JP3962777B2 - 実時間分光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光方法及び分光装置に関し、特に、微小時間における実時間変化のスペクトルを得る実時間イメージング分光方法及び実時間イメージング分光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの有機化学物質や生体系で行われる光重合,光分解,光合成等の光化学反応や、半導体中の光励起では光誘起現象が生じている。このような光化学反応の初期過程や、半導体中に光励起されたキャリアの緩和現象は、数十フェムト秒から数十ピコ秒の時間内で起きる超高速現象であり、これらの光誘起現象を実時間で捉えることは、各反応状態や物質の光誘起現象を明らかにする上で極めて重要である。
【0003】
物質の光誘起現象を解明するには、スペクトル(波長特性)と時間変化とを求める必要がある。この解析を行う手法として、従来ポンプ―プローブ過渡吸収分光法、4光波混合法、発光を時間解析する方法として和周波発生分光法などの種々のレーザー分光法が用いられている。
【0004】
これらの従来のレーザー分光法において、スペクトル(波長特性)測定では、光学遅延回路を構成するステージを固定することで時間を固定し、分光器によってスペクトルを測定し、時間変化測定では、測定波長を固定し、光学遅延回路を構成するステージを移動させることで時間を変化させて時間応答を測定しており、それぞれ個別に行っている。このように、従来のレーザー分光法は、時間あるいは測定波長の何れか一方を固定して測定を行うため、スペクトル(波長特性)測定と時間変化測定との両測定を同時に行うことができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のレーザー分光法は、スペクトル(波長特性)測定と時間変化測定との両測定を同時に行うことができないため、測定試料における時間分解した全吸収(あるいは反射)スペクトルを得るためには、各光遅延時間毎のスペクトル測定と測定波長毎の時間応答測定とを、それぞれ光遅延時間又は測定波長を変更しながら繰り返す必要がある。
【0006】
そのため、スペクトル測定と時間変化測定の一連の測定を行うには通常数時間から数日の長時間を要するという問題がある。また、このように長時間を要する測定では、長期間にわたってレーザーを安定して動作させる点や、長時間のレーザー照射によって試料が劣化する点においても問題がある。
【0007】
また、従来のように過渡現象を時間あるいは波長を変えながら繰り返しデータを蓄積する分光法によって測定するには、過去の反応状態の影響を排除するために反応生成物を常に取り去る必要があり、測定対象物は溶液のようにフローさせることが必要である。
【0008】
しかしながら、固体中の現象にはフォトクロミズムや光重合のように熱的に不可逆な現象が多くある。このような固体中の熱的に不可逆な現象では、励起光(ポンプ光)によって反応生成物が試料中に蓄積し、溶液のようにフローによって反応生成物を取り去ることができないため、固体中の現象の解析に従来の分光法を適用することができないという問題がある。
【0009】
例えば、固体状態のフォトクロミック化合物は光メモリー材料として期待されており、光メモリー・光スイッチングなどの光機能性材料の物性を評価したり、これら材料を設計する際の指針を確立することが求められている他、強励起に弱い生体系試料の動的過程の研究も求められているが、このような化合物の光構造変化の動的過程を解析することは現在困難である。そのため、このような要求に対して、瞬時に時間分解したスペクトルを測定することができる分光方法や分光装置が求められている。
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、分光測定において、時間分解とスペクトル測定を同時に行うことを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、試料に励起光を照射して反応生成物を生成させ、この反応生成物にプローブ光を照射し、試料から得られる透過光又は反射光を分光してスペクトル測定を行うものであり、波長軸と共に時間軸に展開して分光することで時間分解とスペクトル測定を同時に行う。
【0011】
本発明の実時間分光は、複数波長を含むプローブ光と励起光とを、プローブ光又は励起光あるいは両方が、少なくとも試料面上で光遅延時間を有するように重ねて試料に照射し、励起光によって反応し生成する反応生成物の情報をプローブ光の照射によって光情報の形態で読み出し、この光を光遅延時間の時間軸及び波長軸の二次元に分光し、光遅延時間の時間幅の実時間で分光することによって、時間分解とスペクトル測定を同時に行う。
【0012】
励起光とプローブ光の元となる光はフェムト秒レーザーパルスであり、このパルス光のパルス幅はフェムト秒の単位であり、この光を遅延することによってピコ秒単位の実時間の時間分解を行うことができる。励起光とプローブ光は一つのフェムト秒レーザーパルス光源から発せられたフェムト秒レーザーパルスを二分することで形成することができる。
