JP3988586B2 - フランジ内面突起付形鋼の製造方法及びそれに使用される仕上ユニバーサル圧延機 - Google Patents
フランジ内面突起付形鋼の製造方法及びそれに使用される仕上ユニバーサル圧延機 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フランジ内面突起付形鋼の製造方法及びそれに使用される仕上ユニバーサル圧延機に関する。
【0002】
【従来の技術】
ウェブとそのウェブの両端に設けられたフランジとを有するH形鋼等の形鋼は、一般に図17に示す圧延設備によって圧延されて最終製品となる。
この圧延設備101は、図17中(A)に示すように、ブレークダウン圧延機102、粗ユニバーサル圧延機103、エッジング圧延機104、及び仕上ユニバーサル圧延機105からなる場合や、図17中(B)に示すように、ブレークダウン圧延機102、第1粗ユニバーサル圧延機103a、エッジング圧延機104、第2粗ユニバーサル圧延機103b、及び仕上ユニバーサル圧延機105からなる場合等があり、加熱炉で加熱されたスラブやブルーム、或いはビームブランク等の素材を順次に各圧延機で圧延することによって所定の断面寸法の形鋼が製造されるようになっている。
【0003】
図17中(A)に示す圧延設備101によってH形鋼を圧延する方法について説明すると、先ず、加熱炉で加熱された素材はブレークダウン圧延機102によって粗形のH断面に圧延される。このブレークダウン圧延機102は、ロール胴に沿って開孔型又は閉孔型を複数個設けた上下ロールが配置された二重式の圧延機である。
【0004】
そして、ブレークダウン圧延機102によって粗形のH断面に圧延された素材は、粗ユニバーサル圧延機103及びエッジング圧延機104からなる粗ユニバーサル圧延機群で複数回往復圧延され、図18中(B)に示す形状の所定厚みを有するH形断面に圧延される。ここで、粗ユニバーサル圧延機103は、上下一対の水平ロール106と左右一対の垂直ロール107とを備え、上下一対の水平ロール106により形成されるロール隙で素材SのウェブSWがその厚さ方向に圧下され、左右それぞれの垂直ロール107と上下の水平ロール106の側面とにより形成されるロール隙で左右のフランジSFがその厚さ方向に圧下される(図18中(A)参照)。また、エッジング圧延機104は、上下一対のエッジングロール108を備え、上下一対のエッジングロール108によって形成されるロール隙でフランジSFの幅が所定の寸法にまで圧下される(図18中(B)参照)。
【0005】
そして、図18中(B)に示す形状に圧延された素材Sは、上下一対の水平ロール109と左右一対の垂直ロール110とを備えた仕上ユニバーサル圧延機105により、フランジSF及びウェブSWの厚み圧下とフランジSFの角度起こしとが行われ、最終製品の寸法に仕上られる(図18中(C)参照)。
ところで、ビル建設等で用いられる鉄筋・鉄骨コンクリート工法においては、コンクリートと鉄骨との付着性を増すため、突起付の鋼材が使用されることがある。例えば、柱・梁材等で使用されるH形鋼では、フランジの内面や外面に突起を有するものが用いられる。この突起は、ある程度の高さ(例えば1mm以上)が必要とされており、また、突起の数が多い場合や突起の長さが長い場合にはよりコンクリートとの付着性が増加することになる。
【0006】
ここで、図19に示すように、フランジSFの外面に複数の突起tを有するH形鋼Sを製造する場合には、仕上ユニバーサル圧延機205において、左右一対の垂直ロール210の外面に垂直方向に延びる複数の溝210aを形成しておき、この垂直ロール210でフランジSFの外面を圧下することにより、フランジSFの外面に複数の突起tを有するH形鋼Sを比較的容易に製造することができる。図19中、符号209は水平ロールである。
【0007】
一方、仕上ユニバーサル圧延機105による仕上ユニバーサル圧延においては、図18中(C)に示すように、フランジSFの内面は水平ロール109の側面で圧下されるが、水平ロール109の側面には抜け勾配がほとんどなく、かつ、ロールと材料との相対すべりが大きいため、水平ロール109の側面に単に溝を形成し、これをフランジSFの内面に転写させて突起を形成しても、圧延の出側で突起がつぶれてしまうという問題があった。このため、フランジSFの内面に突起を有するH形鋼は、熱間圧延では簡単に製造できないと考えられていた。
【0008】
フランジの内面に突起を有するH形鋼は、フランジの外面に突起を有するものよりコンクリートとの付着性が優れているといわれているため、熱間圧延後に溶接によりリブや突起をフランジの内面に付与して製造されていた。しかし、生産性は非常に悪かった。
そこで、熱間圧延によってフランジの内面に突起を付与することはなおも望まれており、いくつか提案されている。
【0009】
例えば、特開平3−32408号公報には、図20に示すように、H形鋼Sの各フランジSF内面を圧下する溝付の小径ロールからなる第2垂直ロール308を上下左右各フランジSF内面毎に4個配設し、フランジSF外面を圧下する左右2個の垂直ロール307の各チョック309を内方へ延長して各第2垂直ロール308を軸受にて支持し、各水平ロール306側面のベベルギヤ310と各第2垂直ロール308のベベルギヤ311とを噛合せ、これらベベルギヤ310,311による駆動部周速と第2垂直ロール308の圧下側面部周速との周速調整手段を設けた仕上圧延装置305が開示されている。
【0010】
この仕上圧延装置305によれば、コンクリートとの付着性が優れたフランジの内面に突起を有するH形鋼を、熱間圧延で製造することができる。
