JP3990549B2 - 形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板及びその製造方法に関するもので、自動車部品等が主たる用途である。本発明の鋼板は熱延鋼板と冷延鋼板の双方を含有する。
【0002】
【従来の技術】
自動車からの炭酸ガスの排出量を抑えるために、高強度鋼板を使用して自動車車体の軽量化が進められている。また、搭乗者の安全性確保のためにも、自動車車体には軟鋼板の他に高強度鋼板が多く使用されるようになってきている。更に自動車車体の軽量化を今後進めていくために、従来以上に高強度鋼板の使用強度レベルを高めたいという新たな要請が非常に高まりつつある。
【0003】
しかしながら、高強度鋼板に曲げ変形を加えると、加工後の形状がその高強度ゆえに、加工冶具の形状から離れて加工前の形状の方向にもどりやすくなるスプリング・バック現象や成形中の曲げ−曲げ戻しからの弾性回復により側壁部の平面が曲率を持った面になってしまう壁そり現象が起こり、狙いとする加工部品の形状が得られない寸法精度不良が生じる。従って、従来の自動車の車体では、主として440MPa以下の高強度鋼板に限って使用されてきた。
【0004】
すなわち、自動車車体にとっては、490MPa以上の高強度鋼板を使用して車体の軽量化を進めていく必要があるにもかかわらず、スプリング・バックや壁そりが起こりにくく寸法精度が良好、すなわち、形状凍結性の良い高強度鋼板が存在しないのが実状である。付け加えるまでもなく、440MPa以下の高強度鋼板や軟鋼板の加工後の形状凍結性を高めることも、自動車や家電製品などの製品の形状精度を高める上で極めて重要である。
【0005】
特開平10−72644号公報には、圧延面に平行な面における{200}集合組織の集積度が1.5以上であることを特徴とするスプリング・バック量(本発明での寸法精度)が小さいオーステナイト系ステンレス冷延鋼板が開示されている。しかし、フェライト系鋼板のスプリングバック現象や壁そり現象を低減する技術については何ら記載されていない。
【0006】
また、フェライト系ステンレス鋼のスプリングバック量を小さくする技術として、特開2001−32050号公報に、板厚中央部の集合組織において板面に平行な{100}面の反射X線強度比を2以上とする発明が開示されている。しかし、この公報には、壁そりの低減に関しては何ら記載がなく、{100}<011>〜{223}<110>方位群及び壁そり低減のために重要な方位である{112}<110>についても何ら記載がない。
【0007】
また、本発明者らの一部は、WO00/06791号にて形状凍結性の向上を目的として、{100}面と{111}面の比が1以上であるフェライト系薄鋼板を開示したが、この公報には、本発明のように{100}<011>〜{223}<110>方位群及び{112}<110>のX線ランダム強度比の値については記載されていない。
【0008】
また、本発明者らの一部は、特開2001−64750号公報にて、スプリングバック量を小さくする技術として、板面に平行な{100}面の反射X線強度比が3以上である冷延鋼板を開示したが、この発明は板厚最表面での{100}面反射X線強度比を規定することを特徴としており、本発明での規定である板厚1/2tでの{100}<011>〜{223}<110>方位群の平均X線強度比とはX線の測定位置が異なる。また、{112}<110>方位についても上記公報には何ら記載されていない。
【0009】
また、特開2000−297349号公報には、形状凍結性の良好な鋼板として、r値の面内異方性Δrの絶対値が0.2以下である熱延鋼板が開示されている。しかし、この発明は低降伏比化することによって形状凍結性を向上させることを特徴としており、本発明で述べているような思想に基づいた形状凍結性の向上を目的とした集合組織制御に関しては、上記公報に記載されていない。
【0010】
一方、伸びフランジ性も、鋼板を自動車用部品等へ加工する際に、欠くことのできない特性であるが、以上に述べた特許公開公報には、いずれも、伸びフランジ性と形状凍結性との両立の観点からの記載はない。高伸びフランジ性鋼板の形状凍結性が向上することで、自動車車体への高強度鋼板の適用範囲が一層広範なものとなる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
軟鋼板や高強度鋼板に曲げ加工を施すと、鋼板の強度に依存しながら大きなスプリング・バックや壁そりなどの形状不良が発生し、加工成形部品の形状凍結性が悪いのが現状である。また、伸びフランジ性は、鋼板の加工の際に欠くことができない特性であり、高強度鋼板を自動車部品等に適用するためには、形状凍結性と伸びフランジ性の両方に優れていることが望まれる。
【0012】
本発明は、この問題を抜本的に解決して、形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板及びその製造方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
