JP3978983B2 - 中空糸分離膜エレメントおよび中空糸分離膜モジュール - Google Patents
中空糸分離膜エレメントおよび中空糸分離膜モジュール Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスや液体を分離したり精製するために使用する中空糸分離膜エレメントおよび中空糸分離膜モジュールに関する。特に、管板の表面近傍で中空糸が容易に破損や破断しないように改良して、製造、運搬、及び、使用時での中空糸の破損や破断が抑制された耐久性が良好な中空糸エレメントおよび中空糸分離膜モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
中空糸分離膜モジュールは、多くの場合、選択透過性を有し膜厚が薄く径が小さい中空糸を数百本〜数十万本集束した中空糸束と、前記中空糸束の少なくとも一方の端部おいて中空糸が開口状態を保持するように前記中空糸束を埋め込んで固着している樹脂製の管板とを含んで構成される中空糸分離膜エレメントの1つ以上を、少なくとも混合物供給口、透過物排出口、及び、未透過物排出口を備える容器内に、中空糸の内部へ通じる空間と中空糸の外部へ通じる空間が隔絶するように装着して構成されている。
【0003】
前記中空糸分離膜エレメント及び中空糸分離膜モジュールにおいて、管板は、中空糸束を固着し形態を保持する役割と中空糸の内部へ通じる空間と中空糸の外部へ通じる空間を隔絶する役割とを持っている。このため、管板は中空糸の間の狭い空間にむらなく含浸することができ、固着後は硬くなって高圧や高温の条件下でも容易に変形しない機械的強度を有する樹脂、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂やポリアミドなどの熱可塑性樹脂などを用いて形成されている。
【0004】
中空糸は膜厚が薄く径が小さいものであるから、管板を構成する樹脂に比べれば容易に破損や破断し易いものである。すなわち、管板は硬い樹脂の中に比較的容易に破損や破断し易い中空糸を埋め込んだ構造になっている。一方、中空糸の大部分は管板に支えられてモジュール内の空間に保持されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
中空糸分離膜エレメント及び中空糸分離膜モジュールが製造される時や運搬される時には中空糸に変形応力が加わる。更に、前記中空糸分離膜エレメント及び中空糸分離膜モジュールが使用される時には、供給され中空糸の内側あるいは外側を流れて排出される流体の粘度、流量、圧力、温度、及び、それらの変動によって、中空糸に連続的あるいは断続的に変形応力が加わる。中空糸に変形応力が加えられたとき、中空糸の管板(硬い樹脂)に埋め込まれた部分は全く変形せず、中空糸の埋め込まれていない部分は容易に変形するために、それらの境界となる管板の表面近傍で中空糸に集中的な応力が加わり破損や破壊されやすい。さらに、管板となる液状樹脂を中空糸間の隙間に含浸させて管板(硬い樹脂)を形成するときに、液状樹脂が表面張力によって中空糸の表面にせりあがって薄い膜を形成しており、中空糸が応力によって変形するとき、この薄い膜が剥離して鋭いエッジを生じ、このエッジによって容易に中空糸は破損や破壊される。これらのために、中空糸分離膜エレメント及び中空糸分離膜モジュールにおいては、管板の表面近傍において中空糸が破損や破断を生じやすいという問題があった。
【0006】
特に、中空糸分離膜が脆いものである場合には、管板の表面近傍で極めて容易に破損や破断が生じるために中空糸分離膜エレメントや中空糸分離膜モジュールを歩留まりよく製造することが難しくなり、更に、中空糸分離膜エレメント及び中空糸分離膜モジュールの使用時には、管板の表面近傍における中空糸の破損や破断によって、流量や圧力などの使用条件が限定されたり、破損や破断によるリークの発生によって分離性能が低下して耐久性が悪くなるなどの問題があった。
【0007】
