JP4085168B2 - 微小カンチレバー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、例えば走査型プローブ顕微鏡、各種センサ、プローブカード、微小電気機械スイッチ等への応用に適した微小カンチレバー及びその製造方法に関するものであり、特に、半導体歪多層構造を利用した新規な微小カンチレバー及びその製造方法に関する。
例えば走査型プローブ顕微鏡等に使用される微小カンチレバーは、従来、金属にエッチングを施したり、半導体(特にシリコン関連材料)にリソグラフィとエッチングによる一体成型加工を施すことでビームやチップを形成するという方法により作製されることが多い(例えば、特許文献1等を参照)。
特許文献1には、第1の基板の一方の面に形成された酸化膜と第2の基板とを貼り合わせた貼り合わせ基板を用意し、第2の基板にレバー部の形状を形成し、レバー部の側端面に酸化膜を形成し、第2の基板を所定の厚さまでエッチングし、レバー部の一部に探針部を形成し、第2の基板の表面に酸化膜を形成し、第1の基板に支持部を形成し、前記第1の基板面に形成された酸化膜の一部、レバー部の側端面に形成された酸化膜、及び第2の基板表面に形成された酸化膜を除去する走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーの製造方法が開示されている。
あるいは、圧電薄膜と単結晶とのバイメタル作用を利用して走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを作製することも検討されている(例えば、特許文献2等を参照)。特許文献2記載の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーは、レバー上に圧電体の薄膜を有し、当該圧電体薄膜の下側、上側、又は上下に、圧電体薄膜の長さ方向の電界を印加するか、圧電体薄膜の長さ方向の電位差を検出するか、又はこの両者を行う電極が形成され、前記電界の印加によって圧電体薄膜が長さ方向に伸縮し、圧電体薄膜の長さ方向の伸縮により電極間に電位差が発生するように構成されている。
さらに、研究室レベルにおいて、自己組織化成長手法を応用してナノスケールの導電性カンチレバーの作製が試みられた例もある(非特許文献1を参照)。非特許文献1には、微傾斜したGaAs(110)基板の上にGaAsを結晶成長するとステップ構造が形成されること、このステップ構造の上にのみ選択的にInAsを成長することでナノスケールの細線構造を作製することが可能であること、GaAsを選択的にエッチングすることにより自立した細線構造、すなわちナノスケールカンチレバーが作製できることが記載されている。
特開平8−313541号公報
特開2001−108604号公報
NTT物性科学基礎研究所研究コード番号2001MB048
しかしながら、例えばチップ形状の加工においては、微細で鋭い先端形状(大きいアスペクト比と数十nm以下の曲率半径)とする加工が要求されるが、前記特許文献1に記載されるようなエッチングによる作製法を採用した場合、同一ウエハ内でも均一性が悪く、製品の歩留まりが低下し、製品コストが実質上高くなってしまうという問題がある。
また、エッチングで作製したチップあるいはビームは、一旦作製してしまうと先端の形状、曲率半径、向き等が半永久的に固定されてしまい、用途によって形状を変えたり、向き等を変更、微調整することは、ほぼ不可能であるという欠点を有する。
さらに、エッチングで作製した針状や錐状構造のチップあるいはビームは、一旦作製してしまうと微細立体側面上へのリソグラフィが極めて困難であることから、その先端、側面上、あるいは基端部等に配線や電極、電子素子、光素子等を複合して作り込むことは極めて困難である。
これらのことから、走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーのチップは、その殆どが半導体材料を用いて作製されているにもかかわらず、これまで半導体産業の発展の中で蓄積されてきた様々な半導体技術を生かし、カンチレバー(チップやビーム等)と半導体素子との有効な複合体、あるいは複合デバイス等を構成することは、仮に設計できたとしても実現するのは非常に難しいのが実情である。
一方、特許文献2記載の発明のように圧電体薄膜のバイメタル作用を利用してカンチレバーを作製する場合、電界の印加が必要であり、構造上、あるいは作製上、制約が多い。また、前記バイメタル作用を起こすためには電界を印加し続けなくてはならず、消費電力等の点でも問題である。
