JP4037926B2 - S.diastaticusの検出に用いるプライマー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、特にビールの品質に悪影響を及ぼすSaccharomyces diastaticusの検出法に関し、詳しくはオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用した増幅反応によるS. diastaticusの検出法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
S. diastaticusは食品、特にビール醸造において最も問題となる有害微生物の1つであり、その特異的かつ迅速な検出法が望まれてきた。しかしながら、S. diastaticusは醸造に用いるS. cerevisiaeと極めて近縁な酵母であるため、両者は形態上酷似しており、その区別は非常に困難であるという問題があった。従来は炭素源の資化性と発酵性からS. diastaticusの検出を行っていたが、この方法によると識別に数日以上を要していた。一方、菌体内ATPを抽出し、ルシフェラーゼ−ルシフェリンを用いて蛍光分析を行う方法(バイオルミネッセンス法;特開平2-163098号公報)や、それを応用して微生物迅速検出装置;RMD System(日本ミリポア(株)製)を用いて微生物を検出する方法(以下RMDS法と略す;平成5年度日本生物工学会大会講演要旨集p.146、平成5年12月2日付日本工業新聞)を用いると、従来の培養法に比べて短期間で微生物(生菌)検出が可能である。しかしながらこれらの方法では有害酵母であるS. diastaticusを醸造に用いるS.cerevisiaeと識別することができない。さらに、核酸配列の相補性を利用したハイブリダイゼーション法などの方法も、両者の遺伝子配列が近似しているため満足のいく結果を得るのが難しい。このように、従来より種々の方法が開発されているものの、迅速性、検出感度、特異性のいずれもが優れたS. diastaticusの検出方法は未だ存在しない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、S. diastaticusをS.cerevisiaeと区別して検出するための遺伝子増幅反応に用いる新規プライマーを提供することを目的とする。
【0004】
本発明はまた、前記新規プライマーを用いて遺伝子増幅反応を行い、ビール等の食品・飲料に含まれる恐れがあるS. diastaticusを検出する方法を提供することを目的とする。本発明により、食品等の微生物検査に有用な、S. diastaticusの簡便、迅速かつ高感度な検出法が提供される。また、RMDS法で微生物の検出を行った後の検体を使用して、引き続き迅速にS. diastaticusを効果的、選択的に検出することが可能となった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
新規プライマーの製造
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、S. diastaticusとS.cerevisiaeのグルコアミラーゼ遺伝子の遺伝子構造の相違に着目して、遺伝子増幅反応によりS. diastaticusのグルコアミラーゼ遺伝子の特定領域のみを特異的に増幅させて検出することに初めて成功した。
【0006】
より詳細には、S. diastaticusのグルコアミラーゼ遺伝子STA1は、S. cerevisiaeにおいては異なる位置にある3つのDNA領域(S2、S1およびSGA)が進化の過程で融合したものと考えられており、それぞれの領域には酵素分泌のためのシグナル配列、スレオニンとセリンを多く含むTS領域、およびS. cerevisiaeのグルコアミラーゼの触媒領域とほとんど同じ配列がコードされている(以下、S. diastaticusのグルコアミラーゼ遺伝子STA1の各領域の定義はYamashita I, et al., J. Bacteriol., 169, 2142-2149 (1987)に基づく)。本発明は、このようにS. diastaticusのSTA1遺伝子はS2−S1−SGAの構造をとっており、S2、S1に相当する領域とSGAに相当する領域とが隣接するが、S. cerevisiaeではこれらの領域が離れて存在するという遺伝子構造の相違を利用する(図1に示すとおり、S. cerevisiaeのヌクレオチド配列S2、S1およびSGA中のA〜Dの領域は分離して存在するが、S. diastaticusのSTA1中では、相当するA’〜D’の領域は連続している)。したがって、本発明ではプライマーとする領域の一方を、Saccharomyces diastaticusのグルコアミラーゼ遺伝子(STA1)において、S. cerevisiaeのもつヌクレオチド配列S1およびS2の少なくとも一方に相当する領域(配列番号7の塩基番号1〜992)、好ましくはS1に相当する領域(配列番号7の塩基番号222〜992)から、もう一方をS. cerevisiaeのもつSGAに相当する領域(配列番号7の塩基番号993〜2753)から、以下の条件を満たすように選定する。
