上述の動力出力装置では、変速機の変速段を変更する際に生じ得る変速ショックについては考慮されていない。例えば、クラッチのフリクション係合を伴って変速段を増速側に変更する場合や電動機の回転数の同期を伴って変速段を減速側に変更する場合には、駆動軸に予期しない正方向のトルクが作用する場合があり、これが変速ショックとなって乗員に違和感を生じさせてしまう。
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法は、変速伝達装置における変速比を変更する際の変速ショックを抑制することを目的とする。
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、電力と動力の入出力により該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に伝達可能な電力動力入出力手段と、
動力を入出力可能な電動機と、
変更可能な変速比をもって前記電動機の回転軸と前記駆動軸との動力の伝達を行なう変速伝達手段と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
前記変速伝達手段における変速比を変更する際に該変更に伴って該変速伝達手段側から前記駆動軸に作用する駆動力が増加方向に変動するときには、該変動の少なくとも一部が前記電力動力入出力手段を介して前記内燃機関から前記駆動軸に直接伝達される直達駆動力を減少させることにより打ち消されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する変速比変更時制御手段と
を備えることを要旨とする。
この本発明の動力出力装置では、変速伝達手段における変速比を変更する際に変更に伴って変速伝達手段側から駆動軸に作用する駆動力が増加方向に変動するときには、この変動の少なくとも一部が電力動力入出力手段を介して内燃機関から駆動軸に直接伝達される直達駆動力を減少させることにより打ち消されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する。従って、直達駆動力の減少をもって変速伝達手段における変速比を変更する際の変速ショックを抑制することができる。
こうした本発明の動力出力装置において、前記変速伝達手段は、係合部材の係合状態を変更することにより変速比を変更可能な手段であり、前記変速比変更時制御手段は、前記係合部材の半係合を伴って前記変速伝達手段における変速比を増速側に変更している最中に前記直達駆動力を減少させる手段であるものとすることもできる。こうすれば、係合部材の半係合により変速比を増速側に変更する際の変速ショックを抑制することができる。
また、本発明の動力出力装置において、前記変速比変更時制御手段は、前記電動機の回転数の同期を伴って前記変速伝達手段における変速比を減速側に変更している最中に前記直達駆動力を減少させる手段であるものとすることもできる。こうすれば、電動機の駆動制御による電動機の回転数の同期により変速比を減速側に変更する際の変速ショックを抑制することができる。
さらに、本発明の動力出力装置において、前記電動機から正の駆動力が出力されていないときに前記変速伝達手段における変速比の変更指示がなされて変速比を変更する際に前記直達駆動力を減少させる手段であるものとすることもできる。こうすれば、電動機から正の駆動力が出力されていない状態にも拘わらず変速比を変更する際に変速伝達手段側から駆動軸に作用する駆動力が増加方向に変動することにより運転者に与える違和感を抑制することができる。
また、本発明の動力出力装置において、前記変速比変更時制御手段は、前記内燃機関の回転数が所定回転数領域を外れない範囲で前記直達駆動力を減少させる手段であるものとすることもできる。こうすれば、直達駆動力を減少させることにより内燃機関が所定回転数領域を外れて回転するのを抑止することができる。
また、本発明の動力出力装置において、前記変速比変更時制御手段は、前記蓄電手段の入出力制限の範囲で前記直達駆動力を減少させる手段であるものとすることもできる。こうすれば、直達駆動力を減少させることにより過剰な電力が蓄電手段に入出力されるのを抑止することができる。
また、本発明の動力出力装置において、前記変速比変更時制御手段は、前記電力動力入出力手段から出力するトルクを変更することにより前記直達駆動力が減少するよう制御する手段であるものとすることもできる。この場合、前記変速比変更時制御手段は、前記内燃機関の回転数の変更を伴って前記直達駆動力を減少させる手段であるものとすることもできる。
本発明の動力出力装置において、前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸の3軸に接続され、該3軸のうちいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の1軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力可能な発電機とを備える手段であるものとすることもできるし、前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸に接続された第1の回転子と前記駆動軸に接続された第2の回転子とを有し、該第1の回転子と該第2の回転子との相対的な回転により回転する対回転子電動機であるものとすることもできる。
