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JP4170743B2 - 新規遺伝子asb4及びその形質転換体と遺伝子産物の利用法 - Google Patents

新規遺伝子asb4及びその形質転換体と遺伝子産物の利用法 Download PDF

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哲 細山
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哲 久原
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浩 小畑
洋二 秦
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  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、麹菌のフェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼ蛋白質、該蛋白質をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組み換えベクター、該組み換えベクターを含有する形質転換体、該遺伝子を含有する組み換え麹菌、該形質転換体を用いるフェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼ蛋白質を生産させることによってフェリクローム高生産麹菌を育種する方法、蛋白質の発現を麹菌菌体内で抑制させフェリクローム非生産麹菌を育種する方法、蛋白質を麹菌以外の生物で発現させフェリクローム類を生産する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄イオンは一部の乳酸菌を除く、ほとんどすべての生物にとって必須の原子である。鉄は、生体内ではFe(II)やFe(III)の形態で利用され、主に酸化還元に関与する酵素群の補欠因子として機能する。しかしながら、一般的に鉄は自然界において鉄鉱石として存在し、可溶化されたイオン状態としてはほとんど存在しない。さらに鉄鉱石から微生物の働きにより可溶化された鉄イオンも、すぐに不溶性の酸化物や水酸化物となるため、生物が利用できる鉄イオンはきわめて微量である。細菌や放線菌、真核微生物は、このような微量な鉄イオンを効率的に獲得するために、シデロフォアと呼ばれる分子量1500以下の低分子の鉄イオンキレート物質を生産する。このシデロフォアに鉄イオンをキレートすることにより、貴重な鉄イオンの不溶化を防ぎ、鉄イオンを優先的に利用することを図っている。また鉄イオンは生物にとって必須のイオンであるが、過剰に存在すると遊離のラジカルの発生を促し、逆に生体に危害を加える。シデロフォアは鉄イオンの獲得と同時に、このような鉄イオンの無害化にも大きく寄与している。シデロフォアは非キレート状態では無色であるが、鉄イオンをキレートすると、赤色を示し、可視光の吸収を示すことが知られている。
【0003】
現在までに様々なシデロフォアが同定されているが、糸状菌が生産するシデロフォアはhydroxamates familyと呼ばれ、一般に構成アミノ酸誘導体としてN−ヒドロキシオルニチンを含む。研究用モデル糸状菌、工業用微生物、病原性糸状菌として幅広く研究が進められているアスペルギルス属糸状菌は、hydroxamates familyの中でもヘキサペプチドであるフェリクローム類とフザリニン類と呼ばれるシデロフォアを生産する。前者は、N−ヒドロキシオルニチンのトリペプチドにグリシン、セリン、アラニンが環状ペプチドを形成している。一方、後者では一部のN−ヒドロキシオルニチンのN位が無水メバロン酸によってアシル化されている特徴を有する。糸状菌はこのような多種多様なシデロフォアを生産することにより、鉄イオンを優先的に獲得し、自然界での生存競争に活用しているものと考えられる。
【0004】
一方、清酒醸造では、アスペルギルス・オリゼを蒸米上に生育させて「麹」を作成し、清酒醸造の副原料として利用している。この麹造りにおいてアスペルギルス・オリゼが大量のフェリクローム類(中でも主成分はフェリクリシン)を生産し、これが酒造用水の鉄イオンをキレートし、清酒が着色することが知られている。従って、清酒醸造においては、シデロフォアであるフェリクローム類が、品質劣化の原因であり、できるだけフェリクローム類を生産しない菌株の育種が進められてきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