また、特開昭61−82903号公報には、図21に示すように、加熱炉(図示せず)により加熱された素材を、ブレークダウン圧延機402、第1粗ユニバーサル圧延機403、第2粗ユニバーサル圧延機404、及び仕上ユニバーサル圧延機405を経てフランジ内面に突起を有するH形鋼とする圧延設備401が開示されている。
【0011】
ここで、第1粗ユニバーサル圧延機403においては、図22中(A)に示すように、水平ロール403Aの側面の傾斜を45°程度と大きくするとともにこの側面のほぼ中央部に凹部407を形成し、複数パスで線形鋼片406のフランジ406A内面に圧延方向に連続する線状突起408を造形するようにしている。また、第2粗ユニバーサル圧延機404においては、図22中(B)に示すように、水平ロール404Aの傾斜側面に圧延方向において断続的な凹部410を複数形成し、水平ロール404Aで線形鋼片406のフランジ406A及びウェブ406Bを圧下しつつ線状突起408を断続的に圧下し、所定ピッチの縞突起411を造形するようにしている。そして、仕上ユニバーサル圧延機405においては、水平ロール405Aでウェブ406Bを圧下しつつ、フラットな垂直ロール405BによりV字形状のフランジ406Aを徐々に押し広げてゆき、これにより、所定の高さ及びピッチの縞突起411をフランジ内面に有するH形鋼406を得るようにしている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の図20に示す仕上圧延装置305や図21及び図22に示すH形鋼の圧延法にあっては、以下の問題点があった。
すなわち、図20に示す仕上圧延装置305の場合、水平ロール306及び第1垂直ロール307以外に仕上圧延装置305に特殊な第2垂直ロール311を4個も組み込む必要があり、大きな設備投資が必要となっていた。このため、仕上圧延設備にかかるコストが非常に高かった。
【0013】
また、図21及び図22に示すH形鋼の圧延法の場合、粗ユニバーサル圧延機が2機(符号403及び404)必要になり、また、各粗ユニバーサル圧延機403,404において傾斜側面に凹部407,410を形成した特殊な水平ロール403A,404Aを組み込む必要があり、設備コストが非常に高かった。また、仕上ユニバーサル圧延機405による仕上圧延において、V字形状のフランジ406Aを徐々に押し広げて行く際に、フランジ406Aの内面に縞突起411が形成されていることからフランジ406Aの厚み方向の圧下を行うことができなかった。さらに、フランジ内面に突起を設けた形鋼は、その使われ方からフランジ幅方向(圧延方向に直交する垂直方向)に延びる形状の突起が望まれる場合が多いのに対し、前述の圧延法でフランジ内面に設けられる縞突起411は圧延方向に延びる形状となっていた。
【0014】
また、折角形成した突起が、装置の突起形成部材等に接触してしまい、フランジから剥離してしまう場合もある。この場合、そのように接触した装置側の部材もその接触により破損してしまうことがある。このようなことから、形成した突起を装置側の部材によって破損してしまうことを防止することが望まれる。
なお、本発明者らは、大きな設備投資なしで、フランジ内面にフランジ幅方向に延びる形状の突起を有する形鋼を熱間圧延で製造することができるフランジ内面突起突形鋼の製造方法を提案している(特願2001−250719)。すなわち、フランジ及びウェブを有する形鋼の仕上圧延を行うに際して、ロール側面のコーナ部を始点としてほぼロール軸に向かう複数のスリットを形成した水平ロールを組み込んだ仕上ユニバーサル圧延機を使用し、水平ロールの側面によるフランジ内面への押圧時に、当該フランジ内面に複数の突起を形成する方法であり、ある程度の長さの突起には効果があるが、突起長さを長くするのは難しかった。
【0015】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、大きな設備投資なしで、フランジ内面にフランジ幅方向に延びる形状の突起を有する形鋼を熱間圧延で製造することができ、さらに形成した突起の損傷をなくして、その突起長さをより長くすることができる、フランジ内面突起付形鋼の製造方法及びそれに使用される仕上ユニバーサル圧延機を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記問題を解決するために、請求項1記載の発明に係るフランジ内面突起付形鋼の製造方法は、フランジ及びウェブを有する形鋼の仕上圧延を行うに際して、ロール側面のコーナー部を始点としほぼロール軸に向かう複数のスリットを形成した水平ロールを組み込み、前記スリットの深さを前記ロール軸に向かうに従い浅くしている仕上ユニバーサル圧延機を使用し、前記水平ロールの側面による前記フランジ内面への押圧時に前記フランジ内面に複数の突起を形成することを特徴としている。
【0019】
また、請求項2記載の発明に係るフランジ内面突起付形鋼の製造方法は、請求項1に記載の発明に係るフランジ内面突起付形鋼の製造方法において、前記スリットの各々が、前記ロール側面のコーナー部を始点として前記形鋼の圧延方向とは逆方向に湾曲する形状で形成されていることを特徴としている。
【0020】
また、請求項3記載の発明に係るフランジ内面突起付形鋼の製造方法は、請求項1又は2に記載の発明に係るフランジ内面突起付形鋼の製造方法において、前記仕上ユニバーサル圧延使用前の材料のフィレット部近傍に余肉を形成しておくことを特徴としている。
【0022】
また、請求項4記載の発明に係る仕上ユニバーサル圧延機は、フランジ及びウェブを有する形鋼の仕上圧延を行うに際して、ロール側面のコーナー部を始点としほぼロール軸に向かう複数のスリットを形成した水平ロールを組み込み、前記スリットの深さを前記ロール軸に向かうに従い浅くしていることを特徴としている。
【0023】
