JP4045602B2 - 絞り成形性に優れる缶用鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、極薄ブリキあるいはティンフリースチールなどの表面処理鋼板の原板として用いて好適な缶用鋼板に係り、とくに深絞りなどのプレス成形性に優れるとともに、コイル内の材質均一性に優れる缶用鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
昨今、大量に消費されている飲料缶、18リットル缶、ペール缶などはその製造工程から2ピース缶と3ピース缶に大別できる。このうち、2ピース缶は錫めっき、クロームめっき、化成処理、塗油などの処理を施した表面処理鋼板に、浅い絞り加工、DWI(Dwawn and Wall Ironed )加工、DRD(Dwawn and Redrawn )加工等の加工を施し、これに蓋を取りつけた2部品からなる缶である。また、3ピース缶は表面処理鋼板を円筒状または角筒状に曲げ、端部を接合して缶胴を形成したのち、これに天蓋と底蓋を取りつけた3部品からなる缶である。
【0003】
これらの缶の製造コストのうち素材コストの占める割合は高く、このため鋼板コストを低減することが求められている。このような観点から、コスト面、生産性の面で有利な連続焼鈍法により缶用鋼板を製造するための開発も従来から行われてきた。例えば、特開平1−52452 号公報には、極低炭素鋼を用いて、焼鈍後の加工硬化を利用することにより、種々の硬さの缶用鋼板を作りわける技術が開示されている。
しかし、このような製造方法の改善による低コスト化のみでは不十分であり、さらなる缶コストの低減をはかるために、1缶あたりの使用鋼板の重量すなわち鋼板板厚を減少させることも必要となってきた。ところで、鋼板の板厚減少は、延性の劣化を招き、加工性あるいは成形性を劣化させるので、単純に薄肉化しても、実際の使用に耐える鋼板とはなりえない。また、薄肉化をはかることにより、連続焼鈍時に鋼板の破断がおこるなど、製造技術上の問題も顕在化してきた。従って、缶用鋼板に対しては、従来にも増して、より一層優れた成形性が必要となってきた。
【0004】
なお、従来の低炭素鋼を用いた製造法では、本発明が対象とするような極薄の缶用鋼板においては、連続焼鈍法によって高いr値を得る手段がなく、概ね1.0 程度であり、Δrも大きい傾向があった。このため素材の低r値を補うべく、絞り成形の工程を余分に増やしたり、極めて高価な潤滑油を使うなどして絞り成形加工時における素材の破断などのトラブルに対処していた。このことからも缶用鋼板のより一層優れた成形性が望まれていた。
【0005】
また一方、前述したような極低炭素鋼は変態点が相対的に高いため、熱延の仕上げ圧延温度も高くなるので、熱間圧延自体の安定性の低下に加え、熱延ロールの損耗が顕著となるという問題があった。この問題を解決すべく、圧延をフェライト域で行うという技術思想があるが、未だ実用にいたっていない。その理由の一つは、コイルの長手方向、幅方向における材質変動が許容範囲を逸脱することであり、これは製品としての価値を低下させるのみならず、製造工程においても冷間圧延時の圧延性の劣化などにつながっていた。
これに対し、低炭素鋼を素材とした場合には、連続焼鈍法を適用した場合に、製品における固溶C量の低減に限界があった。低炭素鋼に、極めて煩雑な連続焼鈍サイクルを採用することも提案されているが、生産効率を低下させるので実用には至っていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来の缶用鋼板の製造技術では、絞り成形特性が未だ十分でなく、しかも最近の製缶材料としての薄肉化への対応に応えることができないという問題があった。さらに、コイル内における材質の均一性も十分でないために、安定した機械的性質が得られず、このことも上記薄肉化への障害を招いていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、2ピース缶のような厳しい絞り加工に耐え、薄肉化が達成できるような高成形性を備えた缶用鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、主として深絞り成形性を満足しつつ、コイルの長手方向、幅方向に極めて安定した機械的性質を有する缶用鋼板の製造方法を提供することにある。
