JP4055853B2 - クランクシャフトの高周波焼入焼戻装置及びその装置に用いられる高周波焼戻コイル体 - Google Patents
クランクシャフトの高周波焼入焼戻装置及びその装置に用いられる高周波焼戻コイル体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフトのジャーナル部又はピン部の外周面を焼入処理してから焼戻処理するための高周波焼入焼戻装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は、4気筒エンジン用クランクシャフト1を示すものであって、このクランクシャフト1は、中心軸X(ジャーナル部の軸線と同じ)を軸心とするジャーナル部2a,2b,2c,2d,2eと、中心軸Xに対して偏心した位置にあるピン部3a,3b,3c,3dと、カウンターウエイト部4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4hと、フランジ部5とを鍛造加工により一体に成形して成るものである。複数気筒エンジン用クランクシャフトであればピン部3は複数設けられ、図4に示す4気筒エンジン用クランクシャフト1の場合には、4つのピン部3a〜3dが設けられる。そして、これらのピン部3a〜3dは、中心軸Xの軸線方向に沿って所定の間隔を隔てた箇所において、互いに隣接するカウンターウエイト部4の間にそれぞれ配置される。また、中心軸Xの軸線方向において互いに隣接する各ピン部3a〜3dは、エンジンの形式に応じて、中心軸Xの回りに所定の位相角度だけ異なる角度位置に配設される。なお、図4に示す4気筒エンジン用クランクシャフト1の場合には、左右両端側のピン部3a,3d(中心軸Y1 を有する)が互いに同じ位相角度の箇所に配設されると共に、これらのピン部3a,3d間のピン部3b,3c(中心軸Y2 を有する)が互いに同じ位相角度の箇所に配設され、左右両端側のピン部3a,3dと中間位置のピン部3b,3cとが互いに180度の位相角度をもって配設される。
【0003】
この種のクランクシャフト1にあっては、従来より、クランクシャフト1のジャーナル部2a〜2e及びピン部3a〜3dの外周面にそれぞれ高周波誘導加熱による焼入処理及び焼戻処理を施すことにより、耐摩耗性並びに疲労強度の向上を図るようにしている。ここで、クランクシャフト1のピン部3a〜3d(以下においては、統括的にピン部3と記載する)を高周波誘導加熱する場合を例にとって説明すると、次の通りである。
【0004】
図5は、ピン部3の外周面Sを焼入処理及び焼戻処理に際して高周波誘導加熱するために従来より用いられている高周波焼入焼戻装置8を示すものである。この高周波焼入装置8は、図5に明示するように、真鍮製又は樹脂製の一対の側板10a,10b間に挟持状態で保持され、かつ、クランクシャフト1の中心軸Xを中心に回転駆動されるピン部3の外周面Sの上半分部分に対向配置される半開放鞍型の高周波誘導加熱コイル(半開放鞍型コイル)11と、この高周波誘導加熱コイル11に高周波電流を供給する高周波電源12と、前記一対の側板10a,10に固定された例えば3つのセラミック製又は超硬合金製のガイド部材(チップ部材)13a,13b,13cとを備えている。
【0005】
上述の高周波誘導加熱コイル11は、図5及び図6に示すように、コイル頭部を構成する左右一対の第1及び第2の加熱コイル部分14a,14bと、これらの一対の加熱コイル部分14a,14bとを互いに接続する接続導体部15a,15b,15cと、一対の接続導体部15a,15bにそれぞれ接続された給電リード部16a,16bとから構成されている。ここで、高周波誘導加熱コイル11の第1の加熱コイル部分14aについて詳述すると、この第1の加熱コイル部分14aは、図6に明示するように、互いに平行な一対の円弧状加熱導体部17a,18aと、円弧状加熱導体部17aの一端と円弧状加熱導体部18aの一端とを互いに接続する直線状加熱導体部19aと、円弧状加熱導体部17a,18aの他端と接続導体部15a,15cの一端とをそれぞれ接続する直線状加熱導体部20a,21aとから構成され、全体として湾曲したほぼ矩形形状となされている。また、第2の加熱コイル部分14bも上述の第1の加熱コイル部分14aと同様に構成され、一対の加熱コイル部分14a,14bが左右対称の配置関係をもって対応配置されている。なお、図6においては、第2の加熱コイル部分14bの一対の円弧状加熱導体部17b,18b、直線状加熱導体部19b、接続導体部15a,15c、及び給電リード部16bが図示されているが、既述の直線状加熱導体部20a,21aに相当する部分の直線状加熱導体部20b,21bは、隠れた位置にあるため、図示されていない。
【0006】
また、上述の給電リード部16a,16bは、高周波電流供給用のトランス(図示せず)を介して高周波電源12に接続され、この高周波電源12から所定の高周波電流が高周波誘導加熱コイル11に供給されるように構成されている。
【0007】
上述の高周波焼入焼戻装置8によりクランクシャフト1のピン部3の外周面Sを焼入処理或いは焼戻処理のために高周波誘導加熱するに際しては、図外の昇降機構により高周波焼入焼戻装置8を所定の待機位置から下降移動させてガイド部材13bを介してピン部3の外周面S上に載置し、ガイド部材13a〜13cをピン部3の外周面Sに当接せしめることにより高周波誘導加熱コイル11をピン部3の外周面Sの上半分部分に対して僅かな間隔を隔てて対向配置する。この状態の下で、クランクシャフト1を図外の回転駆動機構によりクランクシャフト1の中心軸Xを中心に回転駆動すると、これに伴いピン部3が前記中心軸Xを中心として公転運動する。この際、高周波焼入焼戻装置8が図外の追従機構によりピン部3に追従すると共に、高周波誘導加熱コイル11の第1及び第2の加熱コイル部分14a,14bが左右対称位置においてピン部3の外周面Sの上半分部分に対して常に対向配置された状態を維持する。
【0008】
このような状態の下で、高周波電源12から図外のトランス並びに給電リード部16a,16b、接続導体部15a,15bを順次に介して高周波誘導加熱コイル11の第1及び第2の加熱コイル部分14a,14bに高周波電流を供給し、これによりピン部3の外周面Sを誘導加熱する。次いで、ピン部3の外周面Sが所要の焼入温度に誘導加熱された時点で、高周波電源12から高周波誘導加熱コイル11への高周波電流の供給を遮断すると共に、ピン部3の外周面Sに焼入冷却水噴射手段(図示せず)により焼入冷却水を噴射する。これにより、ピン部3の外周面Sが急速冷却されて焼入処理或いは焼戻処理がなされる。
【0009】
また、図7は、別の形状の半開放鞍型の高周波誘導加熱コイル(半開放鞍型コイル)30を備える従来の高周波焼入焼戻装置31を示すものである。この高周波焼入焼戻装置31は、図7に示すように、真鍮製又は樹脂製の一対の側板10a,10b間に挟持状態で保持され、かつ、クランクシャフト1の中心軸Xを中心に回転駆動されるピン部3(ピン部3a〜3d)の外周面Sの上半分部分に対向配置される1つの加熱コイル部分29を有する高周波誘導加熱コイル30を備えている。なお、その他の構成は、図5の高周波焼入焼戻装置8と同様である。
【0010】
上述の高周波誘導加熱コイル30は、図7及び図8に示すように、コイル頭部)を構成する1つの加熱コイル部分29と、この加熱コイル部分29に接続された一対の給電リード部32a,32bとから成り、上述の給電リード部32a,32bが高周波電源12に接続されている。ここで、高周波誘導加熱コイル30の加熱コイル部分29の構成について詳述すると、この加熱コイル部分29は、図8に明示するように、互いに平行な一対の円弧状加熱導体部33a,33bと、円弧状加熱導体部33aの一端と円弧状加熱導体部33bの一端とを互いに接続する直線状加熱導体部34と、円孤状導体部33a,33bの他端と給電リード部32a,32bの一端とをそれぞれ接続する直線状加熱導体部35a,35bとから構成されている。
