JP4148610B2 - キシリトールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キシラン含有天然物を特定の条件の熱水で処理してキシロオリゴ糖を主成分とする抽出液を得、該抽出液を加水分解し、次いで水素添加する、或いは加水分解と水素添加を同時に行いキシリトールを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、キシリトールの製造法としては、キシラン含有天然物を蒸煮又は爆砕した後に抽出して得られたキシランを、硫酸等の鉱酸を添加してキシロースに加水分解し、得られたキシロースを水素加圧下でニッケル等を触媒として水素添加する方法が知られている。しかし、この方法では、酸を添加して加水分解を行うために、1)耐酸設備が必要となること、2)使用する酸の中和工程、及び中和により生成する塩類の処理工程が必要であること、3)比較的酸に弱い糖であるキシロースの分解が生じ、得られるキシロース、しいてはキシリトール収量が低下すること、4)キシロースの溶出の際に、除去のために多大な労力を要するリグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄系化合物、等の不純物混入がさけられず、高温での水素添加反応時に、触媒のキシロースに対する活性が低下してしまうため、キシロースの熱分解が生じ、結果としてキシリトール収量が低下する傾向にあった。更に、キシリトールを精製する際等において、該不純物に由来する化合物やキシリトール以外の糖類を除去するために多大な労力を要し、この際にキシリトールの損失を生じ、結果として得られる該化合物の収量が低下する等の問題点を有していた。
【0003】
これらの内、4)の問題点を改善する試みで、予めキシラン含有天然物を蒸煮又は爆砕、或いは熱水で処理することによりキシロース以外の糖類やリグニン成分等の不純物を抽出除去し、該残さを再度、硫酸やシュウ酸等の無機又は有機酸を添加して加水分解し、キシロース含有水溶液を得、該水溶液を中和或いはイオン交換処理した後に水素添加してキシリトールを製造する方法が開示されている(特開平4−197192号公報、特公昭51−33177号公報等)。しかし、これらの方法では、キシロースを得る際に新たに酸を添加して加水分解するため、キシロースの多大な分解が生じるばかりでなく、原料に含有されるリグニンの内、難分解性リグニン分解成分の溶出がさけられず、著しい効果は得られなかった。
【0004】
近年、上記1)〜4)の問題点を改善する目的で、特公平6−17327号公報では、キシラン含有天然物を130〜230℃、1〜60分間の条件下、熱水だけで抽出処理してキシロース及びキシロオリゴ糖含有抽出液を得、該抽出液を水素加圧下、触媒を用いて150〜200℃で加水分解すると同時に水素添加してキシリトールを製造する方法が開示されている。この方法は、熱水処理により遊離されるアセチル基に由来した弱い酸性分の作用により、キシラン成分の加水分解が生じることに基づく。この方法によれば、キシラン含有天然物に含有される難分解性リグニンの混入は抑制されるが、易分解性リグニン分解成分の抽出液への混入は避けられない。リグニン分解成分は活性炭処理では除去しきれず、高温での水素添加反応時に触媒のキシロースに対する活性を引き下げてしまう。そのため、通常用いられている水素添加触媒量では、キシロースの分解が生じ、得られるキシリトールの収量が低減してしまう傾向があり、或いは、キシリトールを定量的に得るためには多量の触媒を必要とする傾向があるため、未だ十分な方法といえるものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、キシラン含有天然物を原料として、工業的に効率よく、短縮化された設備で、収率低下を抑制しつつキシリトールを製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、キシラン含有天然物からキシロース及びキシロオリゴ糖を抽出する際、熱水のみを用いて特定の条件下で処理することにより、抽出されるキシロースの分解を抑制し、且つ、リグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄系化合物、等の不純物混入量を著しく低減できることに基づき、抽出できるキシロースおよびキシロオリゴ糖の損失を著しく抑制しつつ高純度のキシロオリゴ糖を主成分とする抽出液が得られること、更に、該抽出液を高温条件下で、加水分解、次いで水素添加する、或いは加水分解と水素添加を同時に行ってキシリトールを製造する際に、水素添加触媒の活性を維持できるため、高温の反応系に存在する、或いは高温の反応系で生じるキシロースの分解を抑制することができること、加えて精製工程でのキシリトールの回収量低下を著しく改善でき、高収率で高純度のキシリトールを製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は
