以下、本発明に係る第1〜第4の非水電解質二次電池を詳細に説明する。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池は、正極集電体及び前記正極集電体に担持される正極層を含む正極と、負極集電体及び前記負極集電体に担持される負極層を含む負極と、前記正極層及び前記負極層の間に配置されるセパレータとを含む電極群;
前記電極群に保持される非水電解質;及び
前記電極群が収納され、厚さが0.3mm以下の外装材Aか、もしくは樹脂層を含む厚さが0.5mm以下のシート製外装材B;
を具備する。
この二次電池において、前記正極、前記負極及び前記セパレータは一体化されている。また、前記負極層と前記セパレータの剥離強度は、前記負極層と前記負極集電体の剥離強度に比べて低い。
以下、正極、負極、セパレータ、非水電解質及び外装材について説明する。
(1)負極
この負極は、負極集電体と、前記負極集電体の片面もしくは両面に担持され、負極材料及び結着剤を含む負極層とを有する。
前記負極材料には、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物が好ましい。前記炭素質物としては、(I)黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素、粒状炭素などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料や、(II)熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェースピッチ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、気相成長系炭素繊維、メソフェーズ小球体などに500〜3000℃で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料または炭素質材料等を挙げることができる。熱処理が施された炭素質物のうち好ましいのは、メソフェーズピッチ系炭素繊維の黒鉛質材料または炭素質材料、メソフェーズ小球体の黒鉛質材料または炭素質材料、粒状の黒鉛質材料である。かかる炭素質物のうち、以下に説明する炭素質物a及び炭素質物bが好ましい。
炭素質物aは、熱処理の温度を2000℃以上にすることにより得られ、(002)面の面間隔doo2が0.34nm以下である黒鉛結晶を有する黒鉛質材料である。この黒鉛質材料の形状は、粒状にすることが好ましい。この炭素質物aを含む負極を備えた非水電解質二次電池は、電池容量および大電流特性を大幅に向上することができる。面間隔doo2は、0.336nm以下であることが更に好ましい。
炭素質物bは、2000℃以上で熱処理が施された繊維状黒鉛質材料及び2000℃以上で熱処理が施された球状黒鉛質材料から選ばれる1種以上である。中でも、メソフェーズピッチ系炭素繊維の黒鉛質材料や、カーボンウィスカのような気相成長系炭素繊維、メソフェーズ小球体の黒鉛質材料が好ましい。この炭素質物bを含む負極は、密度を1.3g/cm3以上と高くした際にも負極とセパレータ間の界面インピーダンスを小さくすることができるため、二次電池の大電流放電特性及び急速充放電サイクル性能を向上させることができる。
前記炭素質物の形状は、例えば、繊維状、球状、粒状にすることができる。前記負極層が、繊維状炭素質物、球状炭素質物及び粒状炭素質物よりなる群から選ばれる1種類以上の炭素質物を含むことによって、長期間に亘って負極の界面抵抗を低い値に維持することができるため、充放電サイクル寿命を向上することができる。
前記繊維状炭素質物の平均繊維長は、5〜200μmの範囲にすることが好ましい。さらに好ましい範囲は、10〜50μmである。
前記繊維状炭素質物の平均繊維径は、0.1〜20μmの範囲にすることが好ましい。さらに好ましい範囲は、1〜15μmである。
前記繊維状炭素質物の平均アスペクト比は、1.5〜200の範囲内にすることが好ましい。さらに好ましい範囲は、1.5〜50である。但し、アスペクト比は、繊維径に対する繊維長(繊維長/繊維径)の比である。
前記球状炭素質物の平均粒径は、1〜100μmの範囲内にすることが好ましい。より好ましい範囲は、2〜40μmである。
前記球状炭素質物の長径(major radius)に対する短径(minor radius)の比(短径/長径)は、1/10以上にすることが好ましい。より好ましい範囲は、1/2以上である。
前記粒状炭素質物とは、長径(major radius)に対する短径(minor radius)の比(短径/長径)が1/100〜1の範囲内にある形状を有する炭素質物粉末を意味する。前記比のより好ましい範囲は、1/10〜1である。
前記粒状炭素質物の平均粒径は、1〜100μmの範囲内にすることが好ましい。より好ましい範囲は、2〜50μmである。
前記結着剤は、負極材料同士を結着する機能並びに負極材料と負極集電体を結着する機能を有する。かかる結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。後述する加熱成形法により正極、負極及びセパレータを一体化させる際には、前記結着剤として熱硬化性樹脂を使用することが望ましく、特に好ましいのはPVdFである。
炭素質物及び結着剤の配合割合は、炭素質物90〜98重量%、結着剤2〜20重量%の範囲であることが好ましい。特に、負極中の炭素質物の含有量は、片面で10〜80g/m2の範囲にすることが好ましい。また、充填密度は1.2〜1.50g/cm3の範囲であることが望ましい。
前記負極層の厚さは、10〜150μmの範囲であることが望ましい。ここで、負極層の厚さとは、セパレータと対向する負極層表面と集電体と接する負極層表面との距離を意味する。なお、負極集電体の両面に負極層が担持されている場合、負極層の片面の厚さを10〜150μmにし、かつ負極層の合計厚さを20〜300μmの範囲にすることが望ましい。負極層の厚さのより好ましい範囲は30〜100μmである。負極層の厚さを30〜100μmの範囲内にすることによって、大電流放電特性及びサイクル寿命を大幅に向上させることができる。
集電体としては、多孔質構造の導電性基板か、あるいは無孔の導電性基板を用いることができる。これら導電性基板は、例えば、銅、ステンレス、またはニッケルから形成することができる。集電体の厚さは5〜20μmであることが望ましい。この範囲であると電極強度と軽量化のバランスが取れるからである。
負極層と負極集電体との剥離強度及び負極層とセパレータとの剥離強度は、180度剥離強度法により測定される。負極層と負極集電体との剥離強度を180度剥離強度法により測定する際の原理を図1及び図2を参照して説明する。まず、二次電池を分解し、負極集電体Cに負極層Lが担持された積層物を取り出す。この積層物は、非水電解質を保持したままで良い。この積層物を支持台1上に集電体側を下にして載置する。次いで、前記負極層Lの表面に固定点2を設け、その固定点2に紐のなどの牽引治具3を取り付ける。この牽引治具3を図1の矢印で示す方向、つまり負極層L表面に平行な方向に引き、図2に示すように負極集電体Cから負極層Lを剥離させる。負極層を剥離させるために必要な力は、剥離し始めの際には変動し、この力が一定になった時点での牽引力を負極層と負極集電体との剥離強度とする。
一方、負極層とセパレータとの剥離強度を180度剥離強度法により測定する際の原理を説明する。まず、二次電池を分解し、負極集電体、負極層及びセパレータがこの順番に積層された積層物を取り出す。この積層物は、非水電解質を保持したままで良い。この積層物を支持台上に集電体側を下にして載置する。次いで、前記セパレータの表面に固定点を設け、その固定点に牽引治具を取り付ける。この牽引治具をセパレータ表面に平行な方向に引き、負極層からセパレータを剥離させる。セパレータを剥離させるために必要な力は、剥離し始めの際には変動し、この力が一定になった時点での牽引力を負極層とセパレータとの剥離強度とする。
また、二次電池を分解して取り出された電極群について、負極層とセパレータとの剥離強度が負極層と負極集電体との剥離強度に比べて小さくなっているものは、二次電池に組み込まれる前の非水電解質未保持の電極群においても、負極層とセパレータとの180度剥離強度法による剥離強度が負極層と負極集電体との180度剥離強度法による剥離強度に比べて小さくなっている。
負極層と負極集電体との剥離強度は、10gf/cm以上、20gf/cm以下であることが望ましい。この範囲内にすることによって、充放電サイクルの繰り返しにより負極層が負極集電体から剥離するのを抑制することができるため、充放電サイクル寿命をさらに向上することができる。
負極層とセパレータとの剥離強度は、10gf/cm以下であることが望ましい。剥離強度が10gf/cmを超えると、負極とセパレータとの界面抵抗が大きくなって優れた大電流放電特性とサイクル寿命とが得られ難くなる。剥離強度は、5gf/cm以下が好ましく、さらに好ましい範囲は2gf/cm以下である。なお、負極とセパレータが一体化されていないと、剥離強度が0gf/cmになる。
前記負極材料には、前述したリチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物の他に、金属酸化物か、金属硫化物か、もしくは金属窒化物や、リチウム金属またはリチウム合金を用いることができる。
金属酸化物としては、例えば、スズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物等を挙げることができる。
金属硫化物としては、例えば、スズ硫化物、チタン硫化物等を挙げることができる。
金属窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等を挙げることができる。
リチウム合金としては、例えば、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。
負極の面積は、正極の面積より大きいことが望ましい。そのような構成にすることによって、負極の端部を正極の端部に比べて延出させることができるため、負極端部への電流集中を緩和することができ、二次電池のサイクル性能と安全性を向上することができる。
(2)正極
この正極は、正極集電体と、前記正極集電体片面もしくは両面に担持され、活物質及び結着剤を含む正極層とを有する。
前記正極活物質としては、種々の酸化物、例えば二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物、リチウム含有鉄酸化物、リチウムを含むバナジウム酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などを挙げることができる。中でも、リチウム含有コバルト酸化物(例えば、LiCoO2)、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.2O2)、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn2O4,LiMnO2)を用いると、高電圧が得られるために好ましい。
前記結着剤は、正極活物質同士を結着する機能並びに正極活物質と正極集電体を結着する機能を有する。かかる結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。後述する加熱成形法により正極、負極及びセパレータを一体化させる際には、前記結着剤として熱硬化性樹脂を使用することが望ましく、特に好ましいのはPVdFである。
前記正極層は、さらに導電剤を含んでいてもよい。かかる導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
前記正極層の厚さは、10〜150μmの範囲であることが望ましい。ここで、正極層の厚さとは、セパレータと対向する正極層表面と集電体と接する正極層表面との距離を意味する。なお、正極集電体の両面に正極層が担持されている場合、正極層の片面の厚さを10〜150μmにし、かつ正極活物質層の合計厚さを20〜300μmの範囲にすることが望ましい。正極層の厚さのより好ましい範囲は30〜100μmである。正極層の厚さを30〜100μmの範囲内にすることによって、大電流放電特性及びサイクル寿命を大幅に向上させることができる。
集電体としては、多孔質構造の導電性基板が、あるいは無孔の導電性基板を用いることができる。これら導電性基板は、例えば、アルミニウム、ステンレス、またはニッケルから形成することができる。集電体の厚さは5〜20μmであることが望ましい。この範囲であると電極強度と軽量化のバランスがとれるからである。
前記集電体には、直径3mm以下の孔が10cm2あたり1個以上の割合で存在する二次元的な多孔質構造を有する導電性基板を用いることが望ましい。すなわち、導電性基板に開孔された孔の直径が3mmよりも大きくなると、十分な正極強度が得られなくなる恐れがある。一方、直径3mm以下の孔の存在割合が前記範囲よりも少なくなると、電極群に非水電解質を均一に浸透させることが困難になるため、十分なサイクル寿命が得られなくなる恐れがある。孔の直径は0.1〜1mmの範囲にすることがより好ましい。また孔の存在割合は10cm2あたり10個〜20個の範囲にすることがより好ましい。
前述した直径3mm以下の孔が10cm2あたり1個以上の割合で存在する二次元的な多孔質構造を有する導電性基板は、厚さを15〜100μmの範囲にすることが望ましい。厚さを15μm未満にすると十分な正極強度が得られなくなる恐れがある。厚さのより好ましい範囲は30〜80μmである。
正極層とセパレータの剥離強度は、正極層と正極集電体の剥離強度に比べて低くすることが好ましい。正極層とセパレータの剥離強度が正極層と正極集電体の剥離強度と同等か、もしくはそれ以上であると、正極とセパレータの界面のインピーダンスが増加して優れたサイクル寿命と大電流放電特性を得られなくなる恐れがある。
正極層と正極集電体との剥離強度及び正極層とセパレータとの剥離強度は、180度剥離強度法により測定される。測定原理を説明する。正極層と正極集電体との剥離強度を測定するには、まず、二次電池を分解し、正極集電体に正極層が担持された積層物を取り出す。この積層物は、非水電解質を保持したままで良い。この積層物を支持台上に集電体側を下にして載置する。次いで、前記正極層の表面に固定点を設け、その固定点に紐のなどの牽引治具を取り付ける。この牽引治具を正極層表面に平行な方向に引き、正極集電体から正極層を剥離させる。正極層を剥離させるために必要な力は、剥離し始めの際には変動し、この力が一定になった時点での牽引力を正極層と正極集電体との剥離強度とする。
一方、正極層とセパレータとの剥離強度を180度剥離強度法により測定する際には、まず、二次電池を分解し、正極集電体、正極層及びセパレータがこの順番に積層された積層物を取り出す。この積層物は、非水電解質を保持したままで良い。この積層物を支持台上に集電体側を下にして載置する。次いで、前記セパレータの表面に固定点を設け、その固定点に牽引治具を取り付ける。この牽引治具をセパレータ表面に平行な方向に引き、正極層からセパレータを剥離させる。セパレータを剥離させるために必要な力は、剥離し始めの際には変動し、この力が一定になった時点での牽引力を正極層とセパレータとの剥離強度とする。
