JP4138971B2 - プラスチック製基材の表面処理法および被覆プラスチック物品 - Google Patents
プラスチック製基材の表面処理法および被覆プラスチック物品 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック製基材の表面処理法、および被覆プラスチック物品に関する。これらの表面処理は、スパッタリング装置、真空蒸着装置、イオンプレーティング装置等の真空成膜装置を用いて行われ、例えば携帯電話内面にコーティングされる電磁波シールド被膜形成、鏡等の反射金属被膜の形成、プラスチック製基材への金属被膜形成の前処理等に利用される。
【0002】
【従来の技術】
従来、電化製品のためのプラスチック筺体材料として、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂が一般的に知られている。この樹脂は、ゴム成分およびブタジエン成分の効果によりもたらされる、優れた柔軟性、かつ、優れた2次加工性(プラスチック表面への金属被膜形成)を有する材料であるので、その表面に、Al、Cu、Ni等の電磁波シールド被膜を湿式メッキまたは真空蒸着等で0.5μmの厚さに形成することにより、電磁波シールド被膜を形成していた。
【0003】
また、近年、エンジニアリングプラスチックといわれるポリカーボネート(PC)からなる筺体が高強度を有し、かつ、耐熱性に優れていることから注目され、多くの電化製品に採用されている。また、PCとABSとを混合したPC/ABS混合体も同様な効果を持つことから多く使われるようになっている。
【0004】
しかし、これらのPCを含む合成プラスチックは、耐衝撃性に優れている反面、プラスチック表面の分子の末端が不活性分子により覆われているため、その表面が安定していることから、2次加工性が悪い。従って、PCまたはPC/ABSへ直接金属被膜を形成すると、密着性が極めて弱くなり、電磁波シールドの密着性の規格として知られるUL規格に合格できるものを作製することはできなかった。そのため、密着性をあげる方法として、以下に示す前処理が検討されていたが、いずれの前処理を行った場合も、UL規格に合格できる電磁波シールド被膜を形成することはできなかった。
【0005】
(1)高分子被膜のスプレー塗布によるアンダーコート処理(プライマー処理)
(2)コロナ放電照射による表面改質
(3)紫外線照射による表面改質
(4)有機溶剤(アセトン、メタクレン等)による表面改質
上記(1)に示す前処理では、基材材料のPCまたはPC/ABSと異なる高分子材料を該基材表面上にスプレーにより塗布し、電磁波シールド被膜の密着力を向上させる方法であるが、結合力が弱く、UL規格に合格できる密着力を得ることは不可能であった。また、人間が手作業により個々の基材に塗布し、乾燥も半日以上の時間が必要なため、手間がかかる方法でもあった。上記(2)および(3)に示す前処理は、プラズマまたは紫外線をPC、PC/ABSに直接照射してプラスチック材料表面にC=O基を生成し表面を親水化することで密着力を向上させる方法であるが、経時変化があるため密着性の劣化が起こるという問題がある。さらに、上記(4)の場合も同様に、プラスチック表面を改質し、密着力を向上させる方法であるが、UL規格を満足するものは得られなかった。これは、有機溶剤によりプラスチック表面処理を行うと、該溶剤が表面より深い位置まで浸透し、表面が荒れると共に、その処理された領域は一時的に表面改質が行われたに過ぎず、表面が非常に不安定であるからである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、プラスチック製基材上に、UL規格に合格する密着力が得られるように金属薄膜を形成するために、プラスチック製基材の表面を処理する方法、および被覆プラスチック物品を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラスチック製基材の表面処理法は、真空成膜装置を用いて、例えばスパッタ法、真空蒸着法、またはイオンプレーティング法等により、プラスチック製基材上にアモルファス炭素を形成し、次いで、その上にクロム、またはチタンの膜を形成するものである。
【0008】
該プラスチック製基材としては、例えば、ポリカーボネート、ポリカーボネートとABS樹脂との混合体、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリイミド、フルオロカーボン樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、またはこれらの混合体からなる基材を用いることができる。
【0009】
該プラスチック製基材の表面を前記したように処理し、次いで、例えばスパッタ法等により表面処理済みの基材上にアルミニウム、銅、またはニッケルの金属薄膜を形成することができる。表面処理工程において、基材表面がクロム、またはチタンの金属表面に改質されているので、通常のスパッタにおいて使用可能な金属は殆ど表面処理された基材上に密着性良く形成することができる。
【0010】
また、本発明の被覆プラスチック物品は、プラスチック製基材と、その上に形成されたアモルファス炭素層とクロム、またはチタンの層とからなる中間層と、該中間層の上に形成されたアルミニウム、銅、またはニッケルの被膜とからなっている。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
(実施例1)