(1)キシラン含有天然物から予め110℃以上140℃以下の熱水で抽出される成分を除去した水不溶性の残さを、前記処理温度以上200℃以下の熱水で処理してキシロオリゴ糖を主成分とする抽出液を得る第1工程と、該抽出液を加水分解し、次いで水素添加する、或いは加水分解と水素添加を同時に行う第2工程とを備えた、キシリトールの製造方法、
(2)第1工程で得られるキシロオリゴ糖を主成分とする抽出液を、150℃以上250℃以下の温度で加水分解と水素添加を同時に行うことを特徴とする(1)に記載のキシリトールの製造方法、
(3)キシラン含有天然物がサトウキビピスであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のキシリトールの製造方法、
を提供するものである。
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられる原料としては、キシランを含む天然物、例えば白樺やブナ等の広葉樹や、とうもろこし稲穂、綿実殻、サトウキビバカス、サトウキビピス、ビートパルプ等の農産廃棄物が利用可能である。これら原料の内、リグニン含有量が低く、穏和な条件で容易にキシロース及びキシロオリゴ糖の抽出ができるサトウキビピスが特に好ましい。
これら原料の形状は、特に限定はしないが、抽出操作を容易にするためにチップ状、繊維状等に粉砕された形状のものが好ましく用いられる。
本発明におけるキシロオリゴ糖とは、キシロースを構成単位とし、該構成単位の重合度が2以上の化合物である。
【0009】
本発明におけるキシロオリゴ糖を主成分とする水溶液とは、キシロオリゴ糖含量が溶解固形分に対して50重量%以上の水溶液である。熱水処理によりキシロース及びキシロオリゴ糖を抽出する際に難分解性リグニンの溶出を抑えるためには、反応条件が比較的穏和である必要があり、そのためキシランの解重合反応はオリゴ糖の段階で停止し、キシロオリゴ糖含量は50重量%以上となる。キシロオリゴ糖含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定より、得られたキシロオリゴ糖のピーク強度と、キシロース試薬(アルドリッチ社)を標準試薬として求めたキシロオリゴ糖1構成単位当たりが与えるピーク強度とを比較して定量する。HPLCはカラムにTSKgel GーOligo−PW(東ソー株式会社)を2本用い、水を溶離液とし、温度80℃、流速1ml/分で行う。本発明おいては、熱水のみを用いて特定の条件下で抽出処理することにより、リグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄系化合物の混入量を、それぞれ抽出液中に溶解している固形分に対して、5重量%、0.4重量%(N換算)、200ppm(S換算)以下に抑えた、高純度のキシロオリゴ糖を主成分とする水溶液を得ることができる。不純物含量を前記範囲内に抑えた抽出液が得られることにより、高温条件下で加水分解、次いで水素添加する、或いは加水分解と水素添加を同時に行ってキシリトールを製造する際に、触媒のキシロースに対する活性を維持することができるため、高温の反応系に存在する、或いは高温の反応系で生じるキシロースの分解を抑制することができ、キシリトールを効率的に生産することが可能となる。加えて、反応終了後に回収した触媒は、その活性が維持されているため、繰り返して次の反応に用いることが可能となる。
【0010】
本発明におけるキシラン含有天然物の熱水処理は、必要に応じて、公知の技術である爆砕と組み合わせて行うこともできる。熱水処理を行う際には、抽出を容易にするために、攪拌した状態で処理することが好ましい。