非特許文献1に記載される自己組織化成長手法を応用したナノスケールカンチレバーの作製方法では、特許文献1に記載されるようなエッチングによる作製方法における不都合を解消することができ、電界の印加も不要である。しかしながら、極めて特殊な基板(微傾斜したGaAs基板)を使用する必要があるばかりか、この上に成長可能な層も限られたものとなり、実用化する上で制約が多い。また、このカンチレバーはビームのみで構成されており、一定の機能を果たすチップを持たず、そのようなチップのビーム上への形成も困難である。さらに、非特許文献1では、実際の装置への取り付け等を考慮した構造(台座等)までは検討されておらず、例えば、走査プローブ顕微鏡への現実的応用性に欠けるという問題もある。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、歩留まり良く製造することが可能で、しかも構造上、作製上の制約が少ない微小カンチレバー及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、配線や電極、電子素子、光素子等を複合して作り込むことが可能な微小カンチレバー及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、作製後に形状や向き等を変更したり、微調整することが可能な微小カンチレバー及びその製造方法を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明の微小カンチレバーは、ビームまたはチップの少なくとも一方を備えたプローブと、当該プローブを支持する台座とから構成される微小カンチレバーであって、互いに格子定数の異なる犠牲層と歪層とが少なくとも1層ずつ積層されてなる半導体歪多層構造基板において、前記犠牲層と歪層とがフォトリソ技術によってパターニングされるとともに、前記犠牲層が選択的エッチングによりエッチング除去され、残存する歪層が前記犠牲層と格子定数が異なることによって発生する応力によって変位し前記ビームまたはチップの少なくとも一方が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の微小カンチレバーの製造方法は、半導体基板上に互いに格子定数の異なる犠牲層と歪層とを少なくともそれぞれ一層ずつ積層形成して半導体歪多層構造基板を作製し、前記犠牲層と歪層をフォトリソ技術により所定の形状にパターニングした後、犠牲層を選択的に湿式エッチングすることによりエッチング除去された犠牲層上に積層された歪層を犠牲層と格子定数が異なることによって発生する応力によって変位させ、ビームあるいはチップとすることを特徴とする。
互いに格子定数が異なる犠牲層と歪層が積層された半導体歪多層構造基板において、歪層下の犠牲層をエッチング除去すると、上方に反る等、歪層が変形する。本発明においては、この変形した歪層を所望の形状や機能を持つチップやビームとして利用する。
なお、本発明においては、犠牲層と歪層とをフォトリソ技術によってパターニングすることにより所定の形状(2次元形状)とされる。したがって、例えば非特許文献1記載の発明のような選択的な膜成長が不要であり、使用する基板や結晶成長させる層における制約が少ない。また、本発明の微小カンチレバーは、台座等を含めた実使用上の構造も加味して設計されているので、実用化する上で有利である。
本発明によれば、半導体歪多層構造基板をもとにした微細な立体構造をビームあるいはチップとする新規な微小カンチレバーを提供することが可能であり、また、構造上、作製上の制約が少ない微小カンチレバーを提供することが可能である。
以下、本発明を適用した微小カンチレバー及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した微小カンチレバーの実施形態を示すものである。本実施形態の微小カンチレバー1は、プローブ2と小台座3、さらには台座4とから構成されている。ここで、前記プローブ2にはチップあるいはビームが形成されており、本実施形態の場合、前記プローブ2(チップ及びビームの少なくとも一方)と小台座3は半導体歪多層構造基板からエッチング等を利用した一体成型法により作製されている。
一方、大きい台座4は、本実施形態の場合、セラミックス、ガラス、あるいは水晶を加工することにより作製されており、当該台座4と前記プローブ2とは前記小台座3を接着剤により貼り合わせるか、または高温で液体化するガラス、あるいは金属を挟んで圧着することにより複合化されている。なお、前記台座4についても、半導体歪多層構造基板によりプローブ2(チップやビーム)や小台座3と一体成型により作製されていてもよい。
