JP4062083B2 - フローセンサ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱体と、該発熱体の近傍の温度を感知する感温体と、これら発熱体及び感温体を覆う保護膜とを備える薄膜部を有して流体の流量を検出するために用いられるフローセンサ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種のフローセンサを備えて構成されるフローメータでは、流体の流通経路に配置された発熱体を発熱制御する際、発熱体の生ずる熱が同発熱体付近を流通する流体によって奪われることを利用して流体の流量を検出するようにしている。すなわち、発熱体の生じる熱のうち、流体によって奪われる熱量は、流体の流量が多くなるほど増加することから、この流体によって奪われる熱量に基づいて発熱体付近の流体の流量を検出するようにしている。
【0003】
具体的には、例えば、上記感温体を通じて感知される発熱体の近傍の温度を所定の温度に維持するように上記発熱体へ供給する電力量を制御するとともに、上記発熱体の熱のうち流体によって奪われた熱量の指標としての同発熱体に供給される電力量等に基づいて流体の流量を検出する。またあるいは、例えば、発熱体を所定の温度に制御するとともに、上記発熱体の熱のうち流体によって奪われた熱量の指標としての同発熱体の付近の温度を上記感温体を通じて感知することで流体の流量を検出する。
【0004】
一方、上記フローセンサでは、上記発熱体や感温体の設けられる部分を薄膜部とすることで、同部分の熱容量を低く抑えるとともにフローセンサ内でこの薄膜部を熱的に絶縁し、流体の流量に対する高い応答性を確保するようにしている。
【0005】
しかし、このように発熱体や感温体の設けられる部分を薄膜形成する場合には、その強度を、当該フローセンサの使用環境において十分耐え得るものとすることが困難となる。例えば、このフローセンサが、内燃機関の吸入空気量を感知すべく同内燃機関の吸気通路内に設けられる場合、同フローセンサの薄膜部には、吸気脈動やバックファイヤ等による圧力に耐え得る強度が要求される。また、内燃機関の吸気通路には通常、ダストを濾過するエアーフィルタが設けられているとはいえ、このエアーフィルタを砂等のパーティクルが通過することがある。このパーティクルは、そのサイズが「数百μm」ほどになり、吸気通路内を「数10m/s」で飛来するため、このパーティクルの衝突に耐え得る強度も上記薄膜部には要求される。
【0006】
ちなみに、この薄膜部の強度は、薄膜部の膜厚を厚くすることで高めることができるが、同膜厚を厚くすると、フローセンサの薄膜部とそれ以外の部分との熱絶縁が不十分となり、また、熱容量が増大することとなる。そして、これらに起因した消費電力の増大や、感度の低下、応答性の低下等を招く。特に図19に示すように、薄膜部の膜厚を「5μm」以上とすると、脈動に対する応答性の悪化に起因してフローメータの流量検出精度の悪化が顕著に現れる。
【0007】
逆に、ここで、応答性等を確保すべく、薄膜部の膜厚を過度に薄くすると、上記パーティクルの衝突によって薄膜部が破損するおそれがある。ここで、この破損のメカニズムについて、図20を用いて更に説明する。
【0008】
図20(a)は、パーティクルの衝突によるフローセンサ400表面の傷の生成態様を示す。同図20(a)に示すように、薄膜部410の周縁部(詳しくは薄膜部410の縁から内側「数10μm」内)及び薄膜部410外の領域においては、上記パーティクルの衝突に起因して、その表面に傷が入りやすい。これに対し、図20(b)の衝突痕の密度を示すグラフにも示されるように、薄膜部410の中央部には、傷(衝突痕)がほとんど着かない。これは、図20(c)に示すように、パーティクルPとの衝突に際し薄膜部410が変形することで、衝突エネルギが吸収されるためである。
【0009】
いずれにせよ、図20(a)及び図20(b)に示されるように、薄膜部410の端部表面に傷が入ることで、その強度は低下することとなる。こうした状況下、薄膜部に流体の圧力が過度に加わったり、図20(c)に示すように薄膜部410にパーティクルPが衝突したりすると、同薄膜部410の変形に伴い、強度が低下している上記端部に応力が集中し、やがては破損に至ることとなる。
【0010】
こうした破損に至るメカニズムからもわかるように、薄膜部の強度低下は、その端部表面に傷が入ることが大きな要因となる。このため、薄膜部の最表面の硬度を確保することが重要となる。ちなみに、内燃機関の吸気通路においてエアクリーナを通過する上記パーティクルは、砂(シリコン酸化膜)がほとんどである。このため、内燃機関の吸入空気量を検出する場合等に用いるフローセンサとしては、特にシリコン酸化膜よりも硬い膜を上記最表面の膜として用いることが望まれる。
【0011】
ここで、シリコン酸化膜よりも硬い膜としては、シリコン窒化膜(Si3N4)が考えられる。そして、このシリコン窒化膜は、その硬度等、様々な特性についてのバルク値が、フローセンサに適したものとなっている。
【0012】
そして、熱反応を用いた低圧CVD(LP−CVD)法によれば、上記バルク値とほぼ等しい特性を有するシリコン窒化膜を形成することができる。同低圧CVD法を用いたシリコン窒化膜の破壊応力、ヤング率、硬度は、それぞれ「520GPa」、「14GPa」、「1720Vh」である。このように低圧CVD法を用いることで、シリコン窒化膜を、ほぼバルク値の物性値を持つ理想的な膜として形成することが可能である。しかし、この低圧CVD法を用いてシリコン窒化膜を成膜する際には、その成膜時の応力が「1200Pa」程度と高くなるため、シリコン窒化膜の膜厚を「0.3μm」以上に形成しようとすると自己破壊に至るという問題がある。
【0013】
そこで従来は、図21に示すように、薄膜部の最表面と最下面とに、それぞれ低圧CVD法にて形成されたシリコン窒化膜540、510を備えるとともに、それらシリコン窒化膜540、510の間には、シリコン酸化膜520、530を備えるようにした薄膜構造なども提案されている(特許文献1)。このように、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを積層して薄膜部の膜厚を確保しつつ表面にシリコン窒化膜を用いることで、応力バランスを確保しつつ、薄膜部としての強度を高めることができるようになる。
【0014】
なお、こうしたフローセンサの従来技術としては、上記特許文献1の他、下記特許文献2や特許文献3がある。
【0015】
【特許文献1】
特開平11−271123号公報
【特許文献2】
特開2001−194201号公報
【特許文献3】
特開2001−12985号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1に記載の構造であれ、表面に形成されるシリコン窒化膜の膜厚は制限されることから、パーティクルの衝突等に起因した傷や膜減りを十分に抑制することは依然困難である。すなわち、制限された膜厚にてシリコン窒化膜を成膜すると、パーティクルとの衝突によってシリコン窒化膜に生じる傷が、同シリコン窒化膜を貫通してしまうことがある。また、上記特許文献1では、シリコン窒化膜の形成時における大きな引っ張り応力を緩和すべく、シリコン酸化膜を厚くして薄膜部全体としての応力を調整しているが、このようにシリコン酸化膜を厚くすると薄膜部のヤング率の低下を招く。そして、このヤング率の低下は、薄膜部の変形のしやすさにつながり、その結果、薄膜部の耐性が低下することともなる。
【0017】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリコン窒化膜の特性のみならず、膜厚も適切に確保することのできるフローセンサ及びその製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