このように、麹菌(A.oryzae)はフェリクローム類を大量に生産することが古くから知られているが、その生合成系に関しては、2001年までにはほとんど明らかになっていない。よって、フェリクローム低生産菌の育種は主に、スクリーニング法や変異法に頼っていた。また、清酒醸造とは別の側面からは、近年、このシデロフォアの鉄キレート力は、貧血症の医薬としても利用される可能性が指摘されている。麹菌が産生するフェリクロームも鉄イオン結合能力については非常に優れているが、その生産性の向上が困難で工業レベルでの生産の対象とはなっていない。よって、フェリクローム類の生合成遺伝子の同定は、麹菌によるフェリクローム類の生産を自由に調節できる可能性を与える。すなわち、清酒醸造においては、フェリクリシン生合成に関与する遺伝子の発現が抑制できれば、全くフェリクリシンを生産しない株の育種が可能となる。また、医薬品製造においては、生合成系をより活発に誘導させることにより、大量のフェリクリシン生産が可能となる。さらに麹菌が生産するフェリクリシンは清酒や酒粕として長年摂取されており、極めて安全性の高い物質である。麹菌によりフェリクリシンが大量に生産できれば、医薬品から食品まで幅広い応用が可能となる。
【0006】
現在までに我々は、麹菌のフェリクローム生合成に関与する遺伝子群として、フェリクローム生合成を負に制御する転写制御因子sreO(特願2001−83640)とフェリクローム生合成の第一段階を触媒するオルニチンN5−オキシゲナーゼをコードするasb1(特願2001−176264)、麹菌のフェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼ遺伝子をコードするasb2(特願2001−324112)、麹菌のフェリクローム生合成に関与するクラスター遺伝子asb3、asbT、ankO、asbR(特願2001−324181)がクローニングされている。
【0007】
しかし、フェリクローム生合成におけるペプチド結合の合成に関与するペプチドシンテターゼ遺伝子asb2にはpfamによるドメイン構造解析(例えば、非特許文献2参照)から2つのアミノ酸活性化領域しかコードされておらず、6アミノ酸からなるフェリクロームを合成するためには別のペプチドシンテターゼ遣伝子の存在が示唆されていた。2002年度に一部公開された麹菌のゲノム遺伝子配列から、上記のフェリクローム生合成に関与する新規なペプチドシンテターゼ遺伝子を探索することにより、有意な遺伝子のクローニングが可能であるとの新規着想を得た。
【0008】
【非特許文献1】
蔭山公雄編、「灘の酒用語集」、灘酒研究会、昭和54年10月1日、P.145
【非特許文献2】
ベイトマン他(Bateman et al.)、「ニュークレイック アシッズ リサーチ(Nucleic Acids Res.」、30(1)、2002、p.276−280。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、麹菌Aspergillus oryzaeのフェリクローム生産を自由に制御するために、麹菌のフェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼ遺伝子を提供することにある。本発明の他の目的は、本遺伝子を含有する組み換えベクターとこの組み換えベクターを含有する形質転換体を提供することにある。
【0010】
現在までに麹菌のフェリクローム生合成に関与する遺伝子群としてフェリクローム生合成を負に制御する転写制御因子sreO(特願2001−83640)、フェリクローム生合成の第−段階を触媒するオルニチンN5オキシゲナーゼをコードするasb1(特願2001−176264)、麹菌のフェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼ遺伝子をコードするasb2(特願2001−324112)、麹菌のフェリクローム生合成に関与するクラスター遺伝子asb3、asbT、ankO、asbR(特願2001−324181)がクローニングされている。しかし、フェリクローム生合成におけるペプチド結合の合成に関与するペプチドシンテターゼ遺伝子asb2にはpfamによるドメイン構造解析から、2つのアミノ酸活性化領域しかコードされておらず、6アミノ酸からなるフェリクロームを合成するためには別のペプチドシンテターゼ遺伝子の存在が示唆されていた。
【0011】
