しかしながら、特許文献1に記載された技術では、書き込みに用いることのできる時間が通常の半分になり、書き込みが不充分になる等の問題が生じる。また、特許文献2に記載された技術では、フリッカ等をある程度視認し難くすることができるが、ノイズ成分を低減させて根本的に表示品質を向上させるには、別の着想が必要と考えられる。尚、以上の問題は液晶装置に限ったものではなく、極性を反転させる駆動方式を適用する電気光学装置であれば原理的に同様の問題が生じる可能性がある。
本発明は、例えば上記問題点に鑑みなされたものであり、高品質な表示が可能であると共に狭ピッチ化が可能な電気光学装置用駆動回路及び電気光学装置用駆動方法、並びに、これらを適用した電気光学装置を提供することを目的とする。
本発明の電気光学装置用駆動回路は、上記課題を解決するために、互いに交差して延びる複数のデータ線及び複数の走査線と、各々が前記データ線及び前記走査線に接続され、表示面を構成する複数の画素部とを備えた電気光学装置を駆動するために用いられる電気光学装置用駆動回路であって、前記複数の走査線の各々にパルス信号を供給し、前記画素部の水平走査を逐次行う走査線駆動部と、前記複数のデータ線に画像信号を供給するデータ線駆動部とを備え、前記走査線駆動部及びデータ線駆動部は、前記表示面が前記走査線に沿った分割線により夫々n(但し、nは2以上の自然数)本の走査線を含むように分割されてなる2M(但し、Mは自然数)個の部分面のうち前記データ線に沿った方向に奇数番目の部分面を構成する前記画素部を、第1の周期で面反転駆動すると共に、前記複数の部分面のうち偶数番目の部分面を構成する前記画素部を、前記第1の周期と相補の第2の周期で面反転駆動し、前記走査線駆動部は、前記2M個の部分面の各々から一本ずつ選択される走査線に対して同時に転送信号を出力するシフトレジスタ、及び相異なるイネーブル期間を規定する2M個のイネーブル信号が入力されると共に、前記イネーブル信号と前記転送信号とに基づいて前記パルス信号を出力する出力制御手段を含み、前記奇数番目の部分面を構成する画素部に対する水平走査と前記偶数番目の部分面を構成する画素部に対する水平走査とを交互に行い、前記出力制御手段は、前記シフトレジスタの前記転送信号の出力期間内に、前記2M個のイネーブル信号の入力タイミングに応じて前記出力期間における前記パルス信号の入力対象である2M本の走査線に対し順に前記パルス信号を供給し、前記2M個のイネーブル信号の入力タイミングは、一の転送信号の出力期間において前記2M個のイネーブル信号のうち最初に入力されたイネーブル信号が、前記一の転送信号の次に出力される他の転送信号の出力期間において最後に入力されるように設定されており、前記出力期間は、水平走査期間の2M倍の時間幅を有する期間である。
本発明の電気光学装置用駆動回路によれば、例えば、アクティブマトリクス駆動方式が採用され、走査線駆動部が走査線を水平走査して選択した画素部列に、データ線駆動部がデータ線を通じて画像信号を供給してデータの書き込みを行う。そして、これら走査線駆動部及びデータ線駆動部は、一つの表示面が走査線に沿った分割線により夫々n(但し、nは2以上の自然数)本の走査線を含むように分割されてなる2M(但し、Mは自然数)個の部分面毎に面反転駆動を行う。その際、奇数番目の部分面と偶数番目の部分面とが、各フィールド期間において逆極性となるように駆動する。
本発明に係る「面反転」とは、一画面が形成される度に(換言すると、1フィールド分の画像信号を供給する度に)、画像信号の極性を反転させる駆動方式であり、反転周期が1フィールドである面反転駆動方式に相当する。但し、この場合の反転周期は、画像信号の長さに依拠したフィールド期間ではなく、あくまで一画面の表示期間である。例えば、倍速で書き込みを行い、通常の1フィールド期間に同じ画像を繰り返し書き込んで表示する場合には、供給されるのが同一信号であっても、やはり1フィールド分を供給する度に極性を反転させる。
このように部分面毎に面反転を行うことで、例えばライン反転駆動方式において問題となるライン間の境界における横電界の発生を抑制しつつ、同時に、表示面全域を面反転させる通常の面反転駆動方式において問題となるフリッカを抑制することが可能となる。
しかも、本発明の電気光学装置用駆動回路によれば、走査線駆動部は、水平走査を奇数番目の部分面を構成する画素部と偶数番目の部分面を構成する画素部とに交互に行う。ここで、走査線駆動部が「水平走査を交互に行う」とは、例えば2つの部分面に分割されていれば、これら2つの部分面に対して交互に行い、例えば4つの部分面に分割されていれば、これら4つの部分面に対して順繰りに行うといった意味である。即ち、画像信号の書き込みは、各部分面に対し並行して行われる。
そのための具体的手段として、走査線駆動部では、シフトレジスタが転送信号を2M個の部分面の各々から一本ずつ選択される走査線に対して同時に出力し、これに合わせて、イネーブル期間が相異なる2M個のイネーブル信号が入力される。これら2M個の転送信号及びイネーブル信号の夫々は出力制御手段に入力され、これら転送信号とイネーブル信号とに基づいてパルス信号が出力される。例えば、そこで論理積が求められ、パルス信号として出力される。その結果、2M個のパルス信号が、夫々対応するイネーブル期間に応じた相異なる期間に、2M本の走査線に対して出力される。
