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JP4025407B2 - シクロオレフィンの製造方法 - Google Patents

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JP4025407B2
JP4025407B2 JP02198998A JP2198998A JP4025407B2 JP 4025407 B2 JP4025407 B2 JP 4025407B2 JP 02198998 A JP02198998 A JP 02198998A JP 2198998 A JP2198998 A JP 2198998A JP 4025407 B2 JP4025407 B2 JP 4025407B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルテニウム触媒存在下に単環芳香族炭化水素を水素添加してシクロオレフィンを製造する方法に関するものである。
シクロオレフィン類、特にシクロヘキセン類は、有機化学工業製品の中間原料としてその価値が高く、特にポリアミド原料、リジン原料などとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
シクロオレフィン類の製造方法は、単環芳香族炭化水素をルテニウム触媒を用いて部分的に水素添加する方法が最も一般的であり、選択率や収率を改良アップする方法として、触媒成分や担体の種類、あるいは反応系への添加物としての金属塩などについて検討した結果が多く報告されている。シクロオレフィンの収率を高くするためには、水と亜鉛が反応系に存在することが好ましいとされている。
【0003】
例えば、(1)単環芳香族炭化水素を水及び少なくとも1種の亜鉛化合物の共存下、中性もしくは酸性条件下に水素により部分還元するに際し、触媒として30〜200Åの平均結晶子径を有する金属ルテニウムを主成分とする粒子を担体に担持した触媒を用いて行う方法(特公平8−25919号公報)、(2)ルテニウム触媒の存在下に、単環芳香族炭化水素を部分的に水素添加してシクロオレフィンを製造するに当たり、反応系中に、飽和溶解度以下の量の、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛の中の少なくとも1種をすべて溶解状態で存在させて行う方法(特公平5−12331号公報)、(3)単環芳香族炭化水素を、水の存在下、水素により部分還元するに際し、200Å以下の平均結晶子径を有する金属ルテニウムを主成分とする水素化触媒粒子を用い、少なくとも1種の固体性塩基性亜鉛の共存下、中性または酸性の条件下に反応を行う方法(特公平8−19012号公報)などがすでに提案されている。
【0004】
さらに、ルテニウム触媒を用いて、水及び硫酸亜鉛存在下に単環芳香族炭化水素を水素により部分水素添加してシクロオレフィンを得る方法において、反応系への硫酸の添加が反応成績にどの様に影響するかについても検討が既に行われており、明らかにされている知見としては、(1)硫酸を添加しても大した触媒性能の変化はない(Applied Catalysis A:General,89(1992)77−102頁)というものがある。
【0005】
この他にも、(2)単環芳香族炭化水素を水および少なくとも1種の水溶性亜鉛化合物の共存下、酸性条件下に液相において水素により部分還元するに際し、水素化触媒が、あらかじめ亜鉛化合物を含有したルテニウム化合物を還元することによって得られる亜鉛を、ルテニウムに対し0.1〜50重量%含有する金属ルテニウムであり、かつ、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下である非担持型触媒を使用することを特徴とするシクロオレフィンの製造方法において、硫酸の添加は反応速度を高めるのに極めて効率的であるというのもがある(特公平2−16736号公報)。
【0006】
しかしながら、ルテニウム触媒を用いて、単環芳香族炭化水素を部分的に水素により部分水素添加してシクロオレフィンを製造する方法を工業的に実施しようとする場合に、従来の方法は何らかの問題を抱えている。例えば、ルテニウム触媒の他に金属硫酸塩を共存させる方法では、シクロオレフィンの選択率が向上する一方で、触媒活性が低下する傾向が見られ、特に、金属硫酸塩として硫酸亜鉛を用いた場合にはこれらの傾向が顕著であり、ルテニウム触媒の活性が低いままでシクロオレフィンを製造せざるを得ず、その点で効率が悪いという問題がある。
【0007】
また、硫酸添加に関する従来知見においては、上述のApplied Catalysis A:General,89(1992)77−102頁の記載に従えば、硫酸添加は意味がないということになる。
さらに特公平2−16736号公報においては、水相のpHを0.5〜7.0未満、好ましくは2〜6.5とするために反応系への硫酸添加が好ましいとしているが、硫酸の添加が反応成績に与える効果として、反応速度を高めるとしか記載されておらず、この場合のシクロオレフィンの選択率がどうなるかについては言及すらされておらず、実施例もない。
【0008】
