため、信頼性の高いインクジェット記録ヘッドを実現することが可能となる。
【0033】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、インク供給系が、複数の共通流路と、この複数の共通流路を連結する第2共通流路とを含み構成さる。
これにより、多数のイジェクタに対して効率的にインク供給を行うことができ、ヘッド全体のサイズを減少できるという効果が得られる。
【0034】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、第2共通流路に、インクを供給するためのインク供給口が、第2共通流路の中央付近に設けられる。
これにより、第2共通流路の所要幅を低減することができ、ヘッドサイズを減少できるという効果が得られる。
【0035】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、第2共通流路に、インクを供給するためのインク供給口が複数設けられる。
これにより、第2共通流路の所要幅を低減することができ、ヘッドサイズを減少できると共に、ゴミ等による流路詰まりの影響を受け難いインクジェット記録ヘッドを実現することができる。
【0036】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、第2共通流路が複数具備される。
これにより、第2共通流路の所要幅を低減でき、ヘッドサイズを減少できると共に、第2共通流路内での気泡残存を防止することができるという効果が得られる。
【0037】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、共通流路がインクジェット記録ヘッドの主走査方向にほぼ平行となるように配置され、第2共通流路が主走査方向にほぼ垂直となるように配置される。
これにより、副走査方向のヘッド全長を短く設定することができるため、記録媒体搬送用のローラ間距離を短く設定し、記録媒体の搬送を安定化できるという効果が得られる。
【0038】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、共通流路がインクジェット記録ヘッドの主走査方向にほぼ垂直となるように配置され、第2共通流路が主走査方向にほぼ平行となるように配置される。
これにより、主走査方向のヘッド全幅を短く設定することができ、高速記録に更に有利なインクジェット記録ヘッドを実現することができる。
【0039】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドでは、複数の共通流路を二つ以上のグループに分け、各グループの共通流路をそれぞれ別々の第2共通流路に接続させる。
これにより、共通流路及び/又は第2共通流路の所要断面積を低減することができ、ノズル配列密度を更に増加させることができるという効果が得られる。
【0040】
本発明に係るインクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドを備えていることを特徴とする。
このようなインクジェット記録装置によると、極めて高い記録速度を有するインクジェット記録装置を実現することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態例に基づいて、本発明について更に詳しく説明する。
【0042】
第1実施形態例
図1は、第1実施形態例のインクジェット記録ヘッドのイジェクタ10の断面を示している。イジェクタ10は、圧力発生室1、ノズル2、運通路3、共通流路4、インク供給路5、振動板6、及び圧電アクチュエータ7を含み構成される。
【0043】
圧力発生室1はインク供給路5を介して共通流路4に連通しており、圧力発生室1内にインクが充填される。圧力発生室1には、インク滴8を吐出するためのノズル2が連通している。また、圧力発生室1の底面は振動板6となっており、振動板6には圧力を発生する圧電アクチュエータ(圧電振動子)7が取り付けられる。この圧電アクチュエータ7に駆動電圧を印加すると、圧電アクチュエータ7がたわみ、振動板6を介して圧力発生室1を膨張又は圧縮させる。圧力発生室1に体積変化が生じると、圧力発生室内1に圧力波が発生する。この圧力波の作用によってインクが力を受け、ノズル2から外部へ排出されることによりインク滴8が形成される。
【0044】
図2は、図1のイジェクタ10を2次元的に配列したインクジェット記録ヘッドの構成を示している。インクジェット記録ヘッドは、ノズルプレート11、共通流路プレート12、供給路プレート13、圧力発生室プレート15、及び振動板6の計5枚のプレートで構成される。これらを接着剤によって積層接合することにより、アレイ状に配列された複数のイジェクタ10と、インク供給路17を介してインクが供給される第2共通流路16とが形成される。本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、共通流路4と圧力発生室1とを平面的に重なるように配置し、共通流路4がくびれ形状を持つことで音響容量を確保し、クロストークの発生を防ぐ。
【0045】
図2に示すように、共通流路4は、ヘッドの主走査方向にほぼ平行となるように配置され、副走査方向にほぼ平行となるように配置された第2共通流路16と連通している。第2共通流路16は、インク供給口17を介してインクタンク(図示せず)と連通しており、各共通流路4にインクを供給する役割をする。共通流路4には、圧力発生室1が連通している。本実施形態例では、第2共通流路16に26本の共通流路4を連通し、それぞれの共通流路4に10個のイジェクタ10を配設したことで、ノズル数が260個のインクジェット記録ヘッドとなった。
【0046】
図3は、本実施形態例におけるイジェクタ10の配列方法を模式的に示している。同図(a)に示すように、同一共通流路4に連通したイジェクタ10は、それぞれ副走査方向にPG(=Pc/n ;nは同一共通流路4に接続されているイジェクタ10の数)だけずらして配置されており、ヘッドを主走査方向に走査する過程において、吐出タイミングをずらしながら各列のイジェクタ10からインク滴8を吐出することにより、ピッチPGのドット列が形成される。同図(b)は、本実施形態例における各イジェクタ10列の吐出タイミングを表わしている。本実施形態例では、列間の距離Pnを600μm、ヘッドの走査速度を1m/sに設定している。従って、各列の吐出タイミングを600μsずらして吐出させることで、同図(b)のように主走査方向に対して同じ位置にドットを着弾させることができる。このように、ピッチPGの小さなドット列を一回のヘッド走査によって形成できることが、マトリクス配列ヘッドの大きな特長の一つである。
【0047】
本実施形態例では、ノズルプレート11に厚さ25μmのポリイミドフィルムを用い(Ed=2.0GPa、νd=0.4)、エキシマレーザ加工によって、開口径25μmのノズル2を形成した。後述するように、このノズルプレートは共通流路のエアダンパ26としても機能する。供給路プレート13には、厚さ75μmのステンレス板を用い、プレスによって開口径26μmのインク供給路5を形成した。共通流路プレート12及び圧力発生室プレート15には、厚さ120μmのステンレス板を用い、ウェットエッチングによって流路パターンを形成した。
【0048】
圧力発生室1は、一辺の長さが400μm、アスペクト比(縦横比)が1の四角形とし、圧力発生室1の角部には、インク流れの淀みを防止するためにR形状を付与した。共通流路4は、図1に示すように、圧力発生室1と平面的に重なり合うように配置されている。なお、平面的に重なり合うとは、ヘッドの走査面側から見て重なり合うことをいう。以下単に重なり合うとも称する。このように、共通流路4を圧力発生室1と重なり合うように配置すると、共通流路4と圧力発生室1とを同一平面内に配置した場合に比べ、小さい面積の中に共通流路4と圧力発生室1とを効率的に配置できるため、ヘッドの小型化(イジェクタ10の高密度配列)に有利となる。振動板6には、厚さ10μmのステンレス板を用い、また圧電アクチュエータ7には、厚さ30μmの単板状圧電セラミクスを用いた。
