JP3987756B2 - 靴用防水内装部材およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通気性を有し、しかも日常の靴の着用において何ら支障のない防水性を確保した靴用防水内装部材およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、靴の内面にはライニング材(裏地材ないし裏革材のこと、ライナーと言うことも多い)が設けられている。そしてライニング材の素材としては、強度、耐摩耗性、吸汗性、クッション性の良好なもの、たとえば、天然皮革、人工皮革、合成皮革、ニット、不織布、織布などが使われている。ライニング材の素材として、撥水性布を用いたものもある。
【0003】
上述のライニング材を透湿防水性を有する素材と複合したものを用いることも知られている。ここで透湿防水性素材の例は、ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム、ウレタン系無孔質フィルム、ウレタン系多孔質フィルム、親水性ポリエステルフィルムなどである。
【0004】
ライニング材は、通常は底面がない内装部材であって、靴の製造工程においては、ライニング材とアッパー材(甲被材、甲革材)とを吊り込み方式により中底材に取り付け、さらには最終的に本底に取り付けて、靴を製造する。なお、靴の外殻を形作ってから、底面のある袋状(ソックス状)の内装部材を用いて靴を製造することもある。
【0005】
このうち後者の袋状の内装部材は、着脱自在とすることもある。たとえば、本出願人の出願にかかる特許第2757114号(特開平7−148004号公報)には、靴内に嵌め込んで使用する立体のライナーであって、全体が足の甲、足裏およびかかとを覆う立体形状を有し、かつその主要構成部材が、ダブルラッセル編みにより編成された編布であって、表層、裏層およびこれら表裏両層を厚さ方向に連結する中間層からなる3層構造の編布で構成されていることを特徴とするソックス状ライナーが示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ライニング材として通常のライニング材を透湿防水性を有する素材と複合したものを用いた場合は、防水性の点では申し分のないものの、通気性がほとんどなく、透湿性を持つ程度のものが大半であるため、この程度の性能では足のムレを軽減するまでには至らず、悪臭、カビ・バクテリアの発生、足の障害などの様々な問題点をひき起こす傾向がある。汗の量については、足から出る汗の量は他の部位に比して約10倍と言われ、1日にコップ1杯程度に相当するところ、これらの透湿防水性素材の「透湿」機能によっては、足の発汗量との対比で到底対処できず、ゴム靴のような完全防水靴と大差がないほど足が蒸れるのである。
【0007】
一方、透湿防水性素材に代えて、従来使われているような撥水処理を施した通気性のある素材を用いたときは、今度は当然に防水性が大きく不足することになる。
【0008】
本発明は、このような背景下において、完全防水靴(完全防水を目的とする特殊靴)以外の靴を対象とするものであって、足の蒸れを防ぐ通気性を有しているため快適に着用することができ、しかも日常の靴の着用において何ら支障のない程度の防水性を確保した(つまり日常防水靴としての充分な防水性を備えた)靴用防水内装部材およびその製造法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の靴用防水内装部材は、
(A)繊維径10μm 以下のポリエステル繊維から作製され、目付量が50〜250g/m2で、かつ、エンボス加工および撥水加工されたメルトブローン法不織布(1) を主基材とするか、そのメルトブローン法不織布(1) の少なくとも片面をトリコット(2) で補強した材料を主基材とすること、および、
(B)前記のエンボス加工および撥水加工されたメルトブローン法不織布(1) のJIS L 1096による通気度が1〜25cc/cm2/secの範囲内にあり、かつJIS L 1092A による耐水圧が300〜2000mmH2O の範囲内にあること
を特徴とするものである。
【0010】
本発明の靴用防水内装部材の製造法は、
繊維径10μm 以下のポリエステル繊維から作製され、目付量が50〜250g/m2であるメルトブローン法不織布(1) に対して、エンボス加工と共に任意の段階において撥水加工を施すこと、および、