硫酸の添加によりシクロオレフィンの選択率が低下すれば、原料とする単環芳香族炭化水素が増加した副生成物のためにより多く消費されることとなり、たとえ反応速度を高めることができても、原料を無駄にすることになる。したがって、効率的なシクロオレフィンの製造方法とはならない。本発明者らが実験により確認したところ、単に反応系へ硫酸を添加するだけでは、シクロオレフィンの選択率が低下して、効率的にシクロオレフィンを製造することが出来なかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シクロオレフィン選択率を低下させることなく触媒活性を向上させ、極めて効率よくシクロオレフィンを生産する方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明者らは、ルテニウム触媒、水、及び金属硫酸塩存在下で単環芳香族炭化水素を水素により部分水素添加して反応させ、シクロオレフィンを製造するに当たり、ルテニウム触媒、水及び硫酸亜鉛又は硫酸亜鉛を少なくともその構成要素とする複塩を含む触媒スラリーを高温高圧水素下で24時間以上保持し、触媒の存在する水相の常温常圧におけるpHが2.5以上7.0未満の範囲で該反応系に硫酸を添加することで、シクロオレフィンの選択率に悪影響を与えずに触媒活性の向上が達成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は下記の通りである。
1)ルテニウム触媒、水、及び金属硫酸塩存在下で単環芳香族炭化水素を水素により部分水素添加して反応させ、シクロオレフィンを製造するに当たり、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩を含む触媒スラリーを高温高圧水素下で24時間以上保持し、触媒の存在する水相の常温常圧におけるpHが2.5以上7.0未満の範囲で該反応系に硫酸を添加する方法であって、金属硫酸塩が硫酸亜鉛又は硫酸亜鉛を少なくともその構成要素とする複塩であることを特徴とするシクロオレフィンの製造方法。
【0012】
2)触媒スラリーが高温高圧水素下で24時間以上攪拌しつつ保持されることを特徴とする上記1記載の方法。
3)硫酸が、現に反応を行っている触媒スラリーが乱流状態で流動している場所へ添加されることを特徴とする上記1又は2記載の方法。
4)硫酸が、触媒スラリーが油水分離器から反応器へ循環する配管へ添加されることを特徴とする上記3記載の方法。
【0013】
5)硫酸が、反応系内に存在する全触媒スラリー量と同等量の触媒スラリーが循環するのに要する時間以上をかけて添加されることを特徴とする上記4記載の方法。
【0014】
6)高温高圧水素下における温度が100〜200℃であり、圧力が1〜100atmであることを特徴とする上記1〜のいずれかに記載の方法。
7)水が単環芳香族炭化水素の0.5〜20重量倍存在することを特徴とする上記1〜のいずれかに記載の方法。
8)ルテニウム触媒が、予めルテニウム化合物を還元して得られる金属ルテニウムであることを特徴とする上記1〜のいずれかに記載の方法。
【0015】
9)ルテニウム触媒が、ルテニウム化合物を還元することによって得られる金属ルテニウムであって、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下の非担持型触媒であることを特徴とする上記記載の方法。
1 0)ルテニウム触媒が、予め亜鉛化合物を含有したルテニウム化合物を還元することによって得られる亜鉛化合物を含有したルテニウムであって、かつ、ルテニウムに対して亜鉛を0.1〜50重量%含有する金属ルテニウムであり、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下の非担持型触媒であることを特徴とする上記記載の方法。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で原料として用いられる単環芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、及び、通常炭素数1〜4の低級アルキル基で置換されたベンゼン等が挙げられる。
ルテニウム触媒としては、数々のルテニウム化合物を還元して得られる金属ルテニウムを含む触媒が用いられる。ルテニウム化合物としては特に制限されないが、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、あるいは各種のルテニウムを含む錯体などを用いることができる。
【0017】
還元法としては、水素や一酸化炭素などによる接触還元法、あるいはホルマリン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンなどによる化学還元法が用いられる。このうち、好ましくは水素による接触還元であり、通常50〜450℃、好ましくは100〜400℃の条件で還元活性化する。還元温度が50℃未満では還元に時間がかかりすぎ、また、450℃を超えるとルテニウムの凝集が進み、活性や選択率に悪影響を及ぼすことがある。尚、この還元においては、気相で行っても液相で行ってもよいが、好ましくは液相還元である。液相で行えば、液相還元の際に用いる水などの溶媒に対して溶解性を示す不純物は除去できるからである。これらの不純物が反応系に侵入すると、多くの場合にシクロオレフィンの選択率を低下させたり、触媒活性を低下させるなどの悪影響を示す。
【0018】
ルテニウム触媒は、製造するシクロオレフィンの選択率を高めるために、予め上記還元操作を行い、還元したものを用いることが好ましい。