【0013】
本発明の分光方法は、以下の態様によってスペクトル測定と共に時間分解を行うことができる。
第1の態様では、プローブ光及び励起光を試料面上に線状又は帯状に集光して照射する。プローブ光と励起光は、この線状又は帯状の集光面において互いに光路差が生じるように入射する。この入射において、プローブ光又は励起光の一方は集光面上に斜入射して、集光面上でその長さ方向に光路差があるよう入射し、他方は集光面上に垂直に入射して、集光面上でその長さ方向に光路差がないように入射する他、プローブ光及び励起光を共に集光面上に斜入射して、集光面上でその長さ方向に光路差があるよう入射することによって、集光面上で互いに長さ方向に光路差を生じさせることができる。
【0014】
この入射は、試料面上に光遅延時間に対応する時間差を形成する。プローブ光及び/又は励起光は、集光面の法線方向に対して所定角度を有して入射することによって光路差を形成することができる。これによって、線状又は帯状の集光面には、長さ方向に沿って照射後の光遅延時間に対する情報が含まれることになり、この線状光又は帯状光を分光して波長成分を測定することによって、時間分解とスペクトル測定を同時に行うことができる。
【0015】
第2の態様では、プローブ光と励起光とを試料面上に点状に集光して照射する。プローブ光は、照射前に、時間遅れを形成する時間遅れ形成手段に通す。これによって、点状の集光面には、励起光照射後の光遅延時間に対する情報が含まれることになる。この点状光を光遅延時間の時間軸に展開し、展開した光を波長軸に分光して波長成分を測定することによって、時間分解とスペクトル測定を同時に行うことができる。第2の態様によれば、試料上の一点において測定することができるため、試料の不均一性によって照射光の照射位置が異なることによって生じる測定データの不均一性を防ぐことができる。
【0016】
第3の態様では、プローブ光と励起光とを試料面上に線状又は帯状に集光して照射すると共に、この線状又は帯状の集光面において集光面上に垂直に入射して、その長さ方向に光路差がないように入射する。プローブ光及び/又は励起光は、照射前に、時間遅れを形成する時間遅れ形成手段に通す。これによって、線状又は帯状の集光面には、線又は帯の長さ方向に沿って照射後の光遅延時間に対する情報が含まれることになる。この線状光又は帯状光を分光して波長成分を測定することによって、時間分解とスペクトル測定を同時に行うことができる。
【0017】
本発明の実時間分光装置は、励起光と複数波長を含むプローブ光とを試料に重ねて照射する照射手段と、照射によって試料から得られる透過光又は反射光を時間軸及び波長軸の二次元に分光する分光手段と、分光手段による分光を二次元的に検出する検出手段とを備える構成とする。
【0018】
ここで、プローブ光及び/又は励起光は少なくとも試料面上において光遅延時間を有するよう構成し、分光手段はこの光遅延時間の情報を時間軸で分光し、光遅延時間の時間幅の実時間で分光することで、時間分解とスペクトル測定を同時に行う。
【0019】
本発明が備える照射手段は、フェムト秒の単位のパルス幅を有するフェムト秒レーザーパルスを発生する光源と、フェムト秒レーザーパルスから励起光を形成する波長変換素子と、フェムト秒レーザーパルスから複数波長を含む白色光のプローブ光を形成する自己位相変調素子と、励起光及びプローブ光を線状又は帯状に形成する光学系とを備える。
【0020】
本発明の実時間分光装置は、プローブ光及び/又は励起光に光遅延時間を持たせることによって、試料面上に光遅延時間の情報を形成し、時間分解とスペクトル測定を同時に行う。この光遅延時間の形成は照射手段によって行うことができ、本発明は複数の態様の照射手段とすることができる。
【0021】
照射手段の第1の態様は、プローブ光及び励起光を試料面上に線状又は帯状に集光する。プローブ光又は励起光の一方は、線状又は帯状の集光面において集光面上に斜入射し、集光面上でその長さ方向に光路差があるように入射し、他方は線状又は帯状の集光面において集光面上に垂直に入射し、集光面上でその長さ方向に光路差がないように入射する。あるいは、プローブ光と励起光の両方を、線状又は帯状の集光面において集光面上に斜入射し、集光面上でその長さ方向に光路差があるように入射する。この光の入射角度によって、試料面上に光遅延時間が形成される。
【0022】
照射手段の第2の態様は、プローブ光に時間遅れを形成する時間遅れ形成手段と、時間遅れ形成手段を通過したプローブ光を試料面上に点状に集光する光学系と、励起光を試料面上に点状に集光する光学系とを備える。これによって、試料面上に照射される点状のプローブ光は光遅延時間を有することになる。分光手段は試料からの点状の光を光遅延時間の時間軸に線状又は帯状に展開する光学系を備え、光遅延時間の情報を含む光を光遅延時間の時間軸に線状又は帯状に展開して分光する。
【0023】