こうした目的を達成するため、請求項1記載のフローセンサでは、発熱体を覆う保護膜の少なくとも流体の流通経路側に形成されている表面の保護膜を、NH 3 ガスに対するSiH 2 Cl 2 ガスの流量比を、成膜温度が「750℃」のとき「4/1〜8/1」の範囲とし、成膜温度が「850℃」のとき「1/1〜4/1」の範囲とし、成膜温度が「750℃」よりも高く且つ「850℃」未満であるときには、成膜温度が「800℃」のときに「2/1〜6/1」となる態様にて補間された流量比とする条件下の熱化学気相成長法によって形成されて、且つ、その組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きいシリコン窒化膜にて膜応力が「0MPa」より大きく「800MPa」以下の引張応力を有するように形成することとした。このように化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きいシリコン窒化膜とすると、熱化学気相成長法を用いた場合にも、その成膜時の応力を低下させることができる。したがって、シリコン窒化膜の特性のみならずその膜厚も適切に確保することのできるシリコン窒化膜を備えたフローセンサを実現することができる。
【0019】
また、請求項2記載のフローセンサは、上記表面の保護膜の屈折率を「2.1〜2.3」に設定することとした。これにより、成膜時の応力を「0.6μm」以上の膜厚にて成膜することのできる応力とすることができるようになる。
【0020】
また、請求項3記載のフローセンサでは、上記表面の保護膜の膜厚を積極的に「0.6μm」以上にすることとした。これにより、該保護膜によって保護される発熱体や感温体等の抵抗値特性の変動を好適に抑制することができ、耐久性の確保されたフローセンサを実現することができる。
【0021】
また、請求項4記載のフローセンサは、上記薄膜部の膜厚を「2μm」以上にすることとした。これにより、薄膜部の破損を好適に回避することができるようになる。
【0022】
また、請求項5記載のフローセンサは、上記薄膜部の膜厚を「5μm」以下とした。これにより、フローセンサを用いた流量測定精度を好適に確保することができる。
【0023】
請求項6記載のフローセンサでは、流体の流通経路の裏面側に、更に、熱化学気相成長法によって形成されて、且つ、その組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きいシリコン窒化膜(裏面の保護膜)を膜応力が「0MPa」より大きく「800MPa」以下の引張応力を有するように形成した。
【0024】
これにより、薄膜部の裏面側についても、イオン拡散等の回避が可能となる。また、請求項7記載のフローセンサでは、上記表面及び裏面の保護膜の合計の膜厚をαとすると、これら2つの最表面の保護膜の間には、次式
(α/α+β)―2.7exp{―0.5(α+β)}>0
を満たすβ(>0)を膜厚とするシリコン酸化膜を形成するようにした。
【0025】
これにより、薄膜部の破損を好適に回避することができるようになる。
また、請求項8記載のフローセンサでは、上記保護膜は、上記表面の保護膜の膜厚をαとして、次の式
(α/α+β)―4exp{―0.7(α+β)}>0
を満たすβ(>0)を膜厚とするシリコン酸化膜を更に備えるようにした。
【0026】
これにより、薄膜部の破損を好適に回避することができるようになる。
また、請求項9記載のフローセンサでは、空洞部を有する半導体基板を備えるとともに、上記薄膜部を該半導体基板の空洞部を架橋する部分として形成し、同薄膜部の端部には、少なくとも上記感温体の長手方向に平行な端部を覆う端部強化膜を上記感温体と同層に形成した。これにより、薄膜部の端部のうち感温体の長手方向に平行な端部の膜厚を厚くすることができるようになる。このため、半導体基板と薄膜部との架橋にかかる強度を増大させることができるようになる。
【0027】
また、請求項10記載のフローセンサは、端部強化膜を感温体と同一の材料とした。これのより、これら端部強化膜と感温体とを同一の工程にて製造することができる。したがって、半導体基板と薄膜部との架橋にかかる強度を増大させつつも、その製造工数の増大を回避することができるようになる。
【0028】
また、請求項11記載のフローセンサでは、発熱体及び感温体を構成する材料を多結晶シリコンとした。これにより、半導体プロセスにおいて簡易に発熱体を製造することができる。
【0029】
また、請求項12記載のフローセンサでは、発熱体及び感温体を構成する材料を単結晶シリコンとした。この単結晶シリコンは多結晶シリコンのように結晶粒界が存在しないために、保護膜に対して平坦化の処理が成されていない場合であれ、その表面の凹凸を抑制することができ、凹凸による強度低下を抑制できる。
【0030】
一方、請求項13記載のフローセンサの製造方法では、保護膜の少なくとも前記流体の流通経路側の保護膜として、組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きいシリコン窒化膜が熱化学気相成長法によって形成される。このため、シリコン窒化膜の成膜時の応力を低下させることができ、同シリコン窒化膜を厚膜形成することが可能となる。このため、シリコン窒化膜の特性のみならず、膜厚も適切に確保することのできるフローセンサを製造することができるようになる。
【0031】
また、請求項13記載のフローセンサの製造方法では、シリコン窒化膜を成膜する熱化学気相成長法の条件を、NH3ガスに対するSiH2Cl2ガスの流量比を、成膜温度が「750℃」のとき「4/1〜8/1」の範囲とし、成膜温度が「850℃」のとき「1/1〜4/1」の範囲とし、成膜温度が「750℃」よりも高く且つ「850℃」未満であるときには、成膜温度が「800℃」のときに「2/1〜6/1」となる態様にて補間された流量比とする条件とし、さらに、窒化シリコン膜の成膜時の応力が「0MPa」より大きく「800MPa」以下の引張応力となるようにした。
【0032】
これにより、成膜時の応力を、フローセンサとして適切な膜厚のシリコン窒化膜を成膜することのできる応力値とすることができ、ひいては、膜割れや坐屈を生じることを回避することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるフローセンサを車載用内燃機関の吸入空気量を検出するフローメータに適用した第1の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0034】
図1に、上記フローメータFMの回路構成を示す。同図1に示されるように、このフローメータFMは、熱式のフローセンサFSと、該フローセンサFSの感知結果に基づき電気信号を生成する信号生成回路SGとを備えている。
【0035】
ここで、フローセンサFSは、上流側ヒータRhaと下流側ヒータRhbと、当該フローメータFMの環境温度を感知する上流側温度計Rkaと下流側温度計Rkbとを備えている。
【0036】
本実施形態においては、これら上流側ヒータRhaと下流側ヒータRhbは、発熱体であるとともに自身の温度を感知する感温体としても機能する。すなわち、これら上流側ヒータRhaと下流側ヒータRhbは、電流の供給によって発熱する抵抗体としての機能に加えて、同抵抗体の抵抗値の変化に基づいて自身の温度をも感知するものである。そして、フローセンサFSでは、上流側ヒータRhaと下流側ヒータRhbとの生じる熱のうち流体によって奪われる熱に基づき流体の流量を感知する。また、フローセンサFSでは、上流側ヒータRhaと下流側ヒータRhbとのそれぞれの生じる熱のうち流体によって奪われる熱量の差に基づき、流体の流通方向を感知する。
【0037】
一方、信号生成回路SGは、上記フローセンサFSによる流体の流量及び流体の流通方向の感知結果に応じた検出信号を生成する。詳しくは、上流側ヒータRha及び上流側温度計Rkaの温度差と、下流側ヒータRhbと下流側温度計Rkbとの温度差とをそれぞれ所定値(例えば「200℃」)とするように、フローセンサFSへ供給する電流を制御する。そして、このフローセンサFSに供給する電流量に基づき上記流体の流量及び流体の流通方向に応じた検出信号を生成する。
【0038】
ここで、上記フローセンサFS及び信号生成回路SGを備えるフローメータFMの具体的な回路構成について更に説明する。
フローメータFMは、吸気通路の上流側に対応した上流側ホィーストンブリッジUHBと、吸気通路の下流側に対応した下流側ホィーストンブリッジDHBとを備えている。
【0039】