このようにして実現される水平走査は、正極性の部分面と負極性の部分面とに対して交互に行われる。このため、各データ線に供給される画像信号は交流化され、データ線の電位は、常に正負の間を変動して一方の極性に偏らないので、画素部に蓄積された電荷に影響を与えずに済む。本発明の発明者は、データ線における印加電圧のうち直流成分が、蓄積電荷をリークさせる要因となっていることに着目し、データ線に少しでも直流成分が重畳されないようにすること、即ち、画像信号を極力交流化することに想到する。ここでは部分面同士の極性も反転しているので、例えば、一本のデータ線で見て、上側の部分面に対する画素部には負極性で、下側の部分面に対する画素部には正極性で画像信号を書き込む場合、下側の画素部の書き込みを行うために正極性の画像信号を印加すると、データ線の電位は正(+)となり、上側の画素部に蓄積された負(−)の電荷を引き付ける。尚、極性が逆の場合以外に、蓄積電荷による電位に比べてデータ線の電位が高くなる場合も、相対的にみれば同様のことが起きる。つまり、同じ部分面内や同極性の部分面間においても、このような現象が頻繁に生じると考えられる。
従って、本発明は、前述した従来からの問題点(データ線電位に影響される時間が長い分だけ、画面下側における蓄積電荷のリーク量が多く、輝度に上下方向の傾斜がつく)と併せて、直流の信号成分を排除するように駆動することによって蓄積電荷のリーク全般を防止し、表示ノイズを極めてよく抑えることを可能とする。
尚、このような目的で表示面を部分面に分割駆動するようにしたので、部分面は、正負の極性に対応して少なくとも2面あればよい。むしろ、あまり細かく分割すると、横電界が生じる境界が増大するので、部分面は少ない方が好ましいと考えられる。
このように本発明の駆動方式によれば、表示面を領域毎に面反転駆動させることで、横電界の発生を極力抑えるようにしたので、高いコントラスト比を維持すると共に狭ピッチ化を図ることが可能である。同時に、画像信号の極性が交互に入れ替わるように、その時点で書き込む画像信号の極性が異なる領域に対し、交互に水平走査を行うようにしたので、画像信号が交流化され、蓄積電荷のリーク全般を防止し、適正な表示を行うことを可能とする。また、一度に選択される2M本の走査線が順次水平走査されるので、2M個の部分面に対する書き込みが並行して行われる。また、一度に選択される2M本の走査線は、転送信号の出力期間内に走査されることから、例えば、転送信号の出力期間を通常の一水平走査期間に対応させると、2M倍の倍速駆動を行うことができる。
本発明の電気光学装置用駆動回路の一態様では、前記出力制御手段は、(i)前記2M個のイネーブル信号が入力されると共に前記2M個のイネーブル信号のうちいずれか一つと前記転送信号とが入力端子に入力される相補型トランジスタからなるAND回路と(ii)前記AND回路の出力端子に接続されたインバータ回路とを含んで構成されている。
この態様によれば、出力制御手段は、AND回路とインバータ回路とを含んで構成される。即ち、出力制御手段はAND回路及びインバータ回路を含む論理回路を含んでいる。このうち、AND回路は、相補型トランジスタからなる単純なデュアルゲート回路である。このように簡易な構成とすることで、回路の形成領域を狭めることができ、容易に狭ピッチ化を図ることが可能となる。尚、インバータ回路も勿論、同様に相補型トランジスタで構成することができる。
走査線駆動部では、シフトレジスタが転送信号を出力すると、これに合わせて、イネーブル期間が相異なる複数のイネーブル信号が入力される。これら転送信号及びイネーブル信号の夫々は出力制御手段に入力され、AND回路及びインバータ回路を含む論理回路において論理積が求められる。その結果、複数のパルス信号が、夫々対応するイネーブル期間に応じた相異なる期間に、所定の走査線に対し出力される。
本発明の電気光学装置用駆動回路の他の態様では、前記2M個のイネーブル信号の各信号線は、前記表示面と前記シフトレジスタとの間に延設され、前記2M個の部分面の各々から一本ずつ選択される、前記部分面内での配列順が相異なる走査線に対応するように支線が分岐している。
この態様では、2M個の部分面の夫々に2M個のイネーブル信号が供給され、しかも、信号の入力対象とする2M個の部分面の各々から一本ずつ選択される走査線の組み合わせは、イネーブル信号毎に異なっている。従って、入力されるイネーブル信号が相異なる走査線に対して同時に転送信号を出力するようにすれば、2M個の部分面をこれら2M個のイネーブル信号を使って並行走査することができる。尚、ここでいう「支線」とは、ある1つのイネーブル信号に注目したときに、そのイネーブル信号を2M個の部分面の夫々に供給すべく、2M個の部分面の夫々に対応して延設されるように分岐した2M本の信号線を指している。該2M本の信号線は夫々、部分面内での配列順が相異なる走査線に対して信号を供給する。
また、こうした動作を可能とするため、各イネーブル信号を供給する2M本の信号線は、2M個の部分面に対応して満遍なく引き回されるため、信号線の長さに起因する信号の形状変化等の悪影響が防止される。従って、このように走査線駆動回路を構成することで、電気光学装置を適正に駆動させることが可能である。
本発明の電気光学装置用駆動回路の他の態様では、前記走査線駆動回路部及び前記データ線駆動回路部は、一画面分の表示期間内に、一画面分の画像信号の書き込みを一回毎に極性を反転させながら連続してn回行う。
この態様では、駆動回路を倍速駆動させ、各フィールド期間内に、その期間に表示すべき画像を複数回繰り返して書き込む。前述のように、各フィールド期間においても、1フィールド分の所定の画像信号を、反転させながら繰り返し表示する。
面反転駆動においては、画素スイッチング用の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下適宜、「TFT」と呼ぶ)の特性に起因する蓄積電荷の極性に応じたリーク量の差によって、フィールドが切り替わるたびに画素電極の電位が上下に変動する現象が生じることがある。これは、通常ならば30Hz程度のフィールド期間に対応する周期的な輝度変動、即ちフリッカとして視認される。そこで、駆動を倍速化することにより、輝度の変動を例えば60Hz程度に倍周すれば、十分に周波数が高くなることから視認されなくなる。よって、この場合には、より表示品質を高めることが可能である。