照射手段の第3の態様は、プローブ光及び/又は励起光に時間遅れを形成する時間遅れ形成手段と、時間遅れ形成手段を通過した光を線状又は帯状に形成し照射面の長さ方向に垂直に照射する光学系と、他方の光を線状又は帯状に形成し照射面の長さ方向に垂直に照射する光学系とを備える。これによって、試料面上に照射される線状又は帯状のプローブ光及び/又は励起光は照射面の長さ方向に光遅延時間を有することになる。分光手段は試料から得られる透過光又は反射光を光遅延時間の時間軸に線状又は帯状に展開する光学系を備え、光遅延時間の情報を含む光を光遅延時間の時間軸に線状に展開して分光する。
【0024】
また、本発明は、線又は帯方向に光遅延時間に対する情報を含んだ光を分光し、この分光を二次元検出器で検出する。二次元検出器の一方の軸方向のデータから時間応答に関する測定を行い、他方の軸方向のデータから波長に関するスペクトル測定を行う。時間応答とスペクトルの両データを、二次元検出器の二次元配列で同時に得ることによって、スペクトルと時間を同時分解した吸収(あるいは反射)スペクトルをイメージ情報として得ることができる。
また、励起光を光学遅延させてプローブ光との間に時間差を形成することによって、測定時間の調整を行うことができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。図1〜図5を用いて本発明の第1の態様を説明し、図6,図7を用いて本発明の第2の態様を説明し、図8,図9を用いて本発明の第3の態様を説明する。
【0026】
はじめに、第1の態様について説明する。図1〜図5は、第1の態様において、構成を説明するための概略図、透過光の分光を説明するための概略図、反射光の分光を説明するための概略図、時間応答及びスペクトルの測定データの概略例、及びプローブ光と測定光の関係を説明するための概略信号図である。
【0027】
なお、第1の態様では、光遅延時間を形成する構成として、励起光とプローブ光の何れか一方を試料に対して所定の入射角度を有して入射する構成、あるいは励起光とプローブ光の両方を試料に対して所定の入射角度を有して入射する構成とすることができる。
【0028】
以下では、プローブ光を試料に対して所定の入射角度を有して入射する構成について説明するが、励起光を試料に対して所定の入射角度を有して入射する構成、あるいはプローブ光と励起光を試料に対して所定の入射角度を有して入射する構成についても同様とすることができる。
【0029】
図1において、本発明の実時間分光装置1は、試料Sに励起光とプローブ光とを照射する照射手段2と、照射光によって試料Sから得られる透過光あるいは反射光を時間軸及び波長軸に分光する分光手段3と、分光された時間軸及び波長軸の信号を二次元で検出する検出手段4を備える。第1の態様では、試料Sに対して励起光とプローブ光とを線状に集光し、プローブ光の試料Sに対する入射角度によって、試料S上に同時に照射されるプローブ光に光遅延時間を形成し、この光遅延時間によって時間分解を行う。
【0030】
照射手段2は、パルス幅がフェムト秒単位のフェムト秒レーザーパルスを発生するレーザー光源2aを備える。このフェムト秒レーザーパルスはビームスプリッタ2bによって2分され、一方のフェムト秒レーザーパルスは励起光として試料Sに照射され、他方のフェムト秒レーザーパルスは複数波長を備えるフェムト秒白色光のプローブ光として試料Sに照射される。
【0031】
励起光は、レーザー光源2aから発せられたフェムト秒レーザーパルスを波長変換素子2fに通すことによって特定波長のパルス光とし、光学遅延ステージ2gによってプローブ光との間の時間差を調整した後、適当な大きさのビーム径(例えば、5mm径程度)にコリメートし、円筒形レンズ2h2によって線状に形成して試料S上に集光する。
なお、光学遅延ステージ2gは、プローブ光側に設ける構成とし、これによって、プローブ光と励起光との間の時間差を調整してもよい。
【0032】
一方、プローブ光は、レーザー光源2aから発せられたフェムト秒レーザーパルスを自己位相変調素子2dに通すことによって複数波長を備えるフェムト秒白色光とし、ミラー2c2等の光学系によって適当な大きさのビーム径(例えば、5mm径程度)にコリメートし、円筒形レンズ2h1によって線状に形成して試料S上に集光する。なお、プローブ光の光路上には、試料Sを挟んで偏光素子2e1及び2e2を配置する。なお、偏光素子2e1及び2e2は、チャープをカー効果で補正する際に使用し、この際には互いに偏光方向を90度ずらして配置する。一方、実際の測定時には、偏光方向は0度として平行の状態で使用する。
【0033】
また、図1において、2c1〜2c7は励起光及びプローブ光の光路を形成するためのミラーである。なお、自己位相変調素子2dとして、例えばサファイアや石英基板や水を用いることができる。
【0034】
円筒型レンズ2h1及び2h2は、ビーム状の光を線状に形成する光学系である。図10はこの円筒型レンズ2hの一例を示している。図示する円筒型レンズ2hは、断面が半円形の柱状レンズであり、光円筒型レンズ2hの長さ方向が出射される光の線方向となる。
【0035】