従来の知見によれば、スプリング・バックや壁そり等の形状不良を抑えるための方策として、鋼板の変形応力を低くすることが、とりあえず重要であると考えられていた。そして、変形応力を低くするためには、引張強さの低い鋼板を使用せざるをえなかった。しかし、これだけでは、鋼板の曲げ加工性を向上させ、スプリング・バック量を低く抑えるための根本的な解決にはならない。
【0014】
そこで、本発明者らは、曲げ加工性を向上させてスプリング・バックや壁そりの発生を根本的に解決するため、新たに、鋼板の集合組織の曲げ加工性への影響に着目して、その作用効果を詳細に調査、研究した。そして、曲げ加工性に優れた鋼板を見いだしたものである。
すなわち、{100}<011>〜{223}<110>方位群と、{554}<225>、{111}<112>、{111}<110>の3つの結晶方位、更に、{112}<110>または{100}<011>の各方位の強度を制御すること、更には、圧延方向のr値および圧延方向と直角方向のr値のうち少なくとも1つをできるだけ低い値にすることで、曲げ加工性が飛躍的に向上することを明らかにしたものである。
【0015】
また、高伸びフランジ性と形状凍結性の両立のためには、フェライト相またはベイナイト相を最大相とし、伸びフランジ性を阻害する粒界の粗大セメンタイトをできるだけ低減することが重要であることを、新たに見いだした。
本発明は、前述の知見に基づいて構成されており、その主旨とするところは、以下のとおりである。
【0016】
(1)質量%で、
C:0.034%以上、0.15%以下、
Si:0.001%以上、3.5%以下、
Mn:0.05%以上、3.0%以下、
P:0.2%以下、
S:0.03%以下、
Al:0.01%以上、3.0%以下、
N:0.01%以下、
O:0.01%以下を含有し、
更に、
Ti:0.01%以上、2.0%以下、
Nb:0.01%以上、2.0%以下
の1種または2種を含有し、残部は鉄および不可避的不純物よりなり、フェライトまたはベイナイトを面積率で最大相とし、粒界における鉄炭化物の占有率が0.1以下で、かつ、この鉄炭化物の最大粒子径が1μm以下であり、1/2板厚における板面の{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が3.0以上で、かつ、これらの方位群の中で{112}<110>方位のX線ランダム強度比が最大かつ4.0以上を満足し、更に、{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>の3つの結晶方位のX線ランダム強度比の平均値が3.5以であり、加えて、圧延方向のr値および圧延方向と直角方向のr値のうち少なくとも1つが0.7以下であることを特徴とする形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板。
【0019】
(2)更に、質量%で、B:0.01%以下を含有することを特徴とする(1)に記載の形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板。
(3)更に、質量%で、Cr:3%以下を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板。
【0020】
(4)更に、質量%で、
Ca:0.0005%以上、0.005%以下を含有することを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板。
【0021】
(5)前記(1)〜(4)の何れか1項に記載の鋼板にめっきをしたことを特徴とする形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板。
(6)前記(1)〜(5)の何れか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、(1)〜(4)の何れか1項に記載の成分からなる鋼片を熱間圧延するに当たり、1150〜1350℃に加熱しAr3変態温度〜(Ar3+100)℃の温度範囲における圧下率の合計が25%以上となるように熱間圧延し、Ar3変態以上で熱間圧延を終了し、熱間圧延終了温度から(1)式に示す鋼の化学成分(質量%)で決まる臨界温度To(℃)まで平均冷却速度10℃/s以上で冷却し450〜750℃で巻き取ることを特徴とする形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板の製造方法。
【0022】
To=−650.4×C%+B (1)
ここで、
B=−50.6×Mneq+894.3
Mneq=Mn%+0.13×Si%+0.55×Cr%−0.50×Al%
(7)前記Ar3変態温度〜(Ar3+100)℃の温度範囲において、少なくとも1パス以上を摩擦係数が0.2以下となるように圧延することを特徴とする(6)に記載の形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板の製造方法。
【0024】
(8)前記(6)または(7)に記載の鋼板を酸洗し、80%未満の冷間圧延を施した後、600℃〜800℃の温度範囲に加熱し、冷却することを特徴とする形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板の製造方法。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の内容を詳細に説明する。
