JP4014532B2 - 高滑水性被膜及びその形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に建築用窓ガラス、車両用窓ガラス、鏡、その他産業用ガラス等に用いることが可能な、極めて優れた滑水性(水滴滑落性)を示す高滑水性被膜及びその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
被膜の滑水性を改善する試みとしては、シリコーン系ワックス、オルガノポリシロキサン、界面活性剤を含む組成物等が提案されており、例えば、特許文献1では、アルキルポリシロキサン及び酸よりなる組成物、特許文献2では、アミノ変性シリコーンオイルと界面活性剤とを含有する組成物が開示されており、30°傾斜において約15μl程度の水滴量で滑落するものが得られている。
【0003】
又、特許文献3では、−(CH2)3(CF2)7CH3等の基がオルガノシロキサン単位を形成するケイ素原子に直接結合した単位、及び、−(CH2)3SiCl3等の基がオルガノシロキサン単位を形成するケイ素原子に直接結合した単位を必須とする含フッ素シリコーン化合物及び/または該化合物の部分加水分解物生成物を含むことを特徴とする表面処理剤が開示されており、50μlの水滴が約10°の傾斜で滑落するものが得られている。
【0004】
さらに、特許文献4では、末端に加水分解可能な官能基を有するシリコーン化合物、または末端に加水分解可能な官能基を有し他端にフルオロアルキル基を併せ持つシリコーン化合物と、酸と水とを溶媒に溶解後、混合撹拌によって得られた混合液を基材表面に塗布し、続いて乾燥させることにより得られる被膜が、基材表面とシロキサン結合により化学的に結合されてなることを特徴とする水滴転落性に優れた表面処理基材が開示されており、50μlの水滴が約1°の傾斜で滑落するものが得られている。
【0005】
しかし、前記特許文献1〜特許文献4の表面処理剤は、滑水成分を基材上に直接処理して滑水層を形成させており、このために基材と滑水成分との結合が十分ではなく、さらに滑水成分の基材への固定量が少ないために耐久性が悪いという不具合を生じる。
【0006】
このため基材と滑水成分との結合を強固にし、滑水成分の基材への固定量を増加させる方法として滑水成分とマトリックス成分からなる透明被膜を基材上に形成させる検討も行われており、特許文献5には、フルオロアルキル基含有シラン化合物と、ジメチルシリコーン及び/またはその誘導体の混合物を溶媒中で加水分解して得られた溶液と、アルコキシシラン化合物を溶媒中で加水分解して得られた溶液とを混合し、この混合液を基材表面に塗布することにより形成された、フルオロアルキル基及びメチル基が塗膜の内層よりも外側表面層において高い濃度で存在する撥水性被膜が開示されている。
【0007】
又、特許文献6には形成可能な被膜形成組成物として、水酸基含有ビニルポリマー、エポキシ末端シロキサンポリマー、スルホン酸化合物及びブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物及びメラミン樹脂から選ばれる少なくとも1種の架橋剤成分及び特定のジアルキルスルホコハク酸塩及びアルキレンオキシドシランから選ばれる界面活性剤を含有する被膜を形成可能な被膜形成組成物により得られた撥水性被膜が水滴量10μlでの転落角が5°以下と優れた性能を示すことが開示されている。
【0008】
しかし、前記特許文献5は、水滴転落性が50μlの水滴が約16°の傾斜で滑落するレベルであり、特に車両用窓ガラスとしては、その雨滴除去する能力は、十分とは言い難いレベルである。また、特許文献6は、透明性が低く、塗料としての用途に限られている。
【0009】
【特許文献1】
特公昭50−15473号公報
【特許文献2】
特開平5−301742号公報
【特許文献3】
特開平11−181412号公報
【特許文献4】
特開2000−144056号公報
【特許文献5】
特開平8−12375号公報
【特許文献6】
特開2000−26758号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
撥水性被膜の水滴滑落性を向上して雨滴飛散性をさらに改善した高い水滴滑落性を示す高滑水性被膜が強く望まれており、特に車両用窓ガラスに提供できる無色透明で、滑水性と耐久性、特に耐泥水研磨性、ワイパー等による耐磨耗性に優れる高滑水性被膜はこれまでのところ得られていない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明者は、シリカマトリックス中に滑水成分のジメチルシリコーンと、耐久性を付与するフルオロアルキルシランとが含有された滑水性被膜について鋭意検討し、無色透明で、滑水性と耐久性、特に耐泥水研磨性、ワイパー等による耐磨耗性に優れる高滑水性被膜を開発した。
【0012】
すなわち、本発明の高滑水性被膜は、シリカマトリックスとなるシリカゾルに一般式[1]で表されるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンと、一般式[2]で表されるフルオロアルキルシランとが混合されて得られる塗布液を基材に塗布してなる高滑水性被膜であり、前記アルコキシ基末端ジメチルシリコーンがシリカゾルに混合される際に、シリカゾルのシリカ換算量に対して0.1重量%〜10重量%の割合で混合されてなることを特徴とする高滑水性被膜である。