【0011】
そして、給電リード部32a,32bは、高周波電流供給用のトランス(図示せず)を介して高周波電源12に接続されており、この高周波電源12から所定の高周波電流が高周波誘導加熱コイル30の加熱コイル部分29に供給されるように構成されている。
【0012】
なお、上述の高周波焼入焼戻装置31は、特に、ピン部3或いはジャーナル部2の直径が小さい小型のクランクシャフトを高周波誘導加熱するのに有効である。その理由を述べると、次の通りである。すなわち、図5の高周波焼入焼戻装置8にあっては高周波誘導加熱コイル11の頭部が2つの加熱コイル部分14a,14bに2分割されており、円弧状加熱導体部17aと17bとが周方向で2つに分割されると共に円弧状加熱導体部18aと18bとが周方向で2つに分割されているため、ピン部3a〜3d或いはジャーナル部2a〜2eの直径が小さい場合には、円弧状加熱導体部15a,15b及び16a,16bの弧長が相対的に短くなり加熱効率が悪くなるが、図7の高周波焼入焼戻装置31にあっては高周波誘導加熱コイル30の加熱コイル部分29の円弧状加熱導体部33a,33bが2つに分割されていないので、ピン部3の外周面S(又はジャーナル部2の外周面H)に対向する円弧状加熱導体部33a,33bの弧長が上記の場合よりも相対的に長くなり、これに起因して加熱効率が向上するためである。
【0013】
上述した図7の高周波焼入焼戻装置31により、前記クランクシャフト1のピン部3の外周面Sを高周波誘導加熱して焼入処理或いは焼戻処理する工程は、前述した高周波焼入装置8による工程と同様であるので、その説明を省略する。
【0014】
また、上述した高周波焼入或いは高周波焼戻の工程はジャーナル部2の外周面Hについても同様であるのでその説明を省略する。
【0015】
図9(a)〜(c)は、高周波誘導加熱コイル11又は30の断面形状の代表的な例、並びに、上述の如き焼入工程によりピン部3の外周面Sに得られる望ましい(理想的な)硬化層パターンP1 ,P2 ,P3 をそれぞれ示している。なお、図9(a)のようにピン部3の外周面(円筒状外周面)Sのみに焼入硬化層パターンP1 を形成する焼入は平焼入と称され、図9(b)のようにピン部3の外周面Sからその両側のR部(円弧状隅部)Mに連なる焼入硬化層パターンP2 を形成する焼入はフィレットR焼入と称され、図9(c)のようにピン部3の外周面Sから片側のR部M及びスラスト部(平面部)Nに連なる焼入硬化層パターンP3 を形成する焼入は片R焼入と通常呼ばれている。図9(c)の片R焼入は、クランクシャフト1の両端に位置するジャーナル部、例えば図4に示す4気筒エンジン用クランクシャフト1においては第1ジャーナル部2a或いは第5ジャーナル部2eに施行されることが多い。
【0016】
次に、上述した手順で焼入処理を施行したクランクシャフト1については、焼入処理後に焼戻処理にための焼戻加熱を行うが、その焼戻加熱方法としては、電気炉を用いる方法や高周浪誘導加熱による方法が一般的に施行されている。
【0017】
電気炉による焼戻の場合には、まず、炉内温度を焼戻温度まで昇温しておき、昇温完了した電気炉に全てのジャーナル部2及び全てのピン部3に焼入が施行されたクランクシャフト1を電気炉の大きさに応じて複数本まとめて投入し、炉内温度まで前記クランクシャフトを昇温させた後に、所要時間(通常、1.0時間〜2.5時間程度)保持加熱してから電気炉から取り出して焼戻工程を完了するようにしている。
【0018】
電気炉による加熱は、炉内雰囲気からの熱伝導によるものであるのでクランクシャフト1の1個体内での温度バラツキは皆無に等しく、従って焼戻硬さのバラツキは焼戻工程においては発生することはない。
【0019】
また、高周波誘導加熱による焼戻方法としては、既述の焼入用高周波焼入焼戻装置8又は31を用いて焼戻を行う方法があり、その焼戻方法の場合には、高周波焼入焼戻装置8又は31を用いて前述した手順により焼入処理を完了したクランクシャフト1のピン部3の外周面S又はジャーナル部2の外周面Hに、再び高周波焼入焼戻装置8の構成要素である高周波誘導加熱コイル11又は高周波焼入焼戻装置3の構成要素である高周波誘導加熱コイル30に高周波電源12より高周波電流を所要時間にわたり供給することにより高周波誘導加熱を行ってピン部3又はジャーナル部2毎に焼戻処理を施すようにしている。ただし、この焼戻方法は、図10(a)に示すような平焼戻に対してのみ有効な方法であり、図10(b)に示すようなフィレットR焼入や図10(c)に示すような片R焼入に対しては適用できない。その理由は、従来の焼入用高周波誘導加熱コイルによる焼戻処理では、R部Mの半径が小さい場合はR部Mを充分に高周波誘導加熱するのは困難であり、またR部Mの半径が大きい場合はR部Mが先に昇温してしまい、何れの場合もR部Mを含んだ連続領域を焼戻時に均一に加熱することができないからである。
【0020】
また、図11は高周波誘導加熱による別の焼戻装置37であり、この焼戻装置37は、特開2001−303134号公報(特許文献1)により提示されているものである。上述の焼戻装置37は、高周波焼入焼戻装置8又は31を用いて前述した手順により全てのジャーナル部2及び全てのピン部3に焼入処理が施されたクランクシャフト1を、高周波焼入工程とは別の位置に配置された略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイル38により完全に取り囲まれた位置に配置して、焼入されていないカウンターウエイト部4及びフランジ部5等も含めてクランクシャフト1の全体を所要の焼戻温度まで一括して高周波誘導加熱を行って焼戻処理をするようにしたものである。
【0021】
このような焼戻装置37によれば、平焼入、フィレットR焼入によらず充分な焼戻効果を達成することが可能であり、また前述した電気炉による焼戻方法と比較して昇温時間及び保持(均熱)時間が短い(合計で60秒〜200秒程度)ため、疲労強度に関係する焼入された部位の圧縮残留応力が除去される度合いを少なく抑えることができて充分な圧縮残留応力を保持することが可能である。そして、加熱時間が短いことより、焼入から焼戻の工程を順次に行うような設備のインライン化が可能である。
【0022】
【特許文献1】
特開2001−303134号公報
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電気炉による加熱は、炉内雰囲気からの熱伝導による加熱であるため、加熱時間(昇温時間と保持時間の合計時間)が高周波誘導加熱の場合と比べて非常に長くなるためインライン化は困難である。また、1回の処理量を増加させようとすると、電気炉の容積を大きくせざるを得ず、設備の設置面積が増大するといった問題点がある。さらに、上述したように長時間加熱であることに起因して、高周波焼入により焼入部であるジャーナル部2及びピン部3の外周面H及びSに発生した圧縮残留応力が開放されて低減してしまうため、クランクシャフト1の疲労強度が低下してしまうといった問題点もある。そして、クランクシャフト1を焼戻処理する前に炉内雰囲気を焼戻温度まで昇温させるための時間並びに電力が必要であり、生産効率及びエネルギー効率が低いのが実状である。
【0024】