1/2板厚における板面の{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値、{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>の3つの結晶方位のX線ランダム強度比の平均値ならびに、{112}<110>又は{100}<011>方位のX線ランダム強度比:
これらの値は、本発明で特に重要な特性値である。板厚中心位置での板面のX線回折を行い、ランダム試料に対する各方位の強度比を求めたときの、{100}<011>〜{223}<110>方位群の平均値が3.0以上でなくてはならない。これが3.0未満では形状凍結性が劣悪となる。
【0026】
この方位群に含まれる主な方位は、{100}<011>、{116}<110>、{114}<110>、{113}<110>、{112}<110>、{335}<110>および{223}<110>である。これら各方位のX線ランダム強度比は、{110}極点図に基づきベクトル法により計算した3次元集合組織や、{110}、{100}、{211}、{310}極点図のうち複数の極点図(好ましくは3つ以上)を用いて級数展開法で計算した3次元集合組織から求めればよい。
【0027】
例えば、後者の方法における上記各結晶方位のX線ランダム強度比には、3次元集合組織のφ2=45゜断面における(001)[1−10]、(116)[1−10]、(114)[1−10]、(113)[1−10]、(112)[1−10]、(335)[1−10]、(223)[1−10]の強度をそのまま用ればよい。
【0028】
{100}<011>〜{223}<110>方位群の平均値とは、上記の各方位の相加平均である。上記の全ての方位の強度を得ることができない場合には、{100}<011>、{116}<110>、{114}<110>、{112}<110>、{223}<110>の各方位の相加平均で代替しても良い。
【0029】
これらの方位群の中で{100}<011>と{112}<110>方位は、壁そりの低減に極めて効果的な方位である、したがって、これらの方位群の中で、{100}<011>又は{112}<110>方位のX線ランダム強度比が最大かつ4.0以上になると形状凍結性は更に向上するので好ましい。
更に、1/2板厚における板面の{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>の3つの結晶方位のX線ランダム強度比の平均値は3.5以下でなくてはならない。これが3.5超であると、{100}<011>〜{223}<110>方位群の強度が適正であっても、良好な形状凍結性を得ることが困難となる。{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>のX線ランダム強度比も、上記の方法に従って計算した3次元集合組織から求めれば良い。
【0030】
より望ましくは、{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が4.0以上、{100}<011>または{112}<110>方位のX線ランダム強度比が5.0以上、{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>のX線ランダム強度比の相加平均値が2.5未満である。
【0031】
以上述べた結晶方位のX線強度が曲げ加工時の形状凍結性に対して重要であることの理由は必ずしも明らかではないが、曲げ変形時の結晶のすべり挙動と関係があるものと推測される。
X線回折に供する試料は、機械研磨などによって鋼板を所定の板厚まで減厚し、次いで、化学研磨や電解研磨などによって歪みを除去すると同時に、板厚1/2面が測定面となるように作製する。鋼板の板厚中心層に偏析帯や欠陥などが存在し測定上不都合が生ずる場合には、板厚の3/8〜5/8の範囲で適当な面が測定面となるように、上述の方法に従って試料を調整して測定すればよい。
【0032】
当然のことであるが、上述のX線強度の限定が板厚1/2近傍だけでなく、なるべく多くの厚みについて満たされることで、より一層形状凍結性が良好になる。なお、{hkl}<uvw>で表される結晶方位とは、板面の法線方向が<hkl>に平行で、圧延方向が<uvw>と平行であることを示している。
圧延方向のr値(rL)および圧延方向と直角方向のr値(rC):
r値は、本発明において重要である。すなわち、本発明者等が鋭意検討の結果、上述した種々の結晶方位のX線強度が適正であっても、必ずしも良好な形状凍結性が得られないことが判明した。上記のX線強度と同時に、rLおよびrCのうち少なくとも1つが0.7以下であることが必須である。より好ましくは0.55以下である。
【0033】
rLおよびrCの下限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、r値はJIS5号引張試験片を用いた引張試験により評価する。引張歪みは、通常、15%であるが、均一伸びが15%を下回る場合には、均一伸びの範囲でできるだけ15%に近い歪みで評価すればよい。