しかしながら、従来、このようなフェリクローム生合成におけるペプチド結合の合成に関与する新規なペプチドシンテターゼ遺伝子が取得できていないために、麹菌のフェリクローム生産についてはさまざまな分野に応用が期待されるがいまだに効率的な活用がなされていない。従って、2002年度に一部公開された麹菌のゲノム遺伝子配列から新規なペプチドシンテターゼ遺伝子が取得できれば麹菌でのフェリクローム生合成メカニズムがすべて解明され、フェリクローム生産抑制や高生産が容易に制御できるといった有用な用途への途が拓ける。
【0012】
このような観点から、本発明の目的の一つは、上記形質転換体を用いるペプチドシンテターゼ蛋白質の麹菌体内での発現を抑制することによって、米麹を用いた固体培養でフェリクロームを生産しない麹菌を提供することにある。その結果、該麹菌を清酒、味噌、醤油、味醂などの我が国独自の醸造産業へ利用することが可能となる。もう一つの目的は、該遺伝子の発現を遺伝子工学的手法を用いて高めることによって、あらゆる培養条件下でフェリクロームを高生産する麹菌を提供することにある。またこうして生産されたフェリクロームを鉄キレート剤としての試薬、ならびに貧血の改善効果が期待できる機能性食品への添加に提供することが可能となる。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、先ずはじめに、麹菌について検討を行った。
麹菌A.oryzaeは清酒、醤油、味噌などの我が国の伝統的酵素産業で使用されてきた糸状菌である。本菌株の特徴は、上記発酵産業で有用な蛋白質や低分子成分を非常に大量に生産することである。本菌株が持つ高い蛋白質生産能と醸造微生物としての安全性から、異種蛋白質生産の宿主として注目されている(Biotechnology, 6, 1419 (1988)、特開昭62−272988)。本発明者らの研究から、A.oryzaeを用いた異種蛋白質生産においては、アスペルギルス属などの近種の遺伝子であれば、その生産能はさらに増大することが認められた。特に、A.oryzaeの遺伝子を、A.oryzaeの高発現プロモーター制御下で発現させた場合、非常に大量の蛋白質が生産されることを見出した(特開平11−154271、特願2000−36754)。また、A.oryzaeは、上記のような蛋白質、酵素のみならず、産業的にも非常に貴重な低分子成分の生産も報告されている。なかでも、麹菌が固体培養で生産するフェリクロームも貧血などの鉄欠乏症用の機能性成分としても非常に注目されている物質である。
【0014】
この麹菌のフェリクロームを医薬・食品に利用するためには、生産性をさらに向上させる必要があるが、変異法などの既存の菌株育種方法では、工業生産レベルにまで生産性が向上した変異株の取得はできなかった。そこで、フェリクローム生合成に関与する遺伝子を単離し、これらの遺伝子の発現能を強化することによりフェリクロームの大量生産が可能であると考えた。麹菌におけるフェリクローム生合成経路については、その生合成の第一段階はオルニチンN5−オキシゲナーゼによるオルニチンのヒドロキシル化であり、続いてペプチドシンテターゼによるN−ヒドロキシオルニチンのトリペプチドにグリシン、セリン、アラニンの環状ペプチド化であると考えられる。
【0015】
現在までに菌のフェリクローム生合成に関与する遺伝子群としてフェリクローム生合成を負に制御する転写制御因子sreO(特願2001−83640)、フニリクローム生合成の第一段階を触媒するオルニチンN5オキシゲナーゼをコードするasb1(特願2001−176264)、麹菌のフェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼ遺伝子をコードするasb2(特願2001−324112)、麹菌のフェリクローム生合成に関与するクラスター遺伝子asb3、asbT、ankO、asbR(特願2001−324181)がクローニングされている。しかし、フェリクローム生合成におけるペプチド結合の合成に関与するペプチドシンテターゼ遺伝子asb2にはpfamによるドメイン構造解析から2つのアミノ酸活性化領城しかコードされておらず、6アミノ酸からなるフェリクロームを合成するためには別のペプチドシンテターゼ遺伝子の存在が示唆されていた。このようなフェリクローム合成に関与する新規のペプチドシンテターゼ遺伝子が取得できていないために、麹菌のフェリクローム生産についてはさまざまな分野に応用が期待されるがいまだに効率的な活用がなされていない。そこでこの新規なペプチドシンテターゼの遺伝子が取得できれば、フェリクローム生合成メカニズムの分子レベルでの全容が解明され、フェリクロームの生産を自由に制御できる遺伝子組み換え麹菌を育種でき、フェリクロームの工業生産が可能になるとの新規着想を得た。