前記のエンボス加工と同時にまたはその前または後にあるいは前記の撥水加工の前または後に平滑面による熱プレスを行って、そのエンボス加工および撥水加工されたメルトブローン法不織布(1) のJIS L 1096による通気度を1〜25cc/cm2/secに、JIS L 1092A による耐水圧を300〜2000mmH2O に設定すること
を特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0012】
《主基材》
本発明においては、主基材として、エンボス加工および撥水加工されたメルトブローン法不織布(1) 、あるいはそのエンボス加工および撥水加工メルトブローン法不織布(1) の少なくとも片面をトリコット(2) で補強した材料を用いる。
【0013】
(メルトブローン法不織布(1) )
ここでメルトブローン法不織布(1) は、メルトブローン法(つまり、溶融した熱可塑性樹脂を押出機のダイから集積スクリーン上に高速度の気流で吹き飛ばし交絡させることによって、自己接着性マイクロファイバーのウエブを製造する方法)により不織布とされたものであり、通気性は確保しながらも、空隙が小さいので必要な防水性を確保できる素材となりうる。またメルトブローン法による不織布は、次に述べる材質とも相まって、強度も良好である。
【0014】
このメルトブローン法不織布(1) を構成する繊維に関しては、本発明においては、繊維径10μm 以下(好ましくは7μm 以下)の極細のポリエステル繊維を用いることが必要である。このような素材および太さの繊維は、強度が強い上、極細の繊維を用いるので不織布としたときの空隙を小さくすることができる。
【0015】
メルトブローン法不織布(1) の目付量は、50〜250g/m2であることも必要である(好ましい範囲は70〜200g/m2)。目付量が50g/m2未満では強度や耐水圧が不足する傾向があり、目付量が250g/m2を越えるときは、通気量が不足する傾向があるからである。
【0016】
(エンボス加工)
このメルトブローン法不織布(1) は、エンボス加工されたものであることが必須の条件である。エンボス加工品とすることにより、層間剥離強度の向上、引張・引裂強度の向上、防水度の向上が図られるからである。
【0017】
エンボス加工は、エンボスロールを用いてメルトブローン法不織布(1) を熱プレスすることにより達成できる。エンボス形状は任意である。なお、エンボスロールとしては、メルトブローン法不織布(1) の両側に位置するロールの双方をエンボスロールとしてもよく、片側をエンボスロール、他側を平滑面を有するロールとしてもよい。前者の場合には、メルトブローン法不織布(1) の表裏におけるプレス部を、凹−凹、凸−凸のように一致させてもよく、凸−凹、凹−凸のようにずらしてもよい。なお、後者の場合には、他側の平面ロールを後述の平面熱プレスのためのロールとして用いることもできる。
【0018】
(撥水加工)
上記のエンボス加工されたメルトブローン法不織布(1) は、エンボス加工と共に、防水性のコントロールのために撥水加工も施すことが必要である。撥水加工は、エンボス加工の前後を問わず、任意の段階において行うことができる。撥水処理剤としては、好適には、フッ素系撥水処理剤(低分子量、オリゴマーまたは高分子量の含フッ素化合物)、シリコーン系撥水処理剤、シリコーンユニットを有する含フッ素化合物からなる撥水処理剤、パラフィンワックス等のワックスを主成分とするワックス系撥水処理剤、高級脂肪酸塩等を主成分とする金属錯塩系撥水処理剤などが用いられ、これらは、水系、溶剤タイプ、エマルジョンタイプなどの形態で用いられる。
【0019】
(通気度および耐水圧)
上記のエンボス加工および撥水加工されたメルトブローン法不織布(1) は、そのJIS L 1096による通気度が1〜25cc/cm2/sec(好ましくは2〜25cc/cm2/sec、さらに好ましくは3〜25cc/cm2/sec、殊に5〜20cc/cm2/sec)の範囲内にあることが必要である。通気度が1cc/cm2/sec未満では通気性が不足し、通気度が25cc/cm2/secを越えるときは耐水圧を確保することが難しくなる。
【0020】