【0007】
1)各部分の長さが9−30塩基、好ましくは15−25塩基であること;
2)各部分のG+Cの割合が40−60%であること;
3)各部分のA、T、GおよびCの分布が部分的に大きく偏らないこと;
4)一方の部分と他方の部分の間の距離がS. diastaticusのグルコアミラーゼ遺伝子中において50−2000塩基であること;
5)各部分中、各部分間またはS. diastaticusのグルコアミラーゼ遺伝子中におけるこれらの部分に挟まれた領域中に相補的な配列部分が存在しないこと。
【0008】
S1またはS2に相当する領域から選定した核酸配列由来のプライマーを5’末端プライマー、SGAに相当する領域から選定した核酸配列に相補する配列由来のプライマーを3’末端プライマーとして使用する。即ち、5’末端プライマーは−鎖を、3’末端プライマーは+鎖をそれぞれ認識してハイブリダイズする。
【0009】
なお、S2に相当する領域から5’末端プライマーおよびS1に相当する領域から3’末端プライマーを選定することもできる。
【0010】
プライマーの配列が選定されれば市販のDNA合成機(例えば、PERKINELEMERのModel391−04)により慣用された方法により、プライマーとなる一本鎖を合成できる。
【0011】
上記1)−5)の条件を満たす好ましいプライマーの組の特定の例として次のものがある。
【0012】
【化4】
組み合わせ1
SD-5A; 5'-CAACTACGACTTCTGTCATA-3' (配列番号1)
SD-6B; 5'-GATGGTGACGCAATCACGA-3' (配列番号2)
組み合わせ2
SD-1A'; 5'-CCATCTTCAACTCCATTCAGCTCTG-3' (配列番号3)
SD-6B; 5'-GATGGTGACGCAATCACGA-3'
なお、S. diastaticusのグルコアミラーゼ遺伝子(STA1)中におけるSD−5A、SD−6BおよびSD−1A’のそれぞれの位置も、図1中に示されている。SD−1A’にダッシュを付したのは、3’末端が修飾されているためである。
【0013】
現在判明している最も好ましいプライマーの組み合わせは、組み合わせ1である。この組み合わせを用いて遺伝子増幅反応を行った場合、S. diastaticusが存在すれば約870塩基長のバンドが現れるが、S.cerevisiaeが存在しても遺伝子の増幅は観察されない。したがって、S. diastaticusのみを特異的に検出することが可能となる。さらに、SD−5A、SD−6BおよびSD−1A’の全長でなくとも、そのうちの最低9塩基連続したものであればプライマーとして使用可能である(実施例5)。
【0014】
しかしながら、本発明のプライマーは上述した組み合わせ1および2に限られない。即ち、プライマーSD−5A、SD−6BまたはSD−1A’に基づき、これらに塩基の付加、削除、変更等により修飾したものも、S. diastaticusのSTA1塩基配列にハイブリダイズする性質を失わない限り遺伝子増幅用のプライマーとして選択しうる。また、S. diastaticusのSTA1遺伝子配列において上記プライマーを選定した箇所から5’側または3’側に例えば数塩基ずれた配列も、STA1遺伝子配列に特異的にハイブリダイズする性質を失わないものはプライマーとして採用しうる。
【0015】
プライマーSD−5A、SD−6BまたはSD−1A’に基づいて上述のような改変プライマーを採用することは当業者にとって容易になしうることであり、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0016】
さらに、プライマーSD−5A、SD−6BまたはSD−1A’以外の配列でも、STA1の他の領域から上述した選定条件を満たすように選定したもの、およびそれらの配列をSTA1遺伝子配列に特異的にハイブリダイズする性質を失わないように、塩基の追加、削除、変更等により修飾した配列も本発明の範囲に含まれる。
【0017】
遺伝子増幅反応
本発明のプライマーによる遺伝子増幅は、限定されるわけではないが、例えば Polymerase Chain Reaction法(Science 230, 1350(1985)、以下、PCR法と略す)に基づいて行うことができる。PCR法では、ある特定のヌクレオチド配列領域(本発明の場合は S. diastaticusのグルコアミラーゼ遺伝子)を増幅しようとする場合、その領域の両端の一方は+鎖を、他方は−鎖をそれぞれ認識してハイブリダイズするオリゴヌクレオチド対をプライマーとして用いることにより行う。まず、熱変性により1本鎖状態にした試料核酸に対してプライマーをハイブリダイズ(アニーリング)させ、続いてポリメラーゼ重合反応を行い、生成した2本鎖核酸を熱変性により再び1本鎖に分離した後、同様な反応を再度起こさせるものである。このような、アニーリング、重合、熱変性を1サイクルとする操作を繰り返すことにより、2つのプライマーに挟まれた領域を約107倍にまで増幅させることができる。