円筒型レンズ2h1及び2h2によって線状に形成されたプローブ光及び励起光は、試料S上に線状に集光される。この励起光で励起されプローブ光によって試料Sから取り出された測定光は、その後レンズ系により適当な大きさに整形された後、円筒形レンズによりスリット3a上に絞り、分光素子3bで分光され、検出器4で検出される。
【0036】
図2,図3は、試料S上の励起光とプローブ光の入射状態、及び、試料Sから得られる測定光の時間軸及び波長軸での検出状態を示し、図2は透過光を検出する構成例であり、図3は反射光を検出する構成例である。図2と図3は、透過光と反射光の点で相違しその他の構成は共通するため、以下では主に図2の透過光について説明する。
【0037】
図2において、励起光は、試料S上に光路差がつかないような角度で入射させ、他方、プローブ光は、試料S上で光路差がつくような角度で励起光と重なるように入射させる。図2中のプローブ光中に示す破線は、同じ光遅延時間の波面を表している。なお、図示する波面間の間隔は説明上から任意に定めたものであって、間隔自体に格別な意味を含むものではない。
【0038】
プローブ光は、図示するように試料Sの面に対して角度θを有して入射することによって、試料面上への到達時間は線状又は帯状に延びる集光位置によって順次ずれ、光路差が形成されることになる。例えば、図中の斜線部分を施した線状又は帯状の集光面Pにおいて、プローブ光はまず端部Aに到達し、遅れて他方の端部Bに到達し、両端の間に光路差が形成される。この光路差はΔtの光遅延時間の時間差に対応する。例えば、プローブ光の試料S上に線状の集光の長さを5〜6mm(例えば、5.2mm)とし、入射角度を30度とすると、端部Aと端部Bの両端部間の光路差は3mmとなり、時間差として約10ps(ピコ秒)の光遅延時間が形成される。なお、前記した入射角度θは30度に限られるものではなく、所定の集光面Pを形成するよう任意に設定することができ、プローブ光のビーム径と光遅延時間から通常20度〜30度が適当である。
【0039】
試料Sが比較的均一であり位置によって特性に相違が無い場合、あるいは無視できる程度である場合には、この励起光及びプローブ光の入射によって得られる線状の集光面Pの線方向の各位置の状態は、各応答時間に対応する状態を表している。したがって、線状の集光面Pの線方向の各位置から発せられる測定光には、各応答時間に対応する状態の情報が含まれ、この測定光を分光することによって各応答時間における波長成分を求めることができる。
【0040】
集光面Pから試料Sを透過した透過光を、レンズ系で適当な大きさに整形し、円筒形レンズでスリット3a上に絞って、光遅延時間の時間軸に沿った線状又は帯状とする。分光手段3bは、この光遅延時間の時間軸に沿って線状又は帯状に延びる測定光を所定の波長範囲で分光する。なお、図2では分光を示す矢印は一部のみを模式的に表示している。検出器4は二次元検出器4aを備え、この二次元検出器4aの一方の軸方向(図中のx軸方向)を分光手段3bの光遅延時間の時間軸に対応させ、他方の軸方向(図中のy軸方向)を分光手段3bの波長軸に対応させ、分光した光を時間軸と波長軸の二次元で検出する。これによって、二次元検出器4aは、光遅延時間と波長の二つの測定要素について同時に測定することができ、検出された検出信号は、光遅延時間を実時間としてスペクトルを二次元でイメージングすることができる。
【0041】
図3は反射光を検出する構成例であり、図2の透過光と同様にして、光遅延時間と波長の二つの測定要素について同時に測定し、光遅延時間を実時間としてスペクトルを二次元でイメージングすることができる。
図4は光遅延時間とスペクトルの二次元イメージングの一例であり、x軸方向に時間軸をとり、y軸方向に波長軸をとり、z軸方向に強度をとっている。図4(a)中において、実線で示す曲線は各時間(t1〜t6)におけるスペクトルを示し、図4(b)中において、実線及び破線で示す曲線は各波長(λ1〜λ7)における時間変化を示している。なお、図示する各時間(t1〜t6)及び各波長(λ1〜λ7)は一例であって、測定範囲内で任意に選択することができる。また、図4は曲線で表示しているが、曲線による表示に限らず、曲面によって表示することもできる。
【0042】
また、分光手段と二次元検出器は、CCD検出器分光器(例えば、1024ピクセル×1024ピクセル)によって一つの装置で構成することができ、例えば、CCDのx軸方向に励起光照射後の光遅延時間に対する情報を、CCDのy軸方向に分光器によって分光された波長の情報を一度に書き込む。なお、CCDにおいてデータの蓄積は、CCDの露光時間によって定まる。
【0043】
また、測定するスペクトル範囲は、例えば一例として400nm〜800nmとすることができ、このスペクトル範囲は分光器のグレーティングを交換することによって調整することができる。
【0044】