焼入用高周波焼入焼戻装置8又は31を用いてジャーナル部2又はピン部3の高周波焼入と高周波焼戻を連続して行う方法は、平焼入及び平焼戻に関しては従来より採用されている(図10(a)参照)。平焼入の場合には、図10(a)に示すように、焼入時と焼戻時における加熱条件並びに熱伝導の程度の違いにより焼入加熱時の加熱領域α1 ,α2 の幅に比べて焼戻加熱時の加熱領域α3 、α4 の幅が狭いため、焼入用半開放鞍型加熱コイル11或いは30を用いて短時間で高周波焼戻加熱を行うと、前記焼入用半開放鞍型加熱コイル11或いは30に対向する部分の僅かな一部分の領域にしか焼戻効果が現れない。この現象は、焼戻加熱時に焼入用高周波誘導加熱コイル11或いは30に供給する高周波電流値を増大させても変化せず、高周波電流値を増大させた分だけ、焼戻加熱領域α3 、α4 のみ過熱されて過剰に焼戻された状態になり、その領域は表面硬さが低下し過ぎてしまう一方、上述の過剰焼戻された領域の周辺には殆ど焼戻効果の現れない領域が存在することになる。その結果、焼戻処理完了後の硬化層各部での表面硬さが一定しないといった熱処理品質上の問題を生じる。
【0025】
この理由について述べると、次の通りである。まず、高周波焼入されたクランクシャフト1を焼戻処理する際の焼戻温度の設定は、通常150℃〜280℃の範囲である。この温度領域における被加熱物表面の近傍に流れる誘導電流の浸透深さは、例えば周波数が20KHzの場合は、約0.1mmである。一方、クランクシャフトの材質である鋼の磁気変態点(約760℃)以上の焼入温度領域における浸透深さは、20KHzの場合は、約3.5mmであり、焼戻温度領域における浸透深さにくらべて非常に大きいため、焼入時と焼戻時とでは同一の高周波誘導加熱コイルを用いても加熱領域の大きさが異なるのである。因みに、クランクシャフト1のジャーナル部及びピン部に形成する焼入硬化層深さは、一般的に、3.0mm〜5.0mm程度である。
【0026】
従って、前記焼入用高周波焼入装置8或いは31を用いて高周波焼戻を行う場合、短時間加熱すると上述したような熱処理品質上の問題を解決することが困難である。熱処理品質上の問題を解決し、充分な焼戻効果を得るためには、誘導加熱の時間の他に熱伝導に要する時間(放冷時間)を充分に設け、電流浸透深さが非常に小さく、焼入硬化層に対して狭い領域を誘導加熱することで発生した熱を、熱伝導により浸透深さ以上の硬化層内部を昇温させることが必要になるが、焼戻処理に要する時間が長くなることに起因して、クランクシャフト1の総熱処理時間が長くなり、生産性が低下するという問題がある。
【0027】
また、焼入硬化層領域が平焼入よりもさらに広いフィレットR焼入硬化層を形成したジャーナル部2又はピン部3の高周波焼入コイル体による高周波焼戻は上述した理由により焼戻に要する時間がさらに長くなる上に、平焼入の焼入硬化層を焼戻する場合よりも温度差が発生し易く、従って焼戻後の硬さめバラツキが大きくなるという問題がある。
【0028】
また、高周波誘導加熱による別の焼戻方法として、全てのジャーナル部2及び全てのピン部3に焼入が施行されたクランクシャフト1を、カウンターウエイト部4を含む非焼入領域も含めて、既述の略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイル38(図11参照)によって完全に取り囲みクランクシャフト1を一括して高周波誘導加熱を行って焼戻処理をする方法もあるが、被焼戻対象となるクランクシャフト1の寸法が大きくなり例えば建設機械や船舶用のクランクシャフト(2.0m以上)のものになるとソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイル38も相応に大型になり、その結果、焼戻装置の全体が大型になり設備の設置面積が大きくなるといった問題がある。
【0029】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであって、その目的は、上述の如き種々の問題点を解消し、短時間で充分な焼戻効果を得ることが可能でかつコンパクトなクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置及びその装置に用いられる高周波焼戻コイル体を提供することにある。
【0030】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、クランクシャフトのジャーナル部又はピン部の外周面に高周波焼入及び高周波焼焼戻を施行するための高周波焼入焼戻装置において、焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルを有する高周波焼入コイル体と、焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルを有する高周波焼戻コイル体とをそれぞれ備え、前記ジャーナル部又はピン部の中心軸を挟む2方向から移動される前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルとにより前記ジャーナル部又はピン部の外周面のほぼ全周を取り囲んで、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイル及び前記焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルを前記ピン部又はジャーナル部の外周面に対向配置し、この状態の下で、前記クランクシャフトをその中心軸を中心に回転駆動するのに伴って自転運動する前記ジャーナル部の外周面、又は、前記クランクシャフトの中心軸を中心として公転運動を行う前記ピン部の外周面に前記高周波焼入コイル体を追従させながら高周波焼入を行い、次いで前記高周波焼戻コイル体を前記ジャーナル部又はピン部の外周面に追従させながら高周波焼戻するようにしている。
また、本発明では、前記高周波焼入コイル体及び前記高周波焼戻コイル体を、高周波電流経路を切り換える切換器を介して共通の高周波電源にそれぞれ接続し、高周波焼入工程においては、前記切換器により前記高周波焼入コイル体の高周波焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルに高周波電流を供給するようにし、高周波焼戻工程においては、前記切換器により前記高周波焼戻コイル体の焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルに高周波電流を供給するようにしている。
また、本発明では、前記高周波焼入コイル体及び前記高周波焼戻コイル体を、それぞれ別の高周波電源に接続し、前記高周波焼入コイル体の焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルに高周波電流を供給している期間中に前記高周波焼戻コイル体の焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルにも高周波電流を供給可能としている。
また、本発明では、上述の如きクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置によって平焼入を施したクランクシャフトのジャーナル部又はピン部に対して高周波焼戻処理を行うための、前記高周波焼入焼戻装置を構成する高周波焼戻コイル体において、前記高周波焼戻コイル体を構成する焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルは、高周波焼入コイル体を構成する焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと比較して、前記クランクシャフトの中心軸に沿う方向における幅が広く、かつ、前記ジャーナル部又はピン部の外周面との間の距離が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記ジャーナル部又はピン部の外周面との間の距離よりも大きく設定されるように構成している。