また、本発明の具体的な目的は、r値1.6、望ましくは1.8以上を有し、コイルにおけるr値のバラツキが0.15以下、また伸びのバラツキが2.0 以下である缶用鋼板の製造方法を提供することにある。
また、本発明の具体的な他の目的は、r値の面内異方性Δrの絶対値が0.20以下である缶用鋼板の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、まず上記の目的を達成するために、缶用鋼板に必要となる冶金的な諸特性について検討した結果、以下の特性を備えることが必要であるとの基本的知見を得た。
1)顕著な薄肉化が進んだ場合に、高いr値は、成形時のしわ発生の防止、破断の防止に極めて有効である。概ね1.6 以上は必須である。また、r値の面内異方向性(Δr)は小さいほうが望ましく、概ね0.4 以下が望ましい。
2)肌あれ現象は外観を損なうので均一微細な結晶粒が望ましい。
3)高r値、高い伸びは絞り成形時の安定性を確保するに有利である。
4)缶用鋼板は鋼板のエッジの極近傍まで使用されるため、長手方向、幅方向にわたって高い材質均一性が必要である。
発明者らは、上記見地に立って、鋼の成分組成、熱間圧延およびその前後の工程、冷間圧延、焼鈍などの条件を詳細に研究した。その結果、これらの条件を特定の範囲に制御したうえ、結合することにより、材質レベルの向上とコイル内材質の均一性の向上を両立させることが可能になるとの結論に達し、本願発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は下記のとおりである。
(1) C:0.0050wt%以下、
Si:0.010 wt%以下、
Mn:0.050 〜1.50wt%、
P:0.020 wt%以下、
S:0.015 wt%以下、
N:0.0050wt%以下、
Al:0.150 wt%以下、
Nb:0.0030〜0.020 wt%
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼スラブを粗圧延し、得られたシートバーを巻き取って保熱処理を施したのち、巻き戻したシートバーのエッジ部を加熱し、(Ar3変態点+50℃) 〜(Ar3変態点−50℃) を圧延終了温度とする仕上げ圧延を行い、次いで、圧延終了後2sec 以上空冷したのち、ホットラン冷却において上、下のうちの少なくとも一方の冷却水が鋼板のエッヂ部を直撃しないようにマスキングしながら、平均冷却速度100℃/sec 以下で水冷し、600 〜750℃で巻取り、その後、酸洗を経て、圧下率80〜98%で冷間圧延し、再結晶温度以上で焼鈍することを特徴とする絞り成形性に優れる缶用鋼板の製造方法。
【0010】
(2) C:0.0050wt%以下、
Si:0.010 wt%以下、
Mn:0.050 〜1.50wt%、
P:0.020 wt%以下、
S:0.015 wt%以下、
N:0.0050wt%以下、
Al:0.150 wt%以下、
Nb:0.0030〜0.020 wt%、
Ti:0.005 〜0.020 wt%
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼スラブを粗圧延し、得られたシートバーを巻き取って保熱処理を施したのち、巻き戻したシートバーのエッジ部を加熱し、(Ar3変態点+50℃) 〜(Ar3変態点−50℃) を圧延終了温度とする仕上げ圧延を行い、次いで、圧延終了後2sec 以上空冷したのち、ホットラン冷却において上、下のうちの少なくとも一方の冷却水が鋼板のエッヂ部を直撃しないようにマスキングしながら、平均冷却速度100℃/sec 以下で水冷し、600 〜750℃で巻取り、その後、酸洗を経て、圧下率80〜98%で冷間圧延し、再結晶温度以上で焼鈍することを特徴とする絞り成形性に優れる缶用鋼板の製造方法。