本発明の自動車は、
上述した各態様のいずれかの本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、内燃機関と、該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され電力と動力の入出力により該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に伝達可能な電力動力入出力手段と、動力を入出力可能な電動機と、変更可能な変速比をもって前記電動機の回転軸と前記駆動軸との動力の伝達を行なう変速伝達手段と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、前記変速伝達手段における変速比を変更する際に該変更に伴って該変速伝達手段側から前記駆動軸に作用する駆動力が増加方向に変動するときには、該変動の少なくとも一部が前記電力動力入出力手段を介して前記内燃機関から前記駆動軸に直接伝達される直達駆動力を減少させることにより打ち消されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する変速比変更時制御手段とを備える動力出力装置を搭載し、前記駆動軸に車軸が接続されて走行する
ことを要旨とする。
この本発明の自動車では、上述した各態様のいずれかの本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置が奏する効果と同様の効果、例えば、直達駆動力の減少をもって変速伝達手段における変速比を変更する際の変速ショックを抑制することができる効果や直達駆動力を減少させることにより内燃機関が通常回転領域を外れて回転するのを抑止することができる効果や直達駆動力を減少させることにより蓄電手段が過剰に充放電するのを抑止することができる効果などを奏することができる。
本発明の動力出力装置の制御方法は、
内燃機関と、該内燃機関の出力軸と駆動軸とに接続され電力と動力の入出力により該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に伝達可能な電力動力入出力手段と、動力を入出力可能な電動機と、変更可能な変速比をもって前記電動機の回転軸と前記駆動軸との動力の伝達を行なう変速伝達手段と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
前記変速伝達手段における変速比を変更する際に該変更に伴って該変速伝達手段側から前記駆動軸に作用する駆動力が増加方向に変動するときには、該変動の少なくとも一部が前記電力動力入出力手段を介して前記内燃機関から前記駆動軸に直接伝達される直達駆動力を減少させることにより打ち消されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する
ことを要旨とする。
この本発明の動力出力装置の制御方法によれば、変速伝達手段における変速比を変更する際に変更に伴って変速伝達手段側から駆動軸に作用する駆動力が増加方向に変動するときには、この変動の少なくとも一部が電力動力入出力手段を介して内燃機関から駆動軸に直接伝達される直達駆動力を減少させることにより打ち消されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する。従って、直達駆動力の減少をもって変速伝達手段における変速比を変更する際の変速ショックを抑制することができる。
図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、変速機60を介して動力分配統合機構30に接続されたモータMG2と、車両の駆動系全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32には変速機60を介してモータMG2がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力とを統合してリングギヤ32に出力する。リングギヤ32は、ギヤ機構37,デファレンシャルギヤ38を介して駆動輪39a,39bに機械的に接続されている。したがって、リングギヤ32に出力された動力は、ギヤ機構37,デファレンシャルギヤ38を介して駆動輪39a,39bに出力されることになる。
モータMG1およびモータMG2は、共に発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2の一方で発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2から生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1とモータMG2とにより電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、共にモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、回転位置検出センサ43,44から入力した信号に基づいて図示しない回転数算出ルーチンによりモータMG1,MG2の回転子の回転数Nm1,Nm2を計算している。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