図5はプローブ光と測定光の関係を説明するための概略信号図である。図5(a)は、レーザー光源から発生するパルス幅がフェムト秒単位のフェムト秒レーザーパルスを示し、パルス幅は例えば約100fs(フェムト秒)で、パルスの繰り返しは約1msである。図5(b)は、励起光及びプローブ光の照射によって試料から得られる測定光の時間変化を示している。光化学反応の初期過程や、半導体中に光励起されたキャリアの緩和現象等の光誘起現象は、数十フェムト秒から数十ピコ秒の時間内で起きる超高速現象である。本発明による実時間分光では、前記した光遅延時間を用いることによって、この約10ps(ピコ秒)の超高速の時間変化を測定することができる。
【0045】
また、本発明は、約10ps(ピコ秒)程度の超高速の時間変化だけでなく、これよりの長い時間変化についても対応することができる。図5(c)〜(e)はこの比較的に長い時間変化の測定例を示している。
【0046】
図5(c)は、励起光及びプローブ光の照射によって試料から得られる測定光の時間変化が比較的に長い例を示している。本発明による実時間分光では、励起光及びプローブ光との間の光遅延時間を調整することによってプローブ光の照射タイミングを変え、比較的に長い時間変化中の約10ps(ピコ秒)の時間変化を測定することができる。図5(d),(e)は、時刻t1及びt2から約10ps(ピコ秒)の時間変化を示し、本発明による実時間分光において、プローブ光に光遅延時間を含ませることによってこの時間変化を一測定で得ることができる。
【0047】
なお、図5(c)の測定光の時間変化は、図5(d)(図5(e))に示すパルス光を所定の時間間隔(例えば、約10psの単位)で繰り返すことによって求めることができる。
【0048】
なお、この時間調整は、プローブ光あるいは励起光の何れか一方の光路上に光学遅延ステージを配置する構成、あるいは、プローブ光と励起光の両方の光路上に光学遅延ステージを配置する構成とすることもできる。
【0049】
なお、時間変化を測定する時刻を変更する場合には、光学遅延ステージによってプローブ光と励起光との間で時間調整を行う。例えば、時刻t1からの測定変化に代えて、時刻t2から約10ps(ピコ秒)の時間変化を測定するには(図5(e))、光学遅延ステージ2gの光路長を時刻t1と時刻t2の時間間隔に対応する長さだけ延ばすことによって、プローブ光と励起光との間で時間調整を行う。
【0050】
なお、サファイアや石英基板上や水等の自己位相変調によって得られたフェムト秒白色光は、試料上において正のチャープが生じ、波長による群速度の相違が生じる。この正のチャープは、光が分散媒質を通る際に、分散媒質の屈折率が短波長ほど大きいため、サファイア基板上では同時に発生した白色光が試料到達の際に短波長ほど遅れて到達する現象である。そこで、試料Sを挟んで偏光板2e1及び偏光板2e2を配置し、この偏光を互いに直角にしてカー効果を用いてこのチャープ量を測定し、測定したチャープ量に基づいて測定結果をデータ補正することによってフェムト秒領域での測定誤差を補正することができる。
【0051】
次に、本発明の第2の態様について説明する。図6,図7は、第2の態様において、それぞれ構成を説明するための概略図、分光を説明するための概略図である。なお、第1の態様と共通する部分については説明を省略する。
【0052】
図6において、本発明の第2の態様の実時間分光装置1は、第1の態様と同様に、試料Sに励起光とプローブ光とを照射する照射手段2と、照射光によって試料Sから得られる光を時間軸及び波長軸に分光する分光手段3と、分光された時間軸及び波長軸の信号を二次元で検出する検出手段4を備える。
【0053】
前記した第1の態様は、試料Sに対して励起光とプローブ光とを線状に集光し、試料Sに対する入射角度によって、試料S上に同時に照射される光に光遅延時間を形成し、この光遅延時間によって時間分解を行う態様であるのに対して、この第2の態様は、試料Sに対して励起光とプローブ光とを点状に集光するものであり、この際、プローブ光は照射前に時間遅れを形成する時間遅れ形成手段を通し、この時間遅れの形成によって点状の集光面に形成されるプローブ光に光遅延時間を持たせ、これによって時間分解を行う。
【0054】
第2の態様は、集光面の点状光を光遅延時間の方向に展開し、展開した光を分光して波長成分を測定することによって、時間分解とスペクトル測定を同時に行う態様であり、この第2の態様によれば、試料上の一点において測定することができるため、試料に位置によって特性の相違がある不均一な試料の場合には特に有効に機能し、第1の態様のように、照射光の集光位置が異なることによって生じる測定データに含まれる不均一性を防ぐことができる。
【0055】
なお、第2の態様の照射手段2は、試料Sに対して励起光とプローブ光とを点状に集光する構成として、励起光を試料S上に集光する集光レンズ2j2、及びプローブ光を試料S上に集光する集光レンズ2j1を備え、光遅延時間を形成する構成として試料Sに照射する前のプローブ光の光路上に時間遅れを形成する時間遅れ形成手段2iを備え、集光面の点状光を光遅延時間の方向に展開する構成として、試料Sと分光手段3との間に集光レンズ2j3を備える。
【0056】