【0016】
以下は麹菌が生産するフェリクローム類の中でも、最も含有量の多いフェリクリシンの生産を中心に記述するが、本発明は全てのフェリクローム類に応用が可能な技術であり、フェリクリシンだけに限定するものではない。
【0017】
本発明において、清酒醸造において清酒の着色を起こす鉄イオンキレート低分子フェリクリシンを貧血改善用の機能性成分などとして大量生産させるために、フェリクリシン生合成に関与する新規なペプチドシンテターゼ蛋白質の遺伝子クローニングを行い、フェリクリシンの工業生産に適した遺伝子組み換え麹菌を育種することを試みた。
【0018】
まず、2002年度に一部公開された麹菌のゲノム遺伝子配列から上記のフェリクローム生合成に関与する新規なペプチドシンテターゼ遺伝子の探索が可能であると考えた。麹菌ゲノムデータに含まれるコンティグ配列の中でBlast検索結果から、多機能性合成酵素遺伝子と考えられる遺伝子を抽出した。その中でGene FindingされたCon1341_h_714とCon1341_mid−Con1341_2724−r1は、Ustilago maydisとAureobasidium pullulansのフェリクローム生合成ペプチドシンテターゼ遺伝子と高い相同性を示した。両遺伝子は同じコンティグ上に存在し、さらに塩基配列の確認とBlat、FASTAによる相同性検索から1本のポリペプチドをコードする1つの連続した遺伝子をコードする事が判明した。さらに相同性からN末端に1つのイントロンの存在が示唆された。鉄制限培養した麹菌菌体から調製したポリA+RNAを鋳型にN末端付近のcDNA解析から1つのイントロンの位置を決定した。
【0019】
その結果、本遺伝子は、4760アミノ酸残基からなる蛋白質をコードしており、イントロンを1つ含んでいた。また、Ustilago maydisのsid2遺伝子産物とアミノ酸レベルで27%の相同性を有していた。得られた遺伝子をasb4と命名した。asb4はノザン解析の結果、他のフェリクローム生合成遺伝子であるasb1、asb2、asb3、asbT、asbR同様に鉄制限培養条件下で発現が認められ、鉄存在下でその発現の抑制が認められた。
【0020】
次に、asb4の機能を同定するために、本遺伝子の麹菌での大量発現を試みた。フェリローム生合成遺伝子であるasb1、asb2、asb3をmelOプロモーター(特願平11−154271)支配下で高発現させた麹菌のasb4の5’非翻訳領域1−kbを、ピリチミン耐性遺伝子(Kubodera Tetal.Biosci.Biotechnol Biochem、64(7)、pp1416−1421、2000)をマーカーとして、melOプロモーターと置換した。得られた形質転換体は、親株の1.4倍のフェリクローム量を生産し、最大0.7g/1L−brothのフェリクロームの菌体外生産を示した。本菌株を用いることによって、鉄制限培養条件下で大量の麹菌フェリクロームを提供することが可能である。
【0021】
このように単離した遺伝子は、単独であるいはmel0やglaB遺伝子プロモーター(特願平11−154271、特開平11−243965)のような高発現プロモーターと共に、A.oryzaeにて発現させて、フェリクリシンの生産を制御しうるものである。遺伝子導入方法は、例えば、宿主としてniaD変異株を用いる公知方法により、目的遺伝子とマーカー遺伝子であるniaD遺伝子を同時に導入する。(S.UnkleらMol.Gen.Genet.,218,p.99−104、1989)この遺伝子導入の際に、ベクター配列などの異種遺伝子を排除することにより、異種遺伝子を全く含まないセルフクローニング株の形質転換体を得ることができる。niaD変異株は、硝酸を資化できない麹菌変異株(Nitrate Reductase欠損株)であって、例えばAspergillus oryzae1013−niaD(FERM P−17707)が挙げられる。
【0022】
以下に、本発明の詳細について述べる。
【0023】
既にクローニングした麹菌のフェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼ遺伝子asb2(特願2001−324112)の1924アミノ酸残基には、pfam解析から、2つのアミノ酸活性化領域(82−490アミノ酸残基と980−1367アミノ酸残基)しか同定されていない。しかし、ペプチドシンテターゼは、−般に生合成されるペプチドの構成アミノ酸数とアミノ酸活性化領域数は一致している。よって、6アミノ酸残基からなる麹菌のフェリクロームの合成には、asb2以外に理論上4つのアミノ酸活性化領域をもつペプチドシンテターゼが必要と考えられる。