ここで、上流側ホィーストンブリッジUHBは、上流側ヒータRhaから抵抗R1aへと、また、上流側温度計Rkaから抵抗R2aへとそれぞれ電流が流れる態様にて、上流側ヒータRha及び抵抗R1aと上流側温度計Rka及び抵抗R2aとが並列接続された回路である。そして、上流側ヒータRhaと上流側温度計Rkaとの接続点PaにトランジスタUTを介してバッテリBから電流が供給される。そして、上流側ヒータRhaでの電圧降下と上流側温度計Rkaでの電圧降下とは差動増幅回路UOPに取り込まれる。そして、この差動増幅回路UOPにより、これら2つの電圧降下を等しくすべく、換言すればブリッジの平衡条件を成立させるべく、これらの電圧降下の差に応じてトランジスタUTが制御される。
【0040】
ここで、上流側ホィーストンブリッジUHBは、平衡条件が成立したときに、上流側ヒータRhaの温度が上流側温度計Rkaの温度よりも上記所定値だけ高くなるように設定されている。なお、環境温度にかかわらず、上流側ヒータRhaの温度が上流側温度計Rkaの温度よりも上記所定値だけ高くなるときに上記平衡条件が成立するようにすべく、これら上流側ヒータRhaと上流側温度計Rkaとは、抵抗温度係数が互いに等しく設定されている。
【0041】
一方、下流側ホィーストンブリッジDHBは、下流側ヒータRhbから抵抗R1bへと、また、下流側温度計Rkbから抵抗R2bへとそれぞれ電流が流れる態様にて、下流側ヒータRhb及び抵抗R1bと下流側温度計Rkb及び抵抗R2bとが並列接続された回路である。この下流側ホィーストンブリッジDHBも、上流側ホィーストンブリッジUHBと同様、平衡条件を成立させるべく、トランジスタDT及び差動増幅回路DOPを備えている。なお、この下流側ホィーストンブリッジDHBの構成は、上流側ホィーストンブリッジUHBの構成と同様であるため、その説明を割愛する。
【0042】
これら上流側ホィーストンブリッジUHBの上流側ヒータRhaでの電圧降下と、下流側ホィーストンブリッジDHBの下流側ヒータRhbでの電圧降下とは、差動増幅回路COPに取り込まれる。そして、これら2つの電圧降下の差に応じた信号が差動増幅回路COPにて生成され、増幅回路ACによって増幅された後、信号生成回路SGの端子P7を介して外部に出力される。この端子P7を介して出力される検出信号が流体の流量及び流通方向の検出信号である。
【0043】
図2に、上記フローセンサFSの構成を示す。このフローセンサFSは、半導体基板10を備えて構成されている。そして、半導体基板10上に積層されているシリコン窒化膜20上には、上流側ヒータRhaや下流側ヒータRhb、上流側温度計Rkaや下流側温度計Rkbが形成されている。そして、これら上流側ヒータRhaや下流側ヒータRhb、上流側温度計Rka、下流側温度計Rkbは、リード部L1〜L6を介して、先の図1に示した信号生成回路SGとの接続端子となるパッドP1〜P6と接続されている。
【0044】
ちなみに、半導体基板10は、空洞部Hを有する。詳しくは、半導体基板10は、その裏面側において図2に1点鎖線にて示す矩形状の領域が開口されているとともに、この開口面積が半導体基板10の上面側へ行くほど縮小され、同半導体基板10の上面では図2に破線にて示されるような矩形状の領域となっている。
【0045】
このように空洞部Hを有するために、上流側ヒータRhaや下流側ヒータRhbは、フローセンサFSのうち、半導体基板10の空洞部Hを架橋するようにして形成されている薄膜部MBに備えられることとなる。この薄膜部MBは、フローセンサFSの他の箇所と比べてその膜厚が薄く形成されているために、熱容量が低く抑えられ、また、フローセンサFSの他の箇所との熱的な絶縁が図られている。
【0046】
次に、上記フローメータFMが車載内燃機関の吸気通路に配置された際の状態について説明する。
図3(a)に示すように、吸気通路IMFには、同吸気通路IMF内を流通する流体の一部が取り込まれ、この取り込まれた流体を所定に流通させる流路部材FPが取り付けられている。そして、この流路部材FPには、上記フローセンサFSが取り付けられている。一方、吸気通路IMFの外側には、信号生成回路SGが配置されている。そして、フローセンサFSと信号生成回路SGとは、流路部材FP内に収納されている配線(図示略)によって接続されている。
【0047】
なお、図3(a)に示すように、フローセンサFSの薄膜部MBは、上述した上流側ヒータRha及び上流側温度計Rkaが、下流側ヒータRhb及び下流側温度計Rkbよりもエアクリーナ側になるように配置されている。また、上流側ヒータRha及び下流側ヒータRhbは、その長手方向が流通方向と直交する方向となるようにして配置されている。
【0048】
図3(b)に、流路部材FPへのフローセンサFSの取り付け状態を拡大してしめす。同図3(b)に示されるように、フローセンサFSは、その表面が露出されつつも、その側面及び裏面が流路部材FPの収容部spによって保護されている。また、フローセンサFSの表面についても、先の図2に示したパッドP1〜P6の近傍の部分は、流路部材FPによって覆われている。ちなみに、この収容部spの形状は、図3(c)に示されるごとくである。なお、フローセンサFSの側面及び裏面とこれを囲う収容部spとの間には、所定のクリアランス(例えば「10〜20μm」)が設けられている。
【0049】
次に、上記フローセンサFSのうち、特に上記薄膜部MBについて更に説明する。
図4に、フローセンサFSのうち薄膜部MB近傍の断面構成を示す。この図4は、先の図2のA−A断面を示している。同図4に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板10には、上記シリコン窒化膜20が形成されている。そして、シリコン窒化膜20上には、上流側ヒータRha、下流側ヒータRhb、リード部L2、L5、上流側温度計Rka、下流側温度計Rkbがそれぞれ多結晶シリコンにて形成されている。そして、これら上流側ヒータRhaや、下流側ヒータRhb、リード部L2、L5、上流側温度計Rka、下流側温度計Rkbを覆うようにして、シリコン窒化膜40が積層されている。ちなみに、上記シリコン窒化膜20、40は、空洞部Hを含めて半導体基板10の上方の略全ての領域に積層形成されている。
【0050】
ここで、本実施形態では、上記シリコン窒化膜20、40として、熱反応を用いた低圧CVD法(以下、熱CVD法)によって形成され、且つその組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きな膜を用いている。このように化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きなシリコン窒化膜とすることで、熱CVD法を用いた場合であれ、その成膜時の応力を低下させることができる。したがって、シリコン窒化膜20、40は、これを化学量論的組成比にて成膜した場合と比較して、その膜厚を適切に確保することができる。
【0051】
図5に、本実施形態にかかる薄膜部MBの膜厚と破損しない流速との関係を示す。実際の車載内燃機関の吸気通路内における流速の最大値は、「50m/s」程度である。したがって、薄膜部MBは、「50m/s」の流速においても破損しないような膜厚に設定することが望ましい。ここで、先の図4に示す構成においてはその膜厚Taを「2μm」以上とすることで、図5に示すように「50m/s」の流速においても破損しない耐久性を確保することができる。ちなみに、同図5に併せ示すように、先の図21に示した薄膜部においては、「50m/s」の流速においても破損しない耐久性を確保するためにその膜厚(図21、Ta)を「6μm」以上とする必要がある。
【0052】
次に、本実施形態にかかるフローセンサFSにパーティクルが衝突することで生じる傷(衝突傷)による先の図4に示した上流側ヒータRhaや、下流側ヒータRhb、上流側温度計Rka、下流側温度計Rkb(以下、これらを総称して「抵抗体」という)の抵抗値ずれに起因した特性変化について考察する。
【0053】
一般に、フローセンサFSの抵抗値ずれは、以下の2つの現象によって生じるものと考えられる。
(ア)フローセンサFSとパーティクルとの衝突によって生じる傷によって、同フローセンサFSの表面の膜が削られ、抵抗体に傷が導入される現象。
(イ)例えば先の図21に示した構成において表面のシリコン窒化膜に傷が付くなどして抵抗体を覆っているシリコン酸化膜が露出する場合に、流体中のナトリウムやカリウム等が、シリコン酸化膜内でイオン拡散等を通じて抵抗体の表面に付着する現象。
