JP3944398B2 - 連続鋳造機における鋳型内湯面レベル制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造における鋳型内湯面レベル制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶湯を鋳型に連続的に供給しつつ、鋳片を鋳型から連続的に引抜くことにより鋳造を行う連続鋳造機において、鋳造中の鋳型内湯面レベルの変動は、鋳片の品質(特に、表面の品質)を低下させ、顕著な場合にはブレークアウトを誘発することにもなる。したがって、高品質の鋳片を安定して製造するためには、鋳造中における鋳型内湯面レベルを常に所定レベルに維持し、特に急激な湯面レベルの変動を防止することが重要である。
【0003】
そこで従来は、鋳型内湯面レベルの変動を防止するため、湯面レベルの変動を何らかの手段で検知し、タンディッシュから鋳型への溶湯流入量を増減することにより湯面レベルが一定になるように自動的に制御する方法が採用されている。一方、多くのビレット連続鋳造機のようにタンディッシュ吐出口に流量調整機構を有せず鋳型への注入量一定で鋳造を行う場合には、湯面レベルの変動を何らかの手段で検知し、鋳造速度すなわち鋳片の引抜き速度を増減することにより湯面レベルが一定になるように自動的に制御する方法が採用されている。
【0004】
鋳型内湯面レベルの検出手段としては、γ線方式、画像方式、渦電流センサ方式、銅板温度検知方式などが採用されている。
【0005】
γ線方式は、鋳型の湯面レベル近傍の両サイドにγ線源と放射線センサとを対に設け、放射線の透過強度を測定することにより湯面レベルを求めるものであり、極めて良い応答性を有する方式であるが、人体に有害な放射性物質を線源として使用するため、近年では使用されなくなりつつある。
【0006】
画像方式は、鋳型内湯面の斜め上方に設置したカメラで湯面輝度を俯瞰モニタし、その影像を画像処理して湯面レベルを求めるものであるが、カメラ視野内にオペレータが侵入すると検出不能になる欠点がある。
【0007】
渦電流センサ方式は、一対の発信器とセンサとを鋳型上部に設置し、発信器からの一次磁束により鋳型銅板内に渦電流を発生させ、この渦電流により溶湯に発生する二次磁束をセンサで検出して湯面レベルを測定する方式である。応答性が良好で人体に対し安全であるが、センサ外形寸法が比較的大きく、湯面直上近傍にセンサを設置する必要があるため、ビレット連続鋳造機の小断面の鋳型にはセンサを設置するスペースがなく適用できない。
【0008】
銅板温度検知方式は、鋳型銅板に温度センサ(例えば熱電対)を埋設し、銅板温度の変化を検知することにより、間接的に湯面レベルを把握するものである。この方式は他方式に比べ応答性が劣るという欠点があるが、人体に対し安全で、オペレータの作業性を阻害することがなく、小断面鋳型にも適用でき、センサ自体も安価であることから、近年ビレット連続鋳造機の湯面レベル検出方法の主流となっている。
【0009】
図14に、鋳型銅板内表面から深さDの位置(破線の位置)における鋳片流れ方向の銅板温度分布を模式的に示す。この位置における銅板温度は、湯面レベルの上方から湯面レベルに近づくにしたがって上昇し、湯面レベルのやや下方で最大値となり、さらに下方にいくにしたがい漸次低下する。
【0010】
図14に示すように、銅板温度が鋳片流れ方向に対して上昇傾向を示す位置、すなわち湯面レベル直下の銅板中に温度センサを埋設した場合、この温度センサにより検知される銅板温度(センサ温度)は、湯面が上昇するとその上昇にしたがって温度分布曲線全体が上方に移動するため上昇し、湯面が下降するとその下降にしたがって温度分布曲線全体が下方に移動するため低下する。
【0011】
この特性を利用して湯面レベルを自動的に制御することが一般的に行われている。例えば、タンディッシュから鋳型への溶湯注入量一定のビレット連続鋳造機では、湯面レベルが上昇(すなわちセンサ温度が上昇)すると、鋳造速度(すなわち鋳片引抜き速度)を上昇させ、一方、湯面レベルが下降(すなわちセンサ温度が低下)すると鋳造速度(すなわち鋳片引抜き速度)を低下させて、湯面レベルを一定に維持する自動制御を行っている。