なお、曲げ加工を施す方向は加工部品によって異なるので特に限定するものではないが、r値が小さい方向に対して垂直もしくは垂直に近い方向に折り曲げる加工を主とすることが好ましい。
【0034】
ところで、一般に集合組織とr値とは相関があることが知られているが、本発明においては、既述の結晶方位のX線強度比に関する限定と、r値に関する限定とは互いに同義ではなく、両方の限定が同時に満たされなくては、良好な形状凍結性を得ることはできない。
組織:
穴拡げ性と形状凍結性の観点から、組織はフェライトまたはベイナイト相を最大相とする。ただし、フェライトとベイナイトの各々の集合組織を比べると、ベイナイト部分で、形状凍結に有利な{100}<011>〜{223}<110>方位の集合組織が発達しやすい。この理由は明らかではないが、ベイナイト組織が熱延中に形成される形状凍結性に優位なオーステナイト集合組織を受け継ぎやすいためと考えられる。
【0035】
したがって、ベイナイトの占積率が大きい方がより望ましい。この観点からはベイナイトの面積率は35%超であることが望ましい。
フェライトまたはベイナイトの面積率は、板厚中央部を光学顕微鏡により100〜500倍で5視野以上観察し、その平均値より求めることとする。また、加工ままのフェライトは成形性を著しく損なうことから、ここで述べる面積率には含まないものとする。
【0036】
また、粒界における鉄炭化物の占有率が0.1超または鉄炭化物の最大粒子径が1μm超になると、粒界でこれらの鉄炭化物が連結し、伸びフランジ性が著しく劣化する。したがって、粒界における鉄炭化物の占有率を0.1以下、かつ、この鉄炭化物の最大粒子径を1μm以下にする必要がある。
鉄炭化物の占有率および最大粒子径は小さいほど望ましいことから下限は特に規定しない。鉄炭化物による粒界の占有率(−)は、鉄材の断面サンプルにおいてある領域での粒界の総長さLと、鉄炭化物によって占有されている粒界の長さの総和dの比d/Lで与えられる。測定は200倍以上の倍率の光学顕微鏡観察写真において、画像処理によってLおよびdを直接求めてもよい。
【0037】
より簡便な方法としては、上記写真上に描いたn本の直線と粒界との交点の数Nと、N個の交点の中でその交点の位置に鉄炭化物が存在した場合の数Mを用いてM/Nで求めてもよい。この時採用する直線の数Nを3以上とすることで十分な精度が確保できる。また、写真の倍率はこの1本の直線と粒界の交点の数が10以上になるように選択することで十分な精度が確保できる。
【0038】
次に、成分範囲の限定条件について述べる。Cの下限を0.001%としたのは、実用鋼で得られる下限値を用いることにしたためである。0.15%超になると伸びフランジ性が劣化するので、上限を0.15%に設定する。なお、Cの下限は実施例の表1の鋼種BのC量に基づいて、0.034%とした。
Siは鋼板の機械的強度を高めるのに有効な元素であるが、3.5%超となると加工性が劣化したり、表面疵が発生したりするので、3.5%を上限とする。一方、実用鋼でSiを0.001%未満とするのは困難であるので、0.001%を下限とする。
【0039】
Mnも鋼板の機械的強度を高めるのに有効な元素であるが、3.0%超となると加工性が劣化するので、3.0%を上限とする。一方、実用鋼でMnを0.05%未満とするのはコスト高となり、材質上のメリットもないので、0.05%を下限とする。また、Mn以外に、Sによる熱間割れの発生を抑制するTiなどの元素が十分に添加されない場合には、質量%で、Mn/S≧20となるMn量を添加することが望ましい。
【0040】
PとSは、それぞれ0.2%以下、0.03%以下とする。これは加工性の劣化や熱間圧延または冷間圧延時の割れを防ぐためである。
Alは脱酸のために0.01%以上添加する。しかし、多すぎると加工性が低下したり、表面性状が劣悪となるため、上限を3.0%とする。
NとOは不純物であり、加工性を悪くさせないように、それぞれ、0.01%以下、0.01%以下とする。
【0041】
Ti、Nbは、本発明において重要な元素である。これらの元素は、炭化物、窒化物として微細析出し、強度上昇に効果があるとともに鉄炭化物を低減させることから、伸びフランジ性も改善される。また、これらの元素がオーステナイト域において固溶状態で存在すると、形状凍結性向上に寄与する集合組織、特に、{112}<110>方位を先鋭化する効果がある。したがって、所望される強度に応じて、それぞれ0.01%以上添加する。ただし過度に添加しても格段の効果はなく、むしろ加工性や表面性状を劣化させるので、それぞれ2.0%を上限とした。
【0042】
Crは、機械的強度を高めたり材質を改善する効果があるので、必要に応じて、0.001%以上を添加することが望ましい。しかし、過度の添加は逆に加工性を劣化させるので、上限を3%とする。
Caは硫化物の形態を制御することで伸びフランジ性を改善するので、必要に応じて、0.0005%以上添加することが望ましい。しかし、過度に添加しても格段の効果はなく、コスト高となるので、上限を0.005%と設定した。
【0043】
なお、本発明では特に限定しないが、脱酸の目的や硫化物の形態制御の目的でMgを0.01%以下添加しても構わない。
メッキ:
メッキの種類は特に限定するものではなく、電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき等の何れでも本発明の効果が得られる。
【0044】
次に製造方法について説明する。
熱間圧延に先行する製造方法は特に限定するものではない。すなわち、高炉、転炉や電炉等による溶製に引き続き各種の2次製錬を行い、次いで、通常の連続鋳造、インゴット法による鋳造の他、薄スラブ鋳造などの方法で鋳造すればよい。連続鋳造の場合には一度低温まで冷却したのち、再度加熱してから熱間圧延しても良いし、鋳造スラブを連続的に熱延しても良い。原料にはスクラップを使用しても構わない。
【0045】
本発明の形状凍結性に優れた鋼板は、上記成分の鋼を鋳造した後、熱間圧延後冷却まま、熱間圧延後熱処理、熱間圧延後冷却・酸洗し冷延した後に焼鈍、あるいは、熱延鋼板もしくは冷延鋼板にめっきを施しもしくは溶融めっきラインにて熱処理を施したまま、更には、これらの鋼板に別途表面処理を施すことによっても得られる。
【0046】
熱延の加熱温度は、いずれの場合も1150〜1350℃の温度範囲で行う。加熱温度が1150℃未満ではTiやNbの炭化物が再固溶しないことから、集合組織を先鋭化させる効果が低減するとともに、熱延後粗大炭化物として穴拡げ性を劣化させる。また、加熱温度を1350℃超にしても効果が飽和するばかりでコスト、設備上デメリットが大きいことから、上限を1350℃とする。
【0047】
前記(1)で述べた所定のX線強度レベルの各結晶方位を達成するためには、Ar3変態温度以上で熱間圧延を行う。熱間圧延の後半に、Ar3変態温度以上(Ar3+100)℃以下で合計25%以上の圧延が行われないと、圧延されたオーステナイトの集合組織が十分に発達しないために、この様な冷却を施しても、最終的に得られる熱延鋼板の板面に、前記(1)の発明で述べた所定のX線強度レベルの各結晶方位が得られない。したがって、Ar3変態温度以上(Ar3+100)℃以下での圧下率合計の下限値を25%とした。
【0048】
Ar3変態温度以上(Ar3+100)℃以下での合計圧下率は高いほどよりシャープな集合組織形成が期待されるので、35%以上とすることが好ましいが、この圧下率合計が97.5%を越えると、圧延機の剛性を過剰に高める必要があり、経済上のデメリットを生じるので、望ましくは97.5%以下とする。
熱間圧延終了温度はAr3変態温度より低いと、{100}<011>〜{223}<110>方位群の中で{112}<110>方位が特に発達するという現象が発現しなくなり、(Ar3変態温度+100)℃を超えると、集合組織全体がランダム化することから形状凍結性が劣化する。したがってAr3変態温度〜(Ar3変態温度+100)℃に規定する。この観点から熱延終了温度の上限は(Ar3変態温度+50)℃が望ましい。
【0049】
Ar3変態温度以上(Ar3+100)℃以下の熱間圧延時の熱間圧延ロールと鋼板との摩擦係数が0.2を越えている場合には、鋼板表面近傍における板面に{110}面を主とする結晶方位が発達し、形状凍結性が劣化するので、より良好な形状凍結性を指向する場合には、Ar3変態温度以上(Ar3+100)℃以下の熱間圧延時における少なくとも1パスについて、熱間圧延ロールと鋼板との摩擦係数を0.2以下とすることが望ましい。
【0050】
この摩擦係数は低ければ低いほど好ましく下限は定めないが、更に良好な形状凍結性が要求される場合には、Ar3変態温度以上(Ar3+100)℃以下の熱間圧延の全パスについて、摩擦係数を0.15以下とすることが望ましい。摩擦係数の測定方法は特に規定しないが、一般によく知られているように、先進率と圧延加重から求めるのが望ましい。
【0051】
このようにして形成されたオーステナイトの集合組織を最終的な熱延鋼板に受け継がせるためには、熱間圧延終了後、下記(1)式に示すTo温度以下まで、平均冷却速度10℃/s以上で冷却する必要がある。
従って、鋼の成分(質量%)で決まるToを巻き取り温度の上限とした。このTo温度は、オーステナイトとオーステナイトと同一成分のフェライトが同一の自由エネルギーを持つ温度として熱力学的に定義され、C以外の成分の影響も考慮して、(1)式を用いて鋼板の化学成分(質量%)で簡易的に計算することができる。To(℃)に及ぼす本発明に規定されたこれら以外の成分の影響はそれほど大きくないので、ここでは無視した。
【0052】
To=−650.4×C%+B (1)
ここで、
B=−50.6×Mneq+894.3
Mneq=Mn%+0.13×Si%+0.55×Cr%−0.50×Al%
平均冷却速度が大きくなると、巻取中のTiCまたはNbCの析出の駆動力が増加することから、平均冷却速度は、好ましくは30℃/s以上、更に好ましくは50℃/s以上である。一方、平均冷却速度を200℃/s超にすることは実用上困難なことから、200℃/s以下とするのが望ましい。
【0053】
冷却後の巻取は450〜750℃の温度範囲で行う。巻取温度が450℃未満になると、TiCまたはNbCの微細析出が低減し、穴拡げ性を劣化させる鉄炭化物が増加する。また、750℃超ではTiCまたはNbCが粒界にて粗大化し、穴拡げ性を劣化させる。以上の観点から、望ましくは500〜700℃の温度範囲で巻き取る。
【0054】