【0011】
(3) 冷間圧延後の焼鈍に続いて、圧下率30%以下の2次冷間圧延を行う、上記(1) または(2) に記載の缶用鋼板の製造方法。
【0012】
(4)仕上げ圧延機の入り側にて、シートバーを接合し、仕上げ圧延を連続的に行う、上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の缶用鋼板の製造方法。
【0013】
(5) 仕上げ圧延を潤滑しつつ行う、上記(1) 〜(4) のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
(1) 鋼成分について;
C:0.0050wt%以下
Cは、その量が0.0050wt%を超えると、製造条件を適正化しても、目標とする高いr値を得ることができなくなり、また、延性(伸び)も顕著に劣化して、成形性はr値の低下との相乗効果で大きく劣化する。従って、C量は0.0050wt%以下とする必要がある。C量をこの範囲に制御すれば、鋼板の時効性は後述するNbの微量添加で実用上問題の無いレベルに容易に制御できる。なお、加工性をより一層重視する場合には、0.0030wt%以下とするのが望ましい。また、C量の下限は特に制限しないが、C量の低減とともに結晶粒の粗大化傾向があらわれるので、特に「肌あれ」に対しての規制が厳格な用途においては、C量は0.0010wt%以上とすることが望ましい。
【0015】
Si:0.010 wt%以下
Siは、その量が0.010 wt%を超えると、鋼板の表面性状を劣化させ、表面処理鋼板として望ましくないばかりでなく、鋼を硬化させて熱延工程を困難にするので上限を0.010 wt%とする。
【0016】
Mn:0.050 〜1.50wt%
Mnは、固溶強化に有用なほか、鋼の変態点を低下させ鋼板の熱延仕上げ温度条件を緩和するのに有効な元素である。また、Sによる熱間脆性を抑制する作用もある。Mn量が0.050 wt%未満では熱間脆性を回避できず、表面割れ等の問題を生ずることがある。一方、1.50wt%を超えて添加すると、詳細な機構は必ずしも明らかではないが、高いr値が得られる熱延条件が極めて狭くなるため、安定した操業が困難となり、また得られるr値も低下する傾向になる。なお、加工性を特に重視する場合には0.60wt%以下とするのが望ましい。
【0017】
P:0.020 wt%以下
Pは、加工性および耐食性を低下させる元素である。その量が0.020 wt%を超えるとその影響が顕著に現れるので、0.020 wt%以下、好ましくは0.010 wt%以下とする。ただし、P量の過度の低減は、製造コストの上昇につながるので望ましくはない。
【0018】
S:0.015 wt%以下
Sは、加工性に悪影響を及ぼす元素である。S量を0.015 wt%以下とすれば、プレス加工性(特に伸びフランジ特性)を顕著に改善する。なお、特に高い局部延性が要求される場合は0.007 wt%以下に低減することが望ましい。
【0019】
N:0.0050wt%以下
Nは、r値および耐時効性に悪影響を及ぼす元素であるので、0.0050wt%以下にする必要がある。なお、より一層良好なr値レベルと安定した小さい耐時効性が必要な場合には、0.0030wt%以下に低減することが望ましい。
【0020】
Al:0.150 wt%以下
Alは、脱酸剤として作用し、清浄度を向上させるために必須の元素である。一方、0.150 wt%を超えて添加すると、清浄度改善効果が飽和するほか、製造コストの上昇、表面欠陥発生傾向の増大などの問題を生じる。なお、清浄度の向上の観点から、概ね0.005 wt%以上の添加が望ましい。さらに望ましい範囲は0.020 〜0.080 wt%である。
【0021】
Nb:0.0030〜0.020 wt%