【0013】
ここでシリカゾルのシリカ換算量とは、シリカゾルから得られるシリカ量を示し、シリカゾルの出発原料であるアルコキシシラン量から一義的に導きだされるものである。
【0014】
【化3】
【0015】
ここで、A1、A2は、それぞれ、2価の炭化水素基、又は、-(CH2)i-NH-CO-O-基(iは0〜9の整数)、若しくは、酸素である。又、Rは1価の炭化水素基を表し、nは2000以下の整数で平均重合度を表し、前記平均重合度nは特に5〜1000であることが好ましい。さらに、p及びqは、それぞれ、0〜3の整数であり、pとqの合計は3以上である。一般式[1]のアルコキシ基末端ジメチルシリコーンは、末端にアルコキシ基を有するので、前記滑水性被膜を形成する際に該アルコキシ基部で加水分解及び重縮合反応が生じ、マトリックスとしてのシリカと化学的に結合する。
【0016】
【化4】
【0017】
ここでBは-CF3基、または-CH2CH2Si(CH3)3-tYt基、X、Yはそれぞれ加水分解性基、tは1〜3の整数、rは0〜12の整数、sは1〜3の整数である。一般式[2]のフルオロアルキルシランは、末端に加水分解性基を有するので、前記滑水性被膜が形成する際に該加水分解性基部で加水分解及び重縮合反応が生じ、マトリックスとしてのシリカと化学的に結合する。
【0018】
又、高滑水性被膜は、一般式[2]で表されるフルオロアルキルシランが、シリカゾルに混合される際に、シリカゾルのシリカ換算量に対して3重量%〜20重量%の割合で混合されてなることを特徴とし、被膜の膜厚は10nm〜100nmであることが好ましい。
【0019】
係る高滑水性被膜を、(1)アルコキシシランを加水分解及び重縮合させることによってマトリックス成分となるシリカゾルを調製する工程と、(2)前記[1]式で表されるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンと前記[2]式で表されるフルオロアルキルシランとの混合物に、前記(1)の工程で調製したシリカゾルを添加、混合して塗布液を調製する工程と、(3)基材に前記(2)の工程で調製した塗布液を塗布した後80℃〜600℃の熱処理を行う工程、とによって被膜を形成することを特徴とする高滑水性被膜の形成方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の高滑水性被膜はシリカマトリックスとなるシリカゾルに滑水成分となるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンと、耐久性を付与する成分となるフルオロアルキルシランとが混合された塗布液よりなるものである。該アルコキシ基末端ジメチルシリコーン及び該フルオロアルキルシランは、被膜が塗布液から形成される際にアルコキシ基末端ジメチルシリコーンのアルコキシ基部およびフルオロアルキルシランの加水分解性基部で加水分解及び重縮合反応が生じ、シリカマトリックスと化学的に結合するようになる。
【0021】
高滑水性被膜を構成する成分であるマトリックスとしてのシリカは、アルコキシシランの加水分解及び重縮合反応を進めることにより形成されるシリカゾルから得られる。該シリカゾルの調製は、例えば、アルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕)と溶媒を所定量混合、攪拌(例えば、約30分程度)し溶液Aを得る。尚、溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール、又は、それらの混合溶媒が望ましいが、アルコール類に限らず、エーテル類やケトン類等も用いることができる。一方、酸性水溶液と前記溶媒を混合、攪拌して溶液Bを得る。次いで、溶液Aと溶液Bを混合後、室温で攪拌してアルコキシシランの加水分解及び重縮合反応を進めシリカゾルを得る。攪拌時間は、10分から数日が好ましく、特に30分から1日が好ましいが、室温以外で攪拌する場合はこれに限定されるわけではない。以上のようにアルコキシシランの加水分解は、前記アルコキシシランを出発原料として、少量の水と塩酸、硝酸、酢酸などの酸触媒を添加し行うことができ、その加水分解物を室温又は加熱しながら攪拌することにより重縮合させ、シリカゾルを得ることができる。尚、シリカゾルの調製法としては、上記の方法に限定されるものではないが、上記のようなアルコキシシランを溶媒で希釈したものと、溶媒で希釈した酸性水溶液を徐々に混合する方法は、急激な反応を避けることができ、より均質な反応が得られるので、好ましい。
【0022】
尚、アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、又はジアルコキシシラン類等を用いることができる。尚、上記アルコキシシランの中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランが好ましい。
【0023】