本発明は、中空糸分離膜エレメント及び中空糸分離膜モジュールにおいて中空糸が管板の表面近傍で破損や破断が発生し易いという問題を解決し、製造及び運搬時に中空糸が容易に破損や破断することがなく、更に、使用時において、圧力などの使用条件が厳しいときでも使用することができ、かつ、長期間使用しても中空糸の破損や破断によるリークによって分離性能が低下することが少ない耐久性を著しく改善された中空糸分離膜エレメント及び中空糸分離膜モジュールを提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の中空糸分離膜からなる中空糸束と、前記中空糸束の少なくとも一方の端部おいて前記中空糸束を埋め込んで固着している樹脂製の管板とを含んで構成されており、前記管板が少なくとも硬い樹脂層と柔軟性のある樹脂層からなる多層構造になっており、前記管板の中空糸束が伸び出ている側の表面部分が柔軟性のある樹脂層であることを特徴とする中空糸分離膜エレメントに関する。また、前記柔軟性のある樹脂層のショアー硬度Aが前記硬い樹脂層のショアー硬度Aの5〜95%の値であるか、あるいは、前記柔軟性のある樹脂層の引張り破断時の伸びが前記硬い樹脂層の2〜5000倍であること、前記柔軟性のある樹脂層がショアー硬度Aが10〜80であり、かつ、引張り破断時の伸びが100〜500%であること、前記柔軟性のある樹脂層の厚さが1〜20mmであること、前記中空糸分離膜が引張り破断時の伸びが0.1〜10%の中空糸分離膜であることに関する。更に、前記中空糸分離膜エレメントの1つあるいは2つ以上を、少なくとも混合物導入口、透過物排出口、及び、未透過物排出口とを備える容器内に収納して構成されることを特徴とする中空糸分離膜モジュールに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態に付いて詳述する。
本発明の中空糸分離膜エレメントについて、本発明の中空糸分離膜エレメントの実施形態の一つの概略図である図1によって説明する。中空糸1の複数本が集束されて中空糸束2を形成している。前記中空糸束2の両端部に管板5、5’が形成されている。前記管板5、5’において中空糸は管板を貫通した端部において開口状態が保持されている。これらの管板5、5’は硬い樹脂層4、4’と柔軟性のある樹脂層3、3’の2層の多層構造になっている。また、柔軟性のある樹脂層3、3’は管板5,5’の中空糸が伸び出ている側の表面層を形成している。
【0010】
本発明の中空糸分離膜エレメントの管板は、少なくとも硬い樹脂層と中空糸束が伸び出ている側の表面部分に形成された柔軟性のある樹脂層との2層以上からなる多層構造になっている。
【0011】
管板を構成する前記硬い樹脂層は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化製樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂、それらの混合物、あるいは、それらに無機充填材を含む組成物などで構成される。これらの樹脂または組成物は、例えば必要に応じて加熱したりエマルジョン化されたり遠心荷重を加えられて、中空糸束の中空糸間の隙間にむらなく含浸させたのち硬化や冷却や溶媒除去をおこなって中空糸を埋め込んで固着する。固着後の硬い樹脂層は、製造や運搬時および使用時において変形応力を受けても容易に変形しないだけの硬くて機械的強度を持つものであり、中空糸分離膜モジュールを構成したときに、中空糸分離膜エレメントの形態を保持し、かつ、中空糸の内側の空間と中空糸の外側の空間との隔壁としての役割を果たすものである。硬い樹脂層はショア硬度Aが85以上特に85〜130であり、引張り破断時の伸びが0.1〜50%のものである。硬い樹脂層の厚さは、特に限定されるものではなくまた中空糸やエレメントやモジュールの大きさにもよるが、通常は数mmから数十cmの厚さである。
【0012】
本発明においては、管板は中空糸束が伸び出ている側の表面部分が柔軟性のある樹脂層によって形成されている。前記管板では、中空糸が変形応力を加えられて変形するとき管板表面の柔軟性のある樹脂層が中空糸の変形に追従して変形する。すなわち、変形応力は前記柔軟性のある樹脂層へも伝播して分散するので、管板表面近傍において中空糸への集中的な応力の発生を抑制することができる。この結果、中空糸分離膜エレメント及び中空糸分離膜モジュールにおいて中空糸が管板の表面近傍で破断や破損し易いという問題を解決し、製造時や運搬時に中空糸が容易に破損や破断することがなく、更に、使用時において、圧力などの使用条件が厳しいときでも使用することができ、長期間使用しても中空糸の破損や破断によるリークによって分離性能が低下することが少なく耐久性が著しく改善された中空糸分離膜エレメント及び中空糸分離膜モジュールを提供することが可能になる。
【0013】