【0024】
しかし、フェリクロームクラスター遺伝子内の60−kbにはasb2以外のペプチドシンテターゼ遺伝子は存在しなかった。そこで、麹菌のゲノム遺伝子コンティグ中に新規なフェリクローム合成に関与するペプチドシンテターゼ遺伝子が存在することが示唆されているとの新規着想を得た。そして麹菌ゲノムデータに含まれるコンティグ配列の中でBlast検索結果から、多機能性合成酵素遺伝子と考えられる遺伝子を抽出した。その中でGene FindingされたCon1341_h_714とCon134_mid−Con1341−2724−r1は、Ustilago maydisとAureobasidium pullulansのフェリクローム生合成ペプチドシンテターゼ遺伝子と高い相同性を示した。両遺伝子は同じコンティグ上に存在し、さらに塩基配列の確認とBlast、FASTAによる相同性検索から、1本のポリペプチドをコードする1つの連続した遺伝子をコードする事が判明した。さらに、相同性からN末端1−kb中に1つのイントロンの存在が示唆された。
【0025】
鉄制限培養した麹菌菌体から調製したポリA+RNAを鋳型にN末端1−kbのcDNA解析を取得し、塩基配列を決定した結果、1つのイントロンの位置を決定した。本遺伝子は、配列番号1(図5〜7)に示す4760アミノ酸残基からなる蛋白質をコードしており、イントロンを1つ含んでいた。コーディング領域は配列番号2(図8〜15)の1から14341bpであり、イントロンは538−595bpである。また、Ustilago maydisのsid2遺伝子産物とアミノ酸レベルで27%の相同性を有していた。得られた遺伝子をasb4と命名した。
【0026】
asb4にコードされる4760アミノ酸残基のpfam解析から、3つのアミノ酸活性化領域(305−815アミノ酸残基、1466−1957アミノ酸残基、2582−3066アミノ酸残基)、5つの縮合領域(973−1270アミノ酸残基、2121−2387アミノ酸残基、3205−3493アミノ酸残基、3752−4035アミノ酸残基、4305−4593アミノ酸残基)、5つのアシルキャリアー蛋白質(858−920アミノ酸残基、1985−2047アミノ酸残基、3102−3163アミノ酸残基、3649−3713アミノ酸残基、4206−4268アミ残基)からなるという新規な予測を得た。
【0027】
次にasb4の発現条件の解析を行うためにノザン解析を行った。本遺伝子は他のフェリクローム生合成遺伝子であるasb1、asb2、asb3、asbT、asbR同様に鉄制限培養条件下で発現が認められ、鉄存在下でその発現の抑制が認められた。
【0028】
さらに、asb4の麹菌での発現解析を行った。先ず、asb1、asb2、asb3をmelOプロモーター支配下で高発現させた形質転換体を作製した。本菌株は、asb1、asb2、asb3を液体培養で高発現しており、30℃7日間の鉄制限の液体培養で対照株の約17倍に相当する0.5g/1L−brothのフェリクローム生産量を示した。次に、本形質転換体のasb4遺伝子の高発現を試みた。すなわち、上記形質転換体のasb4の5’非翻訳領域1−kbを、ピリチミン耐性遺伝子(Kubodera T et al.Biosci.Biotechnol Biochem、64(7)、pp1416−1421、2000)をマーカーとしてmelOプロモーターと置換した。得られた形質転換体3株は、親株の1.4倍のフェリクローム量を生産し、最大0.7g/1L−brothのフェリクロームの菌体外生産を示した。本菌株を用いることによって、麹菌のフェリクロームの大量生産が可能となることが確認された。
【0029】
プラスミドpUC119にAspergillus oryzaeのniaD、melOプロモーター、asb3、melOプロモーター、asb1を組み込んでプラスミドpNIA13を構築した。また、プラスミドpUC118にAspergillus oryzaeのSC、asb2、melOプロモーターを組み込んでプラスミドpSC2を構築した。このようにして構築したプラスミドpSC2、pNIA13の順にAspergillus oryzae M−NS4(niaD、SC)に形質転換した。この形質転換体は、asb1、asb2、asb3遺伝子を含んでおり、melOプロモーター支配下で高発現することが上記のように確認された。