前記シリカゾルに混合される一般式[1]で表されるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンが有するアルコキシ基の数(p+q)は、3以上であることが重要である。加水分解性基のアルコキシ基の数が3個未満であるとアルコキシシランを加水分解及び重縮合させることによって得られるシリカマトリックス成分となるシリカゾルへの溶解度が減少し成膜性が低下することや、前記アルコキシ基末端ジメチルシリコーンと被膜のマトリックス成分であるシリカとの結合が不十分になり、高滑水性被膜の耐久性が著しく低下するので、前記アルコキシ基の数(p+q)の合計は3以上でなければならない。
【0024】
【化5】
【0025】
ここで、A1、A2は、それぞれ、2価の炭化水素基、又は、-(CH2)i-NH-CO-O-基(iは0〜9の整数)、若しくは、酸素である。又、Rは1価の炭化水素基を表し、nは2000以下の整数で平均重合度を表す。さらに、p及びqは、それぞれ、0〜3の整数であり、pとqの合計は3以上である。
【0026】
又、本発明の高滑水性被膜は、一般式[1]で表されるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンがシリカゾルに混合される際に、シリカゾルのシリカ換算量に対して0.1重量%〜10重量%の割合で混合されてなることが重要である。0.1重量%未満では、被膜は十分な滑水性を示さず、10重量%を超えると、シリカゾルとの相溶性が低下し成膜性が著しく低下する。さらに、一般式[1]で表されるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンの平均重合度nは、2000を超えると、シリカゾルへの溶解度が著しく低下して分離困難な不溶物が残留し、成膜性が著しく低下するので、2000以下でなければならず、特に、5〜1000であることが好ましい。5未満であるとアルコキシ基末端ジメチルシリコーンの揮発性が高くなり、高滑水性被膜中に導入しにくくなる。一方、1000を超えるとシリカゾルとの相溶性が低下するので、平均重合度nは1000以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明の高滑水性被膜は、一般式[2]で表されるフルオロアルキルシランがシリカゾルに混合される際に、シリカゾルのシリカ換算量に対して3重量%〜20重量%の割合で混合されてなることが好ましい。3重量%未満では、被膜の耐久性が著しく低下し、20重量%を超えるとマトリックスとなるシリカゾルとの相溶性が低下し、成膜性が著しく低下する。
【0028】
【化6】
【0029】
ここでBは-CF3基、または-CH2CH2Si(CH3)3-tYt基、X、Yはそれぞれ加水分解性基、tは1〜3の整数、rは0〜12の整数、sは1〜3の整数である。
【0030】
前記一般式[2]で表されるフルオロアルキルシランとしては、例えばCF3(CF2)11CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(CF2)11CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)11CH2CH2Si(CH3)2OCH3、CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)9CH2CH2Si(CH3)2OCH3、CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7CH2CH2Si(CH3)2OCH3、CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)5CH2CH2Si(CH3)2OCH3、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、CF3CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CF3CH2CH2Si(CH3)2OCH3、CF3(CF2)11CH2CH2SiCl3、CF3(CF2)11CH2CH2SiCH3Cl2、CF3(CF2)11CH2CH2Si(CH3)2Cl、CF3(CF2)9CH2CH2SiCl3、CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3Cl2、CF3(CF2)9CH2CH2Si(CH3)2Cl、CF3(CF2)7CH2CH2SiCl3、CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3Cl2、CF3(CF2)7CH2CH2Si(CH3)2Cl、CF3(CF2)5CH2CH2SiCl3、CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3Cl2、CF3(CF2)5CH2CH2Si(CH3)2Cl、CF3CH2CH2SiCl3、CF3CH2CH2SiCH3Cl2、CF3CH2CH2Si(CH3)2Cl等の片末端に加水分解性基を有するフルオロアルキルシランや、(CH3O)3SiCH2CH2(CF2)12CH2CH2Si(OCH3)3、(CH3O)2CH3SiCH2CH2(CF2)12CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CH3O(CH3)2SiCH2CH2(CF2)12CH2CH2Si(CH3)2OCH3、(CH3O)3SiCH2CH2(CF2)10CH2CH2Si(