上述した出力制御手段がAND回路とインバータ回路とを含んで構成されている態様では、前記走査線駆動部は、前記奇数番目の部分面及び前記偶数番目の部分面の夫々における、又は前記部分面内における前記画素部の水平走査を、前記データ線に沿った方向の順序についてランダムな順序で行うように構成してもよい。
このように構成すれば、走査対象となる画素部は、正極性の部分面と負極性の部分面とから交互に選択されるが、極性毎に見た又は部分面内における画素部の走査順序は、データ線に沿った方向の順序についてランダムとなっている。このように走査順序がランダムであっても、画素行間における横電界の発生を各部分面内で相殺或いは均一化することで、該横電界の悪影響が顕在化することを抑制できる。
上述した出力制御手段がAND回路とインバータ回路とを含んで構成されている態様では、前記AND回路におけるトランジスタの閾値電圧は、前記インバータ回路のインバータとしての閾値電圧よりも小さいように構成してもよい。
このように構成すれば、AND回路の「Low」出力に、内部のトランジスタの閾値電圧が重畳されていても、後段のインバータ回路はこれを「Low」として動作する構成となっている。例えば、本発明のAND回路においては、トランジスタの導通時に転送信号が印加されない(即ち、印加電圧が0V)ことをもって「Low」を出力する場合がある。このときの出力には閾値電圧(例えば1.5V)が重畳されているために、信号出力は0Vではなく、例えば1.5V程度の実効値をもつ。しかしながら、インバータ回路のインバータとしての閾値電圧がこの実効値よりも大きければ、この程度のLow電圧のぶれは無視することができ、結果的に正常な論理出力を得ることができる。
上述した出力制御手段がAND回路とインバータ回路とを含んで構成されている態様では、前記AND回路及び前記インバータ回路は、前記複数の走査線の各々に対応する複数の単位回路からなり、該複数の単位回路の夫々は、前記表示面に隣接すると共に互いに並列する複数の単位領域に形成されていてもよい。
このように構成すれば、AND回路及びインバータ回路は、走査線と1対1対応する単位回路を単位として構成されている。そして、単位回路の一つ一つは、表示面に隣接する単位領域内に形成され、走査線と対応して互いに並列している。前述したように、本発明に係るAND回路は簡易な構成であるため、こうした単位回路として実現可能であり、また単位領域の幅を狭くして狭ピッチ化を図る場合にも十分対応可能である。
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置用駆動回路(但し、その各種態様を含む)を備える。
本発明の電気光学装置によれば、上述した本発明の電気光学装置用駆動回路を具備しているので、高品位の表示が可能であり、同時に狭ピッチ化を図ることが可能である。尚、この電気光学装置は、投射型表示装置、液晶テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル等の各種電子機器に適用することができる。その他、本発明の電気光学装置により、例えば、電子ペーパ等の電気泳動装置や、電子放出素子を利用した表示装置(Field Emission Display及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等を実現することも可能である。
本発明の電気光学装置用駆動方法は上記課題を解決するために、互いに交差して延びる複数のデータ線及び複数の走査線と、各々が前記データ線及び前記走査線に接続され、表示面を構成する複数の画素部とを備えた電気光学装置に適用される電気光学装置用駆動方法であって、前記表示面が前記走査線に沿った分割線により夫々n(但し、nは2以上の自然数)本の走査線を含むように分割されてなる2M(但し、Mは自然数)個の部分面のうち前記データ線に沿った方向に奇数番目の部分面を構成する前記画素部を、第1の周期で面反転駆動すると共に、前記複数の部分面のうち偶数番目の部分面を構成する前記画素部を、前記第1の周期と相補の第2の周期で面反転駆動し、前記2M個の部分面の各々から一本ずつ選択される走査線に対して同時に転送信号を出力すると共にイネーブル期間が相異なる2M個のイネーブル信号を出力し、前記イネーブル信号と前記転送信号とに基づいて前記パルス信号を出力することにより、前記奇数番目の部分面を構成する画素部に対する水平走査と前記偶数番目の部分面を構成する画素部に対する水平走査とを交互に行い、前記シフトレジスタの前記転送信号の出力期間内に、前記2M個のイネーブル信号の入力タイミングに応じて前記出力期間における前記パルス信号の入力対象である2M本の走査線に対し順に前記パルス信号を供給し、前記2M個のイネーブル信号の入力タイミングは、一の転送信号の出力期間において前記2M個のイネーブル信号のうち最初に入力されたイネーブル信号が、前記一の転送信号の次に出力される他の転送信号の出力期間において最後に入力されるように設定されており、前記出力期間は、水平走査期間の2M倍の時間幅を有する期間である。
本発明の電気光学装置用駆動方法では、前述した本発明の電気光学装置用駆動回路の場合と同様に、一つの表示面が水平方向に略等分されてなる部分面毎に面反転駆動を行う。その際、隣接する部分面同士が、各フィールド期間において逆極性となるように駆動する。
本発明の電気光学装置用駆動方法によれば、上述した本発明の電気光学装置用駆動装置の場合と同様に、部分面毎に面反転を行うことで、例えばライン反転駆動方式において問題となるライン間の境界における横電界の発生を抑制しつつ、同時に、表示面全域を面反転させる通常の面反転駆動方式において問題となるフリッカを抑制することが可能となる。