Nbは、r値の向上、鋼の組織の微細化、時効性の低減に有効な元素である。このようなNbの効果を発揮させるには、0.0030wt%以上の添加が必要である。一方、0.020 wt%を超えて添加すると、熱間圧延後の組織の不均一性を増し、缶材料としての不適切な材質となるばかりでなく、製造コストの上昇をももたらし、連続焼鈍時には、再結晶温度の顕著な上昇を招き、焼鈍を困難にする。なお、材質安定の観点から、0.0080〜0.0150wt%の範囲とするのが望ましい。
【0022】
Ti:0.005 〜0.020 wt%
Tiは、鋼板の組織の微細化に有効な元素であり、またCの一部を固定することによる時効性の調整作用を有する元素である。これらの効果は0.0050wt%以上の添加で発揮される。一方、0.0200wt%を超えて添加すると、熱間圧延後の組織の不均一を生ずる可能性が大きくなり、また、表面外観および耐食性の劣化も懸念される。従って、Tiの添加量は0.0050〜0.0200wt%とする。なお、強度と延性のバランスを考慮した場合には、0.0080〜0.018 wt%の範囲とするのが望ましい。
【0023】
(2) 製造条件について;
圧延素材となるスラブは成分の偏りを最小限にするために連続鋳造法で製造されることが望ましい。
次いで粗圧延と仕上げ圧延とからなる熱間圧延を行う。熱間圧延にあたり、鋳造後のスラブは、通常のように、一旦冷却後に再加熱されても、また、温片のままで加熱炉へ挿入されても良い。このスラブは常法に従う粗圧延により、概ね20〜70mm厚みのシートバーとする。
【0024】
上記シートバーは材質レベルの向上、材質の均一性の向上のために仕上げ圧延に入る前に一旦、コイルに巻き取り保熱する必要がある。ここで積極的に加熱することは望ましいが、特にこれを行わなくても、コイルに巻き取ることのみによって保熱ならびに均熱される。この保熱処理と巻き取り時に付与される若干の曲げ歪みとによって、詳細な機構は必ずしも明らかではないが、顕著な材質レベルの向上、特にr値の向上が達成される。
【0025】
このコイルを巻き戻したのち、仕上げ圧延機入側でシートバーのエッジ部を加熱する。通常の圧延法では、粗圧延工程まででも鋼板の幅方向に顕著な温度分布の不均一を生じており、シートバーエッジ部の温度は同幅方向中央部よりも50℃以上も低い温度となっている。本発明では、これを補償すべく、エッジヒーターで加熱を行うことにより、全幅方向にわたり材質均一化が達成される。ここで、シートバーのエッジ部とはシートバーの端から略150 mmまでの位置をいう。なお、加熱手段は特に定めないが、その方法として例えば、高周波誘導加熱やガス加熱などが挙げられる。
【0026】
また、仕上げ圧延機の入り側にて、シートバーを接合し、連続的に仕上げ圧延を行うようにすることは次の理由により望ましい。すなわち、仕上げ圧延を連続的に行うことにより、仕上げ圧延温度の確保が容易になるとともに、材質の安定化さらに圧延形状の安定化が大きく改善される。シートバーの接合方法は特に規定するものではなく、複数個のシートバーが連続して仕上げ圧延に供給されることが重要である。
【0027】
さらに、材質を改善する手段として、潤滑圧延を適用して仕上げ圧延することも有効である。材質が改善される詳細な機構は必ずしも明らかではないが、熱延鋼板の組織調査から、潤滑圧延により鋼板の厚み方向における組織、強度の均一化がはかられたことによるものと考えられる。この際、潤滑に用いる油の種類、塗油の方法などについて特に定めないが、実機圧延の際に各圧延機の荷重データなどから推定される摩擦係数は概ね0.15程度以下の条件を実現すると顕著な材質の均一化効果が得られるので、この摩擦係数範囲を満たす潤滑油を用いることが推奨される。
なお、上記した仕上げ圧延における連続圧延と潤滑圧延は、それぞれ単独で採用しても、組み合わせて採用してもよく、後者の場合により大きな効果が得られる。
【0028】
仕上げ圧延
仕上げ圧延における終了温度の制限は材質レベルの向上と鋼板の組織の均一化、微細化のために必要である。即ち、この温度が(Ar3 変態点−50℃) 未満となり臨界量以上のフェライト相が出現する温度域になると、生成したフェライトが極めて不均一に加工され、これが完全に歪みを開放できないままに急冷されるため極めて不均一な熱延板組織となる。この不均一組織は冷延、焼鈍を経たのちも完全に消去されず、缶用鋼板の特性が劣化する。従って、仕上げ圧延における圧延終了温度は(Ar3 変態点−50℃) 以上とする。
