JP3937685B2 - 高周波磁気特性に優れた電磁鋼板とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ等に使用する電磁鋼板、特に高周波磁気特性に優れた電磁鋼板とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネルギーの観点からモータの高効率化が求められるとともに、機器の軽量コンパクト化を目的に、モータの小型化が要求されている。モータの小型化には、モータの鉄芯材料に使用される鋼板の高周波磁気特性の改善が必要である。
【0003】
従来、鋼板の高周波磁気特性の改善にはSi含有量を増加させるという手段が一般的であったが、この手段は鋼板のコストアップにつながっていた。そのため、Si含有量を増加せず、安価なままでの高周波磁気特性の改善方法が要求されるようになっている。なお、本発明において「高周波」は商用周波数以上の周波数であって、通常のモータに使用される周波数である。たとえば1kHz以上の周波数であるが、特に最近注目されている汎用小型モータ用の範囲の周波数である。
【0004】
これまでにも、磁気特性が優れた無方向性電磁鋼板の製造方法として特開平8−295935号公報に開示する発明がある。この発明は、熱間圧延の仕上圧延終了温度を高温にしてかつ巻取までの冷却を極力徐冷すること、及び冷間圧延後の連続焼鈍において極力徐冷することで鉄損を向上させ、結晶粒径を粗大化させることで磁束密度を改善する技術を開示している。
【0005】
また、安価に製造しうる低級電磁鋼板の製造方法として特開昭58−171527号公報の発明がある。この発明は、C:0.005〜0.08%の材料を用い、熱間圧延での仕上圧延終了温度を640〜860℃にすることで磁束密度を改善し、Nの含有量を80ppm以下に抑えることによって鉄損を向上させる技術を開示している。
【0006】
一方、製鋼コストを抑えて安価に製造するため、C:0.01%以上に規定した低級電磁鋼板の製造方法として特開平10−140242号公報の発明がある。この発明は、このレベルのC含 有量で熱間圧延仕上温度をAr3 変態点以上のγ域とすることによりリング磁気特性を改善し、仕上げ焼鈍後の冷却速度を規制することにより磁気時効劣化を抑制することを開示している。
【0007】
さらに、鋼板の加工コスト低減のために、打ち抜き性の改善が求められている。電磁鋼板における打ち抜き性の改善手段としては、鋼板硬度を高くする方法、鋼板中にMnS等の析出物を分散させる方法、打ち抜き性を良好にする皮膜を付与する方法、などの方法がとられている。
【0008】
このうち、特開平4−323320号公報の発明では打ち抜き性、かしめ性などを確保するために鋼板の硬さをHv 135以上とすることが提案されている。上記の通り、電磁鋼板において、優れた磁気特性もしくは安価さを追求した発明が従来技術として多数公表されているが、それぞれにおいて一長一短があり、現実的に優れた磁気特性と安価さを共に十分に満たす方法は発明されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
高周波磁気特性の向上に関しては、高周波で鋼板を磁化すると渦電流損の急増により鉄損が著しく大きくなるという問題がある。
【0010】
これに対し、従来の高価格の電磁鋼板においては高Si添加、高Al添加による固有抵抗の増加や、鋼板の板厚減少によって高周波域での渦電流損の低減化を図ってきた。
【0011】
しかし、一般に知られているように高Si添加、高Al添加は鋼の精錬時のコストの増加を招き、板厚を薄くすることは鋼板の製造や打ち抜き工数の増加、モータの組立等にかかるコストを大きくし、高価格となってしまう。
【0012】
特開平8−295935号公報の方法により改善される鉄損はヒステリシス損のみであり、高周波において使用される場合に重要となる渦電流損について何ら考慮されておらず、また熱間圧延板や冷間圧延板の徐冷のためにコストが増大する。
【0013】
特開昭58−171527号公報の発明においては高周波鉄損について何ら考慮されるところがないため、鋼板の固有抵抗が低すぎ、今日求められているような高周波での磁気特性に優れた鋼板が得られない。
【0014】
特開平10−140242号公報の発明では経済的に不利にならない範囲として上限0.3%のSi添加を認めているものの、高周波磁気特性から要求されるSi添加量との関係が明らかでなく、Siの過剰添加による鋼板製造のコストアップという結果を招くなど、不完全と言わざるを得なかった。
【0015】
特開平4−323320号公報については、提示されている鋼板硬さでは鉄芯の製造工程に切削 工程が含まれるような場合に切削工具寿命が問題となり、客先の使用まで含めた視点において安価に製造するという目的に反するものとなっていた。
【0016】
ここに、本発明の課題は、製鋼、熱間圧延、冷間圧延さらに鋼板加工まで考慮してコスト上昇を避けつつ、高周波域の磁気特性が向上した電磁鋼板とその製造方法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々の実験により、鋼板の成分値とフェライト粒度をある一定の関係に保つことにより、高周波磁気特性に優れた電磁鋼板が得られることを見い出して本発明に至った。
【0018】
ここに、本発明は下記(a)〜(f)の通りとする。
(a)質量%で、
C :0.015%を超え、0.08%以下