また、請求項5記載の発明に係る仕上ユニバーサル圧延機は、請求項4に記載の発明に係る仕上ユニバーサル圧延機において、前記スリットの各々が、前記ロール側面のコーナー部を始点として前記形鋼の圧延方向とは逆方向に湾曲する形状で形成されていることを特徴としている。
【0024】
また、請求項1及び4に記載の発明では、スリットの深さをロール軸に向かうに従い浅くすることで、フランジ内面からの突起の高さを先端部側で低くする。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
先ず、第1の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係るフランジ内面突起付形鋼の製造方法が適用される第1の実施の形態の圧延設備の概略構成図である。図2は図1の圧延設備における仕上ユニバーサル圧延機に組み込まれる水平ロールの側面図である。図3は水平ロールのロール側面に設けた好ましい形状のスリットを示す側面図である。図4は図2に示す水平ロールを用いての仕上ユニバーサル圧延における水平ロールの側面とフランジ内面との接触状態を模式的に示した図である。但し、図4においては、スリットの表示を省略するとともにフランジを透視している。図5はフランジ内面に突起を有するH形鋼の部分斜視図である。
【0026】
図5に示すウェブSWとそのウェブSWの左右両端に設けられたフランジSFとを有し、フランジSF内面に突起tを有するH形鋼Sを製造する場合を例にとって本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、H形鋼Sを製造するための圧延設備1は、図17中(A)に示す圧延設備101と同様に、ブレークダウン圧延機2、粗ユニバーサル圧延機3、エッジング圧延機4、及び仕上ユニバーサル圧延機5からなり、加熱炉で加熱された素材を順次に各圧延機で圧延することによって所定の断面寸法のフランジSF内面に突起tを有するH形鋼Sが製造される。
【0027】
ここで、ブレークダウン圧延機2、粗ユニバーサル圧延機3、及びエッジング圧延機4においては、素材は図18中(B)に示す形状と同一の形状に圧延される。そして、図18中(B)に示す形状と同一の形状に圧延された素材は、図2又は図3に示すような、上下一対の水平ロール6と、左右一対の垂直ロール7とを備えた仕上ユニバーサル圧延機5により、フランジSF及びウェブSWの厚み圧下、フランジSF内面への突起tの形成、及びフランジSFの角度起こしが行われ、最終製品の寸法に仕上られる。
【0028】
仕上ユニバーサル圧延機5によるフランジSF内面への突起tの形成について詳細に説明すると、仕上ユニバーサル圧延機5の各水平ロール6は、図2に示すように、水平ロール6の側面6aのコーナー部6bを始点としロール軸8に向かう複数の直線状のスリット10を形成している。
ここで言う「コーナー部6b」とは、水平ロール6の周面と側面(ロール側面)6aとの境界部であり、このコーナー部6bには、丸みや面取りが施されている。そして、水平ロール6の側面6aによるフランジSF内面への押圧時(フランジSFの厚み圧下時)にフランジSF内面に複数の突起tを圧延方向において所定ピッチで形成する。
【0029】
また、各スリット10の形状については、ロール側面6aのコーナー部6bを始点としほぼロール軸8に向かう形状になっている。具体的には、図3に示すように、各スリット10は、ロール側面6aのコーナー部6bを始点としほぼロール軸8に向かって延びるものの、先細形状で、且つ水平ロール6の回転方向に対して反った湾曲形状或いは前記形鋼の圧延方向とは逆方向の湾曲形状であることが好ましい。
【0030】
また、図4に示すように、左右一対の垂直ロール7は、上下一対の水平ロール6に対して、圧延方向にオフセット量OSでオフセットされて配置(ずらされて配置)している。すなわち、垂直ロール7のロール軸9と、一対の水平ロール6のロール軸8間を結ぶ線8aとが、圧延方向において所定距離をなすように、左右一対の垂直ロール7と上下一対の水平ロール6との位置関係を決定している。
【0031】
このような仕上ユニバーサル圧延機5により、フランジSF内面には、図5に示すように、圧延方向に対してほぼ直交する垂直方向、すなわちフランジ幅方向に延びる突起tが形成される。また、スリット10が図3に示すような形状の場合には、その突起tの形状は先細で且つ湾曲形状になる。
ここで、突起tの形成に際し、水平ロール6のスリット10の形状は水平ロール6の側面6aでフランジSF内面を圧下する図4中に示す領域A、すなわちロールバイト内でフランジSF内面に転写される。さらに、ロールバイトを出た圧延機出側では、フランジSFの厚み圧下は終了しているが、フランジSF内面と水平ロール6の側面6aが未だに接触した状態の図4中に示す領域Bを形成する。また、圧延方向における前記領域Aと領域Bとの境界は、左右一対の垂直ロール7のロール軸9それぞれを含む面近傍、すなわち、垂直ロール7とフランジSF外面との接触部分近傍とされている。
【0032】
このように、水平ロール6の側面6aのコーナー部6bを始点としロール軸8に向かう複数のスリット10を形成するだけで仕上ユニバーサル圧延機5による仕上圧延によってフランジSF内面にフランジ幅方向に延びる形状の突起tを有するH形鋼を熱間圧延で製造することができる。このため、大きな設備投資も不要となり、仕上圧延設備にかかるコストを安価にすることができる。
【0033】
なお、左右一対の垂直ロール7を、上下一対の水平ロール6に対して圧延方向にオフセットさせて配置しており、これにより、突起tが過度にスリット10と接触しないようにして、スリット10から突起tを抜きやすくしている。この効果は以下のような理由による。