圧延終了温度の上限は材質の安定性から規制される。即ち、(Ar3 変態点+50℃) 以上となると、それ以下の本発明範囲の温度条件で仕上げ圧延された場合に比して、特に焼鈍後のYS(降伏応力)が変動する。またこの様な高温になると、熱延時のロールの損傷も顕著となり好ましくない。従って、仕上げ圧延温度は、(Ar3 変態点−50℃) 〜(Ar3 変態点+50℃)の範囲とする。材質のコイル内における均一性を確保するためには、この温度範囲が熱延コイルの全長、全幅方向にわたって確保されることが重要である。
【0029】
仕上げ圧延を終了した後、少なくとも2sec 以上の空冷時間(水冷開始の遅れ時間)をもうけることが、熱延コイルの幅方向の材質均一性を確保するには必須である。(Ar3 変態点−50℃) 〜(Ar3 変態点+50℃)で仕上げ圧延を終了した直後に水冷を開始すると、低温域の圧延で歪みを付与されたフェライトの歪みの開放が十分におこなわれず、熱延母板の段階までこの歪みの影響が持ちきたされるため、冷間圧延の安定性を損うほか、冷延焼鈍時においても形状の不良、材質のばらつきなどの原因となるのである。
このような問題を回避するためには、熱延終了後に適正な時間だけ歪みの開放が進むように、高温域に停滞するような冷却を行う必要がある。この空冷時間を2sec 以上確保することによって、本発明の目的が達成できる。空冷の上限時間は、材質に及ぼす影響が小さいため特に定めないが、後述する巻き取り温度が確保できる熱延設備上の拘束によりおのずから決定されるものである。
【0030】
ホットラン上における水冷
仕上げ圧延をおえた鋼板をホットラン上で水にて冷却するにあたり、鋼板の幅方向に均一な冷却を達成する必要がある。冷却水はノズルより噴出し、鋼板に衝突するが、直接に当たった位置は最も大きな冷却効率を有することと、エッジ部は中央部に比して冷却効率が高いという現象が確認された。この様な冷却の不均一性を解決する手段として、鋼板のエッジ部に直接には冷却水がかからないような設備的な検討をおこなったところ、エッジ部を50〜150mm 程度の範囲で冷却水のマスキングを行ったところ良好な結果が得られた。このマスキングは上部、下部の両方において行うことがもっとも望ましいが、すくなくとも一方でも実施すれば効果が現れる。
また、水冷却中の平均冷却速度を100℃/sec 以下とすることにより、冷却中、冷却後の鋼板の材質および形状における不均一を防止できる。なお、この冷却速度の制御は、実操業においては、冷却に使用する冷却水の水量密度を調整することにより達成される。さらに材質を安定させるには、70℃/sec以下が望ましい。
【0031】
巻き取り温度
仕上げ圧延後の巻き取り温度も材質均一化にとって重要な要件である。巻き取り温度を600 ℃以上にすることにより、熱延母板の幅方向の材質均一性が向上し、最終的な製品の材質均一性が改善される。また、600 ℃以上で巻き取ることにより必要最低限の窒化アルミの析出が進行し、冷延焼鈍後の材質、特にr値が改善される。しかし、750 ℃を超えて巻き取ると部分的に粗大な異常粒が発生する危険が増す。従って、巻き取り温度は600 〜750 ℃とする。
【0032】
酸洗および冷間圧延
熱間圧延を終えた熱延板は冷間圧延前に酸洗によりスケールの除去を行う。酸洗に用いる酸洗液はHCl, H2SO4など通常使用するものでよい。
冷間圧延における圧下率が80%を下回ると、目標とする高r値を得ることができない。また、98%を超えると素材の加工硬化のため圧延が困難になることに加えてΔrの劣化が顕著となり、絞り成形時に発生するイヤリングが大きくなり望ましくない。したがって、冷間圧延の圧下率は80〜98%の範囲とする。
【0033】
焼鈍
