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JP4098372B2 - ヘパリン結合性増殖因子の生産方法 - Google Patents

ヘパリン結合性増殖因子の生産方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はヘパリン結合性増殖因子を生産する方法に関するものであり、詳しくは硫酸化多糖類またはそのアゴニストの存在下においてヘパリン結合性増殖因子を産生する形質転換細胞を培養することにより、その培養上清から該増殖因子を高産生で効率よく取得する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、種々の細胞増殖因子がクロ−ニングされているが、それらの中で、ヘパリンに強い親和性を有する一群の増殖因子が見出されている。これをヘパリン結合性増殖因子と総称するが、この中には線維芽細胞増殖因子(FGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、プレイオトロフィン、顆粒球/マクロファ−ジ・コロニ−形成刺激因子(GM−CSF)、インタ−ロイキン3及び7、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等、種々の既知または未同定の増殖因子が含まれる(実験医学,(14),1772(1991))。これらの因子は、ヘパリンやヘパラン硫酸に代表されるグリコサミノグリカンと結合することが知られており、中でもFGFは、ヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合により細胞表面や細胞外基質に貯蔵されること、及びFGFの有する生物学的活性がヘパリンによって調節され得ることが確認された(Cell,64,841(1991))。 最近、肝実質細胞を生体内より取り出して生体外においてその増殖を促進させうるヒト由来の蛋白性因子、即ちヒト肝細胞増殖因子(以下「hHGF」と略す。)が劇症肝炎患者血漿より見い出され(特開昭63−22526号公報)、さらにhHGF蛋白質をコ−ドするアミノ酸配列及びこれをコードする遺伝子(cDNA)の配列(特開平3−72883号公報)、さらにこのcDNAを用いたhHGF蛋白質の生産方法及び形質転換体(特開平3−285693号公報)が報告されている。かかる方法により生産される組み換えhHGF蛋白質は、生体外において肝実質細胞の増殖を促進する働きがみとめられている。また、ヒトに限らずHGF蛋白は、ヘパリンに強い親和性を有する上記ヘパリン結合性増殖因子の一種であることが判明している。本発明者らは、標的細胞におけるHGF結合・消費に硫酸化多糖類が及ぼす影響について調べたところ、HGFと種々の硫酸化多糖類とを混合することにより、HGFの標的細胞への結合および標的細胞によるhHGFの消費が強く抑制され、結果としてHGFの作用が持続かつ安定化することを見出した(欧州公開特許公報第517182号)。
【0003】
一方、一般に増殖因子の生産手段として、大腸菌などの微生物や哺乳動物由来細胞に該増殖因子のcDNAを導入する方法が広く利用されている(Molecular Cloning,2nd ed.,16.3−17.40,ColdSpring Harbor Laboratory Press(1989))。hHGFに代表されるような、糖鎖を持ち且つ分子内に多くのジスルフィド結合を有する複雑な構造の蛋白質の場合、専ら動物細胞がその生産に利用される。その中でも特に汎用されているのがチャイニ−ズ・ハムスタ−卵巣由来の上皮系細胞株CHOである。
【0004】
他方、ヘパリン結合性増殖因子の標的細胞上のレセプタ−分子も明らかになりつつあり、例えばHGFのレセプタ−分子は癌原遺伝子c−met産物(C−Met蛋白質)であることが判明しており(Science,251,802(1991))、また酸性型及びアルカリ型FGFやKGFのレセプターとして既に数種類のFGFレセプターファミリーが明らかにされている(実験医学,10,25(1992))。さらにそれ以外のレセプターとして、細胞表層のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)も、分子内グリコサミノグリカンを介してヘパリン結合性増殖因子を捕捉することが知られている(蛋白質・核酸・酵素,34,853(1989))。