変速機60は、モータMG2の回転軸48とリングギヤ軸32aとの接続および接続の解除を行なうと共に両軸の接続をモータMG2の回転軸48の回転数を2段に減速してリングギヤ軸32aに伝達可能に構成されている。変速機60の構成の一例を図2に示す。この図2に示す変速機60は、ダブルピニオンの遊星歯車機構60aとシングルピニオンの遊星歯車機構60bと二つのブレーキB1,B2とにより構成されている。ダブルピニオンの遊星歯車機構60aは、外歯歯車のサンギヤ61と、このサンギヤ61と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ62と、サンギヤ61に噛合する複数の第1ピニオンギヤ63aと、この第1ピニオンギヤ63aに噛合すると共にリングギヤ62に噛合する複数の第2ピニオンギヤ63bと、複数の第1ピニオンギヤ63aおよび複数の第2ピニオンギヤ63bを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア64とを備えており、サンギヤ61はブレーキB1のオンオフによりその回転を自由にまたは停止できるようになっている。シングルピニオンの遊星歯車機構60bは、外歯歯車のサンギヤ65と、このサンギヤ65と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ66と、サンギヤ65に噛合すると共にリングギヤ66に噛合する複数のピニオンギヤ67と、複数のピニオンギヤ67を自転かつ公転自在に保持するキャリア68とを備えており、サンギヤ65はモータMG2の回転軸48に、キャリア68はリングギヤ軸32aにそれぞれ連結されていると共にリングギヤ66はブレーキB2のオンオフによりその回転が自由にまたは停止できるようになっている。ダブルピニオンの遊星歯車機構60aとシングルピニオンの遊星歯車機構60bとは、リングギヤ62とリングギヤ66、キャリア64とキャリア68とによりそれぞれ連結されている。変速機60は、ブレーキB1,B2を共にオフとすることによりモータMG2の回転軸48をリングギヤ軸32aから切り離すことができ、ブレーキB1をオフとすると共にブレーキB2をオンとしてモータMG2の回転軸48の回転を比較的大きな減速比で減速してリングギヤ軸32aに伝達し(以下、この状態をLoギヤの状態という)、ブレーキB1をオンとすると共にブレーキB2をオフ状態としてモータMG2の回転軸48の回転を比較的小さな減速比で減速してリングギヤ軸32aに伝達する(以下、この状態をHiギヤの状態という)。なお、ブレーキB1,B2を共にオンとする状態は回転軸48やリングギヤ軸32aの回転を禁止するものとなる。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば,バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度などが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、変速機60のブレーキB1,B2の図示しないアクチュエータへの駆動信号などが出力されている。なお、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
次に、実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、変速機60の変速比を変更する際の動作について説明する。図3は、実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行される。
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の残容量SOC,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,変速機60のギヤ比Grなどの制御に必要なデータを入力する処理を行なう(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neは、クランクシャフト26に取り付けられた図示しない回転数センサにより検出されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。残容量SOCは、電流センサにより検出されたバッテリ50の充放電電流に基づいてバッテリECU52により演算されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。入出力制限Win,Woutは、残容量SOCや電池温度などに基づいてバッテリECU52により設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。変速機60のギヤ比Grは、基本的には、変速比が変更されたときのギヤの状態に基づいてHiギヤのギヤ比GhiかLoギヤのギヤ比Gloかのいずれかをギヤ比Grとして入力するものとし、変速比の変更中にはモータMG2の回転数Nm2をリングギヤ軸32aの回転数Nrで割って演算されたものをギヤ比Grとして入力するものとした。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じることにより求めることができる。