【0018】
PCR反応に用いるDNAポリメラーゼは、耐熱性細菌由来のTaqポリメラーゼが一般に用いられるが、90〜95℃の温度で活性を有していれば、どの生物種由来であっても良い。必ずしも以下の条件に拘束されるわけではないが、例えばアニーリング反応は37〜65℃、好ましくは40〜60℃で、0.1〜3分、好ましくは0.5〜2分行う。重合反応は50〜75℃、好ましくは70〜75℃で、0.1〜4分、好ましくは0.5〜3分行う。熱変性温度は90〜95℃で、0.2〜5分行う。サイクル数は、10〜60回、好ましくは20〜40回である。PCR反応は市販のPCR用自動機器(例えば、PERKIN ELMER Gene Amp PCR System 9600)を用いて行うことができる。
【0019】
本発明のプライマーによる遺伝子増幅はまた、PCR反応以外の公知の遺伝子増幅反応、例えば鎖置換反応(Strand Displacement Amplification; SDA)を用いて行うこともできる。
【0020】
試料中にS. diastaticusが存在する場合、上記遺伝子増幅反応を行って得られた反応液中には所定の遺伝子領域の核酸断片が増幅されている。これを検出するためには、反応液をそのままアガロースゲル電気泳動またはポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけて、増幅された核酸断片の存在およびその長さを確認することができる。S. diastaticusが存在しない場合、該当する核酸断片は検出されない。このように、試料中のS. diastaticusの存否を容易に判定することが可能である。増幅されたヌクレオチド断片の検出には、その他の電気泳動やクロマトグラフィーを用いてもよい。
【0021】
以下、本発明を説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
【実施例】
実施例1
S. diastaticusのコロニー1白金耳を前処理液(0.1mg/ml ProteinaseK)20μlに懸濁し、55℃で20分間処理して溶菌し、94℃で10分間加熱して酵素を失活させた。これにクロロホルム20μlを添加し、30秒程度撹拌した後軽く遠心分離し、その上清を検体とした。
プライマーの設計とPCR反応
上述したように、S. diastaticusのグルコアミラーゼ遺伝子においては、S. cerevisiaeのヌクレオチド配列S1およびS2に相当する領域がS. cerevisiaeのグルコアミラーゼ遺伝子SGAのヌクレオチド配列に相当する領域と隣接しているという特質を利用し、一方のプライマーがS1およびS2の少なくとも一方に相当する領域に、他方のプライマーがSGAに相当する領域に由来するようにプライマー対を設計し、市販のDNA合成装置で合成した。こうして得られたプライマーを使用してPCR反応を行った(組み合わせ1および2)。また対照としてS1に相当する領域から2箇所の領域を選択してプライマー対としたPCR反応も行った(組み合わせa−c)。以下、表1に使用したプライマー対を示す。
【0023】
【表1】
PCR反応の反応用バッファー、dNTP溶液及び耐熱性DNAポリメラーゼは(株)パーキンエルマージャパン製または宝酒造(株)製のものをそれぞれの説明書に準じて用いた。反応は、熱変性1:94℃、40秒を1サイクル行った後、[熱変性2:94℃、20秒、アニーリング:54℃、30秒、重合反応1:72℃、30秒]を35サイクル繰り返し、最後に重合反応2:72℃、7分を1サイクル行った。
【0024】
S. diastaticus の検出
検体から増幅されたヌクレオチド断片を検出する方法として、3% NuSieve3:1 Agarose gel電気泳動を行った。PCR処理後の反応液の5〜10μlを使用し、電気泳動を行った。なお、電気泳動はTAE溶液(40mMTris−acetate/1mMEDTA (pH8.0))を用い、100Vで30分間行った。その後、ゲルを臭化エチジウム溶液にて染色し、紫外線照射下でインスタントカメラにより写真を撮影した。反応液の他に分子量マーカーの泳動も同時に行い、相対移動度の比較により、ヌクレオチドの長さを算出した。
結果
本発明のプライマー対(組み合わせ1および2)および対照のプライマー対(組み合わせa−c)を用いた場合の、遺伝子の核酸配列から予測される増幅断片の大きさ(bp)およびPCR反応の結果得られたデータを表2に示す。
【表2】
【0025】
S.diastaticus,BH-302(IFO 1046)... 検出あり