【0049】
図4は、圧電アクチュエータ7に印加した駆動電圧波形の一例である。本駆動電圧波形は、圧力発生室1を圧縮する方向に電圧を変化させる第1電圧変化(昇圧)プロセス51と、印加電圧を元のバイアス電圧(Vb)に戻すための第2電圧変化(降圧)プロセス52により構成されている。本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、V1を30Vに設定した際に滴体積20plのインク滴を吐出することが可能であった。また、単ノズル駆動時のリフィル時間(tr)は35μsであった。
【0050】
図5は、イジェクタ10の配列を模式的に示している。なお、図3に示すピッチPGのノズル位置ずれは、省略して示している。図5は、図1のA−A矢視図である。共通流路4の幅は、共通流路4を挟んで対向するノズルA−B間で最小(W2)となり、共通流路4に沿って隣接するノズルA−C間で最大(W1)となるようなくびれ形状をしている。共通流路4をこのようなくびれ形状にしているため、共通流路4には部分的に大きな幅(W1)を確保することができ、大きな音響容量を得ることができる。つまり、共通流路を直線状とした従来ヘッドと比較すると、小さなノズルピッチPcで共通流路に必要とされる音響容量を確保することが可能になる。
【0051】
本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、共通流路4の最大幅(W1)を500μm、連通路3の径(dT)を150μm、連通路3と共通流路4の間の隔壁40の幅WW1を100μm、共通流路4間の隔壁41の幅WW2を100μmに設定した。このため、共通流路4を挟んで隣接するノズル2間のノズルピッチPcは、600μm(=W1+WW2)となり、共通流路4の最小幅(W2)は、250μm(=Pc−dT−2WW1)となった。共通流路4に沿って隣接するノズル2間のノズルピッチPnは600μmに設定した。
【0052】
共通流路4の上面は、剛性の低いノズルプレート11で構成され、この部分がエアダンパ26として機能する。このインクジェット記録ヘッドでは、1つのイジェクタ10当たりの共通流路4(エアダンパ26)の音響容量cp(≒cd)は、式(1)及び(2)から、約8.4×10-18m5/Nとなる。
【0053】
ここで、共通流路4に必要とされる音響容量について、本発明者が明らかにした知見について説明する。本発明者は、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドについて、図6に示す回路モデルを用いた等価回路解析を行い、また実際のインク滴吐出実験を行った。その結果、共通流路4を介した音響的クロストークの発生率は、共通流路4の音響容量cpと圧力発生室1の音響容量ccの比率に依存し、
cp>20cc (5)
の条件を満たせば、クロストークの発生を防止できることを見出した。なお、図6の等価回路は、一つの共通流路4を切り出した回路モデルである。
【0054】
圧力発生室1の音響容量ccは、圧力室容積をVc[m3]、インクの弾性係数をκ[Pa]、圧力発生室の剛性等に依存する補正係数をK2とすると、次式で表わされる。
cc=Vc/(κ・K2) (6)
また、共通流路4の音響容量cpは、式(1)及び式(2)によって求められる。なお、音響容量cpはイジェクタ1個当たりの音響容量であり、例えば、共通流路4全体の音響容量が1×10-17m5/Nであり、その共通流路4に10個のイジェクタ10が均等に接続されている場合、cpは0.1×10-17m5/Nとなる。イジェクタ10が均等配置されていない場合には、配置状態に対応して共通流路4の音響容量を各イジェクタ10に配分する。本実施形態例では、600μmのピッチ(Pn)でイジェクタ10が均等配置されているため、式(2)においてエアダンパ26の長さをld=600μmとして計算すれば、イジェクタ1個当たりの音響容量を求めることができる。
【0055】
図7は、cp/ccを変化させてクロストークの発生率変化を調べた結果を示している。クロストーク発生率は、1個のイジェクタ10を単独吐出させた場合の滴速v1と、全イジェクタ10を同時吐出させた際の滴速v2から(v2−v1)/v1として評価した。図7のグラフから、cp/ccの増加に伴ってクロストーク発生率が減少し、cp>20ccの条件を満たせば、クロストーク発生率を10%以下に抑えることができることがわかる。また、0.1<cp/cc<10の範囲内では、クロストークの発生率が非常に大きくなった。これは、圧力発生室1から伝播した圧力波によって共通流路4内に圧力波が生じるが、0.1<cp/cc<10の条件では、共通流路4内の圧力波と圧力発生室1内の圧力波の振動周波数が近くなり、一種の共振現象が発生するためと考えられる。
【0056】
実際に、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドにおいて、エアダンパ26の幅及び材質を変化させ、cp/ccが異なるヘッドを複数試作してクロストークの発生率を調べたところ、図7に示すように、等価回路解析結果と非常によく一致する結果が得られた。なお、厳密には、共通流路4のイナータンスmpや音響抵抗rpもクロストーク発生率に影響を及ぼすが、通常のインクジェット記録ヘッドではその影響は非常に小さく、クロストークの発生率は上記のようにcp/ccによって支配されると考えてよい。
【0057】
また、本発明者は、図8に示した回路モデルを用いた等価回路解析、及び実際のインク滴吐出実験を行った結果、複数のイジェクタ10から同時に吐出を行った場合のリフィル時間trは、共通流路4の音響容量cpとノズルの音響容量cnの比率に依存し、
cp>10cn (7)
の条件を満たせばリフィル時間増加を抑制することが可能であることを見出した。なお、図8の等価回路は、一つの共通流路を切り出し、更にリフィル現象を解析するのに適した形に変更した回路モデルである。meはイジェクタ全体のイナータンス(=m1+m2+m3)を示しており、reはイジェクタ全体の音響抵抗(=r1+r2+r3)を示している。
【0058】
ノズルの音響容量cnは、ノズル開口径をdn[m]、インク表面張力をσ[N/m]、メニスカスの引き込み量をy[m]とすると、次式のように表わされる。
【数2】
上式のように、ノズルの音響容量cnはメニスカスの引き込み量yに依存するが、ここでは代表値としてy≒dn/4とし、cnを次式のように定義する。
【数3】
【0059】
図9は、cp/cnとリフィル時間trの関係を調べた結果を示している。なお、cn=8.5×10-19m5/Nである。この結果から、cp/cnが大きくなるとtrが小さくなり、cp>10cnの条件を満たせばリフィル時間の増加を防ぐことができ、かつ、イジェクタ間のリフィル時間差を無くすことが可能になることが明らかになった。また、4<cp/cn<10の範囲内では、リフィル時間の増加が異常に大きくなることが明らかになった。これは、上記のクロストークの場合と同じく、圧力発生室内の圧力波と共通流路内の圧力波の間に干渉が生じるためと考えられる。
【0060】
実際の吐出実験によってcp/cnの関係を調べた結果、図9に示すように、等価回路解析結果と非常によく一致する結果が得られた。また、リフィル時間trの増加に対しても、共通流路のイナータンスmp及び音響抵抗rpの影響は小さく、通常のインクジェット記録ヘッドでは、cp/cnをもとに共通流路4の特性設定を行えばよいことが、複数種類のインクジェット記録ヘッドを試作した結果から明らかになった。
【0061】