HSPGは、極めて多くの細胞上に大量に発現する。 さらに、一般に増殖因子が細胞上の特異的レセプタ−に結合してその生理活性を惹起する際には、増殖因子自身が速やかに細胞内に取り込まれ、消費されることが広く認められている。HGFにおいても、本発明者らは、既に上皮系細胞株を用いた解析から、hHGFがレセプタ−に結合後極めて速く細胞内に取り込まれ(インタ−ナリゼ−ション)(t1/2 :5−10分)、分解を受けて培養上清中に放出される(デグラデ−ション)(t1/2 :30−60分)ことを明らかにしている(J.Cell.Biochem.suppl 0(16partB),184(1992))。
【0005】
従来の技術では、ヘパリン結合性増殖因子のcDNAを有する発現ベクタ−を適当な宿主細胞に導入して該増殖因子を生産した場合、発現した該増殖因子の一部が産生細胞自身の増殖因子レセプタ−及びHSPG分子を介して分解・消費されることを防げなかったため、産生細胞培養上清中から回収される該増殖因子の量は比較的低値であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、該増殖因子産生細胞(形質転換体)の培養系に各種硫酸化多糖類を添加し、該増殖因子産生量を比較検討した。例えば、hHGFcDNAを導入したHGF産生CHO細胞(特開平3−285693号公報)の培養液中に硫酸化多糖類を1〜1000μg/mlの濃度で添加し、経時的に培養上清を回収してHGF含量を定量した。その結果、興味深いことに、硫酸化多糖類の添加によって約1.5〜5倍のHGF産生増強が認められた。
【0007】
一方、本発明者らは、HGF発現に用いた宿主CHO細胞のHGF応答性を検討したところ、該宿主細胞がC−Met蛋白質を持ち実際にHGF添加によってDNA合成が促進されること、及び宿主細胞がHGFを消費・分解することを見出した。さらに、本発明者らは、宿主細胞のHGF結合・分解に及ぼす硫酸化多糖類の影響について調べたところ、HGFと硫酸化多糖類とを混合することにより、HGFの宿主細胞への結合および宿主細胞によるHGFの消費が強く抑制されることを見出した。
【0008】
以上の結果から、HGF産生細胞培養系において、硫酸化多糖類を培養系に添加することで産生細胞自身によるHGF結合・消費・分解が回避され、培養上清からのHGF回収量が大幅に増強することが判明し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明の要旨は、ヘパリン結合性増殖因子をコードする遺伝子を導入して形質転換された細胞株を硫酸化多糖類またはそのアゴニストの存在下において培養し、その培養液からヘパリン結合性増殖因子を採取することを特徴とするヘパリン結合性増殖因子の生産方法、及びヘパリン結合性増殖因子をコードする遺伝子を導入して形質転換された細胞株の培養液中に硫酸化多糖類またはそのアゴニストを共存させることを特徴とするヘパリン結合性増殖因子の分解抑制方法に存する。
【0009】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明で定義されるヘパリン結合性増殖因子とは、硫酸化多糖類に親和性を有する全てのヘパリン結合性増殖因子が該当する。具体的には、全アミノ酸配列が明らかとなっている酸性型FGF、アルカリ型FGF(Methods in Enzymology,147,120(1987))、KGF(Science,245,752(1989))、HGF等の蛋白性因子等が挙げられる。
【0010】
本発明で使用する該増殖因子産生細胞は、その表層にHSPGに代表される硫酸化多糖構造を有する細胞で、かつ組換え法により上記のような増殖因子cDNAを導入されたものである。具体的には、特開平3−285693号公報に記載された方法に従いhHGFをコ−ドするcDNAを含む発現ベクタ−を構築し、その発現ベクタ−をCHO細胞等の宿主に導入した産生株などが挙げられる。かかるHGF産生細胞系では、硫酸化多糖類添加によって約1.5〜5倍以上のHGF回収増大が認められる。かかる細胞株の培養は、常法により浮遊培養または付着培養で行うことができる。培地としては、MEM、RPMI−1640等が使用され、5−10%血清の存在下、もしくは適当量のインスリン、デキサメサゾン、トランスフェリン等の存在下において培養する。