本発明において、キシラン含有天然物の熱水による前処理は、使用する原料により違いはあるが、110℃以上140℃以下で行うことが必要である。110℃未満の場合には、易分解性リグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄系化合物、等の不純物の溶出が不十分であり、140℃を越える場合には、キシラン成分の溶出が生じてしまい、最終的に得られるキシリトールの収量が低下するために好ましくない。前処理に要する時間は、通常10分以上120分以下、好ましくは15分以上60分以下、特に好ましくは20分以上40分以下である。10分未満では、不純物の溶出が不十分であり、120分を越えて実施しても更なる不純物の溶出は見られない。
【0011】
キシラン含有原料に加える水の量は、該原料の乾燥重量に対して、通常1倍量以上16倍量以下、好ましくは3倍量以上14倍量以下、更に好ましくは5量以上12倍量以下である。1倍量より少ない場合には、不純物の溶解が十分に起こらず、不純物を効率よく除去できないので好ましくない。一方、16倍量を越える場合には、遊離した酢酸に由来するプロトン濃度が低下し、易分解性リグニンの分解が十分に起こらず、その後の操作過程に混入するため好ましくない。
以上述べた熱水処理をしたキシラン含有天然物を、必要に応じて、100℃以下の水で攪拌処理し、不純物の抽出を十分に行うことも可能である。この際、攪拌をスムーズに行うために新たに水を添加しても良い。
【0012】
上記条件で処理をした後に遠心機、濾過機などにより溶出した不純物を分離除去して必要なキシランを高純度に含む残さを得る。得られた残さは加水して洗浄し、不純物を十分に除去しておくことが好ましい。
前処理済みキシラン含有天然物は、使用する原料により違いはあるが、通常前処理温度以上200℃以下で熱水処理されて、キシロース及びキシロオリゴ糖が抽出される。処理温度が前処理温度より低い場合には抽出成分がほとんど無く、200℃より高い場合にはキシラン含有天然物中に含有される難分解性リグニン及びセルロースが加水分解されてキシロース及びキシロオリゴ糖と共に溶出されてくるので好ましくない。
【0013】
熱水処理時間は、通常20分以上180分以下、好ましくは40分以上120分以下である。20分より短い場合にはキシロース及びキシロオリゴ糖の溶出が十分に行われず、結果としてキシリトールの収率が低下するので好ましくない。180分より長い場合には反応系内で生じたキシロースの分解が著しくなるため好ましくない。
前処理済みキシラン含有原料に加える水の量は、該原料の乾燥重量に対して、通常1倍量以上16倍量以下、好ましくは3倍量以上14倍量以下、更に好ましくは5量以上12倍量以下である。1倍量未満の場合には、加水分解されたキシロース及びキシロオリゴ糖を完全に水に溶解するのに不十分であり、一方、16倍量を越える場合には、遊離した酢酸に由来するプロトン濃度が低下し、キシランの部分加水分解による水可溶化が十分に起こらず、しいてはキシリトール収量が低下するために好ましくない。
【0014】
上記抽出操作を行った後、必要に応じて、100℃以下の温度の水で撹拌処理し、水溶性となったキシロース及びキシロオリゴ糖を十分に抽出することも可能である。この際、攪拌をスムーズに行うために、新たに水を添加しても良い。
以上に述べた抽出操作を行った後、遠心機、濾過機などにより抽出液から残さを分離除去し、高純度のキシロオリゴ糖を主成分とする水溶液を得ることができる。
【0015】
本発明により得られたキシロオリゴ糖を主成分とする水溶液は、必要に応じて活性炭を加えて簡易処理し、濾過等によって活性炭を除いた後、バッチ式または連続式の装置により、150℃以上250℃以下の温度条件下で、加水分解、次いで水素添加する、或いは加水分解と水素添加を同時に行うことができる。反応温度が150℃未満の場合には、キシロオリゴ糖の加水分解に著しく長時間を有するために、工業的に不利である。一方、250℃を越える場合には、反応系において生じるキシロースの分解が著しく生じ、得られるキシリトールの収量が低下するため好ましくない。これらの方法の内、加水分解と水素添加反応を同時に行う方法が、工業的な観点から、好ましく用いられる。この場合、反応温度は200℃を越え250℃以下で行うことが好ましく、200℃を越え、220℃以下で行うことが特に好ましい。
【0016】