また、ルテニウム触媒は、他の金属成分、例えば、亜鉛、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅、金、白金など、及びこれら金属を少なくとも1種以上含む化合物を含むルテニウムを主体とするものを用いてもよい。かかる金属を使用する場合には、ルテニウム原子に対する原子比として通常0.001〜20の範囲で選択される。
【0019】
尚、かかる金属成分の内、特に亜鉛化合物が好ましく、塩化亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛などが例示される。
ルテニウム触媒は、担体に担持させて使用しても良い。担体としては、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、シリコン、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ハフニウム、タングステンなど、あるいは、かかる金属の酸化物、複合酸化物、水酸化物、硫酸塩、難水溶性金属塩、あるいは、このような担体となりうるものを2種以上化学的あるいは物理的に組み合わせた化合物や混合物等が例示される。
【0020】
ルテニウムの担持方法としては、吸着法、イオン交換法、浸せき法、共沈法、乾固法、スプレー法などが例示される。ルテニウムの担持量についても、通常、担体に対して0.001〜20重量%である。担持量が少なすぎると担体が多量に必要であり、また多すぎると担体表面上で凝集し、活性点であるルテニウムの金属表面が減少し、非効率である。
【0021】
また、ルテニウム触媒は、ルテニウムを担体に担持せず、ルテニウムあるいはルテニウムを含む還元金属粒子のまま用いてもよい。
ルテニウムあるいはルテニウムを含む還元金属微粒子のまま用いる場合には、そのルテニウム金属の平均結晶子径は200Å以下が好ましい。200Åを超える平均結晶子径では、単環芳香族炭化水素を部分水素化する触媒の活性点が存在する表面の面積が減少し触媒活性が低くなり、多量のルテニウムが必要となるので効果的とは言えない。
【0022】
本発明で用いる触媒として、最も好ましいのは、予め亜鉛化合物を含有したルテニウム化合物を還元することによって得られる亜鉛化合物を含有したルテニウムであり、かつ、ルテニウムに対して亜鉛を0.1〜50重量%含有する金属ルテニウムであって、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下である非担持型触媒である。その理由は、このルテニウム触媒が、他の触媒に比べてより高いシクロオレフィン選択率を実現するので、この高い選択率を維持したまま、本発明の方法を用いて触媒活性を向上させれば、一段とシクロオレフィンを効率的に製造できるためである。このルテニウム触媒中に含まれる0.1〜50重量%の亜鉛は、蛍光X線分析装置により測定されるもので、0価の還元亜鉛、及び/又は1価以上の亜鉛でその他元素と亜鉛化合物を形成している亜鉛である。
【0023】
本発明の反応系においては水が存在しており、その量は反応形式によって異なるが、用いる原料単環芳香族炭化水素に対して0.001〜100重量倍共存させることができるが、この水は反応条件において、原料及び生成物を主成分とする有機液相と、水を含む液相とが1相とならない量の水が少なくとも存在しており、言い換えると、原料及び生成物が主成分の有機物液相つまりオイル相と水が主成分の水相が相分離した状態、つまりオイル相と水相の液2相状態となる量が良い。かつ、水の量が多すぎると反応器が大きくなる等弊害があるため、好ましくは、用いる原料単環芳香族炭化水素に対して0.5〜20重量倍共存させるのが良い。尚、ここに言う主成分とは、該液相を構成する成分のうち、モル数にして最大割合を示す成分のことである。
【0024】
反応系に存在する金属硫酸塩は、硫酸亜鉛または硫酸亜鉛を少なくともその構成要素とする複塩である。硫酸亜鉛をその構成要素とする複塩としては、一般式が(ZnSO ・(Zn(OH) であり、m:n=1:0.01〜100で表される複塩等が例示される。
【0025】
また、これら金属硫酸塩の使用量は、その金属硫酸塩の種類によっても異なるが、通常は、反応系に存在する水に対して1×10-5〜1.0重量倍であり、硫酸亜鉛については1.0×10-4〜0.5重量倍がより好ましい。さらにこれらの金属硫酸塩は、反応中において全量が溶解している必要はない。
本発明の反応系へは、従来知られた方法の如くに他の金属塩を存在させてもよい。金属塩の種類としては、周期表のリチウム、ナトリウム、カリウムなどのI族金属、マグネシウム、カルシウムなどのII族金属(族番号はIUPAC無機化学命名法改訂版(1989)による)、あるいは亜鉛、マンガン、コバルト、銅、カドミウム、鉛、砒素、鉄、ガリウム、ゲルマニウム、バナジウム、クロムニウム、銀、金、白金、ニッケル、パラジウム、バリウム、アルミニウムなどの金属硝酸塩、塩化物、酸化物、水酸化物、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩など、又はこれらを2種以上化学的及び/又は物理的に混合して用いることなどが例示され、この中でも水酸化亜鉛、酸化亜鉛などの亜鉛塩の添加は好ましく、特に水酸化亜鉛と硫酸亜鉛とで構成される複塩の存在は好ましい。
【0026】
金属塩の使用量は、水相を酸性に保てる限り、特に制限はないが、通常は、用いるルテニウムに対して1×10-5〜1×105 重量倍であり、これらは反応系内のどこに存在してもかまわないし、存在形態についても特に制限するものではない。