【0054】
特に、フローセンサFSの表面のうち、抵抗体が形成されている部分の上方の領域は、通常、薄膜を積層形成した後に平坦化処理がなされず、先の図4に模式的に示されるように凸状となっているために、傷が入りやすいものとなっている。
【0055】
図6に、先の図4に示した本実施形態にかかるシリコン窒化膜40の膜厚Tbと、フローセンサFSの使用に伴う抵抗体の抵抗値のずれとの関係を示す。この図6は、パーティクルを含む流体の流通経路に所定時間、薄膜部MBを配置したときの抵抗体の抵抗値のずれを示すものである。
【0056】
同図6に示されるように、先の図4に示したシリコン窒化膜40の膜厚Tbを「0.6μm」以上とすることで、抵抗値変化をほぼ「0」とすることができる。すなわち、この「0.6μm」という膜厚は、シリコン窒化膜40にパーティクルが衝突した場合に傷が貫通することのない膜厚である。なお、シリコン窒化膜は、シリコン酸化膜のようにイオン拡散等を通じてナトリウムやカリウム等を抵抗体まで浸透させることがないため、シリコン窒化膜を貫通しない膜厚とすることで、上記(イ)の現象を排除することもできる。
【0057】
また、先の図21に示した構成において、シリコン窒化膜540の膜厚を「0.12μm」に設定し、シリコン酸化膜530の膜厚を可変とする場合について、図6に一点鎖線にて示す。ここでは、シリコン窒化膜540及びシリコン酸化膜530の合計の膜厚Tbを「1.0μm」以上とすることで、抵抗体に傷が入らなくなるものの、上記(イ)の現象に起因した抵抗値の変動は依然として無視できないものとなっている。
【0058】
以上の考察と、先の図19に示した流量検出精度と膜厚との関係とに基づき、本実施形態においては、シリコン窒化膜40の膜厚を「0.6μm」以上とすると共に、薄膜部MBの膜厚を「2.0〜5.0μm」とする。
【0059】
次に、上記シリコン窒化膜20、40の成膜条件について考察する。
本実施形態では、シリコン窒化膜を熱CVD法を用いて成膜する際、成膜温度を通常(化学量論的組成にて成膜する場合)と比較して、高い温度としたり、その材料となるガスであるNH3に対するSiH2Cl2の比を高めたりする。そして、これにより、膜割れを防止若しくは膜割れを生じる膜厚の臨界値を増加させる。
【0060】
図7(a)に、抵抗体を好適に保護することのできる膜厚である上述した「0.6μm」の膜厚を成膜することのできる成膜条件を示す。同図7(a)において、「割れ」とは、膜割れを生じることを、また、「坐屈」とは、圧縮応力によって成膜される膜が坐屈することを示している。
【0061】
この図7(a)から、成膜条件としては、NH3ガスに対するSiH2Cl2ガスの流量比を次のように設定することが望ましいことがわかる。
a.成膜温度「750℃」に対しては「4〜8」とする。
b.成膜温度「850℃」に対しては「1〜4」とする。
c.「750℃」<成膜温度<「850℃未満」に対しては、成膜温度が「800℃」のときに「2〜6」となる態様にて補間された値とする。
【0062】
なお、上記成膜条件は、シリコン窒化膜を「0.6μm」以上成膜することのできる条件であり、膜厚に応じて適宜変更することが望ましい。すなわち、例えばシリコン窒化膜を膜厚「2.0μm」にて成膜する場合には、成膜温度に対する流量比は、上述したものよりも狭い範囲に設定することが望ましい。
【0063】
一方、図7(b)に、図7(a)に示す成膜条件によって成膜されたシリコン窒化膜の組成比を、同シリコン窒化膜の屈折率として示す。ここで、化学量論的組成のシリコン窒化膜の屈折率は、略「2.0」であり、これよりも屈折率が大きいほどシリコンの比率が大きなものとなる。
【0064】
更に、図7(c)に、この屈折率と成膜時の応力との関係を示す。ここで成膜時の応力は、成膜されるシリコン窒化膜自体の応力と、同成膜されるシリコン窒化膜とその下地膜との熱膨張係数の差に起因する熱応力との和に基づくものである。
【0065】
同図7に示すように、化学量論的組成(ストイキ)よりも屈折率が大きいほど、成膜時の応力が小さくなる。ここで、抵抗体を好適に保護することのできる膜厚である上述した「0.6μm」の膜厚にてシリコン窒化膜を成膜するためには、成膜時の応力を「800MPa」以下とすることが望ましい。そして、この成膜時の応力を「800MPa」以下として成膜されたシリコン窒化膜は、屈折率が「2.1」以上となる。ただし、成膜時の応力が「0」以下となると、換言すれば圧縮応力となると、図7(a)及び図7(b)に示す坐屈が生じることとなる。そして、成膜時の応力を略「0」以上とするためには、成膜されたシリコン窒化膜の屈折率を「2.3」以下とする。
【0066】
以上から、上記シリコン窒化膜40としては、その屈折率が「2.1〜2.3」である膜であることが望ましい。
ここで、本実施形態にかかる膜厚条件や成膜条件を満たす薄膜部MBの製造手順の一例を図8及び図9に基づいて説明する。図8及び図9に示す断面は、先の図2に示すB−B断面である。
【0067】
この一連の工程においては、まず図8(a)に示すように、例えばN型の導電型を有するシリコンからなる半導体基板10上に、熱CVD法にてシリコン窒化膜20を例えば膜厚「2.0μm」にて堆積する。このときの成膜条件を以下に例示する。
【0068】
ガス流量比 SiH2Cl2:NH3=4:1
雰囲気温度 850℃
圧力 20Pa
次に、図8(b)に示す上流側ヒータRha及び下流側ヒータRhbやリード部L5を形成すべく、アモルファスシリコンを、低圧CVD法にて例えば膜厚「1.0μm」にて成膜する。このときの成膜温度は、例えば「550℃」とすればよい。
【0069】
次に、成膜されたアモルファスシリコンにボロンを所定量(例えば「1×1020cm―3」以上)注入し、熱処理をすることで、アモルファスシリコンを結晶化し、多結晶シリコンとする。なお、このときの熱処理条件としては、例えば、「600℃」で10時間のアニールを行った後、更に「1150℃」で2時間のアニールを行う。更に、反応性イオンエッチング(RIE)によって、多結晶シリコンをパターニングすることで、上流側ヒータRha及び下流側ヒータRhbやリード部L5を形成する。なお、ここでは図示しないが、この図8(b)に示す工程において、先の図2に示した上流側温度計Rkaや下流側温度計Rkb、リード部L1〜L4、L6をも同時に形成する。
【0070】
このように、上流側ヒータRha及び上流側温度計Rkaとを、また、下流側ヒータRhb及び下流側温度計Rkbとを同一工程にて形成することで、上流側ヒータRha及び上流側温度計Rkaとの抵抗温度係数や、下流側ヒータRhb及び下流側温度計Rkbとの抵抗温度係数を簡易に一致させることができる。
【0071】
次に、図8(c)に示すように、上流側ヒータRha及び下流側ヒータRhbやリード部L5等の形成された半導体基板10(シリコン窒化膜20)上面に、これらを保護する保護膜としての上記シリコン窒化膜40を堆積する。このシリコン窒化膜40の膜厚や成膜条件は、同図8(c)に示す例では、上記シリコン窒化膜20の膜厚や成膜条件と同一とする。
【0072】
次に、図8(d)に示すように、シリコン窒化膜40を反応性イオンエッチングにてエッチングすることでコンタクトホール41を形成する。更に、図9(a)に示すように、メタル(例えばアルミニウム)を所定の膜厚(例えば「1.0μm」)に成膜した後、パターニングすることで上記コンタクトホール41に先の図2に示したパッドP5を形成する。なお、図8(d)〜図9(a)に示す工程においては、図示しないパッドP1〜P4、P6も同様にして形成される。
【0073】
続いて、図9(b)に示すように、半導体基板10の裏面側に、シリコン窒化膜50を、プラズマCVD法により所定の膜厚(例えば「1μm」)にて成膜する。次に、同図9(b)に示すように、先の図2に一点鎖線にて示した領域に対応した開口部を形成すべく、反応性イオンエッチングにてシリコン窒化膜50をエッチングする。
【0074】
更に、図9(c)に示すように、シリコン窒化膜50をマスクとして半導体基板10をエッチングすることで、半導体基板10に空洞部Hを形成する。これにより、空洞部Hを架橋するように薄膜部MBが形成されることとなる。
【0075】
なお、この図9(c)に示すエッチングは、以下のようにして行うことが望ましい。
