JP3975071B2 - 磁気記録型熱溶融転写被記録材 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録型熱溶融転写被記録材に係わるものである。さらに詳しく述べるならば、本発明は、片面に水系塗工剤により形成された磁気記録層を有し、反対面の受理層は転写用リボンから転写された樹脂溶融インク又はワックス溶融インクに対し、優れた受理性を有し、さらに捺印スタンプなどにより付与される各種インクに対し、優れた迅速乾燥性を示し、さらに耐ブロッキング性に優れた磁気記録型熱溶融転写被記録材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録体は、磁気特性により情報を記録することにより利用されている。磁気記録の他に可視情報として表示することが要求されることも多く、支持体の磁気記録層とは反対面に用途毎に対応する各種所要事項の表示がなされている。例えば、テレフォンカードのように同一の内容を多数枚作成し、かつ美麗な絵柄を表示するものに対しては、一般の印刷方法による記録が行われているが、交通機関の乗車券においては、各個に表示内容が異なり、又、記録画像に対し、高度の堅牢性や信頼性が要求されるものに対しては、インクリボンに保持されているインクを加熱溶融させ、これを、被記録材の受理層に転写する熱溶融転写方式が用いられている。また、上質紙表面に直接印字可能なワックス溶融インクリボンによる券発行装置においては、この装置のサーマルヘッドによってインクを溶融し、上質紙の内部に溶融インクを浸透させて画像の形成が行われる。受理シートとして上質紙を使用したものは、その上に受理層を設けなくともワックス溶融インクの吸収性が良く、また、捺印スタンプインクの迅速乾燥性に優れているという利点を有している。しかし、ワックス溶融型インクリボンを、従来の樹脂インク受理層を設けた被記録材に適用すると、樹脂インク受理層はワックス溶融インクを吸収することができないという問題を生ずる。また樹脂型インクリボンを、樹脂インク受理層を設けていない上質紙表面に適用すると、比較的平滑度の低い上質紙表面は、樹脂型インクリボンとの接触が不均一になり、鮮明な画像を受理することが出来ないという問題を生ずる。
【0003】
従来、熱溶融転写方式では、カルナバワックス(融点80〜86℃)等のように融点が低く、熱により容易に溶融する天然ワックスを主成分として含有するインクが用いられ、受理層としては上質紙表面が用いられていた。しかしカルナバワックスのような天然ワックスは、柔らかく融点が低いため、記録画像を爪で引っ掻くと容易に損傷し、これを他の部品等と摩擦すると損傷したり、或いは加熱により汚染され易いなどの問題がある。このため、カルナバワックスの代わりに、耐摩耗性に強く、かつ融点の高い(約100℃程度以上)樹脂、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、又はアクリル等の樹脂を主成分とするインクが用いられるようになって来た。また転写記録スピードの向上により、発券に要する時間が短くなり、かつ画像を構成するドット単位面積当たりの画像表示量も増加してきている。
【0004】
そのため、従来の上質紙表面を受理層とする被記録材では、高融点樹脂インクを再現性良く転写し、鮮明な転写画像を記録することが難しく、印字部に著しいかすれを生ずるなどの事故が発生するようになった。そこで、水溶性高分子、例えば澱粉又はポリビニルアルコールなどの水溶液をサイズプレスにより塗工して受理層を形成し、クレー、炭酸カルシウムを主成分とする水系塗工液を塗工して塗布層を形成し、それらの層をキャレンダー処理し、それによって、一般の上質紙よりも高い平滑度に仕上げられた(ベック平滑度が200秒以上:特公平5−19477、特公平5−78439)被記録材を用いることが試みられたが、良好な記録結果が得られなかった。そこで、水性系樹脂よりも著しく高い平滑性を有する塗工層の形成が可能な溶剤系樹脂により受理層を形成することが試みられた。
【0005】
しかし、溶剤系樹脂を受理層に用いた場合、それに各種インクにより捺印が施されたとき、例えば交通機関の改札において、乗車券に捺印が施されたとき、このインクに対する乾燥性が悪いため、捺印部分の捺印スタンプインクによる画像を指などで消去し、容易に改ざんし得るなどの欠点、および溶剤系樹脂により形成された受理層の表面が緻密なために、樹脂インクの浸透性が不良になり、かつ定着性が不良であるため、例えば爪で記録画像を削り落として改ざんすることが可能であるなどの問題点があった。また、溶剤系樹脂を用いて受理層を塗抹すると、溶剤の蒸発による環境汚染を生ずるなどの問題点があった。そこで比較的融点の高い樹脂インクの受理性および固着性に優れ、かつ捺印スタンプインクなどを迅速に乾燥させ得る受理層を有し、必要により裏面に磁気記録層を形成し得る熱転写被記録材の出現が強く要望されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、片面に水系塗工剤により形成された磁気記録層を有し、反対面のインク受理層が、樹脂溶融インク及びワックス溶融インクの両方に対する受理性および固着性に優れ、さらに捺印スタンプなどにより付与される各種インクに対し迅速乾燥性を示し、さらに耐ブロッキング性に優れた磁気記録型熱溶融転写被記録材に関するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、本発明の下記磁気記録型熱溶融転写被記録材によって解決することができる。
【0008】
本発明は、シート状支持体の片面に水系塗工剤により形成された磁気記録層を設け、その反対面に無機顔料および結着剤を含むインク受理層を設けた磁気記録型熱溶融転写被記録材において、該インク受理層は該結着剤がポリエステル系ウレタン樹脂、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂およびエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂で、該無機顔料が非晶質シリカであり、該ポリエステル系ウレタン樹脂がその分子構造中にスルホン基の極性基を持ち、かつ、その最低造膜温度が0℃以下、軟化温度が130〜140℃であり、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する該樹脂の最低造膜温度が100〜110℃であり、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する該樹脂の最低造膜温度が70〜90℃である磁気記録型熱溶融転写被記録材に関する。