反応時間は、加水分解反応、水素添加反応、或いは加水分解反応と水素添加反応を同時に行う際の反応温度によって異なるが、通常、加水分解と水素添加反応を個別に行う際には、加水分解反応で30分以上9時間以下、水素添加反応においては10分以上3時間以下の範囲で行われる。加水分解反応時間が30分未満の場合には、加水分解が定量的に起こらず、9時間以上の場合には、得られるキシロースの分解が顕著となり、結果としてキシリトール収量が減少するため好ましくない。一方、水素添加反応において、反応時間が10分未満では反応が十分に進行しないため好ましくない。また、3時間を越えて反応を行っても得られるキシリトール収量に変化はない。一方、加水分解反応と水素添加反応を同時に行う場合、反応時間は、通常、30分以上9時間以下、好ましくは40分以上6時間以下、更に好ましくは40分以上3時間以下の範囲で行われる。30分未満の場合には、反応を完結することができないためキシリトール収量の低下を招き、9時間を超えて反応を行っても得られるキシリトール収量に変化はない。
【0017】
水素添加反応に用いられる触媒は還元糖を水素化可能なもので有れば特に限定はしないが、ランタニド及びアクチニドを除く長周期型周期率表の遷移金属に属する金属、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、等の金属が好ましく用いられる。これらの触媒は、そのまま単独に使用しても良く、2種類以上のものを混合、合金化、或いは逐次組み合わせて使用することもできる。更に、水素化活性を上げたり、被毒物質に対する耐性を付加させるために、これらの金属に他の金属又は非金属を添加しても良い。添加されるものとしては、周期律表第Ia、b、IIa、b、IIIa、b、IVa、b、Va、VIa、VIIaの金属又は非金属から選ばれる少なくとも1種類以上である。これらの触媒は、活性炭、石綿、珪藻土、シリカ、アルミナ、チタニア等の担体に担持させて使用することもできる。これらの触媒の形状は、粉末状、粒状、塊状のいずれの形状であってもよい。これらの触媒の内、ラネー型ニッケル触媒及びルテニウム触媒が好ましく用いられる。またこれらの触媒は、水素化反応終了後に回収し、繰り返し使用することもできる。
【0018】
水素圧力は、通常、反応温度において5MPa以上で行われる。水素圧力が5MPa未満の場合には、水素添加反応速度が著しく低下するため、反応系内のキシロースの分解が著しく生じるようになり、結果として得られるキシリトールの収量の低下を招く。水素圧力の上限は反応面での規制はないが、設備的な面で50MPa以下が実用的である。加水分解と水素添加反応に供するキシロオリゴ糖を主成分とする水溶液は、その後の反応を効率的に行うために予め濃縮しておくことも可能である。
水素添加によって得られたキシリトールは、必要に応じて陽陰イオン交換処理等の通常の方法により精製した後、常法により結晶化し、高収率で高純度のキシリトールを得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下で、実施例により本発明を更に詳しく説明する。尚、水溶液中に溶解しているリグニン分解成分含量の測定は、水溶液中の溶解固形分を真空下で絶乾した試料を用い、JIS−P8008に準拠して行った。また、融点は、示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製 DSC−7)を用いて、昇温速度0.5℃/分で測定し、得られたピークエンドの温度とした。
【0020】
【実施例】
(実施例1)
風乾サトウキビピス200gと水2.0kgを4Lオートクレーブに入れ、125℃で30分間加熱処理した。次いで、加水洗浄しながら抽出物をろ別し、キシランを含有する残さ176gを得た。
得られた残さ176gと水2.0kgを4Lオートクレーブに入れ、150℃で90分間加熱処理した後、70℃まで冷却し、水1.0kgを加えて2時間撹拌した。次いで、残さをろ別し、得られた抽出液を減圧下で濃縮し、固形分濃度5重量%の抽出液920gを得た。
【0021】
上記熱水抽出の結果、原料に対して15.0重量%のキシロース成分が、抽出固形分に対して65重量%の純度で得られた。また、リグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄系化合物の該抽出液への混入量は、それぞれ抽出固形分に対して、0.3重量%、0.15重量%(N換算)、100ppm(S換算)であった。該抽出液50gとラネーニッケル触媒(日興リカ株式会社)0.50gを400mlオートクレーブ入れ、水素を室温にて10MPa充填した後、210℃で2時間撹拌して加水分解反応と水素添加反応を同時に行い、キシリトール1.62gを得た。キシリトール収率は、抽出液中のキシロース成分に対して100%であった。