しかも本発明の電気光学装置用駆動方法によれば、前記2M個の部分面の各々から一本ずつ選択される走査線に対して同時に転送信号を出力すると共にイネーブル期間が相異なる2M個のイネーブル信号を出力し、前記イネーブル信号と前記転送信号とに基づいて前記パルス信号を出力すること、例えばイネーブル信号と転送信号との論理積を前記パルス信号として出力することにより、前記奇数番目の部分面を構成する画素部に対する水平走査と前記偶数番目の部分面を構成する画素部に対する水平走査とを交互に行う。
この態様によれば、水平走査を奇数番目の部分面を構成する画素部と偶数番目の部分面を構成する画素部とに交互に行うので、前述した従来からの問題点(データ線電位に影響される時間が長い分だけ、画面下側における蓄積電荷のリーク量が多く、輝度に上下方向の傾斜がつく)と併せて、直流の信号成分を排除するように駆動することによって蓄積電荷のリーク全般を防止し、表示ノイズを極めてよく抑えることを可能とする。
本発明の電気光学装置用駆動方法の一態様では、前記論理積を前記パルス信号として出力する際に、(i)該複数のイネーブル信号のうちいずれか一つと前記転送信号とが入力端子に入力される相補型トランジスタからなるAND回路と(ii)前記AND回路の出力端子に接続されたインバータ回路とを利用して出力する。
この態様によれば、上述した本発明の電気光学装置用駆動回路に係る出力制御手段がAND回路とインバータ回路とを含んで構成されている態様の場合と同様に、AND回路及びインバータ回路を含む論理回路において論理積が求められ、その結果、複数のパルス信号が、夫々対応するイネーブル期間に応じた相異なる期間に、所定の走査線に対し出力される。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
<1:第1実施形態>
先ず、本発明の電気光学装置に係る第1実施形態について、図1から図15を参照して説明する。
<1−1:電気光学装置の構成>
まず、本実施形態における電気光学装置の構成について、図1から図4を参照して説明する。図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図であり、図2は、図1のH−H’断面図である。図3は、本実施形態に係る電気光学装置のうち、画素部の等価回路を表している。図4は、駆動回路部を含むブロック図である。
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。即ち、本実施形態の電気光学装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域のうち、シール材52が配置された領域の外側には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が、TFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
また、対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用TFTや各種配線等の上に画素電極9aが、更にその上から配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23が、更にその上から配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
尚、TFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加え、例えば、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
図3に示したように、画像表示領域10aにおいては、複数の走査線3a及び複数のデータ線6aが相交差して配列しており、その線間に、走査線3a,データ線6aの各一により選択される画素部が設けられている。各画素部には、TFT30、画素電極9a及び蓄積容量70が設けられている。TFT30は、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを選択画素に印加するために設けられ、ゲートが走査線3aに接続され、ソースがデータ線6aに接続され、ドレインが画素電極9aに接続されている。画素電極9aは、後述の対向電極21との間で液晶容量を形成し、入力される画像信号S1、S2、…、Snを画素部に印加して一定期間保持するようになっている。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと並列してTFT30のドレインに接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量配線400に接続されている。
この電気光学装置は、例えばTFTアクティブマトリクス駆動方式を採り、走査線駆動回路104(図1参照)から各走査線3aに走査信号G1、G2、…、G2mを後述する順序で印加すると共に、それによってTFT30がオン状態となる水平方向の選択画素部列に対し、データ線駆動回路101(図1参照)からのデータ信号S1、S2、…、Snを、データ線6aを通じて印加するようになっている。この際、データ信号S1、S2、…、Snを各データ線6aに線順次に供給してゆくようにしてもよいし、複数のデータ線6a(例えばグループ毎)に同じタイミングで供給するものとしてもよい。これにより、画像信号が選択画素に対応する画素電極9aに供給される。TFTアレイ基板10は、液晶層50を介して対向基板20と対向配置されているので(図2参照)、以上のようにして区画配列された画素領域毎に液晶層50に電界を印加することにより、両基板間の透過光量が画素領域毎に制御され、画像が階調表示される。また、このとき各画素領域に保持された画像信号は、蓄積容量70によりリークが防止される。