上述のように、各イジェクタ間のクロストーク、及び同時吐出時におけるリフィル時間増加を抑制するためには、式(5)及び式(7)の条件を満たす必要がある。本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、共通流路4の音響容量cp(≒cd)は8.4×10-18m5/N、ノズルの音響容量cnは7.3×10-19m5/N(dn=25μm、σ=35mN/m)、圧力発生室の音響容量ccは3.9×10-20m5/Nであるため、cpはcnの約12倍、ccの約215倍であり、式(5)及び式(7)の条件を共に満足できている。
【0062】
本実施形態例のインクジェット記録ヘッドを、吐出周波数及び同時吐出イジェクタ数を変化させながら、滴体積、滴速、及びリフィル時間trを調べた結果、滴体積及び滴速は±2%、リフィル時間trは±2μs以内の範囲内に収まり、クロストークやリフィル時間増加が良好に抑制できることが確認された。つまり、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、ノズルピッチPcが600μmと小さいにもかかわらず、共通流路の音響容量は十分確保されていることが確認された。
【0063】
比較例として図28に示したような直線状の共通流路を有する従来ヘッド構造において、ノズルピッチPcを本実施形態例と同じ600μmに設定したヘッドを試作し、特性の評価を行った。連通路径(dT)及び連通路3と共通流路4の間の隔壁幅(WW1)は、本実施形態例と同じくそれぞれ150μm、100μmに設定したため、式(3)より、共通流路の幅は250μmとなった。そのため、エアダンパ26の音響容量は2.3×10-19m5/Nと小さく、式(5)及び式(7)の条件を満たすことができなくなり、大きな音響的クロストークが発生し、インク滴8の滴体積や滴速に±10%以上のばらつきが発生した。
【0064】
また、複数ノズルを同時吐出した際には、リフィル時間trが増加し、吐出周波数を12kHzに低下させないと、安定した吐出を実行することが困難であった。つまり、従来のマトリクス配列ヘッドでは、ノズルピッチPcを本実施形態例のように小さな値に設定すると、共通流路4に十分な音響容量を確保することができなくなり、クロストークやリフィル時間tr増加などの問題が発生することが確認された。
【0065】
前述のように、直線状の共通流路4を有する従来ヘッド構造で、共通流路4に十分な音響容量を確保するためには、ノズルピッチPcを大きく設定せざるを得ない。上記の比較例では、本実施形態例のノズルピッチが600μmであるのに対し、従来ヘッド構造ではノズルピッチPcを850μm以上に設定しなければ、本実施形態例と同等の安定したインクジェット記録ができない。つまり、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドは、従来ヘッドに比べてノズルピッチPcを約42%低減することができ、ノズル配列密度を大幅に高めることが可能である。
【0066】
以上のように、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドは、ノズルプレート11を剛性の低い樹脂材料とし、これを共通流路4のエアダンパ26として機能させ、かつ、圧力発生室1と重なり合うように配置した共通流路4をくびれ形状としたことにより、ノズルピッチPcを600μmと小さく設定し、ノズル密度を2.8個/1mm2とすることができた。その結果、260個のイジェクタ10を持つインクジェット記録ヘッドを、8mm×16mmという小面積で実現することができた。
【0067】
第2実施形態例
図10は、本発明の第2実施形態例のインクジェット記録ヘッドの構成を示している。本実施形態例のインクジェット記録ヘッドは、先の実施形態例とは、供給路プレート13と圧力発生室プレート15との間に連通路プレート14がある点、ノズルプレート11に剛性の高い金属板(ステンレス板)を使用する点、及び供給路プレート13に剛性の低い樹脂フィルムを使用する点において相違する。図11(a)は、図10のインクジェット記録ヘッドのイジェクタ10の1個分の断面を示している。本実施形態例のイジェクタ10は、先の実施形態例の構造とは異なり、圧力発生室1と共通流路4との間の連通路プレート14に、凹部22が形成されている。本実施形態例のインクジェット記録ヘッドは、エアダンパ26の厚さを小さくすることができ、更にノズルピッチを狭くし、共通流路4のくびれ形状部分に緩やかな曲線を付したことで気泡の残留を防ぐ。
【0068】
本実施形態例のインクジェット記録ヘッドを試作するため、ノズルプレート11に厚さ60μmのステンレス板を用い、プレス加工によって開口径25μmのノズル2を形成した。供給路プレート13には、厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(Ed=2.0GPa、νd=0.4)を用い、エキシマレーザ加工によって、開口径20μmのインク供給路5を形成した。この供給路プレート13は、後述するように、共通流路4のエアダンパ26として機能する。なお、供給路プレート13の厚さは、エアダンパ26に大きな容量を確保するために、30μm以下であることが望ましい。
【0069】
共通流路プレート12、連通路プレート14、及び圧力発生室プレート15には、厚さ120μmのステンレス板を用い、エッチングによって流路パターンを形成した。圧力発生室1は、一辺の長さが400μmで、縦横比が1に近い四角形の平面形状とし、気泡排出性を良くするために、角部にはRを付与した。連通路プレート14には、共通流路4に対応した部分にハーフエッチングによって凹部22を形成した。この凹部22は、供給路プレート13と連通路プレート14を積層した際に、両者の間に空洞部を形成するためのもので、この部分がエアダンパ26として機能する。
【0070】
なお、連通路プレート14に凹部22を設けずに、図11(b)のように、供給路プレート13と、連通路プレート14との間に別のプレート14’を貼り合わせ、同様の構造を作ることも可能である。しかし、本実施形態例のようにハーフエッチングによって凹部22を形成すると、ヘッドを構成するプレートの数を減らすことができ、製造コストの低減に有利となる。また、図11では図示していないが、凹部22には外気と連通させるための通気路が設けられている。これにより、凹部22によって形成される空洞内の空気は常に外気と同一圧力となるため、エアダンパ26の機能を向上できると共に、密閉空間がなくなるため、ヘッド製造時におけるプレート積層接合を容易とすることができる。
【0071】
図12は、図11のイジェクタの断面を示し、(a)はA−A断面、(b)はB−B断面を示している。同図(a)に示すように、共通流路4は、第1実施形態例と同様のくびれ形状を有している。同様に、連通路プレート14に形成した凹部22の形状も、同図(b)のB−B断面図に示すように、共通流路4の形状に対応したくびれ形状となっている。
【0072】
上記のように、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、共通流路4の底面は剛性の低い供給路プレート13で構成されており、この部分がエアダンパ26として機能する。このため、供給路プレート13の厚さを薄くでき、エアダンパ26の厚さが非常に薄く設定できる。従って、ノズルピッチPcを狭く設定した場合であっても、共通流路4に十分な音響容量を確保でき、ノズル配列密度を更に増加させることが可能となる。
【0073】
第1実施形態例のように、ノズルプレート11をエアダンパとした場合は、エアダンパ厚の減少には限界があった。これは、エアダンパ厚の減少はノズル2の長さの減少を意味し、ノズル2の長さが短くなると、インク滴8の吐出方向が悪化したり、気泡の巻き込みが発生したりし易くなるなどの問題が生じるためである。このため、第1実施形態例のヘッド構造では、20〜50μm程度がエアダンパ厚の下限である。また、第1実施形態例のヘッド構造では、エアダンパ26が外部に露出しているため、ノズルプレート11の破損防止、ノズル2のワイピング時の気泡巻き込み防止などヘッドの信頼性向上の観点からも、エアダンパ厚を一定以上大きく設定する必要がある。