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動輪39a,39bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22から出力すべき要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。ここで、要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶しているマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。要求トルク設定用のマップの一例を図4に示す。また、要求パワーPe*は、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50の充放電要求パワーPb*と損失Lossとの和により演算されたものを設定するものとした。なお、充放電要求パワーPb*は、残容量SOCやアクセル開度Accに基づいて設定することができる。
要求パワーPe*を設定すると、設定した要求パワーPe*とエンジン22を効率よく運転させる動作ラインとに基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*を設定する(ステップS120)。エンジン22の動作ラインの一例および目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図5に示す。目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、図示するように、動作ラインと要求パワーPe*(=Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
次に、変速機60の変速比が変更されている最中(変速処理中)であるかを判定し(ステップS130)、変速処理中でないと判定されたときには変速機60の変速比を変更するよう変速要求がなされているかを判定する(ステップS140)。ここで、変速要求は、実施例では、要求トルクTr*と車速Vと変速機60の現在のギヤの状態とに基づいて予め定められたタイミングで行なうものとした。
変速処理中でなく変速要求もなされていないと判定されたときには、ステップS120で設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(=k・V)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を設定すると共に設定した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて次式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を設定する(ステップS220)。動力分配統合機構30の各回転要素の回転数とトルクの力学的な関係を示す共線図を図6に示す。図中、左のS軸はサンギヤ31の回転数を示し、C軸はキャリア34の回転数を示し、R軸はリングギヤ32(リングギヤ軸32a)の回転数Nrを示す。前述したように、サンギヤ31の回転数はモータMG1の回転数Nm1でありキャリア34の回転数はエンジン22の回転数Neであるから、モータMG1の目標回転数Nm1*はリングギヤ軸32aの回転数Nrとエンジン22の目標回転数Ne*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(1)により計算することができる。したがって、モータMG1が目標回転数Nm1*で回転するようトルク指令Tm1*を設定してモータMG1を駆動制御することにより、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させることができる。ここで、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「KP」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「KI」は積分項のゲインである。なお、図6におけるR軸上の2つの太線矢印は、モータMG1で反力を受け持ちながらエンジン22を目標回転数Ne*および目標トルクTe*の運転ポイントで運転させたときにエンジン22から出力されるトルクTe*がリングギヤ軸32aに伝達されるトルク(以下、これを直達トルクTer(=−Tm1*/ρ)と呼ぶ)と、モータMG2から出力されるトルクTm2*がリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。
Nm1*=(Ne*・(1+ρ)-k・V)/ρ …(1)
Tm1*=前回Tm1*+KP(Nm1*-Nm1)+KI∫(Nm1*-Nm1)dt …(2)
モータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを設定すると、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと変速機60のギヤ比Grとに基づいて要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに作用させるためにモータMG2から出力すべきトルクとしての仮モータトルクTm2tmpを次式(3)により計算する(ステップS230)。なお、式(3)は、図6の共線図に基づいて容易に導き出すことができる。そして、バッテリ50の入出力制限Win,WoutとモータMG1のトルク指令Tm1*と現在のモータMG1の回転数Nm1とモータMG2の回転数Nm2とに基づいて次式(4)および次式(5)によりモータMG2から出力してもよいトルクの下限,上限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを計算し(ステップS240)、仮モータトルクTm2tmpとトルク制限Tm2maxとのうち小さい方とトルク制限Tm2minとを比較し、両者のうち大きい方をモータMG2のトルク指令Tm2*に設定する(ステップS250)。これにより、モータMG2のトルク指令Tm2*を、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。なお、後述するダウンシフト処理によりモータMG2のトルク指令Tm2*の調整が要求されたときには、ステップS250で設定したトルク指令Tm2*に拘わらずその要求に従う(ステップS260)。
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr …(3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(5)
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS270)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
ステップS140で変速要求がなされたと判定されると、その変速要求が変速機60のギヤの状態をLoギヤからHiギヤに変更するアップシフトの変速要求であるかを判定する(ステップS150)。アップシフトの変速要求であると判定されると、アップシフト処理を開始し(ステップS160)、アップシフトの変速要求ではなく変速機60のギヤの状態をHiギヤからLoギヤに変更するダウンシフトの変速要求であると判定されると、ダウンシフト処理を開始する(ステップS170)。ここで、アップシフト処理は、図7に例示するアップシフト処理を実行することにより行なわれ、ダウンシフト処理は、図9に例示するダウンシフト処理を実行することにより行なわれる。以下、図3の駆動制御ルーチンの説明を中断し、これらの処理について順に説明する。
図7のアップシフト処理では、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、現在設定されているモータMG2のトルク指令Tm2*を入力し(ステップS300)、ブレーキB2の係合を解除すると共に(ステップS310)ブレーキB1をフリクション係合し(ステップS320)、入力したトルク指令Tm2*が値0以下か否かを判定する(ステップS330)。トルク指令Tm2*が値0以下でないと判定されたときには、車速VとモータMG2の回転数Nm2とを入力し(ステップS340)、次式(6)に示すように、入力した車速Vに換算係数kを乗じて得られるリングギヤ軸32aの回転数Nr(=k・V)にHiギヤのギヤ比Ghiを乗じることにより変速比を変更した後(変速後)のモータMG2のモータ回転数Nm2*を計算し(ステップS350)、入力した回転数Nm2が計算した変速後のモータ回転数Nm2*近傍に至るのを待って(ステップS360)、ブレーキB1を完全に係合して(ステップS440)、処理を終了する。一方、トルク指令Tm2*が値0以下と判定されたときには、モータMG2から正のトルクが出力されていないと判断し、イナーシャ相が開始されるまで待つ(ステップS370)。ここで、イナーシャ相が開始されたか否かは、モータMG2の回転数Nm2の変化(例えば、モータMG2の現在の回転数Nm2と前回の回転数との差)に基づいて判定することができる。イナーシャ相が開始されると、値0に設定されているフラグFに値1を設定し(ステップS380)、車速VとモータMG2の回転数Nm2とを入力し(ステップS390)、入力した車速VとHiギヤのギヤ比Ghiとに基づいて前述した式(6)により変速後のモータ回転数Nm2*を計算し(ステップS400)、ブレーキB1のフリクション係合によりモータMG2の回転数Nm2が変速後のモータ回転数Nm2*に所定値αをプラスした回転数まで低下するのを待って(ステップS410)、値1に設定したフラグFを値0に戻す(ステップS420)。その後、更に、モータMG2の回転数Nm2が変速後のモータ回転数Nm2*近傍に至るのを待って(ステップS430)、ブレーキB1を完全に係合して(ステップS440)、処理を終了する。アップシフトする際の変速機60の共線図の一例を図8に示す。