【0011】
本発明において、上記ヘパリン結合性増殖因子を産生する形質転換細胞培養系に添加する硫酸化多糖類としては、天然グリコサミノグリカンを含むプロテオグリカン、グリコサミノグリカン、グルカン、それらの誘導体が挙げられる。硫酸化多糖類は、糖がグリコシド結合によって脱水縮合して生じる炭水化物、すなわちグリカンに硫酸基が付加したものであり、かかる多糖類とは、グリコサミノグリカンのごとく二糖類単位が繰り返してできた構造を有し、その二糖類の1つがグルコサミンまたはガラクトサミンから成るもの(生命の科学,39(4),306(1988))や、グルカンのように多糖類が硫酸エステル化されたもの、さらにはこれらの誘導体が含まれる。具体的には、例えばコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、デキストラン硫酸等が挙げられる。またこれら硫酸化多糖類のアゴニストも、本発明の培養系に添加することができる。
【0012】
上記硫酸化多糖類またはそのアゴニストは、ヘパリン結合性増殖因子を産生する細胞培養液中に少なくとも1種類添加される。添加量としては、産生細胞の増殖に強い影響を与えない範囲であるならば特に制限はされないが、通常1〜1000μg/ml、より好ましくは10〜100μg/mlの範囲で好適に利用される。また添加する時期は、通常培養の当初から加え、培地を交換する毎に新たに添加する方法が採用されるが、培養の途中で加えても差し支えない。
【0013】
かかる培養により、ヘパリン結合性増殖因子はその形質転換細胞培養系の培養上清中に産生され、従ってこの培養上清から目的とするヘパリン結合性増殖因子を常法に従って分離・精製することができる。具体的には、培養上清を各種のクロマトグラフィー、例えばS−セファロース、硫酸化セルロファイン等の使用により容易に単離・精製することができる。
【0014】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1 CHO細胞上のHGFレセプタ−の検出
精製された組換えhHGF標品(特開平3−72883号公報に記載の方法に従って調製)を、クロラミンT法(Nature,194,495(1962))にてヨ−ド標識した。すなわち、100μlの0.5M 塩化ナトリウム、0.5M リン酸緩衝液(pH7.4)に溶解したhHGF 20μgに1mg/ml クロラミンT 100μlを添加して反応を進行させ、次いで2.5mg/ml ピロ亜硫酸ナトリウム 100μlを加えて反応を停止した。反応液を0.25% ゼラチン、5mM ヨウ化カリウム含有PBS(−)にて平衡化したセファデックスG−25(ファルマシア社)カラムに添加し、標識されなかったヨ−ドを除いた。 125I標識hHGF(以下、「標識hHGF」と略す)は、0.2μmフィルタ−を通過させて無菌化し、分注して使用時まで−20℃にて保存した。
【0015】
底面積78.5cm2 のプラスチックディッシュ(コ−ニング社)にCHO細胞を培養し、ほぼ飽和密度に達した(セミコンフレント)ものを実験に使用した。細胞をディッシュに付着させた状態で、0.25% ゼラチン、25mM ヘペス含有DMEM培地(ギブコ社)pH7.4(以下、「結合培地」と略す)にて3回洗浄し、次いで0−200pM標識hHGFを含む結合培地10mlと共に4℃にて4時間ゆるやかに振とう培養した。対照として、200pM標識hHGFにさらに2nM非標識hHGFを加えたディッシュも用意した。上清を除去し、氷冷結合培地、次いで氷冷PBS(−)にて各4回洗浄後、5mlの架橋緩衝液(100μg/ml ビススベレ−ト含有140mM 塩化ナトリウム、1mM 塩化マグネシウム、10mMリン酸ナトリウム(pH8.3))中で4℃にて30分間反応させて、標識hHGFと細胞表面のhHGF結合蛋白とを化学架橋した。5mlの25mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.4)、140mM塩化ナトリウム、1mM EDTAを添加して反応を停止させた後、細胞をスクレ−パ−にて剥離し、400μlの可溶化液(50mM トリス−塩酸(pH7.4)、140mM 塩化ナトリウム、1% ノニデットP−40、1mM EDTA、2mM フェニルメチルスルフォン酸フルオライド)を加え、氷上で1時間反応させて細胞を可溶化した。細胞可溶化液から、12000×g,4℃、30分間の遠心分離にて上清を得て、その一部を免疫沈降法、電気泳動及びオ−トラジオグラフィーに供した。