【0074】
本実施形態例のヘッド構造では、ノズル2とエアダンパ26は独立した構造であり、また、エアダンパが外部に露出していないため、エアダンパ厚を非常に小さく設定することが可能である。本実施形態例では、エアダンパ厚である供給路プレート厚を12.5μmに設定した。式(2)からわかるように、エアダンパ26の音響容量は厚さの3乗に反比例するため、エアダンパ厚を減少させると、同じ音響容量を実現するエアダンパ26の幅を低減させることができる。本実施形態例では、共通流路4の最大幅W1を400μm、ノズルピッチPcを500μmと、第1実施形態例よりもそれぞれ減少させているが、共通流路4には第1実施形態例よりも大きな音響容量(2.2×10-17m5/N)が確保できる。
【0075】
また、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドは、図12に示すように、共通流路4のくびれ部にR部28を付与し、共通流路4の平面形状を滑らかな曲線により構成している。これは、共通流路4内でのインク流れを均一化し、気泡の排出性を向上させるためである。共通流路4をくびれ形状とした場合、共通流路4内の流速には大きな不均一が発生しやすくなる。特に、第1実施形態例のように、共通流路4の形状に大きな段差があるような構造では、段差部の近傍に流速の非常に小さい淀み点が発生しやすい。そのため、共通流路4にインクを流入させた際に、その淀み点に気泡が残留する場合がある。
【0076】
共通流路4内に気泡が残留しても、気泡が移動しない限り吐出特性に大きな影響を及ぼすことはない。しかし、振動等のなんらかの要因で残留していた気泡が移動し、インク供給路5を経て圧力発生室1内に流入すると、そのイジェクタ10からはインク滴8を正確に吐出することが不可能となってしまう。つまり、共通流路4内での気泡残留は、インクジェット記録ヘッドの信頼性を大きく損なう原因となるため、共通流路4内の気泡残留を防止する必要がある。そこで本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、共通流路4のくびれ部分にR部28を付与することにより、上記淀み点の発生を防止し、気泡の残存を抑制している。
【0077】
R部28における曲率半径(R)の好適範囲は、共通流路4内での平均インク流速、供給流路4の壁の材質、インク材料などによって変化するが、本発明者が多数のヘッドを試作評価した結果によると、R≧G/4に設定することが好適である。ここで、Gは図12に示すような段差の大きさである。本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、G=125μmであり、Rを50μmに設定した。
【0078】
上記のようなR部28を付与した共通流路4を持つインクジェット記録ヘッドを用いて、インク充填評価を実施した結果、共通流路4内での気泡残留が全く発生しないことが確認された。インク充填評価は、300mmHgの吸引圧力でノズルからインクを5秒間吸引した後で、共通流路4内の状態を顕微鏡観察し、残留気泡の有無を確認することにより行った。比較対象として、第1実施形態例のインクジェット記録ヘッドについても同様のインク充填評価を実施したところ、約60%の確率でくびれ部(段差部)に気泡が残留した。
【0079】
本実施形態例のインクジェット記録ヘッドを、吐出周波数及び同時吐出イジェクタ数を変化させながら、インク滴8の滴体積、滴速、及びリフィル時間を調べた結果、その変動は、滴体積及び滴速は±2%以内、リフィル時間は±1.5μs以内の範囲に収まり、クロストークやリフィル時間増加が良好に抑制できることが確認された。
【0080】
以上のように、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、樹脂フィルムで構成した供給路プレート13が、共通流路4のエアダンパとして機能することにより、ノズルピッチPcを500μmと更に小さく設定しても、共通流路4に十分な音響容量を確保することができ、良好なインクジェット記録ができた。また、共通流路4のくびれ部分にR部28を付与することにより、共通流路4内の気泡排出性を大幅に向上することができ、信頼性の高いインクジェット記録ヘッドを実現することが可能となった。ノズル配列密度は、第1実施形態例と比較すると、約20%増加させることができ、3.3個/1mm2となった。
【0081】
なお、本実施形態例では共通流路4の段差部(くびれ部)に一定の曲率半径Rを有するR部28を付与したが、共通流路4の平面形状が滑らかな曲線によって構成されていれば、必ずしも一定の曲率半径を有している必要はない。また、上記「滑らかな曲線」は、細かい直線の集合であってもかまわない。
【0082】
第3実施形態例
図13は、本発明の第3実施形態例の基本構造を示している。本実施形態例のインクジェット記録ヘッドは、複数のイジェクタ10、共通流路4、第2共通流路16、インク管路18a、18b、フィルタ19、及びインクタンク20によって構成されている。本実施形態例のインクジェット記録ヘッドは、共通流路4及び第2共通流路16を含むインク供給系の流体抵抗(音響抵抗)を一定値以下に設定している。インク供給系の流体抵抗を一定値以下に設定することで、大きなインク滴8を多数のノズル2から同時に連続吐出することが可能となる。
【0083】
本実施形態例のインクジェット記録ヘッドの基本構造は、第2実施形態例で示したものと同じである。共通流路4にそれぞれイジェクタ10が連通している。それぞれの共通流路4は第2共通流路16に連通しており、第2共通流路16は、インク管路18b、フィルタ19、及びインク管路18aを介してインクタンク20と連通している。1本の共通流路4に10個のイジェクタ10を配設し、第2共通流路16に合わせて26本の共通流路4を接続することで、260個のイジェクタ10を有するインクジェット記録ヘッドが形成される。
【0084】
図14は、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドを模式的に示している。共通流路4の幅は約400μm(平均幅)、高さは120μm、長さは約6mmに設定されている。また、第2共通流路16の幅は2.5mm、高さは約250μm、長さ(lp’)は約6mmに設定されている。本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、各イジェクタが、図14に示すように配置されているため、各イジェクタから見た共通流路4の平均長さ(lp)は約3mm、第2共通流路16の平均長さ(lp’)は約3mmとなる。
【0085】
一般に、断面が長方形である管路の流体抵抗(音響抵抗)は、次式を用いて算出することができる(ηはインク粘度[Pa・s]、Sは管路断面積[m2]、zは管路断面のアスペクト比)。
【数4】
従って、共通流路4の流路抵抗は1.9×1011Ns/m5、第2共通流路の流路抵抗は2.9×109Ns/m5となる(η=3mPa・s)となる。なお、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、第2共通流路を2分割し、それぞれにインク供給口17を設けているが、これは第2共通流路の長さ(lp’)を小さくし、流路抵抗を低減するためである。
【0086】
また、インク管路18a及びインク管路18bは円管状であり、内径は2mmに設定されている。長さはインク管路18aが3mm、インク管路18bが20mmに設定されている。円形断面管路の流体抵抗は、次式から計算することができる(dは管路径[m]、lは管路長さ[m])。
【数5】
上式より、インク管路18a、18bの流路抵抗はそれぞれ2.3×107Ns/m5、1.5×108Ns/m5となる。フィルタ19は、約10μmの微細孔を有する金属メッシュであり、流路抵抗は実測結果から1.0×109Ns/m5と求められた。インクタンク20は、流路抵抗が非常に小さくなるように流路断面積が大きく設定されており、流路抵抗は2.0×108Ns/m5である。