【0030】
また、プラスミドpUC118に、asb4のプロモーターの一部、A.oryzaeのピリチアミン耐性遺伝子(PT)、melOプロモーター、asb4のコード領域の一部を組み込んだプラスミドpPT4を構築した。
【0031】
上記によって得たasb1、asb2、asb3で形質転換した形質転換体と組み換えプラスミドpPT4を混合して、該形質転換体にpPT4を形質転換した。得られた形質転換体は、これをAspergillus oryzae ASB1−4と命名した。この新規形質転換体は、asb1、asb2、asb3、asb4を含有した新規組換えベクターpASB1−4を含有するものであった。pSC2、pNIAB、pPT4の宿主であるA.oryzae M−NS4(niaD、sC)は、独立行政法人酒類総合研究所より申請により分譲してもらった株である。(参考文献:Yamada.Oet al.Bioeci Biotechnol Biochem. 61,pp 1367-1369,1997)また、上記プラスミドの形質転換は、公知方法に従った。予って本形質転換体は、当業者に容易に育種できる。
【0032】
以上の結果より、クローニングした遺伝子断片asb4には、フェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼがコードされていることが確認できた。また、この遺伝子を用いて、麹菌のフェリクローム生合成を鉄制限下で高生産あるいは非生産させることが可能であり、用途に応じたフェリクローム生産の改変が分子レベルで可能となり、様々な産業分野に応用が可能であることも確認した。
以下、本発明の実施例について述べる。
【0033】
【実施例1】
麹菌ゲノム配列コンティグからの新規なペプチドシンテターゼ遺伝子のクローニング
麹菌A.oryzaeのフェリクローム生合成におけるペプチド結合の合成に関与する新規なペプチドシンテターゼの遺伝子クローニングを行うために、麹菌ゲノム配列コンティグの検索を行った。麹菌ゲノムデータに含まれるコンティグ配列の中で、Blast検索結果から、多機能性合成酵素遺伝子と考えられる遺伝子を抽出した。その中でGene FindingされたCon1341_h_714とCon1341−mid−Con1341−2724−r1は、Ustilago maydisとAureobasidium pullulansのフェリクローム生合成ペプチドシンテターゼ遺伝子と高い相同性を示した。両遺伝子は同じコンティグ上に存在し、さらに塩基配列の確認とBlast、FASTAによる相同性検索から1本のポリペプチドをコードする1つの連続した遺伝子をコードする事が判明した。さらに相同性からN末端1−kb中に1つのイントロンの存在が示唆された。
【0034】
この1−kbの領域のcDNAを得るためにRT−PCRを行った。30℃、4日間鉄制限培地(2%グルコース、0.6%アスパラギン、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.1%硫酸マグネシウム、0.04%塩化カルシウム、pH6.0)で液体培養した麹菌菌体からニッポンジーン社ISOGENを利用して全RNAを抽出した。その全RNAから宝酒造Oligotex−dT30<Super>mRNA purification kitを用いてmRNAを抽出した。得られたmRNA0.5μgをもとに宝酒造のTakara RNA LA PCR kit(AMV) ver.1.1によりRT−PCRを試みた。プライマーはP1:配列番号3(図16)とP2:配列番号4(図17)を利用した。反応条件は、以下に従った。
【0035】
PCR条件
・30℃(10分)、42℃(60分)、99℃(5分)、5℃(5分)、96℃(5分)、1サイクル
・96℃(20秒)、45℃(30秒)、72℃(3分)、30サイクル
・72℃(7分)、1サイクル
【0036】
反応液をアガロースゲル電気泳動で解析を行っ結果、約1−kbのフラグメントの増幅が認められた。本増輻産物の塩基配列を決定した結果、1つのイントロンの位置を決定した。本遺伝子は配列番号1に示す4760アミノ酸残基からなる蛋白質をコードしており、イントロンを1つ含んでいた。コーディング領域は配列番号2の1から14341bpであり、イントロンは538−595bpである。また、Ustilago maydisのsid2遺伝子産物とアミノ酸レベルで27%の相同性を有していた。得られた遺伝子をasb4と命名した。
【0037】