図中、S1軸はダブルピニオンの遊星歯車機構60aのサンギヤ61の回転数を示し、R1,R2軸はダブルピニオンの遊星歯車機構60aおよびシングルピニオンの遊星歯車機構60bのリングギヤ62,66の回転数を示し、C1,C2軸はリングギヤ軸32aの回転数であるダブルピニオンの遊星歯車機構60aおよびシングルピニオンの遊星歯車機構60bのキャリア64,68の回転数を示し、S2軸はモータMG2の回転数であるシングルピニオンの遊星歯車機構60bのサンギヤ65の回転数を示す。図示するように、Loギヤの状態では、ブレーキB2がオンでブレーキB1がオフとされている。この状態からブレーキB2をオフすると、モータMG2はリングギヤ軸32aから切り離された状態となる。ここで、モータMG2から正のトルクが出力されているときにはその正のトルクにより回転数は増加しようとし、モータMG2から負のトルクが出力されているときにはその負のトルクにより回転数は減少しようとするが、ブレーキB1をフリクション係合させると、モータMG2から出力されているトルクの正負に拘わらず回転数は減少する。そして、モータMG2の回転数Nm2がHiギヤの回転数Nm2*近傍になったときにブレーキB1を完全に係合することにより、Hiギヤの状態に変更することができる。このように、ブレーキB1をフリクション係合させると、モータMG2から出力されているトルクの正負に拘わらずモータMG2の回転数が低下するから、これに伴って正方向のイナーシャトルクがリングギヤ軸32aに作用する。前述したフラグFは、アップシフトする際にモータMG2から正のトルクが出力されていないときに正方向のイナーシャトルクがリングギヤ軸32aに作用している状態を判定するためのフラグであり、実施例では、イナーシャ相が開始されてからHiギヤの状態に変更される直前(所定値α)までに亘って値1が設定されるようそのタイミングを定めた。
Nm2*=k・V・Ghi …(6)
図9のダウンシフト処理では、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、現在設定されているモータMG2のトルク指令Tm2*を入力し(ステップS500)、ブレーキB1の係合を解除して(ステップS510)、入力したトルク指令Tm2*が値0以下か否かを判定する(ステップS520)。トルク指令Tm2*が値0以下でないと判定されたときには、車速VとモータMG2の回転数Nm2とを入力し(ステップS530)、次式(7)に示すように、入力した車速Vに換算係数kを乗じて得られるリングギヤ軸32aの回転数Nr(=k・V)にLoギヤのギヤ比Gloを乗じることにより変速後のモータMG2のモータ回転数Nm2*を計算し(ステップS540)、入力した回転数Nm2が計算した変速後のモータ回転数Nm2*近傍に至るのを待って(ステップS550)、ブレーキB2を係合して(ステップS650)、処理を終了する。一方、トルク指令Tm2*が値0以下と判定されたときには、モータMG2から正のトルクが出力されていないと判断し、図3の駆動制御ルーチンのステップS260で調整トルクTsetをトルク指令Tm2*に設定するようトルク指令Tm2*の調整を開始する(ステップS560)。ここで、調整トルクTsetは、モータMG2の回転数Nm2を変速後のモータ回転数Nm2*に同期させるために必要な正のトルクである。そして、イナーシャ相が開始されるまで待って(ステップS570)、前述したフラグFに値1を設定すると共に(ステップS580)、車速VとモータMG2の回転数Nm2とを入力し(ステップS590)、入力した車速VとLoギヤのギヤ比Gloとに基づいて前述した式(7)により変速後のモータ回転数Nm2*を計算し(ステップS600)、モータMG2の回転数Nm2が変速後のモータ回転数Nm2*から所定値αをマイナスした値にまで上昇するのを待って(ステップS610)、値1に設定したフラグFを値0に戻すと共に(ステップS620)、調整トルクTsetによるトルク指令Tm2*の調整を終了する(ステップS630)。その後、更に、モータMG2の回転数Nm2が変速後のモータ回転数Nm2*近傍に至るのを待って(ステップS640)、ブレーキB2を係合して(ステップS650)、処理を終了する。ダウンシフトする際の変速機60の共線図の一例を図10に示す。図示するように、Hiギヤの状態では、ブレーキB1がオンでブレーキB2がオフとされている。この状態からブレーキB1をオフすると、モータMG2はリングギヤ軸32aから切り離された状態となる。ここで、モータMG2から正のトルクが出力されているときにはその正のトルクにより回転数は増加し、モータMG2から正のトルクが出力されていないときにはそのままでは回転数は増加しないから調整トルクTsetをもって強制的に回転数を増加させる。そして、モータMG2の回転数Nm2が変速後のモータ回転数Nm2*近傍に至ったときブレーキB2を係合することにより、Loギヤの状態に変更することができる。モータMG2から調整トルクTsetを出力すると、ダブルピニオンの遊星歯車機構60aのサンギヤ61側の慣性重量によりリングギヤ軸32aに正方向のトルクが作用する。フラグFは、ダウンシフトする際には、モータMG2から正のトルクが出力されていない状態から調整トルクTsetを出力することによりこうした正方向のトルクがリングギヤ軸32aに作用している状態を判定するためのフラグでもあり、実施例では、イナーシャ相が開始されてからLoギヤの状態に変更される直前(所定値α)までに亘って値1が設定されるようそのタイミングを定めた。