さらに、水の他に水酸基を1つ以上持つ1種類以上の有機物が反応系内に存在していても良く、その量についても特に制限はないが、水及び単環芳香族炭化水素とそれらから得られるシクロオレフィンとシクロアルカンの両方を反応条件下溶解させ得るものについては、反応系内に存在する水相とオイル相が液相として1相とならない範囲が好ましい。つまり、該有機物の添加量は、該反応液が該水相及び該オイル相の液相2相状態の存在を保ちうる範囲がよい。
【0027】
本発明において重要な特徴は、反応に用いるルテニウム触媒、水、及び金属硫酸塩からなる触媒スラリーを高温高圧水素下で24時間以上保持し、かつ反応系に硫酸を添加することによって、触媒活性を向上させてシクロオレフィンを効率よく製造することにある。反応系への硫酸の添加によって、触媒活性は向上し、かつシクロオレフィンの選択率も、硫酸を添加しない場合と比較して、ほとんど遜色がない。このことは、硫酸を添加しても触媒性能にほとんど変化がないという従来知見と全く異なっていおり、さらに、反応系へ触媒スラリーを高温高圧水素下に保持しないで硫酸を添加した場合に生じるシクロオレフィンの選択率の低下も見られず、極めて効率的にシクロオレフィンを製造出来る点で驚くべきことに値する。
【0028】
硫酸の添加が触媒活性を向上させる原因については明確ではないが、おそらく硫酸添加により触媒の存する水相のpHが低下するために、ルテニウム上に作用する金属硫酸塩の被毒性が緩和されることが理由のひとつとして考えられるが、pHだけですべてを説明することは残念ながら出来ない。先述した従来知見、つまり硫酸を添加しても触媒性能にほとんど変化がないという従来知見(Applied Catalysis A:General,89(1992)77−102頁)と反応の挙動が異なる原因については、硫酸の添加量が、本発明の場合は、常温常圧下の測定で水相pHが2.5以上となる添加量であって、従来知見に比較して少なかったこと、あるいは、添加される触媒スラリーが、本発明においては高温高圧水素下に保持したものであることに起因すると考えられるが、詳細は不明である。
【0029】
また、触媒スラリーを高温高圧水素下で保持しなければ、単環芳香族炭化水素を水素添加して生成するシクロオレフィンの選択率が低下し、代わりにシクロパラフィンの生成が増加する。一方、高温高圧水素下で保持した触媒スラリーに硫酸を添加すると、驚くべき事に、この選択率の悪化がみられない。この原因は、反応成績に影響を与える金属硫酸塩の形態が2種以上存在するためと推定される。
【0030】
すなわち、高温高圧水素下で触媒スラリーを保持することにより、水相中に存在してルテニウム触媒に作用している金属硫酸塩に何らかの変化、つまりルテニウム触媒に作用する仕方や作用形態が変化して触媒活性だけに影響を与える金属硫酸塩が増加し、さらに硫酸添加によって緩和されるのは、先ず触媒活性だけを低下させる作用をしている金属硫酸塩の影響であると推定される。つまり、高温高圧水素下で触媒を保持していると触媒活性だけに影響する金属硫酸塩が増加し、シクロオレフィンの選択率に関しては硫酸の影響を受けにくくなると考えられる。
【0031】
高温高圧水素下で触媒スラリーを保持しなければ、シクロオレフィンの選択率に影響せずに触媒活性だけに影響する金属硫酸塩の生成量あるいは作用量が極めて少なく、シクロオレフィンの選択率と触媒活性の両方に影響している金属硫酸塩に直接的に作用するため、触媒スラリーを高温高圧保持しなければ、硫酸添加によりシクロオレフィンの選択率の低下が発生すると考えられる。
【0032】
本発明においては、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩を含む触媒スラリーを高温高圧水素下で24時間以上保持しなければならないが、本発明で言う高温高圧水素下とは、100〜200℃、1〜100atmで水素下に曝すことを言い、気相部の水素分圧は、1〜100atmである。より好ましくは、110〜160℃、20〜90atmで、この場合の気相部水素分圧は20〜90atmである。温度や圧力が低すぎると、高温高圧保持の効果が発現するのに時間がかかり過ぎ、現実的な方法とならなくなり、一方、温度や圧力が高すぎると、触媒活性等に悪影響が出始めるので、上記の温度及び圧力範囲が好ましい。さらに、時間が短すぎると高温高圧保持の効果が不十分となるので、24時間以上の保持が好ましい。
【0033】
本発明において、触媒スラリーの高温高圧水素下での保持は、触媒スラリーを十分攪拌して行うことが好ましい。これは、高温高圧水素下での保持の効果を触媒スラリー全体に均一に行き渡らせるためである。さらに、この高温高圧水素下での保持は、単環芳香族炭化水素の水素による水素添加反応を行いつつ行っても、一向に差し支えない。要は、高温高圧水素下に触媒スラリーを保持すること、つまり高温高圧水素に触媒スラリーを曝すことが重要である。
【0034】
硫酸の添加量は、反応系に存在する金属硫酸塩や他の添加物によっても異なるが、好ましくは共存する金属硫酸塩に対して1.0×10-10 〜10重量倍であり、より好ましくは1.0×10-7〜1.0×10-1重量倍である。但し、あくまで反応前後において、触媒の存する水相のpHが2.5〜7.0未満を満たす範囲がよい。尚、この水相のpHは常温常圧でルテニウム触媒、金属硫酸塩を含む水相を測定した値である。
【0035】
本発明においては、触媒の存する水相のpHは、常温常圧測定で2.5以上、7.0未満の範囲内になければならず、硫酸の添加も当然この範囲内で行う必要がある。pHが2.5未満となると、先の文献に記載されたような現象、即ち、硫酸を添加する効果が見られなくなる可能性があり、またはシクロオレフィン選択率の著しい低下を招くので、避けなければならない。また、pHが7.0以上では、触媒活性が著しく低下するので、実用的なシクロオレフィンの製造方法とはいえない。