ここで、図6に示すように、オフセットさせて配置することなく、左右一対の垂直ロール7のロール軸9それぞれを含む面内に、一対の水平ロール6のロール軸8間を結ぶ線8aが存在するように、左右一対の垂直ロール7と上下一対の水平ロール6とを、通常のユニバーサル圧延機の場合のように配置した場合を考える。この場合、圧延方向における前記領域Aと領域Bとの境界は、左右一対の垂直ロール7のロール軸9それぞれを含む面内に一対の水平ロール6のロール軸8間を結ぶ線8aとともに存在することになる。すなわち、図6でみた場合、紙面垂直方向において、前記領域Aと領域Bとの境界が一対の水平ロール6のロール軸8間を結ぶ線8aと一致する。
【0034】
この場合において、ロールバイト内で転写されたフランジSF内面の突起tが領域Bで形をつぶされないようにするためには、「突起tが領域Bにおいて常にスリット10に接している(スリット10の内側に突起がある)」ことが望まれる。
領域Bでは、例えば、ロールバイト出口におけるフランジSF内面の点a(図6中に図示)は、圧延方向と同一の方向に進むため、点aは点aと同一の高さとなる水平ロール6の側面6aから領域Bを抜けるときに接するロールコーナー部6bまで連続的に水平ロール6の側面に接していく。このとき、突起tが形成されている点aが、水平ロール6のスリット10以外に接触すると(スリット10に過度に接触すると)、突起tの変形やフランジSF内面からの剥離が発生する可能性があり、健全な突起形成が損なわれる可能性がある。特に、その可能性は突起の先端側で大きい。
【0035】
図7中(A)、(B)、(C)を用いて、突起の形成が損なわれてしまう場合を具体的に説明する。
図7中(A)は、突起tが領域Bにおいて常にスリット10の内側に突起tが位置している場合であり、この場合には、破損することなく突起tがうまく形成される。
【0036】
図7中(B)は、H形鋼Sの圧延方向の速度に対し水平ロール6の回転方向の速度が遅い場合であり、この場合、右側上部bで突起tが、スリット10における水平ロール6の回転方向側に位置される部位cでつぶされてしまい、破損してしまう。この現象は、突起tのフランジ幅方向の長さを長くすればするほど顕著に現れる。
【0037】
このような現象を回避し健全な突起を形成させるためには、「水平ロール6の側面に形成するスリット10の上端右側の湾曲形状をより大きくする」という条件が必要になる。
一方、図7中(C)は、H形鋼Sの圧延方向の速度に対し水平ロール6の回転方向の速度が速い場合であり、この場合、左側上部dで突起tがスリット10における水平ロール6の回転方向とは反対側に位置される角部eでこすり上げられてしまい、破損してしまう。
【0038】
このような現象を回避し健全な突起を形成させるためには、「スリット10の左側の形状をロール側面6aのコーナー部6bに近い下部で広げた形状とする」という条件が必要になる。
このように、「水平ロール6の側面に形成するスリット10の上端右側の湾曲形状をより大きくする」や「スリット10の左側の形状をロール側面6aのコーナー部6bに近い下部で広げた形状とする」等といったように条件を多くすれば「突起tが領域Bにおいて常にスリット10内に接している(スリット10の内側に突起がある)」を満たすことができるが、本発明では、このような条件を設けることなく、「突起tが領域Bにおいて常にスリット10内に接している(スリット10の内側に突起がある)」をより簡単に実現している。
【0039】
前述したように、本発明では、左右一対の垂直ロール7を上下一対の水平ロール6に対して圧延方向にオフセットさせて配置させている。これにより、図6との比較でもわかるように、水平ロール6のロール軸8までの範囲だった領域A(フランジ内面を圧下する領域)が水平ロール6のロール軸8より圧延方向出側位置を含む範囲に移動させている。
【0040】
従って、図8に示すように、前記線8aを通過したスリット10により、突起tがフランジ内面に転写されるようになる。これにより、図4や図8に示すように、領域Bの圧延方向の長さが短くなるので、フランジSF内面と水平ロール6の側面が未だに接触した状態を少なくすることができる。よって、水平ロール6のスリット10に突起tが過度に接触しないようになり、スリット10から突起tが抜けやすくなり、これにより、健全な突起tとしてフランジ幅方向長さの長い突起が形成されるようになる。
【0041】
さらには、前記線8aを通過したスリット10によりフランジ内面に転写された突起tは、前記線8aの位置で形成される場合に比べ圧延方向とは逆方向に傾いて形成される。よって、特に、図3や図8に示すように、スリット10が圧延方向とは逆方向に湾曲して、且つその裾野が幅広形状である場合には、スリット10から突起tが抜けやすくなる。
【0042】
以上のように、左右一対の垂直ロール7を上下一対の水平ロール6に対して圧延方向にオフセットさせて配置することで、水平ロール6のスリット10から突起tを抜きやすくして、フランジ幅方向長さの長い突起tを形成することができる。
また、このようにスリット10で形成した突起tを装置側の部材によってつぶしてしまうことを防止することで、接触した装置側の部材、例えば水平ロール6がその接触により破損してしまうことも防止することができる。
【0043】
なお、水平ロール6のロール軸8に対して垂直ロール7のロール軸9を圧延方向出側に位置させる方法としては、垂直ロールチョック或いは水平ロールチョックにシフト機構をもたせる方法や、ロールチョックと圧延機ハウジング間に挿入するライナーの厚みを圧延入側と圧延方向出側で変えるなど様々な方法が挙げられる。
【0044】
次に、第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態では、図9に示すように、水平ロール6のロール側面6aをテーパをつけて形成している。