【0087】
ここで、インク供給系の流体抵抗の上限値について、本発明者が明らかにした知見について説明する。図15は、同一の共通流路4に接続された複数のイジェクタ10の等価回路を示している。本発明者は、図15に示した回路モデルを用いた等価回路解析、及び実際のインク滴吐出実験を行い、その結果、多数のイジェクタで高周波連続吐出を行うと、共通流路4内に圧力降下が発生し、これが個々のイジェクタ10のリフィル速度trを減少させる原因になることを見出した。以下、その内容について詳しく説明する。
【0088】
ノズル2からインク滴8を連続吐出した場合、巨視的に見ればインクタンク20からノズル2に向かって準定常的な流れが生じていることになる。つまり、共通流路4を介して、インクがイジェクタ10に準定常的に供給される。こうした準定常的な流れを完全な定常流と見なした場合、等価回路は図15のように単純化することができる。
【0089】
ここで問題となるのは、インクタンク20から共通流路4までを含むインク供給系全体の流体抵抗である。管路の入口と出口との圧力差は、流体抵抗をr、流量をQとすると、ΔP=r・Qで表される(ハーゲン・ポアズイユの法則)。イジェクタによるインク消費量(インク排出量)が大きい場合、インク供給系には大きな流量のインクが流れるが、この際、インク供給系の流体抵抗rが大きいと、インクタンク20と共通流路4の間に大きな圧力差が発生することになる。つまり、滴体積の大きなインク滴8を、多数のノズル2から高周波同時吐出させると、共通流路4内の圧力が低下してしまう。
【0090】
ここで、前述のリフィル動作について考えると、リフィル動作時においてインクは、メニスカス9の表面張力によって発生する圧力によって、共通流路4から圧力発生室1内へと導かれる。つまり、メニスカス9の表面張力で生じる圧力によって、ノズル2−共通流路4間に大きな圧力差が発生しなければ迅速なリフィルを実行することはできない。ところが、各イジェクタ10の同時・連続吐出によって共通流路4内に圧力降下が発生すると、ノズル2と共通流路4の間の圧力差が低減し、リフィル速度が低下してしまう。
【0091】
図16は、共通流路の圧力変化(ΔPp)とリフィル時間(tr)の関係を、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドを用いて実験的に調べた結果を示すグラフである。共通流路4内の圧力降下が800Pa以下であればリフィル時間はほぼ一定であるのに対し、800Pa以上になるとリフィル時間が急激に増加することがわかる。こうしたΔPpとtrの関係は、インクの表面張力、ノズル径などによって多少変化するが、数多くの解析及び実験評価の結果、一般的なインクジェット記録装置(表面張力20〜40mN/m、ノズル径15〜40μm)では、共通流路内の圧力降下を800Pa以下に保てば、リフィル速度の低下を抑制することが可能となることが判明した。
【0092】
共通流路4内での圧力降下の大きさを求めるには、インク供給系における各部分で発生する圧力降下を加算していけばよい。本実施形態例のインクジェット記録ヘッドにおいて、ノズル数Nを260、滴体積20plのインク滴を15kHzの吐出周波数で全てのイジェクタ10から連続吐出させた場合、インクの総流量は7.8×10-8m3/sとなる。インクタンク20の流路抵抗は、3.0×108Ns/m5、インク管路18aの流路抵抗は、2.3×107Ns/m5、及びフィルタ19の流路抵抗は、1.0×109Ns/m5であるから、インクタンク20で発生する圧力降下量は、23.4Pa、インク管路18aで発生する圧力降下量は、1.8Pa、及びフィルタ19で発生する圧力降下量は、78Paとなる。
【0093】
一方、インク管路18bは2本に分岐しているため、インク管路18b内の流量は3.9×10-8m3/sとなる。インク管路18bの流路抵抗は1.5×108Ns/m5であるため、インク管路18bで発生する圧力降下量は5.9Paとなる。2本の第2共通流路16では、それぞれ流量が3.9×10-8m3/s、流路抵抗rが2.9×109Ns/m5であるため、圧力降下量は113Paとなる。共通流路4は各第2共通流路16に13本接続されているため、各共通流路4でのインク流量は0.3×10-8m3/sとなる。共通流路4の流路抵抗rは1.9×1011Ns/m5であるため、圧力降下量は570Paとなる。従って、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドで、滴体積20plのインク滴を15kHzの吐出周波数で全イジェクタから連続吐出させた場合、インクタンク20と共通流路4との間に発生する圧力降下は、上で算出した圧力降下量を全て加算して、792Paとなる。
【0094】
上記のように、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、インク供給系の流路抵抗を小さく設定しているため、滴体積20plのインク滴を15kHzで全イジェクタから連続吐出させても、共通流路内の圧力降下を800Pa以下に抑えることができる。そのため、共通流路内の圧力降下に起因するリフィル時間増加を防ぐことができ、安定した高周波連続吐出を実行することができる。
【0095】
図17は、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドにおいて、吐出周波数及び吐出インク滴体積を変化させて、吐出の安定性を調べた結果を示している。吐出の安定性は、吐出されるインク滴8の滴速で評価した。グラフに示されるように、インク滴体積が20plの場合には(A)、約16kHzまでは安定した吐出を実現することができた。また、滴体積を30plに増加した場合にも(B)、約10kHzまでは安定な吐出が可能であることが確かめられた。
【0096】
比較対象として、共通流路4の高さを80μmに変更した場合の吐出実験結果を図17の破線(A’)で示す。この場合、共通流路4の流路抵抗は5.9×1011Ns/m5となるため、滴体積20plのインク滴8を15kHzで全イジェクタ10から連続吐出させると、共通流路4内の圧力降下は約2000Paに増加する。この場合、共通流路内の圧力降下を800Pa以下とするという条件を満たすことができない。そのため、実験結果においても、吐出周波数6kHz以上で滴速が不安定となり、滴吐出が不安定化することが確認された。インク滴8の吐出状態をストロボ観察したところ、大径の滴と小径の滴とが交互に吐出されるような吐出状態になっていた。また、滴体積を30plに増加した場合には(B’)、4kHz以上の吐出周波数で同様に滴吐出の不安定化が観察された。ただし、このヘッドにおいても、低周波駆動時には、全てのノズル2で安定した吐出が実現できていることから、共通流路4の音響容量は十分であるといえる。
【0097】
以上の比較実験により、共通流路4の音響容量を大きく設定するだけでは安定した高周波吐出を実現することはできず、吐出滴体積、ノズル数、及び最高吐出周波数に対応してインク供給系の流路抵抗を好適に設定することにより、はじめて安定した全ノズル同時の連続吐出が実現できることが確認された。
【0098】
本実施形態例の説明では、共通流路4の平均長さlp、及び第2共通流路16の平均長さlp’を用いて流路抵抗及び圧力降下量の算出を行ったが、共通流路内の圧力降下を厳密に求めるためには、図15のような等価回路を用いて計算を行うことが望ましい。
【0099】
本実施形態例では、第2共通流路16を上下に分割しているが、これは第2共通流路16の所要幅を減少させるためである。すなわち、第2共通流路16を二分割すると、第2共通流路16の長さlp’が減少するため、第2共通流路16の幅を小さく設定しても流体抵抗が増加しにくい。例えば、第1実施形態例のように、第2共通流路16を一本の流路として形成した場合、第2共通流路16の長さlp’は7mm程度となる。そのため、第2共通流路16の流体抵抗を、本実施形態例と同等(2.9×109Ns/m5)にするためには、第2共通流路16の幅を5.5mm程度まで拡大することが必要となる(本実施形態例では、第2共通流路16の幅は2.5mm)。つまり、本実施形態例のように第2共通流路16を複数に分割すると、lp’を減少することができるため、第2共通流路16の所要幅を大幅に低減することが可能となる。