また、二次電池を分解して取り出された電極群について、正極層とセパレータとの剥離強度が正極層と正極集電体との剥離強度に比べて小さくなっているものは、二次電池に組み込まれる前の非水電解質未保持の電極群においても、正極層とセパレータとの180度剥離強度法による剥離強度が正極層と正極集電体との180度剥離強度法による剥離強度に比べて小さくなっている。
正極層と正極集電体との剥離強度は、10gf/cm以上、20gf/cm以下であることが望ましい。この範囲内にすることによって、充放電サイクルの繰り返しにより正極層が正極集電体から剥離するのを抑制することができるため、充放電サイクル寿命をさらに向上することができる。
正極層とセパレータとの剥離強度は、10gf/cm以下であることが望ましい。剥離強度が10gf/cmを超えると、正極とセパレータとの界面抵抗が大きくなって優れた大電流放電特性とサイクル寿命とが得られ難くなる。剥離強度は、5gf/cm以下が好ましく、さらに好ましい範囲は2gf/cm以下である。なお、正極とセパレータが一体化されていないと、剥離強度が0gf/cmになる。
(3)セパレータ
セパレータには多孔質セパレータを用いる。
多孔質セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレンか、あるいはポリプロピレン、または両者からなる多孔質フィルムは、二次電池の安全性を向上できるため、好ましい。
セパレータの厚さは、30μm以下にすることが好ましい。厚さが30μmを越えると、正負極間の距離が大きくなって内部抵抗が大きくなる恐れがある。また、厚さの下限値は、5μmにすることが好ましい。厚さを5μm未満にすると、セパレータの強度が著しく低下して内部ショートが生じやすくなる恐れがある。厚さの上限値は、25μmにすることがより好ましく、また、下限値は10μmにすることがより好ましい。
セパレータは、120℃の条件で1時間の存在したときの熱収縮率が20%以下であることが好ましい。熱収縮率が20%を超えると、正負極およびセパレータの密着強度を十分なものにすることが困難になる恐れがある。熱収縮率は、15%以下にすることがより好ましい。
セパレータは、多孔度が30〜70%の範囲であることが好ましい。これは次のような理由によるものである。多孔度を30%未満にすると、セパレータにおいて高い電解質保持性を得ることが困難になる恐れがある。一方、多孔度が70%を超えると、十分なセパレータ強度を得られなくなる恐れがある。多孔度のより好ましい範囲は、35〜70%である。
前記セパレータは、空気透過率が500秒/100cm3 以下であることが好ましい。空気透過率は、100cm3の空気が多孔質シートを透過するのに要した時間(秒)を意味する。空気透過率が500秒/100cm3 を越えると、セパレータにおいて高いリチウムイオン移動度を得ることが困難になる恐れがある。また、空気透過率の下限値は、30秒/100cm3 にすることが好ましい。空気透過率を30秒/100cm3 未満にすると、十分なセパレータ強度を得られなくなる恐れがあるからである。空気透過率の上限値は150秒/100cm3 にすることがより好ましい。また、下限値は50秒/100cm3 にすることがより好ましい。
後述するように接着性を有する高分子を使用して正極、負極及びセパレータの一体化を行う際、セパレータの短手方向に沿う端部は、負極の短手方向に沿う端部に比べて0.25mm〜2mm延出し、かつ延出したセパレータ端部に接着性を有する高分子が存在していることが望ましい。このような構成にすることによって、セパレータ端部の強度を向上させることができるため、電池に衝撃が加わった際に内部短絡が生じるのを抑制することができる。さらに、電池を100℃以上の高温環境下で使用した際に、セパレータが熱収縮するのを抑制することができるため、内部短絡を抑制することができ、安全性を向上することができる。
(4)非水電解質
この非水電解質は、少なくともセパレータに保持される。特に、非水電解質は、電極群全体に分散されていることが好ましい。この非水電解質としては、電解質が溶解された非水溶媒(以下、非水溶液と称す)からなる液状非水電解質、前記非水溶液が保持された高分子材料、または固体非水電解質を用いることができる。前記非水溶液が保持された高分子材料としては、前記非水溶液がゲル化しているゲル状非水電解質、前記非水溶液が一部がゲル化し、残りが液状のままであるもの、前記非水溶液が液状のまま保持されているものなどを挙げることができる。中でも、液状非水電解質を用いることが好ましい。液状非水電解質は、電極群のイオン伝導度を高くすることができるため、正極とセパレータの界面抵抗並びに負極とセパレータの界面抵抗を小さくすることができる。
前記非水溶液が保持された高分子材料は、例えば、前記非水溶液、高分子及びゲル化剤を混合した後、加熱処理を施してゲル化させることにより調製される。
前記高分子としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリアクリレート(PMMA)から選ばれる少なくとも1種類の高分子を用いることができる。
非水溶媒としては、リチウムイオン二次電池の溶媒として公知の非水溶媒を用いることができ、特に限定はされないが、プロピレンカーボネート(PC)及びエチレンカーボネート(EC)よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の第1溶媒と、PC及びECに比べて低粘度な第2溶媒との混合溶媒を主体とする非水溶媒を用いることが好ましい。特に、第2溶媒は、ドナー数が16.5以下であることがより好ましい。
第2溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン(BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)などが挙げられる。これらの第2溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で用いることができる。
混合溶媒中の第1溶媒の配合量は、体積比率で10〜80%であることが好ましい、より好ましい第1溶媒の配合量は体積比率で20〜75%である。
前記電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミトリチウム[LiN(CF3SO2)2]などのリチウム塩が挙げられる。中でもLiPF6、LiBF4を用いるのが好ましい。
電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2.0モル/1とすることが望ましい。
特に好ましい非水溶液は、γ−ブチロラクトン(BL)を含む混合非水溶媒に電解質(例えば、リチウム塩)を溶解したもので、かつBLの組成比率が混合非水溶媒全体の20体積%以上、80体積%以下のものである。前記混合非水溶媒では、BLの組成比率を最も多くすることが好ましい。比率が20体積%未満であると、高温時にガスが発生し易くなる。また、混合非水溶媒がBL及び環状カーボネートを含むものである場合、環状カーボネートの比率が相対的に高くなるため、溶媒粘度が著しく高くなる恐れがある。溶媒粘度が上昇すると、非水電解質の導電率及び浸透性が低下するため、充放電サイクル特性、大電流放電特性及び−20℃付近の低温環境下での放電特性が低下する。一方、比率が80体積%を越えると、負極とBLとの反応が生じやすくなるため、充放電サイクル特性が低下する恐れがある。すなわち、負極(例えば、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物を含むもの)とBLとが反応して非水電解質の還元分解が生じると、負極の表面に充放電反応を阻害する被膜が形成される。その結果、負極において電流集中が生じやすくなるため、負極表面にリチウム金属が析出したり、あるいは負極界面のインピーダンスが高くなり、負極の充放電効率が低下し、充放電サイクル特性の低下を招く。より好ましい範囲は、40体積%以上、75体積%以下である。この範囲にすることによって、高温貯蔵時のガス発生を抑制する効果をより高くすることができると共に、−20℃付近の低温環境下での放電容量をより向上することができる。
BLと混合される溶媒としては、環状カーボネートが負極の充放電効率を高める点で望ましい。
前記環状カーボネートとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、トリフロロプロピレンカーボネート(TFPC)等が望ましい。特に、BLと混合される溶媒としてECを用いると、充放電サイクル特性と大電流放電特性を大幅に向上することができる。また、BLと混合する他の溶媒としては、PC、VC、TFPC、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)及び芳香族化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる第3溶媒とECとの混合溶媒であると、充放電サイクル特性を高める点で望ましい。
さらに溶媒粘度を低下させる観点から低粘度溶媒を20体積%以下含んでもよい。低粘度溶媒としては例えば鎖状カーボネート、鎖状エーテル、環状エーテル等が挙げられる。
本発明に係る非水溶媒のより好ましい組成は、BLとEC、BLとPC、BLとECとDEC、BLとECとMEC、BLとECとMECとVC、BLとECとVC、BLとPCとVC、あるいはBLとECとPCとVCである。このとき、ECの体積比率は5〜40体積%とすることが好ましい。これは次のような理由によるものである。ECの比率を5体積%未満にすると、負極表面を保護膜で緻密に覆うことが困難になる恐れがあるため、負極とBLとの反応が生じ、充放電サイクル特性を十分に改善することが困難になる可能性がある。一方、ECの比率が40体積%を超えると、非水溶液の粘度が高くなってイオン伝導度が低下する恐れがあるため、充放電サイクル特性、大電流放電特性及び低温放電特性を十分に改善することが困難になる可能性がある。ECの比率の更に好ましい範囲は、10〜35体積%である。また、DEC、MEC及びVCから選ばれる少なくとも1種類からなる溶媒の比率は、0.01〜10体積%の範囲内にすることが好ましい。
前記電解質としては、前述したのと同様なものを挙げることができる。中でも、LiPF6 かあるいはLiBF4 を用いるのが好ましい。
前記電解質の前記非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2.0モル/lとすることが望ましい。
非水溶液の20℃における粘度は、3cp〜20cpの範囲内にすることが好ましい。これは次のような理由によるものである。前記粘度を3cp未満にすると、二次電池を高温環境下で貯蔵した際に蒸気圧が上昇するか、あるいはガス発生量が多くなり、外装材が膨張する恐れがある。一方、前記粘度が20cpを超えると、非水溶液の浸透性が低下するため、剥離強度の関係を規定していても内部抵抗が高くなる恐れがある。粘度のより好ましい範囲は、4cp〜15cpである。さらに好ましい範囲は、6〜8cpである。
20℃における粘度が3cp〜20cpの範囲内にある非水溶液の中でも、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(BL)及びジエチルカーボネート(DEC)よりなる群から選ばれる少なくとも1種類からなる溶媒Aと、エチレンカーボネート(EC)とを含む非水溶媒に電解質が溶解されたものを用いることが好ましい。
前記非水溶媒中の溶媒Aの体積比率は、50〜90体積%とすることが好ましい。これは次のような理由によるものである。体積比率が50体積%未満であると、低温放電特性が低下する恐れがあると共に、高温時にガスが発生し易くなる。一方、体積比率が90体積%を越えると、非水電解質の還元分解が生じやすくなる恐れがある。非水電解質の還元分解が生じると、負極の表面に充放電反応を阻害する被膜が形成され、負極において電流集中が生じやすくなるため、負極表面にリチウム金属が析出したり、あるいは負極界面のインピーダンスが高くなり、負極の充放電効率が低下し、充放電サイクル特性の低下を招く。より好ましい範囲は、60体積%以上、80体積%以下である。
前記非水溶媒中のECの体積比率は5〜40体積%とすることが好ましい。これは次のような理由によるものである。ECの比率を5体積%未満にすると、負極表面を保護膜で緻密に覆うことが困難になって非水電解質の還元分解を生じ易くなるため、充放電サイクル特性を十分に改善することが困難になる可能性がある。一方、ECの比率が40体積%を超えると、溶媒Aの比率が相対的に低くなって二次電池を高温貯蔵した際のガス発生量が多くなる恐れがある。ECの比率の更に好ましい範囲は、10〜35体積%である。
また、前記非水溶媒は、さらにビニレンカーボネート(VC)を含むことが好ましい。非水溶媒中のVCの比率は、0.01〜10体積%の範囲内にすることが好ましい。
前記電解質としては、前述したのと同様なものを挙げることができる。中でも、LiPF6 かあるいはLiBF4 を用いるのが好ましい。
前記電解質の前記非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2.0モル/lとすることが望ましい。
前述した各組成を有する液状非水電解質の量は、電池単位容量100mAh当たり0.2〜0.6gにすることが好ましい。これは次のような理由によるものである。液状非水電解質量を0.2g/100mAh未満にすると、正極と負極のイオン伝導度を十分に保つことができなくなる恐れがある。一方、液状非水電解質量が0.6g/100mAhを越えると、電解質が多量になるため、シート製外装材を用いた際に封止が困難になる恐れがある。液状非水電解質量のより好ましい範囲は、0.4〜0.55g/100mAhである。
(5−1)外装材A
この外装材Aは、厚さが0.3mm以下である。
外装材Aには、例えば、例えば、金属缶、または水分を遮断する機能を有するシートを用いることができる。前記金属缶は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムから形成することができる。前記シートとしては、例えば、2種類以上の樹脂層から形成され、片面または両面が熱可塑性樹脂である多層シートa、可撓性を有する金属層の片面または両面に保護層を形成したものからなる多層シートbを挙げることができる。特に、多層シートbは、軽量で、強度が高く、かつ外部から水分が侵入するのを遮断することができるため、望ましい。
前記多層シートbの金属層は、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅、ニッケル等を挙げることができる。中でも、軽量で、水分を遮断する機能が高いアルミニウムが好ましい。前記金属層は、1種類の金属から形成しても良いが、2種類以上の金属層を一体化させたものから形成しても良い。
外装材の内面となる保護層は、ヒートシール面としての機能と、前記金属層が非水電解質により腐食されるのを防止する機能を有する。また、外装材の外面となる保護層は、金属層の損傷を防止する役割をなす。各保護層は、1種類の樹脂層、もしくは2種類以上の樹脂層から形成される。各保護層は、熱可塑性樹脂から形成されることが望ましい。外装材の内面となる保護層を形成する熱可塑性樹脂の融点は、120℃以上にすることが好ましく、更に望ましい範囲は140℃〜250℃の範囲である。前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。特に、融点が150℃以上のポリプロピレンは、ヒートシール部の封止強度を向上することができるため、望ましい。