また、上記のエンボス加工および撥水加工されたメルトブローン法不織布(1) は、そのJIS L 1092A による耐水圧が300〜2000mmH2O (好ましくは400〜1800mmH2O 、さらに好ましくは600〜1600mmH2O )の範囲内にあることが必要である。耐水圧が300mmH2O 未満では防水性が不足し、耐水圧が2000mmH2O を越えるときは通気度を確保することが難しくなる。
【0021】
(通気度および耐水圧の制御方法)
通気度1〜25cc/cm2/secおよび耐水圧300〜2000mmH2O への物性設定は、不織布製造時の繊維密度やエンボス条件の選択、撥水加工の実施などを巧みに組み合わせることだけでも達成することができる。しかしながら、通気度1〜25cc/cm2/secおよび耐水圧300〜2000mmH2O への物性設定は、メルトブローン法不織布(1) に対するエンボス加工と同時にまたはその前または後にあるいは前記の撥水加工の前または後に平滑面による熱プレスを行い、その熱プレスにおいて、繊維材料に加える温度と圧力とを制御して平滑化の度合いや密度を調節することにより最も確実になされるので、工業的にはそのような方法を採用することが推奨される。平滑面による熱プレス(つまり非エンボスの熱プレス)は、通常は熱ロールを用いて行われる(場合によっては平らで平滑な熱板を用いて行うこともできる)。通気度および耐水圧は、エンボス形状、不織布製造時の繊維密度、撥水加工条件などによっても影響を受けるので、これらも加味しながら熱プレス条件を決めることになる。
【0022】
(トリコット(2) )
主基材としては、上記のメルトブローン法不織布(1) の少なくとも片面をトリコット(2) で補強した材料を用いることもでき、その方がむしろメルトブローン法不織布(1) 単独の場合よりも本発明の目的にとって好適であることが多い。メルトブローン法不織布(1) に対するトリコット(2) の積層は、任意の段階で行うことができる。
【0023】
トリコットとは、経方向に整経したされた糸をループで絡み合わせていく経編みの一種であり、トリコット編機を用いて製造される、なお、経編みによれば、織物と緯編みとの中間のようながっちりとした編地ができる。トリコットには、ハーフトリコット、逆ハーフトリコット、サテントリコット、ダブルトリコット、緯糸挿入トリコット、クインズコード、ストライプサッカーなどがあるが、本発明のトリコットはそれらのいずれであってもよい。
【0024】
トリコット(2) 用の繊維としては、種々の合成繊維の加工糸が用いられ、耐熱性、防水性、防水テープとの接着性、強度などを総合考慮すると、ポリエステル加工糸または6−ナイロンや6,6−ナイロン等のナイロン加工糸が特に好適である。
【0025】
トリコット(2) の目付量は、20〜40g/m2、殊に22〜35g/m2とするのが適当である。
【0026】
先に述べた撥水加工は、メルトブローン法不織布(1) をトリコット(2) で補強するときは、そのトリコット(2) を積層する前に行ってもよく、トリコット(2) を積層してからその上から行ってもよい。
【0027】
(付加層)
主基材は、上記のメルトブローン法不織布(1) (またはこれとトリコット(2) )のほかに、付加層として、発泡体・スポンジ、不織布、織布、編布などでできたクッション層を有していてもよい。
【0028】
《靴の製造》
上記の主基材は、アッパー材(3a)または/およびライニング材(3b)に積層されまたは積層可能にされる。このときの積層は、通常は接着剤や粘着剤を用いて部分通気接着を行うことによりなされ、そのときに縫製手段を併用することも多い。内装部材が袋状であるときには、主基材をアッパー材(3a)やライニング材(3b)に固着しないこともある。アッパー材(3a)に主基材を取り付けるときは、アッパー材(3a)と主基材との間にタブラーを介在配置することも多い。
【0029】
主基材の使用の態様としては、
・アッパー材(3a)/主基材(つまり、主基材を従来のライニング材に代替して使用)、
・ライニング材(3b)/主基材(つまり、主基材を従来のライニング材(3b)と積層して使用)、
・アッパー材(3a)/タブラー/主基材、
・アッパー材(3a)/主基材/ライニング材(3b)
・アッパー材(3a)/タブラー/主基材/ライニング材(3b)
をはじめとする種々の使い方が可能である。
【0030】