【0100】
インクジェット記録ヘッドのヘッド全幅を小さくすることは、印刷速度を向上させる上で極めて重要である。すなわち、ヘッドの全幅が小さいと、印刷時のヘッドの走行距離を短くすることができるため、ヘッド走査に要する時間を短縮し、結果的に印刷速度を低減することが可能となる。また、ヘッド全幅を小さくできると、記録用紙の左右に要するスペースを小さくすることができるため、インクジェット記録装置のサイズも減少することができるという効果も得ることができる。
【0101】
また、本実施形態例のように、第2共通流路をイジェクタ群の横に配置することは、インクジェット記録装置における記録媒体(記録用紙など)の搬送精度を向上するのに有利となる。すなわち、インクジェット記録装置において、記録媒体はヘッド前後に設置されたローラ等によって保持・搬送されるが、ヘッドの全長(LH)が大きいと、ローラ間における記録媒体のたわみ等によって、記録媒体の搬送精度が悪化しやすい。そのため、ヘッド長さLHは最低限に抑えることが重要であり、そうした観点からは、本実施形態例のように共通流路4の支流を主走査方向に対してほぼ平行に配置し、共通流路4の本流をイジェクタ群の横に配置したヘッド構造の方が望ましい。
【0102】
第4実施形態例
図18は、本発明の第4実施形態例における流路配置を模式的に示している。本実施形態例のイジェクタ構造は、共通流路4及び第2共通流路16の配置を除いて、第3実施形態例と同様である。共通流路4は、ヘッドの主走査方向に対してほぼ垂直に配置され、第2共通流路16は、主走査方向に対してほぼ平行となるように配置されている点に特徴がある。こうした共通流路4の配置では、第2共通流路16がイジェクタ群の横に配置されないため、主走査方向のヘッド幅を小さく設定でき、高速記録及び装置サイズの低減に更に有利なインクジェット記録ヘッドを実現することが可能となる。以下詳述する。
【0103】
本実施形態例のインクジェット記録ヘッドは、図18に示すように、共通流路4を主走査方向に対してほぼ垂直となるように配置し、これらの共通流路4を主走査方向にほぼ平行となるように配置した第2共通流路16に接続している。共通流路4はヘッド中央を境として上下に分割されており、上半分の共通流路4は上部に配置された第2共通流路16に、下半分の共通流路4は下部に配置された第2共通流路16にそれぞれ接続されている。
【0104】
共通流路4を複数に分割した構造は、共通流路の所要断面積を小さくするのに有利である。前述のように、安定した多ノズル同時高周波吐出を実現するためには、インク供給系の流路抵抗を小さく設定する必要があり、そのためには共通流路4の流路抵抗も小さく設定する必要がある。しかし、共通流路4の全長が長い場合、共通流路4の断面積を非常に大きく設定しないと流路抵抗を小さく設定することができない。図18に示すように共通流路を上下に二分割すると、共通流路の全長(lp)を短くすることができ、共通流路4の断面積が狭くても流路抵抗を小さくすることができる。
【0105】
各共通流路4にはそれぞれイジェクタ10が接続されており、イジェクタは2次元配列されている。第2共通流路16の中央部にはインク供給口17が配設されており、このインク供給口を通じてインクタンク(図示せず)からインクが供給される。
【0106】
以上のように、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドでは、第2共通流路をイジェクタ群の上下に配置しているため、第1〜第3実施形態例のインクジェット記録ヘッドに比べて、主走査方向のヘッド幅を小さく設定できている。本実施形態例では、ノズルピッチPcを600μmに設定したため、主走査方向のヘッド幅は約6mmとなった。第1〜第3実施形態例でのヘッド幅は8〜10mmであるため、本実施形態例ではヘッド幅を2〜4mm減少できた。
【0107】
実際のインクジェット記録装置では、複数のインクジェット記録ヘッドが並べて配置されるため、ヘッド全体の幅としては更に大きく減少することが可能である。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応た4個のヘッドを並べた場合、第1〜第3実施形態例よりもヘッドの全幅を約8〜16mm減少することが可能となる。このように、本実施形態例のインクジェット記録ヘッドはヘッド全幅を小さくすることができるため、印刷速度の向上及び装置サイズの低減に極めて有利となる。
【0108】
第5実施形態例
図19は、本発明のインクジェット記録装置の実施形態例を示している。本実施形態例のインクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドを搭載するキャリッジ31、キャリッジ31を主走査方向に走査するための主走査機構33、記録媒体としての記録用紙34を副走査方向に搬送するための副走査機構35を含み構成されている。
【0109】
インクジェット記録ヘッドはノズル面が記録用紙34と対向するようにキャリッジ31上に搭載され、主走査方向に搬送されながら記録用紙34に対してインク滴8を吐出することにより、一定のバンド領域38に対して記録を行う。次いで、記録用紙34を副走査方向に搬送し、再びキャリッジ31を主走査方向に搬送しながら次のバンド領域を記録する。こうした動作を複数回繰り返すことにより、記録用紙34の全面にわたって画像記録を行うことができる。
【0110】
実際に、本実施形態例のインクジェット記録装置を用いて画像記録を行い、記録速度及び画像品質の評価を行った。インクジェット記録ヘッドには、上記第3実施形態例で述べたヘッド構造のものを使用した。ノズルピッチPcは500μmであり、1mm2当たりのノズル数は3.3個である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応させて、1色あたり260個のイジェクタを有するマトリクス状配列ヘッドをキャリッジ31上に並べて配置し、記録用紙34上で4色のドットを重ねあわせることにより、フルカラーの画像記録を行った。
【0111】
滴体積20pl、記録解像度600dpi、吐出周波数18kHzの条件でA4サイズ(210mm×297mm)の画像を印刷した結果、約5秒間で印刷を完了することができ、極めて高い記録速度を実現できることが実証された。また、音響的クロストークや多ノズル同時吐出時の吐出不安定化現象が抑制できているため、出力画像には非常に高い画品質を得ることができた。
【0112】
比較例として、直線状の共通流路4を有する従来ヘッドを用いて、同様の画像出力実験を行った。この場合、共通流路4に十分な音響容量を確保するためにはノズルピッチPcを850μmに設定する必要があり、その結果、同じヘッド面積内に配列できるノズル数は150個が上限となった(1mm2当たりのノズル数は2.0個)。そのため、A4サイズ(210mm×297mm)の画像を記録するのに約9秒の時間を要し、記録速度は本実施形態例のインクジェット記録装置に比べて約1/2であった。
【0113】
別の比較例として、直線状の共通流路4を有する従来ヘッド構造で、本実施形態例と同じくノズルピッチPcを500μmに設定したインクジェット記録ヘッドを用いて同様の画像出力実験を行った。この場合、本実施形態例と同じ260個/色のノズル数が確保できたが、共通流路4の幅は150μmと小さいため、共通流路4の音響容量cpは式(5)及び式(7)の条件を満たしていない。滴体積20pl、記録解像度600dpi、吐出周波数18kHzの条件でA4サイズ(210mm×297mm)の画像を印刷した結果、約5秒間で印刷を完了することができたが、インク滴8の吐出状態が非常に不安定であり、また、画像出力中に不吐出ノズルが多数発生してしまったため、出力画像の品質は極めて悪かった。つまり、従来ヘッド構造で無理にノズル2の配列密度を増加させると、安定したインク滴吐出を実行できなくなることが実証された。