前記外装材の厚さが0.3mmより厚いと、薄型化の効果が小さい、つまり重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を十分に高くすることが困難になる。前記外装材の厚さは、0.25mm以下にすることが好ましく、更に好ましい範囲は0.2mm以下である。また、厚さが0.05mmより薄いと、変形や破損し易くなる。このため、厚さの下限値は0.05mmにすることが好ましい。
(5−2)外装材B
この外装材Bは、樹脂層を含む厚さが0.5mm以下のシートである。
外装材Bの樹脂層は、例えば、熱可塑性樹脂から形成することができる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
外装材Bとしては、例えば、金属層と、前記金属層の両面に形成された樹脂層とからなる多層シートを挙げることができる。前記金属層には、前述した外装材Aで説明したのと同様なものを挙げることができる。外装材の内面となる樹脂層は、ヒートシール面としての機能と、前記金属層が非水電解質により腐食されるのを防止する機能を有する。また、外装材の外面となる樹脂層は、金属層の損傷を防止する役割をなす。各樹脂層は、1種類の樹脂から形成されていても、あるいは2種類以上の樹脂から形成されていても良い。各樹脂層は、熱可塑性樹脂から形成されることが望ましい。外装材の内面となる樹脂層を形成する熱可塑性樹脂の融点は、120℃以上にすることが好ましく、更に望ましい範囲は140℃〜250℃の範囲である。前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。特に、融点が150℃以上のポリプロピレンは、ヒートシール部の封止強度を向上することができるため、望ましい。
前記外装材Bの厚さが0.5mmを超えると、電池の重量当たりの容量及び電池の体積当りの容量が低下する。外装材Bの厚さは0.3mm以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.25mm以下で、最も好ましくは0.2mm以下である。また、厚さが0.05mmより薄いと、変形や破損し易くなる。このため、厚さの下限値は0.05mmにすることが好ましい。
外装材A,Bの厚さは、以下に説明する方法で測定される。すなわち、外装材A,Bのヒートシール封止部を除く領域において、互いに1cm以上離れて存在する3点を任意に選択し、各点の厚さを測定し、平均値を算出し、この値を外装材の厚さとする。なお、前記外装材の表面に異物(例えば、樹脂)が付着している場合、この異物を除去してから厚さの測定を行う。例えば、前記外装材の表面にPVdFが付着している場合、前記外装材の表面をジメチルホルムアミド溶液で拭き取ることによりPVdFを除去した後、厚さの測定を行う。
外装材A,Bを多層シートから構成する場合、前記電極群がその表面の少なくとも一部に形成された接着層により前記外装材の内面に接着されていることが望ましい。このような構成にすると、前記電極群の表面に前記外装材を固定することができるため、電解液が電極群と外装材の間に浸透するのを抑えることができる。
前記接着層は、後述の接着性を有する高分子と同様の材料を使用することができる。前記接着層は、多孔質構造を有していてもよい。多孔質な接着層は、その空隙に非水電解質を保持することができる。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池は、以下の(1)または(2)に説明する方法により製造される。
(1)加熱成形法
(第1工程)
以下の(a)〜(c)に説明する方法により電極群を作製する。
(a)正極及び負極をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回する。
(b)正極及び負極をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回した後、径方向に圧縮する。
(c)正極及び負極をその間にセパレータを介在させて2回以上折り曲げる。
前記正極は、例えば、正極活物質に導電剤および結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁物を集電体に塗布、乾燥して薄板状にすることにより作製される。前記正極活物質、導電剤、結着剤及び集電体としては、前述した(2)正極の欄で説明したのと同様なものを挙げることができる。
前記負極は、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物と結着剤とを溶媒の存在下で混練し、得られた懸濁物を集電体に塗布し、乾燥した後、所望の圧力で1回プレスもしくは2〜5回多段階プレスすることにより作製される。
前記炭素質物、結着剤及び集電体としては、前述した(1)負極の欄で説明したのと同様なものを挙げることができる。
前記セパレータとしては、前述した(3)セパレータの欄で説明したのと同様なものを用いることができる。
(第2工程)
前記電極群を外装材に収納した後、加熱成形を施す。
加熱成形を行う雰囲気は、真空を含む減圧雰囲気か、あるいは常圧雰囲気にすることが望ましい。
加熱温度は、30℃以上にすることが好ましい。より好ましい範囲は、60〜100℃である。また、減圧雰囲気で、60〜100℃の温度で成形を行うと、成形と同時に電極群の乾燥を行うことができる。
成形は、前記電極群が前記(a)の方法で作製される場合には径方向に、前記電極群が前記(b)または(c)の方法で作製される場合には積層方向に圧縮されるように行うことが望ましい。
成形は、例えば、プレス成形、あるいは成形型への填め込み等により行うことができる。
成形時に加える圧力は、0.01〜20kg/cm2の範囲内にすることが好ましい。圧力が20kg/cm2を超えると、内部短絡を生じ易くなる。さらに好ましい範囲は、0.01〜15kg/cm2である。圧力を0.01〜15kg/cm2の範囲内にすると、一体化を容易に行うことができる。
加熱成形時間は、2秒〜120分の範囲内にすることが好ましい。
電極群に加熱成形を施すと、前記正極及び前記負極に含まれる結着剤を熱硬化させることができるため、前記正極、前記負極及び前記セパレータを一体化させることができる。加熱成形温度、成形圧力及び成形時間を調節することによって、前記正極、前記負極及び前記セパレータを一体化させつつ、セパレータと負極層との剥離強度を、負極層と負極集電体との剥離強度に比べて低くすることができる。
(第3工程)
前記外装材内の電極群に液状の非水電解質を含浸させ、封口処理を施すことにより本発明に係る第1の非水電解質二次電池を得る。
なお、電極群を外装材内に収納せずに加熱成形を施した後、この電極群を外装材内に収納し、前記外装材内の電極群に液状の非水電解質を含浸させ、封口処理を施すことより本発明に係る第1の非水電解質二次電池を得ることができる。
(2)接着性を有する高分子を使用する方法
(第1工程)
正極及び負極の間にセパレータとして多孔質シートを介在させて電極群を作製する。
前記電極群は、前述した加熱成形法で説明したのと同様な方法で作製されることが好ましい。このような方法で作製すると、後述する第2工程において、正極、負極及びセパレータに接着性を有する高分子の溶液を浸透させつつ、正極とセパレータの境界及び負極とセパレータの境界全体に前記溶液が浸透するのを防止することができる。その結果、正極、負極及びセパレータに接着性を有する高分子を点在させることが可能になると共に、正極とセパレータの境界及び負極とセパレータの境界に接着性を有する高分子を点在させることができる。
前記正極及び前記負極は、前述した加熱成形法で説明したのと同様な方法により作製される。前記セパレータの多孔質シートとしては、前述した(3)セパレータの欄で説明したのと同様なものを用いることができる。
(第2工程)
袋状の外装材内に前記電極群を積層面が開口部から見えるように収納する。溶媒に接着性を有する高分子を溶解させることにより得られた溶液を開口部から前記外装材内の電極群に注入し、前記溶液を前記電極群に含浸させる。
前記接着性を有する高分子は、非水電解質を保持した状態で高い接着性を維持できるものであることが望ましい。さらに、かかる高分子は、リチウムイオン伝導性が高いとなお好ましい。具体的には、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、またはポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。特に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)が好ましい。ポリフッ化ビニリデン(PVdF)は、非水電解質を保持することができ、非水電解質を含むと一部ゲル化を生じるため、正極中のイオン伝導性をより向上することができる。
前記溶媒には、沸点が200℃以下の有機溶媒を用いることが望ましい。かかる有機溶媒としは、例えば、ジメチルフォルムアミド(沸点153℃)を挙げることができる。有機溶媒の沸点が200℃を越えると、後述する加熱温度を100℃以下にした際、乾燥時間が長く掛かる恐れがある。また、有機溶媒の沸点の下限値は、50℃にすることが好ましい。有機溶媒の沸点を50℃未満にすると、前記溶液を電極群に注入している間に前記有機溶媒が蒸発してしまう恐れがある。沸点の上限値は、180℃にすることがさらに好ましく、また、沸点の下限値は100℃にすることがさらに好ましい。
前記溶液中の接着性を有する高分子の濃度は、0.05〜2.5重量%の範囲にすることが好ましい。これは次のような理由によるものである。前記濃度を0.05重量%未満にすると、正負極及びセパレータを十分な強度で接着することが困難になる恐れがある。一方、前記濃度が2.5重量%を越えると、非水電解質を保持できるだけの十分な多孔度を得ることが困難になって電極の界面インピーダンスが著しく大きくなる恐れがある。界面インピーダンスが増大すると、容量及び大電流放電特性が大幅に低下する。濃度のより好ましい範囲は、0.1〜1.5重量%である。
前記溶液の注入量は、前記溶液の接着性を有する高分子の濃度が0.05〜2.5重量%である場合、電池容量100mAh当たり0.1〜2mlの範囲にすることが好ましい。これは次のような理由によるものである。前記注入量を0.1ml未満にすると、正極、負極及びセパレータの密着性を十分に高めることが困難になる恐れがある。一方、前記注入量が2mlを越えると、二次電池のリチウムイオン伝導度の低下や、内部抵抗の上昇を招く恐れがあり、放電容量、大電流放電特性及び充放電サイクル特性を改善することが困難になる恐れがある。前記注入量のより好ましい範囲は、電池容量100mAh当たり0.15〜1mlである。
(第3工程)
加熱成形を施す。
加熱成形を行う雰囲気は、真空を含む減圧雰囲気か、あるいは常圧雰囲気にすることが望ましい。
加熱温度は、30℃以上にすることが好ましい。より好ましい範囲は、60〜100℃である。また、減圧雰囲気で、60〜100℃の温度で成形を行うと、成形と同時に電極群の乾燥を行うことができる。
成形は、前記電極群が前記(a)の方法で作製される場合には径方向に、前記電極群が前記(b)または(c)の方法で作製される場合には積層方向に圧縮されるように行うことが望ましい。
成形は、例えば、プレス成形、あるいは成形型への填め込み等により行うことができる。
成形時に加える圧力は、0.01〜20kg/cm2の範囲内にすることが好ましい。さらに好ましい範囲は、0.01〜15kg/cm2である。
加熱成形時間は、2秒〜120分の範囲内にすることが好ましい。
電極群に加熱成形を施すことによって、前記溶媒を蒸発させることができ、前記正極、前記負極及び前記セパレータを一体化させることができる。この加熱成形の際、接着性高分子量、加熱温度、成形時の圧力及び加熱成形時間を調節することによって、前記正極、前記負極及び前記セパレータを一体化させつつ、セパレータと負極層との剥離強度を、負極層と負極集電体との剥離強度に比べて低くすることができる。
(第4工程)
前記外装材内の電極群に液状の非水電解質を含浸させ、封口処理を施すことにより本発明に係る第1の非水電解質二次電池を得る。
また、電極群を外装材に収納する前に、電極群に接着性を有する高分子が溶解された溶液を含浸させ、この電極群に加熱成形を施した後、このような電極群を外装材に収納し、非水電解質を注入し、封口等を行うことにより本発明に係る第1の非水電解質二次電池を得ることができる。さらに、電極群の外周面に接着剤を塗布してから、電極群を外装材内に収納してもよい。それにより外装材の内面に電極群を接着することができる。
接着性高分子を使用する方法により電池を製造する場合、前記電池に含まれる接着性を有する高分子の総量(後述する接着部に含有されるものを含む)は、電池容量100mAh当たり0.1〜6mgにすることが好ましい。これは次のような理由によるものである。接着性を有する高分子の総量を電池容量100mAh当たり0.1mg未満にすると、正極、セパレータ及び負極の密着性を十分に向上させることが困難になる恐れがある。一方、前記総量が電池容量100mAh当たり6mgを越えると、二次電池のリチウムイオン伝導度の低下や、内部抵抗の上昇を招く恐れがあり、放電容量、大電流放電特性及び充放電サイクル特性を改善することが困難になる恐れがある。接着性を有する高分子の総量のより好ましい範囲は、電池容量100mAh当たり0.2〜1mgである。
接着性高分子を使用する方法により電池を製造する場合、接着性を有する高分子は、正極層、セパレータ、あるいは負極層の空隙に保持されていることが望ましい。また、接着性を有する高分子は、電極群中に点在していると、電池の内部抵抗を減少させることができるため、好ましい。
前記接着性を有する高分子は、正極、負極、セパレータの空隙内において微細な孔を有する多孔質構造をとることが好ましい。多孔質構造を有する接着性を有する高分子は、非水電解質を多く保持することができる。さらに電極群中に均一に分散し点在していることが望ましい。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池の一例である薄型リチウムイオン二次電池を図3〜図4を参照して説明する。図3は本発明に係わる第1の非水電解質二次電池の一例である薄型リチウムイオン二次電池を示す断面図、図4は図3のA部を示す拡大断面図である。
図3に示すように、例えば多層シートからなる外装材4内には、電極群5が収納されている。電極群5は、正極、セパレータ及び負極からなる積層物が偏平形状に捲回された構造を有する。前記積層物は、図4の下側から、セパレータ6、正極層7と正極集電体8と正極層7を備えた正極9、セパレータ6、負極層10と負極集電体11と負極層10を備えた負極12、セパレータ6、正極層7と正極集電体8と正極層7を備えた正極9、セパレータ6、負極層10と負極集電体11を備えた負極12がこの順番に積層された構造を有する。前記電極群5の最外周は、負極集電体11が位置している。接着層13は、前記電極群5の表面と前記外装材4の内面の間に配置されている。非水電解質は、外装材4内に収容されている。帯状の正極リード14は、一端が電極群5の正極集電体8に接続され、かつ他端が外装材4から延出されている。一方、帯状の負極リード15は、一端が電極群5の負極集電体11に接続され、かつ他端が外装材4から延出されている。