【0012】
このような湯面レベルの自動制御は、具体的には以下の方法で行われる。まず、センサ温度Tsに対する制御目標温度としての設定温度Tcと、鋳片引抜き速度の増減量を求めるための制御ファクタである鋳片引抜き速度増減ロジック(以下、単に「増減ロジック」という。)Lvの係数等を予め定めておく。そして、オンラインで測定したセンサ温度Tsが設定温度Tcより高い場合には鋳片引抜き速度vを上昇させ、逆に低い場合には鋳片引抜き速度vを低下させる。鋳片引抜き速度の増減量Δvは、センサ温度Tsと設定温度Tcとの偏差(ΔT=Ts−Tc)と、増減ロジックLvとから演算される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、連続鋳造機ごとおよび鋳造される鋼種ごとに適正な設定温度Tcおよび増減ロジックLvは異なり、これらの適正値を定めることは容易でなく、従来はオペレータの経験や勘に頼っていた。
【0014】
すなわち銅板温度分布は、鋳型の構造や操業条件(鋳型の銅板材質、鋳型のテーパ量、鋳型冷却水の温度および流速、温度センサの埋設深さ、銅板の表面状態、鋳型潤滑、溶鋼成分および温度、鋳造速度など)によって種々変化する。したがって、図14に模式的に示すように、鋼種Aと鋼種Bとで銅板温度分布が大きく異なる場合、鋼種Aで適正と定めた設定温度Tcや増減ロジックLvが、そのまま鋼種Bで適正とはならず、湯面レベル自動制御が正常に行われなくなる。
【0015】
また、同一の鋼種を鋳造する場合であっても、銅板の表面状態や鋳型潤滑の状態、溶鋼の温度・成分などが操業中に時々刻々変化して銅板内温度分布が変化してしまうため、初期に適正と定めた設定温度Tcや増減ロジックLvをそのまま用い続けると、湯面レベルの制御が正常に行われなくなってしまう場合もある。
【0016】
したがって本来であれば、設定温度Tcや増減ロジックLvは、このような鋼種の変更や操業条件の変化に対応させて都度変更すべきものであるが、変更の手続きが煩雑でその作業は現実的ではない。そのため、操業条件に関係なく、経験的に、もしくは試行錯誤により最大公約数的に定めた値に固定して用いているのが実状である。
【0017】
そのため、操業条件の変化により銅板温度分布が刻々と変化し、初期に定めた設定温度Tcや増減ロジックLvが適正範囲から外れて湯面レベルが不安定となり、鋳片の品質不良や酷い場合にはブレークアウトが発生することが問題となっている。特に近年、生産性向上のため鋳造の高速化が図られているが、高速になるほど自動制御が難しくなり湯面レベルが安定しないことが大きな問題となっている。また、鋳型内における鋳片の凝固状態を健全化するために、旧来の単一テーパ鋳型の代わりに多段テーパ鋳型やパラボリックテーパ鋳型を採用するケースが増加している。単一テーパ鋳型の場合には、湯面レベルが上下いずれの方向に移動しても鋳片の凝固収縮量に対する鋳型テーパ量は一定に維持されるが、多段テーパ鋳型やパラボリックテーパ鋳型の場合には、湯面レベルの上昇・下降により凝固収縮量に対する鋳型テーパ量が変化する。したがって、近年多用されている多段テーパ鋳型やパラボリックテーパ鋳型においては、湯面レベルの安定維持が一層重要なものとなっている。
【0018】
そこで本発明の目的は、操業条件が変化しても鋳型内湯面レベルが安定に維持できる、低コストの制御方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできる本発明の要旨は以下の通りである。第1の発明は、溶湯を鋳型に連続的に供給しつつ、鋳片を鋳型から連続的に引抜く連続鋳造機での鋳造に際し、鋳型の測温値と制御目標温度との偏差を小さくするように、鋳片引抜き速度又は溶湯供給量を、前記偏差と、鋳片引抜き速度増減ロジック又は溶湯供給量増減ロジックとから演算される増減量分だけ増減することにより鋳型内湯面レベルを制御する方法において、鋳型の測温値の時系列データからなる母集団から、逐次標本データを抽出し、この標本データについて基本統計量を計算し、及び/又はヒストグラムを作成し、前記基本統計量のうちから選択した少なくとも一の指標及び/又は前記ヒストグラムについて適正パターンである正規分布曲線からのずれが許容できない場合には、前記少なくとも一の指標及び/又はヒストグラムを適正パターンである正規分布曲線に近づけるように前記制御目標温度を修正する、及び/又は、前記少なくとも一の指標及び/又はヒストグラムのすそ広がりの程度が正常な場合に比べて許容できない場合には、前記鋳片引抜き速度増減ロジック又は溶湯供給量増減ロジックを修正することを特徴とする連続鋳造機における鋳型内湯面レベル制御方法である。