【0009】
更に、該非晶質シリカの平均粒径が1.0〜4.0μm、そのJIS K5101.21による吸油量が200〜300ml/100gで、そのBET法による比表面積が200〜400m2/gである磁気記録型熱溶融転写被記録材に関する。
又、該インク受理層が非晶質シリカ100重量部に対して、結着剤を150〜300重量部含有する磁気記録型熱溶融転写被記録材に関する。
又、該インク受理層の結着剤がポリエステル系ウレタン樹脂100重量部に対し、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂を30〜100重量部およびエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂を5〜50重量部含有する磁気記録型熱溶融転写被記録材に関する。
【0010】
なお、インク受理層の乾燥温度は、結着剤中のエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する該樹脂の最低造膜温度と、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する該樹脂の最低造膜温度のうちより低い温度以下で乾燥させるのが好ましい。
【0011】
結着剤として用いるポリエステル系ウレタン樹脂とエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂およびエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂の合計量との比率は、ポリエステル系ウレタン樹脂の比率が多いほど、インク受理性に優れる傾向にある。しかし、磁気記録型熱溶融転写被記録材は、通常ロール紙として巻き上げられるため、高温環境においてロール紙の自重でインク受理層と磁気記録層がくっついたり、受理層自体の強度が不足し、受理層が剥がれて磁気記録層に付着する、いわゆるブロッキング現象を引き起こすことが多い。一方、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂とエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂の合計量を増やすと、(特にエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂の比率を増やすと)、ブロッキング現象は解消しやすくなるが、インク受理性の劣化を来たしドットの再現性が悪くなりやすい。このため、該インク受理層の結着剤中のポリエステル系ウレタン樹脂が100重量部に対して、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂が30〜100重量部、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂が5〜50重量部、特にポリエステル系ウレタン樹脂100重量部に対して、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂が60〜70重量部、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂が6〜10重量部が好ましい。
【0012】
本発明に用いる非晶質シリカは、インク受理層における樹脂溶融インク又はワックス溶融インクの転写インクのドット再現性を向上させ、かつ捺印スタンプインクの吸収性能を向上させる。なお、非晶質シリカの粒径が小さく、吸油量と比表面積が大きい方が、転写インクのドット再現性と捺印スタンプインクの吸収性に好ましいが、粒径が小さすぎるとインク受理層と磁気記録層の密着性がよくなり、ブロッキング現象を引き起こす傾向にある。更に粒径が小さすぎ、吸油量と比表面積が大きすぎると、受理層自体の強度が不足する傾向にあり、これによって被記録材への印字の際にインク受理層が剥離する恐れが出てくる。また粒径の大きいシリカを用いると耐ブロッキング性は向上するが、転写インクのドット再現性を悪化させる恐れがある。一方、吸油量や比表面積が小さすぎると、インク受理層の剥離は押さえられるが、受理層の捺印スタンプインクの吸収性が不十分なものとなりやすい。またこの非晶質シリカの配合量が過多になると、受理層の表面強度が低下し、印字の際インク受容層が剥離する恐れがある。このため、平均粒径1.0〜4.0μm、JIS K5101.21による吸油量が200〜300ml/100g、BET法による比表面積が200〜400m2/g、特に平均粒径1.5〜3.8μm、吸油量が260〜290ml/100g、比表面積が250〜320m2/g、である非晶質シリカを使用するのが好ましく、又、非晶質シリカ100重量部に対して、結着剤150〜300重量部、特に190〜210重量部が好ましい。
【0013】
このようにして得られたインク受理層用塗液による塗工層を設け乾燥させるが、一般的には生産性を考え乾燥温度をできるだけ高くして乾燥させるのが一般的である。しかしながら、乾燥温度を結着剤中のエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂や、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂の最低増膜温度のいずれか低い温度以上に上げると、インク受理層の表面強度は向上するが、転写インクのドット再現性が低下するため、乾燥温度は上記2種の樹脂の最低増膜温度のうちより低い温度以下とするのが好ましい。
【0014】
本発明における支持体としては、木材パルプを主原料とし、他にタルク、炭酸カルシウムなどの填料、合成樹脂、ロジン、アルキルケテンダーマー、澱粉などのサイズ剤等を添加した紙、合成樹脂、澱粉、ポリビニルアルコールなどの水性結着剤と、無機質及び/または有機質顔料とを主体とした塗料を塗工したコート層を有する紙、合成紙、合成樹脂シートが使用される。
【0015】
支持体に対して上記の受理層の反対側に形成する水系の磁性塗料による磁気記録層を形成する。この磁気記録層は、例えば、γ・Fe2O3,γ・Fe3O4とFe3O4との混晶,CrO2,コバルトをドーブしたγ・Fe2O3またはFe3O4,バリウムフェライト,さらには、Fe−CoやFe−Co−Ni等の合金等による磁性粉末粒子と、カゼイン,ポリビニルアルコール,エポキシ変性ポリビニルアルコール,メチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ポリアクリル酸,澱粉及びその誘導体,ウレタン樹脂,エポキシ樹脂等によるバインダー成分とを含有し、さらに必要に応じて、高級脂肪酸の金属塩やワックス類等の潤滑剤,帯電防止剤,分散剤,消泡剤等の添加剤を適宜混合した水系の磁性塗料を利用して形成される。