【0036】
硫酸の添加方法としては、硫酸を反応系に反応前に添加する方法と反応中に添加する方法がある。これらは、必要に応じて選択されるが、反応方式を連続反応方式を採用する場合には、抜き出しオイルを適宜分析することによって反応成績を把握しながら行うことで硫酸の添加量を誤ることもないので、反応中に添加することがより好ましい。
【0037】
また、現に反応を行っている触媒スラリーに硫酸添加を行う場合には、間欠式でも連続式でもかまわない。間欠式で硫酸を添加する場合は、硫酸を添加した効果が添加前後における生成物の分析値から判断できる一方で、触媒活性の急激なアップのために反応系が乱れる。連続式で硫酸を添加する場合には、硫酸添加の効果を把握しにくくなる一方で反応系は安定する。したがって、反応成績の管理方法によって適宜選択されることになる。
【0038】
本発明において、硫酸の添加は、反応系に存する液相、気相のどちらに行ってもよいが、好ましくは液相に添加するのがよく、さらに好ましくは、用いているルテニウム触媒全体に均一に硫酸の添加の効果が及ぶように、ルテニウム触媒の存する水相が十分攪拌あるいは流動している場所に添加するのがよい。
但し、現に反応を行っている触媒スラリーへ硫酸を添加する場合には、触媒スラリーが反応温度付近すなわち50℃以上の高温となっているために、特別の注意が必要である。
【0039】
その注意とは、第一に、硫酸の添加が、触媒スラリーが乱流を形成して流動している場所に行われることが好ましいということである。温度が高い分だけ添加した硫酸は速やかに触媒スラリーに作用するので、触媒スラリー全体に均質に広がりにくくなる。したがって、触媒スラリーが良く流動している場所で、より好ましくは乱流状態となって流動している場所がよい。尚、ここに言う乱流とは、化学工学で定義されるレイノルズ数が4000以上となる状態である。
【0040】
第二に、硫酸の添加の効果をさらにより均質に触媒スラリー全体へ作用させるために、上記の第一の注意に記載したことに加え、循環している場所へ硫酸を添加することがとりわけ好ましい。例えば、触媒スラリーと単環芳香族炭化水素及びその反応生成物から成るオイル分とを分離する油水分離器で触媒スラリーとオイル分を分離し、その分離した触媒スラリーが反応器へ戻すために現に循環している配管内へ、硫酸を添加することなどが挙げられる。
【0041】
第三に、硫酸の添加効果をより一層均質に触媒スラリー全体へ作用させるために、上記の第二の注意において、触媒スラリーが現に循環している配管内へ硫酸を添加する際に、時間をかけて行うことが肝要である。時間が短ければ、硫酸を添加した際に、配管内を現に流れる触媒にだけに硫酸が作用しかねず、均質な作用を実現しにくいからである。硫酸添加にかけるより好ましい時間をより詳しく説明すると、反応系内に存在する全触媒スラリー量と同等量の触媒スラリーがその配管内を通過して循環するのに要する時間以上が好ましい。例えば、反応系内の全触媒スラリー量が1000mlで、触媒スラリー循環量が毎分200mlである場合を考えると、5分間以上かけて硫酸を添加することが好ましいということになる。
【0042】
本発明において、添加する硫酸は、濃度95重量%以上の市販されている濃硫酸をそのまま用いていもよいし水で希釈して用いてもよい。また、市販されている濃度95重量%未満の希硫酸をそのまま用いてもよいし、さらに水で希釈して用いてもよい。これら硫酸を希釈する場合は1.0〜1.0×1010倍希釈して用いてもよい。さらにこれらと同等の品質(純度や不純物含有量など)を有する硫酸を用いてもよい。通常、市販されている硫酸に含まれる極微量の不純物、例えば、Fe、Cl、Cu、Pb、As、Seなどを含んでいるものでも差し支えない。しかし、好ましくは和光純薬工業製特級試薬以上あるいはこれと同等以上の品質を有するものがよい。
【0043】
尚、硫酸を添加する設備で60℃以上の高温にさらされる場所には、硫酸による腐食を防止するために、すでに知られている耐酸性の材質、フッ素樹脂製あるいはこれで接液部を被覆したものを用いるのが好ましい。
今回、本発明者らが開発した、硫酸を添加してシクロオレフィンを製造する方法を用いれば、シクロオレフィン選択率を低下させることなく触媒活性を向上させ、極めて効率よくシクロオレフィンを生産することが可能となり、画期的な技術といえる。
【0044】
本発明の製造方法は、回分式反応方式及び連続式反応方式の両方に適用できるが、本発明の方法を用いれば、触媒活性の経時的劣化を抑制しつつ反応を行えるので、長期間停止しないような連続反応方式において、触媒の活性劣化による触媒の入れ替えのための停止頻度を少なくでき、特に有効である。
本発明において、反応圧力は一般に10〜200atmで、好ましくは20〜70atmである。さらに、反応温度は一般に50〜250℃であるが、好ましくは100〜200℃である。
【0045】
なお、本発明において、常温常圧とは、20℃、1atmである。
さらに、ルテニウム触媒の平均結晶子径の測定は、用いるルテニウム触媒をX線回折法によって得られる回折線幅の拡がりからScherrerの式より算出して行った。具体的には、CuKα線をX線源として用いて、回折角(2θ)で44゜付近に極大をもつ回折線の拡がりから算出したものである。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例に示されるベンゼンの転化率とシクロヘキセンの選択率は、実験の濃度分析値を基に、次に示す式により算出した値を表したものである。