1/2板厚における板面の{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が3.0以上で、かつ、これらの方位群の中で{100}<011>方位のX線ランダム強度比が最大かつ4.0以上を満足し、更に、{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>の3つの結晶方位のX線ランダム強度比の平均値が3.5以下の、X線強度レベルの各結晶方位を達成するためには(Ar3+50)℃以上(Ar3+150)℃以下で合計25%以上の圧延を行う必要がある。この条件を満足しないと、オーステナイトの加工が不十分で集合組織が十分に発達しない。(Ar3+50)〜(Ar3+150)℃での合計圧下率は高いほど、よりシャープな集合組織形成が期待されるので、35%以上とすることが好ましいが、この圧下率合計が97.5%を越えると、圧延機の剛性を過剰に高める必要があり、経済上のデメリットを生じるので、望ましくは97.5%以下とする。
【0055】
{100}<011>方位への集合組織の集積を著しく高めるためには、引き続き、(Ar3−100)〜(Ar3+30)℃で5〜35%の圧下を加えることが極めて重要である。なぜならば、高温域で十分に加工されたオーステナイトが、少なくとも部分的に再結晶した段階で、更に適量の圧下を加え、その直後にフェライト変態させることが、{100}<011>方位の発達に極めて重要だからである。
【0056】
したがって、(Ar3−100)℃未満で圧下しても、既にフェライト変態が完了した領域が大きすぎるために、{100}<011>が発達しない。
(Ar3+30)℃超で圧下を加えると、フェライト変態までに導入した歪みが回復してしまうために、{100}<011>が発達しない。
また、圧下率が5%未満では、{100}<011>〜{223}<110>を含む集合組織全体がランダム化してしまい、35%を超えると、{100}<011>方位への集積が低くなるので、(Ar3−100)〜(Ar3+30)℃の温度範囲での圧下率は5〜35%とする。上述の観点から圧下率は、望ましくは10〜25%とする。
【0057】
熱間圧延は(Ar3−100)〜(Ar3+30)℃の温度範囲で終了する。熱延終了温度が(Ar3−100)未満になると加工性が著しく劣化し、(Ar3+30)℃超になると集合組織の集積が不十分なため形状凍結性が劣化する。
ここで熱間圧延時の熱間圧延ロールと鋼板との摩擦係数が0.2を越えている場合には、鋼板表面近傍における板面に、{110}面を主とする結晶方位が発達し、形状凍結性が劣化するために、より良好な形状凍結性を指向する場合には、(Ar3−100)〜(Ar3+150)℃の温度範囲において、少なくとも1パスについては、ロールと鋼板との摩擦係数を0.2以下とする圧延を行うことが好ましい。
【0058】
この摩擦係数は低ければ低いほど望ましく、特に厳しい形状凍結性が要求される場合には、(Ar3−100)〜(Ar3+150)℃の熱間圧延の全パスについて摩擦係数を0.15以下とすることが望ましい。
巻取は450〜750℃の温度範囲で行う。巻取温度が450℃未満になると、TiCまたはNbCの微細析出が低減し、穴拡げ性を劣化させる鉄炭化物が増加する。また、750℃超ではTiCまたはNbCが粒界にて粗大化し、穴拡げ性を劣化させる。以上の観点から、望ましくは500〜700℃の温度範囲で巻き取る。
【0059】
熱間圧延においては粗圧延後にシートバーを接合し、連続的に仕上げ圧延をしても良い。その際に粗バーを、一旦コイル状に巻き、必要に応じて、保温機能を有するカバーに格納し、再度巻き戻してから接合を行ってもよい。熱延鋼板には、必要に応じてスキンパス圧延を施してもよい。スキンパス圧延には、加工成形時に発生するストレッチャーストレインの防止や形状矯正の効果があることは言うまでもない。
【0060】
このようにして得られた熱延鋼板を冷間圧延し、焼鈍して最終的な薄鋼板とする際に、冷間圧延の全圧下率が80%以上となる場合には、一般的な冷間圧延−再結晶集合組織である板面に平行な結晶面のX線回折積分面強度比の{111}面や{554}面成分が高くなり、本発明の特徴である前記(1)に係る発明の結晶方位の規定を満たさなくなるので、冷間圧延の圧下率の上限を80%未満とした。形状凍結性を高めるためには、冷間圧下率を70%以下に制限することが望ましい。
【0061】
冷間圧延率の下限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、結晶方位の強度を適当な範囲に制御するためには、3%以上とすることが好ましい。
このような範囲で冷間加工された冷延鋼板を焼鈍する際に、焼鈍温度が600℃未満の場合には、加工組織が残留し成形性を著しく劣化させるので、焼鈍温度の下限を600℃とする。一方、焼鈍温度が800℃超になると、TiCおよびNbCが粗大化して、穴拡げ性が劣化するとともに形状凍結性も低下する。従って焼鈍温度は800℃以下とする。冷延鋼板には、必要に応じてスキンパス圧延を施してもよい。
【0062】
なお、本発明に係る鋼板は曲げ加工だけでなく、曲げ、張り出し、絞り等、曲げ加工を主体とする複合成形にも適用できる。
【0063】
【実施例】