【0020】
第2の発明は、前記少なくとも一の指標及び/又はヒストグラムについての正常パターンである正規分布曲線からの歪みにより鋳型内の異常を検知する請求項1に記載の連続鋳造機における鋳型内湯面レベル制御方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、さらに詳細に説明する。
【0022】
本発明の湯面レベル制御方法の実施に係る連続鋳造機は、例えば、タンディッシュから鋳型への溶湯注入量が一定のビレット連続鋳造機であり、鋳型の銅板内であって、鋳型銅板内表面から所定の深さに温度センサとして熱電対が埋設されている。本発明の制御方法を実施するためには、後述するように、1個の温度センサのみを使用してもよいし、異なるレベルに設けられた複数個の温度センサを使用してもよい。
【0023】
先ず、1個の温度センサを使用して本発明の制御方法を実施する場合について説明する。
【0024】
予め、初期値として熱電対(温度センサ)による測温値に対する制御目標温度(設定値)Tcと制御ファクタである鋼片引抜き速度増減ロジックLcの係数等を定め、制御用コンピュータに入力しておく。鋳造を開始した後、熱電対(温度センサ)による測温値Tsと制御目標温度Tcとの偏差ΔT(=Ts−Tc)を逐次計算する。次に、偏差ΔTと増減ロジックLcとから鋳片引抜き速度増減量分Δvを演算する。そして、鋳片引抜き速度(すなわち鋳造速度)vをこのΔvだけ増減する(v→v+Δv)。これにより偏差ΔTが零に近づく(すなわち、測温値Tsが制御目標温度Tcに近づく)ため、鋳型内湯面レベルが一定に制御される。
【0025】
さらに、測温値Tsを連続的に制御用コンピュータ等に蓄積しておき、この測温値Tsの時系列データを統計的に処理し、その統計データに基づいて制御目標温度(設定値)Tcを修正することにより、鋳型内湯面レベルの制御の精度をさらに向上させることができる。以下、統計的処理の方法とその統計データによる制御目標温度(設定値)Tcの修正方法について詳細に説明する。
【0026】
図1は、鋼種Aを鋳造する場合の、熱電対(温度センサ)埋め込み深さ位置における銅板温度分布と設定温度(制御目標温度)Tcとの関係を示す図である。また図2は、鋼種Aを鋳造中に熱電対(温度センサ)により連続的に測定され、制御コンピュータに集積された測温値の時系列データからなる母集団から0.5秒ごとに3分間分の標本データを抽出(サンプリング)し、この標本データをヒストグラムとしたものである。この場合、設定温度Tcが適正であったため、得られたヒストグラムは、その頂点の位置(温度)が設定温度Tcとほぼ一致し、かつ正規分布曲線に近似したものとなっている。
【0027】
つぎに図3は、鋼種Aを上記図1と同一の操業条件で鋳造する場合であるが、設定温度Tcのみを上記適正値より高く設定した場合における、銅板温度分布と設定温度(制御目標温度)Tcとの関係を示す図である。設定温度Tcを図1の場合より高く設定したことにより、銅板温度分布全体が上方に移動し、それに伴い湯面レベルも上記図1の場合に比べ高くなっている。そして図4に、上記と同じ方法で測温値の標本データをヒストグラム化したものを示す。この場合、設定温度Tcを適正値より高くし過ぎたため、ヒストグラムは、その頂点の位置(温度)が設定温度Tcに一致せず、高温側に大きく歪曲し、頂点の高さ(頻度)も低下している。
【0028】
つぎに図5は、鋼種Aを上記図1、図3と同一の操業条件で鋳造する場合であるが、設定温度Tcのみを図3とは逆に上記適正値より低く設定した場合における、銅板温度分布と設定温度(制御目標温度)Tcとの関係を示す図である。設定温度Tcを図1の場合より低く設定したことにより、銅板温度分布全体が下方に移動し、それに伴い湯面レベルも図1の場合に比べ低くなっている。そして図6に、図2、4と同じ方法で測温値の標本データをヒストグラム化したものを示す。この場合、設定温度Tcを適正値より低くし過ぎたため、ヒストグラムは、その頂点の位置(温度)が設定温度Tcに一致せず、低温側に大きく歪曲し、頂点の高さ(頻度)も低下している。