また、本発明では、上述の如き構成のクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置によってフィレットR焼入を施した前記クランクシャフトのジャーナル部又はピン部に対して高周波焼戻処理を行うための、前記高周波焼入焼戻装置を構成する高周波焼戻コイル体において、前記高周波焼戻コイル体を構成する焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルは、高周波焼入コイル体を構成する焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと比較して、前記ジャーナル部又はピン部の外周面との間の距離が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記外周面との間の距離よりも大きく、かつ、前記ジャーナル部又はピン部の外周面から連なるR部を含んで前記ジャーナル部又はピン部に対して垂直に立ち上がる部位との間の距離が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記部位との間の距離との間の距離よりも大きく設定されるように構成している。
また、本発明では、上述の如き構成のクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置によって片R焼入を施した、前記クランクシャフトの端部に位置するジャーナル部に対して高周波焼戻処理を行うための、前記高周波焼入焼戻装置を構成する高周波焼戻コイル体において、前記高周波焼戻コイル体を構成する焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルは、高周波焼入コイル体を構成する焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと比較して、前記ジャーナル部の外周面との間の距離が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記外周面との間の距離との間の距離よりも大きく、かつ、前記ジャーナル部の外周面から連なるR部を含んで前記ジャーナル部又はピン部に対して垂直に立ち上がる部位との間の距離が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記部位との間の距離より大きく、かつ、前記焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルの前記外周面のみに対向している加熱導体部の前記クランクシャフトの中心軸に沿う方向の幅が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルの前記外周面のみに対向している加熱導体部の前記クランクシャフトの中心軸に沿う方向の幅より大きく設定されるように構成している。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。なお、図1〜図3において、図4〜図11と同様の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る高周波焼入焼戻装置40を示すものであって、この高周波焼入焼戻装置40は、焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイル30a(以下において、焼入用加熱コイル30aと記載する)を有する高周波焼入コイル体Jと、焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイル30b(以下において、焼戻用加熱コイル30bと記載する)を有する高周波焼戻コイル体Kとをそれぞれ備えている。すなわち、本装置40は、真鍮製又は樹脂製の一対の側板41a,41b間に挟持状態で保持された高周波焼入コイル体Jとしての焼入用加熱コイル30aと、真鍮製又は樹脂製の一対の側板42a,42b間に挟持状態で保持された高周波焼戻コイル体Kとしての焼戻用加熱コイル30bとをそれぞれ備えている。
【0033】
上述の焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bは、それぞれ、図8の高周波誘導加熱コイル30と同様に構成されたコイル体、すなわち高周波誘導加熱コイル30と同様に構成された加熱コイル部分29を有するコイル体であり、互いに同一の形状に構成されている。
【0034】
また、互いに同一の形状を有する焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bは、左右位置において互いに反対向きとなされて配置され、ピン部3の中心軸Yを挟む左右2方向から移動されて互いに対向配置されるように構成されている。この場合、焼入用加熱コイル30aと焼戻用加熱コイル30bとが接触しないように配置しなければならないため、図1に示す如く焼入用加熱コイル30aの両端部と焼戻用加熱コイル30bの両端部との間に僅かな間隔が設けられ、焼入用加熱コイル30aと焼戻用加熱コイル30bとによりピン部3の外周面のほぼ全周(完全な全周ではなく、ピン部3の外周面の全周の大部分)が取り囲まれるようになっている。かくして、一対の円弧状加熱導体部33a,33bと、直線状加熱導体部34と、一対の直線状加熱導体部35a,35bとから成る焼入用加熱コイル30aの加熱コイル部分29が、クランクシャフト1の中心軸Xを中心に回転駆動されるクランクシャフト1のピン部3の外周面Sの一方側の側面半分部分に対向配置されるように構成されると共に、焼戻用加熱コイル30bの加熱コイル部分29が、クランクシャフト1の中心軸Xを中心に回転駆動されるクランクシャフト1のピン部3の外周面Sの他方側の側面半分部分に対向配置されるようになっている。
【0035】
また、図1に示すように、第1の高周波誘導加熱コイル30aの給電リード部32a,32bは、第1及び第2の高周波電流供給用トランス(図示せず)にそれぞれ接続され、これらのトランスには、高周波電流経路を切り換える切換器50を介して高周波電源12が接続されている。従って、焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bには、上述の単一の高周波電源12から切換器50及び図外のトランスをそれぞれ介して所定の高周波電流が択一的に供給されるように構成されている。すなわち、焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bの何れか一方にのみ高周波電流が選択的に供給されるようになっている。
【0036】
さらに、焼入用加熱コイル30aが取付けられている一対の側板41a,41b間には、焼入用加熱コイル30aに対応する箇所に一対のガイド部材43a,43bが取付けられており、焼戻用加熱コイル30bが取付けられている一対の側板42a,42b間には、焼戻用加熱コイル30bに対応する箇所に一対のガイド部材44a,44bが取付けられている。かくして、前記2台の焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bは、これらのガイド部材43a,43b及び44a,44bを介して、加熱対象であるピン部3の中心軸Yを挟む左右2方向からこのピン部3の外周面Sに対して僅かな隙間を隔てて対向配置され、これに伴いピン部3の外周面Sのほぼ全周が焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bの加熱コイル部分29にて取り囲まれた状態となるように構成されている。