S.diastaticus,BH-227(NCYC 625)... 検出あり
S.diastaticus, BH-64 ... 検出なし
S.diastaticus ... 検出なし
***条件によっては鮮明に検出される場合がある。
上記表2および図2から明らかなように、組み合わせ1および2の本発明のプライマー対を使用した場合、遺伝子配列から推定された通りの核酸配列が増幅され、S.diastaticusを特異的に検出できることがわかった。組み合わせ2の場合、菌種によっては検出できないものもあるが、数種類のS. diastaticusをS. cerevisiaeと区別して検出でき、本発明のプライマー対として使用可能である。
【0026】
対照とした組み合わせa−cのプライマー対を使用した場合は、いずれもS.diastaticusを特異的に検出することは不可能であった。即ち、組み合わせaの場合は強弱の差はあるもののいずれも2本の同じバンドが増幅され、判定が困難である。組み合わせbの場合は、増幅断片の数(SD;1本、SC;2本)により両者の識別は可能であるが、両者が混在する場合におけるSDの検出は困難である。また、組み合わせcの場合は条件によってSCも鮮明に検出される場合があり、S.diastaticusのみを特異的に検出できない。
【0027】
実施例2
S. diastaticusのコロニーより一白金耳とり無菌水に縣濁した。菌数を計測の上、種々希釈水準の菌液1mlを調製し、メンブレンフィルター(直径47mm、孔径0.4μm)で吸引ろ過した。この後直ちにRMDS法の抽出試薬で処理し、Bacterial Genomic DNA Purification Kit(Advanced Genetic Technologies Corp. 製)を用いて操作説明書に準じて上記メンブランフィルター全体からDNAを抽出・調製した。以後、実施例1の方法に準じて組み合わせ1のプライマー対を使用してPCR法を行った。その結果を図3に示す。
【0028】
図3に示される通り、検体1ml中にS. diastaticusが105個または103個のオーダーで存在した場合は勿論のこと101個程度しか存在しない場合でも、868bpの鮮明なバンドにより検出可能であった。
【0029】
実施例3
本法を工場の製品検査に用いることを考えた場合、まず製品から菌体を捕捉・濃縮する必要がある。そこで以下の検討を行った。
【0030】
100mlに対し、計算上1−2個のS. diastaticusを含むような製品ビール100mlをメンブレンフィルター(直径47mm、孔径0.4μm)で吸引ろ過した後、フィルターをプレート培地上にのせ、28℃で24時間培養した。この後、RMDS法を用いて微生物を検出した。なお、対照として通常のプレート培養法で60時間培養したもののコロニー数を目視で計測した。こうして添加量に見合った1−2個前後のマイクロコロニーが輝点として検出されたことを確認した。この方法は原理上、S. diastaticus以外の微生物も検出してしまうため微生物検出の第1段階として使用した。そこで第2段階として、S. diastaticusの特定を行った。すなわち、この分析後のフィルターからBacterial Genomic DNA Purification Kit(Advanced Genetic Technologies Corp. 製)を用いて操作説明書に準じてDNAを抽出・調製し実施例1の方法に準じて組み合わせ1のプライマー対を使用してPCR法により検出した。その結果を図4に示す。
【0031】
図4から明らかなように、図2、3の場合と同様に、868bpの長さのヌクレオチドの増幅がみられ、3輝点、2輝点は勿論、1輝点の場合でも検出できた。すなわち元のビール100ml中にわずか1菌体存在しているだけで検出できることがわかった。
【0032】
実施例4
実施例1−3で得られた結果がS. diastaticusに対し選択的なものかどうかを確かめるため、表3に示すようなS. diastaticusおよびその他の種々菌株について比較検討した。これらは食品(ビール)などから分離された出願人の保存する菌株や菌株保存機関より分譲を受けた菌株である。方法は実施例1に示したものと同様であり、組み合わせ1のプライマー対を使用した。結果を表3に示す。表3において、868bpの長さのヌクレオチドの増幅がみられたものは+、増幅がみられなかったものは−と表示した。調べたS. diastaticusについてはすべて868bpの長さのヌクレオチドの増幅が認められるが、その他の微生物については増幅が認められないことからS. diastaticusを容易に識別し、選択的に検出できることがわかった。
【0033】
【表3】
実施例5
プライマーとしての機能を果たしうる最小限の長さを求めるため、組み合わせ1のプライマー、SD−5AおよびSD−6Bの3’末端を含む種々の長さのオリゴヌクレオチドを合成し、それを用いて実施例1の方法に準じてPCR法を実施した。その結果、いずれのプライマーでも最低9塩基が連なっている場合に検出できた。