この構成によって、コリメートされた励起光は集光レンズ2j2によって試料S上に集光され、湾曲ミラー2c2等の光学系でコリメートされたフェムト白色光は、時間遅れ形成手段2iによって光遅延時間が形成された後、集光レンズ2j1によって試料S上に点状に集光される。この時間遅れ形成手段2iは、形成する時間遅れの幅を異ならせることによって、試料S上の集光点でのプローブ光に光遅延時間を持たせることができる。
【0057】
この励起光で励起され、光遅延時間を有するプローブ光によって取り出された測定光は、分光手段3のスリット3a上に線状に絞られた後、分光素子3bで分光され、検出器4で検出される。
【0058】
図7は、時間遅れ形成手段による時間遅れの形成及び光遅延時間の形成状態、及び試料Sから得られる測定光の時間軸及び波長軸での検出状態を示している。図7において、励起光は図示しない集光レンズによって試料S上の集光点に集光させ、他方、プローブ光は、時間遅れ形成手段2iによって時間遅れを形成させると共に、形成する時間遅れの幅を異ならせ、集光レンズ2j1によって試料S上に集光させる。
【0059】
時間遅れ形成手段2iは、例えばエシェロンと呼ばれる光学素子を用いることができる。エシェロンは複数の光路長を備え、エシェロンに入射したパルス光は、パルス幅が拡張されると共に、光路長によって出射時に時間差が形成され、試料Sに集光するプローブ光に光遅延時間を与える。例えば、長さ約30mm,幅約25mmの光学材に、各段の長さが約30μmで幅が約25μmのピクセルを約1000個形成して成るエシェロンに、パルス幅が約150fs(フェムト秒)のプローブ白色光を入射すると、約5ps(ピコ秒)にパルス幅が拡張されたプローブ白色光が出射される。
【0060】
この光遅延時間の形成は、プローブ光にエシェロンの横方向に沿って光遅延時間を与えることができる。図7において、エシェロンの右端から出射される光は遅延されたパルス幅の初期の光に対応し、エシェロンの左端から出射される光は遅延されたパルス幅の後期の光に対応する。
【0061】
エシェロンの幅方向に遅延されたパルス光は、集光レンズ2j1によって、励起光が集光されている試料S上の点に集光される。試料S上の点に集光したプローブ光は再び光遅延時間に沿って広がる。集光レンズ2j3は、光遅延時間に沿って広がる光を、集光した後コリメートし、分光器及び検出器に導く。ここで、分光器が備えるスリット(図示していない)は、光遅延時間に沿って入射光を絞り、時間軸に線状に延びる光を分光する。検出器4は、第1の態様と同様に、二次元検出器4aを用い、この二次元検出器の一方の軸方向(図中のx軸方向)を分光器の光遅延時間の時間軸に対応させ、他方の軸方向(図中のy軸方向)を分光器の波長軸に対応させ、分光した光を時間軸と波長軸の二次元で検出する。これによって、二次元検出器は、光遅延時間と波長の二つの測定要素について同時に測定することができ、検出された検出信号は、光遅延時間を実時間としてスペクトルを二次元でイメージングすることができる。
【0062】
次に、本発明の第3の態様について説明する。図8,図9は、第3の態様において、それぞれ構成を説明するための概略図、分光を説明するための概略図である。なお、第1の態様と共通する部分については説明を省略する。
【0063】
図8において、本発明の第3の態様の実時間分光装置1は、第1の態様と同様に、試料Sに励起光とプローブ光とを照射する照射手段2と、照射光によって試料Sから得られる光を時間軸及び波長軸に分光する分光手段3と、分光された時間軸及び波長軸の信号を二次元で検出する検出手段4を備える。
【0064】
前記した第1の態様は、試料Sに対して励起光とプローブ光とを線状に集光し、プローブ光の試料Sに対する入射角度によって、試料S上に同時に照射されるプローブ光に光遅延時間を形成し、この光遅延時間によって時間分解を行う態様であるのに対して、この第3の態様は、試料Sに対して励起光とプローブ光とを同じく線状に集光するものであり、この際、プローブ光及び/又は励起光は照射前に時間遅れを形成する時間遅れ形成手段を通し、この時間遅れの形成によって線状の集光面に形成されるプローブ光及び/又は励起光に光遅延時間を持たせ、これによって時間分解を行う態様である。
【0065】
なお、第3の態様では、時間遅れ形成手段を通して時間遅れを形成する光として、励起光とプローブ光の何れか一方、あるいは励起光とプローブ光の両方とすることができる。
【0066】
以下では、励起光を時間遅れ形成手段に通すことによって励起光に時間遅れを形成する構成について説明するが、プローブ光を時間遅れ形成手段に通すことによってプローブ光に時間遅れを形成する構成、あるいは励起光とプローブ光の両方を時間遅れ形成手段に通すことによって励起光及びプローブ光に時間遅れを形成する構成についても同様とすることができる。
【0067】
第3の態様の照射手段2は、光遅延時間を形成する構成として試料Sに照射する前の励起光の光路上に時間遅れを形成する時間遅れ形成手段2iを備え、時間遅れ形成手段2iを通した励起光を円筒形レンズ2h2によって線状に形成し、試料S上に照射されるプローブ光に重ねて集光する。
【0068】