【0037】
なお、図2(a),(b)及び(c)は、前述した高周波焼入焼戻装置40の図1中のA−A断面を示すものであって、図2(a)は、ピン部3の外周面Sを平焼入及び平焼戻するための高周波焼入焼戻装置としての平焼入用加熱コイル30a及び平焼戻用加熱コイル30bの断面図、図2(b)は、ピン部3の外周面SをフィレットR焼入及びフィレットR焼戻するための高周波焼入焼戻装置としてのフィレットR焼入用加熱コイル30a及びフィレットR焼戻用加熱コイル30bを備えた高周波焼入焼戻装置40の断面図、図2(c)は、クランクシャフト1の端部に位置する第1ジャーナル部2a(或いは第5ジャーナル部2e)の外周面Hを片R焼入及び片R焼戻するための高周波焼入焼戻装置としての片R焼入用加熱コイル30a及び片R焼戻用加熱コイル30bの断面図である。
【0038】
図2(a),(b)及び(c)の場合には、焼入処理時及び焼戻処理時における焼入用加熱コイル30aの円弧状加熱導体部33a,33bとピン部3の外周面S又はジャーナル部2の外周面Hとの間の距離L1 と、焼戻用加熱コイル30bの円弧状加熱導体部33a,33bとピン部3の外周面S又はジャーナル部2の外周面Hとの間の距離L2 との関係は、L1 <L2 となるように設定されている。さらに、図2(a)及び(c)の場合には、平焼入,フィレットR焼入,或いは片R焼入用の高周波焼入焼戻装置40の焼入用加熱コイル30aの一対の円弧状加熱導体部33a,33bとピン部3のスラスト部N(円筒状外周面から垂直に立ち上がる部位としての側面)との間の距離d1 と、焼戻用加熱コイル30bの一対の円弧状加熱導体部33a,33bとピン部3のスラスト部Nとの間の距離d2 は、それぞれ、d1 <d2 なる関係となるように設定されている。
【0039】
また、図2(a)及び(c)にそれぞれ示す平焼入及び平焼戻用の高周波焼入焼戻装置40に設置される焼戻用加熱コイル30bの円弧状加熱導体部33aの幅W2 は、焼入用加熱コイル30aの円弧状加熱導体部33aの幅W1 に比べて幅広に形成されると共に(W1 <W2 )、これにより焼入用加熱コイル30aで焼戻加熱を行う場合(加熱領域α1 及びα2 )よりも加熱領域α3 及びα4 が広くなるように構成されている。なお、図2(c)において、焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bの円弧状加熱導体部33aは、ジャーナル部2aの外周面Hのみに対向している加熱導体部(R部M及びスラスト部Nには対向していない加熱導体部)である。
【0040】
焼入処理及びこれに引き続く焼戻処理を行う時には、以上に述べたような配置関係で2台の焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bをピン部3の外周面S又はジャーナル部2aの外周面Hに対向配置した状態の下で、クランクシャフト1を図外の回転駆動機構によりその中心線Xの回りに回転駆動させ、この回転駆動に伴い中心軸Xの回りに公転運動をするピン部3又は中心軸Xを中心に自転運動するジャーナル部2aに2台の焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bを図外の追従機構によって追従させる。なお、この際、台の焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bは、ピン部3の外周面S又はジャーナル部2aの外周面Hの側方半分部分に各々常に所定間隔をもって対向配置された状態が維持される。
【0041】
このような状態の下で、まず切換器50をオフ状態から第1のオン状態に切り換えることにより、高周波電源12から図外の第1のトランスを介して焼入用加熱コイル30aのみに高周波電流を供給し、これに応じてピン部3の外周面S又はジャーナル部2aの外周面Hを高周波誘導加熱する。次いで、前記外周面S又はHが所要の焼入温度に誘導加熱された時点で、切換器50を元のオフ状態に切り換えることにより、高周波電源12から焼入用加熱コイル30aへの高周波電流の供給を遮断し、所要の焼入温度に加熱された前記外周面S又はHに焼入冷却水噴射手段(図示せず)により焼入冷却液を噴射する。これにより、前記外周面S又はHが急速冷却されて焼入硬化層が形成される。
【0042】
このような焼入処理に引き続いて、焼戻処理を行う。この際には、切換器50をオフ状態から第2のオン状態に切り換えることにより、高周波電源12から図外の第2のトランスを介して焼戻用加熱コイル30bのみに高周波電流を供給し、これに応じてピン部3の外周面S又はジャーナル部2aの外周面Hを高周波誘導加熱する。次いで、前記外周面S又はHが所要の焼戻温度に誘導加熱された時点で、切換器50を元のオフ状態に切り換えることにより、高周波電源12から焼戻用加熱コイル30bへの高周波電流の供給を遮断し、所要の焼入温度に加熱された前記外周面S又はHに焼入冷却水噴射手段(図示せず)により焼入冷却液を噴射する。これにより、前記外周面S又はHを常温まで冷却させて焼戻処理を完了する。
【0043】
なお、切換器50による焼入用加熱コイル30aから焼戻用加熱コイル30bへの通電切換を焼入工程における加熱終了後の焼入冷却中に行うようにしても良く、このようにすることによって熱処理時間の短縮を図ることが可能である。
【0044】
上述の如き高周波焼入焼戻装置40によれば、次のような作用効果を奏することができる。すなわち、図2(a)に示す平焼入用の高周波焼入焼戻装置40にあっては、焼戻用加熱コイル30bの円弧状加熱導体部33a,33bの幅W2 を焼入用加熱コイル30aの円弧状加熱導体部33a,33bの幅に比べて幅広にしてあるため(焼戻用加熱コイル30bの幅W2 を焼入用加熱コイル30aの幅W1 に対してW2 >W1 としているため)、焼入用加熱コイル30aで焼戻加熱を行う場合(加熱領域α1 ,α2 )よりも焼戻加熱時における加熱領域α3及びα4が広くなる。さらに、焼戻用加熱コイル30bの2つの円弧状加熱導体部33a,33bとピン部3の外周面Sとの間の距離L2 を、焼入用加熱コイル30aの2つの円弧状加熱導体部33a,33bとピン部3の外周面Sとの間の距離L1 よりも大きく設定しているので(L2 >L1 )、焼入用加熱コイル30aによる加熱と比較して磁束密度の低い位置で緩やかな昇温速度で、内部への熱伝導を伴いながらにピン部3の外周面Sを焼戻加熱することにより、前記外周面S又はH並びにその周辺部分を均等に昇温させることができて、焼入硬化層に内部への熱移動を均一に行なうことができ、従って焼戻処理後の硬さのバラツキを抑えることが可能となる。
【0045】
また、図2(b)に示すフィレットR焼入用の高周波焼入焼戻装置40にあっては、上記と同様にL2 >L1 とし、かつ、焼戻用加熱コイル30bの一対の円弧状加熱導体部33a,33bとピン部3のスラスト部Nとの間の距離d2 を、焼入用加熱コイル30aの一対の円弧状加熱導体部33a,33bとピン部3のスラスト部Nとの間の距離d1 よりも大きく設定しているので(d2 >d1 )、焼戻用加熱コイル30bの方がコイル30aに比ベてピン部3より遠い位置にあるため、上述した平焼入の場合と同じく焼入用加熱コイル30aによる加熱と比較して磁束密度の低い位置で加熱を行うこととなり、焼入時の加熱領城α1 ,α2 に比べて焼戻時の加熱領域α3 ,α4 は広くなる。従って、緩やかな昇温速度で、内部への熱伝導を伴いながらにピン部3の外周面Sを焼戻加熱することとなるため、前記外周面S及びその周辺部分を均等に昇温させることができて、焼入硬化層の内部への熱移動を均一に行うことができ、従って焼戻後の硬さのバラツキを抑えることが可能となる。