A.エッチング液としてKOHやTMAH等のアルカリ性のエッチング液を用いたウェットエッチングとする。
B.半導体基板10を単結晶シリコン基板とするとともに、同半導体基板10の裏面を該単結晶シリコンの基本格子の等価な6面である{100}とする。
C.上記シリコン窒化膜50の開口部を矩形にして形成すると共に、その各辺を結晶方位<110>と一致させる。
【0076】
これにより、半導体基板10を上記エッチング液により{111}面に沿ってエッチングすることができる。したがって、薄膜部MBを矩形に形成することができる。更に、この際、薄膜部MBの2つの辺を流通方向に直交させるような設定とすることも容易となる。
【0077】
もっとも、薄膜部MBの形成に際しては、必ずしもウェットエッチングに限らず、ドライエッチングによって行うようにしてもよい。このようにドライエッチングを用いる場合には、少なくとも同ドライエッチングからの要請として半導体基板10の面方位が規定されることはない。
【0078】
ここで、フローセンサFSを構成する膜としての本実施形態にかかるシリコン窒化膜の適切性について更に検討する。
図10に、出願人らによって行われた様々な硬度の素材(アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜(SiN)、窒化チタン(TiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、炭化シリコン(SiC))を評価する試験の結果を示す。同図10は、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜とが交互に複数回積層された膜厚「3μm」の膜上に、評価対象となる膜を蒸着や化学気相拡散法(CVD法)にて膜厚「0.5μm」にて堆積させ、これに「数100μm」のパーティクルを衝突させて破損しない流速を評価したものである。ちなみに、上記素材の硬度は、ビッカーズ硬度によって定量化している。同図10に示すように、シリコン酸化膜よりも硬い膜を最表面につけることで、パーティクルに対する耐性が大幅に向上することがわかる。
【0079】
また、同図10に示すように、シリコン酸化膜よりも軟らかい膜を用いても上記耐性は向上するが、この場合には表面に大きな傷がつくことで薄膜部の熱容量等が変化し、流量の検出精度を低下させることとなるため好ましくない。更に、酸化アルミニウム(Al2O3)、炭化シリコン(SiC)は、パーティクルに対する耐性が高いとはいえ、フローセンサを汎用の半導体プロセスにて製造する場合、同半導体プロセスとの整合性の面で適切ではない。
【0080】
これらからも、フローセンサの薄膜部を構成する保護膜として、本実施形態にかかるシリコン窒化膜が適切であることがわかる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0081】
(1)シリコン窒化膜40として、熱化学気相成長法によって形成され、且つその組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きな膜を用いた。このように化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きなシリコン窒化膜を用いることで、熱化学気相成長法を用いた場合にも、その成膜時の応力を低下させることができる。したがって、特性のみならずその膜厚も適切に確保されたシリコン窒化膜を備えたフローセンサを実現することができる。
【0082】
(2)シリコン窒化膜40の膜厚を「0.6μm」以上とすることで、シリコン窒化膜40にパーティクルが衝突した場合に傷が貫通することなく上流側ヒータRhaや下流側ヒータRhb等の抵抗体を保護することができるようになる。
【0083】
(3)薄膜部MBの膜厚を「2.0μm」以上とすることで、車載内燃機関の吸気通路内に設けられた場合において、薄膜部MBが破損することを回避することができるようになる。
【0084】
(4)薄膜部MBの膜厚を「5.0μm」以下とすることで、フローメータFMの流量検出精度を好適に確保することができるようになる。
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかるフローセンサを車載用内燃機関の吸入空気量を検出するフローメータに適用した第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0085】
上記フローメータも先の図1と同様の構成を有し、先の図3に示す態様にて吸気通路に配置される。また、本実施形態にかかるフローセンサの平面構成も、先の図2に示した構成と同様である。
【0086】
図11に、本実施形態にかかるフローセンサFSの断面構成を示す。この図11は、先の図2に示したA−A断面と同様の断面を示している。同図11に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板110上には、シリコン窒化膜120及びシリコン酸化膜130が積層形成されている。このシリコン酸化膜130上には、上流側ヒータRhaや、下流側ヒータRhb、リード部L2、L5、上流側温度計Rka、下流側温度計Rkbがそれぞれ多結晶シリコンにて形成されている。そして、これら上流側ヒータRha、下流側ヒータRhb、リード部L2、L5、上流側温度計Rka、下流側温度計Rkbを覆うようにして、シリコン酸化膜135及びシリコン窒化膜140が積層されている。ちなみに、上記シリコン窒化膜120、140やシリコン酸化膜130、135も、空洞部Hを含めて半導体基板10の上方の略全ての領域に積層形成されている。
【0087】
ここで、本実施形態では、上記シリコン窒化膜120、140を、先の第1の実施形態のシリコン窒化膜20、40同様、熱CVD法によって形成され、且つその組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きな膜としている。
【0088】
なお、図11に示されるように、シリコン窒化膜120とシリコン窒化膜140とは同一の膜厚「α/2」となっており、また、シリコン酸化膜130とシリコン酸化膜135ともそれぞれ同一の膜厚「(X−α)/2」となっている。
【0089】
次に、本実施形態にかかる薄膜部MBの構成について、更に詳述する。
図12に、図11において薄膜部MBの全膜厚Xと、同全膜厚Xに対するシリコン窒化膜120及びシリコン窒化膜140の合計の膜厚の比率Yとをパラメータとしたときの、薄膜部MBの破損しない領域を示す。
【0090】
同図12に示すように、破損しない条件は、次式(c1)で示される。
Y―2.7exp{―0.5(X)}>0 …(c1)
この図12では、全膜厚Xが「5.0μm」までの領域を示しているが、これは先の図19に示したように、薄膜部MBの膜厚が「5.0μm」より大きいとフローメータFMの流量検出精度が低下するためである。そして、全膜厚が「5.0μm」までの領域においては、シリコン窒化膜140の膜厚は、「0.6μm」以上となっている。
【0091】
したがって、本実施形態では、薄膜部MBの膜厚が「5.0μm」以下であって、且つ上式(c1)を満たす範囲に設定する。ちなみに、全膜厚Xに対するシリコン窒化膜120とシリコン窒化膜140との合計の膜厚の比率Yは「1」以下である。
【0092】
ここで、先の図11に示したフローセンサFSの製造工程の一例を図13を用いて説明する。図13に示す断面は、先の図2に示したB−B断面と同様の断面である。
【0093】
この一連の製造工程においては、まず図13(a)に示す工程において、例えばN型の導電型を有するとともに、例えばシリコンからなる半導体基板110上に、先の図8(a)に示した成膜条件と同様の成膜条件にてシリコン窒化膜120を例えば膜厚「1.0μm」にて成膜する。次に、プラズマCVD法にて、シリコン酸化膜130を例えば膜厚「1.5μm」にて成膜する。そして、この後、シリコン酸化膜130の応力の安定化を図るべく、所定温度(例えば「1100℃」)にて所定時間(例えば「2時間」)の熱処理を行う。
【0094】
次に、図13(b)に示す工程において、先の図8(b)と同様の工程にて、シリコン酸化膜130上に、上流側ヒータRhaや、下流側ヒータRhb、リード部L5等を形成する。なお、ここでは、図示しないが、この工程においては、上流側温度計Rkaや、下流側温度計Rkb、リード部L1〜L4、L6も形成する。