なお、前述した図3においては、電極群5の表面全体に接着層13を形成したが、電極群5の一部に接着層13を形成しても良い。電極群5の一部に接着層13を形成する場合、少なくとも電極群の最外周に相当する面に形成することが好ましい。また、接着層13はなくても良い。
また、前述した図3においては、複数の正極及び負極を含む積層物を渦巻き状に捲回した後、径方向に圧縮した構造を有する電極群を用いる例を説明したが、図5に示すように1枚の正極16及び1枚の負極17をその間にセパレータ18を介して渦巻き状に捲回した後、径方向に圧縮した構造を有する電極群を用いても良い。
前述した図3においては、正極及び負極をその間にセパレータを介して渦巻き状に捲回した後、径方向に圧縮した構造を有する電極群を用いる例を説明したが、正極及び負極をセパレータを介して折り曲げた構造を有する電極群を用いても良い。この一例を図6に示す。図6に示すように、電極群は、正極19及び負極20をその間にセパレータ21を介し、負極20同士が接するように複数回(例えば5回)折り曲げた構造を有する。電極群の構造を折り曲げ構造にすることによって、電極群の製造を簡素化することができると共に、電極群の機械的強度を向上することができる。
前述した図3においては、正極及び負極をその間にセパレータを介して渦巻き状に捲回した後、径方向に圧縮した構造を有する電極群を用いる例を説明したが、図7に示すように、複数の正極22及び複数の負極23を用意し、正極22と負極23をその間にセパレータ24を介在させながら交互に積層することにより作製した電極群を用いても良い。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池は、正極と、負極集電体及び前記負極集電体に担持される負極層を含む負極と、前記正極及び前記負極層の間に配置されるセパレータとを含む電極群;前記電極群に保持される非水電解質;及び前記電極群が収納される外装材;を具備する。前記正極、前記負極及び前記セパレータは一体化されている。また、前記負極層と前記セパレータの剥離強度は、前記負極層と前記負極集電体の剥離強度に比べて低い。
非水電解質二次電池においては、電池重量当たりのエネルギー密度及び体積当りのエネルギー密度を向上させることが要望されている。このため、外装材として、厚さが0.3mm以下の外装材Aか、樹脂層を含む厚さが0.5mm以下のシート製の外装材Bを用いる必要がある。しかしながら、外装材A,Bは、可撓性(flexibility)を有するため、充放電反応の際、充放電反応に伴う電極群の膨張収縮に追従して変形を生じる。
前記負極層と前記セパレータの剥離強度を、前記負極層と前記負極集電体の剥離強度と同等にするか、もしくはそれ以上にすると、充放電反応の進行に伴って電極群の膨張・収縮が繰り返された際に、相対的に剥離強度が低い、つまり相対的な密着強度が低い負極層と負極集電体の密着性が低下する。また、負極層とセパレータとの密着強度にむらが生じる。その結果、負極とセパレータの界面インピーダンスが高くなり、充放電反応の際に負極において電流集中が生じるため、負極にリチウムデンドライトが析出し、充放電サイクル寿命が低下する。
前記負極層と前記セパレータの剥離強度を、前記負極層と前記負極集電体の剥離強度に比べて低くすることによって、充放電反応の進行に伴って電極群の膨張・収縮が繰り返された際に、負極層と負極集電体との密着性が低下するのを抑制することができる。また、負極層とセパレータとの密着強度を均等にすることができる。その結果、負極とセパレータの界面インピーダンスを低くすることができるため、充放電反応の際に負極において電流集中が生じるのを回避することができる。従って、高い重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を確保しつつ、負極にリチウムデンドライトが生じるのを抑制することができるために二次電池の充放電サイクル寿命を向上することができると共に、二次電池の大電流放電特性を改善することができる。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池において、外装材Aを用いることによって、重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度をさらに向上することができる。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池において、負極層とセパレータの剥離強度を10gf/cm以下にすることによって、負極とセパレータの界面抵抗をさらに低くすることができるため、二次電池の大電流放電特性及びサイクル寿命をより一層向上することができる。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池において、負極層と負極集電体の剥離強度を10gf/cm以上、20gf/cm以下にすることによって、負極とセパレータの界面抵抗を低く抑えつつ、負極層と負極集電体との密着強度を高くすることができるため、二次電池の大電流放電特性及びサイクル寿命をより一層向上することができる。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池において、非水電解質として電解質が溶解された非水溶媒からなる20℃における粘度が3cp〜20cpである溶液を含むものを用いることによって、大電流放電特性及びサイクル寿命を向上させることができる他に、高温環境下で使用した際の安全性を向上することができる。
すなわち、20℃の粘度が3cp〜20cpの溶液は、高粘度であるため、二次電池を高温環境下に保管した際のガス発生を抑制できるものの、電極群への浸透性が低い。前記負極層と前記セパレータの剥離強度を、前記負極層と前記負極集電体の剥離強度と同等にするか、もしくはそれ以上にした際に、前記非水電解質を用いると、剥離強度の関係に起因してセパレータと負極との界面抵抗がもともと高い状況において電極群中に非水電解質が不均一に分布するため、界面抵抗が著しく高くなり、放電容量及び大電流放電特性が低下する。
本願発明のように、前記負極層と前記セパレータの剥離強度を、前記負極層と前記負極集電体の剥離強度に比べて低くすることによって、20℃の粘度が3cp〜20cpの溶液を用いた際に界面抵抗が極端に上昇するのを回避することができる。その結果、20℃の粘度が3cp〜20cpの溶液を含む非水電解質の特長を生かして高温貯蔵時のガス発生を抑制することができると共に、大電流放電特性並びにサイクル寿命を向上することができる。
前記非水溶媒として、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)及びγ−ブチロラクトン(BL)よりなる群から選ばれる少なくとも1種類からなる溶媒Aおよびエチレンカーボネート(EC)を含むものを用いることによって、大電流放電特性並びにサイクル寿命をより向上させることができると共に、高温貯蔵時のガス発生量を著しく少なくすることができる。
すなわち、溶媒Aは化学的安定性にすぐれているため、非水溶媒中に溶媒Aを含有させることによって、高温条件下で貯蔵を行った際に正極活物質と非水電解質が反応して非水電解質が酸化分解するのを抑制することができる。その結果、ガス発生量を少なくすることができるため、外装材が膨れるのを抑えることができる。また、エチレンカーボネートは、負極表面に保護膜を形成することができるため、負極、特にリチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物を含む負極と溶媒Aとが反応するのを抑制することができ、非水電解質の還元分解を抑えることができる。従って、大電流放電特性及び充放電サイクル特性が向上され、かつ高温貯蔵時のガス発生量が低減された非水電解質二次電池を提供することができる。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池のさらに別な形態は、正極集電体及び前記正極集電体に担持される正極層を含む正極と、負極集電体及び前記負極集電体に担持される負極層を含む負極と、前記正極層及び前記負極層の間に配置されるセパレータとを含む電極群;前記電極群に保持される非水電解質;及び前記電極群が収納される外装材;を具備する。前記正極、前記負極及び前記セパレータは一体化されている。また、前記正極層と前記セパレータの剥離強度は、前記正極層と前記正極集電体の剥離強度に比べて低く、前記負極層と前記セパレータの剥離強度は、前記負極層と前記負極集電体の剥離強度に比べて低い。
このような二次電池によれば、負極のみならず、正極においても、充放電反応の進行に伴って電極群の膨張・収縮が繰り返された際に正極層と正極集電体との密着性が低下するのを抑制することができる。また、正極層とセパレータとの密着強度を均等にすることができる。その結果、正極及び負極双方の界面インピーダンスを低くすることができるため、二次電池の大電流放電特性並びにサイクル寿命をより向上することができる。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池において、外装材Aを用いることによって、重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度をさらに向上することができる。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池において、負極層とセパレータの剥離強度か、あるいは正極層とセパレータの剥離強度か、もしくは双方を10gf/cm以下にすることによって、二次電池の大電流放電特性及びサイクル寿命をより一層向上することができる。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池において、負極層と負極集電体の剥離強度か、もしくは正極層と正極集電体の剥離強度か、もしくは双方を10gf/cm以上、20gf/cm以下にすることによって、二次電池の大電流放電特性及びサイクル寿命をより一層向上することができる。
本発明に係る第1の非水電解質二次電池において、非水電解質として電解質が溶解された非水溶媒からなる20℃における粘度が3cp〜20cpである溶液を含むものを用いることによって、大電流放電特性及びサイクル寿命を向上させることができる他に、高温環境下で使用した際の安全性を向上することができる。
前記非水溶媒として、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)及びγ−ブチロラクン(BL)よりなる群から選ばれる少なくとも1種類からなる溶媒Aおよびエチレンカーボネート(EC)を含むものを用いることによって、大電流放電特性並びにサイクル寿命をより向上させることができると共に、高温貯蔵時のガス発生量を著しく少なくすることができる。
次いで、本発明に係る第2の非水電解質二次電池について説明する。
この第2の非水電解質二次電池は、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータとを含む偏平形状の電極群;前記電極群に保持される液状の非水電解質;および前記電極群が収納される外装材;を具備する。この二次電池において、前記電極群の表面における最大面積を有する2つの面のうち少なくとも一方の面に正極集電体が位置している。また、外装材としては、前述した外装材Aか、もしくは外装材Bが使用される。さらに、セパレータ及び液状非水電解質としては、前述した第1の非水電解質二次電池において説明したのと同様なものが用いられる。
正極及び負極について説明する。
(1)正極
この正極は、正極集電体と、前記正極集電体片面もしくは両面に担持され、活物質及び結着剤を含む正極層とを有する。
前記正極層は、さらに導電剤を含んでいてもよい。
前記正極活物質、前記結着剤、前記導電剤及び前記集電体としては、前述した第1の非水電解質二次電池において説明したのと同様なものを挙げることができる。
正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
前記正極層の厚さは、前述した第1の非水電解質二次電池において説明したのと同様な理由により10〜150μmの範囲であることが望ましい。正極層の厚さのより好ましい範囲は30〜100μmである。
(2)負極
この負極は、負極集電体と、前記負極集電体の片面もしくは両面に担持され、負極材料及び結着剤を含む負極層とを有する。
前記負極材料、前記結着剤及び前記負極集電体としては、前述した第1の非水電解質二次電池において説明したのと同様なものを挙げることができる。
炭素質物及び結着剤の配合割合は、炭素質物90〜98重量%、結着剤2〜20重量%の範囲であることが好ましい。特に、負極中の炭素質物の含有量は、片面で10〜80g/m2の範囲にすることが好ましい。また、充填密度は1.2〜1.50g/cm3の範囲であることが望ましい。
前記負極層の厚さは、前述した第1の非水電解質二次電池において説明したのと同様な理由により10〜150μmの範囲であることが望ましい。負極層の厚さのより好ましい範囲は30〜100μmである。
前記負極材料には、前述したリチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物の他に、金属酸化物か、金属硫化物か、もしくは金属窒化物や、リチウム金属またはリチウム合金を用いることができる。
金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物およびリチウム合金としては、前述した第1の非水電解質二次電池において説明したのと同様なものを挙げることができる。
負極の面積は、正極の面積より大きいことが望ましい。そのような構成にすることによって、負極の端部を正極の端部に比べて延出させることができるため、負極端部への電流集中を緩和することができ、二次電池のサイクル性能と安全性を向上することができる。
偏平形状の電極群は、例えば、以下に説明する(1)〜(4)の方法により作製される。
(1)正極と負極をその間にセパレータを介在して渦巻き状に捲回した後、これを径方向に加圧することにより前記電極群を作製する。
(2)正極、負極及び前記正極と前記負極の間に配置されたセパレータからなる積層物を1回以上折り曲げることにより前記電極群を作製する。
(3)正極と、負極と、前記正極と前記負極の間に配置されるセパレータとからなる積層物を作製することにより前記電極群を得る。
(4)正極と負極をその間にセパレータを介在して偏平状に捲回することにより前記電極群を作製する。
ここで、偏平形状電極群の最大面積を有する面とは、その面積が電極群の長手方向に沿う長さと長手方向と直交する方向に沿う長さとの積から算出される面を意味する。
この電極群においては、正極、負極及びセパレータが一体化されていることが好ましい。一体化は、以下に説明する(I)または(II)の方法により行うことができる。