【0114】
以上のように、本実施形態例のインクジェット記録装置では、共通流路をくびれ形状としているため、安定した吐出安定性を維持したままノズル配列密度(単位面積当たりのノズル数)を増加することができ、従来のインクジェット記録装置に比べて記録速度を大幅に増加できる。
【0115】
なお、本実施形態例ではヘッドをキャリッジによって搬送しながら記録を行う形態としたが、ノズルを記録媒体の全幅にわたって配置したライン型ヘッドを用い、ヘッドを固定して、記録媒体のみを搬送しながら記録を行うなど、別の装置形態に本発明を適用することも可能である。
【0116】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、上記実施形態例は本発明に好適な実施の形態を示したものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち、本発明の主旨を逸脱することなく、種々の変形、改良、修正、簡略化などを上記実施の形態に加えた他の形態を適用して、本発明を実施することができる。
【0117】
例えば、上記実施形態例では、圧力発生手段として圧電アクチュエータを用いたが、静電力や磁力を利用した電気機械変換素子や、沸騰現象を利用して圧力を発生させるための電気熱変換素子など、他の圧力発生手段を用いてもかまわない。また、圧電アクチュエータとしても、本実施形態例で使用した単板型の圧電アクチュエータの他に、縦振動タイプの積層型圧電アクチュエータなど、別の形態のアクチュエータを用いてもかまわない。
【0118】
また、上記実施形態例では、複数のプレートの積層によって流路を形成しているが、プレートの構成、材質などは上記実施形態例に限定されるわけではない。例えば、上記実施形態例ではノズルプレート又は供給路プレートを共通流路のエアダンパとして用いたが、エアダンパを構成する専用のプレートを挿入するなど、別のプレート構成のヘッドに対しても、本発明を適用することは可能である。また、セラミックス、ガラス、樹脂、シリコンなどの材料を用いて、流路を一体成型したようなヘッドに対しても、本発明は同様に適用可能である。
【0119】
また、共通流路の形状は、図5のように共通流路の両側壁にくびれ(段差)を有する形状に限定されるわけではなく、図20のように共通流路の片側のみにくびれを設けた形状など、他の形状を用いても同様の効果を得ることが可能である。
【0120】
また、共通流路構成は、図14に代わって、図21(a)、(b)、(c)に示す構成とすることも可能である。図21(a)は第2共通流路を上下に分割せずに、第2共通流路の両端にインク供給口を設けた例である。この場合にも、第2共通流路の長さlpは図14と同一となる。また、図21(a)の流路構成では、第2共通流路に2方向からインクが供給されるため、ゴミ等によって第2共通流路の一部に流路詰まりが発生しても、吐出不良の発生を防止できるという効果がある。
【0121】
また、図21(b)は、第2共通流路の中央部にインク供給口を設けた例である。この場合にも、第2共通流路の長さlp’は図14と同一となる。また、本構造では、インク供給口が一箇所となるため、インク供給系の構造が簡略化でき、ヘッドコストの低減等に有利となる。また、図21(c)は第2共通流路の両側に共通流路を連結した例である。この場合、共通流路の長さを半分にすることができるため、共通流路の所要断面積を低減できるという効果が得られる。なお、図21に示した共通流路構成は、本発明の好適な実施形態例を示したものであり、これ以外の共通流路構成とすることも可能である。
【0122】
また、共通流路構成は、図18に代わって、図22(a)、(b)、(c)に示す構成とすることも可能である。図22(a)は共通流路4を上下に分割せずに、共通流路4の両端を第2共通流路16に接続した例である。この場合、共通流路4には2方向からインクが供給されるため、ゴミ等によって共通流路の一部に流路詰まりが発生しても、吐出不良の発生を防止できるという効果がある。
【0123】
また、図22(b)は、上下に配置した第2共通流路16の夫々に2個のインク供給口17を設けた例である。この場合には、第2共通流路の長さlp’を減少できるため、第2共通流路の所要幅を低減でき、副走査方向のヘッド全長を減少できるという効果が得られる。ヘッド全長の縮小は、前述したように、安定した用紙搬送を実現する上で有利となる。
【0124】
また、図22(c)は共通流路4及び上下に二分割されている第2共通流路16をそれぞれ二分割した例である。この場合、図22(b)と同様、第2共通流路の所要幅を低減でき、副走査方向のヘッド全長を減少できるという効果と共に、共通流路及び第2共通流路内におけるインクの淀み点(流速の遅い部分)の発生を防ぐことができ、共通流路及び第2共通流路内での気泡残留を抑制する上で有利となる。なお、図22に示した共通流路構成は、本発明の好適な実施形態例を示したものであり、これ以外の共通流路構成とすることも可能である。
【0125】
また、上記実施形態例では、圧力発生室の形状を四角形としたが、円形や六角形など、他の形状の圧力発生室を用いることも可能である。更に、上記実施形態例では、ノズルの配置をほぼ格子状の配列としたが、ノズル配列はほぼ格子状のものに限定されるわけではなく、その他の2次元的配列方法を用いた場合においても本発明を適用することは可能である。
【0126】
また、上記の実施形態例では記録紙上に着色インクを吐出して文字や画像などの記録を行うインクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置を例にとったが、本明細書におけるインクジェット記録とは、記録紙上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、記録媒体は紙に限定されるわけではなく、また、吐出する液体も着色インクに限定されるわけではない。例えば、高分子フィルムやガラス上に着色インクを吐出してディスプレイ用のカラーフィルターを作製したり、溶融状態のハンダを基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成したりするなど、工業的に用いられる液滴噴射装置一般に対して、本発明を利用することも可能である。
【0127】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ノズル配列密度の高いマトリクス配列ヘッドを実現することができ、記録速度の極めて高いインクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置を実現することができる。
【0128】
また、本発明によれば、共通流路を介した音響的クロストークや、多ノズル同時吐出時に発生する吐出不安定化現象を防止することができ、吐出特性の均一性及び安定性に優れたインクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置を実現することが可能となる。
【0129】
更に、本発明によれば、共通流路内での気泡残留を防ぐことができ、信頼性の高いマトリクス配列ヘッド及びインクジェット記録装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態例のインクジェット記録ヘッドの断面図である。
【図2】本発明に係わる第1実施形態例のインクジェット記録ヘッドのプレート構成を示す斜視図である。
【図3】マトリクス配列ヘッドのイジェクタ配列を説明するための模式図である。
【図4】インク滴吐出実験で用いた駆動電圧波形を示すグラフである。
【図5】インクジェット記録ヘッドの平面形状を示す模式図である。
【図6】音響的クロストークの解析に用いた等価電気回路を示す回路図である。