ここで、圧延設備は、前記第1の実施の形態と同様に、図1に示すように構成される。第2の実施の形態では、圧延設備において、その仕上ユニバーサル圧延機5の水平ロール6のロール側面6aにテーパをつけていることが異なるだけで、特に言及しない限り、他の構成さらにはその動作については、第1の実施の形態と同様とされている。
【0045】
例えば、第2の実施の形態では、左右一対の垂直ロール7と上下一対の水平ロール6との位置関係は、前記図6に示すように、左右一対の垂直ロール7のロール軸9と上下一対の水平ロール6のロール軸8とを圧延方向でオフセットさせなくともよく、或いは第1の実施の形態で特徴とするように、左右一対の垂直ロール7のロール軸9と上下一対の水平ロール6のロール軸8とを圧延方向でオフセットさせてもよい。
【0046】
ここで、テーパをつけたロール側面6aとは、水平ロール6のロール軸8に直交する垂直面8bに対して逃げる方向に角度αで傾いているロール側面6aをいう。例えば、角度αは1°若しくは1°よりも大きいことが好ましい。
そして、このロール側面6aのコーナー部6bの近傍に、複数のスリット10を形成している。スリット10の形状は、図3や図4に示すような形状である。
【0047】
このような水平ロール6を用いた仕上ユニバーサル圧延機5により、図10に示すように、フランジSF内面には、圧延方向に対してほぼ直交する垂直方向、すなわちフランジ幅方向に延びる突起tが形成される。
そして、スリット10がロール側面6aにテーパをつけていることで、フランジSF内面と水平ロール6のロール側面6aが未だに接触した状態の領域Bでのこすり上げを防止することができる。
【0048】
前述したように、フランジSF内面に形成された突起tは、左側上部dで突起tがスリット10の前記角部eでこすり上げられてしまい、破損してしまう(図7中(C)参照)。
しかし、第2の実施の形態では、水平ロール6のロールコーナー部6bは、図10に示すように、突起tの最下部を基準として水平ロール6のロール軸8に直交する垂直面内を移動することになる。すなわち、突起tを形成した以降で、コーナー部6bの軌道は、常に、当該突起tから離れた領域に位置される。
【0049】
よって、例えば、圧延方向出側である前記B領域のある時点では、図10に示すように、前記角部eが突起tの先端部fよりも内側に位置することになり、突起tと当該突起tを形成したスリット10の前記角部eとが離間された位置関係になる。
このように、突起tを形成した以降、水平ロール6におけるその形成に用いた部位が突起tから離れるようになるので、こすり上げを防止して、突起tを破損してしまうことを防止できる。よって、接触防止のためにスリット10の形状をその下部(前記コーナー部6b近傍の部位)で広げた形状にする必要もなくなるので、ロール側面6aへのスリット10の形成間隔を細かくすることができ、この結果、ピッチが細かい突起群を形成することができる。
【0050】
なお、ロール側面6aのテーパについては、図9に示すように、ロール側面6a全体にテーパをつけるようにしてもよく、少なくともロール側面6aの外周部、すなわち例えば、図9に示すように、ロール側面6aにおいてスリット10を形成している外周領域Cだけにテーパをつけるようにしてもよい。
また、テーパ角度αを1°若しくはそれよりも大きくしているが、これは、通常、フランジ内面の突起高さは1mm以上であり、フランジ幅方向の長さは50mm以上であり、このような寸法条件で、前述したように前記角部eが突起tの先端部fに接触しないようにするための幾何学的関係として得たものである。
【0051】
次に、第3の実施の形態を説明する。
第3の実施の形態では、図11に示すように、スリット10の深さを前記コーナー部6bで最も深くして、水平ロール6の中心に向かうに従い浅くしている。すなわち例えば、図11に示すように、前記ロールコーナー部6bでのスリット10の深さL1は、当該スリット10において前記水平ロール6側に最も近い位置の深さL2よりも深くなっている。なお、ここで、スリット10の深さとは、ロール側面6aを基準にとった当該水平ロール6内部への深さである。また、スリット10の形状(平面形状)は、図3や図4に示すような形状である。
【0052】
ここで、圧延設備は、前記第1の実施の形態と同様に、図1に示すように構成される。第3の実施の形態では、圧延設備において、その仕上ユニバーサル圧延機5の水平ロール6のスリット10が、ロールコーナー部6bで最も深く、水平ロール6の中心に向かうに従い浅くなっていることが異なるだけで、特に言及しない限り、他の構成さらにはその動作については、第1の実施の形態と同様とされている。
【0053】
例えば、第3の実施の形態では、左右一対の垂直ロール7と上下一対の水平ロール6との位置関係は、前記図6に示すように、左右一対の垂直ロール7のロール軸9と上下一対の水平ロール6のロール軸8とを圧延方向でオフセットさせなくともよく、或いは第1の実施の形態で特徴とするように、左右一対の垂直ロール7のロール軸9と上下一対の水平ロール6のロール軸8とを圧延方向でオフセットさせてもよい。
【0054】
このような水平ロール6を用いた仕上ユニバーサル圧延機5により、図12に示すように、フランジSF内面には、圧延方向に対してほぼ直交する垂直方向、即ちフランジ幅方向に延びる突起tが形成される。
そして、スリット10が前記コーナー部6bで最も深く、水平ロール6の中心(ロール軸8)に向かうに従い浅くなっていることで、形成された突起tは、図12に示すように、付け根部(フィレット部)gで最も高く(厚く)なり、先端部fで最も低く(薄く)なる。
【0055】