図2は、図1の微小カンチレバー1において、半導体歪多層構造基板から作製可能なチップの例を説明する図(断面図)であり、基板5上の犠牲層6とそれより格子定数の小さい歪層7で構成される2層構造において、チップに対応する微小部分の犠牲層6を取り除くことにより、取り除かれた犠牲層6上に積層されていた部分の歪層7aがチップになる様子を示している。図2(a)は、チップとなる歪層7aの先端の向きが90度である場合を示し、図2(b)は、チップとなる歪層7aの先端の向きが180度である場合を示す。前記立体構造を有する歪層7aをチップとして利用する場合、歪みの大きさと歪層7(加工層または活性層)の厚さを適切に設計することにより制御できるため、用途に応じた長さと向きを持つチップを実現できる。また、チップとなる歪層7aの一部に電極を付加し適当な電圧を印加することにより、歪層7aの先端の向きを可動にすることも可能である。
図3は、図1の微小カンチレバー1において、半導体歪多層構造基板から作製可能なビームの例を説明する図(断面図)であり、先のチップの場合と同様、基板5上の犠牲層6とそれより格子定数の小さい歪層(加工層または活性層)7で構成される2層構造において、ビームに対応する微小部分の犠牲層6を取り除くことにより、取り除かれた犠牲層6上に積層されていた部分の歪層7bが少し下側に反ったコイル状のビームになる様子を示している。図3(a)は歪層7bが短いビームとして形成された場合を示し、図3(b)は、歪層7bが長いビームとして形成された場合を示す。このビームの長さやビーム先端の向きについても、歪みの大きさと歪層7(加工層または活性層)の厚を適切に設計することにより制御できるため、用途に応じた長さと向きを持つビームを実現できる。また、ビームとなる歪層7bの一部に電極を付け適当な電圧を印加することによりビーム先端の向きを可動にすることも可能である。図2に示すチップの場合と異なる最大の点はその寸法で、ビームはチップに比べ1〜2桁大きいサイズとする。
図4は、歪半導体ヘテロ構造を利用して図2のようなチップ、あるいは図3に示すようなビームを作製する工程を説明する図である。前述のチップやビームを形成するためには、先ず、基板5上に犠牲層6、歪層(加工層または活性層)7の順で堆積した半導体歪多層構造基板を用意する。犠牲層6や歪層7は、それぞれ少なくとも1層ずつ形成すればよく、いずれか一方あるいは双方を複数層形成することも可能である。支持基板となる基板5としては、半絶縁性基板または導電性基板が使用可能である。
前記半導体歪多層構造基板において、基板5上に形成される犠牲層6と歪層7は、格子定数が互いに異なればよく、犠牲層6上に格子定数の異なる歪層7をエピタキシャル成長させることにより、歪層7に歪み(応力)が発生する。犠牲層6や歪層7を構成する材料としては、任意の材料を選定することができるが、具体的には、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコン酸化物(SiOx、ただし0<x<1)、シリコン窒化物(SiNx、ただし0<x<1)、砒素系3−5族化合物半導体(InxGayAlzAs、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)、アンチモン系3−5族化合物半導体(InxGayAlzSb、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)、窒素系3−5族化合物半導体(InxGayAlzN、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)等を挙げることができる。これらの中から格子定数が異なる材料を選び、いずれかを犠牲層6、他方を歪層7とすればよい。良好な多層(エピタキシャル)構造形成のためには、類似の材料の組み合わせが重要であり、例えばシリコン系材料同士、砒素系3−5族化合物半導体(InxGayAlzAs、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)同士、アンチモン系3−5族化合物半導体(InxGayAlzSb、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)同士、窒素系3−5族化合物半導体(InxGayAlzN、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)同士の組み合わせの他、砒素系3−5族化合物半導体(InxGayAlzAs、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)により形成される層と、アンチモン系3−5族化合物半導体(InxGayAlzSb、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)により形成される層の組み合わせ等は、犠牲層6と歪層7の組み合わせとして好適な例である。