OCH3)3、(CH3O)2CH3SiCH2CH2(CF2)10CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CH3O(CH3)2SiCH2CH2(CF2)10CH2CH2Si(CH3)2OCH3、(CH3O)3SiCH2CH2(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3、(CH3O)2CH3SiCH2CH2(CF2)8CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CH3O(CH3)2SiCH2CH2(CF2)8CH2CH2Si(CH3)2OCH3、(CH3O)3SiCH2CH2(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3、(CH3O)2CH3SiCH2CH2(CF2)6CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CH3O(CH3)2SiCH2CH2(CF2)6CH2CH2Si(CH3)2OCH3、(CH3O)3SiCH2CH2CF2CH2CH2Si(OCH3)3、(CH3O)2CH3SiCH2CH2CF2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、CH3O(CH3)2SiCH2CH2CF2CH2CH2Si(CH3)2OCH3、Cl3SiCH2CH2(CF2)12CH2CH2SiCl3、Cl2CH3SiCH2CH2(CF2)12CH2CH2SiCH3Cl2、Cl(CH3)2SiCH2CH2(CF2)12CH2CH2Si(CH3)2Cl、Cl3SiCH2CH2(CF2)10CH2CH2SiCl3、Cl2CH3SiCH2CH2(CF2)10CH2CH2SiCH3Cl2、Cl(CH3)2SiCH2CH2(CF2)10CH2CH2Si(CH3)2Cl、Cl3SiCH2CH2(CF2)8CH2CH2SiCl3、Cl2CH3SiCH2CH2(CF2)8CH2CH2SiCH3Cl2、Cl(CH3)2SiCH2CH2(CF2)8CH2CH2Si(CH3)2Cl、Cl3SiCH2CH2(CF2)6CH2CH2SiCl3、Cl2CH3SiCH2CH2(CF2)6CH2CH2SiCH3Cl2、Cl(CH3)2SiCH2CH2(CF2)6CH2CH2Si(CH3)2Cl、Cl3SiCH2CH2CF2CH2CH2SiCl3、Cl2CH3SiCH2CH2CF2CH2CH2SiCH3Cl2、Cl(CH3)2SiCH2CH2CF2CH2CH2Si(CH3)2Cl等の両末端に加水分解性基を有するフルオロアルキルシランを用いることができる。又、前記一般式[2]のXやYで表される加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、又は、クロロ基やイソシアネート基等のものを用いることができる。
【0031】
本発明の高滑水性被膜は、前記アルコキシ基末端ジメチルシリコーンのアルコキシ基部および前記フルオロアルキルシランの加水分解性基部において加水分解及び重縮合反応が生じるので、高滑水性被膜が形成する際に、前記アルコキシ基末端ジメチルシリコーンおよび前記フルオロアルキルシランは、マトリックスとしてのシリカと化学的に結合するようになり、耐久性の優れる被膜が得られる。この際、シリカマトリックスと化学的な結合を生じていないアルコキシ基部および加水分解性基部が他のアルコキシ基末端ジメチルシリコーンのアルコキシ基部やフルオロアルキルシランの加水分解性基部と反応して結合が生じていても差し支えない。
【0032】
さらに、本発明の高滑水性被膜の膜厚は、10nm〜100nmであることが好ましい。10nm未満では、基材中に存在するアルカリ等の拡散成分の影響を受けて耐久性が低下するので好ましくない。一方、100nmを超える膜厚を得るためには、塗布液中のシリカの濃度を多くしなければならない。塗布液中のシリカの濃度を多くすると、シリカとアルコキシ基末端ジメチルシリコーンやフルオロアルキルシランとの相溶性が低下し、透明性の優れた均質な被膜を得ることが困難となり好ましくない。特に、優れた透明性が要求される自動車用窓ガラスへの実用に際しては重要な点である。
【0033】
次に、本発明の高滑水性被膜の形成方法について説明する。
【0034】
本発明の高滑水性被膜は、(1)アルコキシシランを加水分解及び重縮合させることによってマトリックス成分としてのシリカゾルを調製する工程と、(2)前記[1]式で表されるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンと前記[2]式で表されるフルオロアルキルシランとの混合物に、前記(1)の工程で調製したシリカゾルを添加、混合して塗布液を調製する工程と、(3)基材に前記(2)の工程で調製した塗布液を塗布した後80℃〜600℃の熱処理を行う工程、とによって被膜が形成される。
【0035】