絞り成形をおこなう用途においては、延性の向上に加え機械的特性の面内異方性を小さくする必要があることと、必要なYSレベルを達成するために再結晶焼鈍が必須である。この再結晶焼鈍は組織を均一かつ微細に保つことと、生産効率の向上という観点から、急速加熱(5℃/sec 以上)、高温( 720〜780℃)、短時間(90sec 以下)の焼鈍が望ましい。
【0034】
2次冷間圧延
鋼板の強度を焼鈍ままの状態からさらに増加させるために、30%以下の2次冷延を付与することも有効である。2次冷延の付与による加工硬化の利用は、大幅なコストの増加をともなわない点と均一伸びは劣化するが局部伸びは劣化しないため、かなり広い用途に適用できる有利な強化方法である。しかし、30%を超えて2次冷延で強化を行うと、降伏強度の面内異方性が顕著となり、また、これに付随して集合組織も変化するため、プレス成形時のイヤリングの発生も顕在化してくる。従って、焼鈍後の2次冷延圧下率は30%以下とする。なお、良好な加工性を維持するためには20%以下の範囲で2次冷延を行うのが望ましい。
【0035】
【実施例】
実施例1
表1に示す種々の鋼を溶製して連続鋳造スラブとし、1100〜1250℃の範囲でスラブを加熱した。その後、熱延およびその前後工程、冷延、焼鈍(均熱時間は20sec 一定)の諸条件を表2のように変化させ、焼鈍後に酸洗および圧下率1.5 〜2.0 %の範囲で2次冷延圧下を行い、最終の厚み0.23〜0.22mmの鋼板を得た。なお、熱延母板の幅は1050〜750mm であった。
得られた冷延コイルの長手方向に先端部より20m間隔に、20個所、また幅方向に中央部と両エッジより100mm 位置の端部の合計60点について引張試験片を採取し、伸びとr値、Δr(r値の面内異方性)を測定した。また求めた結果からそれぞれのばらつき(標準偏差)を算出した。これらの調査結果を表2に併せて示す。なお、引張試験片はJIS13号試験片を使用した。
ここで、r値、Δrは、次式によって定義される。
r=(rL +2rD +rC )/4
Δr=(rL −2rD + rC )/2
ただし、rL 、rD およびrC は、それぞれ圧延方向、圧延方向に対して45°の方向、圧延方向に対して90°の方向のランクフォード値を表す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
得られた結果から明らかなように、本発明法によれば、伸び(El)およびr値が極めて高く、深絞り成形に適していることが、また、これら特性のコイル内のばらつき(コイル幅方向、長手方向のばらつき)が極めて小さいことが明らかである。
【0039】
実施例2
表1の成分の鋼Aを用いて、実施例1のNo1と同様の方法で冷間圧延まで行い、その後、表3に示す条件で焼鈍、2次冷延を行って冷延鋼板としたうえ、#25相当の錫めっきを常法に従って行い、実施例1と同様に機械的特性を調査するとともに、深絞り成形試験を行った。このときの成形条件は表4に示すとおりである。成形試験では、コイルの種々の位置からサンプルを採取し、各2次冷延の水準について各10個の円筒成形を行い、割れ発生の有無、イヤリングの程度並びに流入不良の発生有無について調査した。なお、予め、錫めっき後の機械的性質はめっき前の冷延鋼板のそれと同じであることを確認している。
これらの試験結果を表3に併せて示す。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
これらの結果から、2次冷延(調質圧延)を30%以下の範囲で行えば、成形性等の特性を大きく劣化させることなしに、YSを効果的に高めることができることが判る。
なお、本発明法で製造した鋼板の耐食性、塗装の密着性などの表面処理鋼板としての諸特性は、従来の方法で製造されたものとまったく同等であった。
【0044】
実施例3
表1のB鋼を使用し、表6に示す条件と、他の条件は実施例1のNo2と同様の方法(ただし、冷間圧下率は88wt%、焼鈍温度は755 ℃、焼鈍の2次冷延は1.8 %)によって、厚さ0.200mm の極薄鋼板を製造した。熱延条件としては、シートバーを仕上げ圧延機入り側で熱間接合し連続的に熱延した場合、潤滑圧延(平均の摩擦係数≦0.15) を行った場合およびこれらを組み合わせた場合について、実施例1と同様にして調査した。