【実施例2】
asb4遺伝子産物のpfamによる蛋白質モチーフ解析
フェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼasb2、asb4は多機能ドメインからなる蛋白質をコードする。これらのドメイン解析をPfa(Bateman et al,Nucleic Acids Res,30(1),pp276−280,2002)により同定した。その結果、図1(図中、AMPはアミノ酸活性化ドメイン、四角はアシルキャリアー蛋白質、CONDENSATIONは縮合ドメイン、数字はアミノ酸残基の位置をそれぞれ示す。)に示すようなドメイン構造を有することが明らかとなった。以下の表1に詳細なドメイン情報を示した。
【0038】
(表1)
asb2、asb4遺伝子産物のドメイン構造
asb2
─────────────────────────
82−490 アミノ酸活性化ドメイン
980−1367 アミノ酸活性化ドメイン
602−667 アシルキャリアー蛋白質
1406−1499 アシルキャリアー蛋白質
706−978 縮合ドメイン
1512−1787 縮合ドメイン
asb4
─────────────────────────
305−815 アミノ酸活性化ドメイン
1466−1957 アミノ酸活性化ドメイン
2582−3066 アミノ酸活性化ドメイン
858−920 アシルキャリアー蛋白質
1985−2047 アシルキャリアー蛋白質
3102−3163 アシルキャリアー蛋白質
3649−3713 アシルキャリアー蛋白質
4206−4268 アシルキャリアー蛋白質
973−1270 縮合ドメイン
2121−2387 縮合ドメイン
3205−3493 縮合ドメイン
3752−4035 縮合ドメイン
4305−4593 縮合ドメイン
─────────────────────────
【0039】
【実施例3】
asb4遺伝子のノザン解析
asb4遺伝子の発現条件を検討するためにノザン解析を行った。実施例1のP1、P2プライマーを用いたRT−PCRで得られた1−kbのcDNAをプローブとした。培養は月桂冠保存株である麹歯A.oryzae OSI1013株を鉄含有と鉄制限培地で30℃、4日間行った。鉄制限培地の組成は(2%グルロース、0.6%アスパラギン、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.1%硫酸マグネシウム、0.04%塩化カルシウム、pH6.0)で、鉄含有培地の組成は(2%グルコース、0.6%アスパラギン、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.1%硫酸マグネシウム、0.04%塩化カルシウム、0.01%硫酸鉄、pH6.0)である。
【0040】
両培地で液体培養した麹菌菌体からニッポンジーン社ISOGENを利用して全RNAを抽出した。得られた全RNAを1%ホルムアルデヒド変性アガロースゲルで電気泳動後、アマシャムファルマシア社製のハイボンドN+ヘアルカリトランスファーを行った。ハイブリダイゼーションは、アマシャムファルマシア社製のGene Image Labeling and Detection kitを使用した。
【0041】
得られた結果を図2(図面代用写真)に示した。図中、−(左側のパターン)は鉄制限培地、+(右側のパターン)は鉄含有培地を示す。図2に示すように、asb4は、鉄制限条件下でのみ約15−kbの巨大トランスクリプトが確認された。本遺伝子は他のフェリクローム生合成遺伝子であるasb1、asb2、asb3、asbT、asbR同様に鉄制限培養条件下で発現が認められ、鉄存在下でその発現の抑制が認められた。
【0042】
【実施例4】
asb4遺伝子の麹菌での高発現
麹菌でのasb4の機能を決定するために高発現を試みた。まず図3に示した各種プラスミドを構築した。pNIA13は、pUC119のPstI−HindIIIにA.oryzaeの4.5−kb niaD、meOプロモーター1−kbとasb31 1−kbのPstI、melOプロモーター1−kbとasb1 1.5−kbのSalIの順にサブクローニングした。pSC2は、pUC118のBamHIにA.oryzaeの3−kb sC、melOプロモーター1−kbとasb2 6−kbのBamHIの順にサブクローニングした。pPT4は、pUC118のBamHIにasb4のプロモーター4700から−3000の領城(asb4−up1)、PstIにA.oryzaeの2−kbピリチアミン耐性遺伝子(PT)、HindIIIにmelOプロモーター1−kbとasb4の開始コドンから2000bp(asb4−up2)を組み込んだ。この組み換えプラスミドpPT4には、asb4のプロモーター、コーディーング領域部分を含有している。