【0016】
上記細胞可溶化画分から、HGFの機能的レセプタ−分子の一つとして知られるc−Met蛋白質を分離する目的で、免疫沈降を行った。すなわち、細胞可溶化液に5μlの抗マウスc−Met抗血清(Eur.J.Biochem.,204,857(1992))と20μlのプロテイン−A セファロ−ス(ファルマシア社)を加えて、c−Met蛋白質/HGF複合体を免疫沈降させた。沈降物は、SDS−サンプル緩衝液(0.1M トリス−塩酸(pH6.8)、10% グリセロ−ル、1% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))中で煮沸後、6% ポリアクリルアミド濃度の非還元条件でのSDS−ポリアクリルアミド電気泳動に供し、ゲルを固定・乾燥後、オ−トラジオグラフィにて標識hHGFの結合する蛋白質を検出した。
【0017】
図1に結果を示す。図1においてレ−ン1、2、3、4はそれぞれ標識hHGF添加量50pM、100pM、200pM、200pM+非標識hHGF2nMのサンプルの結果を表す。左側の数字は、分子量マ−カ−の移動度をキロダルトン(kDa)で示してある。非還元下では70kDa付近に標識hHGF単独のバンドを認め、さらに250kDa付近に特異的バンドを検出した。このバンドは抗c−Met抗体で特異的に沈降すること、hHGFの分子量を差し引くと約180kDaの大きさであることから、hHGFとc−Met蛋白質の複合体であると結論される。
【0018】
以上の結果から、hHGF産生細胞株の親株であるCHO細胞上には、既にHGFの機能的レセプタ−の構成分子として知られるC−Met蛋白質が存在し、実際にhHGFがCHO細胞表面のc−Met蛋白質に特異的に結合することが判明した。
【0019】
実施例2 CHO細胞培養系における添加hHGF分子の残存量の測定
次にCHO細胞におけるhHGFの分解速度を調べる目的で、以下の実験を行った。すなわち、培養上清中に一定量のhHGFを添加し、経時的に上清中の残存HGF量をエンザイムイムノアッセイ(ELISA)法にて測定し、硫酸化多糖類の有無によるHGF分解速度の違いを比較検討した。
【0020】
CHO細胞を0.02%トリプシン−EDTA(エチレンジアミン四酢酸)含有の10mM リン酸緩衝液−生理食塩水 pH7.4(PBS(−))にて剥離し、低速遠心にて3回洗浄後、細胞濃度5×105 個/mlとなるよう10%ウシ胎児血清(FBS)含有eRDF培地(極東製薬社)にて懸濁した。この細胞液を、1mlずつ12ウェルマイクロプレ−ト(コスタ−社)に添加して、5%炭酸ガス含有空気気相下、37℃で1昼夜培養した。16時間後、培養ウェルの培養液を除き、PBS(−)にて2回洗浄後、2μg/mlのヒトリコンビナントHGFを含む新鮮な培地を1mlずつ添加した。この時、一部のウェルには最終濃度100μg/mlとなるようヘパリン(分子量4000−6000、シグマ社)を加えた。5%炭酸ガス含有空気気相下、37℃で培養を続け、1、2、5、24、68時間後に50μlずつ上清を採取して、ELISA法にて上清中の残存HGF量を測定した。上清は、測定直前まで−80℃にて凍結保存した。 上記被検培養上清中の残存HGF量を、hHGF特異的サンドイッチELISA法にて測定した。すなわち、被検上清を0.1% CHAPS、0.4M 塩化ナトリウム、0.1% ウシ血清アルブミン(BSA)(シグマ社、RIAグレ−ド)、0.05% Tween20含有10mM リン酸緩衝液(pH7.4)にて50、100、200倍に希釈した。ELISA用プレ−トとして、96ウェルマルチプレ−ト(ヌンク社、ELISA用)に予め抗hHGFモノクロ−ナル抗体を吸着させ(0.5μg/50μl−50mM 炭酸緩衝液(pH9.6)/ウェル)、次いで1% BSA、0.05% アジ化ナトリウム含有PBS(−)を1昼夜以上反応させてウェル壁をブロッキングしたものを用いた。
【0021】