(実施例)
本発明の実施例を挙げながら、本発明の技術的内容について説明する。
まず、表1に示した成分組成を有するAからKまでの鋼を用いて検討した結果について説明する。これらの鋼は、鋳造後、そのままもしくは一旦室温まで冷却された後に再加熱し、1250℃に加熱され、その後熱間圧延が施され、最終的には1.4mm、3mmもしくは8.0mm厚の熱延鋼板とした。3.0mmおよび8.0mm厚の熱延鋼板は冷間圧延することによって1.4mm厚とし、その後連続焼鈍工程にて焼鈍を行った。
【0064】
これら1.4mm厚の鋼板から50mm幅、270mm長さの試験片を作成し、ポンチ幅78mm、ポンチ肩R5、ダイ肩R5の金型を用いてハット曲げ試験を行った。
曲げ試験を行った試験片は三次元形状測定装置にて板幅中心部の形状を測定し、図1に示した様に、点(1)と点(2)の接線と点(3)と点(4)の接線の交点の角度から90°を引いた値の左右での平均値をスプリング・バック量、点(3)と点(5)間の曲率の逆数を左右で平均化した値を壁そり量、左右の点(5)間の長さからポンチ幅を引いた値を寸法精度として形状凍結性を評価した。なお、曲げは、r値の低い方向と垂直に折れ線が入るように行った。
【0065】
ところで、図2および図3に示した様にスプリング・バック量や壁そり量は、BHF(しわ押さえ力)によっても変化する。本発明の効果は、いずれのBHFで評価を行ってもその傾向は変わらないが、実機で実部品をプレスする際には、あまり高いBHFはかけられないことから、今回は、BHF29kNで各鋼種のハット曲げ試験を行った。
X線の測定は鋼板の代表値として板厚の7/16厚の位置で板面に平行なサンプルを調整し、実施した。
【0066】
穴拡げ試験は、1辺100mmの試験片の中央に径10mmの打ち抜き穴を加工し、その初期穴を頂角60°の円錐ポンチにて押し広げ、割れが鋼板を貫通した時点での穴径dの初期穴径10mmに対する穴広げ率λ(次式)で評価した。
λ={(d−10)/10}×100(%)
鉄炭化物の粒界占有率は200倍の光学顕微鏡観察写真上に4本の直線を引き、その直線と粒界との交点の数NとN個の交点のうちその交点の位置に鉄炭化物が存在した場合の数Mを用いてM/Nから求めた。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表2には、各鋼板の製造条件が本発明の範囲内にあるか否かを示している。「熱延条件1」は熱延がAr3変態温度以上で完了する場合にAr3変態温度以上(Ar3+100)℃以下での圧下率の合計が25%以上で熱間圧延終了温度もその温度範囲にある場合について「○」、その温度域での圧下率の合計が25%未満の場合に「×」とした。
【0070】
「熱延条件2−1」は(Ar3+50)〜(Ar3+150)℃の温度範囲における圧下率の合計が25%以上の場合に「○」、圧下率の合計が25%未満の場合に「×」「熱延条件2−2」は、引き続き、(Ar3−100)〜(Ar3+30)℃の温度範囲で圧下率の合計が5〜35%である場合について「○」、この条件を満たさない場合を「×」とした。
【0071】
以上のいずれの場合にも、それぞれの温度範囲で、少なくとも1パス以上についての摩擦係数が0.2以下の場合には「潤滑」の欄に「○」、全パスにおける摩擦係数が0.2超の場合には「△」とした。熱延巻取は全て(1)式で求まるTo温度以下とした。
このような熱延鋼板を1.4mm厚に冷延する場合、冷延圧下率が80%以上の場合には「冷延圧下率」を「×」とし、「80%未満」の場合に「○」とした。
【0072】
また、焼鈍温度が600℃以上(Ac3+100)℃以下の場合に「焼鈍温度」を「○」とし、それ以外の場合を「×」と記した。製造の条件として関係のない項目は「―」とした。熱延鋼板および冷延鋼板のいずれに対しても、スキンパス圧延を0.5〜1.5%の範囲で施した。
表3に、前記の方法によって製造された1.4mm厚の熱延鋼板と冷延鋼板の鉄炭化物粒界占有率M/N、鉄炭化物の最大粒子径d、機械的特性値を、表4および表5(表4の続き)にX線ランダム強度比、寸法精度、スプリング・バック量、壁そり量および穴拡げ率を示した。なお、本発明の条件を満たしている鋼板の組織はいずれもフェライト又はベイナイトが主相であった。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
本発明の番号のものは、発明外の番号のものに比べて、スプリング・バック量、壁そり量が小さくなり、結果として、寸法精度が向上していることがわかる。本発明のものは、いずれのケースも伸びフランジ性も良好である。
一方、鉄炭化物の粒界占有率M/N、鉄炭化物の最大粒子径dが本発明の規定を満足していないIおよびJは、形状凍結性は良好なものの、伸びフランジ性が劣化している。鋼Hに関しては形状凍結性も伸びフランジ性も劣化している。
【0077】
即ち、本発明で限定される成分、各結晶方位のX線ランダム強度比、r値、組織を満たして、初めて良好な形状凍結性を有する高伸びフランジ性鋼板の製造が可能になるのである。
図4には、それぞれ引張強度で規格化した寸法精度と穴拡げ率の関係を示す。これからも、本発明の条件を満足したものは、寸法精度と伸びフランジ性のいずれにも優れていることが明らかである。