【0047】
シクロヘキセン選択率(%)=〔(反応により生成したシクロヘキセンのモル数)/P〕×100
但し、
P(モル数)=(反応により生成したシクロヘキセンのモル数)+(反応により生成したシクロヘキサンのモル数)
また、ベンゼンの転化率は、実験の濃度分析値を基に、次に示す式により算出した転化率を表したものである。
【0048】
ベンゼン転化率(%)=〔(反応により消費されたベンゼンのモル数)/(反応器へ供給したベンゼンのモル数)〕×100
【0049】
【実施例1】
(触媒調整)
触媒調整は、既に知られている下記の方法で行った。
塩化ルテニウム(RuCl3 ・3H2 O)を50g、塩化亜鉛130g及び1規定の塩酸5.0リットルを混合攪拌し、これに30重量%の水酸化ナトリウム水溶液1.0リットルを瞬時に加えた後、この混合溶液を70〜90℃で2時間攪拌した。この後、放冷して静置後、上澄みを除去し、沈降する黒色沈殿物を濾紙を用いて濾過した。濾紙上に残った黒色沈殿物を1リットルのビーカーに移した後、アルカリ水溶液で洗浄する目的で、このビーカーに1規定の水酸化ナトリウム水溶液を500ml加えて常温下1時間攪拌した。攪拌終了後、静置沈降し、上澄みを除去し、再び濾紙で濾過を行った。このアルカリ洗浄を3回繰り返した。この操作で得た黒色沈殿物は、大部分が水酸化亜鉛を含有する水酸化ルテニウムであった。
【0050】
この黒色沈殿物を5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に分散させ、内面にテフロンコーティングした内容積1リットルのオートクレーブに仕込み、水素により内部の空気を置換した後、50atm、150℃の水素下で攪拌しながら36時間還元した。冷却し落圧後、黒色沈殿物を濾紙で濾過し、濾紙上に残った黒色沈殿物を1リットルのビーカーに移した後、アルカリ水溶液で洗浄する目的で、このビーカーに30重量%の水酸化ナトリウム水溶液を500ml加えて常温下1時間攪拌した。攪拌終了後、静置沈降し、上澄みを除去し、再び濾紙で濾過を行った。このアルカリ洗浄を5回繰り返し、さらに30重量%水酸化ナトリウムの代わりに水を用いる以外は、上記のアルカリ洗浄と同様の操作で水洗を10回行った。これを真空乾燥し、黒色のルテニウム触媒を18gを得た。
【0051】
このルテニウム触媒は、亜鉛を5.3重量%含有するルテニウム触媒(平均結晶子径約59Å)であった。
(実験1)
上記の操作で得たルテニウム触媒18gの内の1.5g、分散剤としてジルコニアを7.5g(平均結晶子径約200Å)、常温の水280ml、ZnSO4 ・7H2 O(和光純薬工業製、特級)を49gを、反応容器として用いる内容積1リットルの内面をテフロンコーティングしたオートクレーブに仕込み、内部のガスを水素で十分置換して反応容器を密閉、誘導攪拌法により高速攪拌を行いつつ130℃まで昇温した後、高圧水素を導入して50atmまで昇圧した。
【0052】
この状態で、つまり高速攪拌下130℃、50atmの高温高圧水素下で昇圧完了後から24時間保持し、この後に水10mlを高圧ポンプで反応容器内へ10分間かけて添加し、水の添加を完了した後、直ちに130℃の液体ベンゼン140mlを一機にオートクレーブ内に圧入し、水素を圧入しつつ反応圧力50atm、130℃で高速攪拌下に反応させた。また反応中経時的に反応液を抜き出してオイル中の組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0053】
(実験2)
水10mlの代わりに、硫酸10mgを水で薄めて10mlとしたものを、高圧ポンプで反応容器内の触媒スラリーへ10分間かけて添加する以外は、実施例1の(実験1)と同様の方法で実験を行った。
実施例1で行った(実験1)及び(実験2)においては、オイル相と水相の液2相が存在する条件下で反応が行われ、高温高圧水素下の保持において反応容器内の触媒スラリーは乱流状態となっており、かつ反応の前後における触媒スラリーの常温常圧におけるpHは2.5以上7.0未満の範囲であった。尚、実施例1の(実験2)における硫酸は、和光純薬工業製・特級を用いた。
【0054】
【比較例1】
(実験1)
高温高圧水素下で24時間以上保持しなかった点を除いては、実施例1の(実験1)と同様におこなった。尚、用いたルテニウム触媒は実施例1の(触媒調整)で調整したものを用いた。
【0055】
(実験2)
高温高圧水素下で24時間以上保持しなかった点を除いては、実施例1の(実験2)と同様におこなった。尚、用いたルテニウム触媒は実施例1の(触媒調整)で調整したものを用いた。
尚、比較例1で行った(実験1)及び(実験2)においては、オイル相と水相の液2相が存在する条件下で反応が行われ、かつ反応の前後における触媒スラリーの常温常圧におけるpHは2.5以上7.0未満の範囲であった。
【0056】
【実施例2】
(触媒調整)
塩化亜鉛を用いなかった点を除いて、実施例1の(触媒調整)と同様の操作で、予めルテニウム化合物を還元することによって得たルテニウム触媒(結晶子径56Å)18gを得た。
【0057】
(実験1)
上記の操作で得たルテニウム触媒15gの内の0.5g、常温の水280ml、ZnSO4 ・7H2 O(和光純薬工業製、特級)を49gを、内容積1リットルの内面をテフロンコーティングしたオートクレーブに仕込み、内部のガスを水素で十分置換して反応容器を密閉、誘導攪拌法により高速攪拌を行いつつ150℃まで昇温した後、高圧水素を導入して50atmまで昇圧した。