次に、図4(a)及び図4(b)に示すように、歪層7の側から所望の加工寸法に応じた微細加工(パターニング)をフォトリソ技術(紫外光を用いたリソグラフィ)によって施し、同時にその周辺に犠牲層エッチングにための「窓開け」を歪層7に対して行う。その後、犠牲層6除去のための湿式エッチングまたは乾式エッチングを行う。例えば、湿式エッチングの場合、犠牲層6と歪層7のいずれか一方のみが特定のエッチング液と反応するというような、化学的性質の違いを利用して犠牲層6のみを選択的にエッチング除去する。
このとき歪層7の格子定数が犠牲層6の格子定数よりも短いように設計しておくと、図4(c)に示すように、消失した犠牲層6上にあった歪層7は一定の曲率半径をもってコイル状の立体構造物を形成することになる。歪層7は、犠牲層6や基板5とは格子定数が異なる層であり、臨界膜厚以下の厚さを持つものと定義することができる。したがって、歪みを内包しており、隣接する犠牲層6を除去することにより、固定層としての役割を果たす犠牲層6が無くなった部分の歪層7が部分的に変形し、3次元構造を形成する。このとき、歪層7の歪みの強度と加工部の寸法を適切に選定することにより、任意の幅、長さ、曲率、及び向きをもつチップ、またはビームの形成が可能となる。
以上の構成を有する微小カンチレバー1は、台座4部分を装置に取り付けることにより各種装置に容易に組み込むことが可能であり、例えば走査型プローブ顕微鏡の用に供することができる。すなわち、本実施形態の微小カンチレバー1を用い、走査型プローブ顕微鏡用の場合、チップ(歪層7a)の先端を観察したい物質表面から一定の距離(縦矢印で示すような微小振動も含む)をおいた平行平面内で走査し、それに伴う表面との各種相互作用を検出することにより、表面の解析を行うことができる。
あるいは、本実施形態の微小カンチレバー1は、各種センサに用いることもできる。センサー用の場合、チップ(歪層7a)あるいはビーム(歪層7b)の先端に特別な吸着剤等を付加しておき、特殊なガス、あるいは薬品等を吸着することにより主にビームの共振周波数が変化することを検出原理として利用する。さらに、カードプローブや電気機械式スイッチ等にも適用することができ、この場合には、チップ(歪層7a)先端を利用して局所的に力を及ぼすことにより電流端子やスイッチとしての機能を果たさせる。
前述の通り、本実施形態の微小カンチレバー1は、フォトリソ技術によるパターニングと、犠牲層の選択エッチングにより簡単に作製することができ、特殊な基板を使用する必要がなく、結晶成長させる層についても制約が少ないという利点を有する。また、立体構造をエッチング形成する場合と異なり、均一性に優れた微小カンチレバーを歩留まり良く作製することが可能である。
本発明は、前述の実施形態に限られるものではなく、種々の変形例が可能である。例えば、図5及び図6は、本発明の微小カンチレバーの他の実施形態を示す図であり、歪層7が単層で先端の向きが180度の場合における2種類の応用例を説明するものである。図5は、先端の向きが180度である歪層7aの端面をチップの先端として用いる応用例であり、チップ先端が下を向いている通常のカンチレバーでは観測が不可能な試料8の側面、あるいは立体構造の側面等の走査プローブ顕微鏡観察が容易となる。
また、図6は、180度に曲げたチップ(歪層7a)上面にリング9(あるいは微小金属板やコイル等)を配置して配線を形成したもので、走査型で且つ高空間分解能を持つカードプローブ探針、容量計、あるいは超伝導量子干渉計(SQUID)に類似の測定原理による高感度磁束計としての応用が可能である。
図7乃至図9は、本発明のさらに他の実施形態を示す図であり、歪層7が複数層により構成され、その先端の向きが90度(下向き)の場合の3種類の応用例を説明するものである。図7は、歪層7を絶縁層12と導電層13の2層の半導体層で構成した場合のチップ(またはビーム)の一例を示すものであり、例えばチップ(またはビーム)の根元等に電極を取り付けておけば、試料のピエゾ性等により適当な電圧を印加することによりチップ(またはビーム)先端の向きを適当な角度範囲で変えることができる。このとき2層の半導体層のうち片方を絶縁性に、もう片方を導電性にしておけば、図7(a)あるいは図7(b)に示すように、それぞれのエッジ12a(13a)をチップ(またはビーム)先端の向きを変えて利用することにより絶縁性、及び導電性を生かした2種類の走査プローブ顕微鏡測定(例えば、原子間力顕微鏡AFMと走査トンネル顕微鏡STM測定)が同時に1個のチップで可能になる。
図8は、やはり歪層7が2層の半導体層から構成された例を示すものであるが、本例の場合、p型半導体層14とn型半導体層15の組み合わせを利用している。これらを利用して、先ず平面状に微小pn接合を形成し、リソグラフィと犠牲層6の選択エッチングによりpn接合部が先端になるようなチップ(歪層7a)を作製する。なお、前記pn接合部には、2端子の配線を形成しておく。このような微小pn接合を先端に有する微小カンチレバーは、電流で駆動したり、あるいは光(信号)に対する応答電流を計測することにより、先端に光源、あるいは光検出器を有するチップ(またはビーム)として容易に利用することができる。このような微小カンチレバーは、特に生物学の分野で需要の大きい近接場光を扱う走査プローブ顕微鏡用カンチレバー、光に対する局所センサーとして様々な応用が可能である。