上記のアッパー材(3a)、ライニング材(3b)としては、従来使われているような種々の素材を用いることができる。たとえば、天然皮革、人工皮革、合成皮革、ニット(ポリエステルニット、ナイロンニット、ダブルラッセル編物等)、不織布(ナイロン不織布等)、織布(ポリエステル織布、ナイロン織布、綿織布等)などである。本発明は通気性のある靴とすることができることを目的の一つとしているので、もしアッパー材(3a)やライニング材(3b)の通気性がないか小さいときは、これらにパンチングをしたりメッシュ品を選択するなどして通気性を確保することが望ましい。一方、特にアッパー材(3a)として通気度の高い材料を使用する場合は、通気度も高いが水分通過量も多くなるため、アッパー材(3a)の表面に、撥水性をより高めるために撥水剤(撥水性を示す樹脂を含む)をコーティングすることもできる。
【0031】
なお、主基材は、裁断による1片からなるものであってもよく、裁断による2片以上を縫製により相互につなげたものであってもよい。後者の場合には、防水性を有する接着テープを縫製部上に熱シール(ホットメルトシール)等の方法により接着して防水性を確保する方法、粘度が高くかつ伸縮性のある皮膜を形成する防水糊を縫い目の部分に塗布して防水性を確保する方法、シリコーン系等のシール剤を縫い目の部分に塗布して防水性を確保する方法などが採用される。
【0032】
靴を製造するにあたっては、本発明の内装部材をアッパー材(3a)や従来のライニング材(3b)と適宜組み合わせて、吊り込み方式により中底材に取り付け、さらには最終的に本底に取り付ければよい。また、本発明の内装部材で底面のある袋状(ソックス状)のインナー材を作り、別途作製した靴の外殻に挿入して、靴となすこともできる。
【0033】
防水性を高めるために、本発明の靴用内装部材を従来の透湿防水素材と組み合わせることもできる。また、本発明の靴用内装部材を、アッパー、ライニング、中底、本底材に部分使いすることもできる。たとえば、本発明の靴用内装部材をメッシュ材(シングルメッシュ、ダブルメッシュ等の織物や編物など)と貼り合わせると共に、アッパー材(3a)の一部に窓を開け、その窓の部分にこれを縫い付けるような使い方をすることもできる(後述の図6参照)。
【0034】
《作用》
従来の透湿防水性素材を用いた靴用内装部材は、耐水性にはすぐれているが、通気性がない。一方、通気性のある素材を用いた一般の靴用内装部材は、通気性はすぐれているものの、たとえ通気性素材として撥水性布を用いた場合でも、耐水圧は無に等しい。
【0035】
しかるに、上記構造を有する本発明の靴用防水内装部材は、足の蒸れを防ぐ通気性を有しているため快適に着用することができ、しかも日常の靴の着用において何ら支障のない防水性を有しており、たとえば一般のレインシューズのような日常防水靴としても用いることができる。
【0036】
図7は、本発明の靴用防水内装部材、透湿防水性素材を用いた従来の靴用内装部材、撥水性布を用いた従来の靴用内装部材の3者の通気度と耐水圧との関係を対比したグラフであり、横軸は通気度、縦軸は耐水圧である。図7から、本発明の靴用防水内装部材は、従来とは異なる独自の領域にかかる靴用内装部材でありかつバランスのとれた性能を有していることがわかる。
【0037】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。
【0038】
実施例1
(図面の説明)
図1は、本発明の靴用防水内装部材をアッパー材(3a)およびライニング材(3b)に取り付けた材料の一例を示した説明図であり、(イ)は平面図、(ロ)は底面図である。
図2は、図1の材料のX−X断面における各層の配置関係を摸式的に示した説明図である。
図3は、図1の靴用防水内装部材で使われているエンボス加工されたメルトブローン法不織布(1) のエンボス状態の一例を示した部分平面図である。
図4は、快適性(ムレ感)試験における衣服内の温度および湿度の測定結果を示したグラフである。
図5は、発汗量試験における発汗量の測定結果を示したグラフである。
【0039】
(主基材の製造)
繊維径5μm の極細のポリエステル繊維からメルトブローン法により作製され、エンボス加工され(図3参照)、かつパーフルオロアルキル基を有するアクリル共重合体からなるフッ素系撥水処理剤の含浸または塗布により撥水加工された目付量110g/m2のメルトブローン法不織布(1) を準備した。(なお、撥水加工は、次に述べるトリコット(2) の積層後に、そのトリコット(2) の上から行ってもよい)。
【0040】
なお、メルトブローン法により作製されると共にエンボス加工された不織布の通気度および耐水圧を制御するため、エンボス加工の後に平滑面を有する熱ロールによる熱プレスを行っておいた。