ここで、高滑水性被膜用塗布液の調製方法について説明する。高滑水性被膜用塗布液は、前記一般式[1]で表されるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンと前記一般式[2]で表されるフルオロアルキルシランを混合して得られた混合物にシリカマトリックスとなる前記シリカゾルを添加、混合し、前記アルコキシ基末端ジメチルシリコーンと前記フルオロアルキルシランを加水分解させ、さらに重縮合反応によって前記シリカゾルと結合させることにより得ることができる。ここで、アルコキシ基末端ジメチルシリコーンとフルオロアルキルシランとを先に混合するのは、両成分を塗布液中に均質に混合させるためである。
【0036】
上記で用いる溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶媒類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系溶媒やそれらの混合物を用いることが好ましい。
【0037】
次に、上記で得られた塗布液を基材表面に塗布する。塗布方法としては、手塗り、ノズルフローコート法、ディッピング法、スプレー法、リバースコート法、フレキソ法、印刷法、フローコート法、スピンコート法、それらの併用等各種被膜の形成方法が適宜採用し得る。又、簡易なタイプのスプレー式撥水処理剤などとしても使用することができる。
【0038】
次に、熱処理を行い、シリカゾルと、アルコキシ基末端ジメチルシリコーンおよびフルオロアルキルシランとの重縮合反応を進行させて、アルコキシ基末端ジメチルシリコーンおよびフルオロアルキルシランとシリカマトリックスとを結合をさせると同時に、基材表面に高滑水性被膜を固着させる。熱処理温度としては、80℃〜600℃が好ましい。熱処理温度が80℃未満では、前記重縮合反応が不十分となるだけでなく、高滑水性被膜も基材に十分に固着しないので、結果として耐久性が低下し好ましくない。一方、600℃を超えるとアルコキシ基末端ジメチルシリコーンやフルオロアルキルシランが熱分解して滑水性が著しく低下するので好ましくない。
【0039】
基材としては、ガラス、プラスチック等特に限定されるものではないが、例えば、ガラス基材の場合には、建築用窓ガラスや自動車用窓ガラス等に通常使用されているフロ−トガラスあるいはロ−ルアウト法で製造されたソーダ石灰ガラス等無機質の透明性がある板ガラスが好ましく、無色又は着色、ならびにその種類あるいは色調、他の機能性膜との組み合わせ、ガラスの形状等に特に限定されるものではなく、平板ガラスさらに曲げ板ガラスとしてはもちろん風冷強化ガラス、化学強化ガラス等の各種強化ガラスや網入りガラス、又さらには、ホウケイ酸塩ガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラス、低膨張結晶化ガラス、ゼロ膨張結晶化ガラス、TFT用ガラス、PDP用ガラス、光学フィルター用基材ガラスなどの各種ガラスを用いることができる。
【0040】
ガラスは単板で使用できるとともに、複層ガラスあるいは合わせガラスとしても使用できる。又、被膜の形成は基材の片面であっても両面であってもかまわないし、基材表面の全体であっても、一部分であってもかまわない。
【0041】
本発明における滑水性とは、実施例の評価方法で述べるような方法で評価されるもので、サンプル表面上に50μlの純水を滴下した後、該サンプルを徐々に傾けていき、水滴が動き始める時点の傾斜角度を測定することで評価するものである。尚、該傾斜角度を転落角(°)とし、転落角は協和界面科学製CA−A型を用いて大気中(約25℃)で測定した。
【0042】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。高滑水性被膜の評価方法を以下に示す。
【0043】
〔高滑水性被膜の評価方法〕
(1)接触角
高滑水性被膜を有するサンプル表面に、純水約2μlを置いたときの水滴とサンプル表面とのなす角を接触角計で測定した。尚、接触角計には協和界面科学製CA−X型を用い、大気中(約25℃)で測定した。
(2)転落角
サンプルを水平に保持した状態で、サンプル表面上に50μlの純水を滴下した後、サンプルを徐々に傾けていき、水滴が動き始める時点の傾斜角度を転落角(°)とした。尚、転落角は協和界面科学製CA−A型を用いて大気中(約25℃)で測定した。
(3)セリア研磨試験
ガラス用研磨剤ミレークA(T)(三井金属鉱業製)を水道水に分散させた懸濁液(10重量%)を染み込ませた綿布で、サンプル表面を約1.5kg/cm2の強さで研磨した。研磨領域の70%が親水化するまでの研磨回数(往復)を評価した。
(4)膜厚
高滑水性被膜の膜厚は、サーフコーダー(小坂研究所製、ET4000A)で測定した。
(5)ワイパー磨耗試験
高滑水性被膜を形成した基材に、水道水を750ml/分の散水量で45秒の散水と15秒の停止の繰り返し条件で散水しながら、押し圧16g/cmで接触させた天然ゴム系撥水用ラバーを実車のワイパー駆動システムを用いて作動させた。ここで、ワイパーラバーが1往復したときを払拭回数1回とし、払拭速度48回/分でワイパーラバーを作動させた。なお、被膜側から見て左側ワイパーラバ−を運転席側のワイパー、右側ワイパーラバーを助手席側のワイパーとする。
【0044】
実施例1
(1)シリカゾルの調製
シリカゾルは、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4:TEOS〕の加水分解及び重縮合反応を進めることにより調製した。図1に、シリカゾルの調製手順と各成分の混合割合(重量比)を示す。