【図7】共通流路の音響容量と音響的クロストークの発生率との関係を示すグラフである。
【図8】リフィル時間の解析に用いた等価電気回路を示す図である。
【図9】共通流路の音響容量とリフィル時間との関係を示すグラフである。
【図10】本発明に係わる第2実施形態例のインクジェット記録ヘッドのプレート構成を示す斜視図である。
【図11】第2実施形態例のインクジェット記録ヘッドの断面図である。
【図12】第2実施形態例のインクジェット記録ヘッドの平面形状を示す図である。
【図13】本発明に係わる第3実施形態例のインクジェット記録ヘッドの共通流路配置を示す図である。
【図14】第3実施形態例におけるインク供給系の構成を示す図である。
【図15】多ノズル連続吐出時における流路内圧力変化の解析に用いた等価電気回路を示す図である。
【図16】共通流路内圧力とリフィル時間の関係を示すグラフである。
【図17】第3実施形態例のインクジェット記録ヘッドの吐出特性を示すグラフである。
【図18】本発明に係わる第4実施形態例のインクジェット記録ヘッドの共通流路配置を示す図である。
【図19】本発明に係わるインクジェット記録装置の一実施形態例を示す図である。
【図20】第1実施形態例のインクジェット記録ヘッドの平面形状を示す図である。
【図21】第3実施形態例におけるインク供給系の構成を示す図である。
【図22】第4実施形態例のインクジェット記録ヘッドの共通流路配置を示す図である。
【図23】従来のインクジェット記録ヘッドの基本構造を示す断面図である。
【図24】インク滴吐出時におけるメニスカスの動きを説明するための模式図である。
【図25】リフィル時におけるメニスカスの位置変化を示すグラフである。
【図26】マルチノズル型インクジェット記録ヘッドの基本構造を示す図である。
【図27】マトリクス配列型のインクジェット記録ヘッドの基本構造を示す図である。
【図28】従来のマトリクス配列ヘッドの基本構造を示す図である。
【図29】マトリクス配列ヘッドの等価電気回路を示す図である。
【図30】従来のマトリクス配列ヘッドの吐出特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1:圧力発生室
2:ノズル
3:運通路
4:共通流路
5:インク供給路
6:振動板
7:圧電アクチュエータ
8:インク滴
9:メニスカス
10:イジェクタ
11:ノズルプレート
12:共通流路プレート
13:供給路プレート
14:運通路プレート
14’:プレート
15:圧力発生室プレート
16:第2共通流路
17:インク供給路
18a、18b:インク管路
19:フィルタ
20:インクタンク
21:インク供給系
22:凹部
23、24:流路
25:流路プレート
26:エアダンパ
28:R部
31:キャリッジ
33:主走査機構
34:記録用紙
35:副走査機構
38:バンド領域
40、41:隔壁
Claims (16)
- それぞれが圧力発生室、該圧力発生室に連通するノズル、及び、圧力発生手段を含み、2次元的に配列された複数個のイジェクタと、前記イジェクタを複数個連結する共通流路を含むインク供給系とを有し、
前記共通流路を通じて前記圧力発生室にインクが充填され、前記圧力発生手段によって前記圧力発生室内のインクに圧力変化を生じさせ、前記ノズルからインク滴を吐出させるインクジェット記録ヘッドであって、
前記共通流路が、前記圧力発生室と平面的に重なり合うように配置されており、かつ、その共通流路を挟んで隣接する前記ノズルの間で幅の狭い部分となりそれ以外の部分で幅の広い部分となるくびれ形状であることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。 - 前記ノズルを形成する部材が前記共通流路のエアダンパを兼ねることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記ノズルを形成する部材が樹脂フィルムで構成されていることを特徴とする、請求項1又は2の何れかに記載のインクジェット記録ヘッド。
- c c を前記圧力発生室の音響容量とすると、前記共通流路の音響容量c p が次の条件式c p >20c c を満足するように設定されていることを特徴とする、請求項1乃至3の内の何れか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
- c n を前記ノズルの音響容量とすると、前記共通流路の音響容量c p が次の条件式c p >10c n を満足するように設定されていることを特徴とする、請求項1乃至4の内の何れか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記ノズルからインク滴を連続吐出した際のリフィル時間が、前記インク供給系内の準定常的インク流れによって生じる前記共通流路内の圧力降下によって、意図する吐出周期よりも大きくならないように、前記インク供給系の流路抵抗を設定したことを特徴とする、請求項1乃至5の内の何れか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記ノズルからインク滴を連続吐出した際の前記共通流路の圧力降下が800Pa以下となるように前記インク供給系の流路抵抗が設定されていることを特徴とする、請求項6に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記くびれ形状部分における前記共通流路の平面形状が滑らかな曲線によって構成されていることを特徴とする、請求項1乃至7の内の何れか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記インク供給系が、複数の前記共通流路と、複数の前記共通流路を相互に連通する第2共通流路とを含むことを特徴とする、請求項1乃至8の内の何れか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記第2共通流路にインクを供給するためのインク供給口が、前記第2共通流路の中央付近に設けられていることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記第2共通流路にインクを供給するためのインク供給口が、1個の前記第2共通流路に対して複数個設けられていることを特徴とする、請求項9又は10の何れかに記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記第2共通流路を複数有することを特徴とする、請求項9乃至11の内の何れか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記複数の共通流路を二つ以上のグループに分け、各グループの前記共通流路をそれぞれ別々の前記第2共通流路に接続したことを特徴とする、請求項12に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記共通流路がインクジェット記録ヘッドの主走査方向にほぼ平行となるように配置され、前記第2共通流路が前記主走査方向にほぼ垂直となるように配置されていることを特徴とする、請求項9乃至13の内の何れか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記共通流路がインクジェット記録ヘッドの主走査方向にほぼ垂直 となるように配置され、前記第2共通流路が前記主走査方向にほぼ平行となるように配置されていることを特徴とする、請求項9乃至13の内の何れか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 請求項1乃至15の内の何れか1項に記載のインクジェット記録ヘッドを備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
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