反応溶液から触媒を分離後、常法によりアンバーライトIR120B(オルガノ株式会社)及びアンバーライトIRA410(オルガノ株式会社)で脱色、脱塩処理をした。次いで、該精製液を減圧下で2.0gまで濃縮し、エタノール2.0gを加え、5時間放置し、融点93.2℃のキシリトール結晶1.30gを得た。
【0022】
(比較例1)
風乾サトウキビピス100gと水1.0kgを2Lオートクレーブに入れ、100℃で30分間加熱処理した。次いで、加水洗浄しながら抽出物をろ別し、キシランを含有する残さ90gを得た。
得られた残さ90gと水1.0kgを2Lオートクレーブに入れ、150℃で90分間加熱処理した後、70℃まで冷却し、水500gを加えて2時間撹拌した。次いで、残さをろ別し、得られた抽出液を減圧下で濃縮し、固形分濃度5重量%の抽出液490gを得た。
上記熱水抽出の結果、原料に対して15.2重量%のキシロース成分が、抽出固形分に対して62重量%の純度で得られた。また、リグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄化合物の該抽出液への混入量は、それぞれ抽出固形分に対して、6.1重量%、0.28重量%(N換算)、800ppm(S換算)と多かった。
【0023】
該抽出液50gを実施例1と同一条件で加水分解反応と水素添加反応を同時に行い、キシリトール1.10gを得た。キシリトール収率は、抽出液中のキシロース成分に対して71%であった。収率が低いのは、水素添加触媒のキシロースに対する活性が低下したため、キシロースの熱分解が生じたためである。
反応溶液から触媒を分離後、常法によりアンバーライトIR120B(オルガノ株式会社)及びアンバーライトIRA410(オルガノ株式会社)で脱色、脱塩処理をした。次いで、該精製液を減圧下で1.4gまで濃縮し、エタノール1.4gを加え、5時間放置して融点92.1℃のキシリトール結晶0.83gを得た。
【0024】
(比較例2)
風乾サトウキビピス100gと水1.0kgを2Lオートクレーブに入れ、125℃で30分間加熱処理した。次いで、加水洗浄しながら抽出物をろ別し、キシランを含有する残さ88gを得た。
得られた残さ88gと水1.0kgを2Lオートクレーブに入れ、210℃で90分間加熱処理した後、70℃まで冷却し、水500gを加えて2時間撹拌した。次いで、残さをろ別し、得られた抽出液を減圧下で濃縮し、固形分濃度5重量%の抽出液520gを得た。
上記熱水抽出の結果、原料に対して13.0重量%のキシロース成分が、抽出固形分に対して50重量%の純度で得られた。また、リグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄系化合物の該抽出液への混入量は、それぞれ抽出固形分に対して、12.9重量%、0.16重量%(N換算)、110ppm(S換算)でと多かった。
【0025】
該抽出液50gを実施例1と同一条件で加水分解反応と水素添加反応を同時に行い、キシリトール1.08gを得た。キシリトール収率は、抽出液中のキシロース成分に対して86%であった。収率が低いのは、水素添加触媒のキシロースに対する活性が低下したため、キシロースの熱分解が生じたためである。
反応溶液から触媒を分離後、常法によりアンバーライトIR120B(オルガノ株式会社)及びアンバーライトIRA410(オルガノ株式会社)で脱色、脱塩処理をした。次いで、該精製液を減圧下で1.4gまで濃縮し、エタノール1.4gを加え、5時間放置して融点92.7℃のキシリトール結晶0.84gを得た。
【0026】
(実施例2)
実施例1で得られた抽出液と、実施例1で反応後に回収した触媒を用いて、同一の条件で加水分解と水素添加の同時反応を行った。実施例1の結果と同様に、抽出液中のキシロース成分に対して100%の収率でキシリトールが得られた。反応終了後に再び触媒を回収し、同様の反応を20回繰り返したが、20回目の反応までキシリトール収率100%が維持された。水素添加触媒の活性が20回の反応中、維持されたためである。
【0027】
(実施例3)
風乾とうもろこし穂軸100gと水600gを2Lオートクレーブに入れ、130℃で20分間加熱処理した。次いで、加水洗浄しながら抽出物をろ別し、キシランを含有する残さ85gを得た 得られた残さ85gと水600gを2Lオートクレーブに入れ、180℃で60分間加熱処理した。次いで、残さをろ別し、得られた抽出液を減圧下で濃縮し、固形分濃度5重量%の抽出液450gを得た。