【0095】
次に、図13(c)に示す工程において、先の図13(a)の工程におけるシリコン酸化膜130の成膜条件、膜厚条件と同一の条件にてシリコン酸化膜135を成膜する。更に、先の図13(a)の工程におけるシリコン窒化膜120の成膜条件、膜厚条件と同一の条件にてシリコン窒化膜140を成膜する。
【0096】
次に、図13(d)に示す工程において、リード部L5等と上層とのコンタクトを取るべく、反応性イオンエッチングにて、シリコン窒化膜140及びシリコン酸化膜135にコンタクトホール141を形成する。
【0097】
そして、その後、先の図9に示した一連の工程と同様にして、リード部L1〜L6の端部へのパッドP1〜P6の形成や、薄膜部MBの形成を行う。
以上説明した本実施形態によっても先の第1の実施形態の上記(1)〜(4)と同様の効果を得ることができる。
【0098】
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかるフローセンサを車載用内燃機関の吸入空気量を検出するフローメータに適用した第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0099】
上記フローメータも先の図1と同様の構成を有し、先の図3に示す態様にて吸気通路に配置される。また、本実施形態にかかるフローセンサの平面構成も、先の図2に示した構成と同様である。
【0100】
図14に、本実施形態にかかるフローセンサFSの断面構成を示す。この図14も、先の図2に示したA−A断面と同様の断面を示している。同図14に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板210には、シリコン酸化膜230が積層形成されている。このシリコン酸化膜230上には、上流側ヒータRhaや、下流側ヒータRhb、リード部L2、L5、上流側温度計Rka、下流側温度計Rkbがそれぞれ単結晶シリコンにて形成されている。そして、これら上流側ヒータRha、下流側ヒータRhb、リード部L2、L5、上流側温度計Rka及び下流側温度計Rkbを覆うようにして、シリコン酸化膜235及びシリコン窒化膜240が積層されている。ちなみに、上記シリコン窒化膜240やシリコン酸化膜230、235も、空洞部Hを含めて半導体基板10の上方の略全ての領域に積層形成されている。
【0101】
ここで、上流側ヒータRha及び下流側ヒータRhb、上流側温度計Rka及び下流側温度計Rkb、リード部L1〜L6は、全て単結晶シリコンで形成されている。このため、本実施形態では、多結晶シリコンを用いた場合と比較して、薄膜部MBの表面(保護膜の表面)の凹凸が低減される。ちなみに、多結晶シリコンは結晶粒界を有するために、同多結晶シリコンによって形成された上流側ヒータRhaや下流側ヒータRhb等の抵抗体の上部を覆う保護膜には、この結晶粒界に対応した凹凸が形成される。一方、ヒータ部以外の多結晶シリコンをエッチングした部分もエッチング時間の差から多結晶シリコンの凹凸を反映した凹凸が発生する。このような凹凸の存在は薄膜部MBが変形した際の応力集中点と作用されるため、薄膜部MBの強度低下を引き起こす可能性がある。これに対して、本実施形態のように単結晶シリコンを用いると、こうした結晶粒界に起因した凹凸が保護膜の表面に形成されることが回避される。
【0102】
次に、本実施形態にかかる薄膜部MBの構成について、更に詳述する。
図15に、図14において薄膜部MBの全膜厚Xと、同全膜厚Xに対するシリコン窒化膜240の膜厚の比率Yとをパラメータとしたときの、薄膜部MBの破損しない領域を示す。
【0103】
同図15に示すように、破損しない条件は、次式(c2)で示される。
Y―4exp{―0.7X}>0 …(c2)
この図15でも、全膜厚Xが「5.0μm」までの領域を示しているが、これは先の図19に示したように、薄膜部MBの膜厚が「5.0μm」より大きいとフローメータFMの流量検出精度が低下するためである。そして、全膜厚が「5.0μm」までの領域においては、シリコン窒化膜240の膜厚は、「0.6μm」以上となっている。
【0104】
したがって、本実施形態では、薄膜部MBの膜厚が「5.0μm」以下であって、且つ上式(c2)を満たす範囲に設定する。ちなみに、全膜厚Xに対するシリコン窒化膜140の膜厚の比率Yは「1」以下である。
【0105】
ここで、先の図14に示したフローセンサFSの製造工程の一例を図16を用いて説明する。図16に示す断面は、先の図2に示したB−B断面と同様の断面である。
【0106】
この一連の製造工程においては、まず図16(a)に示すようなSOI(Silicon On Insulator)基板を用意する。ここでは、このSOI基板は、例えばN型の導電型を有する単結晶シリコンからなる半導体基板210上に、例えば膜厚「2μm」からなるシリコン酸化膜230、例えばP型の導電型を有して所定の膜厚(例えば「1μm」)からなる単結晶シリコン膜250が積層されたものである。
【0107】
次に、図16(b)に示す工程において、上記単結晶シリコン膜250に不純物(例えばボロンB)を所定の濃度(例えば「1×1020cm―3以上」)にて注入する。そして、不純物の注入された上記単結晶シリコン膜250を活性化すべく、所定温度(例えば「1150℃」)にて所定時間(例えば「2時間」)の熱処理を行う。そして、上記単結晶シリコン膜250を反応性イオンエッチングにてパターニングすることで、上流側ヒータRhaや、下流側ヒータRhb、リード部L5を形成する。なお、ここでは、図示しないが、この工程においては、上流側温度計Rkaや、下流側温度計Rkb、リード部L1〜L4、L6も形成する。
【0108】
次に、図16(c)に示す工程において、プラズマCVD法にてシリコン酸化膜235を、例えば膜厚「0.2μm」にて堆積する。その後、このシリコン酸化膜235の応力の安定化を図るべく、所定温度(例えば「1100℃」)にて所定時間(例えば「2時間」)の熱処理を行う。更に、先の図8(a)に示した工程における成膜条件にて、シリコン窒化膜240を例えば膜厚「2.5μm」にて形成する。
【0109】
その後、図16(d)に示す工程において、リード部L5と上層とのコンタクトを取るべく、シリコン窒化膜240及びシリコン酸化膜235を反応性イオンエッチングにてエッチングすることで、コンタクトホール241を形成する。
【0110】
そして、その後、先の図9に示した一連の工程と同様にして、リード部L1〜L6の端部へのパッドP1〜P6の形成や、薄膜部MBの形成を行う。
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(4)の効果に加えて、更に以下の効果を得ることができる。
【0111】
(5)上流側ヒータRhaや下流側ヒータRhb、上流側温度計Rka、下流側温度計Rkb、リード部L1〜L6を単結晶シリコンにて構成した。これにより、これらを覆う保護膜の表面の凹凸を低減することができ、凹凸があることによる強度の低下を抑制することができる。
【0112】
(第4の実施形態)
次に、本発明にかかるフローセンサを車載用内燃機関の吸入空気量を検出するフローメータに適用した第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0113】
上記フローメータも先の図1と同様の構成を有し、先の図3に示す態様にて吸気通路に配置される。
図17は、本実施形態にかかるフローセンサFSの平面図である。同図17に示すように、本実施形態のフローセンサFSも、先の第3の実施形態と同様、半導体基板310上に形成されたシリコン酸化膜330上に、上流側ヒータRhaや下流側ヒータRhb、上流側温度計Rka、下流側温度計Rkb、リード部L1〜L6がそれぞれ単結晶シリコンにて形成されている。
【0114】
ここで、本実施形態では、リード部L2及びリード部L5が薄膜部MBのうち流体の流通方向に直交する辺を覆うようにして形成されている。図18に、図17のA−A断面を示す。同図18に示すように、リード部L2及びリード部L5が薄膜部MBの両端部を覆っている。このため、薄膜部MBの両端部の膜厚flは、シリコン酸化膜330、335、シリコン窒化膜340の合計の膜厚に対して、これらリード部L2やリード部L5の膜厚の分だけ厚く形成されることとなる。したがって、このリード部L2やリード部L5のうち薄膜部MBの端部を覆っている領域は、同端部の強度を強化する端部強化膜として機能する。