図9に示す例も、やはり歪層7が2層の半導体層から構成された例であるが、本例の場合、2層のヘテロ界面に2次元電子ガス蓄積層16が形成できるような層材料の設計、選択を行う。2次元電子ガス層16が露出した先端を有するチップ(またはビーム)は、試料表面に接近させ、試料との間に適当な電圧を印加することで、低加速電圧の微小電子線源として利用することができる。この場合の応用としては、真空中の用途に限定されるが、電子線アシストの局所反応を通じた試料表面の操作可能な超微細加工の新たなツールとして応用することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
図10は、チップを有する微小カンチレバーの実際の作製プロセスを示すものである。図10に示す作製プロセスにしたがい、以下に詳述するような微細加工工程により、半導体歪多層構造基板から図11に示すような微小カンチレバーを作製した。
先ず、図10(a)に示すように、半導体基板21上に犠牲層22、歪層23、ビーム層24を順次エピタキシャル成長し、半導体歪多層構造基板20を作製した。この半導体歪多層構造基板20においては、犠牲層22はAlAsとし、歪層23は2層構成で下からGaAs、InGaAs、ビーム層24はGaAsとした。
次に、図10(b)に示すように、前記半導体歪多層構造基板20(ビーム層24)の表面に電子ビーム露光によりTi/Auマーカ25を形成した。このTi/Auマーカ25は、後述のフォトリソ工程等において位置合わせの基準となるものである。
前記Ti/Auマーカ25の形成の後、図10(c)に示すように第1のレジスト層26を形成し、図10(d)に示すようにカンチレバーチップ部形成のためのパターニングを行った。なお、前記パターニングは、酢酸溶液を用いたエッチングにより行い、上部歪層24にのみ矩形の開口部24aを形成した。
次いで、図10(e)に示すようにビーム部形成のための第2のレジスト層27をパターニング形成し、図10(f)に示すようにビーム部形成のためのパターニング(エッチング)を行った。このビーム部形成のためのパターニングは、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより行い、ビーム層24,歪層23及び犠牲層22を所定の形状にパターニングした。
さらに、ビーム部において、歪層23下の犠牲層22をエッチング除去した。エッチングは希釈ふっ酸で行った。その結果、図10(g)に示すように、前記開口部24aに臨む歪層23の先端部23aが図中下方向に変形し、チップが形成された。以上のようにして作製された微小カンチレバーの電子顕微鏡写真を図11に示す。作製された微小カンチレバーは、ビームの先端にチップが形成された形態を有し、また台座も一体に形成されている。したがって、様々な機能を持つカンチレバーとしての応用、例えば走査プローブ顕微鏡やプローブカード等への応用が可能である。
1 微小カンチレバー、2 プローブ、3 小台座、4 台座、5 基板、6 犠牲層、7 歪層、7a 歪層(チップ)、7b 歪層(ビーム)、9 リング、12 絶縁層、13 導電層、14 p型半導体層、15 n型半導体層、16 2次元電子ガス蓄積層、21 半導体基板、22 犠牲層、23 歪層、23a 先端部、24 ビーム層、24a 開口部、25 Ti/Auマーカ、26 第1のレジスト層、27 第2のレジスト層
Claims (19)
- ビームまたはチップの少なくとも一方を備えたプローブと、当該プローブを支持する台座とから構成される微小カンチレバーであって、
互いに格子定数の異なる犠牲層と歪層とが少なくとも1層ずつ積層されてなる半導体歪多層構造基板において、前記犠牲層と歪層とがフォトリソ技術によってパターニングされるとともに、前記犠牲層が選択的エッチングによりエッチング除去され、残存する歪層が前記犠牲層と格子定数が異なることによって発生する応力によって変位し前記ビームまたはチップの少なくとも一方が形成されていることを特徴とする微小カンチレバー。 - 前記プローブは、台座に対する取り付け部となる小台座を備え、当該小台座が前記半導体歪多層構造基板により形成されていることを特徴とする請求項1記載の微小カンチレバー。
- 前記プローブと台座が半導体歪多層構造基板により一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の微小カンチレバー。
- 前記台座は、セラミックス、ガラス、水晶のうちのいずれか1種により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の微小カンチレバー。