【0045】
先ず、TEOS;312.5gとエキネンF1(90重量%のエタノールと10重量%のイソプロピルアルコールからなる低級アルコールの混合物);450.0gを混合し、約30分間攪拌し溶液Aを得た。又、60重量%硝酸水溶液;7.5g、H2O;210.0g及びエキネンF1;20.0gを混合し、約30分間攪拌し溶液Bを得た。次いで、溶液Aと溶液Bを混合後、約15時間室温で攪拌することによってシリカゾルXを得た。
【0046】
(2)塗布液の調製
塗布液は、アルコキシ基末端ジメチルシリコーンとフルオロアルキルシランを混合して得られた混合物に上記シリカゾルXを添加、混合することによって得た。図2に塗布液の調製手順と各薬液の混合割合(重量比)を示す。又、サンプルの作製条件を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
先ず、酢酸エチルで1重量%に希釈したヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3、以降「C8フルオロアルキルシラン」と省略する〕溶液;0.72g、酢酸エチルで0.1重量%に希釈した平均重合度nが200のアルコキシ基末端ジメチルシリコーン〔(CH3O)3SiCH2CH2[Si(CH3)2O]200Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3〕液;0.70g、メチルエチルケトン;7.00gとイソプロピルアルコール;7.00gを混合し、約5分間攪拌した。次いで、上記シリカゾルX;0.78gを添加し、約15時間室温で攪拌した。次いで、メチルエチルケトン;26.8gとイソプロピルアルコール;26.8gを添加し、30分間攪拌した。以上の方法により、シリカ濃度が0.1重量%、シリカゾルのシリカ換算量に対するアルコキシ基末端ジメチルシリコーンの重量比(以降、「シリコーン濃度」と記載する)が1重量%、シリカゾルのシリカ換算量に対するフルオロアルキルシランの重量比(以降、「フルオロアルキルシラン濃度」と記載する)が10重量%の塗布液を得た。
【0049】
(3)ガラス基板の洗浄
1200mm×800mm×2mm厚サイズのフロートガラスの表面を研磨液を用いて研磨し、ガラス洗浄機(当所製作品)にて水洗及び乾燥した。なお、研磨液には、ガラス用研磨剤ミレークA(T)(三井金属鉱業製)を水道水に分散させた懸濁液(1重量%)を用いた。
【0050】
(4)高滑水性被膜の形成
上記(2)で調製した塗布液をスピンコート法により上記(3)で準備したガラス基板上に塗布した。先ず、スピンコーター上に上記ガラス基板を設置し、回転速度が80rpmの速度で回転させながら約200mlの塗布液を滴下し、30秒間回転速度を維持して塗膜の乾燥を行い、良好な成膜性の透明ゲル膜を得た。次いで、280℃で10分間熱処理を行い、室温まで冷却させて膜厚が20nmの高滑水性被膜付きガラスサンプルを得た。
【0051】
上記[高滑水性被膜の評価方法]に記載した要領で得られた高滑水性被膜付きガラスサンプルの初期性能及び耐久性は、表2に示すとおり、初期転落角は10°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに140往復を要し、良好な耐久性を示した。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例2
平均重合度nが300のアルコキシ基末端ジメチルシリコーン〔(C2H5O)3SiCH2CH2[Si(CH3)2O]300Si(CH3)2CH2CH2Si(OC2H5)3〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が20nmの透明被膜が得られ、初期転落角は12°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに180往復要し、良好な耐久性を示した。
【0054】
実施例3
平均重合度nが500のアルコキシ基末端ジメチルシリコーン〔(CH3O)3SiCH2CH2[Si(CH3)2O]500Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が20nmの透明被膜が得られ、初期転落角は12°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに200往復要し、良好な耐久性を示した。
【0055】
実施例4
平均重合度nが50のアルコキシ基末端ジメチルシリコーン〔(CH3O)3SiCH2CH2[Si(CH3)2O]50Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が20nmの透明被膜が得られ、初期転落角は11°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに140往復要し、良好な耐久性を示した。
【0056】
実施例5
平均重合度nが150のアルコキシ基末端ジメチルシリコーン〔(CH3O)3SiO[Si(CH3)2O]150Si(OCH3)3〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が20nmの透明被膜が得られ、初期転落角は10°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに160往復要し、良好な耐久性を示した。