この構成によって、励起光は時間遅れ形成手段2iによって時間遅れが形成された後、円筒形レンズ2h2によって線状に形成され、試料S上に集光される。一方、湾曲ミラー2c2等の光学系でコリメートされたフェムト白色光は、円筒形レンズ2h1によって試料S上に集光される。この時間遅れ形成手段2iは、形成する時間遅れの幅を異ならせることによって、試料S上の集光点での励起光に光遅延時間を持たせることができる。
【0069】
光遅延時間を有する励起光で励起され、プローブ光によって試料Sから取り出された測定光は、分光手段3のスリット3a上に線状に絞られた後、分光素子3bで分光され、検出器4で検出される。
【0070】
図9は、時間遅れ形成手段による時間遅れの形成及び光遅延時間の形成状態、及び試料Sから得られる測定光の時間軸及び波長軸での検出状態を示している。図9において、プローブ光は、試料S上に集光させ、他方、励起光は、時間遅れ形成手段2iによって時間遅れを形成させると共に、形成する時間遅れの幅を異ならせた後、試料S上に線状に集光させる。
【0071】
時間遅れ形成手段2iは、第2の態様と同様のエシェロン等の光学素子を用いることができ、形成された時間遅れは、励起光にエシェロンの横方向に沿って光遅延時間を与える。図9において、エシェロンの左端から出射される光は遅延されたパルス幅の初期の光に対応し、エシェロンの右端から出射される光は遅延されたパルス幅の後期の光に対応する。
【0072】
エシェロンの幅方向に遅延されたパルス光は、円筒形レンズ2h2によって、プローブ光が集光されている試料S上の点に線状に集光される。分光器が備えるスリットは、光遅延時間に沿って入射光を絞り、時間軸に線状に延びる光を分光する。検出器4は、第1の態様と同様に、二次元検出器4aを用い、この二次元検出器の一方の軸方向(図中のx軸方向)を分光器の時間軸に対応させ、他方の軸方向(図中のy軸方向)を分光器の波長軸に対応させ、分光した光を時間軸と波長軸の二次元で検出する。これによって、二次元検出器は、光遅延時間と波長の二つの測定要素について同時に測定することができ、検出された検出信号は、光遅延時間を実時間としてスペクトルを二次元でイメージングすることができる。
【0073】
なお、エシェロンをプローブ光の光路上に設けて、プローブ光に光遅延時間を形成する態様とすることもできるが、プローブ光は通常波長範囲が広いため、エシェロンをプローブ光の光路上に設ける構成ではエシェロンを通過する際に正にチャープが生じ易く、このチャープを補正する必要が生じる。これに対して、励起光の光路上にエシェロンを設ける構成によれば、励起光は単色光であるため、エシェロンを通過する際のチャープの発生を抑えることができるという利点がある。
【0074】
第1の態様によれば、プローブ光及び/又は励起光の入射角度を調整することによって、測定する時間幅を調整することができる。
第2の態様によれば、試料上に一点に励起光及びプローブ光を集光することによって、試料上の一点の測定データを得ることができ、試料の位置による不均一性を除くことができ、位置によって特性や状態が異なる試料や、微小な試料や分析領域に適用することができる。
【0075】
また、本発明によれば、分光測定において、時間分解とスペクトル測定を同時に行うことによって、測定時間を短縮することができる。また、長時間測定によるレーザーの不安定性や、長時間のレーザー照射による試料の劣化の問題を解決し、安定したレーザー状態で測定することができ、また、レーザー照射による試料の劣化を最小限に抑えることができる。
【0076】
また、測定対象が固体であっても、フォトクロミズムや光重合のように熱的に不可逆な現象の過渡現象を測定することができる。
本発明の実時間分光を化合物の光構造変化の動的過程を解析に適用することによって、光メモリー・光スイッチングなどの光機能性材料の物性の評価や、これら材料の設計指針の確立や、あるいは、強励起に弱い生体系試料の動的な過程の研究に応用し、短時間で時間分解したスペクトルを測定することができる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の実時間分光によれば、分光測定において、時間分解とスペクトル測定を同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の態様の構成を説明するための概略図である。
【図2】本発明の第1の態様の透過光による分光を説明するための概略図である。
【図3】本発明の第1の態様の反射光による分光を説明するための概略図である。
【図4】本発明の第1の態様の時間分解及びスペクトルの測定データの概略例である。
【図5】本発明の第1の態様のプローブ光と測定光の関係を説明するための概略信号図である。
【図6】本発明の第2の態様の構成を説明するための概略図である。
【図7】本発明の第2の態様の分光を説明するための概略図である。
【図8】本発明の第3の態様の構成を説明するための概略図である。
【図9】本発明の第3の態様の分光を説明するための概略図である。