Nm2*=k・V・Glo …(7)
図3の駆動制御ルーチンに戻って、アップシフト処理やダウンシフト処理が開始された後や次回以降に実行されるルーチンのステップS130で変速処理中と判定されたときには、フラグFが値1か否か(ステップS180)、エンジン22の回転数Neが所定回転数Nref未満か否か(ステップS190)、バッテリ50の出力制限Woutが所定値Wref以上か否かを判定する(ステップS200)。ステップS180〜S200のいずれかで否定的な判定がなされたときには、ステップS220以降の処理により、ステップS120で設定したエンジン22の目標回転数Ne*に基づいてモータMG1の目標回転数Nm1*やトルク指令Tm1*,モータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、各設定値をエンジンECU24やモータECU40に送信して本ルーチンを終了する。一方、ステップS180〜S200のいずれも肯定的な判定がなされたときには、レートΔNeを前回このルーチンで設定されたエンジン22の目標回転数Ne*に加えたものを新たな目標回転数Ne*に設定し直すと共にこの目標回転数Ne*でステップS110で設定した要求パワーPe*を割ったものを新たな目標トルクTe*に設定し直し(ステップS210)、ステップS220以降の処理により、設定し直した目標回転数Ne*に基づいてモータMG1の目標回転数Nm1*やトルク指令Tm1*,モータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、各設定値をエンジンECU24やモータECU40に送信して本ルーチンを終了する。このように、レートΔNeをもってエンジン22の目標回転数Ne*を調整することにより、モータMG1の目標回転数Nm1*が増加するから、前述したフィードバックの関係式(2)により計算されるモータMG1のトルク指令Tm1*も正方向に変化する。トルク指令Tm1*が正方向に変化すると、前述した図6に示すように、直達トルクTer(=−Tm1*/ρ)は減少するから、前述したアップシフト処理やダウンシフト処理に伴ってリングギヤ軸32aに作用する正方向のトルクを打ち消すことができる。即ち、直達トルクTerを減少させることにより変速ショックを抑制することができるのである。レートΔNeをもってエンジン22の目標回転数Ne*を設定し直すのはこうした理由による。レートΔNeは、モータMG1から出力するトルクの変化の程度すなわち直達トルクTerを減少させる程度を定めるものであり、実施例では、予め定めた値を用いるものとした。勿論、アップシフト処理の際にブレーキB1の係合トルクやモータMG2から出力されているトルクに基づいてリングギヤ軸32aに作用する正方向のトルクを推定したり、ダウンシフト処理の際にモータMG2から出力されているトルク(調整トルクTset)に基づいてリングギヤ軸32aに作用する正方向のトルクの変化を推定し、推定した正方向のトルクの変化が打ち消されるようレートΔNeを設定するものとしてもよい。エンジン22の回転数Neが所定回転数Nref以上のときにはレートΔNeによるエンジン22の目標回転数Ne*の調整を行なわないのは、目標回転数Ne*の調整はトルク指令Tm1*の正方向の変化を伴うから、モータMG1から出力されるトルクによりエンジン22やモータMG1がその上限回転数を超えて回転する場合があり、これに対応してエンジン22から出力するトルクを制限するとショックが生じるからである。バッテリ50の出力制限Woutが所定値Wref未満のときにはレートΔNeによるエンジン22の目標回転数Ne*の調整を行なわないのは、トルク指令Tm1*を正方向に変化させるとモータMG1が電動機として機能する場合があり、特に、ダウンシフトの際に調整トルクTsetをもってモータMG2から正のトルクが出力されモータMG2も電動機として機能しているときにバッテリ50が過放電する場合があるからである。
図11に、アップシフトの際の回転数Nm2と調整トルクTsetによる出力トルクと直達トルクTerとリングギヤ軸32aの出力トルクの時間変化の様子を示し、図12に、ダウンシフトの際の回転数Nm2とブレーキB1のフリクション係合による出力トルクと直達トルクTerとリングギヤ軸32aの出力トルクの時間変化の様子を示す。図11に示すように、モータMG2から正のトルクが出力されていない状態でアップシフト処理が開始されてからブレーキB1のフリクション係合により時刻t1にイナーシャ相が開始されると、Hiギヤに変更される直前の時刻t2までに亘ってブレーキB1による正方向のイナーシャトルクがリングギヤ軸32aに作用するが、これに同期してレートΔNeをもってエンジン22の目標回転数Ne*を調整してトルク指令Tm1*を正方向に変化させることにより直達トルクTerを減少させるから、リングギヤ軸32aに作用する正方向のイナーシャトルクは打ち消され、変速ショックは抑制される。