- 前記半導体歪多層構造基板を構成する支持基板が半絶縁性基板または導電性基板であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の微小カンチレバー。
- 前記半導体歪多層構造基板は、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコン酸化物(SiOx、ただし、0<x<1)、シリコン窒化物(SiNx、ただし0<x<1)から選択される少なくとも1種により形成される層を含む多層構造体により形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の微小カンチレバー。
- 前記半導体歪多層構造基板は、砒素系3−5族化合物半導体(InxGayAlzAs、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)により形成される層を含む多層構造体により形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の微小カンチレバー。
- 前記半導体歪多層構造基板は、アンチモン系3−5族化合物半導体(InxGayAlzSb、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)により形成される層を含む多層構造体により形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の微小カンチレバー。
- 前記半導体歪多層構造基板は、窒素系3−5族化合物半導体(InxGayAlzN、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)により形成される層を含む多層構造体により形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の微小カンチレバー。
- 前記半導体歪多層構造基板は、砒素系3−5族化合物半導体(InxGayAlzAs、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)により形成される層と、アンチモン系3−5族化合物半導体(InxGayAlzSb、ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)により形成される層を含む多層構造体により形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の微小カンチレバー。
- 前記ビームあるいはチップの先端部がリング状に加工されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の微小カンチレバー。
- 前記ビームあるいはチップを構成する歪層が多層構造を有することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の微小カンチレバー。
- 前記歪層は、絶縁性半導体層と導電性半導体層とが積層されて構成されていることを特徴とする請求項12記載の微小カンチレバー。
- 前記歪層は、p型半導体層とn型半導体層とがpn接合されて構成されていることを特徴とする請求項12記載の微小カンチレバー。
- 前記歪層は、2層の半導体層と、これら半導体層間の2次元電子ガス蓄積層とから構成されていることを特徴とする請求項12記載の微小カンチレバー。
- 前記ビームあるいはチップに電極が設けられ、当該電極に電圧を印加することによりその変位量が調整可能とされていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の微小カンチレバー。
- 半導体基板上に互いに格子定数の異なる犠牲層と歪層とを少なくともそれぞれ一層ずつ積層形成して半導体歪多層構造基板を作製し、
前記犠牲層と歪層をフォトリソ技術により所定の形状にパターニングした後、犠牲層を選択的に湿式エッチングすることによりエッチング除去された犠牲層上に積層された歪層を犠牲層と格子定数が異なることによって発生する応力によって変位させ、ビームあるいはチップとすることを特徴とする微小カンチレバーの製造方法。 - 前記犠牲層と歪層の格子定数の差、及び選択的にエッチングする形状により、前記変位の度合いを制御することを特徴とする請求項17記載の微小カンチレバーの製造方法。
- 前記ビームあるいはチップを形成する際に、電極を設けるとともに当該電極に電圧を印加することによりその変位量を調整することを特徴とする請求項17記載の微小カンチレバーの製造方法。
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