(I)正極とセパレータの境界の少なくとも一部に接着性高分子を存在させることにより正極とセパレータを接着させると共に、負極とセパレータの境界の少なくとも一部に接着性高分子を存在させることにより負極とセパレータを接着させる。このような一体化は、例えば、電極群を外装材内に収納した後、これに接着性高分子の溶液を注入し、これに減圧雰囲気において加熱成形を施した後、前記電極群に液状非水電解質を含浸させ、50Torr以下の減圧下で例えばヒートシールなどの封口処理を施すことによりなされる。減圧雰囲気は、30Torr以下にすることがより好ましい。
(II)前記正極及び前記負極に含まれる結着剤を熱硬化させることにより、前記正極、前記負極及び前記セパレータを一体化させる。このような一体化は、例えば、電極群を外装材内に収納した後、減圧雰囲気において加熱成形を施すことにより前記正極及び前記負極に含まれる結着剤を熱硬化させて前記正極、前記負極及び前記セパレータを一体化させた後、前記電極群に液状非水電解質を含浸させ、50Torr以下の減圧下で例えばヒートシールなどの封口処理を施すことによりなされる。減圧雰囲気は、30Torr以下にすることがより好ましい。
前記(I)において、前記接着性を有する高分子は、非水電解質を保持した状態で高い接着性を維持できるものであることが望ましい。さらに、かかる高分子は、リチウムイオン伝導性が高いとなお好ましい。具体的には、前述した第1の非水電解質二次電池において説明したのと同様なものを用いることができる。
前記電池に含まれる接着性を有する高分子の総量(後述する接着部に含有されるものを含む)は、前述した第1の非水電解質二次電池において説明したのと同様な理由により電池容量100mAh当たり0.1〜6mgにすることが好ましい。接着性を有する高分子の総量のより好ましい範囲は、電池容量100mAh当たり0.2〜1mgである。
以下、本発明に係る第2の非水電解質二次電池を図8〜図10を参照して詳細に説明する。
図8は本発明に係わる第2の非水電解質二次電池の一例である薄型リチウムイオン二次電池を示す断面図、図9は図8のB部を示す拡大断面図、図10は図8のリチウムイオン二次電池に組み込まれる電極群を示す斜視図である。
例えば多層シートからなる外装材30内には、電極群31が収納されている。電極群31は、正極、セパレータ及び負極からなる積層物が偏平形状に捲回された構造を有する。前記積層物は、図9の下側から、セパレータ32、負極層33と負極集電体34と負極層33を備えた負極35、セパレータ32、正極層36と正極集電体37と正極層36を備えた正極38、セパレータ32、負極層33と負極集電体34と負極層33を備えた負極35、セパレータ32、正極層36と正極集電体37を備えた正極38がこの順番に積層された構造を有する。前記電極群31の最外周は、正極集電体37である。よって、前記電極群31の表面のうち最大面積を有する2つの面39に正極集電体37が位置している。但し、電極群31の最大面積を有する面とは、その面積が電極群の長手方向に沿う長さL1と長手方向と直交する方向に沿う長さL2との積から算出される面を意味する。接着層40は、前記電極群31の表面と前記外装材30の内面の間に配置されている。液状非水電解質は、外装材30内に収容されている。帯状の正極リード41は、一端が電極群31の正極集電体37に接続され、かつ他端が外装材30から延出されている。一方、帯状の負極リード42は、一端が電極群31の負極集電体34に接続され、かつ他端が外装材30から延出されている。
前記電極群31は、厚さTを4mm以下にし、かつ下記(1)式により算出される長さ比を1.2以上にすることが好ましい。
L1/L2 (1)
但し、(A)式において、L1は電極群31の長手方向に沿う長さを示し、L2は電極群31の長手方向と直交する方向の長さを示す。
前記電極群31の厚さTは、前述した図10に示すように、前記電極群31表面のうち最大面積を有する面39に1cm2あたり15〜20gの過重Fをかけて測定した際の厚さを意味する。
前記電極群の厚さTを4mmより大きくするか、もしくはL1/L2を1.2未満にすると、厚さTが4mm以下で、L1/L2が1.2以上である電極群に比べて、電極群の体積を同じにした場合の電極群表面積が小さくなって電極群表面からの放熱が速やかになされなくなる恐れがある。厚さTのより好ましい範囲は3.5mm以下である。また、L1/L2の上限値は10、より好ましくは5にすることが望ましい。
また、前述した図10においては、電極群31の短手方向側の側面43に積層構造を露出させたが、図11に示すように、電極群31の長手方向側の側面43に積層構造を露出させても良い。電極群の長手方向側の側面43に積層構造が露出していると、積層構造が露出した面の電極群全体の面積に占める比率が高くなるため、電極群の放熱を更に促すことができる。
なお、前述した図8においては、電極群31の表面全体に接着層40を形成したが、電極群31の一部に接着層40を形成しても良い。電極群31の一部に接着層40を形成する場合、少なくとも電極群の最外周に相当する面に形成することが好ましい。また、接着層40はなくても良い。
また、前述した図10においては、正極及び負極をその間にセパレータを介在して偏平形状に捲回することにより得られる電極群を用いる例を説明したが、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータとからなる積層物からなる電極群や、正極、負極及び前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータからなる積層物が1回以上折り曲げられた構造の電極群に適用することができる。この一例を図12に示す。図12に示すように、電極群31は、正極集電体37、正極層36、セパレータ32、負極層33及び負極集電体34からなる積層物が複数回(例えば5回)折り曲げられることにより形成される。電極群31の最外層は、正極集電体37である。よって、電極群31の表面のうち最大面積を有する面39に正極集電体37が位置している。なお、電極群として正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータとからなる積層物を用いる場合、積層物の最外層のうち少なくとも一方を正極集電体37にすれば良い。
以上詳述した本発明に係る第2の非水電解質二次電池は、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータとを含む偏平形状の電極群;前記電極群に保持される液状の非水電解質;および前記電極群が収納される外装材;を具備する。この二次電池において、前記電極群の表面における最大面積を有する2つの面のうち少なくとも一方の面に正極集電体が位置している。また、前記外装材には、厚さが0.3mm以下の外装材Aか、樹脂層を含む厚さが0.5mm以下のシート製の外装材Bが使用される。
このような二次電池によれば、火中に投入されるなどにより異常に加熱されたり、あるいは内部短絡や、内部抵抗の上昇によって発熱した際に、電池温度が過度に上昇するのを回避することができるため、破裂や発火等の危険を未然に回避することができる。
すなわち、液状の非水電解質を備えた二次電池は、エネルギー密度が高いため、異常な加熱が加わったり、もしくは異常な発熱を生じると、電池内部の化学反応による自己発熱が助長され、電池温度が上昇し、ガスが発生して内圧が上昇するため、漏液や破裂あるいは発火に至る危険性がある。また、前述した外装材Aまたは外装材Bを備えた二次電池では、薄型化及び軽量化が要望されているため、例えばPTC素子(positive temperature coefficient)等の安全性を高めるためのハード機構を搭載し難い。安全機構を備えていないと、過充電や短絡などが生じた際の危険性が高くなる。
一般に、異常な加熱もしくは発熱により引き起こされる電池内部の化学反応による自己発熱は、正極由来の反応からはじまるケースが多い。従って、正極由来の化学反応開始時点での電池の放熱特性が電池の安全性に大きく影響するものと考えられる。本発明のように、電極群表面における最大面積を有する2つの面のうち少なくとも一方の面に正極集電体を位置させることによって、自己発熱を生じ易い正極を速やかに放冷させることができるため、異常な加熱や発熱により電極群の温度が上昇するのを抑制することができる。その結果、火中投入、短絡、過充電等により異常加熱や異常発熱を生じた際に、破裂や発火が生じるのを未然に回避することができ、安全性を向上させることができる。
本発明に係る第2の非水電解質二次電池において、電極群の長手方向側の側面に、正極、負極及びセパレータからなる積層構造を露出させることによって、積層構造領域の面積の電極群全体の面積に占める比率を高くすることができるため、電極群の放熱をさらに促すことができ、異常な加熱や発熱により電極群の温度が上昇するのを大幅に抑制することができる。
本発明に係る第2の非水電解質二次電池において、電極群の厚さを4mm以下にし、かつ前述したL1/L2の値を1.2以上にすることによって、このような条件を満たさない電極群に比べて、同じ電極群体積での電極群表面積を増加させることができる。その結果、電極群の放熱をさらに促すことができるため、異常な加熱や発熱により電極群の温度が上昇するのを大幅に抑制することができる。
本発明に係る第2の非水電解質二次電池において、20体積%以上、80体積%以下のγ−ブチロラクトンを含有する非水溶媒を備えた液状非水電解質を用いることによって、非水電解質の酸化分解を抑制することができ、異常加熱や異常発熱等により電池温度が上昇した際のガス発生量を低減することができるため、外装材が膨れるのを抑えることができ、安全性をより向上することができる。
以下、本発明に係る第3の非水電解質二次電池について説明する。
本発明に係る第3の非水電解質二次電池は、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータとを含む偏平形状の電極群;前記電極群に保持される液状の非水電解質;および前記電極群が収納される外装材;を具備する。この二次電池において、前記電極群の表面における最大面積を有する2つの面にセパレータが位置している。また、外装材としては、前述した外装材Aか、もしくは外装材Bが使用される。さらに、正極、負極、セパレータ及び非水電解質としては、前述した第2の非水電解質二次電池において説明したのと同様なものが用いられる。
偏平形状の電極群は、前述した第2の非水電解質二次電池において説明したのと同様な方法により作製される。
ここで、偏平形状電極群の最大面積を有する面とは、その面積が電極群の長手方向に沿う長さと長手方向と直交する方向に沿う長さとの積から算出される面を意味する。
この電極群においては、正極、負極及びセパレータが一体化されていることが好ましい。一体化は、前述した第2の非水電解質で説明したのと同様な方法を採用することができる。
以下、本発明に係る第3の非水電解質二次電池を図13を参照して詳細に説明する。
図13は本発明に係わる第3の非水電解質二次電池の要部を示す拡大断面図である。
この第3の非水電解質二次電池の一例である薄型リチウムイオン二次電池は、電極群の積層構造以外、前述した図8で説明したのと同様な構造を有する。電極群は、正極、セパレータ及び負極からなる積層物が偏平形状に捲回された構造を有する。前記積層物は、図13の下側から、セパレータ44、負極層45と負極集電体46と負極層45を備えた負極47、セパレータ44、正極層48と正極集電体49と正極層48を備えた正極50、セパレータ44、負極層45と負極集電体46と負極層45を備えた負極47、セパレータ44、正極層48と正極集電体49を備えた正極50、セパレータ44がこの順番に積層された構造を有する。前記電極群の最外周は、セパレータ44である。よって、前記電極群の表面における最大面積を有する2つの面にセパレータ44が位置している。但し、偏平形状電極群の最大面積を有する面とは、その面積が電極群の長手方向に沿う長さL1と長手方向と直交する方向に沿う長さL2との積から算出される面を意味する。
なお、前述した図13においては、最外層のセパレータの1層内側を正極集電体49にした例を説明したが、正極集電体の代わりに負極集電体にすることができる。
前述した図13においては、電極群の表面全体に接着層40を形成したが、電極群の一部に接着層40を形成しても良い。電極群の一部に接着層40を形成する場合、少なくとも電極群の最外周に相当する面に形成することが好ましい。また、接着層40はなくても良い。
また、前述した図13においては、正極及び負極をその間にセパレータを介在して偏平形状に捲回することにより得られる電極群を用いる例を説明したが、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータとからなる積層物からなる電極群や、正極、負極及び前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータからなる積層物が1回以上折り曲げられた構造の電極群に適用することができる。この一例を図14に示す。図14に示すように、電極群は、正極50と、負極47と、前記正極50及び前記負極47の間に配置されたセパレータ44との積層物である。電極群の最外層はセパレータ44である。
以上詳述した本発明に係る第3の非水電解質二次電池は、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータとを含む偏平形状の電極群;前記電極群に保持される液状の非水電解質;および前記電極群が収納される外装材;を具備する。この二次電池において、前記電極群の表面における最大面積を有する2つの面にセパレータが位置している。また、前記外装材には、厚さが0.3mm以下の外装材Aか、樹脂層を含む厚さが0.5mm以下のシート製の外装材Bが使用される。
外装材Aまたは外装材Bを備えた非水電解質二次電池は、重量エネルギー密度を向上することができるものの、機械的強度が劣り、例えば落下などにより外部から衝撃を受けると、破損や、短絡を生じ易い。
本発明によれば、電極群の機械的強度を高くすることができるため、誤って落下させる等により二次電池に衝撃が加わった際に電極群が破損したり、短絡を生じるのを回避することができる。また、正極と負極をその間にセパレータを介在して渦巻き状に捲回した後、これを径方向に加圧することにより電極群を作製する際に、加圧時に電極群に加わる衝撃を緩和することができるため、加圧時の電極群の破損を軽減することができる。さらに、電極群自体の耐衝撃性を高めることが可能であるため、樹脂層を含む外装材を使用する場合に、電極群と接触する側の樹脂層を15μ以下にする、より好ましくはなくすことができる。
以下、本発明に係る第4の非水電解質二次電池を説明する。
この第4の非水電解質二次電池は、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータとを含む偏平形状を有する電極群;前記電極群に保持される液状の非水電解質;および前記電極群が収納される外装材;を具備する。絶縁性の保護シートは、前記電極群の表面の最大面積を有する2つの面に跨って形成されている。また、外装材としては、前述した外装材Aか、もしくは外装材Bが使用される。
正極、負極、セパレータ及び非水電解質としては、前述した第2の非水電解質二次電池において説明したのと同様なものが用いられる。