【0057】
実施例6
シリコーン濃度を0.5重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が20nmの透明被膜が得られ、初期転落角は12°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに150往復要し、良好な耐久性を示した。
【0058】
実施例7
フルオロアルキルシラン濃度を11重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が30nmの透明被膜が得られ、初期転落角は12°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに170往復要し、良好な耐久性を示した。
【0059】
実施例8
平均重合度nが250のアルコキシ基末端ジメチルシリコーン〔(CH3O)3SiO[Si(CH3)2O]250Si(OCH3)3〕を用い、フルオロアルキルシラン濃度を9重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が30nmの透明被膜が得られ、初期転落角は8°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに120往復要し、良好な耐久性を示した。
【0060】
実施例9
シリコーン濃度を1.5重量%とした以外はすべて実施例2と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が30nmの透明被膜が得られ、初期転落角は10°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに120往復要し、良好な耐久性を示した。
【0061】
実施例 10
シリコーン濃度を1.5重量%、フルオロアルキルシラン濃度を11重量%とした以外はすべて実施例2と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が30nmの透明被膜が得られ、初期転落角は12°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに150往復要し、良好な耐久性を示した。
【0062】
実施例11
フルオロアルキルシランにヘンイコサフルオロドデシルトリメトキシシラン〔CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3、以降「C10フルオロアルキルシラン」と省略する〕を使用し、シリコーン濃度を1.5重量%、フルオロアルキルシラン濃度を9重量%とした以外はすべて実施例2と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が30nmの透明被膜が得られ、初期転落角は12°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに130往復要し、良好な耐久性を示した。
【0063】
実施例 12
フルオロアルキルシラン濃度を10重量%とした以外はすべて実施例11と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が30nmの透明被膜が得られ、初期転落角は12°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに150往復要し、良好な耐久性を示した。又、ワイパー磨耗試験の結果を図3及び表3に示す。運転席側及び助手席側の両方のワイパーが払拭する領域(重なり部)の接触角は、33万回払拭後においても92°と高い接触角を維持し、さらに、助手席側ワイパーの上側反転部の劣化も小さく、良好な耐久性を示した。
【0064】
【表3】
【0065】
実施例 13
150℃で10分間熱処理した以外は全て実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が20nmの透明被膜が得られ、初期転落角は10°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては、70%を親水化させるのに50往復要し、良好な耐久性を示した。
【0066】
比較例1
フルオロアルキルシラン濃度を0重量%とした以外は全て実施例1と同じとした。すなわち、本比較例ではフルオロアルキルシランを含有しない被膜を作製した。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が20nmの透明被膜が得られ、初期転落角は7°と高い水滴転落性を示したが、セリア研磨試験においては、10往復の研磨で70%が親水化し、耐久性は悪かった。
【0067】
比較例2