【0041】
また、ポリエステル加工糸をトリコット編みした目付け28g/m2のトリコット(2) を準備した。
【0042】
上記のメルトブローン法不織布(1) に、ポリエステル加工糸のトリコット(2) を、ホットメルト接着剤、水系接着剤または溶剤系接着剤を用いて通気接着することにより、(2)/(1) の層構成((2)/(1)/(2) でもよい)を有する主基材を得た。
【0043】
(アッパー材(3a)、ライニング材(3b)への取り付け)
図1〜2のように、上記で得た主基材を、アッパー材(3a)およびライニング(3b)に取り付けた。取り付けは、粉粒状のホットメルト型接着剤の散布と、それに続く熱圧着とにより行った。図1〜2中、(4) はカウンター(月型芯)、(5) はタブラー(補強芯)、(6) はタング(舌革)である。
【0044】
これにより、図1のX−X断面における各層の配置関係が、図2のように、「アッパー材(3a)/タブラー(5) /点接着層/主基材(つまり、トリコット(2) /メルトブローン法不織布(1) )/点接着層/ライニング材(3b)」である材料が得られた。
【0045】
(通気度、耐水圧の測定)
上記のエンボス加工、平滑面を有する熱ロールによる熱プレス、および撥水加工を施したメルトブローン法不織布(1) の通気度は15cc/cm2/secであり、それにトリコット(2) をラミネートした(2)/(1) の層構成の主基材の通気度は7cc/cm2/secであった。
【0046】
また、このエンボス加工、平滑面を有する熱ロールによる熱プレス、および撥水加工を施したメルトブローン法不織布(1) の耐水圧は800mmH2O であり、それにトリコット(2) をラミネートした(2)/(1) の層構成の主基材の耐水圧も800mmH2O であった。
【0047】
ここで、通気度は、フラジール形試験機を用いてJIS L 1096に従って測定した。耐水圧は、低耐水圧試験機を用いてJIS L 1092A に従って測定した。
【0048】
(防漏性試験)
上記の主基材を10cm×10cmの大きさにカットした試料の上に、水200mlを含ませたガーゼを載せ、ガーゼの上にガラス板を置いて5kgの荷重を加え、10時間まで放置し、漏水の有無を判定した。その結果、試料に漏水は認められず、防漏性試験で合格であった。
【0049】
(快適性(ムレ感)試験)
温度20℃、湿度60%RHの恒温恒湿室内において、上下の肌着(綿メリヤス)を着用すると共に、その上から、上記の主基材で作製した衣服、または市販の透湿防水性材料で作製した衣服を着用して、エンドレスベルト式の室内ランニング装置上で4km/hr の軽い足踏み運動を60分間行ってから、静止し、その間における衣服内の湿度と温度を測定した。結果を図4の(イ)、(ロ)に示す。図4中、破線は市販の透湿防水性材料を着用した場合、実線は上記の主基材からなる本発明の内装部材を着用した場合である。(この試験を衣服で行ったのは、上記の主基材を靴の適用したときには個人差が大きく、また同じ人が再度試験を行ってもデータがばらつくため、大きな面積の衣服の方が定量的データが得やすかったからである。)
【0050】
図4から、上記の主基材で作製した衣服を着用したときは、市販の透湿防水性材料で作製した衣服を着用した場合に比し、衣服内の温度の上昇および湿度の上昇が明らかに低いことがわかる。(この試験を衣服で行ったのは、上記快適性の試験と同様の理由による。)
【0051】
(発汗量試験)
温度20℃、湿度60%RHの恒温恒湿室内において、上下の肌着(綿メリヤス)を着用すると共に、その上から、上記の主基材で作製した衣服、または市販の透湿防水性材料で作製した衣服を着用して、エンドレスベルト式の室内ランニング装置上で10km/hr の激しい足踏み運動を20分間行ってから、発汗量を測定した(衣服の重量増を測定)。結果を図5に示す。
【0052】
図5から、上記の主基材で作製した衣服を着用したときは、市販の透湿防水性材料で作製した衣服を着用した場合に比し、激しい運動をしたときの発汗量が約1/3と少ないことがわかる。
【0053】
実施例2
図6は、本発明の靴用防水内装部材をアッパー材(3a)およびライニング材(3b)に取り付けた材料の他の一例を示した説明図であり、(イ)は平面図、(ロ)は摸式的な断面図である。
【0054】