【0058】
この状態で、つまり高速攪拌下150℃、50atmの高温高圧水素下で昇圧完了後から24時間保持し、この後に水10mlを高圧ポンプで反応容器内へ10分間かけて添加し、水の添加を完了した後、直ちに150℃の液体ベンゼン140mlを一気にオートクレーブ内に圧入し、水素を圧入しつつ反応圧力50atm、150℃で高速攪拌下に反応させた。また反応中、経時的に反応液を抜き出してオイル中の組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0059】
(実験2)
水10mlの代わりに、硫酸5mgを水で薄めて10mlとしたものを、高圧ポンプで反応容器内の触媒スラリーへ10分間かけて添加する以外は、実施例2の(実験1)と同様の方法で実験を行った。
実施例2で行った(実験1)及び(実験2)においては、オイル相と水相の液2相が存在する条件下で反応が行われ、高温高圧水素下の保持において反応容器内の触媒スラリーは乱流状態となっており、かつ、反応の前後における触媒スラリーの常温常圧におけるpHは2.5以上7.0未満の範囲であった。尚、実施例2の(実験2)における硫酸は、和光純薬工業製・特級を用いた。
【0060】
【比較例2】
(実験1)
高温高圧水素下で24時間以上保持しなかった点を除いては、実施例2の(実験1)と同様におこなった。尚、用いたルテニウム触媒は実施例2の(触媒調整)で調整したものを用いた。
【0061】
(実験2)
高温高圧水素下で24時間以上保持しなかった点を除いては、実施例2の(実験2)と同様におこなった。尚、用いたルテニウム触媒は実施例2の(触媒調整)で調整したものを用いた。
尚、比較例2で行った(実験1)及び(実験2)においては、オイル相と水相の液2相が存在する条件下で反応が行われ、かつ反応の前後における触媒スラリーの常温常圧におけるpHは2.5以上7.0未満の範囲であった。
【0062】
実施例1の(実験1)と(実験2)を比較すると、シクロヘキセン選択率にほとんど悪影響を与えずに、硫酸の添加によって触媒活性が向上していることが判る。また比較例1では、触媒活性は向上するもののシクロヘキセン選択率は低下している。
実施例2の(実験1)と(実験2)を比較すると、シクロヘキセン選択率にほとんど悪影響を与えずに、硫酸の添加によって触媒活性が向上していることが判る。また比較例2では、触媒活性は向上するもののシクロヘキセン選択率は低下している。
【0063】
【実施例3】
連続的にベンゼンを反応容器へ供給し、内容積3リットルの反応容器内に存する触媒スラリーとベンゼン、シクロヘキセン、シクロヘキサンから成るオイルとを混合状態で連続的に抜き出し、その混合物を触媒スラリーとオイルに分離する油水分離器に導き、分離した触媒スラリーは反応容器に循環して戻し、オイルだけを取り出す実験装置を用いて、実験をおこなった。
【0064】
初めに、実施例1で調整して得たルテニウム触媒18gの内の5.0g、分散剤としてジルコニアを30g(平均結晶子径約200Å)、常温の水2000ml、ZnSO4 ・7H2 O(和光純薬工業製、特級)を400gを、反応容器に仕込み、内部のガスを水素で十分置換した後で、昇圧昇温し、高速攪拌下、常温のベンゼンを連続的に反応容器へ当初毎時1500ml供給し、反応温度150℃で水素圧50atm下で連続反応を行った。水素は反応に必要な量以上の一定量が反応容器に供給され、余剰分は反応器気相部よりパージした。反応容器から連続的に抜き出される触媒スラリー及びオイルは、油水分離器で分離され、触媒スラリーは再び反応容器へ連続的に規定量循環ポンプを用いて循環し戻した。
【0065】
この実験中において、反応器の液相体積は一定に保ち、反応系、つまり反応容器、油水分離器、循環ポンプ及びこれら機器を接続する配管に存在する触媒スラリー量も変化させない様に反応系へ給水する水の量を制御して、反応をおこなった。尚、触媒スラリーが油水分離から反応容器へ循環する量は、つまり規定量は、反応容器へ供給するベンゼン量の10倍体積量とし、またその温度は150℃であった。さらに、オイルに溶解して系外へ出てしまう水は毎時10ml以上で、その量に相当する水は、ベンゼンとともに反応容器へ補給した。
【0066】
反応開始250時間後、硫酸2.0mgと水5mlとを混合した希硫酸を、1時間かけて触媒スラリー循環ポンプ吐出部と反応容器の間の触媒スラリー循環配管へ供給し添加した。この際、ベンゼンとともに補給される水量に関して、希硫酸に含まれる水量分を減じた。そして、この操作を2時間毎に5回繰り返した。尚、初回の硫酸添加以降は、反応容器へ供給するベンゼン量を系外へ取り出すベンゼン転化率が一定となるように変化させた。
【0067】
この実験中に、系外へ出てくるオイルの組成分析をガスクロマトグラフィーを用いて、必要に応じて適宜行った。この分析の他に時間を決めて、すなわち希硫酸添加の1時間前を初回としその後2時間毎に計6回行った。
尚、本実施例においては、オイル相と水相の液2相が存在する条件下で反応が行われ、触媒スラリー循環ポンプ吐出から反応容器を接続する配管内では、触媒スラリーは乱流状態となっておりな流れており、かつ反応の前後における触媒スラリーの常温常圧におけるpHは2.5以上7.0未満の範囲であった。尚、本実施例における硫酸は、和光純薬工業製・特級を用いた。
【0068】