上記熱水抽出の結果、原料に対して14.0重量%のキシロース成分が、抽出固形分に対して62重量%の純度で得られた。また、リグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄系化合物の該抽出液への混入量は、それぞれ抽出固形分に対して、4.5重量%、0.34重量%(N換算)、140ppm(S換算)であった。
【0028】
該抽出液50gとラネーニッケル触媒(日興リカ株式会社)0.25gを400mlオートクレーブ入れ、水素を室温にて15MPa充填した後、220℃で2時間撹拌して加水分解反応と水素添加反応を同時に行い、キシリトール1.55gを得た。キシリトール収率は、抽出液中のキシロース成分に対して100%であった。
反応溶液から触媒を分離後、常法によりアンバーライトIR120B(オルガノ株式会社)及びアンバーライトIRA410(オルガノ株式会社)で脱色、脱塩処理をした。次いで、該精製液を減圧下で1.9gまで濃縮し、エタノール1.9gを加え、5時間放置して融点は93.4℃のキシリトール結晶1.24gを得た。
【0029】
(実施例4)
実施例3で得られた抽出液50gを400mlオートクレーブ入れ、150℃で6時間加熱し加水分解反応を行った。加水分解後の反応液に、ネーニッケル触媒(日興リカ株式会社)0.25gを加え、水素を室温にて15MPa充填し、150℃で3時間攪拌して水素添加反応を行い、キシリトール1.55gを得た。キシリトールの収率は、抽出液中のキシロース成分に対して100%であった。
【0030】
反応溶液から触媒を分離後、常法によりアンバーライトIR120B(オルガノ株式会社)及びアンバーライトIRA410(オルガノ株式会社)で脱色、脱塩処理をした。次いで、該精製液を減圧下で2.0gまで濃縮し、エタノール2.0gを加え、5時間放置して融点93.5℃のキシリトール結晶1.19gを得た。
【0031】
(比較例3)
風乾とうもろこし穂軸100gと水600gを2Lオートクレーブに入れ、180℃で60分間加熱処理した。次いで、残さをろ別し、得られた抽出液を減圧下で濃縮し、固形分濃度5重量%の抽出液620gを得た。
上記熱水抽出の結果、原料に対して16.0重量%のキシロース成分が、抽出固形分に対して52重量%の純度で得られた。また、リグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄系化合物の該抽出液への混入量は、それぞれ抽出固形分に対して、15.3重量%、0.42重量%(N換算)、1100ppm(S換算)と多かった。
【0032】
該抽出液50gとラネーニッケル触媒(日興リカ株式会社)0.25gを400mlオートクレーブ入れ、水素を室温にて15MPa充填した後、220℃で2時間撹拌して加水分解反応と水素添加反応を同時に行い、キシリトール0.72gを得た。キシリトール収率は、抽出液中のキシロース成分に対して55%であった。収率が低いのは、水素添加触媒のキシロースに対する活性が低下したため、キシロースの熱分解がしょうじたためである。
反応溶液から触媒を分離後、常法によりアンバーライトIR120B(オルガノ株式会社)及びアンバーライトIRA410(オルガノ株式会社)で脱色、脱塩処理をした。次いで、該精製液を減圧下で1.0gまで濃縮し、エタノール1.0gを加え、5時間放置して融点は92.2℃のキシリトール結晶0.54gを得た。
【0033】
(実施例5)
風乾綿実殻100gと水800gを2Lオートクレーブに入れ、120℃で40分間加熱処理した。次いで、加水洗浄しながら抽出物をろ別し、キシランを含有する残さ86gを得た。
得られた残さ86gと水800gを2Lオートクレーブに入れ、150℃で90分間加熱処理した後、70℃まで冷却し、水500gを加えて1時間撹拌した。次いで、残さをろ別し、得られた抽出液を減圧下で濃縮し、固形分濃度5重量%の抽出液640gを得た。
上記熱水抽出の結果、原料に対して21.0重量%のキシロース成分が、抽出固形分に対して66重量%の純度で得られた。また、リグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄系化合物の該抽出液への混入量は、それぞれ抽出固形分に対して、0.7重量%、0.35重量%、190ppmであった。