水平ロール6と突起tとの接触によるロール内面6aからの剥離や水平ロール6(例えば、コーナー部6b)によるこすり上げは、突起tの先端部fで起きる場合が多い。このようなことから、先端部fの高さを、他の部分よりも予め低く抑えておくことで、水平ロール6が突起tと接触してしまう可能性を低くし、また、水平ロール6が突起tとその先端部fで接触しても、先端部fに働く水平ロール6の力を低減することができる。これにより、突起tの大きな剥離や水平ロール6側の欠損等を防止できる。
【0056】
また、先端部fの突起高さを低く抑えた分が、付け根部gの突起高さが高くなっていることで補足されるので、突起tの大きな剥離や水平ロール6側の欠損等を防止しつつも、必要なコンクリートとの付着強度を確保することができる。
また、仕上圧延前の材料のフィレット部近傍には、図14乃至図16に示すように、余肉x1、x2、x3を形成しておくことが好ましい。突起tを形成する部分において、強圧下となるので、突起tがより高く形成されるためである。ここで、フィレット部とは、フランジSFとウェブSWとが結合する部位である。
【0057】
なお、余肉の形成に際しては、図14及び図15に示すようにフランジSFの内面に形成しても、或いは図16に示すようにフランジSFの外面に形成してもよい。
フランジSFの内面に余肉を形成する手段としては、例えば、図14に示す、仕上ユニバーサル圧延機よりも前段の水平ロール(粗ユニバーサル圧延機の水平ロール)501のロールコーナ内半径寸法R1を仕上ユニバーサル圧延機の水平ロール601のコーナ内半径R2よりも大きくする手段、或いは図15に示す、仕上ユニバーサル圧延機より前段の水平ロール(粗ユニバーサル圧延機の水平ロール)501の側面に凹部502を形成しておく手段がある。即ち、図14に示す手段にあっては、図14中(A)に示すように、仕上ユニバーサル圧延機よりも前段の水平ロール501のロールコーナ内半径寸法R1を仕上ユニバーサル圧延機の水平ロール601のコーナ内半径R2よりも大きくしておいて、上下一対の水平ロール501により形成されるロール隙でウェブSWをその厚さ方向に圧下し、垂直ロール(図示せず)と上下の水平ロール501の側面とにより形成されるロール隙でフランジSFをその厚さ方向に圧下することで、フランジSFの内面に余肉x1を形成する。その後、仕上ユニバーサル圧延機の水平ロール601の側面と垂直ロール(図示せず)によるロール隙でフランジSFをその厚さ方向に圧下する。水平ロール601の側面にはロールコーナ部からスリットを形成しており、余肉x1を含んで圧下して突起tを形成する。また、図15に示す手段にあっては、図15中(A)に示すように、仕上ユニバーサル圧延機より前段の水平ロール(粗ユニバーサル圧延機の水平ロール)501の側面に凹部502を形成しておいて、上下一対の水平ロール501により形成されるロール隙でウェブSWをその厚さ方向に圧下し、垂直ロール(図示せず)と上下の水平ロール501の側面とにより形成されるロール隙でフランジSFをその厚さ方向に圧下する。これにより、フランジSFの内面に先ず余肉x2を形成しておく。その後、仕上ユニバーサル圧延機の水平ロール601の側面と垂直ロール(図示せず)でフランジSF の厚み圧下を余肉x2を含んで行い、スリットをもつ水平ロール601のコーナ部側面と接するフランジSFの内面に突起tを形成する。
【0058】
また、フランジSFの外面に余肉を形成する手段としては、例えば、図16に示すように、仕上ユニバーサル圧延機よりも前段の垂直ロール(粗ユニバーサル圧延機の垂直ロール)503のロール高さ方向中央部に面取部504を形成しておき、上下一対の水平ロール501により形成されるロール隙でウェブSWをその厚さ方向に圧下し、垂直ロール503と上下の水平ロール501の側面とにより形成されるロール隙でフランジSFをその厚さ方向に圧下することで、フランジSFの外面に余肉x3を形成する。その後、仕上ユニバーサル圧延機の水平ロール601の側面と垂直ロール603によるロール隙でフランジSFをその厚さ方向に圧下する。水平ロール601の側面にはロールコーナ部からスリットを形成しており、余肉x3を含んで圧下して突起tを形成する。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施の形態として実現されることに限定されるものではない。
すなわち、第1乃至第3の実施の形態を任意の組み合わせとして構成してもよい。
また、第1乃至第3の実施の形態では、フランジ内面に突起tを形成する形鋼がH形鋼である場合に説明したが、これに限定されることなく、他の形鋼、すなわち、ウェブ及びフランジを有するI形鋼、T形鋼或いは溝形鋼であってもよい。
【0060】
また、仕上げユニバーサル圧延機の垂直ロールの側面にも垂直方向に伸びるスリットを設け、フランジ外面にも突起を形成してもよい。また、水平ロール6の周面やコーナー部(R面部)にも当該水平ロール6のロール軸8に平行なスリットを設け、ウェブ面やフィレッ卜部にも突起を形成してもよい。
【0061】
【実施例1】
この実施例1は、前記第1の実施の形態に対応したものであり、いわゆるVロールシフトと称するものである。
図1に示す圧延設備1において、図13に示す形状のスリット10をロール側面6aに設けた水平ロール6を仕上ユニバーサル圧延機5に組み込んで仕上圧延を行い、フランジ内面に突起を有するH形鋼(製品寸法:ウェブ高さ598mm、フランジ幅310mm、ウェブ厚14mm、フランジ厚25mm)を製造した。
【0062】
スリット10の長さLは90mm、スリット10の裾野幅Wは48mm、スリット10の圧延方向先行側の曲率半径R1は186mm、スリット10の圧延方向後行側の曲率半径R2=97mm、スリット10の先端の曲率半径R3は7.0mmであり、スリット10の深さは位置によらず2.5mmで一定とした。また、水平ロール径は1250mmである。また、仕上げユニバーサル圧延における目標圧下率はウェブで6%、フランジで12%とした。また、水平ロール6のロール側面6aのテーパ角度αは0°である。