この実施例では、本発明の靴用内装部材をメッシュ材(シングルメッシュやダブルメッシュ)(7) に貼り合わせて使用すると共に、アッパー材(3a)の一部に窓を開けるようにしてある。図6の(ロ)には図示していないが、トリコット(2) とライニング材(3b)との間にポリウレタンフォームなどのフォーム材を介在させることもできる。
【0055】
【発明の効果】
本発明の靴用防水内装部材は、特定の材質の極細の繊維からなり、エンボス加工および撥水加工され、かつ特定の目付量、通気度および耐水圧を有するメルトブローン法不織布(1) を主基材とするか、その不織布(1) の少なくとも片面をトリコット(2) で補強した材料を主基材とし、その主基材がアッパー材(3a)または/およびライニング材(3b)に積層されまたは積層可能にされているものである。
【0056】
そのため、上記構造を有する本発明の靴用防水内装部材を用いれば、足の蒸れを防ぐ通気性を有しているため快適に着用することができ、しかも日常の靴の着用において何ら支障のない防水性を確保することができ、たとえばレインシューズのような日常防水靴としても用いることができる。そのほか、強度、耐摩耗性、クッション性、シワ防止性、型崩れ防止性、乾燥性、履き心地など、靴用内装部材に求められる基本的要件を備えている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の靴用防水内装部材をアッパー材(3a)およびライニング材(3b)に取り付けた材料の一例を示した説明図であり、(イ)は平面図、(ロ)は底面図である。
【図2】 図1の材料のX−X断面における各層の配置関係を摸式的に示した説明図である。
【図3】 図1の靴用防水内装部材で使われているエンボス加工されたメルトブローン法不織布(1) のエンボス状態の一例を示した部分平面図である。
【図4】 快適性(蒸れ感)試験における衣服内の温度および湿度の測定結果を示したグラフである。
【図5】 発汗量試験における発汗量の測定結果を示したグラフである。
【図6】 本発明の靴用防水内装部材をアッパー材(3a)およびライニング材(3b)に取り付けた材料の他の一例を示した説明図であり、(イ)は平面図、(ロ)は摸式的な断面図である。
【図7】 本発明の靴用防水内装部材、透湿防水性素材を用いた従来の靴用内装部材、撥水性布を用いた従来の靴用内装部材の3者の通気度と耐水圧との関係を対比したグラフである。
【符号の説明】
(1) …メルトブローン法不織布、
(2) …トリコット、
(3a)…アッパー材、
(3b)…ライニング材、
(4) …カウンター、
(5) …タブラー、
(6) …タング、
(7) …メッシュ材
Claims (4)
- (A)繊維径10μm 以下のポリエステル繊維から作製され、目付量が50〜250g/m2で、かつ、エンボス加工および撥水加工されたメルトブローン法不織布(1) を主基材とするか、そのメルトブローン法不織布(1) の少なくとも片面をトリコット(2) で補強した材料を主基材とすること、および、
(B)前記のエンボス加工および撥水加工されたメルトブローン法不織布(1) のJIS L 1096による通気度が1〜25cc/cm2/secの範囲内にあり、かつJIS L 1092A による耐水圧が300〜2000mmH2O の範囲内にあること
を特徴とする靴用防水内装部材。 - 上記の主基材が、アッパー材(3a)または/およびライニング材(3b)に積層されまたは積層可能にされていることを特徴とする請求項1記載の靴用防水内装部材。
- 繊維径10μm 以下のポリエステル繊維から作製され、目付量が50〜250g/m2であるメルトブローン法不織布(1) に対して、エンボス加工と共に任意の段階において撥水加工を施すこと、および、
前記のエンボス加工と同時にまたはその前または後にあるいは前記の撥水加工の前または後に平滑面による熱プレスを行って、そのエンボス加工および撥水加工されたメルトブローン法不織布(1) のJIS L 1096による通気度を1〜25cc/cm2/secに、JIS L 1092A による耐水圧を300〜2000mmH2O に設定すること
を特徴とする靴用防水内装部材の製造法。 - メルトブローン法不織布(1) の少なくとも片面を、任意の段階でトリコット(2) で補強することを特徴とする請求項3記載の製造法。
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