これらの試験結果を表6に併せて示す。
【0045】
【表6】
【0046】
上記の結果から明らかなように、連続的に仕上げ圧延を行うことにより、また潤滑しつつ仕上げ圧延を行うことによりコイル内(特に長手方向)での各引張特性のばらつきを大きく改善することができる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明法によれば、得られた鋼板のr値、伸びが従来の工程で製造されたものよりも格段に向上し、r値などのプレス成形性と強度とのバランスに優れた缶用鋼板が製造可能になる。また、r値の面内異方性も少なくすることができる。さらに、本発明法によれば、コイル内の全長、全幅にわたってばらつきが少なく均一な材質特性を得ることが可能になる。
したがって、本発明法によって製造した缶用鋼板を、容器として成形、加工して使用する際には、成形可能範囲が広くなり、加工の不具合が発生する危険性が小さくなる。また、プレス成形性は鋼板厚みが薄くなるにしたがい低下する傾向にあるので、本発明法は、薄肉化による材料コストの低減の容易化にも寄与する。さらに、材質の均一化を通じて、プレス成形品の生産の安定化の観点からも大きな利点が期待され、産業上の貢献が大である。
Claims (5)
- C:0.0050wt%以下、Si:0.010wt%以下、Mn:0.050〜1.50wt%、P:0.020wt%以下、S:0.015wt%以下、N:0.0050wt%以下、Al:0.150wt%以下、Nb:0.0030〜0.020wt%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼スラブを粗圧延し、得られたシートバーを巻き取って保熱処理を施したのち、巻き戻したシートバーのエッジ部を加熱し、(Ar3変態点+50℃)〜(Ar3変態点−50℃)を圧延終了温度とする仕上げ圧延を行い、次いで、圧延終了後2sec以上空冷したのち、ホットラン冷却において上、下のうちの少なくとも一方の冷却水が鋼板のエッヂ部を直撃しないようにマスキングしながら、平均冷却速度100℃/sec以下で水冷し、600〜750℃で巻取り、その後、酸洗を経て、圧下率80〜98%で冷間圧延し、再結晶温度以上で焼鈍することを特徴とする絞り成形性に優れる缶用鋼板の製造方法。
- C:0.0050wt%以下、Si:0.010wt%以下、Mn:0.050〜1.50wt%、P:0.020wt%以下、S:0.015wt%以下、N:0.0050wt%以下、Al:0.150wt%以下、Nb:0.0030〜0.020wt%、Ti:0.005〜0.020wt%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼スラブを粗圧延し、得られたシートバーを巻き取って保熱処理を施したのち、巻き戻したシートバーのエッジ部を加熱し、(Ar3変態点+50℃)〜(Ar3変態点−50℃)を圧延終了温度とする仕上げ圧延を行い、次いで、圧延終了後2sec以上空冷したのち、ホットラン冷却において上、下のうちの少なくとも一方の冷却水が鋼板のエッヂ部を直撃しないようにマスキングしながら、平均冷却速度100℃/sec以下で水冷し、600〜750℃で巻取り、その後、酸洗を経て、圧下率80〜98%で冷間圧延し、再結晶温度以上で焼鈍することを特徴とする絞り成形性に優れる缶用鋼板の製造方法。
- 冷間圧延後の焼鈍に続いて、圧下率30%以下の2次冷間圧延を行う請求項1または請求項2に記載の缶用鋼板の製造方法。
- 仕上げ圧延機の入り側にて、シートバーを接合し、仕上げ圧延を連続的に行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
- 仕上げ圧延を潤滑しつつ行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
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