【0034】
該抽出液50gとルテニウム活性炭担持触媒(エヌイーケムキャット社)0.25gを400mlオートクレーブ入れ、水素を室温にて10MPa充填した後、230℃で3時間撹拌して加水分解反応と水素添加反応を同時に行い、キシリトール1.65gを得た。キシリトール収率は、抽出液中のキシロース成分に対して100%であった。
反応溶液から触媒を分離後、常法によりアンバーライトIR120B(オルガノ株式会社)及びアンバーライトIRA410(オルガノ株式会社)で脱色、脱塩処理をした。次いで、該精製液を減圧下で2.1gまで濃縮し、エタノール2.1gを加え、5時間放置し、融点92.9℃のキシリトール結晶1.32gを得た。
【0035】
(実施例6)
風乾白樺チップ100gと水1.0kgを2Lオートクレーブに入れ、135℃で25分間加熱処理した。次いで、加水洗浄しながら抽出物をろ別し、キシランを含有する残さ91gを得た。
得られた残さ91gを温度175℃で1分間爆砕処理した処理品と、水1.0kgとを2Lオートクレーブに入れ、170℃で90分間加熱処理した後、70℃まで冷却して2時間撹拌した。次いで、残さをろ別し、得られた抽出液を減圧下で濃縮し、固形分濃度5重量%の抽出液430gを得た。
上記熱水抽出の結果、原料に対して13.0重量%のキシロース成分が、抽出固形分に対して60重量%の純度で得られた。また、リグニン分解成分、窒素系化合物、硫黄系化合物の該抽出液への混入量は、それぞれ抽出固形分に対して、4.3重量%、0.31重量%(N換算)、150ppm(S換算)であった。
【0036】
該抽出液50gとラネーニッケル触媒(日興リカ株式会社)0.25gを400mlオートクレーブ入れ、水素を室温にて10MPa充填した後、190℃で4時間撹拌して加水分解反応と水素添加反応を同時に行い、キシリトール1.50gを得た。キシリトール収率は、抽出液中のキシロース成分に対して100%であった。
反応溶液から触媒を分離後、常法によりアンバーライトIR120B(オルガノ株式会社)及びアンバーライトIRA410(オルガノ株式会社)で脱色、脱塩処理をした。次いで、該精製液を減圧下で1.8gまで濃縮し、エタノール1.8gを加え、5時間放置し、融点93.2℃のキシリトール結晶1.23gを得た。
【0037】
(実施例7)
実施例6で得られた抽出液を更に濃縮し、固形分濃度30重量%とした。該抽出液50gとラネーニッケル触媒(日興リカ株式会社)1.50gを400mlオートクレーブ入れ、水素を室温にて10MPa充填した後、190℃で4時間撹拌して加水分解反応と水素添加反応を同時に行い、キシリトール9.00gを得た。キシリトール収率は、抽出液中のキシロース成分に対して100%であった。
反応溶液から触媒を分離後、常法によりアンバーライトIR120B(オルガノ株式会社)及びアンバーライトIRA410(オルガノ株式会社)で脱色、脱塩処理をした。次いで、該精製溶液を減圧下で10.8gまで濃縮し、エタノール10.8gを加え、5時間放置し、融点93.1℃のキシリトール結晶7.20gを得た。
【0038】
【発明の効果】
キシラン含有天然物からキシリトールを製造する際に、特定の条件の熱水を用いて処理することにより、高純度のキシロオリゴ糖を主成分とする水溶液を得ることができるため、キシリトールを製造する際に必要とする水素添加及び精製の各工程におけるキシリトールの損失を抑制でき、高収率で高純度のキシリトールを製造する方法として極めて有用である。
Claims (3)
- キシラン含有天然物から予め110℃以上140℃以下の熱水で抽出される成分を除去した水不溶性の残さを、前記処理温度以上200℃以下の熱水で処理してキシロオリゴ糖を主成分とする抽出液を得る第1工程と、該抽出液を加水分解し、次いで水素添加する、或いは加水分解と水素添加を同時に行う第2工程とを備えた、キシリトールの製造方法。
- 第1工程で得られるキシロオリゴ糖を主成分とする抽出液を、150℃以上250℃以下の温度で加水分解と水素添加を同時に行うことを特徴とする請求項1に記載のキシリトールの製造方法。
- キシラン含有天然物がサトウキビピスであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキシリトールの製造方法。
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