【0046】
また、図2(c)に示すフィレットR焼入用の高周波焼入焼戻装置40にあっては、上述した平焼入並びにフィレットR焼入の焼戻の場合と同様に、第1ジャーナル部2aの外周面H及びR部Mの近傍の焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bの位置関係は、焼入用加熱コイル30aより焼戻用加熱コイル30bの方が前記外周面Hに対してより遠くに離れており、磁束密度の低い位置で加熱を行うようにしているため、焼入時の加熱領域α1 ,α2 に比べて焼戻時の加熱領域α3 ,α4 は広くなる。その結果、緩やかな昇温速度で、内部への熱伝導を伴いながらに第1ジャーナル部2a(或いは第5ジャーナル部2e)の外周面Hを焼戻加熱することとなるため、ジャーナル部2aの外周面H及びその周辺部分を均等に昇温させることができて、焼入硬化層の内部への熱移動を均一に行うことができ、従って焼戻後の硬さのバラツキを抑えることが可能となる。
【0047】
図3は、本発明の別の実施形態に係る高周波焼入焼戻装置40´を示すものであって、本装置40´の構成は、図1に示すものと全く同一であるが、焼入用加熱コイル30aには第1の高周波電源12aが接続されると共に、焼戻用加熱コイル体30bには第2の高周波電源12bが接続されている。なお、第1及び第2の高周波電源12a,12bの発振周波数は同一であってよい。
【0048】
上述のように構成することにより、焼入用加熱コイル30aと焼戻用加熱コイル30bに同時に高周波電流を供給することができるため、高周波焼入焼戻装置40´によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1) 高周波焼入時に、第1の高周波電源12aから焼入用加熱コイル30aに高周波電流を供給すると同時に、第2の高周波電源12bから焼戻用加熱コイル30bに高周波電流を供給して焼入加熱を行うようにすれば、焼戻用加熱コイル30bにより被加熱領域の全体を予熱する効果を得ることができるため、特に大型のクランクシャフト1に焼入を行う場合には、加熱時間を短縮することが可能である。また、ジャーナル部2又はピン部3の外周面H又はSのほぼ2分の1の周面だけを加熱する従来の高周波焼入装置と異なり、そのほぼ全周を2台の焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bにて取り囲んで高周波誘導加熱するようにしているので、均熱するまでの時間を短縮できるため、クランクシャフト1の焼入後の曲がりを小さく抑えることができる。
(2) 高周波焼入完了後の高周波焼戻工程において、焼戻用加熱コイル30bに高周波電流を供給すると同時に、焼入用加熱コイル30aに高周波電流を供給して焼戻加熱を行うようにすれば、焼入の場合と同様に焼戻加熱時間の短縮が可能である。
【0049】
また、上述の高周波焼入焼戻装置40,40´によれば、2台の焼入用加熱コイル30a及び焼戻用加熱コイル30bを備えるだけで良いので、図11に示すような大型の焼戻用高周波誘導加熱コイル38を備える必要がなく、装置全体をコンパクトにすることが可能である。
【0050】
以上、本発明の実施例につき述べたが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の2つの実施形態においては焼入用加熱コイル30aと焼戻用加熱コイル30bとして、従来の高周波焼入焼戻装置31を構成する高周波誘導加熱コイル30と同等の構造のものを用いるようにしたが、従来の高周波焼入焼戻装置8を構成する高周波誘導加熱コイル11に置き換え可能である。さらに、高周波焼入焼戻装置40´にあっては、焼入用高周波加熱コイル30aに接続される高周波電源12aの発振周波数に比べて、焼戻用加熱コイル30bに接続される高周波電源12bの発振周波数を低くしても良い。
【0051】
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明は、焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルを有する高周波焼入コイル体と、焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルを有する高周波焼戻コイル体とをそれぞれ備え、クランクシャフトのジャーナル部又はピン部の中心軸を挟む2方向から移動される焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルとにより前記ジャーナル部又はピン部の外周面のほぼ全周を取り囲んで高周波焼入した後に高周波焼戻を行うようにしたものであるから、高周波焼入及び高周波焼戻を1台の装置で行うことができるため高周波焼入装置とは別に高周波焼戻装置を設ける必要がなく、従って装置(設備)をコンパクトにかつ安価にできると共に、装置の設置面積を小さくすることが可能である。そして、焼戻専用の高周波誘導加熱コイルによって焼戻加熱を行うようにしているため、短時間で充分な焼戻品質を得ることができ、生産性を向上させることが可能となる。
【0052】
また、請求項2に記載の本発明は、高周波焼入コイル体及び高周波焼戻コイル体を切換器を介して共通の高周波電源にそれぞれ接続して、高周波焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイル及び焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルに高周波電流を選択的に供給するようにしたものであるから、高周波電源が1台でよく、装置を安価にすることが可能である。
【0053】
また、請求項3に記載の本発明は、高周波焼入コイル体及び高周波焼戻コイル体を、それぞれ別の高周波電源に接続し、高周波焼入コイル体の焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルに高周波電流を供給している期間中に前記高周波焼戻コイル体の焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルにも高周波電流を供給可能にしたものであるから、2台の焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイル及び焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルにより焼入加熱並びに焼戻加熱を行うことにより、クランクシャフトの熱処理時間を短縮することが可能であり、生産性を向上させることが可能となる。
【0054】