【0063】
ここで、第1の実施の形態に適合させるための条件として、仕上ユニバーサル圧延機5の垂直ロールチョックのライナー厚みを調整することにより、垂直ロール7のロール軸9を水平ロール6のロール軸8に対し、圧延方向出側に10mm(オフセット量OS=10mm)シフトさせた。以下これを第1の適合例という。また、比較として、垂直ロール7のロール軸9と水平ロール6のロール軸8の圧延方向位置を一致させた場合(オフセット量OS=0mm)についても圧延を行った(第1の比較例)。
【0064】
この結果、第1の適合例では、突起tがつぶされたり、剥がされたりすることなく、長さ90mm、高さ1.8mm、裾野の幅48mmである健全な突起を形成することができた。その一方、第1の比較例では、突起の先端がつぶされてしまい、健全な突起を形成できなかった。
また、仕上ユニバーサル圧延機の水平ロールのロールコーナ内半径を13mmとし、これに対し、粗ユニバーサル圧延機の水平ロールのロールコーナ内半径を30mmとして、フィレット部に最大7mmの予肉を形成させて前記第1の適合例と同じ条件で仕上圧延を施した。その結果、高さが3mm、長さが90mm、幅が48mmの突起を形成することができた。
【0065】
【実施例2】
この実施例2は、前記第2の実施の形態に対応したものである。いわゆるHロールテーパと称するものである。
前記実施例1と同様に、図1に示す圧延設備において、図13に示す形状のスリット10をロール側面6aに設けた水平ロール6を、仕上ユニバーサル圧延機5に組み込で仕上げ圧延を行い、フランジ内面に突起tを有するH形鋼(製品寸法:ウェブ高さ598mm、フランジ幅310mm、ウェブ厚14mm、フランジ厚25mm)を製造した。
【0066】
スリット10の長さLは90mm、スリット10の裾野幅Wは36mm、スリット10の圧延方向先行側の曲率半径R1は198mm、スリット10の圧延方向後行側の曲率半径R2=132mm、スリット10の先端の曲率半径R3は4.5mmであり、スリット10の深さは位置によらず2.5mmで一定とした。また、水平ロール径は1250mmである。また、仕上げユニバーサル圧延における目標圧下率はウェブで4%、フランジで15%とした。
【0067】
ここで、第2の実施の形態に適合させるための条件として、水平ロール6のロール側面6aのテーパ角度αは1.5°とした。以下これを第2の適合例という。また、比較として、前記テーパ角度αを0°とした場合についても圧延を行った(第2の比較例)。また、第2の適用例と第2の比較例とは、いずれも垂直ロール軸心と水平ロール軸心とは圧延方向で一致させている。
【0068】
この結果、第2の適合例では、突起がつぶされたり、剥がされたりすることなく、長さ90mm、高さ2.3mm、裾野の幅36mmである健全な突起を形成することができた。その一方、第2の比較例では、突起の先端がこすり上げられてしまい、健全な突起を形成できなかった。
【0069】
【実施例3】
この実施例3は、前記第3の実施の形態に対応したものである。
前記実施例1や実施例2と同様に、図1に示す圧延設備において、図13に示す形状のスリット10をロール側面6aに設けた水平ロール6を、仕上ユニバーサル圧延機5に組み込で仕上げ圧延を行い、フランジ内面に突起tを有するH形鋼(製品寸法:ウェブ高さ622mm、フランジ幅315mm、ウェブ厚19mm、フランジ厚37mm)を製造した。
【0070】
スリット10の長さLは75mm、スリット10の裾野幅Wは48mm、スリット10の圧延方向先行側の曲率半径R1は180mm、スリット10の圧延方向後行側の曲率半径R2=124m、スリット10の先端の曲率半径R3は11mmとした。また、仕上ユニバーサル圧延における目標圧下率はウェブで4%、フランジで16%であり、水平ロールのテーパ角度αは0°である。
【0071】
ここで、第3の実施の形態に適合させるための条件として、スリット10の深さを、先端部分で2.0mmとし、裾野部分で4.0mmとした。以下これを第3の適合例という。また、比較として、スリットの深さを位置によらず3.0mmで一定にした場合についても圧延を行った(第3の比較例)。また、第3の適用例と第3の比較例とは、いずれも垂直ロール軸心と水平ロール軸心とは圧延方向で一致させている。
【0072】
この結果、第3の適合例では、突起の先端がややつぶされた状況となったが、長さ75mm、先端部の高さ1.5mm、裾野の幅48mmの良好な突起を形成することができた。装置側の部位であるスリットを設けている水平ロール6にも問題は生じなかった。
その一方、第3の比較例でも長さ72mm程度の突起を形成できたが、突起の先端が大きくつぶされてしまい、突起高さを計測することがきなかった。突起の先端が大きくつぶされてしまうのは、スリット10の先端部の深さが3.0mmと深いことから、突起の厚みが厚くなっているためである。また、この第3の比較例では、水平ロールの先端のスリットを施した部分で欠損が生じた。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1及び4に記載の発明によれば、フランジ内面からの突起の高さを先端部側で低くすることができるので、突起が先端部側で水平ロールの部位と接触してしまう可能性を低くすることができる。また、突起の先端部側ではフランジ内面からの高さが低いので、たとえ先端部側が水平ロールの部位と接触した場合でも、その水平ロール側の損傷を小さく抑えることができる。
【0076】