スパッタ法によりAl膜からなる電磁波シールド被膜をPC/ABS基材上に形成せしめた。その際、表1に示すように、被膜の密着性改善のための前処理(AおよびB)を行って、アモルファスC層とCr層とからなる中間層を設け、該電磁波シールド被膜の密着性改善を行った。
【0012】
【表1】
次いで、前処理された基材上に、図1(A)および(B)に示すスパッタ装置を用いて金属被膜の形成を行った。真空槽1には、スパッタカソード2基とプラスチック基材2に対向させて配置したプラズマCVD用の電極3とを設けてあり、プラスチック基材2は基材ホルダー4に固定されている。基材ホルダー4を回転させて、各基材を各カソードおよび電極2上に移動させ、それぞれの基材上に成膜を行った。真空槽1は、1.3×10-3Pa以下に排気し、C2H2ガスを所定の圧力まで導入した後、該電極にRF電力を印加し、基材にアモルファスCを形成した。その後、基材をCrターゲット5上に移動し、Crを50nmの厚さまで成膜した。最後に、該基材をAlターゲット6上に移動し、Alのスパッタ成膜を行い500nmのAl膜を形成した。プラズマCVDによるアモルファスCおよび金属被膜の成膜条件を表2に示す。なお、スパッタ出力は約1.2kW(600V×2.0A)であった。
【0013】
【表2】
上記のようにして形成したAl被膜の密着性を、以下のようにして評価し、その結果を表3に示す。
【0014】
【表3】
密着性評価試験は、UL746C、第50章の方法Bに記載のANSI/ASTMD3359、方法B−クロスカットテープテストに従って行った。この試験は、試料に対し、表面被膜を通して下地材まで碁盤目にカットし、碁盤目上に感圧テープを貼り、このテープを剥がす際に、カットした表面からの金属薄片の剥離状態を観察し、剥離なしの場合を「5B」として評価し、65%以上剥離した場合を「0B」として評価した。なお、5%未満剥離を「4B」、5〜15%を「3B」として評価し、4B以上がUL規格合格とされる。
【0015】
表3から明らかなように、本発明の金属被膜の密着性は十分UL規格に合格するものであった。かくして、UL規格に合格しうる密着性を有する金属被膜の形成されたプラスチック物品が得られた。
(実施例2)
実施例1における中間層を形成する際に、実施例1の場合と異なり、Cターゲットを用いてスパッタし、アモルファスCを得た。このスパッタは、所定の圧力のC2H2またはH2をスパッタガス中に導入して行った。スパッタ条件は表2に示したCr、Alのスパッタ条件に準じた。但し、スパッタ出力のみ、RF1kWにして行った。かくして形成されたアモルファスCの膜質は実施例1の場合と同様であった。得られた中間層の上に実施例1と同様にして金属被膜を形成せしめたところ金属被膜の密着性は実施例1の場合と同様に良好であり、十分UL規格に合格するものであった。
(実施例3)
本実施例では、プラスチック基材にアモルファスCを形成する方法を、実施例1記載のように基材に対向させた電極にRF電力を印加して行う代わりに、基材ホルダーに直接RF電力を印加し、表2に示したアモルファスC形成条件の下で行った。次いで、実施例1の方法を繰り返して、金属被膜を形成せしめたところ、実施例1と同様の密着性が得られ、十分UL規格に合格するものであった。
(実施例4)
本実施例では、実施例1のAlターゲットの代わりに、銅またはニッケルのターゲットを用いて、実施例1と同様にして各金属被膜を形成した。これらの金属被膜の密着性は実施例1の場合と同様であり、十分UL規格に合格するものであった。
(実施例5)
本実施例では、Crターゲットの代わりに、Tiターゲットを用いて実施例1の方法を繰り返した。得られた金属被膜の密着性は実施例1の場合と同様であり、十分UL規格に合格するものであった。
(実施例6)
本実施例では、プラスチック基材の材質として、PC/ABSの代わりに、ポリカーボネート単独、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリイミド、またはポリテトラフルオロエチレンからなる基材を用いて、実施例1の方法を繰り返した。得られた金属被膜の密着性は実施例1の場合と同様であり、十分UL規格に合格するものであった。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、真空槽内で一貫した金属被覆を行っており、すなわちプラスチック製基材上にアモルファス炭素層とクロム等の金属の層とからなる中間層を設けているので、該中間層の上にアルミニウム等の金属被膜を形成することができ、この金属被膜の密着性がUL規格に合格できるものとなる。かくして、本発明の方法は、種々の用途に利用でき、例えば電磁波シールド被膜の形成等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)本発明の実施例で用いたスパッタ装置の構成を示す概念的平面図。
(B)図1(A)のスパッタ装置の断面図。
【符号の説明】
1 真空槽 2 プラスチック製基材
3 プラズマCVD用電極 4 基材ホルダー
5 Crターゲット 6 Alターゲット
Claims (2)
- 真空成膜装置を用いて、プラスチック製基材上にアモルファス炭素を形成し、次いで、その上にクロム、またはチタンの膜を形成することを特徴とするプラスチック製基材の表面処理法。
- プラスチック製基材と、その上に形成されたアモルファス炭素層とクロムまたはチタンの層とからなる中間層と、該中間層の上に形成されたアルミニウム、銅、またはニッケルの被膜とからなることを特徴とする被覆プラスチック物品。
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