被検希釈液をELISAプレ−トウェルに50μlずつ加え、4℃で1昼夜静置した。翌日、0.05% Tween20含有PBS(−)(PBST)にてウェルを4回洗浄後、二次抗体としてペルオキシダ−ゼ共役化抗hHGFポリクロ−ナル抗体を添加し、室温にて2時間以上反応させた。二次抗体は、ヒトリコンビナントHGFを免疫したウサギ血清よりプロテインAカラムにてアフィニティ−精製し、過ヨウ素酸法にてペルオキシダ−ゼを共役化して(J.Histochem.Cytochem.,22,1084(1974))作製した。
【0022】
インキュベ−ト後、ウェルをPBSTにて6回洗浄し、発色液(0.04% オルソフェニレンジアミン、0.02% 過酸化水素水含有リン酸クエン酸緩衝液(pH5.0))を50μl/ウェル添加して、室温で数分−数十分放置した。適度な発色の得られた時点で4.5N硫酸を加えて(50μl/ウェル)反応を停止し、イムノリ−ダ−(日本インタ−メッド社)にて490nmの吸光を測定した。検量線作成のために、予め濃度を吸光係数から算出しておいたhHGF標準品を0−40ng/mlの範囲で段階希釈して使用した。なお、ここで使用したELISA法がHGF分解産物を全く検出しないことを、酵素消化後hHGFの電気泳動のバンドとの対応から確認した。
【0023】
図2に結果を示す。横軸は培養開始後の時間を、縦軸は培養上清中のhHGF(μg/ml)を表している。培養上清中にヘパリン無添加群(●)では速やかにhHGF量が減少したのに対し、添加群(■)ではhHGFの減少速度が極めて遅延することが確かめられた。グラフの傾きから、上清中hHGFの減少速度t1/2 は、ヘパリン無添加群で約12時間、添加群で約135時間と算出された。 以上の結果から、酸化多糖類の一種であるヘパリンを培養液に添加することによって、hHGFのCHO細胞における分解が著しく抑制されることが判明した。
【0024】
実施例3 hHGF産生CHO細胞株のhHGF産生に及ぼすヘパリンの影響
実際のhHGF産生株において培養液中に硫酸化多糖類を加え、hHGFの回収量を検討した。
特開平3−285693号公報に記載の方法に従って、CHO細胞にhHGFcDNAを含む発現ベクタ−を導入し、hHGFを恒常的かつ安定して産生する形質転換hHGF生産株KBE、KT4−3およびGE43−19を得た。
hHGF生産株を細胞濃度4×104 個/mlで5%FBS含有eRDF培地に懸濁し、1mlずつ12ウェルマイクロプレ−トに播種した。ここに最終濃度0−1000μg/mlになるようヘパリン(シグマ社)を加えて培養を開始し、一定時間後に上清の一部を採取してhHGF特異的ELISA法(実施例2参照)にてhHGF含量を測定した。
【0025】
図3及び図4に結果を示す。図3は、KBE細胞培養開始後2−3日毎に培地交換して上清を採取し、培養11日目まで経時的にhHGF量を追跡したものである。横軸に培養日数を、縦軸に培養上清中のhHGF累積量をELISAユニット(U;OD490 ×希釈倍率)で示してある。本条件下では、培養4日目に細胞はほぼ飽和密度に達し、以降徐々に細胞数を減じて培養13日目には細胞生存率は30%以下であった。ヘパリン添加群において1μg/mlという低濃度の添加から顕著なhHGF量の上昇が認められ、10−100μg/mlヘパリン存在下でいずれの培養期間においても2−3倍のHGF量の増加が明らかとなった。図4は、KBE細胞が飽和密度に達した直後に培地交換をし、2日後の上清を採取してhHGF含量を測定したものである。横軸はヘパリン濃度を、縦軸はhHGF含量をヘパリン無添加群を1.0としたときの相対値で表す。ヘパリン添加群では、無添加群に比べて10μg/mlの添加で既に2倍以上のhHGF量の上昇が認められ、1000μg/mlまでの添加において2−2.5倍のhHGF量上昇が示された。
【0026】
次に、3種類のhHGF生産株において、ヘパリン添加による上清中hHGF量の変化を測定した結果を表1に示す。被検上清は、細胞飽和直後に培地交換して2日後のものを測定した。ヘパリン無添加群のhHGF含量を1.00として、ヘパリン10μg/ml添加群のhHGF含量を相対値として示した。いずれの株においても、2−5倍のhHGF回収量の増大が認められた。
【0027】
【表1】
Figure 0004098372
【0028】
以上の結果、hHGF産生細胞株の培養液中にヘパリンを添加することにより、回収されるhHGF量が数倍に増大することが判明した。
【0029】
実施例4 hHGF産生CHO細胞株のhHGF産生に及ぼす各種硫酸化多糖類の影響