【図10】円筒型レンズの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 実時間分光装置
2 照射手段
2a レーザー光源
2b ビームスプリッタ、
2c ミラー
2d 自己位相変調手段
2e 偏光板
2f 波長変換素子
2g 光学遅延ステージ
2h 円筒形レンズ
2i 時間遅れ形成手段
2j 集光レンズ
3 分光手段
3a スリット
3b 分光素子
4 検出手段
4a 二次元検出器
S 試料
Claims (10)
- 複数の波長を含むフェムト秒白色光のプローブ光及び/又は特定波長パルス光の励起光とを試料に重ねて照射する照射手段と、
前記照射によって試料から得られる透過光又は反射光を時間軸及び波長軸の二次元に分光する分光手段と、
前記二次元の分光を二次元的に検出する検出手段と、
前記試料を挟んで偏光方向が互いに直角となるように配置した2枚の偏光板とを備え、
前記プローブ光及び/又は励起光は、試料面上において光遅延時間を有し、
前記分光手段は、当該光遅延時間を前記時間軸として分光し、
当該光遅延時間の時間幅を実時間で分光し、
当該時間幅を前記偏光板によって得られたチャープ量に基づいて補正することを特徴とする、実時間分光装置。 - 複数の波長を含むフェムト秒白色光のプローブ光及び/又は特定波長パルス光の励起光とを試料に重ねて照射する照射手段と、
前記照射によって試料から得られる透過光又は反射光を時間軸及び波長軸の二次元に分光する分光手段と、
前記二次元の分光を二次元的に検出する検出手段と、
前記励起光路上に配置した時間遅れ形成手段とを備え、
前記プローブ光及び/又は励起光は、試料面上において光遅延時間を有し、
前記分光手段は、当該光遅延時間を前記時間軸として分光し、
当該光遅延時間の時間幅を実時間で分光することを特徴とする、実時間分光装置。 - 複数の波長を含むフェムト秒白色光のプローブ光及び/又は特定波長パルス光の励起光とを試料に重ねて照射する照射手段と、
前記照射によって試料から得られる透過光又は反射光を時間軸及び波長軸の二次元に分光する分光手段と、
前記二次元の分光を二次元的に検出する検出手段と、
前記励起光路上に配置した時間遅れ形成手段と、
前記試料を挟んで偏光方向が互いに直角となるように配置した2枚の偏光板とを備え、
前記プローブ光及び/又は励起光は、試料面上において光遅延時間を有し、
前記分光手段は、当該光遅延時間を前記時間軸として分光し、
当該光遅延時間の時間幅を実時間で分光し、
当該時間幅を前記偏光板によって得られたチャープ量に基づいて補正することを特徴とする、実時間分光装置。 - 前記照射手段は、フェムト秒の単位のパルス幅を有するフェムト秒レーザーパルスを発生する光源と、前記フェムト秒レーザーパルスから励起光を形成する波長変換素子と、前記フェムト秒レーザーパルスから複数波長を含む白色光のプローブ光を形成する自己位相変調素子とを備えることを特徴とする、請求項1から3の何れか一つに記載の実時間分光装置。
- 前記照射手段は、前記プローブ光及び励起光を試料面上に線状又は帯状に集光すると共に、前記プローブ光又は前記励起光の何れか一方を当該線状又は帯状の集光面においてその長さ方向に光路差を有して入射し、他方を当該線状又は帯状の集光面においてその長さ方向に光路差がないように入射し、前記入射によって集光面上に光遅延時間の時間差を形成することを特徴とする、請求項1に記載の実時間分光装置。
- 前記照射手段は、前記プローブ光又は前記励起光を前記集光面の法線方向に対して所定角度を有して入射することによって、前記集光面の長さ方向に前記光路差を形成することを特徴とする、請求項5に記載の実時間分光装置。
- 前記照射手段は、前記プローブ光に時間遅れを形成する時間遅れ形成手段と、前記時間遅れ形成手段を通過したプローブ光を試料面上に点状に集光する光学系と、前記励起光を試料面上に点状に集光する光学系とを備え、前記分光手段は、試料から得られる光を前記光遅延時間の時間軸に線状又は帯状に分光する光学系とを備えることを特徴とする、請求項1から3の何れか一つに記載の実時間分光装置。
- 前記照射手段は、前記プローブ光に時間遅れを形成する時間遅れ形成手段と、前記時間遅れ形成手段を通過したプローブ光を線状又は帯状に形成し、照射面の長さ方向に垂直に照射する光学系とを備え、前記分光手段は、試料から得られる透過光又は反射光を前記光遅延時間の時間軸に線状又は帯状に分光する光学系とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の実時間分光装置。
- 前記検出手段は二次元検出器を備え、一軸方向の配列によって時間軸の分光を検出し、他軸方向の配列によって波長軸の分光を検出することを特徴とする、請求項1から8の何れか一つに記載の実時間分光装置。
- 前記照射手段は、プローブ光及び/又は励起光を光学遅延させ、励起光とプローブ光との間に時間差を形成して測定時間の調整する光学遅延手段を備えることを特徴とする、請求項1から9の何れか一つに記載の実時間分光装置。
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