図4において示したように、本実施形態の電気光学装置の駆動回路部60は、上述したデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104の他、コントローラ61、第1フレームメモリ62、第2フレームメモリ63の2画面分のフレームメモリ、DAコンバータ64等から構成されている。コントローラ61には、垂直同期信号Vsync、水平同期信号Hsync 及び画像信号DATAが入力される。そして、コントローラ61は、垂直同期信号Vsync、水平同期信号Hsyncに基づく各構成要素の動作タイミング制御、第1フレームメモリ62、第2フレームメモリ63の書き込み/読み出しの制御、及び、書き込む走査線3aに対応した画像信号DATAのフレームメモリからDAコンバータ64への出力を行う。第1フレームメモリ62及び第2フレームメモリ63は、交互に、例えば1フレーム毎に、一方に外部入力された1フレーム分の画像信号DATAを一時的に蓄えると共に、他方からは蓄積した画像信号DATAを表示用に出力させるように利用される。DAコンバータ64は、フレームメモリから読み出された画像信号DATAをDA変換し、データ線駆動回路101に出力するものである。データ線駆動回路101は、この入力信号に基づく出力として、データ信号Sxを対応するデータ線6aに印加する。
走査線駆動回路104は、具体的には後述するが、コントローラ61からクロック信号CLY、反転クロック信号CLY' の入力によって基本的な線順次の水平走査が可能となっている。更に、ここでは、一つの駆動回路でありながらスタートパルスを同時に2つ生成出力すると共に、それらの走査信号としての出力タイミングをずらすためのイネーブル信号ENB1及びENB2が入力される構成となっているために、以下に説明するような順序で走査信号Gxを走査線3aに印加する駆動方式をとることができる。
<1−2:電気光学装置の駆動方法>
次に、このような電気光学装置の駆動方法について図5から図9を参照して説明する。図5及び図6は、本実施形態の駆動方法を概念的に説明するための図であり、図7は、画面上の極性の変化を時系列で表したもの、図8は、任意の1水平期間の瞬間を見た画面のイメージを表したものである。図9は、互いに相補的な極性で駆動される領域の面積の差分に対する、画素部における電荷リーク量の変化を示している。
本実施形態では、図5のように、一画面が上下に略等しく分割されてなる2つの部分面201及び202の各画素部を、互いに相補となる周期で、本発明に係る「面反転駆動」の一例としてフィールド反転駆動させる。ここでは、この周期を2分の1フィールドとする。即ち、走査線駆動回路104及びデータ線駆動回路101は倍速駆動され、部分面201及び202に対するデータ信号Sxの書き込みは1フィールド期間に2画面分行われる。具体的には、1つのフィールドデータを互いに極性の異なる第1,第2の2つのフィールドデータに分け、これらを1/2垂直期間だけシフトさせて重ね書きする。これは、フレームメモリ62、63を用いることで行うことができる。このとき、データ線駆動回路101は、1/2フィールド周期でデータ信号Sxの極性を反転させると同時に、一画面においては部分面201と部分面202とでデータ信号Sxの極性を異ならせるように駆動する。
更に、図6のように、各画面の水平走査は、部分面201の画素部と部分面202を構成する画素部とで交互に行う。即ち、データ信号Sxの書き込みは、部分面201及び202に対し並行して行われる。この様子を、時系列的に表したのが図7である。
図7において、例えば第1水平期間では、第2m番目の走査線3aが走査信号G2mにより走査され、負電位のデータ信号Sxが書き込まれる。第2水平期間では第m+1番目の走査線3aが走査信号Gm+1により走査され、第1水平期間では負電位であった画素部に正電位のデータ信号Sxが書き込まれる。第3水平期間では第1番目の走査線3aが走査信号G1により走査され、第1、第2水平期間では正電位であった画素部に負電位のデータ信号Sxが書き込まれる。以降は、このような選択書き込み動作が繰り返される。従って、画面の半分、つまり部分面201及び202を走査し終えたときに、正極性領域と負極性領域とが完全に反転し、1画面分の書き換えが行われたことになる。この方法によると、全画面を走査すれば、書き換えは2度行われる事になり、結果的に入力画像信号に対して1垂直期間が1/2となる。
この結果、図8に示すように、ある1水平期間に着目すると、例えば走査信号G3〜Gm+2に走査される画素部は正極性電位のデータが書き込まれた領域となり、走査信号G1〜G2及びGm+3〜G2mに走査される画素部は負極性電位のデータが書き込まれる領域(以下、単に負極性領域という)となるというように、画面内が正極性領域と負極性領域に分割されたような状態となる。
図8中で、正極性の領域と負極性の領域との境界203BR1及び203BR2は、画面内における上から下への垂直走査に従って、上から下へと移動する。即ち、横電界が発生することで画質が悪化する境界203BR1及び203BR2は夫々、一所に止まることなく、垂直に面内走査されるので、係る横電界による画質劣化は、視覚上、殆ど目立たなくなる。
このように、本実施形態では、画面の半分の広さを持つ正極性領域と負極性領域とが1垂直期間で反転することになり、部分面201及び202の各々に対しては面反転駆動が行われる。1垂直期間において、任意の画素部と隣接する画素部との間は2/2mの時間だけは逆極性電位となるが、残りの大部分の時間(2m−2)/2mは同極性電位となるので、横電界による液晶層50における配向不良は殆ど発生しない。