実施例3における、ベンゼン転化率、シクロヘキセン選択率、反応容器へ供給したベンゼン供給量及び生成したシクロヘキセン量を表1に示す。
【0069】
【表1】
Figure 0004025407
【0070】
【実施例4】
触媒スラリー循環ポンプ吐出部と反応容器の間の触媒スラリー循環配管の一部を太短くしてその部分の触媒スラリーが乱流状態とならない様にし、その場所へ硫酸を添加し、かつ硫酸を添加する際の添加時間を1分間とした以外は実施例3と同様にして行った。尚、配管を太短くする前後で、その配管内の内容積は変化しなかった。
【0071】
実施例4における、ベンゼン転化率、シクロヘキセン選択率、反応容器へ供給したベンゼン供給量及び生成したシクロヘキセン量を表2に示す。
【0072】
【表2】
Figure 0004025407
【0073】
実施例3及び実施例4の結果を見ると、高温高圧水素下に250時間さらした触媒スラリーに硫酸を添加することで、シクロヘキセン選択率にほとんど影響を与えずに触媒活性が上がり、シクロオレフィンがより多く製造できることがわかる。さらにより詳しく結果を見ると、触媒スラリーに時間をより多くかけて、かつ触媒スラリーが乱流を形成している部分に硫酸を添加した実施例3の方が、そうしなかった実施例4に比べて硫酸添加の効果が大きい。
【0074】
【発明の効果】
本発明のシクロオレフィンの製造方法は、シクロオレフィン選択率を低下させることなく触媒活性を向上させ、極めて効率よくシクロオレフィンを生産することが可能であり、画期的な技術といえる。
【0075】
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1の実験(1)と実験(2)の反応時間とベンゼン転化率の関係を示す図である。
【0077】
【図2】実施例1の実験(1)と実験(2)のベンゼン転化率とシクロヘキセン選択率の関係を示す図である。
【0078】
【図3】比較例1の実験(1)と実験(2)の反応時間とベンゼン転化率の関係を示す図である。
【0079】
【図4】比較例1の実験(1)と実験(2)のベンゼン転化率とシクロヘキセン選択率の関係を示す図である。
【0080】
【図5】実施例2の実験(1)と実験(2)の反応時間とベンゼン転化率の関係を示す図である。
【0081】
【図6】実施例2の実験(1)と実験(2)のベンゼン転化率とシクロヘキセン選択率の関係を示す図である。
【0082】
【図7】比較例2の実験(1)と実験(2)の反応時間とベンゼン転化率の関係を示す図である。
【0083】
【図8】比較例2の実験(1)と実験(2)のベンゼン転化率とシクロヘキセン選択率の関係を示す図である。

Claims (10)

  1. ルテニウム触媒、水、及び金属硫酸塩存在下で単環芳香族炭化水素を水素により部分水素添加して反応させ、シクロオレフィンを製造するに当たり、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩を含む触媒スラリーを高温高圧水素下で24時間以上保持し、触媒の存在する水相の常温常圧におけるpHが2.5以上7.0未満の範囲で該反応系に硫酸を添加する方法であって、金属硫酸塩が硫酸亜鉛又は硫酸亜鉛を少なくともその構成要素とする複塩であることを特徴とするシクロオレフィンの製造方法。
  2. 触媒スラリーが高温高圧水素下で24時間以上攪拌しつつ保持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 硫酸が、現に反応を行っている触媒スラリーが乱流状態で流動している場所へ添加されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 硫酸が、触媒スラリーが油水分離器から反応器へ循環する配管へ添加されることを特徴とする請求項3記載の方法。
  5. 硫酸が、反応系内に存在する全触媒スラリー量と同等量の触媒スラリーが循環するのに要する時間以上をかけて添加されることを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. 高温高圧水素下における温度が100〜200℃であり、圧力が1〜100atmであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  7. 水が単環芳香族炭化水素の0.5〜20重量倍存在することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  8. ルテニウム触媒が、予めルテニウム化合物を還元して得られる金属ルテニウムであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  9. ルテニウム触媒が、ルテニウム化合物を還元することによって得られる金属ルテニウムであって、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下の非担持型触媒であることを特徴とする請求項記載の方法。
  10. ルテニウム触媒が、予め亜鉛化合物を含有したルテニウム化合物を還元することによって得られる亜鉛化合物を含有したルテニウムであって、かつ、ルテニウムに対して亜鉛を0.1〜50重量%含有する金属ルテニウムであり、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下の非担持型触媒であることを特徴とする請求項記載の方法。
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