【0029】
また図7は、異なる鋼種である鋼種Aおよび鋼種Bをそれぞれ鋳造する場合の、銅板温度分布と設定温度(制御目標温度)Tcとの関係を示す図である。なお、設定温度Tcは両鋼種に対し同じ値を用いた。また図8に、図2、4、6と同じ方法で、鋼種Aおよび鋼種Bそれぞれの測温値の標本データをヒストグラム化したものを示す。この場合、設定温度Tcは鋼種Aに対して適正値としたため、鋼種Aのヒストグラムは、その頂点の位置(温度)が設定温度Tcとほぼ一致し、かつ正規分布曲線に近似したものとなっている。一方、鋼種Bに対しては設定温度Tcは適正値から外れていたため、鋼種Bのヒストグラムは、その頂点の位置(温度)が設定温度Tcに一致せず、高温側に大きく歪曲し、頂点の高さ(頻度)も低下している。
【0030】
以上より明らかなように、操業条件によってそれぞれ適正な設定温度Tcが異なり、設定温度Tcが適正な場合にはヒストグラムは正規分布曲線に近似したものとなるが、設定温度Tcが適正値から外れるほどヒストグラムが歪曲する。
【0031】
〔第1実施形態〕
したがって、1個の温度センサを使用して制御目標温度(設定値)Tcを修正する方法の一実施形態として、例えば連続鋳造機の運転室において制御用コンピュータ画面上に上記ヒストグラムを表示し、視覚的にモニタできるようにしておく。ヒストグラムの表示は一定時間ごとに自動的に更新されるようにしておくとよい。そして、オペレータがヒストグラムを見て正規分布曲線からのずれが許容できないと判断した場合には、適正パターンである正規分布曲線に近づくように設定温度Tcを調整する。調整後、ヒストグラムの形状の変化を観察し、必要であれば再度Tcを調整する。このように、ヒストグラムの形状の変化を観察しながら微調整が行えるので、容易に最適な設定温度Tcに到達することができ、安定した湯面レベルの維持が可能となる。
【0032】
これに対し従来は、設定温度Tcが適正であるか否かを湯面レベルの変動状況から判断するという、オペレータの経験や勘に頼っていたため、オペレータ間の経験や技量の相違により設定温度Tcの調整に関してばらつきが生じ、湯面レベルの安定化が図れなかった。
【0033】
また、初期に適正な設定温度Tcに設定した場合であっても、鋳造条件の変動(例えば溶鋼温度の変動、鋳造速度の変動)に伴い適正なものでなくなってしまう場合がある。この場合には、前述のヒストグラムの形に崩れを生じ、初期に設定した設定温度Tcがもはや適正なものでないことが容易に判断できるので、上記と同様の方法により設定温度Tcの調整作業を行うことができる。
【0034】
なお、ヒストグラムに代えて、標本データについての基本統計量(標本数、合計、平均、中央値、最頻値、最大、最小、範囲、分散、標準偏差、標準誤差、歪度、尖度など)を計算し、この基本統計量のうちから少なくとも一の指標、例えばヒストグラムの頂点の位置を表す最頻値やヒストグラムの歪曲の程度を表す歪度などの数値を選び、これらの数値を経時グラフ化して表示し、モニタすることによっても同様の制御が可能である。また、これらの経時グラフと前記ヒストグラムとを併用することもオペレータの判断をさらに客観化かつ的確化できるため好ましい。
【0035】
また、上記説明においては、設定温度Tcの修正についてのみ説明したが、設定温度Tcが適正であっても、増減ロジックLcが適切でなければ湯面レベルがハンチングするなど湯面を安定に維持できない場合が生じる。この場合には、例えば正常な場合に比べヒストグラムがすそ広がりになるなどの変化が現れる。したがって、このような場合には、増減ロジックLcを修正することもできる。
【0036】
このように本発明は、正常な鋳造状態が維持されている場合における湯面レベル制御の精度向上に寄与するものであるが、さらに以下のように、鋳型内で異常が生じた場合においても早期かつ的確に異常の検知をおこなうことができ、より実効のある湯面レベル制御が可能となる。