また、請求項2に記載の発明によれば、スリットの各々が、ロール側面のコーナー部を始点として形鋼の圧延方向とは逆方向に湾曲する形状で形成されているので、形成された突起はスリットから抜けやすくなる。
また、請求項3に記載の発明によれば、位上ユニバーサル圧延機使用前の材料のフィレット部近傍に予肉を形成しておくので、フランジ内面に形成される突起をより高く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフランジ内面突起付形鋼の製造方法が適用される圧延設備の概略構成図である。
【図2】図1の圧延設備における仕上ユニバーサル圧延機に組み込まれる水平ロールの側面図である。
【図3】本発明の実施に好適な、水平ロールの側面に形成されたスリットを示す模式図である。
【図4】第1の実施の形態の説明のために、図2に示す水平ロール用いての仕上ユニバーサル圧延における水平ロールの側面とフランジ内面との接触状態を模式的に示した図である。但し、図4においては、スリットの表示を省略するとともにフランジを透視している。
【図5】フランジ内面に突起を有するH形鋼の部分斜視図である。
【図6】第1の実施の形態の効果の説明のために、図2に示す水平ロール用いての仕上ユニバーサル圧延における水平ロールの側面とフランジ内面との接触状態を模式的に示した図である。
【図7】第1の実施の形態の効果の説明のために使用した、従来のスリットと突起との関係を示す図である。
【図8】第1の実施の形態の効果の説明のために使用したスリットと突起との関係を示す図である。
【図9】第2の実施の形態の水平ロールの形状を示す断面図である。
【図10】前記第2の実施の形態の水平ロールに設けたスリットによる突起の形成を示す図である。
【図11】第3の実施の形態の水平ロールの形状を示す断面図である。
【図12】前記第3の実施の形態の水平ロールに設けたスリットにより形成した突起を示す図である。
【図13】実施例の説明のために使用したスリットの形状を示す図である。
【図14】粗ユニバーサル圧延機の水平ロールのロールコーナ内半径寸法を仕上ユニバーサル圧延機の水平ロールのコーナ内半径よりも大きくしてフランジの内面に余肉を形成する手段を示し、(A)は粗圧延の様子を(B)は仕上圧延の様子を示している。
【図15】粗ユニバーサル圧延機の水平ロールの側面に凹部を形成してフランジの内面に余肉を形成する手段を示し、(A)は粗圧延の様子を(B)は仕上圧延の様子を示している。
【図16】粗ユニバーサル圧延機の垂直ロールのロール高さ方向中央部に面取りを施してフランジの外面に余肉を形成する手段を示し、(A)は粗圧延の様子を(B)は仕上圧延の様子を示している。
【図17】ウェブとフランジを有する形鋼の一般的な圧延設備の概略構成図で、(A)は1つの粗ユニバーサル圧延機を配列した圧延設備の概略構成図、(B)は2つの粗ユニバーサル圧延機を配列した圧延設備の概略構成図である。
【図18】図17中(A)に示す圧延設備によってH形鋼を圧延する場合の圧下状態を示し、(A)は粗ユニバーサル圧延による圧下状態、(B)はエッジング圧延による圧下状態、(C)は仕上ユニバーサル圧延による圧下状態を示している。
【図19】従来の、フランジ外面に突起を形成する仕上ユニバーサル圧延機の概略斜視図である。
【図20】従来例の、フランジ内面に突起を形成する仕上圧延装置の概略正面図である。
【図21】従来例の、フランジ内面に突起を形成する内面突起付H形鋼の製造方法が適用される圧延設備の概略構成図である。
【図22】図21に示す圧延設備によってH形鋼を圧延する場合の圧下状態を示し、(A)は第1粗ユニバーサル圧延機による圧下状態、(B)は第2粗ユニバーサル圧延機による圧下状態、(C)は仕上ユニバーサル圧延機による圧下状態を示している。
【符号の説明】
1 圧延設備
2 ブレークダウン圧延機
3 粗ユニバーサル圧延機
4 エッジング圧延機
5 仕上ユニバーサル圧延機
6 水平ロール
6a ロール側面
6b ロールコーナー部
7 垂直ロール
8,9 ロール軸
10 スリット
OS オフセット量
S H形鋼(形鋼)
SF フランジ
SW ウェブ
t 突起
α テーパ角度
Claims (5)
- フランジ及びウェブを有する形鋼の仕上圧延を行うに際して、ロール側面のコーナー部を始点としほぼロール軸に向かう複数のスリットを形成した水平ロールを組み込み、前記スリットの深さを前記ロール軸に向かうに従い浅くしている仕上ユニバーサル圧延機を使用し、
前記水平ロールの側面による前記フランジ内面への押圧時に前記フランジ内面に複数の突起を形成することを特徴とするフランジ内面突起付形鋼の製造方法。 - 前記スリットの各々が、前記ロール側面のコーナー部を始点として前記形鋼の圧延方向とは逆方向に湾曲する形状で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフランジ内面突起付形鋼の製造方法。
- 前記仕上ユニバーサル圧延使用前の材料のフィレット部近傍に余肉を形成しておくことを特徴とする請求項1又は2に記載のフランジ内面突起付形鋼の製造方法。
- フランジ及びウェブを有する形鋼の仕上圧延を行うに際して、ロール側面のコーナー部を始点としほぼロール軸に向かう複数のスリットを形成した水平ロールを組み込み、前記スリットの深さを前記ロール軸に向かうに従い浅くしていることを特徴とする仕上ユニバーサル圧延機。
- 前記スリットの各々が、前記ロール側面のコーナー部を始点として前記形鋼の圧延方向とは逆方向に湾曲する形状で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の仕上ユニバーサル圧延機。
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