一方、データ線6a側は、信号極性については部分面201と部分面202とで反転させているので、従来の面反転方式で駆動したときのように、画面の上側と下側とでTFT30からの電荷リーク量に大きな差が生じることがなく、画面の場所による表示の不均一を回避することができる。
更に、ここでは、水平走査を、正極性の部分面と負極性の部分面とに対し交互に行うことから、各データ6a線に供給されるデータ信号Sxは交流化されることになる。このため、データ線6aの電位は、常に正負の間を変動して一方の極性に偏らないので、画素部の蓄積容量70に蓄積された電荷をリークさせるおそれが低減される。
尚、こうした理由で、正極性領域と負極性領域、即ち部分面201及び202の面積は、略等しいことが望ましい。現実には、両者の差分が面積比率で10パーセント以内に抑えられていることが好ましい。図9は、部分面201及び202のように、互いに相補的な極性で駆動される領域の面積の差分に対する、画素部における電荷リーク量を示している。このように、電荷リーク量は、極性の異なる領域同士の総面積の差に比例して増大することがわかっている。このリーク量は、閾値Lthを超えると、画面のちらつき等として視認される。そして、リーク量を閾値Lth以下に抑えるということは、前記面積の差分を10パーセント以内に抑え、画像信号を交流化することと等価である。
また本実施形態では、倍速駆動により、走査周波数は入力画像信号周波数の倍の100Hz以上となるので、人間の視覚上で認識可能なフリッカを確実に抑制することができる。
次に、この駆動方法を実現するための具体的手段について図10から図15を参照して説明する。
図10は、走査線数を4本とした場合の走査線駆動回路104の構成例を表しており、図11は図10に示した走査線駆動回路104におけるタイミングチャートである。また図12は走査線駆動回路104におけるNAND回路67の構成を表し、図13はNAND回路67の真理値表を表している。更に、図14及び図15は、NAND回路67の具体的なレイアウト構成を表している。
図10に示したように、走査線駆動回路104は、例えば図4に示したコントローラ61からクロック信号CLY、反転クロック信号CLY' が入力されるシフトレジスタ66と、シフトレジスタ66からの出力が入力される、2m本の走査線3aに対応した2m個の論理回路からなる出力制御部69とを有している。論理回路は、例えばNAND回路67及びNOT回路68から構成され、各NAND回路67には、シフトレジスタ66からの出力とイネーブル信号ENB1又はENB2が入力される。
尚、NAND回路67の代わりに、シフトレジスタ66からの出力とイネーブル信号とが入力されるトランスミッションゲートを用いても同様の機能をなすことができる。
イネーブル信号ENB1の配線は、部分面201では第1番目のNAND回路67に接続されるが、部分面202では、第2番目(即ち全体では第4番目)のNAND回路67に接続される。イネーブル信号ENB2の配線は、その逆に第2番目、第1番目(即ち全体では第3番目)のNAND回路67に接続され、イネーブル信号ENB1及びENB2は、NAND回路67との接続の順番が相互に入れ違うようになっている。従って、このように走査線駆動回路104を構成することで、電気光学装置を適正に駆動させることができる。
図11に示したように、シフトレジスタ66からのスタートパルスSR1〜SR4は、部分面201及び202をあたかも同時に水平走査するように、夫々の走査線3aに対して同じタイミングで出力される。即ち、部分面201及び202各々の一本目の走査線3aに対応するスタートパルスSR1、SR3と、二本目の走査線3aに対応するスタートパルスSR2、SR4とは、2水平期間毎に交番的に出力される。一方、イネーブル信号ENB1,ENB2は、水平期間毎に交番的に立ち上がる。よって、その立ち上がりタイミング時に出力されたスタートパルスが論理回路において選択され、走査信号として走査線3aに出力される。その結果、走査信号G1〜G4は図示のように走査信号G1、G3,G2、G4の順に出力され、前述のような水平走査が実現される(図6又は図7参照)。
以下、本実施形態のNAND回路67の構成について説明する。
NAND回路67の各々は、図12のように、p型MOSFET67A及びn型MOSFET67BからなるCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)インバータ、即ち“相補型インバータ”として構成されたAND回路と、その出力側端子に接続されたNOT回路67Cとを含む、極めて簡素な構成となっている。p型MOSFET67A及びn型MOSFET67Bは、イネーブル信号ENB1又はENB2の信号線とグラウンドとの間に直列に接続されており、共に、ゲート端子にスタートパルスSRの反転信号SR' が入力されるように構成されている。反転信号SR' は、スタートパルスSRを反転出力させてもよいが、シフトレジスタ66内における信号反転を前提としてシフトレジスタ66の内部信号をスタートパルスSRとみなし、シフトレジスタ66からの出力が反転信号SR' となる構成とすれば、より簡単に構成できる。尚、NOT回路67CもまたCMOSインバータで構成することができ、AND回路と同一の回路構成としてもよい。
図13は、このAND回路の真理値表である。ここで、入力されるスタートパルスSRが「High」且つイネーブル信号ENBが「Low」のとき、MOSFET67A及び67Bのゲート電圧は「Low」となり、p型MOSFET67Aがオン状態、n型MOSFET67Bがオフ状態となる。そこで、導通したp型MOSFET67Aにイネーブル信号ENBの電位0Vが印加されるが、p型MOSFET67Aのソースードレイン間には閾値電圧(例えば1.5V)が生じているために、O点における信号出力は0Vではなく、例えば1.5V程度の実効値をもつ。