本発明において、管板を構成する前記柔軟性のある樹脂層は、特に限定されないが、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂、あるいは、それらの混合物などによって好適に形成される。また、これらは硬化性であってもよく、非発泡状態あるいは発泡状態であっても良い。前記の柔軟性のある樹脂層は、ショアー硬度Aが硬い樹脂層のショアー硬度Aの10〜80%の値であることが好ましく、また、引張り破断時の伸びが硬い樹脂層の2〜5000倍の値であることが望ましい。また前記柔軟性のある樹脂層のショアー硬度Aが10〜80であり、引張り破断時伸度が100〜500%であることが好ましく、特に、ショアー硬度Aが20〜60であり、引張り破断時伸度が200〜300%であることが好ましい。硬度や引張り破断時伸度がこれらの範囲外になると、中空糸に追従して変形し応力を分散させて結果として管板表面近傍での中空糸を補強する効果が少なくなる。また、前記柔軟性のある樹脂層の厚さは1〜20mmであることが好ましく、特に、2〜10mm、更に、5〜8mmであることが好ましい。厚さが1mm未満では補強効果が発揮でない。20mmを越える場合には有効な分離膜面積が減少し、使用する樹脂量も多くなり経済的でない。
【0014】
本発明で用いられる中空糸分離膜は、分離対象物や分離条件に適合した材料で形成されたものを好適に用いることができる。例えば、ポリオレフィン、ポリブタジエン、シリコーン樹脂、セルロース系高分子、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィッド、ポリアリレート、ポリカーボネートなどのエラストマー材料やガラス状ポリマー材料でもよく、さらに、ゼオライトなどのセラミック材料、炭素材料、ポリマーを部分炭素化した材料、カルド型ポリイミドなどの剛直なポリマー材料、および、前記材料を含む複合材料でもよい。また、本発明の中空糸分離膜は、均質性のものでも、複合膜や非対称膜などの不均質性のものでもよく、多孔性のものでも非多孔性のものでもよい。また、中空糸分離膜の膜厚は10〜500μmで外径が50〜2000μmのものを好適に挙げることができる。
【0015】
本発明は、中空糸分離膜の伸びが小さくて脆い場合に特に有用である。引張り破断時の伸びが0.1〜10%、特に0.1〜5%、更に0.1〜2.5%の中空糸分離膜は、極めて脆いものであり、製造時、運搬時、及び、使用時のいずれの場合にも、管板の表面近傍において中空糸が容易に破損や破断を生じる。本発明は前記の中空糸分離膜を用いても管板の表面近傍における中空糸の破損や破断を抑制することができ、耐久性の改良された中空糸分離膜エレメント及びモジュールを歩留まりよく製造することが可能である。本発明が特に有用に適用できる伸びが小さくて脆い中空糸分離膜としては、炭素膜、ポリマーを部分炭素化した部分炭化膜、カルド型ポリイミドなどの剛直なポリマー材料からなる膜を挙げることができる。
【0016】
本発明の中空糸分離膜エレメントの形態は特に限定されるものではない。実施形態の一つは図1に概略図が示されたとおりであるが、中空糸束は中空糸が略平行に集束されないで交叉配列で集束されてもよく、中空糸束の略中心部に芯管を備えていてもよく、中空糸束の外周部にフィルムが巻く付けられていても構わない。また、中空糸束が角柱状や平板状に集束され管板が直方体の形状であってもよい。また、中空糸束は棒状でなく、U字状やスパイラル状に集束されたものでも構わない。また、管板は中空糸束の両端にあっても一方の端部だけでもよい。さらに、中空糸の一方の端部は閉塞されたものでもよく、その場合には、中空糸束の端部で個々の中空糸の内孔が閉塞されたものでも、管板に埋め込まれて閉塞されたものでもよい。また保護容器(内套)に収納されていてもよい。いずれの場合も、本発明の中空糸分離膜エレメントの管板5、5’は、少なくとも硬い樹脂層4、4’と柔軟性のある樹脂層3、3’からなる多層構造になっており、前記管板の中空糸束が伸び出ている側の表面部分が柔軟性のある樹脂層3、3’になっているものである。
【0017】
本発明の中空糸分離膜モジュールは、前記の中空糸分離膜エレメントの1つあるいは2つ以上を、少なくとも混合物導入口、透過物排出口、未透過物排出口を備えるよう容器内に収納して構成されるものである。モジュールの形態は特に限定されるものではない。中空フィードタイプでもシェルフィードタイプでもよく、キャリアーガスを用いるタイプでもキャリアーガスを用いないタイプでもよい。キャリアーガスを用いるタイプでは、容器にキャリアーガス導入口が配置されたり、エレメントにキャリアーガス導入管が配置される。キャリアーガス導入管は中空糸束の略中心部に配置される芯管であってもよい。