【0078】
各結晶方位のX線ランダム強度比やr値が形状凍結性に重要であることの機構については、現在のところ、必ずしも明らかとはなっていない。おそらく、曲げ変形時にすべり変形の進行を容易にすることで、結果的に曲げ変形時のスプリング・バック量、壁そり量が小さくなり、その結果、寸法精度、すなわち形状凍結性が向上したものと理解される。
【0079】
【発明の効果】
本発明により薄鋼板の集合組織とr値を制御することにより、その曲げ加工性は著しく向上し、また、組織と炭化物を制御することによって穴拡げ性と曲げ加工性を両立でき、スプリング・バック量、壁そり量が少なく、曲げ加工を主体とする形状凍結性と、穴拡げ性に優れた薄鋼板が提供できるようになった。特に、従来は形状不良の問題から高強度鋼板の適用が難しかった部品にも高強度鋼板が使用できるようになる。自動車の軽量化を推進するためには、高強度鋼板の使用は是非とも必要である。スプリング・バック量、壁そり量が少なく、形状凍結性と穴拡げ性に優れた高強度鋼板が適用できるようになると、自動車車体の軽量化をより一層推進することができる。従って、本発明は、工業的に極めて高い価値のある発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハット曲げ試験に用いた試験片の断面図である。
【図2】スプリングバック量とBHF(しわ押さえ力)の関係を示す図である。
【図3】壁そり量とBHF(しわ押さえ力)の関係を示す図である。
【図4】引張強度で規格化された寸法精度と穴拡げ率の関係を示す図である。
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.034%以上、0.15%以下、
Si:0.001%以上、3.5%以下、
Mn:0.05%以上、3.0%以下、
P:0.2%以下、
S:0.03%以下、
Al:0.01%以上、3.0%以下、
N:0.01%以下、
O:0.01%以下を含有し、
更に、
Ti:0.01%以上、2.0%以下、
Nb:0.01%以上、2.0%以下
の1種または2種を含有し、残部は鉄および不可避的不純物よりなり、フェライトまたはベイナイトを面積率で最大相とし、粒界における鉄炭化物の占有率が0.1以下で、かつ、この鉄炭化物の最大粒子径が1μm以下であり、1/2板厚における板面の{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が3.0以上で、かつ、これらの方位群の中で{112}<110>方位のX線ランダム強度比が最大かつ4.0以上を満足し、更に、{554}<225>、{111}<112>および{111}<110>の3つの結晶方位のX線ランダム強度比の平均値が3.5以下であり、加えて、圧延方向のr値および圧延方向と直角方向のr値のうち少なくとも1つが0.7以下であることを特徴とする形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板。 - 更に、質量%で、
B:0.01%以下を含有することを特徴とする請求項1記載の形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板。 - 更に、質量%で、
Cr:3%以下を含有することを特徴とする請求項1または2記載の形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板。 - 更に、質量%で、
Ca:0.0005%以上、0.005%以下を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載の鋼板にめっきをしたことを特徴とする形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、請求項1〜4の何れか1項に記載の成分からなる鋼片を熱間圧延するに当たり、1150〜1350℃に加熱し、Ar3変態温度〜(Ar3+100)℃の温度範囲における圧下率の合計が25%以上となるように熱間圧延し、Ar3変態温度以上で熱間圧延を終了し、熱間圧延終了温度から(1)式に示す鋼の化学成分(質量%)で決まる臨界温度To(℃)まで平均冷却速度10℃/s以上で冷却し、450〜750℃で巻き取ることを特徴とする形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板の製造方法。
To=−650.4×C%+B (1)
ここで、
B=−50.6×Mneq+894.3
Mneq=Mn%+0.13×Si%+0.55×Cr%−0.50×Al% - 前記Ar3変態温度〜(Ar3+100)℃の温度範囲において、少なくとも1パス以上を摩擦係数が0.2以下となるように圧延することを特徴とする請求項6に記載の形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板の製造方法。
- 請求項6または7に記載の鋼板を酸洗し、80%未満の冷間圧延を施した後、600〜800℃の温度範囲に加熱し、冷却することを特徴とする形状凍結性に優れた高伸びフランジ性鋼板の製造方法。
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