【0016】
磁気記録層は、前記磁性塗料による塗工層を、グラビアコーターやリバースコーター等にて形成した後、必要に応じて、塗工中の磁性粉末粒子の配向を行い、更に乾燥させることにより、厚さ10〜20μm程度にする。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下に示す部及び%はいずれも質量基準である。
実施例1
《バリウムフェライト分散液の調製》
バリウムフェライト 100部
(保持力:21.5KA/m、平均粒径0.8μm)
ポリアクリル酸ソーダ(40%水溶液) 4部
水 90部
以上の組成からなる物をサンドグラインダーで分散し、粒径6μmの分散液を得た。
《磁性塗料の調整》
バリウムフェライト分散液 194部
ウレタン樹脂(38%) 76部
カーボンブラック(35%分散液) 14部
水 50部
以上の液を混合撹拌して磁気塗布層形成液の磁性塗料を調整した。
坪量157g/m2の上質紙に、上記磁性塗料を80g/m2になるようにメイヤーバー塗布し、中心磁界が3×107テスラの配向機で配向後、105℃で乾燥し磁気記録層を得た。
《インク受理層液Aの調製》
(1)非晶質シリカ 90部
[平均粒子径1.6μm、吸油量270ml/100g
比表面積290m2/g((株)トクヤマ:ファインシールF−80)
(2)ポリエステル系ウレタン樹脂(50%溶液) 210部
[最低造膜温度<0℃、軟化温度135℃
(大日本インキ化学(株):ハイドランECOS−1000H)]
(3)エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体含有樹脂(40%溶液) 170部
[最低造膜温度105℃(三井化学(株):ケミパールM200)]
(4)エチレンー不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体のアルカリ金属塩含有樹脂(28%溶液)
[最低造膜温度70℃(三井化学(株):ケミパールS100)]27部
(5)水 750部
以上の液を混合撹拌してインク受理層の塗料を調整した。
坪量157g/m2の上質紙にあらかじめ磁気記録層を形成した磁気記録紙に、上記受理層塗料を乾燥、塗布量が5.5g/m2になるようにメイヤーバーで塗布し、55℃で乾燥し、乾燥後塗工面をスーパーカレンダー掛けして、磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
【0018】
実施例2
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aの代わりに、下記処方からなるインク受理層液Bを用いる以外は全く同様にして、実施例2の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
《インク受理層Bの調製》
(1)非晶質シリカ 90部
[平均粒子径1.6μm、吸油量270ml/100g
比表面積290m2/g((株)トクヤマ:ファインシールF−80)
(2)ポリエステル系ウレタン樹脂(50%溶液) 210部
[最低造膜温度<0℃、軟化温度135℃
(大日本インキ化学(株):ハイドランECOS−1000H)]
(3)エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体含有樹脂(40%溶液) 170部
[最低造膜温度105℃(三井化学(株):ケミパールM200)]
(4)エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体のアルカリ金属塩含有樹脂(28%溶液)
[最低造膜温度70℃(三井化学(株):ケミパールS100)]34部
(5)水 750部
【0019】
実施例3
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aの代わりに、下記処方からなるインク受理層液Cを用いる以外は全く同様にして実施例3の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
《インク受理層Cの調製》
(1)非晶質シリカ 90部
[平均粒子径3.7μm、吸油量280ml/100g
比表面積280m2/g((株)トクヤマ:ファインシールX−37B)
(2)ポリエステル系ウレタン樹脂(50%溶液) 210部
[最低造膜温度<0℃、軟化温度135℃
(大日本インキ化学(株):ハイドランECOS−1000H)]
(3)エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体含有樹脂(40%溶液) 170部
[最低造膜温度105℃(三井化学(株):ケミパールM200)]
(4)エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体のアルカリ金属塩含有樹脂(28%溶液)
[最低造膜温度70℃(三井化学(株):ケミパールS100)]34部
(5)水 750部
【0020】
実施例4
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Bを用いるが、乾燥温度105℃で乾燥する以外は全く同様にして実施例4の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
【0021】
実施例5
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aを用いるが、乾燥温度105℃で乾燥する以外は全く同様にして実施例5の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
【0022】
比較例1
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aの代わりに、下記処方からなるインク受理層液Dを用いる以外は全く同様にして比較例1の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
《インク受理層Dの調製》
(1)非晶質シリカ 50部
[平均粒子径1.6μm、吸油量240ml/100g
比表面積55m2/g(水沢化学工業(株):ミズカシルP527)
(2)ポリエステル系ウレタン樹脂(20%溶液) 625部
[最低造膜温度<0℃、軟化温度105℃、ガラス転移温度61℃
(大日本インキ化学(株):ハイドランAP−30)]
(3)水 200部
【0023】