また、請求項4に記載の本発明は、平焼入を施したクランクシャフトのジャーナル部又はピン部に対して高周波焼戻処理を行うための高周波焼戻コイル体において、高周波焼戻コイル体を構成する焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルは、高周波焼入コイル体を構成する焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと比較して、クランクシャフトの中心軸に沿う方向における幅が広く、かつ、ジャーナル部又はピン部の外周面との間の距離が、焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルとジャーナル部又はピン部の外周面との間の距離よりも大きく設定されるように構成したものであるから、緩やかな昇温速度で、被加熱部の内部への熱伝導を伴いながらジャーナル部又はピン部の外周面を高周波誘導加熱することができ、ジャーナル部又はピン部の外周面及びその周辺部分が均等に昇温されることとなって焼入硬化層の内部への熱移動が均一に行われるため、焼戻処理後の硬さのバラツキを抑えることが可能となる。
【0055】
また、請求項5に記載の本発明は、フィレットR焼入を施したクランクシャフトのジャーナル部又はピン部に対して高周波焼戻処理を行うための高周波焼戻コイル体において、高周波焼戻コイル体を構成する焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルは、高周波焼入コイル体を構成する焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと比較して、ジャーナル部又はピン部の外周面との間の距離が、焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記外周面との間の距離よりも大きく、かつ、ジャーナル部又はピン部の外周面から連なるR部を含んでジャーナル部又はピン部に対して垂直に立ち上がる部位(スラスト部)との間の距離が、焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記部位との間の距離との間の距離よりも大きく設定されるように構成したものであるから、緩やかな昇温速度で、被加熱部の内部への熱伝導を伴いながらジャーナル部又はピン部の外周面を高周波誘導加熱することができ、ジャーナル部又はピン部の外周面及びその周辺部分が均等に昇温されることとなって焼入硬化層の内部への熱移動が均一に行われるため、焼戻処理後の硬さのバラツキを抑えることが可能となり、従来では困難とされていたフィレットR焼入部の高周波焼戻処理が可能となる。また、クランクシャフトの全体を加熱することなく、半開放鞍型高周波誘導加熱コイルを用いて各ジャーナル部又はピン部毎に誘導加熱による焼戻処理ができるため、フィレットR焼入が施されたクランクシャフトを焼戻処理するための従来の装置に比べて、装置が安価になり、装置全体の小型化(コンパクト化)が可能となる。
【0056】
また、請求項6に記載の本発明は、片R焼入を施したクランクシャフトのジャーナル部又はピン部に対して高周波焼戻処理を行うための高周波焼戻コイル体において、高周波焼戻コイル体を構成する焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルは、高周波焼入コイル体を構成する焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと比較して、ジャーナル部の外周面との間の距離が、焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記外周面との間の距離との間の距離よりも大きく、かつ、ジャーナル部の外周面から連なるR部を含んでジャーナル部又はピン部に対して垂直に立ち上がる部位との間の距離が、焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと部位との間の距離より大きく、かつ、焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルの前記外周面のみに対向している加熱導体部のクランクシャフトの中心軸に沿う方向の幅が、焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルの前記外周面のみに対向している加熱導体部のクランクシャフトの中心軸に沿う方向の幅より大きく設定されるように構成したものであるから、緩やかな昇温速度で、被加熱部の内部への熱伝導を伴いながらジャーナル部又はピン部の外周面を高周波誘導加熱することができ、ジャーナル部又はピン部の外周面及びその周辺部分が均等に昇温されることとなって焼入硬化層の内部への熱移動が均一に行われるため、焼戻処理後の硬さのバラツキを抑えることが可能となり、従来では困難とされていた片R焼入部の高周波焼戻処理が可能となる。また、クランクシャフトの全体を加熱することなく、半開放鞍型高周波誘導加熱コイルを用いて各ジャーナル部又はピン部毎に誘導加熱による焼戻処理ができるため、フィレットR焼入が施されたクランクシャフトを焼戻処理するための従来の装置に比べて、装置が安価になり、装置全体の小型化(コンパクト化)が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置の側面図である。
【図2】図1の高周波焼入焼戻装置のA−A線拡大断面図であって、図2(a)は平焼入における焼入用加熱コイル及び焼戻用加熱コイルの断面並びに加熱領域を示す図、図2(b)はフィレットR焼入における焼入用加熱コイル及び焼戻用加熱コイルの断面並びに加熱領域を示す図、図2(c)は片R焼入における焼入用加熱コイル及び焼戻用加熱コイルの断面並びに加熱領域を示す図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係るクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置の側面図である。
【図4】4気筒エンジン用クランクシャフトの斜視図である。
【図5】従来のクランクシャフトの高周波誘導加熱装置の側面図である。
【図6】図5の高周波誘導加熱装置の構成要素である高周波誘導加熱コイルの概斜視図である。
【図7】従来の別のクランクシャフトの高周波誘導加熱装置の側面図である。
【図8】図7の高周波誘導加熱装置の構成要素である別の高周波誘導加熱コイルの斜視図である。
【図9】図9(a)は平焼入用加熱コイル及び平焼戻用加熱コイルの断面形状並びにピン部に形成される好ましい焼入硬化層を示す断面図、図9(b)はフィレットR焼入用加熱コイル及びフィレットR焼入用加熱コイルの断面形状並びにピン部に形成される好ましい焼入硬化層を示す断面図、図9(c)は片R焼入用加熱コイルイ及び片R焼戻用加熱コイルの断面形状並びにピン部に形成される好ましい焼入硬化層を示す断面図である。
【図10】図5におけるB−B線拡大断面図(図7のC−C線拡大断面図に対応)であって、図10(a)はピン部の平焼入及び平焼戻のための高周波誘導加熱コイルの断面形状並びに平焼入時及び平焼戻時の加熱領域を示す図、図10(b)はピン部のフィレットR焼入及びフィレットR焼戻のための高周波誘導加熱コイルの断面形状並びにフィレットR焼入時及びフィレットR焼戻時の加熱領域を示す図、図10(c)は第1ジャーナル部の片R焼入及び片R焼入のための高周波誘導加熱コイルの断面形状並びに片R焼入時及び片R焼戻時の加熱領域を示す図である。
【図11】略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルを備えたクランクシャフトの高周波焼戻装置の概観図である。
【符号の説明】
1 4気筒エンジン用クランクシャフト
2(2a〜2e) ジャーナル部
3(3a〜3d) ピン部
12 高周波電源
12a 第1の高周波電源
12b 第2の高周波電源
17a,17b,18a,18b 円弧状加熱導体部
30a 焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイル(焼入用加熱コイル)