【0115】
このように、薄膜部MBがその端部において局所的に厚く形成されているために、同薄膜部MBの耐性を高く維持することができる。特に、先の図20に示したように、薄膜部MBの端部には傷が入りやすく、この傷によって薄膜部MBの強度が低下しやすいために、この端部を部分的に厚くすることによって薄膜部MBの耐性を顕著に向上させることができる。
【0116】
また、図17に示されるように、薄膜部MBを長方形状とするとともに、この長手方向の端部を上記リード部L2、L5によって覆うようにしたため、薄膜部MBの耐性を一層向上させることができる。すなわち、薄膜部MBが変形した際に薄膜部MBの端部にかかる応力は、長手方向の2辺において最大となるため、これら2辺を強化することで薄膜部MBの耐性を顕著に向上させることができる。
【0117】
これら上記リード部L2やリード部L5は、図17及び図18に例示するように、薄膜部MBの端部を覆うようにして形成しつつも、薄膜部MB内へ極力侵入しないようにして形成することが望ましい。こうすることで、薄膜部MBの端部を強化しつつも、薄膜部MBの熱容量を極力低く保つことができる。
【0118】
また、これらリード部L2やリード部L5を単結晶シリコンにて形成した。これにより、これらを覆うシリコン酸化膜335やシリコン窒化膜340の表面を滑らかに形成することができる。これに対しこれらリード部L2やリード部L5を多結晶シリコンにて形成した場合には、先の第3の実施形態において説明したように、多結晶シリコンの結晶粒界に起因する凹凸がシリコン窒化膜340の表面等に形成されることとなる。したがって、リード部L2やリード部L5を単結晶シリコンにて形成した場合、これらを多結晶シリコンにて形成した場合のように結晶粒界に起因するシリコン窒化膜340表面の凹凸が形成されない。このため、この凹凸部への応力集中を回避することができ、薄膜部MBの強度を大幅に向上させることができる。ちなみに、表面から薄膜部MBへ圧力を印加し、同薄膜部MBが破損する圧力を比較する実験によれば、上記リード部L2及びリード部L5として単結晶シリコンを用いた場合、多結晶シリコンを用いた場合の約2倍の強度が得られた。
【0119】
なお、本実施形態にかかるフローセンサFSの製造工程は、先の図16に示したものと同様である。したがって、上記薄膜部MBの端部を強化する端部強化膜は、リード部L2やリード部L5の一部としてこれらと同時に形成される。このため、端部強化膜の形成にかかる製造工数の増大を回避することもできる。
【0120】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(4)の効果、及び先の第3の実施形態の上記(5)の効果に加えて更に以下の効果が得られるようになる。
【0121】
(6)リード部L2及びリード部L5にて薄膜部MBの両端部を覆うことで、同端部の強度を強化することができるようになる。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0122】
・上記第2の実施形態では、シリコン窒化膜120及びシリコン窒化膜140の膜厚を互いに等しく設定し、またシリコン酸化膜130及びシリコン酸化膜135の膜厚を互いに等しく設定したが、これに限らない。例えばシリコン窒化膜140の膜厚を「0.6μm」以上とするとともに上式(c1)を満たしつつ、シリコン酸化膜130、135やシリコン窒化膜120の膜厚を適宜変更することで、薄膜部MBの破損や抵抗体の抵抗値変化を回避することができる。また、この際、合計の膜厚を「5.0μm」以下とすることで、このフローセンサを用いた流量検出精度を高く維持することができる。
【0123】
更に、この際、シリコン窒化膜120の膜厚については、必ずしもこれを「0.6μm」以上にしなくてもよい。例えば先の図3に示したようにフローセンサFSの側面及び裏面が流路部材FPの収容部spによって保護されている場合には、フローセンサFSの表面側と比較して裏面側には大きな硬度が要求されることはないため、「0.6μm」以下の膜厚としてもよい。ただし、先の図3に示したように、フローセンサFSと収容部spとの間には、所定のクリアランスがあることに鑑みれば、上述したイオン拡散等による抵抗値変化の影響を回避すべく、シリコン窒化膜120を設けることは有効である。また、先の図9(c)等に示した工程において、半導体基板をアルカリ性のエッチング液にてドライエッチングする際には、選択比を十分に確保すべく、裏面側にもシリコン窒化膜を設けることは有効である。
【0124】
・上記第3の実施形態において、上流側ヒータRhaや、下流側ヒータRhb、上流側温度計Rka、下流側温度計Rkb、リード部L1〜L6の全てを多結晶シリコンにて形成しても、先の第1の実施形態の上記(1)〜(4)の効果を得ることはできる。
【0125】
・上記各実施形態及びそれらの変形例では、上流側ヒータRhaや、下流側ヒータRhb等の上面を覆う保護膜の表面(シリコン窒化膜の表面)を平坦化しなかったが、平坦化してもよい。
【0126】
・吸気通路内へのフローメータFMの配置態様については、先の図3に例示したものに限らない。例えば、フローセンサFSの裏側も吸気通路内に露出させてもよい。この場合、この裏側への流体の流通状態によっては、第2の実施形態のように薄膜部MBのうちの空洞部H側の面がシリコン酸化膜とならないようにすることが望ましい。もっとも、薄膜部MBの面のうち空洞部H側の面は、空洞部Hのために直接的には流体の流通経路とはならないため、この面の最表面の膜に対する硬度等の要求は、薄膜部の表側の最表面の膜よりも厳しくないことが多い。
【0127】
・発熱体と、該発熱体の近傍(発熱体自身又は発熱体の付近)の温度を感知する感温体とを上流側ヒータRhaや下流側ヒータRhbのように同一とする代わりに、これらを別部材にて構成してもよい。
【0128】
・当該フローメータFMの環境温度を感知する上流側温度計Rkaや下流側温度計RkbをフローセンサFSに備える構成とする代わりに、信号生成回路SGに備える構成としてもよい。この場合であれ、上流側ヒータRhaと上流側温度計Rkaとの抵抗温度係数や、下流側ヒータRhbと下流側温度計Rkbとの抵抗温度係数は、互いに一致させるようにする。
【0129】
・上流側ヒータRhaや下流側ヒータRhbを備えなくても、単一のヒータ(発熱体、及び該発熱体の近傍の温度を感知する感温体)を備える構成であっても、発熱体に供給される電力量等に基づいて流体の流量を感知することはできる。更に、例えば上記特許文献3に記載のように、発熱体自身を第2の感温体としてこれによって自身の温度を感知しつつ発熱体を所定に制御するとともに、この付近の温度を上記感温体によって感知し、これに基づいて発熱体の生じる熱量のうち流体によって奪われた熱量を感知する構成としてもよい。
【0130】
・薄膜部MBの構造としては、図2や図3等に例示されているものに限らない。例えば薄膜部MBを矩形状に形成しつつその2辺のみが半導体基板上の薄膜と接続されるようにしてもよい。また、薄膜部MBの形状は、矩形にも限らない。また、薄膜部MBを矩形としつつも、半導体基板の裏面の開口部の形状が矩形でないようなものでもよい。これは、先の図9(c)に示した工程において、上述したBの条件の代わりに、半導体基板10の裏面を{110}面とする条件を適用することで形成される。
【0131】
更に、薄膜部MBの両側に等しく流体が流通するような構造としてもよい。この場合、流体の流通経路側に形成されている表面の保護膜は、2つあることになるが、上記第2の実施形態及びその変形例のような構成においては、その一方を表面の保護膜とし、他方を裏面の保護膜と定義する。なお、この場合、上記第1の実施形態や第2の実施形態及びそれらの変形例に例示されるように、これら2つの面に対称的にシリコン窒化膜を形成することが有効である。
【0132】