【0043】
形質転換は、A、oryzae M−NS4(niaD、sC)にpSC2、pNIA13の順に形質転換した。得られた形質転換体にpPT4を形質転換し、相同組み換えによりゲノム中のasb4の開始コドン上流1000bpをmelOプロモーター1−kbに置換した。この新規形質転換体は、asb1、asb2、asb3、asb4を組み込んだ新規組換えベクターpASB1−4を含有するものであり、その発現も以下により確認された。
【0044】
得られた形質転換体を鉄制限培地にて、30℃、7日間の液体培養を行った。得られた結果を図4(図面代用写真)に示す。図4(A)に示すように、pSC2、pNIA13の形質転換体(asb1〜3:+、asb4:−)は、0.52g/1L−ブロスのフェリクロームを菌体外に分泌し、一方、本発明に係る形質転換体Aspergillus oryzae ASB1−4、すなわちpSC2、pNIA13、pPT4の形質転換体(asb1〜4:+)は、0.74g/1L−ブロスという著量のフェリクロームを菌体外に分泌した。
【0045】
培養液に最終1000ppmの三塩化鉄溶液を添加した結果、図4(B)に示すように著量のフェリクロームが観察された。よって、asb4は、麹菌のフェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼ遺伝子であることが証明された。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、クローニングした遺伝子断片abs4には、フェリクローム生合成におけるペプチド結合の合成に関与する新規なペプチドシンテターゼがコードされていることが確認できた。またこの遺伝子を用いて、麹菌のフェリクローム類生合成を鉄制限下で高生産あるいは非生産させることが可能であり、用途に応じたフェリクローム類生産の改変が分子レベルで可能となり、様々な産業分野に応用が可能であることも確認した。
【0047】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】asb4及びasb2のドメイン構造を示す。
【図2】asb4の鉄制限培養条件下でのノザン解析の結果を示す図面代用写真である。
【図3】麹菌フェリクローム生合成遺伝子高発現プラスミドを示す。
【図4】麹菌フェリクローム生合成遺伝子高発現形質転換体のフェリクローム生産を示す図面代用写真である。
【図5】本ペプチドシンテターゼ蛋白質のアミノ酸配列を示す。
【図6】同上続きを示す。
【図7】同上続きを示す。
【図8】本ペプチドシンテターゼ遺伝子の塩基配列を示す。
【図9】同上続きを示す。
【図10】同上続きを示す。
【図11】同上続きを示す。
【図12】同上続きを示す。
【図13】同上続きを示す。
【図14】同上続きを示す。
【図15】同上続きを示す。
【図16】プライマーP1を示す。
【図17】プライマーP2を示す。

Claims (5)

  1. 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなり、かつフェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼ蛋白質。
  2. 配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸が1個もしくは数個欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつフェリクローム生合成に関与するペプチドシンテターゼ蛋白質。
  3. 配列番号2の塩基配列で示される、請求項1記載の蛋白質をコードする遺伝子、または、該遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする請求項2に記載の蛋白質をコードする遺伝子。
  4. 請求項に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  5. 麹菌のフェリクローム類生産の改変が分子レベルで可能な、請求項3に記載の遺伝子のプロモーター及びコーディング領域部分を含有する組換えベクターpPT4。
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