30b 焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイル(焼戻用加熱コイル)
33a,33b 円弧状加熱導体部
40,40´ 高周波焼入焼戻装置
43a,43b,44a,44b ガイド部材
50 切換器
51a〜51d ガイド部材
J 高周波焼入コイル体
K 高周波焼戻コイル体
H ジャーナル部の外周面
S ピン部の外周面
X クランクシャフトの中心軸
Y ピン部の中心軸
Claims (6)
- クランクシャフトのジャーナル部又はピン部の外周面に高周波焼入及び高周波焼戻を施行するための高周波焼入焼戻装置において、
焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルを有する高周波焼入コイル体と、焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルを有する高周波焼戻コイル体とをそれぞれ備え、
前記ジャーナル部又はピン部の中心軸を挟む2方向から移動される前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルとにより前記ジャーナル部又はピン部の外周面のほぼ全周を取り囲んで、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイル及び前記焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルを前記ピン部又はジャーナル部の外周面に対向配置し、
この状態の下で、前記クランクシャフトをその中心軸を中心に回転駆動するのに伴って自転運動する前記ジャーナル部の外周面、又は、前記クランクシャフトの中心軸を中心として公転運動を行う前記ピン部の外周面に前記高周波焼入コイル体を追従させながら高周波焼入を行い、次いで前記高周波焼戻コイル体を前記ジャーナル部又はピン部の外周面に追従させながら高周波焼戻するようにしたこと、
を特徴とするクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置。 - 前記高周波焼入コイル体及び前記高周波焼戻コイル体を、高周波電流経路を切り換える切換器を介して共通の高周波電源にそれぞれ接続し、高周波焼入工程においては、前記切換器により前記高周波焼入コイル体の高周波焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルに高周波電流を供給するようにし、高周波焼戻工程においては、前記切換器により前記高周波焼戻コイル体の焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルに高周波電流を供給するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置。
- 前記高周波焼入コイル体及び前記高周波焼戻コイル体を、それぞれ別の高周波電源に接続し、前記高周波焼入コイル体の焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルに高周波電流を供給している期間中に前記高周波焼戻コイル体の焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルにも高周波電流を供給可能としたことを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置。
- 請求項1乃至3の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置によって平焼入を施したクランクシャフトのジャーナル部又はピン部に対して高周波焼戻処理を行うための、前記高周波焼入焼戻装置を構成する高周波焼戻コイル体において、
前記高周波焼戻コイル体を構成する焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルは、高周波焼入コイル体を構成する焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと比較して、前記クランクシャフトの中心軸に沿う方向における幅が広く、かつ、前記ジャーナル部又はピン部の外周面との間の距離が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記ジャーナル部又はピン部の外周面との間の距離よりも大きく設定されることを特徴とする高周波焼戻コイル体。 - 請求項1乃至3の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置によってフィレットR焼入を施した前記クランクシャフトのジャーナル部又はピン部に対して高周波焼戻処理を行うための、前記高周波焼入焼戻装置を構成する高周波焼戻コイル体において、
前記高周波焼戻コイル体を構成する焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルは、高周波焼入コイル体を構成する焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと比較して、前記ジャーナル部又はピン部の外周面との間の距離が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記外周面との間の距離よりも大きく、かつ、前記ジャーナル部又はピン部の外周面から連なるR部を含んで前記ジャーナル部又はピン部に対して垂直に立ち上がる部位との間の距離が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記部位との間の距離との間の距離よりも大きく設定されることを特徴とする高周波焼戻コイル体。 - 請求項1乃至3の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼入焼戻装置によって片R焼入を施した、前記クランクシャフトの端部に位置するジャーナル部に対して高周波焼戻処理を行うための、前記高周波焼入焼戻装置を構成する高周波焼戻コイル体において、
前記高周波焼戻コイル体を構成する焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルは、高周波焼入コイル体を構成する焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと比較して、前記ジャーナル部の外周面との間の距離が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記外周面との間の距離との間の距離よりも大きく、かつ、前記ジャーナル部の外周面から連なるR部を含んで前記ジャーナル部又はピン部に対して垂直に立ち上がる部位との間の距離が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルと前記部位との間の距離より大きく、かつ、前記焼戻用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルの前記外周面のみに対向している加熱導体部の前記クランクシャフトの中心軸に沿う方向の幅が、前記焼入用半開放鞍型高周波誘導加熱コイルの前記外周面のみに対向している加熱導体部の前記クランクシャフトの中心軸に沿う方向の幅より大きく設定されることを特徴とする高周波焼戻コイル体。
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