比較例2
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aの代わりに、下記処方からなるインク受理層液Eを用いる以外は全く同様にして比較例2の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
《インク受理層Eの調製》
(1)非晶質シリカ 50部
[平均粒子径1.6μm、吸油量270ml/100g
比表面積290m2/g((株)トクヤマ:ファインシールF−80)
(2)ポリエステル系ウレタン樹脂(35%溶液) 625部
[最低造膜温度13℃、軟化温度195℃、ガラス転移温度26℃
(大日本インキ化学(株):ハイドランAPX−110)]
(3)水 240部
【0024】
比較例3
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aの代わりに、下記処方からなるインク受理層液Fを用いる以外は全く同様にして比較例3の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
《インク受理層Fの調製》
(1)非晶質シリカ 50部
[平均粒子径1.6μm、吸油量270ml/100g
比表面積290m2/g((株)トクヤマ:ファインシールF−80)
(2)スチレン−ブタジエンラテックス(45%溶液) 140部
[スチレン:ブタジエン=8:2、ガラス転移温度40℃、粒径200n
m(旭化成(株):L1638)]
(3)スチレン−ブタジエンラテックス(45%溶液) 140部
[スチレン:ブタジエン=8:2、ガラス転移温度40℃、
粒径400nm(旭化成(株):L8804)]
(4)水 545部
【0025】
実施例及び比較例で示された熱溶融転写記録材について、効果を確認するために評価を行った。評価項目は、熱転写印字品質、耐ブロッキング性、捺印性であり、結果を表1に示す。また実施例1,2,4,5に付いては、インク受理層の表面観察を行った。評価項目の評価手順の詳細は、以下の通りである。
【0026】
1.熱転写印字品質の印字条件及び評価は次の通りである。
使用機器:プリンター 野崎印刷紙業(株)製サーマルプリンターSG−4000
リボン ゼネラル(株)製樹脂型リボン及びワックス型リボン
印字条件:プリンターのファンクション印字濃度(−12〜12)、チエックモード印字濃度(1〜10)、印字スピード(1〜47)の組み合わせから選択されるが、今回評価に用いた印字条件を表1に示す。
【0027】
【表1】
印字の評価:上記印字条件でバーコードを印字し、印字画像を目視判定し、評価する。
評価:試験の結果を以下の基準により表す。
◎ :印字スピードの異なる4画像共に、バーコードの印字欠けが全くない。
○ :印加エネルギーの高い印字スピード5,10では、バーコードの印字欠けは全くないが、(3),3では一部印字欠けが認められる。
△ :印字スピード10では、バーコードの印字欠けは全くないが、(3),3,5では一部印字欠けが認められる。
× :4条件共に、印字欠けが認められる。
××:ほとんど、または全く印字できない。
【0028】
2.耐ブロッキング性の試験の内容及び評価は、次の通りである。
試験内容1:切符サイズ(30mm×57.5mm)にしたサンプルのインク受理層と磁気層面を重ね合わせて、560g/cm2の圧力で加重をかける。その状況で40℃、90%RHの環境下で24時間保管する。保管後、磁気層とインク受理層の重ね合わせた面に対し、はがれの発生の有無を目視判定し、評価する。
評価:試験の結果を以下の基準により表す。
◎:容易にはがせ、磁気層面及びインク受理層面の汚れが全くない。
○:はがせるが、磁気層面に点状の汚れが僅かに認められる。
△:はがせるが、磁気層面の30〜50%の面積に汚れが認められる。
×:はがすと、磁気層面ないしインク受理層面の何れかで、紙むけする。
【0029】
試験内容2:メイヤーバーで塗布したサンプルを直ちにカレンダー処理し、70mm×340mmにしたサンプルを、内径1インチ肉厚4mmの紙管にインク受理層と磁気面が接触する様に巻き付け、500g/cm2の圧力で加重をかける。その状況で30℃、85%RHの環境下で16時間保管する。保管後、磁気層とインク受理層で加重が直接掛かった面の汚れ発生の有無を目視判定し、評価する。
評価:試験の結果を以下の基準により表す。
◎:容易にはがせ、磁気層面及びインク受理層面の汚れが全くない。
○:はがせるが、磁気層面に点状の汚れが僅かに認められる。
△:はがせるが、磁気層面の30〜50%の面積に汚れが認められる。
×:はがすと、磁気層面ないしインク受理層面の何れかで、紙むけする。
【0030】
3.捺印性の試験内容及び評価は、次の通りである。
試験内容:各記録材のインク受理層面に、捺印スタンプインク(シャチハタ(株)製の速乾性捺印スタンパー(商品名)と水性捺印スタンパー(商品名))による捺印を施し、速乾性はその直後にまた水性は捺印後1分後に該捺印部分を指先で摩擦したときの文字の判読の容易さで、評価する。
評価:試験の結果を以下の基準により表す。
○:文字が流れることなく残っている。
△:文字に流れが発生したが、判読可能。
×:文字に流れが発生し、判読不可能。
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
表2の結果から、本発明における磁気記録型熱溶融転写被記録材は、インク受理層が、樹脂溶融インク及びワックス溶融インクの両方に対する受理性および固着性に優れ、さらに捺印スタンプなどにより付与される各種インクに対し、優れた迅速乾燥性を示し、さらに耐ブロッキング性に優れている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録型熱溶融転写被記録材に係わるものである。さらに詳しく述べるならば、本発明は、片面に水系塗工剤により形成された磁気記録層を有し、反対面の受理層は転写用リボンから転写された樹脂溶融インク又はワックス溶融インクに対し、優れた受理性を有し、さらに捺印スタンプなどにより付与される各種インクに対し、優れた迅速乾燥性を示し、さらに耐ブロッキング性に優れた磁気記録型熱溶融転写被記録材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録体は、磁気特性により情報を記録することにより利用されている。磁気記録の他に可視情報として表示することが要求されることも多く、支持体の磁気記録層とは反対面に用途毎に対応する各種所要事項の表示がなされている。