しかしながら、ここでは、O点の後段に設けたNOT回路67Cは、インバータとしての閾値電圧が7.5V程度とされているために、1.5V程度のLow電圧のぶれは無視することができ、前出の場合の信号出力も「Low」として扱うことができる。尚、閾値電圧7.5Vとは、このNOT回路67Cが、例えば電源電圧15Vで駆動される通常のインバータであれば実現される。言い換えると、このNAND回路67は、走査信号Gxの出力側回路という高圧回路系に適用されることで、正常な動作が担保されている。
また、本実施形態の走査線駆動回路104は、例えば図14のような回路レイアウトで構成される。即ち、シフトレジスタ66、出力制御部69の各形成領域は、画像表示領域10aに隣接しており、夫々の走査線3aに対応する単位回路が、単位領域Wに形成されている。NAND回路67は、図中に斜線で示した出力制御部69の単位領域Wに収まるように、例えば図15に示したレイアウトで形成される。尚、図15は、NAND回路67のうちAND回路であるCMOSの構成を表している。
通常のNAND回路は6ゲートで構成されるが、これを、細い単位領域W内に形成することは困難である。特に、画素ピッチが狭められるにつれて単位領域Wの幅もより狭くなってきており、例えば10μm程度のピッチになれば、せいぜい2ゲートを並べて形成するくらいのスペースしか残されていない。従って、本実施形態のように、出力制御部69を極めて簡素な構成とすることで、電気光学装置の製造を容易とするほか、狭ピッチ化を更に進めることが可能となる。また、ゲート数が少ないことから、駆動回路部60における消費電力を低減することも可能である。
また、ここでのAND回路は、図15に示したように、2つの単位回路がI線において鏡面対称となっており、2個周期の構造となっている。そのため、効率よく作り込むことができ、装置の狭ピッチ化が可能となる。
<2:第2実施形態>
以下、本発明の電気光学装置に係る第2実施形態について図16から図18を参照して説明する。
図16は、第2実施形態に係る電気光学装置の主要部の構成を表している。図17は、当該電気光学装置の駆動方法を表すタイミングチャートであり、図18は、データが書き込まれてゆく駆動中の画面の状態を、図17のタイミングチャートに対応させて時系列で表したものである。
本実施形態の電気光学装置は、第1実施形態に対し基本構成はほぼ同様であるが、画面を4つの部分面401〜404に分割して面反転駆動を行う点で異なっている。従って、第1実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を適宜省略するものとする。
部分面401〜404は、相隣接する面が相補の周期でフィールド反転駆動される領域であり、走査線3aが4本ずつ備えるように分割されている。即ち、部分面401〜404の各面積は互いに等しくなっている。走査線駆動回路414は、シフトレジスタ466によって一つの駆動回路でありながら同時に4つのスタートパルスSRを生成出力すると共に、走査信号の出力タイミングをずらすための4つのイネーブル信号ENB1〜ENB4が出力制御部469に入力される構成となっている。尚、スタートパルスSRは、各部分面401〜404に対して一つずつ合計4つが、水平走査期間をパルス幅として出力される。イネーブル信号ENB1〜ENB4は、1/4水平走査期間をパルス幅とし、一水平走査期間に夫々タイミングをずらして出力される。
図17に示した駆動方法では、水平走査を各部分面401〜404の画素部に対し順に行っている。例えば第1水平期間では、第1m番目の走査線3aが走査信号G1mにより走査され、画素部に正電位のデータ信号Sxが書き込まれる。第2水平期間では第5番目の走査線3aが走査信号G5により走査され、画素部に負電位のデータ信号Sxが書き込まれる。第3水平期間では第9番目の走査線3aが走査信号G9により走査され、画素部に正電位のデータ信号Sxが書き込まれる。そして、第4水平期間では第13番目の走査線3aが走査信号G13により走査され、画素部に負電位のデータ信号Sxが書き込まれる。以降は、このような選択書き込み動作が部分面401〜404に対して順繰りに行われる。
このときの走査信号Gxは、4つのスタートパルスSR1、SR5、SR9、SR13の出力タイミングをイネーブル信号ENB1〜ENB4により互いにずらすと同時に夫々の出力期間を1/4ずつとすることで、互いに異なる部分面401〜404の水平走査を並行して行う。一方、データ線駆動回路101は、水平走査と同期してデータ信号Sxの極性を反転させると同時に、一画面においては部分面401及び403と部分面402及び404とでデータ信号Sxの極性を異ならせるように駆動する。その結果、部分面401〜404の極性は交互に入れ替わるようにして駆動される(図18参照)。
このように、水平走査を正極性の部分面と負極性の部分面とに対し交互に行うことから、各データ6a線に供給されるデータ信号Sxは交流化される。このため、データ線6aの電位は、常に正負の間を変動して一方の極性に偏らないので、画素部の蓄積容量70に蓄積された電荷をリークさせるおそれが低減される。
尚、本実施形態においても、部分面401〜404の各々に対しては面反転駆動が行われるので、横電界による液晶層50における配向不良は殆ど発生しない。また、画面の上側と下側とでTFT30からの電荷リーク量に大きな差が生じることがなく、画面の場所による表示の不均一を回避することができる。