次に、ヘパリン以外の硫酸化多糖類についても同様の検討を行った。
KBE株を4×105 個/ml/ウェルで12ウェルマイクロプレ−トに播種し、培養5日後の上清を採取して、上述のELISA法にて培養上清中のhHGF量を測定した。添加多糖類として、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デキストラン(以上シグマ社)、デキストラン硫酸及びコンドロイチン硫酸(以上生化学工業社)を用いた。
【0030】
表2に結果を示す。ヘパリン、ヘパラン硫酸、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸のいずれにおいてもhHGF含量の増大が認められた。ヘパリン、ヘパラン硫酸、デキストラン硫酸では10−100μg/mlの添加範囲で最大効果が得られ、2倍ないしそれ以上の上昇が示された。一方、コンドロイチン硫酸では効果は認められるものの、その増大効果はやや低く、有効必要用量も高用量側にシフトしていた。硫酸基を持たないデキストランでは、全く効果が認められなかった。
【0031】
【表2】
Figure 0004098372
【0032】
KBE株は、マイクロキャリア−(ファルマシア社)を用いた浮遊培養法によって数カ月以上HGF産生を維持させることが可能であるが、その場合も、硫酸化多糖類は同様の効果を数カ月間維持した。種々の培養形態・培養スケ−ルの検討においても、硫酸化多糖類の作用は付着培養(Tフラスコ、ディッシュ、ロ−ラ−ボトルなど)・浮遊培養(マイクロキャリア−を用いた、あるいは用いないスピナ−培養)に関わりなく、また96ウェルプレ−トのマイクロウェル培養から数リットル以上の培養規模において、同様に認められた。
【0033】
以上の結果から、HGF生産細胞の培養系に種々の硫酸化多糖類を加えることにより、回収されるHGF量が2倍ないし数倍に増大することが判明した。この効果は低用量の硫酸化多糖類添加で生じ、培養の方法や硫酸化多糖類の種類に関わりなく、培養数時間から数カ月間の長期に渡って維持され、HGF生産株で広く認められた。この効果の原理は、硫酸化多糖類がその硫酸基を介してHGFを結合し、HGF産生細胞上のレセプタ−(c−Met蛋白質及びヘパラン硫酸プロテオグリカンなど)へのHGF結合・消費・分解を著しく遅延させるためと理解された。
【0034】
【発明の効果】
本発明の生産方法によれば、ヘパリン結合性増殖因子の生産及び回収量を数倍に高めることが可能であり、その結果、該増殖因子の生産におけるコストを著しく軽減できるようになった。本発明を基にヘパリン結合性増殖因子を生産することにより、医療分野での広範な利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CHO細胞におけるhHGF/c−Met蛋白質複合体の形成についてSDS−ポリアクリルアミド電気泳動の結果を示した図面である。
【図2】CHO細胞におけるhHGFの消費速度について、ヘパリン存在下及び非存在下での比較を示した図面である。
【図3】hHGF生産株における培養上清中のhHGF量について、ヘパリン存在下及び非存在下での比較を経時的に示した図面である。
【図4】hHGF生産株における培養上清中のhHGF量について、ヘパリン添加用量の影響を示した図面である。

Claims (3)

  1. 肝実質細胞増殖因子をコードする遺伝子を導入して形質転換されたCHO細胞株を硫酸化多糖類の存在下において培養し、その培養液から肝実質細胞増殖因子を採取することを特徴とする肝実質細胞増殖因子の生産方法。
  2. 硫酸化多糖類が硫酸基を含むプロテオグリカン、グリコサミノグリカン、グルカン、それらの誘導体から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 肝実質細胞増殖因子をコードする遺伝子を導入して形質転換されたCHO細胞株の培養液中に硫酸化多糖類を共存させることを特徴とする肝実質細胞増殖因子の分解抑制方法。
JP20568493A 1993-07-28 1993-07-28 ヘパリン結合性増殖因子の生産方法 Expired - Lifetime JP4098372B2 (ja)

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