【0034】
【発明の効果】
本発明では、S. diastaticusの検出において高い感度が得られ、複数のプライマーで反応が規定されることによる高い選択性を得ることができ、S. cerevisiaeと容易に識別することが可能である。また、高い検出感度のため多量の検体を必要とせず、しかも検体の前処理が簡便で済む。その上、本発明によれば、反応時間が短く、大掛かりな装置を必要とせず、操作も容易なため、菌種識別までの時間を大幅に短縮できる。例えば実施例3の場合、PCR反応時間が約2.7時間、検出にかかる時間が約1.5時間である。また、S. diastaticusの検出にアガロースゲル電気泳動またはポリアクリルアミドゲル電気泳動と臭化エチジウムまたはSYBRグリーンによる核酸染色法を用いることで、プライマー等に標識せずに検出を行うことができる。しかも、核酸の長さが確認できるので、結果の信頼性が高いものとなる。さらに、RMDS法と組み合わせることにより、より高い検出精度が期待でき、100ml中に1細胞しか存在しない検体でも2日以内に検出を行うことが可能である。
【配列表】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、S. diastaticusおよびS.cerevisiaeのグルコアミラーゼ遺伝子の遺伝子構造を示す。
【図2】 図2は、実施例1,組み合わせ1の場合のアガロースゲル電気泳動の写真であり、レーンM:DNAサイズマーカー(pHY Marker 、宝酒造(株)製)、N:ネガティブコントロール、1:S. diastaticusの抽出DNAである。
【図3】 図3は、実施例2のアガロースゲル電気泳動の写真であり、レーンM:DNAサイズマーカー(ΦX174/HincII消化物)、N:ネガティブコントロール(菌数0)、P:ポジティブコントロール、1:S. diastaticusの菌数105個、2が同菌数103個、3が同菌数101個の検体である。
【図4】 図4は、実施例3のアガロースゲル電気泳動の写真であり、レーンM:DNAサイズマーカー(pHY Marker、宝酒造(株))、P:ポジティブコントロール、3、4、7、8:S. diastaticusの1輝点検体、1、2、6、9、10:同2輝点検体、5:同3輝点検体である。
Claims (7)
- Saccharomyces diastaticusのグルコアミラーゼ遺伝子(STA1)において、S. cerevisiaeのもつヌクレオチド配列S1およびS2の少なくとも一方ときわめて相同性の高い配列を含む領域から選択した以下の塩基配列:
5 ' −CAACTACGACTTCTGTCATA−3 ' または
5 ' −CCATCTTCAACTCCATTCAGCTCTG−3 '
を有するオリゴヌクレオチドと、S. cerevisiaeのグルコアミラーゼ遺伝子SGAのヌクレオチド配列ときわめて相同性の高い配列を含む領域から選択した以下の塩基配列:
5 ' −GATGGTGACGCAATCACGA−3 '
を有するオリゴヌクレオチドとの組み合わせからなり、試料中にS. diastaticusの遺伝子が存在する場合には遺伝子増幅反応により特異的増幅反応産物を与えるが該試料中に同時にS.cerevisiaeの遺伝子が存在してもS.cerevisiaeの遺伝子の増幅反応を与えないことを特徴とする、S. diastaticusの検出のための遺伝子増幅用プライマー。 - S1およびS2の少なくとも一方ときわめて相同性の高い配列を含む領域に由来するオリゴヌクレオチドが、以下の塩基配列:
5'−CAACTACGACTTCTGTCATA−3'
を有する、請求項1に記載のプライマー。 - S1およびS2の少なくとも一方ときわめて相同性の高い配列を含む領域に由来するオリゴヌクレオチドが、以下の塩基配列:
5'−CCATCTTCAACTCCATTCAGCTCTG−3'
を有する、請求項1に記載のプライマー。 - 請求項1、2または3に記載のプライマーを用いて試料中のDNAの増幅反応を行い、プライマーの対に挟まれたS. diastaticusグルコアミラーゼ遺伝子領域とほぼ同じ長さの増幅産物を与える場合、該試料中にS. diastaticusが存在するとする、S. diastaticusの検出方法。
- 試料中に含まれる可能性のあるS. diastaticusの細胞を支持体に捕捉し、こうして捕捉された細胞からDNAを抽出し、抽出されたDNAの増幅反応を行うことを特徴とする、請求項4に記載の検出方法。
- 試料がビールであることを特徴とする、請求項4または5に記載の検出方法。
- 試料中のDNAの増幅反応がPCR反応である、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の検出方法。
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