そして、図18に示したように、画面の1/4つまり部分面401〜404を走査し終えたときに、正極性領域と負極性領域とが完全に反転し、1画面分の書き換えが行われたことになる。この方法によると、全画面を走査すれば、書き換えは4度行われる事になるので、走査線駆動回路414及びデータ線駆動回路101を4倍速で駆動すれば、入力画像信号に対して1垂直期間が1/4とされ、フリッカを確実に抑制することができる。
このように本実施形態によれば、第1実施形態と同様、コントラスト比低下や画素開口率の低下を阻止し、狭ピッチ化を図ることが可能である。また、電荷リークによる表示ノイズも防止することができ、表示品質を大きく改善することが可能である。尚、その他の効果についても第1実施形態と同様である。
<3:変形例>
次に、上記実施形態の変形例について図19及び図20を参照して説明する。
上記各実施形態では、各部分面の面積は相等しいものとしたが、部分面毎の大きさは必ずしも等しくなくともよい。そのような場合でも、相補の周期で反転駆動させる部分面の面積の総和を互いに略等しくなるようにすれば、この2種類の部分面に対して交互に水平走査することによってデータ信号を交流化して画素部に供給することができる。
図19は、その一具体例として画面を3分割駆動する変形例を示している。この場合は、画面を部分面201と部分面202a及び202bとに分け、互いに相補の周期で反転駆動するものとしている。ここで、部分面201の面積S1と、部分面202a及び202bの総面積S2a+S2bとは、等しく設定されている。そのため、これら2種類の部分面の走査線数は相等しく、2種類の部分面を交互に水平走査することができる。水平走査の順序は、いろいろ考えることができるが、例えば、図示したように部分面202a→部分面202→部分面202bと順繰りに行い、各部分面内では上から順次走査としてもよい。
図20は、画面を7分割駆動する変形例を示している。この場合は、画面を7つの部分面に分け、隣接部分面を互いに相補の周期で反転駆動するものとしている。また、駆動周期で分けられる2種類の部分面の総面積、即ち、S1a+S1b+S1c+…とS2a+S2b+S2c+…とは等しく設定されている。そのため、これら2種類の部分面の走査線数は相等しく、交互に水平走査できる。水平走査の順序は、先の変形例のように規則正しく行う方法以外に、図示したようにランダムに(但し、必ず極性反転周期が異なる部分面を交互に選択するようにして)行うようにすることもできる。
<4:電子機器>
次に、以上詳細に説明した電気光学装置をライトバルブとして用いた電子機器として、投射型カラー表示装置の一具体例について図21を参照して説明する。ここに、図21は、投射型カラー表示装置の図式的断面図である。
図21において、第1又は第2実施形態における投射型カラー表示装置の一例たる液晶プロジェクタ1100は、駆動回路がTFTアレイ基板上に搭載された液晶装置を含む液晶モジュールを3個用意し、それぞれRGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロックミラー1108によって、RGBの三原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bにそれぞれ導かれる。この際特に、B光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bによりそれぞれ変調された三原色に対応する光成分は、ダイクロックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として拡大投射される。
この投射型カラー表示装置では、上記実施の形態の電気光学装置を用いたことにより、高精細で、フリッカ等のノイズが極めて少ない、均一性に優れた表示が可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置用駆動回路及び電気光学装置用駆動方法、並びに、該電気光学装置もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。例えば、上記実施形態では相補の周期でフィールド反転させる部分面として、画面上を2つの部分面或いは4つの部分面に分割して駆動する例を示したが、分割数はこれに限るものではなく、更に分割数を多くしても良い。但し、分割数を多くすればする程、横電界が発生する部分面同士の境界が増えることになる。
更に、上記実施形態ではTFTを用いたアクティブマトリクス型の液晶装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば画素スイッチング素子にTFD(Thin
Film Diode)を用いたものや、パッシブマトリクス型のものなどに対しても適用可能である。また、液晶装置以外の、時間的又は空間的な極性反転を伴ってマトリクス駆動を行うことが可能な電気光学装置も本発明の適用範囲である。そのような電気光学装置としては、例えば、エレクトロルミネッセンス装置や電気泳動装置、電子放出素子を利用した表示装置(Field Emission Display及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等が挙げられる。
3a…走査線、6a…データ線、9a…画素電極、10a…画像表示領域、30…TFT、400…容量配線、60…駆動回路部、66、466…シフトレジスタ、67A、67B…MOSFET、67C…NOT回路、69,469…出力制御部、70…蓄積容量、101…データ線駆動回路、104、414…走査線駆動回路、201、202…部分面、401〜404…部分面、W…単位領域、G1〜G2m…走査信号、SR…スタートパルス、ENB…イネーブル信号。