偏平形状の電極群は、前述した第2の非水電解質二次電池において説明したのと同様な方法により作製される。前記(1)、前記(2)及び前記(4)の方法により得られる偏平状電極群においては、絶縁保護シートが積層構造の露出した面に掛からないようにすることが好ましい。絶縁保護シートが積層構造の露出した面を被覆すると、電極群に液状非水電解質を含浸させることが困難になる恐れがある。
ここで、偏平形状電極群の最大面積を有する面とは、その面積が電極群の長手方向に沿う長さと長手方向と直交する方向に沿う長さとの積から算出される面を意味する。
この電極群においては、正極、負極及びセパレータが一体化されていることが好ましい。一体化は、前述した第2の非水電解質で説明したのと同様な方法を採用することができる。
絶縁性の保護シートの材料は、液状非水電解質に不溶な有機高分子から形成されることが好ましい。かかる材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂及びポリオレフィン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種類を挙げることができる。ポリイミド樹脂としては、例えば、デュポン(duPont)社製の商品名がカプトン(Kapton)を挙げることができる。一方、ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を挙げることができる。また、フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を挙げることができる。
絶縁性保護シートは、不織布またはフィルムから形成することができる。また、多孔質な絶縁性保護シートを使用すると、電極群への電解液含浸性を高めることができる。さらに、絶縁性保護シートと電極群との間に接着剤が存在していても良い。
絶縁性保護シートは、電極群表面に最大面積を有する2つの面を跨ぐように形成され、両端部が当接するか、もしくは両端部が所望の距離離れていることが好ましい。絶縁性保護シートを電極群表面に最大面積を有する2つの面を跨ぐように形成した際に、保護シートの両端部が重なると、充放電反応の際に電極群の膨張収縮が阻害されて電極群に歪みが生じるため、充放電サイクルの繰り返しにより電極群が褶曲して高いサイクル寿命を得られなくなる恐れがある。このため、保護シートの両端部を電極群表面を挟んで対向させ、端部間の距離Xが下記(2)式を満足することが好ましい。
0≦X≦0.4×L3 (2)
但し、L3は、後述する図15に示すように、偏平形状の電極群の長手方向に沿う長さL1及び短手方向に沿う長さL2のうち絶縁保護シートの周回方向に沿う方の長さを示す。なお、両端部が接した状態では、距離Xが0となる。電極群を保護シートで被覆する際に保護シートの両端部を当接させるのは、電極群製造作業が繁雑になるため、製造コストが高くなる恐れがある。
距離Xが0.4×L3より大きくなると、落下等の衝撃が加わった際の短絡および電極群の破損を抑制することが困難になる恐れがある。中でも、保護シートの両端部の距離Xは、下記(3)式を満足することがより好ましい。
0≦X≦0.3×L3 (3)
絶縁性保護シートの幅は、電極群の寸法に比べて短くすることが望ましい。絶縁性保護シートの幅が電極群寸法と等しいか、もしくはそれより長くなると、電極群に液状非水電解質を万遍なく浸透させることが困難になる恐れがある。但し、後述する図15に示すように、絶縁性保護シートの幅Hは、周回方向と直交する方向の長さである。
絶縁性保護シートの厚さは、0.5mm以下にすることが好ましい。シート厚さが0.5mmを超えると、充放電反応の際に電極群の膨張収縮が阻害される恐れがあるため、充放電サイクルの繰り返しにより電極群が褶曲して高いサイクル寿命を得られなくなる恐れがある。また、シート厚さを0.05mm未満にすると、落下等の衝撃が加わった際の短絡および電極群の破損を抑制することが困難になる恐れがある。シート厚さは、0.25mm以下にすることが好ましく、さらに好ましい範囲は0.05〜0.2mmである。最も好ましい範囲は、0.05〜0.15mmである。
次いで、本発明に係る第4の非水電解質二次電池を図15〜図16を参照して具体的に説明する。
図15は、本発明に係る第4の非水電解質二次電池に組み込まれる電極群を説明するための模式図で、図16は図15のC部を示す部分拡大断面図である。
この第4の非水電解質二次電池の一例である薄型リチウムイオン二次電池は、電極群以外、前述した図8で説明したのと同様な構造を有する。図15の上部に示された電極群の斜視図に示すように、電極群51は、正極、セパレータ及び負極からなる積層物が偏平形状に捲回された構造を有する。また、図15の下部には前記電極群の断面図が示されている。この断面図のC部を示した図16によると、前記積層物は、図16の下側から、セパレータ52、負極層53と負極集電体54と負極層53を備えた負極55、セパレータ52、正極層56と正極集電体57と正極層56を備えた正極58、セパレータ52、負極層53と負極集電体54と負極層53を備えた負極55、セパレータ52、正極層56と正極集電体57を備えた正極58、セパレータ52がこの順番に積層された構造を有する。例えば長方形状をなす絶縁性保護シート59は、前記電極群51の最外周の一部を被覆すると共に、最大面積を有する2つの面に跨っている。ここで、電極群51の最大面積を有する面とは、その面積が電極群の長手方向に沿う長さL1と長手方向と直交する方向に沿う長さL2との積から算出される面を意味する。また、絶縁性保護シート59の両端部60a,60bは接せず、離れている。両端部60a,60b間の距離Xは、前述した(2)式;0≦X≦0.4×L3を満足する。但し、L3は、電極群の長手方向に沿う長さL1及び電極群の長手方向と直交する方向の長さL2のうち、絶縁保護シート59の周回方向に沿う方の長さである。この場合のL3は、電極群の長手方向と直交する方向の長さL2である。前記絶縁保護シート59の幅Hは、前記電極群の長手方向に沿う長さL1に比べて短かい。
なお、前述した図15においては、絶縁性保護シート59の1層内側をセパレータ52にした例を説明したが、セパレータの代わりに正極集電体または負極集電体にすることができる。
また、前述した図15においては、正極及び負極をその間にセパレータを介在して偏平形状に捲回することにより得られる電極群を用いる例を説明したが、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータとからなる積層物からなる電極群や、正極、負極及び前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータからなる積層物が1回以上折り曲げられた構造の電極群に適用することができる。
以上詳述した本発明に係る第4の非水電解質二次電池は、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されるセパレータとを含む偏平形状を有する電極群;前記電極群に保持される液状の非水電解質;および前記電極群が収納される外装材;を具備する。絶縁性の保護シートは、前記電極群の表面に最大面積を有する2つの面を跨ぐように形成されている。また、前記外装材には、厚さが0.3mm以下の外装材Aか、樹脂層を含む厚さが0.5mm以下のシート製の外装材Bが使用される。
本発明によれば、電極群の機械的強度を高くすることができるため、誤って落下させる等により二次電池に衝撃が加わった際に電極群が破損したり、短絡を生じるのを回避することができる。また、電極群自体の耐衝撃性を高めることが可能であるため、樹脂層を含む外装材を使用する場合に、電極群と接触する側の樹脂層を15μ以下にする、より好ましくはなくすことができる。
本発明に係る第4の非水電解質二次電池において、絶縁性の保護シートを前記電極群の表面に最大面積を有する2つの面を跨ぐように形成する際、両端部を接触させず、両端部間の距離Xを前記(2)式の0.4×L3で規定される範囲以下にすることによって、以下の(a)〜(c)に説明する効果を奏することができる。
(a)衝撃が加わった際の短絡および電極群の破損を回避することができる。
(b)充放電反応の際の電極群の膨張収縮により電極群が歪むのを抑制して電極群が充放電の繰り返しにより褶曲するのを回避することができるため、充放電サイクル寿命を向上することができる。
(c)簡単な方法で電極群を製造することができる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
実施例1
<正極の作製>
まず、リチウムコバルト酸化物(LixCoO2;但し、Xは0≦X≦1である)粉末90.5重量%、アセチレンブラック2.5重量%、グラファイト3重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)4重量%およびN−メチルピロリドン(NMP)溶液を混合することによりスラリーを調製した。前記スラリーを厚さ10μmのアルミニウム箔からなる正極集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより電極密度が3.0g/cm3の正極を作製した。得られた正極は、正極集電体の両面に厚さが48μmの正極層が担持された構造を有していた。なお、正極層の合計厚さは96μmである。
<負極の作製>
炭素質物として3000℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維を用意した。前記炭素繊維は、平均繊維径が8μmで、平均繊維長が20μmで、平均面間隔(doo2)が0.3360nmであった。前記炭素質物の粉末93重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)7重量%及びNMP溶液を混合することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥し、プレスすることにより電極密度が1.35g/cm3の負極を作製した。得られた負極は、負極集電体の両面に厚さが45μmの負極層が担持された構造を有していた。なお、負極層の合計厚さは90μmである。
<電極群の作製>
厚さが27μm、多孔度が50%、空気透過率が90秒/100cm3のポリエチレン製セパレータを用意した。前記正極と前記負極をその間にセパレータを介在して渦巻き状に捲回した後、これを径方向に加圧することにより偏平形状に成形し、厚さが2.7mmで、幅が30mm、高さが50mmの電極群を作製した。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とγ−ブチロラクトン(BL)の混合溶媒(混合体積比率40:60)に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を1.5モル/1溶解して非水電解液(液状の非水電解質)を調製した。
<電池組み立て>
アルミニウム箔の両面をポリプロピレンで覆った厚さ0.1mm(100μm)のラミネートフィルムを袋状に成形した。これに前記電極群を収納し、得られたものを電池厚さが2.7mmになるようにホルダで挟んだ。ホルダに挿入直後、電極群にかかる圧力は0.5kg/cm2であった。接着性を有する高分子であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を有機溶媒であるジメチルフォルムアミド(DMF)(沸点が153℃)に0.3重量%溶解させた。得られた溶液を前記ラミネートフィルム内の電極群に電池容量0.6mlとなるように注入し、前記溶液を前記電極群の内部に浸透させると共に、前記電極群の表面全体に付着させた。
次いで、前記ラミネートフィルム内の電極群に80℃で真空乾燥を12時間施すことにより前記有機溶媒を蒸発させ、正極、負極及びセパレータの空隙に接着性を有する高分子を保持させて正極、負極及びセパレータが一体化させると共に、前記電極群の表面に多孔質な接着部を形成した。
次いで、ホルダを解除した。電極群をホルダにより挟んでいたトータル時間は、120分であった。前記ラミネートフィルム内の電極群に前記非水電解液を2g注入し、前述した図3、4に示す構造を有し、厚さが2.7mmで、幅が32mmで、高さが55mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例2
前述した実施例1で説明したのと同様にして電極群を作製した。次いで、前記電極群を前述した実施例1で説明したのと同様なラミネートフィルム内に収納した後、これに接着性を有する高分子を溶解した有機溶媒を注入した。
ひきつづき、80℃の真空雰囲気において電極群の厚さ方向に沿って0.1kg/cm2の圧力でプレスを120分間施すことにより、正極、負極及びセパレータを接着性を有する高分子により一体化させると共に、前記電極群の表面に多孔質な接着部を形成した。
次いで、前記ラミネートフィルム内の電極群に前述した実施例1で説明したのと同様な非水電解液を注入し、前述した図3、4に示す構造を有し、厚さが2.7mmで、幅が32mmで、高さが55mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例3
前述した実施例1で説明したのと同様にして電極群を作製した。次いで、前記電極群を前述した実施例1で説明したのと同様なラミネートフィルム内に収納した。
ひきつづき、80℃の真空雰囲気において電極群の厚さ方向に沿って1kg/cm2の圧力でプレスを60分間施すことにより、正極、負極及びセパレータを一体化させた。
次いで、前記ラミネートフィルム内の電極群に前述した実施例1で説明したのと同様な非水電解液を注入し、前述した図3、4に示す構造を有し、厚さが2.7mmで、幅が32mmで、高さが55mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例4
プレス成形の圧力を10kg/cm2にし、プレス時間を5分間にすること以外は、前述した実施例3と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例5
電池厚さが2.7mmになり、かつホルダ挿入直後に電極群に加わる圧力が0.1kg/cm2になるように電極群をホルダで挟み、ホルダ保持時間を120分間にすること以外は、前述した実施例1と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例6
前述した実施例1で説明したのと同様にして電極群を作製した。次いで、前記電極群を前述した実施例1で説明したのと同様なラミネートフィルム内に収納した。
ひきつづき、80℃の真空雰囲気において電極群を電池厚さが2.68mmになるようにホルダで120分間挟むことにより、正極、負極及びセパレータを一体化させた。なお、ホルダに挿入直後の電極群に加わる圧力は、0.1kg/cm2であった。
次いで、前記ラミネートフィルム内の電極群に前述した実施例1で説明したのと同様な非水電解液を注入し、前述した図3、4に示す構造を有し、厚さが2.7mmで、幅が32mmで、高さが55mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例7
セパレータの空気透過率を30秒/100cm3にし、非水溶媒中のγ−ブチロラクトンの組成比率を20体積%にすること以外は、前述した実施例1と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例8