【0018】
中空糸分離膜モジュールは、収納される中空糸分離膜エレメントの形状や混合物供給口、透過物排出口、未透過物排出口などの配置によって種々の形態を取り得る。例えば、円筒状であっても箱型のものでもよい。いずれの場合も、モジュール内では、中空糸分離膜の内外に通じるそれぞれの空間はお互いに隔絶されており、供給された流体はモジュール混合物供給口から、中空糸の内側か外側のどちらか一方の側へ導入され、膜の表面に接しながら流れてモジュール外へ未透過物排出口から排出され、その間膜を選択的に透過した成分は膜の反対側(透過側)の空間に通じている透過物排出口からモジュール外へ排出されるように構成されている。また、容器や芯管などは、所定の強度、気密性および耐圧性を備えていれば特に限定はなく、金属、プラスチック、繊維強化プラスチック、または、セラミックス等により形成できる。また、必要に応じて、接着剤やボルトナットやパッキン類等が用いられて構成される。
【0019】
本発明の中空糸分離膜モジュールの形態例の概略の縦断面図を図2、図3に示して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図2に示した中空糸分離膜モジュールは、中空糸束2及び硬い樹脂層4、4’と柔軟性のある樹脂層3、3’からなる管板5、5’から構成されている中空糸エレメントが容器6内に収納されており、混合物導入口7から混合物が供給され中空糸の外側面に接して流れ未透過物排出口8から回収され、中空糸内に透過した透過流体は中空糸内を流れ管板5、5’の外側面の中空糸の開口から出て更に透過物排出口9を通ってモジュール外へ回収されるように構成されている。
【0020】
図3に示した中空糸分離膜モジュールは、中空糸束2、硬い樹脂層4、4’と柔軟性のある樹脂層3、3’からなる管板5、5’、芯管10、及び、フィルム12によって構成された中空糸エレメントが容器6内に収納されており、混合物導入口7から供給された混合物は管板5の外側面で開口している中空糸の開口から中空糸の内側へ流れるようになっており、中空糸の内側を流れて他方の管板5’の外側面の中空糸の開口から出て更に未透過物排出口8を通ってモジュール外へ回収されるように構成され、更に、中空糸束2の略中央部に中空糸と略平行方向に芯管11が配置されており、芯管11の混合物供給内側の端部は管板5内に埋め込まれて閉塞されており、芯管11の他方の端部は管板5’およびモジュールの容器6を貫通してキャリアーガスの導入口10を形成し、キャリアーガス導入口10から供給されたキャリアーガスは芯管11内を流れ管板間の中空糸束2が配置される空間へ芯管に配置された連通孔13を通って供給され、中空糸内を流れる混合物の流れと向流となるように流れて、中空糸膜を透過する透過物と共に透過物排出口9を通ってモジュール外へ回収されるように構成され、更に、中空糸束2の外周部にフィルム12が巻き付けられている。
【0021】
図2、図3において、中空糸束2を構成している個々の中空糸は表示していない。また、図中の矢印は、供給する混合物、未透過物、透過物及びキャリアーガスの流れの方向を示すものである。
【0022】
次に、本発明の中空糸エレメント及び中空糸分離膜モジュールの製造方法について説明する。本発明の中空糸エレメント及び中空糸分離膜モジュールは、中空糸束の端部に多層構造の管板を形成する工程を除けば特に限定されるものはなく通常の方法によってに製造することができる。
【0023】
中空糸束の端部に多層構造の管板を形成する工程は、特に限定するものではないが、中空糸に第1の液状樹脂を含浸して加熱・硬化させて第1の層を形成し、続いて硬化した第1の層の表面に第2の液状樹脂を含浸させて加熱・硬化させて第2の層を形成し、以下同様の方法によって層を形成することによって多層構造の管板を好適に形成することができる。具体的には、例えば次のような方法を挙げることが出来る。すなわち、端部を接着剤で封止した所定の長さ及び本数の中空糸を円柱状の中空糸束に集束する。前記中空糸束を両端部は開口し側壁に所定の導入口(あるいは排出口)を備える円筒管内の所定位置に設置し、前記中空糸束と円筒管の一方の端部を、注形型を下側にして垂直方向に上から組み込む。硬い樹脂になり得る未硬化樹脂を注形型の下部より型内へ注入する。未硬化樹脂は、中空糸束の一方の端部において、中空糸束の周辺部及び中空糸間の隙間に含浸する。これを加熱して樹脂を硬化させて、中空糸束の端部と円筒管が一体構造になる管板の硬い樹脂層を形成する。