【0037】
すなわち鋳型内において、例えば鋳片と鋳型との焼き付き、鋳片と鋳型との間の摩擦抵抗増大によるシャクリ現象、溶湯流入異常などの異常現象が生じると、図12および図13に示すように、正常であったヒストグラムの形状に歪みが生じる。図12は鋳造中の鋳片にシャクリが生じているときのヒストグラムの例であり、図13は溶湯流入異常により湯面が乱れているときのヒストグラムの例である。したがって、オペレータがヒストグラムや基本統計量から選択した少なくとも一の指標の変化をモニタすることにより、早期かつ的確に異常の検知が可能となり、簡易かつ確実にブレークアウトの予知ができる効果もある。
【0038】
〔第2実施形態〕
制御目標温度(設定値)Tcの修正方法の別の実施形態として、温度センサを複数個使用してもよい。図9〜11は温度センサAおよびBの2個の温度センサを併用した場合について示した図である。図9に示すように、温度センサAをメインのセンサとして設定温度(制御目標温度)Tcに制御しつつ、温度センサBをサブのセンサとして参考にしながら湯面レベル制御を行うものである。図10および図11に、温度センサAおよびBそれぞれによる測温値Ts、Ts’の標本データのヒストグラムを示す。図10は設定温度Tcが適正な場合であり、温度センサA、Bともヒストグラムは正規分布曲線に近いものとなっている。図11は設定温度が適正値より高すぎる場合であり、温度センサAのヒストグラムは高温側に歪曲し、かつ頂点の高さが低下している。また、温度センサBのヒストグラムは高温側に移動し、頂点の高さが上昇して尖った曲線になっている。
【0039】
したがって、複数の熱電対による測温値の標本データを統計処理したヒストグラムや基本統計量のうちから選択された少なくとも一の指標(例えば、最頻値、歪度、尖度など)を表示することによって、より的確に設定値Tcの修正を行うことができる。
【0040】
(第3実施形態)
ヒストグラムや基本統計量から選択された少なくとも一の指標の表示に代えて(あるいは加えて)、当該少なくとも一の指標(例えば最頻値、歪度、尖度など)を選択し、この指標を適正値に近づけるための設定値Tcや増減ロジックLcを自動修正するためのシステムを構築し、このシステムを用いることによりさらに精度の高い湯面レベル制御を行うことができる。
【0041】
さらに、上記指標を用いて自動警報システムを構築し、この自動警報システムを用いることにより上述した種々の鋳型内異常の検知を自動的に行うことができ、警報装置や操業の自動停止装置と連動させ、湯面レベル制御をより実効のあるものとすることが可能となる。
【0042】
これに対し従来のブレークアウト予知装置は、多数の温度センサや複雑なロジックを必要とし、しかも、拘束性(鋳片と鋳型との焼き付きを原因とする)ブレークアウトしか予知できず、溶湯流入の異常による湯面の乱れは検知できなかった。
【0043】
なお、従来すでに多くのビレット連続鋳造機において銅板温度検知式の湯面レベル制御システムが採用されているため、これらの連続鋳造機においては、既存の温度センサをそのまま流用できることから、低コストで本発明の制御方法を導入でき、精度の高い湯面レベル制御が容易かつ安価に達成できる。
【0044】
すなわち、従来の銅板温度検知式の湯面レベル制御では、通常、鋳型銅板内の異なるレベルに3ないし4個の温度センサを埋設し、上位の温度センサは湯面レベルの異常上昇の検知、中位の温度センサは湯面レベル制御、下位の温度センサは湯面レベルの異常下降の検知のためにそれぞれ用いている。本発明の湯面レベル制御方法に適用するため、これらの温度センサから任意に1個又は複数個の温度センサを選択して流用することができる。例えば、第1実施形態を実施するため、中位の温度センサ1個のみを流用してもよいし、第2実施形態を実施するため、中位の温度センサをメインのセンサとし、下位の温度センサをサブのセンサとして流用してもよい。もちろん、これら従来の温度センサとは別に、本発明の制御方法を実施するための専用の温度センサを設けてもよい。
【0045】