セパレータの空気透過率を90秒/100cm3にし、非水溶媒中のγ−ブチロラクトンの組成比率を50体積%にすること以外は、前述した実施例1と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例9
セパレータの空気透過率を450秒/100cm3にし、非水溶媒中のγ−ブチロラクトンの組成比率を80体積%にすること以外は、前述した実施例1と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例10〜15
プレス成形の圧力とプレス時間を下記表1に示すように変更すること以外は、前述した実施例3と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例16
25体積%のエチレンカーボネート(EC)と75体積%のプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を1.5モル/1溶解して調製された非水電解液を用いること以外は、前述した実施例3と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例17
10体積%のエチレンカーボネート(EC)と90体積%のプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を1.5モル/1溶解して調製された非水電解液を用いること以外は、前述した実施例3と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例18
以下の方法で作製された正極を用い、かつプレス成形の圧力とプレス時間を下記表1に示すように変更すること以外は、前述した実施例1と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
すなわち、組成がLiCo0.2Ni0.8O2で表わされるリチウムコバルトニッケル酸化物粉末90.5重量%、アセチレンブラック2.5重量%、グラファイト3重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)4重量%およびN−メチルピロリドン(NMP)溶液を混合することによりスラリーを調製した。前記スラリーを厚さ10μmのアルミニウム箔からなる正極集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより電極密度が3.0g/cm3の正極を作製した。得られた正極は、正極集電体の両面に厚さが48μmの正極層が担持された構造を有していた。なお、正極層の合計厚さは96μmである。
実施例19
以下の方法で作製された正極を用い、かつプレス成形の圧力とプレス時間を下記表1に示すように変更すること以外は、前述した実施例3と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
すなわち、組成がLiCo0.2Ni0.8O2で表わされるリチウムコバルトニッケル酸化物粉末90.5重量%、アセチレンブラック2.5重量%、グラファイト3重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)4重量%およびN−メチルピロリドン(NMP)溶液を混合することによりスラリーを調製した。前記スラリーを厚さ10μmのアルミニウム箔からなる正極集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより電極密度が3.0g/cm3の正極を作製した。得られた正極は、正極集電体の両面に厚さが48μmの正極層が担持された構造を有していた。なお、正極層の合計厚さは96μmである。
実施例20
以下に説明する炭素質物を用いること以外は、前述した実施例3と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
炭素質物として3000℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維60重量%と、3000℃で熱処理したメソフェーズ小球体40重量%との混合粉末を用意した。前記炭素繊維は、平均繊維径が8μmで、平均繊維長が20μmで、平均アスペクト比が2.5で、平均面間隔(doo2)が0.3360nmであった。一方、前記小球体は、平均粒径が6μmで、長径(major radius)に対する短径(minor radius)の比が0.95で、平均面間隔(doo2)が0.3361nmであった。
実施例21
以下に説明する炭素質物を用いること以外は、前述した実施例3と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
すなわち、炭素質物として3000℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維50重量%と、粒状の黒鉛50重量%との混合粉末を用意した。前記炭素繊維は、平均繊維径が3μmで、平均繊維長が15μmで、平均アスペクト比が5で、平均面間隔(doo2)が0.3362nmであった。一方、前記粒状黒鉛は、平均粒径が6μmで、長径(major radius)に対する短径(minor radius)の比が5で、平均面間隔(doo2)が0.3355nmであった。
比較例1
接着性を有する高分子の溶液として、ジメチルホルムアミド(DMF)にPVdFが5重量%溶解されたものを用いること以外は、前述した実施例1と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
比較例2
ジメチルホルムアミド(DMF)にPVdFを5重量%溶解させ、得られた溶液を実施例1で説明したのと同様なセパレータに塗布した。実施例1で説明したのと同様な正極と負極の間に前記セパレータを介在させることにより電極群を作製した。
前記電極群を前述した実施例1で説明したのと同様なラミネートフィルム内に収納した後、前述した実施例1で説明したのと同様な非水電解液を注入し、厚さが2.7mmで、幅が32mmで、高さが55mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
比較例3
10体積%のエチレンカーボネート(EC)と90体積%のジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を1モル/1溶解して調製された非水電解液を用いること以外は、前述した比較例2と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
得られた実施例1〜20及び比較例1〜3の二次電池について、初充放電を施した。次いで、1Cで4.2Vの定電圧充電を3時間行った後、1Cで3Vまで放電した際の放電容量を測定し、これを1Cでの放電容量とした。ひきつづき、1Cで4.2Vの定電圧充電を3時間行った後、3Cで3Vまで放電した際の放電容量を測定し、これを3Cでの放電容量とした。1Cでの放電容量を100%とした際の3Cでの放電容量を下記表3に示す。
また、実施例1〜21及び比較例1〜3の二次電池について、1Cで充電した後、1Cで放電する充放電サイクルを繰り返し、1サイクル目の放電容量を100%とした際の500サイクル時の放電容量を求め、これを500サイクル時の容量維持率として下記表3に示す。
さらに、実施例1〜21の二次電池について、4.2Vまで充電後、85℃で24時間貯蔵した後の膨れを測定した。なお、膨れ率は、貯蔵前の電池厚さを基準にした。
また、実施例1〜21及び比較例1〜3の二次電池について、初充放電後、二次電池を分解し、180度剥離強度法による正極層とセパレータとの剥離強度、正極層と正極集電体との剥離強度、負極層とセパレータとの剥離強度ならびに負極層と負極集電体との剥離強度を以下に説明する方法により測定した。測定装置としては、不動工業社製で、商品名がレオメータ(Rheo meater)で、型番がNRM/1010J−CWであるものを使用した。まず、二次電池を分解し、目的とする積層物(例えば、負極集電体、負極層及びセパレータがこの順番に積層された積層物)を取り出す。この積層物は、非水電解質を保持したままである。また、積層物の幅は20mmにし、長さを50mmにした。この積層物を支持台上に集電体側を下にして載置する。次いで、前記積層物の上面に両面テープ(住友3M株式会社製の商品名がScotchで、CAT.NO.665−3−24、基材が透明硬質塩化ビニルで、粘着材がアクリル樹脂系粘着材である)を取り付けた。積層物と両面テープとの接着面積は、20×30mmにした。この両面テープを積層物上面に平行な方向に1分間に2cmの速度で引き、負極層からセパレータを剥離させる。セパレータを剥離させるために必要な力は、剥離し始めの際には変動し、この力が一定になった時点での牽引力を負極層とセパレータとの剥離強度とする。その結果を下記表3に併記する。
さらに、各二次電池の液状非水電解質の20℃粘度を測定し、その結果を下記表3に併記する。
表1〜表3から明らかなように、負極層とセパレータの剥離強度が負極層と負極集電体の剥離強度に比べて小さい実施例1〜21の二次電池は、比較例1〜3の二次電池に比べて3C放電時の容量維持率が高く、かつ500サイクル時の容量維持率が優れていることがわかる。また、実施例1〜21の二次電池は、高温で貯蔵した際の外装材の膨れを2%未満に抑制できた。
(実施例22)
外装材であるラミネートフィルムの厚さを0.5mmにし、電池寸法が実施例3と同様(厚さが2.7mm,幅が32mm、高さが55mm)になるように電極群の厚さを薄くすること以外は、前述した実施例3と同様にして薄型非水電解質二次電池を製造した。得られた二次電池の容量は、60%(実施例3の二次電池の容量を100%とする)であった。
実施例23
<正極の作製>
まず、リチウムコバルト酸化物(LixCoO2;但し、Xは0≦X≦1である)粉末を91重量%、アセチレンブラックを3.5重量%、グラファイトを3.5重量%、エチレンプロピレンジエンモノマ粉末を2重量%及びトルエンを混合することによりスラリーを調製した。10cm2当たり10個の割合で直径0.5mmの孔が存在する多孔質アルミニウム箔(厚さが15μm)からなる集電体の両面に前記スラリーを塗布した。次いで、乾燥し、プレスすることにより電極密度が3.0g/cm3の正極を作製した。
<負極の作製>
炭素質材料として3000℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維を用意した。この炭素繊維は、繊維径が8μmで、平均繊維長が20μmで、平均面間隔(doo2)が0.3360nmであった。前記炭素繊維の粉末93重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)7重量%及びNMP溶液を混合することによりスラリーを調製した。10cm2当たり10個の割合で直径0.5mmの孔が存在する多孔質銅箔(厚さが15μm)からなる集電体の両面に前記スラリーを塗布した。ひきつづき、乾燥し、プレスすることにより電極密度が1.3g/cm3の負極を作製した。
<セパレータ>
厚さが25μmで、120℃、1時間での熱収縮が20%で、多孔度が50%のポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを2枚用意した。セパレータの各辺の長さは、正極の各辺の長さに比べて2mm長く、かつ負極の各辺の長さに比べて1.5mm長い。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の混合溶媒(混合体積比率1:2)に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/1溶解して非水電解液(液状の非水電解質)を調製した。
<電極群の作製>
得られた正極、負極及びセパレータを、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層し、最外周が正極集電体となるように渦巻状に捲回した後、得られた捲回物を径方向に加圧することにより、前述した図11に示す偏平形状の電極群を得た。
得られた電極群は、前述した図10において説明した方法により測定した厚さTが2.9mmで、長手方向に沿う長さL1が250mmで、短手方向に沿う長さL2が180mmで、前述した(1)式により算出される長さ比(L1/L2)が1.39であった。また、長手方向側の側面に、正極、負極及びセパレータからなる積層構造が露出していた。さらに、この電極群において、セパレータの端部は正極の端部に比べて1mm延出し、かつ負極の端部に比べて0.75mm延出していた。
アルミニウム箔の両面をポリプロピレンで覆った厚さ0.1mm(100μm)のラミネートフィルムを袋状に成形し、これに前記電極群を積層面が袋の開口部から見えるように収納した。接着性を有する高分子であるポリアクリロニトリル(PAN)を有機溶媒であるジメチルフォルムアミド(沸点が153℃)に0.5重量%溶解させた。得られた溶液を前記ラミネートフィルム内の電極群に電池容量100mAh当たりの量が0.25mlとなるように注入し、前記溶液を前記電極群の内部に浸透させるとともに、前記電極群の表面全体に付着させた。
次いで、前記ラミネートフィルム内の電極群に80℃で真空乾燥を12時間施すことにより前記有機溶媒を蒸発させ、正極、負極及びセパレータの空隙に接着性を有する高分子を保持させて正極、負極及びセパレータを一体化させると共に、前記電極群の表面に多孔質な接着部を形成した。PANの総量は電池容量100mAhあたり1.25mgであった。
前記ラミネートフィルム内の電極群に前記非水電解液を電池容量1Ah当たりの量が4.1gとなるように注入し、30Torr以下の減圧下でヒートシールを施して前述した図8,9に示す構造を有する薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例24
電極群の厚さTを2.0mmにし、電極群の長手方向に沿う長さL1を300mmにし、短手方向に沿う長さL2を150mmにし、前述した(1)式により算出される長さ比(L1/L2)を2.0にすること以外は、前述した実施例23で説明したのと同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例25
前述した実施例23で説明したのと同様な正極、負極及びセパレータを、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層し、最外周が正極集電体となるように渦巻状に捲回した後、得られた捲回物を径方向に加圧することにより、前述した図11に示す偏平形状の電極群を得た。
得られた電極群は、前述した方法により測定した厚さTが4.0mmで、長手方向に沿う長さL1が200mmで、短手方向に沿う長さL2が135mmで、前述した(1)式により算出される長さ比(L1/L2)が1.48であった。また、長手方向側の側面に、正極、負極及びセパレータからなる積層構造が露出していた。さらに、この電極群において、セパレータの端部は正極の端部に比べて1mm延出し、かつ負極の端部に比べて0.75mm延出していた。