例えば、テレフォンカードのように同一の内容を多数枚作成し、かつ美麗な絵柄を表示するものに対しては、一般の印刷方法による記録が行われているが、交通機関の乗車券においては、各個に表示内容が異なり、又、記録画像に対し、高度の堅牢性や信頼性が要求されるものに対しては、インクリボンに保持されているインクを加熱溶融させ、これを、被記録材の受理層に転写する熱溶融転写方式が用いられている。また、上質紙表面に直接印字可能なワックス溶融インクリボンによる券発行装置においては、この装置のサーマルヘッドによってインクを溶融し、上質紙の内部に溶融インクを浸透させて画像の形成が行われる。受理シートとして上質紙を使用したものは、その上に受理層を設けなくともワックス溶融インクの吸収性が良く、また、捺印スタンプインクの迅速乾燥性に優れているという利点を有している。しかし、ワックス溶融型インクリボンを、従来の樹脂インク受理層を設けた被記録材に適用すると、樹脂インク受理層はワックス溶融インクを吸収することができないという問題を生ずる。また樹脂型インクリボンを、樹脂インク受理層を設けていない上質紙表面に適用すると、比較的平滑度の低い上質紙表面は、樹脂型インクリボンとの接触が不均一になり、鮮明な画像を受理することが出来ないという問題を生ずる。
【0003】
従来、熱溶融転写方式では、カルナバワックス(融点80〜86℃)等のように融点が低く、熱により容易に溶融する天然ワックスを主成分として含有するインクが用いられ、受理層としては上質紙表面が用いられていた。しかしカルナバワックスのような天然ワックスは、柔らかく融点が低いため、記録画像を爪で引っ掻くと容易に損傷し、これを他の部品等と摩擦すると損傷したり、或いは加熱により汚染され易いなどの問題がある。このため、カルナバワックスの代わりに、耐摩耗性に強く、かつ融点の高い(約100℃程度以上)樹脂、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、又はアクリル等の樹脂を主成分とするインクが用いられるようになって来た。また転写記録スピードの向上により、発券に要する時間が短くなり、かつ画像を構成するドット単位面積当たりの画像表示量も増加してきている。
【0004】
そのため、従来の上質紙表面を受理層とする被記録材では、高融点樹脂インクを再現性良く転写し、鮮明な転写画像を記録することが難しく、印字部に著しいかすれを生ずるなどの事故が発生するようになった。そこで、水溶性高分子、例えば澱粉又はポリビニルアルコールなどの水溶液をサイズプレスにより塗工して受理層を形成し、クレー、炭酸カルシウムを主成分とする水系塗工液を塗工して塗布層を形成し、それらの層をキャレンダー処理し、それによって、一般の上質紙よりも高い平滑度に仕上げられた(ベック平滑度が200秒以上:特公平5−19477、特公平5−78439)被記録材を用いることが試みられたが、良好な記録結果が得られなかった。そこで、水性系樹脂よりも著しく高い平滑性を有する塗工層の形成が可能な溶剤系樹脂により受理層を形成することが試みられた。
【0005】
しかし、溶剤系樹脂を受理層に用いた場合、それに各種インクにより捺印が施されたとき、例えば交通機関の改札において、乗車券に捺印が施されたとき、このインクに対する乾燥性が悪いため、捺印部分の捺印スタンプインクによる画像を指などで消去し、容易に改ざんし得るなどの欠点、および溶剤系樹脂により形成された受理層の表面が緻密なために、樹脂インクの浸透性が不良になり、かつ定着性が不良であるため、例えば爪で記録画像を削り落として改ざんすることが可能であるなどの問題点があった。また、溶剤系樹脂を用いて受理層を塗抹すると、溶剤の蒸発による環境汚染を生ずるなどの問題点があった。そこで比較的融点の高い樹脂インクの受理性および固着性に優れ、かつ捺印スタンプインクなどを迅速に乾燥させ得る受理層を有し、必要により裏面に磁気記録層を形成し得る熱転写被記録材の出現が強く要望されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、片面に水系塗工剤により形成された磁気記録層を有し、反対面のインク受理層が、樹脂溶融インク及びワックス溶融インクの両方に対する受理性および固着性に優れ、さらに捺印スタンプなどにより付与される各種インクに対し迅速乾燥性を示し、さらに耐ブロッキング性に優れた磁気記録型熱溶融転写被記録材に関するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、本発明の下記磁気記録型熱溶融転写被記録材によって解決することができる。
【0008】
本発明は、シート状支持体の片面に水系塗工剤により形成された磁気記録層を設け、その反対面に無機顔料および結着剤を含むインク受理層を設けた磁気記録型熱溶融転写被記録材において、該インク受理層は該結着剤がポリエステル系ウレタン樹脂、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂およびエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂で、該無機顔料が非晶質シリカであり、該ポリエステル系ウレタン樹脂がその分子構造中にスルホン基の極性基を持ち、かつ、その最低造膜温度が0℃以下、軟化温度が130〜140℃であり、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する該樹脂の最低造膜温度が100〜110℃であり、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する該樹脂の最低造膜温度が70〜90℃である磁気記録型熱溶融転写被記録材に関する。
【0009】
更に、該非晶質シリカの平均粒径が1.0〜4.0μm、そのJIS K5101.21による吸油量が200〜300ml/100gで、そのBET法による比表面積が200〜400m2/gである磁気記録型熱溶融転写被記録材に関する。
又、該インク受理層が非晶質シリカ100重量部に対して、結着剤を150〜300重量部含有する磁気記録型熱溶融転写被記録材に関する。
又、該インク受理層の結着剤がポリエステル系ウレタン樹脂100重量部に対し、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂を30〜100重量部およびエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂を5〜50重量部含有する磁気記録型熱溶融転写被記録材に関する。
【0010】