・その他、フローセンサFSの構成としては、発熱体と、該発熱体の近傍の温度を感知する感温体と、これら発熱体及び感温体を覆う保護膜とを備える薄膜部を備えるとともに、該薄膜部を構成する最表面の保護膜に上述したシリコン窒化膜を備える範囲で適宜変更してよい。すなわち例えば、保護膜としてシリコン窒化膜と、シリコン酸化膜以外の絶縁膜とを併用してもよい。また、例えば、発熱体や感温体はシリコン材料にて形成するものに限らない。更に例えば、感温体は、抵抗値の変化を利用して温度を感知するものに限らない。
【0133】
・更に、フローセンサFSの製造方法としても、少なくとも流体の流通経路側の保護膜として、組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きいシリコン窒化膜を熱化学気相成長法によって形成する範囲において、適宜変更してよい。例えば、先の図8(b)に示した工程において、上流側ヒータRhaや下流側ヒータRhb等のパターニングした後、不純物の注入を行うなどしてもよい。
【0134】
・フローセンサFSとしては、車載用内燃機関の吸入空気量を感知するものに限らず、適宜の流体の流量を感知するものであればよい。そして、フローセンサの使用環境によっては、薄膜部の膜厚を「2.0μm」以下とすることもあり得る。また、その要求される流量検出精度等によっては、「5.0μm」以上とすることもあり得る。更に、薄膜部を構成する保護膜の最表面のシリコン窒化膜の膜厚が、「0.6μm」以下であることもあり得る。しかし、こうした場合であれ、例えば「0.3μm」以上の膜厚のシリコン窒化膜を所望する場合等には、熱化学気相成長法によって形成され、且つその組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きなシリコン窒化膜を用いることは有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態にかかるフローメータの回路図。
【図2】同実施形態にかかるフローセンサの構成を示す平面図。
【図3】同実施形態にかかるフローメータの配置態様を示す図。
【図4】同実施形態にかかるフローセンサの断面構成を示す断面図。
【図5】同実施形態にかかるフローセンサの耐久性を示す図。
【図6】同実施形態にかかるフローセンサの抵抗値の耐久特性を示す図。
【図7】同実施形態にかかるシリコン窒化膜の成膜条件及び同シリコン窒化膜の特性を示す図。
【図8】同実施形態にかかるフローセンサの製造工程を示す断面図。
【図9】同実施形態にかかるフローセンサの製造工程を示す断面図。
【図10】同実施形態にかかるシリコン窒化膜の特性を示す図。
【図11】第2の実施形態にかかるフローセンサの断面構成を示す断面図。
【図12】同実施形態のフローセンサの薄膜部の膜厚条件を示す図。
【図13】同実施形態にかかるフローセンサの製造工程を示す断面図。
【図14】第3の実施形態にかかるフローセンサの断面構成を示す断面図。
【図15】同実施形態のフローセンサの薄膜部の膜厚条件を示す図。
【図16】同実施形態にかかるフローセンサの製造工程を示す断面図。
【図17】第4の実施形態にかかるフローセンサの構成を示す平面図。
【図18】同実施形態にかかるフローセンサの断面構成を示す断面図。
【図19】フローセンサの薄膜部の膜厚とフローメータの流量検出精度との関係を示す図。
【図20】フローセンサの破損のメカニズムを模式的に示す図。
【図21】従来のフローセンサの断面構成を示す断面図。
【符号の説明】
10…半導体基板、20…シリコン窒化膜、40…シリコン窒化膜、41…コンタクトホール、50…シリコン窒化膜、110…半導体基板、120…シリコン窒化膜、130…シリコン酸化膜、135…シリコン酸化膜、140…シリコン窒化膜、141…コンタクトホール、210…半導体基板、230…シリコン酸化膜、235…シリコン酸化膜、240…シリコン窒化膜、241…コンタクトホール、250…単結晶シリコン膜、310…半導体基板、330…シリコン酸化膜、335…シリコン酸化膜、340…シリコン窒化膜。
Claims (13)
- 発熱体と、該発熱体の近傍の温度を感知する感温体と、これら発熱体及び感温体を覆う保護膜とを備える薄膜部を有して流体の流量を検出するために用いられるフローセンサにおいて、
前記保護膜の少なくとも前記流体の流通経路側に形成されている表面の保護膜が、NH 3 ガスに対するSiH 2 Cl 2 ガスの流量比を、成膜温度が「750℃」のとき「4/1〜8/1」の範囲とし、成膜温度が「850℃」のとき「1/1〜4/1」の範囲とし、成膜温度が「750℃」よりも高く且つ「850℃」未満であるときには、成膜温度が「800℃」のときに「2/1〜6/1」となる態様にて補間された流量比とする条件下の熱化学気相成長法によって形成されて、且つ、その組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きいシリコン窒化膜にて膜応力が「0MPa」より大きく「800MPa」以下の引張応力を有して形成されてなる
ことを特徴とするフローセンサ。 - 前記表面の保護膜は、その屈折率が「2.1〜2.3」に設定されてなる
請求項1記載のフローセンサ。 - 前記表面の保護膜は、その膜厚が「0.6μm」以上である
請求項1又は2記載のフローセンサ。 - 前記薄膜部の膜厚が、「2μm」以上である
請求項1〜3のいずれかに記載のフローセンサ。 - 前記薄膜部の膜厚が、「5μm」以下である
請求項1〜4いずれかに記載のフローセンサ。 - 請求項1〜5のいずれかに記載のフローセンサにおいて、
前記流体の流通経路の裏面側に形成される裏面の保護膜が更に、熱化学気相成長法によって形成されて、且つ、その組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きいシリコン窒化膜にて膜応力が「0MPa」より大きく「800MPa」以下の引張応力を有して形成されてなる
ことを特徴とするフローセンサ。 - 請求項6記載のフローセンサにおいて、
前記表面及び裏面の保護膜の合計の膜厚をαとするとき、これら2つの保護膜の間には、次式
(α/α+β)―2.7exp{―0.5(α+β)}>0
を満たすβ(>0)を膜厚とするシリコン酸化膜が更に形成されてなる
ことを特徴とするフローセンサ。 - 請求項1〜5のいずれかに記載のフローセンサにおいて、
前記保護膜は、前記表面の保護膜の膜厚をαとして、次の式
(α/α+β)―4exp{―0.7(α+β)}>0
を満たすβ(>0)を膜厚とするシリコン酸化膜を更に備える
ことを特徴とするフローセンサ。 - 請求項1〜8のいずれかに記載のフローセンサにおいて、
空洞部を有する半導体基板を備えるとともに、前記薄膜部が該半導体基板の空洞部を架橋する部分として形成されてなり、同薄膜部の端部には、少なくとも前記感温体の長手方向に平行な端部を覆う端部強化膜が前記感温体と同層に形成されてなる
ことを特徴とするフローセンサ。 - 前記端部強化膜は、前記感温体と同一の材料からなる
請求項9記載のフローセンサ。 - 前記発熱体及び前記感温体を構成する材料が多結晶シリコンである
請求項1〜10のいずれかに記載のフローセンサ。 - 前記発熱体及び前記感温体を構成する材料が単結晶シリコンである
請求項1〜5又は8〜10のいずれかに記載のフローセンサ。 - 発熱体と、該発熱体の近傍の温度を感知する感温体と、これら発熱体及び感温体を覆う保護膜とを備える薄膜部を有して流体の流量を検出するために用いられるフローセンサの製造方法であって、
前記保護膜の少なくとも前記流体の流通経路側の保護膜として、組成比が化学量論的組成比よりもシリコンの比率が大きいシリコン窒化膜が熱化学気相成長法によって形成され、
前記窒化シリコン膜を成膜する熱化学気相成長法の条件は、NH 3 ガスに対するSiH 2 Cl 2 ガスの流量比を、成膜温度が「750℃」のとき「4/1〜8/1」の範囲とし、成膜温度が「850℃」のとき「1/1〜4/1」の範囲とし、成膜温度が「750℃」よりも高く且つ「850℃」未満であるときには、成膜温度が「800℃」のときに「2/1〜6/1」となる態様にて補間された流量比とする条件であり、
さらに、窒化シリコン膜の成膜時の応力が「0MPa」より大きく「800MPa」以下の引張応力となるように形成する
ことを特徴とするフローセンサの製造方法。
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