次いで、前記電極群を前述した実施例23で説明したのと同様なラミネートフィルム内に収納した。ひきつづき、90℃の真空雰囲気において電極群の厚さ方向に沿って15kg/cm2の圧力でプレスを施すことにより、正極、負極及びセパレータを一体化させた。
次いで、前記ラミネートフィルム内の電極群に前述した実施例23で説明したのと同様な非水電解液を注入し、30Torr以下の減圧下でヒートシールを施し、薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例26
電極群の厚さTを1.5mmにし、電極群の長手方向に沿う長さL1を200mmにし、短手方向に沿う長さL2を50mmにし、前述した(1)式により算出される長さ比(L1/L2)を4.0にすること以外は、前述した実施例25で説明したのと同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例27
前述した実施例23で説明したのと同様な正極と負極をその間に前述した実施例23で説明したのと同様なセパレータを介在させながら、最外層が正極集電体となるように積層することにより、偏平形状の電極群を得た。
得られた電極群は、前述した方法により測定した厚さTが2.9mmで、長手方向に沿う長さL1が250mmで、短手方向に沿う長さL2が180mmで、前述した(1)式により算出される長さ比(L1/L2)が1.39であった。さらに、この電極群において、セパレータの端部は正極の端部に比べて1mm延出し、かつ負極の端部に比べて0.75mm延出していた。
次いで、前記電極群を前述した実施例23で説明したのと同様なラミネートフィルム内に収納した。ひきつづき、前述した実施例23で説明したのと同様にして接着性を有する高分子の溶液の注入、真空乾燥、非水電解液の注入、ヒートシールを行うことにより薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例28
電極群の短手方向側の側面に、正極、負極及びセパレータからなる積層構造を露出させること以外は、前述した実施例23で説明したのと同様な薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例29〜31
外装材であるラミネートフィルムの厚さを下記表4に示すように変更すること以外は、前述した実施例23で説明したのと同様な薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例32
34体積%のエチレンカーボネート(EC)と66体積%のγ−ブチロラクトン(BL)の混合溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を1.5モル/1溶解して調製された非水電解液を用いること以外は、前述した実施例23と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例33
25体積%のエチレンカーボネート(EC)と75体積%のγ−ブチロラクトン(BL)の混合溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を1.5モル/1溶解して調製された非水電解液を用いること以外は、前述した実施例23と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
比較例6
電極群の厚さTを8.0mmに変更すること以外は、前述した実施例23と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
比較例7
電極群の最外周が負極集電体であること以外は、前述した実施例23と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
比較例8
電極群の最外周が正極層であること以外は、前述した実施例23と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
比較例9
外装材の厚さを0.6mmにすること以外は、前述した実施例23と同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
得られた実施例23〜33及び比較例6〜9の二次電池について、充電電流値を0.5Cにして4.2Vまで5時間充電した後、0.5Cで2.7Vまで放電する充放電サイクル試験を実施し、1サイクル目の放電容量を100%とした際の300サイクル時の放電容量を求め、これを300サイクル時の容量維持率として下記表5に示す。
また、実施例23〜33及び比較例6〜9の二次電池について、100℃のオーブン中に放置し、ラミネートフィルムの外表面の温度をモニターし、その結果を下記表5に併記する。なお、表5中の「なし」は、オーブン内への放置により温度上昇が生じなかったことを意味する。
さらに、実施例23〜33及び比較例6〜9の二次電池について、4.2Vまで充電後、80℃で24時間貯蔵した後の膨れを測定し、その結果を下記表5に併記する。
また、実施例23〜33及び比較例6〜9の二次電池について、単位体積当りのエネルギー密度を測定し、その結果を下記表5に併記する。
表4,5から明らかなように、電極群の最大面積を有する面が正極集電体から形成されている実施例23〜33の二次電池は、300サイクル時の容量維持率が高く、高温環境下に放置した際の温度上昇とガス発生を抑制できることがわかる。
これに対し、比較例6〜8の二次電池は、300サイクル時の容量維持率が高いものの、高温環境下に放置した際の温度上昇幅が実施例23〜33に比べて高く、そのうえ高温環境下に放置した際のガス発生量が実施例23〜33に比べて多いことがわかる。さらに、厚さが0.5mmを超える外装材を備える比較例9の二次電池は、単位体積当りのエネルギー密度が低くなるばかりか、電極群の最大面積を有する面を正極集電体にしても高温環境下に放置した際の温度上昇並びにガス発生を抑制する事が困難であることがわかる。
実施例34
実施例23で説明したのと同様な正極、負極及びセパレータを、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層し、最外周がセパレータとなるように渦巻状に捲回した後、得られた捲回物を径方向に加圧することにより、前述した図13に示す偏平形状の電極群を得た。
アルミ箔の両面をポリプロピレン層で被覆したものからなり、電極群と接する面側(内面側)のポリプロピレン層の厚さが0.015mm(15μm)で、トータル厚さが0.08mm(80μm)のラミネートフィルムを用意した。このラミネートフィルムを袋状に成形した後、これに前記電極群をその積層面が袋の開口部から見えるように収納した。接着性を有する高分子であるポリアクリロニトリル(PAN)を有機溶媒であるジメチルフォルムアミド(沸点が153℃)に0.5重量%溶解させた。得られた溶液を前記ラミネートフィルム内の電極群に電池容量100mAh当たりの量が0.25mlとなるように注入し、前記溶液を前記電極群の内部に浸透させるとともに、前記電極群の表面全体に付着させた。
次いで、前記ラミネートフィルム内の電極群に80℃で真空乾燥を12時間施すことにより前記有機溶媒を蒸発させ、正極、負極及びセパレータの空隙に接着性を有する高分子を保持させて正極、負極及びセパレータを一体化させると共に、前記電極群の表面に多孔質な接着部を形成した。PANの総量は電池容量100mAhあたり1.25mgであった。
前記ラミネートフィルム内の電極群に前述した実施例23で説明したのと同様な非水電解液を電池容量1Ah当たりの量が4.1gとなるように注入し、厚さ3mm、幅40mm、高さ70mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例35
前述した実施例23で説明したのと同様な正極、負極及びセパレータを、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層し、最外周が正極集電体となるように渦巻状に捲回した後、得られた捲回物を径方向に加圧することにより、前述した図15に示す偏平形状の電極群を得た。
得られた電極群は、厚さが2.5mmで、長手方向に沿う長さL1が63mmで、短手方向に沿う長さL2が36mmであった。
絶縁性の保護シートとして幅が40mmで、厚さが0.15mmのポリイミドテープを用意し、前記電極群の最外周を保護シートでその両端部が接するように被覆した。よって、両端部間の距離Xは0である。
また、アルミ箔の両面をポリプロピレン層で被覆したものからなる厚さが0.1mm(100μm)のラミネートフィルムを用意した。このラミネートフィルムを袋状に成形した後、電極群を収納した。ひきつづき、90℃の真空雰囲気において電極群の厚さ方向に沿って15kg/cm2の圧力でプレスを施すことにより、正極、負極及びセパレータを一体化させた。
一方、25体積%のエチレンカーボネート(EC)と75体積%のγ−ブチロクトン(BL)の混合溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を1.5モル/1溶解して非水電解液を調製した。
次いで、前記ラミネートフィルム内の電極群に非水電解液を電池容量1Ah当たりの量が4.1gとなるように注入し、30Torr以下の減圧下でヒートシールし、厚さ3mm、幅40mm、高さ70mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例36〜37
絶縁性保護シートの厚さを下記表6に示すように変更すること以外は、前述した実施例35で説明したのと同様な非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例38
前述した実施例35で説明したのと同様な偏平形状の電極群の最外周を実施例35で説明したのと同様な保護シートでその両端部間に隙間が生じるように被覆した。この両端部間の距離Xは7mm、つまり0.20×L2である。
次いで、前述した実施例35で説明したのと同様にしてラミネートフィルムへの収納、プレス成形、液状非水電解質の注入、ヒートシールを行うことにより非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例39
保護シートの両端部間の距離Xを14mmにし、つまり0.40×L2にすること以外は、前述した実施例38で説明したのと同様な非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例40
前述した実施例35で説明したのと同様な偏平形状の電極群の最外周を実施例35で説明したのと同様な保護シートでその両端部が10mm重なるように被覆した。
次いで、前述した実施例35で説明したのと同様にしてラミネートフィルムへの収納、プレス成形、液状非水電解質の注入、ヒートシールを行うことにより非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例41
前述した実施例35で説明したのと同様な偏平形状の電極群に前述した実施例35で説明したのと同様にして保護シートを被覆した。
また、アルミ箔の両面をポリプロピレン層で被覆したものからなり、厚さが0.2mmのラミネートフィルムを用意した。このラミネートフィルムを袋状に成形した後、電極群を収納した。ひきつづき、前述した実施例34で説明したのと同様にして接着性を有する高分子の溶液の注入、真空乾燥を行った後、前述した実施例35で説明したのと同様な液状非水電解質を注入し、ヒートシールし、厚さ3mm、幅40mm、高さ70mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例42〜43
外装材の厚さを下記表6に示すように変更すること以外は、前述した実施例41で説明したのと同様にして薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例44
絶縁性の保護シートとして幅が40mmで、厚さが0.2mmのポリプロピレンテープを用意し、前述した実施例35で説明したのと同様な偏平形状の電極群の最外周を保護シートでその両端部が接するように被覆した。よって、両端部間の距離Xは0である。
また、アルミ箔の両面をポリプロピレン層で被覆したものからなり、厚さが0.1mmのラミネートフィルムを用意した。このラミネートフィルムを袋状に成形した後、電極群を収納した。ひきつづき、前述した実施例34で説明したのと同様にして接着性を有する高分子の溶液の注入、真空乾燥を行った後、前述した実施例35で説明したのと同様な液状非水電解質を注入し、ヒートシールし、厚さ3mm、幅40mm、高さ70mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
実施例45
保護シートの材料をポリエチレン樹脂に変更すること以外は、前述した実施例44と同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
比較例10
電極群の最外周を負極集電体にすること以外は、前述した実施例34で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
比較例11
電極群の最外周を負極集電体にし、かつ外装材の厚さを0.7mmにすること以外は、前述した実施例34で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
得られた実施例34〜45及び比較例10〜11の二次電池について、充電電流値を0.5Cにして4.2Vまで5時間充電した後、0.5Cで2.7Vまで放電する充放電サイクル試験を実施し、1サイクル目の放電容量を100%とした際の300サイクル時の放電容量を求め、これを300サイクル時の容量維持率として下記表6に示す。
また、実施例34〜45及び比較例10〜11の二次電池をそれぞれ20個ずつ用意し、4.2Vまで充電した後、180cmからの落下試験を5回行い、その後の電池性能に異常が見られた電池個数を測定し、その結果を下記表6に併記する。
さらに、実施例34〜45及び比較例10〜11の二次電池について、単位体積当りのエネルギー密度を測定し、その結果を下記表6に併記する。
表6から明らかなように、最大面積を有する2つの面がセパレータである電極群を備えた実施例34の二次電池は、300サイクル時の容量維持率が高く、かつ落下試験により電池性能に異常を生じた電池個数が皆無であることがわかる。また、最大面積を有する2つの面に跨って保護シートが形成された電極群を備えた実施例34〜45の二次電池は、300サイクル時の容量維持率が高く、かつ落下試験により電池性能に異常を生じた電池個数を少なくできることがわかる。
これに対し、最外周が負極集電体である電極群を備えた比較例10の二次電池は、300サイクル時の容量維持率が高いものの、落下試験により電池性能に異常を生じた電池個数が多いことがわかる。一方、最外周が負極集電体である電極群及び厚さが0.6mmの外装材を備えた比較例11の二次電池は、300サイクル時の容量維持率が高く、かつ落下試験により電池性能に異常を生じた電池個数が皆無であるものの、単位体積当りのエネルギー密度が低くなることがわかる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。