なお、インク受理層の乾燥温度は、結着剤中のエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する該樹脂の最低造膜温度と、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する該樹脂の最低造膜温度のうちより低い温度以下で乾燥させるのが好ましい。
【0011】
結着剤として用いるポリエステル系ウレタン樹脂とエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂およびエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂の合計量との比率は、ポリエステル系ウレタン樹脂の比率が多いほど、インク受理性に優れる傾向にある。しかし、磁気記録型熱溶融転写被記録材は、通常ロール紙として巻き上げられるため、高温環境においてロール紙の自重でインク受理層と磁気記録層がくっついたり、受理層自体の強度が不足し、受理層が剥がれて磁気記録層に付着する、いわゆるブロッキング現象を引き起こすことが多い。一方、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂とエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂の合計量を増やすと、(特にエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂の比率を増やすと)、ブロッキング現象は解消しやすくなるが、インク受理性の劣化を来たしドットの再現性が悪くなりやすい。このため、該インク受理層の結着剤中のポリエステル系ウレタン樹脂が100重量部に対して、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂が30〜100重量部、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂が5〜50重量部、特にポリエステル系ウレタン樹脂100重量部に対して、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂が60〜70重量部、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂が6〜10重量部が好ましい。
【0012】
本発明に用いる非晶質シリカは、インク受理層における樹脂溶融インク又はワックス溶融インクの転写インクのドット再現性を向上させ、かつ捺印スタンプインクの吸収性能を向上させる。なお、非晶質シリカの粒径が小さく、吸油量と比表面積が大きい方が、転写インクのドット再現性と捺印スタンプインクの吸収性に好ましいが、粒径が小さすぎるとインク受理層と磁気記録層の密着性がよくなり、ブロッキング現象を引き起こす傾向にある。更に粒径が小さすぎ、吸油量と比表面積が大きすぎると、受理層自体の強度が不足する傾向にあり、これによって被記録材への印字の際にインク受理層が剥離する恐れが出てくる。また粒径の大きいシリカを用いると耐ブロッキング性は向上するが、転写インクのドット再現性を悪化させる恐れがある。一方、吸油量や比表面積が小さすぎると、インク受理層の剥離は押さえられるが、受理層の捺印スタンプインクの吸収性が不十分なものとなりやすい。またこの非晶質シリカの配合量が過多になると、受理層の表面強度が低下し、印字の際インク受容層が剥離する恐れがある。このため、平均粒径1.0〜4.0μm、JIS K5101.21による吸油量が200〜300ml/100g、BET法による比表面積が200〜400m2/g、特に平均粒径1.5〜3.8μm、吸油量が260〜290ml/100g、比表面積が250〜320m2/g、である非晶質シリカを使用するのが好ましく、又、非晶質シリカ100重量部に対して、結着剤150〜300重量部、特に190〜210重量部が好ましい。
【0013】
このようにして得られたインク受理層用塗液による塗工層を設け乾燥させるが、一般的には生産性を考え乾燥温度をできるだけ高くして乾燥させるのが一般的である。しかしながら、乾燥温度を結着剤中のエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂や、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂の最低増膜温度のいずれか低い温度以上に上げると、インク受理層の表面強度は向上するが、転写インクのドット再現性が低下するため、乾燥温度は上記2種の樹脂の最低増膜温度のうちより低い温度以下とするのが好ましい。
【0014】
本発明における支持体としては、木材パルプを主原料とし、他にタルク、炭酸カルシウムなどの填料、合成樹脂、ロジン、アルキルケテンダーマー、澱粉などのサイズ剤等を添加した紙、合成樹脂、澱粉、ポリビニルアルコールなどの水性結着剤と、無機質及び/または有機質顔料とを主体とした塗料を塗工したコート層を有する紙、合成紙、合成樹脂シートが使用される。
【0015】
支持体に対して上記の受理層の反対側に形成する水系の磁性塗料による磁気記録層を形成する。この磁気記録層は、例えば、γ・Fe2O3,γ・Fe3O4とFe3O4との混晶,CrO2,コバルトをドーブしたγ・Fe2O3またはFe3O4,バリウムフェライト,さらには、Fe−CoやFe−Co−Ni等の合金等による磁性粉末粒子と、カゼイン,ポリビニルアルコール,エポキシ変性ポリビニルアルコール,メチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ポリアクリル酸,澱粉及びその誘導体,ウレタン樹脂,エポキシ樹脂等によるバインダー成分とを含有し、さらに必要に応じて、高級脂肪酸の金属塩やワックス類等の潤滑剤,帯電防止剤,分散剤,消泡剤等の添加剤を適宜混合した水系の磁性塗料を利用して形成される。
【0016】
磁気記録層は、前記磁性塗料による塗工層を、グラビアコーターやリバースコーター等にて形成した後、必要に応じて、塗工中の磁性粉末粒子の配向を行い、更に乾燥させることにより、厚さ10〜20μm程度にする。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下に示す部及び%はいずれも質量基準である。
実施例1
《バリウムフェライト分散液の調製》
バリウムフェライト 100部
(保持力:21.5KA/m、平均粒径0.8μm)
ポリアクリル酸ソーダ(40%水溶液) 4部
水 90部
以上の組成からなる物をサンドグラインダーで分散し、粒径6μmの分散液を得た。
《磁性塗料の調整》
バリウムフェライト分散液 194部
ウレタン樹脂(38%) 76部
カーボンブラック(35%分散液) 14部
水 50部
以上の液を混合撹拌して磁気塗布層形成液の磁性塗料を調整した。