なお、上記実施の形態では、溶湯流入量一定で鋳片引き抜き速度を調整することによる湯面レベル制御に適用した例のみを説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、鋳片引き抜き速度一定で溶湯流入量を調整する場合についても、同様に適用できるものである。
【0046】
また、上記実施の形態では、鋳型の材質として銅板のみ、鋳造される材料として鋼のみについて説明したが、本発明はこれらに限られるものではなく、目的に応じて各種金属を適宜選択できるものである。
【0047】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明により、鋳造される金属の種類や鋳造条件が変化しても、簡易かつ容易に精度の高い鋳型内湯面レベルの制御が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】銅板温度分布と設定温度(制御目標温度)Tcとの関係を示す図である(Tcが適正な場合)。
【図2】図1の場合において、測温値の時系列データからなる母集団から抽出された標本データのヒストグラムである。
【図3】銅板温度分布と設定温度(制御目標温度)Tcとの関係を示す図である(Tcが適正値より高い場合)。
【図4】図3の場合において、測温値の時系列データからなる母集団から抽出された標本データのヒストグラムである。
【図5】銅板温度分布と設定温度(制御目標温度)Tcとの関係を示す図である(Tcが適正値より低い場合)。
【図6】図5の場合において、測温値の時系列データからなる母集団から抽出された標本データのヒストグラムである。
【図7】異なる鋼種である鋼種Aおよび鋼種Bをそれぞれ鋳造する場合の、銅板温度分布と設定温度(制御目標温度)Tcとの関係を示す図である。
【図8】図7の場合において、各鋼種鋳造時における測温値の時系列データからなる各母集団から抽出された各標本データのヒストグラムを重ねあわせた図である。
【図9】2個の温度センサを用いる場合における、銅板温度分布と設定温度(制御目標温度)Tcとの関係を示す図である。
【図10】図9の場合において、各温度センサによる測温値の時系列データからなる各母集団から抽出された各標本データのヒストグラムを重ねあわせた図である(Tcが適正な場合)。
【図11】図9の場合において、各温度センサによる測温値の時系列データからなる各母集団から抽出された各標本データのヒストグラムを重ねあわせた図である(Tcが適正値より高い場合)。
【図12】鋳造中の鋳片にシャクリが生じているときのヒストグラムの例を示す図である。
【図13】溶湯流入異常により湯面が乱れているときのヒストグラムの例を示す図である。
【図14】鋳型銅板内表面から深さDの位置(破線の位置)における鋳片流れ方向の銅板温度分布を模式的に示す図である。
Claims (2)
- 溶湯を鋳型に連続的に供給しつつ、鋳片を鋳型から連続的に引抜く連続鋳造機での鋳造に際し、鋳型の測温値と制御目標温度との偏差を小さくするように、鋳片引抜き速度又は溶湯供給量を、前記偏差と、鋳片引抜き速度増減ロジック又は溶湯供給量増減ロジックとから演算される増減量分だけ増減することにより鋳型内湯面レベルを制御する方法において、
鋳型の測温値の時系列データからなる母集団から、逐次標本データを抽出し、この標本データについて基本統計量を計算し、及び/又はヒストグラムを作成し、前記基本統計量のうちから選択した少なくとも一の指標及び/又は前記ヒストグラムについて適正パターンである正規分布曲線からのずれが許容できない場合には、前記少なくとも一の指標及び/又はヒストグラムを適正パターンである正規分布曲線に近づけるように前記制御目標温度を修正する、及び/又は、前記少なくとも一の指標及び/又はヒストグラムのすそ広がりの程度が正常な場合に比べて許容できない場合には、前記鋳片引抜き速度増減ロジック又は溶湯供給量増減ロジックを修正することを特徴とする連続鋳造機における鋳型内湯面レベル制御方法。 - 前記少なくとも一の指標及び/又はヒストグラムについての正常パターンである正規分布曲線からの歪みにより鋳型内の異常を検知する請求項1に記載の連続鋳造機における鋳型内湯面レベル制御方法。
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