この段階で注形型を外しても構わない。次に、円筒管の側壁の導入口(あるいは排出口)からパイプ状の注入管を通して、硬い樹脂層の表面に柔軟性のある樹脂層になり得る未硬化樹脂の所定量を注入する。柔軟性のある樹脂層になり得る未硬化樹脂は、硬い樹脂層の中空糸束が伸び出ている側の表面上を広がり中空糸間の隙間を通って含浸する。これを加熱して硬化させ、硬い樹脂層の上に柔軟性のある樹脂層を形成させて多層構造の管板を製造することができる。中空糸束のもう一方の端部も同様の方法で多層構造の管板を製造することができる。前記のようにして管板を製造したあとで、管板の端面側の表面などを切削加工して中空糸を端面で開口状態にしたり、寸法の調整をおこなう。この方法によれば、側壁に導入口(あるいは排出口)を備える円筒管(保護容器、内套)と、前記円筒管内に収納された中空糸束と、前記円筒管と前記中空糸束が両端部で硬い樹脂層と柔軟性のある樹脂層の2層からなる管板から構成され、前記円筒管と前記中空糸束は管板によって一体構造になっており、前記管板の中空糸束が伸び出ている側の表面部分に柔軟性のある樹脂層が形成されている中空糸分離膜エレメントを製造できる。これを所定の容器(外套)内に収納して装着すれば中空糸分離膜モジュールを製造することができる。
【0024】
前記製造方法において、硬い樹脂になり得る未硬化樹脂および柔軟性のある樹脂層になり得る未硬化樹脂は、中空糸間の隙間に含浸させるものであるから、容易に含浸できる程度に低粘度であることが好ましい。特に、柔軟性のある樹脂層になり得る未硬化樹脂は、30℃における回転粘度が0.1〜10ポイズであることが好ましい。
【0025】
尚、本発明において、ショアー硬度AはA硬度計によりASTM D676−47Tの方法によって測定し、引張り強度及び引張り破断時の伸びは、管板の場合は材料を短冊上のフィルムに成形(必要に応じて硬化)したあとで、また、中空糸の場合はそのままで、テンシロン引張試験機(オリエンテック社製)を用いて試料の有効長50mm、引張り速度10mm/min、温度23℃で測定した。中空糸の引張り強度は中空糸1本当たりの引張り破断時の応力(単位はgf/本)で示しており、引張り破断時の伸びは、元の長さL0、破断時の長さLとしたとき、(L−L0)/L0×100(単位は%)で示している。未硬化樹脂の粘度はB型回転粘度計(東洋精機社製)により温度30℃の温度で測定した。
【0026】
【実施例】
次に、本発明の中空糸分離膜エレメントおよび中空糸分離膜モジュールについて具体的に説明する。
【0027】
(実施例)
非対称ポリイミド中空糸を加熱処理して得られた炭素含有率が85.0重量%の部分炭素化膜であって、外径が450μm内径が190μmで引張り強度が98gf/本、引張り破断時の伸びが1.6%の中空糸を長さ300mmに切断し、その200本を束ねて中空糸束とした。前記中空糸束の両端部に、硬い樹脂層としてエポキシ樹脂、柔軟性のある樹脂層としてシリコンゴムを用いて2層構造の管板を形成し、中空糸分離膜エレメントとした。硬い樹脂層のショアー硬度Aは125、引張り破断時の伸びは4%、厚さは20mmであり、柔軟性のある樹脂層のショアー硬度Aは40、引張り破断時の伸びは180%、厚さは7mmであった。前記中空糸分離膜エレメントを所定の開口部を有する容器内に組み込んで中空糸分離膜モジュールを製造した。
前記中空糸分離膜モジュールの中空糸内へ水素と炭酸ガスとの混合ガス(体積混合比50/50)を温度50℃、供給圧力10kgf/cm2(G)で供給し、膜を透過して分離回収される水素ガスの純度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。前記中空糸分離膜モジュールを10個測定したが、いずれも、純度98体積%以上の水素が分離回収できた。
また、前記中空糸分離膜の中空糸内に対して、窒素ガスを用いて20kgf/cm2(G)への加圧と、常圧へのリークとを各20秒間交互に1000サイクル繰り返すガス衝撃テストをおこなった。前記中空糸分離膜モジュール5個を用いて前記テストを実施し、そのあとで再度前記混合ガスによる水素の分離回収テストをおこなったところ、いずれも、モジュールにガスのリークはなく、分離回収される水素ガスの純度はガス衝撃テストをおこなう前の値の1%以内の範囲であった。
【0028】
(比較例)
実施例と同様の中空糸束を用いて、管板をエポキシ樹脂だけの1層としたことを除けば実施例と同様にして、中空糸分離膜モジュールを製造した。