坪量157g/m2の上質紙に、上記磁性塗料を80g/m2になるようにメイヤーバー塗布し、中心磁界が3×107テスラの配向機で配向後、105℃で乾燥し磁気記録層を得た。
《インク受理層液Aの調製》
(1)非晶質シリカ 90部
[平均粒子径1.6μm、吸油量270ml/100g
比表面積290m2/g((株)トクヤマ:ファインシールF−80)
(2)ポリエステル系ウレタン樹脂(50%溶液) 210部
[最低造膜温度<0℃、軟化温度135℃
(大日本インキ化学(株):ハイドランECOS−1000H)]
(3)エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体含有樹脂(40%溶液) 170部
[最低造膜温度105℃(三井化学(株):ケミパールM200)]
(4)エチレンー不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体のアルカリ金属塩含有樹脂(28%溶液)
[最低造膜温度70℃(三井化学(株):ケミパールS100)]27部
(5)水 750部
以上の液を混合撹拌してインク受理層の塗料を調整した。
坪量157g/m2の上質紙にあらかじめ磁気記録層を形成した磁気記録紙に、上記受理層塗料を乾燥、塗布量が5.5g/m2になるようにメイヤーバーで塗布し、55℃で乾燥し、乾燥後塗工面をスーパーカレンダー掛けして、磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
【0018】
実施例2
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aの代わりに、下記処方からなるインク受理層液Bを用いる以外は全く同様にして、実施例2の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
《インク受理層Bの調製》
(1)非晶質シリカ 90部
[平均粒子径1.6μm、吸油量270ml/100g
比表面積290m2/g((株)トクヤマ:ファインシールF−80)
(2)ポリエステル系ウレタン樹脂(50%溶液) 210部
[最低造膜温度<0℃、軟化温度135℃
(大日本インキ化学(株):ハイドランECOS−1000H)]
(3)エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体含有樹脂(40%溶液) 170部
[最低造膜温度105℃(三井化学(株):ケミパールM200)]
(4)エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体のアルカリ金属塩含有樹脂(28%溶液)
[最低造膜温度70℃(三井化学(株):ケミパールS100)]34部
(5)水 750部
【0019】
実施例3
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aの代わりに、下記処方からなるインク受理層液Cを用いる以外は全く同様にして実施例3の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
《インク受理層Cの調製》
(1)非晶質シリカ 90部
[平均粒子径3.7μm、吸油量280ml/100g
比表面積280m2/g((株)トクヤマ:ファインシールX−37B)
(2)ポリエステル系ウレタン樹脂(50%溶液) 210部
[最低造膜温度<0℃、軟化温度135℃
(大日本インキ化学(株):ハイドランECOS−1000H)]
(3)エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体含有樹脂(40%溶液) 170部
[最低造膜温度105℃(三井化学(株):ケミパールM200)]
(4)エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの
共重合体のアルカリ金属塩含有樹脂(28%溶液)
[最低造膜温度70℃(三井化学(株):ケミパールS100)]34部
(5)水 750部
【0020】
実施例4
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Bを用いるが、乾燥温度105℃で乾燥する以外は全く同様にして実施例4の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
【0021】
実施例5
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aを用いるが、乾燥温度105℃で乾燥する以外は全く同様にして実施例5の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
【0022】
比較例1
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aの代わりに、下記処方からなるインク受理層液Dを用いる以外は全く同様にして比較例1の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
《インク受理層Dの調製》
(1)非晶質シリカ 50部
[平均粒子径1.6μm、吸油量240ml/100g
比表面積55m2/g(水沢化学工業(株):ミズカシルP527)
(2)ポリエステル系ウレタン樹脂(20%溶液) 625部
[最低造膜温度<0℃、軟化温度105℃、ガラス転移温度61℃
(大日本インキ化学(株):ハイドランAP−30)]
(3)水 200部
【0023】
比較例2
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aの代わりに、下記処方からなるインク受理層液Eを用いる以外は全く同様にして比較例2の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
《インク受理層Eの調製》
(1)非晶質シリカ 50部
[平均粒子径1.6μm、吸油量270ml/100g
比表面積290m2/g((株)トクヤマ:ファインシールF−80)
(2)ポリエステル系ウレタン樹脂(35%溶液) 625部
[最低造膜温度13℃、軟化温度195℃、ガラス転移温度26℃
(大日本インキ化学(株):ハイドランAPX−110)]
(3)水 240部
【0024】
比較例3
実施例1と同様にして磁気記録層を形成した磁気記録紙に、インク受理層液Aの代わりに、下記処方からなるインク受理層液Fを用いる以外は全く同様にして比較例3の磁気記録型熱溶融転写記録材を得た。
《インク受理層Fの調製》