また、図12に示すように、モータMG2から正のトルクが出力されていない状態でダウンシフト処理が開始されてからモータMG2の回転数Nm2をLoギヤの回転数Nm2*に同期させるための調整トルクTsetにより時刻t1にイナーシャ相が開始されると、Loギヤに変更される直前の時刻t2までに亘って調整トルクTsetにより正方向のトルクがリングギヤ軸32aに作用するが、これに同期してレートΔNeをもってエンジン22の目標回転数Ne*を調整してトルク指令Tm1*を正方向に変化させることにより直達トルクTerを減少させるから、リングギヤ軸32aに作用する正方向のトルクは打ち消され、変速ショックは抑制される。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、変速機60の変速比を変更する際にリングギヤ軸32aに作用するトルクが正方向に変化するときには、この正方向のトルクをモータMG1によりエンジン22からリングギヤ軸32aに直接伝達される直達トルクTerを減少させることにより打ち消すから、変速比を変更する際の変速ショックを抑制することができる。しかも、エンジン22の回転数Neが所定回転数Nref以上のときやバッテリ50の出力制限Woutが所定値Wref未満のときには、直達トルクTerを減少させないから、エンジン22やモータMG1がその上限回転数を超えて回転するのを抑制したり、バッテリ50が過放電するのを抑制したりすることができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の回転数Neが所定回転数Nref以上のときには直達トルクTerを減少させないものとしたが、エンジン22の回転数Neに基づいて回転数Neが大きいほど小さくなる傾向にレートΔNeを設定して直達トルクTerを減少させるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の出力制限Woutが所定値Wref未満のときに直達トルクTerを減少させないものとしたが、出力制限Woutに基づいて出力制限Woutが小さいほど小さくなる傾向にレートΔNeを設定して直達トルクTerを減少させるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2から正のトルクが出力されていない状態で変速比を変更する際に直達トルクTerを減少させるものとしたが、モータMG2から若干の正のトルクが出力されている状態で変速比を変更する際にも直達トルクTerを減少させるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の目標回転数Ne*を増加させてモータMG1から出力する正のトルクを大きくすることにより直達トルクTerを減少させるものとしたが、エンジン22の目標トルクTe*を小さくすることにより直達トルクTerを減少させるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、アップシフト処理とダウンシフト処理のいずれの処理においてもリングギヤ軸32aに作用するトルクが正方向に変化するときに、直達トルクTerを減少させるものとしたが、いずれか一方の処理だけに限ってリングギヤ軸32aに作用するトルクが正方向に変化するときに、直達トルクTerを減少させるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、HiギヤとLoギヤの2段の変速段をもって変速比を変更可能な変速機60を用いるものとしたが、2段の変速段に限られるものではなく、3段以上の変速段とするものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を変速機60により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図13の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪39a,39bが接続された車軸)とは異なる車軸(図13における車輪39c,39dに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪39a,39bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図14の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪39a,39bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、37 ギヤ機構、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、39c,39b 車輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 変速機、60a ダブルピニオンの遊星歯車機構、60b シングルピニオンの遊星歯車機構、61 サンギヤ、62 リングギヤ、63a 第1ピニオンギヤ、63b 第2ピニオンギヤ、64 キャリア、65 サンギヤ、66 リングギヤ、67 ピニオンギヤ、68 キャリア、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ、B1,B2 ブレーキ。