酢酸エチルで1重量%に希釈したC8フルオロアルキルシラン溶液;0.72gと酢酸エチルで0.1重量%に希釈した平均重合度nが150のアルコキシ基末端ジメチルシリコーン〔(CH3O)3SiO[Si(CH3)2O]150Si(OCH3)3〕溶液;0.70gを混合攪拌して得た溶液;4.0mlをガラス基板上に滴下し、綿布(商品名;ベンコット)でガラス全面に十分引き伸ばした後、5分程度風乾した。その後、マッフル炉で100℃、10分間の熱処理を行い、白濁して残った余剰な滑水剤をイソプロピルアルコールで拭き上げて透明なサンプルを得た。すなわち、本比較例では、シリカマトリックスのない被膜を作製した。結果、物性は表2に示すとおり、初期転落角は19°と悪く、セリア研磨試験においても、5往復以下の研磨で70%が親水化し、耐久性は悪かった。
【0068】
比較例3
シリコーン濃度を50.0重量%、フルオロアルキルシラン濃度を3重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、初期転落角は10°と良好な水滴転落性を示したが、セリア研磨試験においては、35往復で70%が親水化し、耐久性は悪かった。又、ワイパー磨耗試験の結果を図3及び表3に示す。運転席側及び助手席側の両方のワイパーが払拭する領域(重なり部)の接触角は、33万回払拭後で60°と低く、さらに、助手席側ワイパーの上側反転部も広い範囲で劣化し、耐久性は悪かった。
【0069】
比較例4
平均重合度nが2500のアルコキシ基末端ジメチルシリコーン〔(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2[Si(CH3)2O]2500Si(CH3)2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、透明な滑水性被膜は得られなかった。
【0070】
比較例5
シリコーン濃度を20重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、透明な滑水性被膜は得られなかった。
【0071】
比較例6
フルオロアルキルシラン濃度を30重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、透明な滑水性被膜は得られなかった。
【0072】
比較例7
塗布液中のシリカ濃度を1.0重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、均質な塗布液が得られず、これを塗布して作製した被膜も不透明であった。なお、膜厚は130nmであった。
【0073】
比較例8
得られた被膜の熱処理を省略した以外は全て実施例1と同じとした。結果、物性は表2に示すとおり、膜厚が30nmの透明被膜が得られ、初期転落角は11°と良好な水滴転落性を示したが、セリア研磨試験においては、10往復で70%が親水化し、耐久性は悪かった。
【0074】
【発明の効果】
本発明の高滑水性被膜は、高い滑水性と耐久性、特に耐泥水研磨性、ワイパー等による耐磨耗性を兼ね備えているので、車両用の窓ガラス等に用いた場合には、雨天時に前方、側方、後方の視界確保が容易となり運転の安全性が向上する。さらには、この効果が長期間にわたり維持できる等の著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるシリカゾルXの調製手順を示す図である。
【図2】実施例1における塗布液の調製手順を示す図である。
【図3】ワイパー磨耗試験における運転席側および助手席側の両方のワイパーが磨耗する領域(重なり部)の接触角の変化を示す図である。
Claims (5)
- シリカマトリックスとなるシリカゾルに、一般式[1]で表されるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンと、一般式[2]で表されるフルオロアルキルシランとが混合されて得られる塗布液を基材に塗布してなる高滑水性被膜であり、前記アルコキシ基末端ジメチルシリコーンがシリカゾルに混合される際に、前記アルコキシ基末端ジメチルシリコーンが、シリカゾルのシリカ換算量に対して0.1重量%〜10重量%の割合で混合されてなることを特徴とする高滑水性被膜。
- 一般式[2]で表されるフルオロアルキルシランが、シリカゾルに混合される際に、シリカゾルのシリカ換算量に対して3重量%〜20重量%の割合で混合されてなることを特徴とする請求項1に記載の高滑水性被膜。
- 一般式[1]で表されるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンの平均重合度nが5〜1000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高滑水性被膜。
- 膜厚が10nm〜100nmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高滑水性被膜。
- (1)アルコキシシランを加水分解及び重縮合させることによってシリカマトリックス成分となるシリカゾルを調製する工程と、(2)前記[1]式で表されるアルコキシ基末端ジメチルシリコーンと前記[2]式で表されるフルオロアルキルシランとの混合物に、前記(1)の工程で調製したシリカゾルを添加、混合して塗布液を調製する工程と、(3)基材に前記(2)の工程で調製した塗布液を塗布した後80℃〜600℃の熱処理を行う工程とによって被膜を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の高滑水性被膜の形成方法。
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