(1)非晶質シリカ 50部
[平均粒子径1.6μm、吸油量270ml/100g
比表面積290m2/g((株)トクヤマ:ファインシールF−80)
(2)スチレン−ブタジエンラテックス(45%溶液) 140部
[スチレン:ブタジエン=8:2、ガラス転移温度40℃、粒径200n
m(旭化成(株):L1638)]
(3)スチレン−ブタジエンラテックス(45%溶液) 140部
[スチレン:ブタジエン=8:2、ガラス転移温度40℃、
粒径400nm(旭化成(株):L8804)]
(4)水 545部
【0025】
実施例及び比較例で示された熱溶融転写記録材について、効果を確認するために評価を行った。評価項目は、熱転写印字品質、耐ブロッキング性、捺印性であり、結果を表1に示す。また実施例1,2,4,5に付いては、インク受理層の表面観察を行った。評価項目の評価手順の詳細は、以下の通りである。
【0026】
1.熱転写印字品質の印字条件及び評価は次の通りである。
使用機器:プリンター 野崎印刷紙業(株)製サーマルプリンターSG−4000
リボン ゼネラル(株)製樹脂型リボン及びワックス型リボン
印字条件:プリンターのファンクション印字濃度(−12〜12)、チエックモード印字濃度(1〜10)、印字スピード(1〜47)の組み合わせから選択されるが、今回評価に用いた印字条件を表1に示す。
【0027】
【表1】
印字の評価:上記印字条件でバーコードを印字し、印字画像を目視判定し、評価する。
評価:試験の結果を以下の基準により表す。
◎ :印字スピードの異なる4画像共に、バーコードの印字欠けが全くない。
○ :印加エネルギーの高い印字スピード5,10では、バーコードの印字欠けは全くないが、(3),3では一部印字欠けが認められる。
△ :印字スピード10では、バーコードの印字欠けは全くないが、(3),3,5では一部印字欠けが認められる。
× :4条件共に、印字欠けが認められる。
××:ほとんど、または全く印字できない。
【0028】
2.耐ブロッキング性の試験の内容及び評価は、次の通りである。
試験内容1:切符サイズ(30mm×57.5mm)にしたサンプルのインク受理層と磁気層面を重ね合わせて、560g/cm2の圧力で加重をかける。その状況で40℃、90%RHの環境下で24時間保管する。保管後、磁気層とインク受理層の重ね合わせた面に対し、はがれの発生の有無を目視判定し、評価する。
評価:試験の結果を以下の基準により表す。
◎:容易にはがせ、磁気層面及びインク受理層面の汚れが全くない。
○:はがせるが、磁気層面に点状の汚れが僅かに認められる。
△:はがせるが、磁気層面の30〜50%の面積に汚れが認められる。
×:はがすと、磁気層面ないしインク受理層面の何れかで、紙むけする。
【0029】
試験内容2:メイヤーバーで塗布したサンプルを直ちにカレンダー処理し、70mm×340mmにしたサンプルを、内径1インチ肉厚4mmの紙管にインク受理層と磁気面が接触する様に巻き付け、500g/cm2の圧力で加重をかける。その状況で30℃、85%RHの環境下で16時間保管する。保管後、磁気層とインク受理層で加重が直接掛かった面の汚れ発生の有無を目視判定し、評価する。
評価:試験の結果を以下の基準により表す。
◎:容易にはがせ、磁気層面及びインク受理層面の汚れが全くない。
○:はがせるが、磁気層面に点状の汚れが僅かに認められる。
△:はがせるが、磁気層面の30〜50%の面積に汚れが認められる。
×:はがすと、磁気層面ないしインク受理層面の何れかで、紙むけする。
【0030】
3.捺印性の試験内容及び評価は、次の通りである。
試験内容:各記録材のインク受理層面に、捺印スタンプインク(シャチハタ(株)製の速乾性捺印スタンパー(商品名)と水性捺印スタンパー(商品名))による捺印を施し、速乾性はその直後にまた水性は捺印後1分後に該捺印部分を指先で摩擦したときの文字の判読の容易さで、評価する。
評価:試験の結果を以下の基準により表す。
○:文字が流れることなく残っている。
△:文字に流れが発生したが、判読可能。
×:文字に流れが発生し、判読不可能。
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
表2の結果から、本発明における磁気記録型熱溶融転写被記録材は、インク受理層が、樹脂溶融インク及びワックス溶融インクの両方に対する受理性および固着性に優れ、さらに捺印スタンプなどにより付与される各種インクに対し、優れた迅速乾燥性を示し、さらに耐ブロッキング性に優れている。
Claims (4)
- シート状支持体の片面に水系塗工剤により形成された磁気記録層を設け、その反対面に無機顔料および結着剤を含むインク受理層を設けた磁気記録型熱溶融転写被記録材において、該インク受理層は該結着剤がポリエステル系ウレタン樹脂、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂およびエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂で、該無機顔料が非晶質シリカであり、該ポリエステル系ウレタン樹脂がその分子構造中にスルホン基の極性基を持ち、かつ、その最低造膜温度が0℃以下、軟化温度が130〜140℃であり、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する該樹脂の最低造膜温度が100〜110℃であり、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する該樹脂の最低造膜温度が70〜90℃であることを特徴とする磁気記録型熱溶融転写被記録材。
- 該非晶質シリカの平均粒径が1.0〜4.0μm、そのJISK5101.21による吸油量が200〜300ml/100gで、そのBET法による比表面積が200〜400m2/gである請求項1記載の磁気記録型熱溶融転写被記録材。
- 該インク受理層が非晶質シリカ100重量部に対して、結着剤を150〜300重量部含有する請求項1記載の磁気記録型熱溶融転写被記録材。
- 該インク受理層の結着剤がポリエステル系ウレタン樹脂100重量部に対し、エチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体を含有する樹脂を30〜100重量部およびエチレン−不飽和カルボン酸を有する極性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩を含有する樹脂を5〜50重量部含有する請求項1記載の磁気記録型熱溶融転写被記録材。
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