この中空糸分離膜モジュールを用いて、実施例と同様の混合ガスによる水素の分離回収テストとガス衝撃テストをおこなった。テストをおこなった10個の中空糸分離膜モジュールのうち4個はガス衝撃テストをおこなう前においてガスのリークが見られた。更に、当初ガスのリークがなかった6個について実施例と同様のガス衝撃テストをおこなったあとで再度混合ガスによる水素の分離回収テストをおこなったところ、いずれも、大きなガスのリークを生じた。また、分離回収された水素の純度はいずれも90体積%以下であった。これらのモジュールを解体して中空糸の状態を観察したところ、いずれも数本から数十本の中空糸の管板の表面近傍において損傷あり、中空糸の表面に表面張力によって薄くコートされた状態のエポキシ樹脂が中空糸表面から剥離して中空糸表面を損傷させたものが観察された。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したようなものであるから、本発明は、次のような効果を奏する中空糸分離膜エレメントおよび中空糸分離膜モジュールである。すなわち、本発明の中空糸分離膜エレメントおよび中空糸分離膜モジュールは、管板の中空糸束が伸び出ている側の表面部分に柔軟性のある樹脂層を設けて、中空糸が変形するときに管板表面近傍で発生する集中応力を緩和して中空糸の破損や破断を防止することができる。このため、本発明の中空糸分離膜エレメントおよび中空糸分離膜モジュールは、製造時、運搬時において中空糸が容易に破損や破断することがなく、更に、使用時において、圧力などの使用条件が厳しいときでも使用することができ、また、長期間使用しても中空糸の破損や破断によるリークによって分離性能が低下することが少なく耐久性が著しく改善されたものである。特に、中空糸分離膜が脆くて破損や破断がし易い場合には、歩留まりよく中空糸分離膜エレメントおよび中空糸分離膜モジュールの製造が可能になり、かつ、極めて耐久性を改良することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中空糸分離膜エレメントの実施形態の一つを示す概略図である。
【図2】本発明の中空糸分離膜モジュールの実施形態の一つの概略を示す縦断面図である。
【図3】本発明の中空糸分離膜モジュールの実施形態の一つの概略を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1:中空糸分離膜
2:中空糸束
3、3’:管板を形成する柔軟性のある樹脂層
4、4’:管板を形成する硬い樹脂層
5、5’:管板
6:容器
7:混合物導入口
8:未透過物排出口
9:透過物排出口
10:キャリアーガス導入口
11:芯管
12:フィルム
13:連通孔
Claims (5)
- 複数の引張り破断時の伸びが0.1〜10%の中空糸分離膜からなる中空糸束と、前記中空糸束の少なくとも一方の端部おいて前記中空糸束を埋め込んで固着している樹脂製の管板とを含んで構成されており、前記管板が少なくとも硬い樹脂層と柔軟性のある樹脂層からなる多層構造になっており、前記管板の中空糸束が伸び出ている側の表面部分がショアー硬度Aが前記硬い樹脂層のショアー硬度Aの5〜95%の値であるか、あるいは、前記柔軟性のある樹脂層の引張り破断時の伸びが前記硬い樹脂層の2〜5000倍であり、さらにショアー硬度Aが10〜80であり、かつ、引張り破断時の伸びが100〜500%である柔軟性のある樹脂層であることを特徴とする中空糸分離膜エレメントの1つあるいは2つ以上を、少なくとも混合物導入口、透過物排出口、及び、未透過物排出口とを備える容器内に収納して構成され、中空糸分離膜の中空糸内に対して窒素ガスを用いて20kgf/cm2(G)への加圧と、常圧へのリークとを各20秒間交互に1000サイクル繰り返すガス衝撃テスト後でもガスのリークが発生しないことを特徴とする中空糸ガス分離膜モジュール。
- 前記柔軟性のある樹脂層の厚さが、1〜20mmであることを特徴とする前記請求項1に記載の中空糸ガス分離膜用モジュール。
- 前記中空糸分離膜が非対称ポリイミド中空糸を加熱処理して得られた部分炭素化膜であることを特徴とする前記請求項1〜2のいずれかに記載の中空糸ガス分離膜用モジュール。
- 前記請求項1〜3に記載の中空糸ガス分離膜モジュールを用いることを特徴とするガス分離方法。
- キャリアーガスを用いることを特徴とする前記請求項4に記載のガス分離方法。
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