Si:0.8%以下
Mn:0.05%以上、0.80%以下
P :0.06%以下 を含有し、残部Feおよび不純物からなり、かつ、JISG0552に規定するフェライト結晶粒度をgとするとき、
6.77[%C]+15.0[%Si]+4.84[%Mn]+24.2[%P]+4.36≧g………………………(1)
上記(1)式の関係を満たすことを特徴とする電磁鋼板。
(b)不可避不純物としてのN、Sをそれぞれ、質量%で、N:0.007%以下、及びS:0.010%以下に制限する、上記(a)に記載の電磁鋼板。
(c)質量%で、Al:0.05%以下、及びB:0.0003〜0.005%をさらに含む、上記(a)または(b)に記載の電磁鋼板。
(d)板厚が0.30mm以上1.8mm以下である上記(a)ないし(c)のいずれかに記載の電磁鋼板。
(e)質量%で、
C :0.015%を超え、0.08%以下
Si:0.8%以下
Mn:0.05%以上、0.80%以下
P :0.06%以下 を含有し、または、Al:0.05%以下およびB:0.0003〜0.005%をさらに含有し、残部Feおよび不純物からなるスラブに対し、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、次いで仕上焼鈍を行うに際し、熱間圧延では仕上温度をAr3変態点以下として600℃以上で巻き取りを行い、仕上焼鈍では650℃以上900℃以下での再結晶化処理を施し、さらに仕上げ焼鈍に続いて下限300℃上限500℃、処理時間150秒以上の過時効処理を行うことにより、JISG0552に規定するフェライト結晶粒度をgとしたとき、
6.77[%C]+15.0[%Si]+4.84[%Mn]+24.2[%P]+4.36≧g………………………(1)
上記(1)の関係を満たすことを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
(f)上記(e)に規定する過時効処理後の冷間圧延鋼板に伸び率2%以下の調質圧延を行うことを特徴とする、電磁鋼板の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明において各合金元素の添加量を上述のように規定した理由を説明するが、本明細書において「%」は特に断りが無い限り「質量%」である。
【0020】
Cは0.015%を超え、0.08%以下とする。一般的な電磁鋼板はCを0.01%以下とした、いわゆる極低炭素鋼を用いて磁気特性を確保しているが、経済性が優先されるような用途においては、Cを0.015%以下に減少させるための製鋼コストの増大あるいは脱炭焼鈍等の特殊な製造工程は避けることが好ましく、それらの方法では目的とする安価な材料を得ることは難しい。よって本発明ではCの下限を0.015%を超える範囲とする。
【0021】
Cの含有量が増加すると、炭化物析出量が増加し、ヒステリシス損が増大する。Cの含有量の増加は炭化物析出量の増加と共に、固溶Cの増加も招き、これらにより結晶粒が微細化するため、ヒステリシス損はさらに増大する。このため、Cは極力低くすることが良いとされてきた。
【0022】
しかし、C含有量の増加は母材の固有抵抗を高くする効果もあるため、渦電流損が大半を占める高周波の鉄損に対してはむしろこれを利用して磁気特性の良好な鋼板を得ることができる。
【0023】
なお、単純に母材の固有抵抗を高めるという視点ではCは固溶状態で存在させた方が良いが、製品中に固溶Cが残存していると磁気時効の問題を起こすため、本発明においてはCを可能な限り炭化物として析出させる。
【0024】
さらに、この炭化物は打ち抜き加工時において、亀裂の起点となり、また亀裂の伝播を容易にすることにより、打ち抜き性を改善するため、この点からもCは可能な限り炭化物として析出させた方がよい。
【0025】
よって、Cは0.015%を超えるようにすることが望ましい。そうすればコストアップにつながるような他の打ち抜き性向上対策を行うことなく、安価に打ち抜き性に優れた鋼板を得ることができる。
【0026】
以上のようにCの含有量の増加は、安価でかつ高周波鉄損に優れた鋼板を得る上で積極利用でき るが、Cが0.08%を超えて存在すると結晶粒微細化によるヒステリシス損の増大による弊害が大きいため、上限を0.08%とする。
【0027】
Siは高周波鉄損を低下させるのに有効な元素であり、要求される高周波鉄損により必要に応じて0.8%まで添加できるが、0.8%を超えるSiの添加はコストの上昇を招き安価な材料を得ることが困難なため、Siを添加する場合、上限を0.8%とする。より安価に抑えるためには、好ましくは0.5%以下とするのが良い。
【0028】
Pは母材の固有抵抗増加あるいは鋼板の硬度調整のために添加する。ただし、多過ぎると製造工程に切削加工が含まれるような場合には切削金型寿命を劣化させるため、その影響が顕著でない範囲として0.06%以下とする。
【0029】
Mnは母材の固有抵抗を高くして高周波鉄損を低下させるのに寄与するが、多量のMnは硬度を必要以上に高くして切削金型寿命が問題となるため、その悪影響が顕著でない範囲として上限を0.80%とする。
【0030】
また、経済性に優れた鋼板を得るため、高価な合金元素であるMnの添加量は少ない方が良く、0.5%以下とするのが望ましい。
一方、MnはSによる熱間圧延時の鋼の熱間脆化を防ぐ役割があるため、0.05%以上添加することが望ましい。
【0031】
Sは不可避的不純物であり、微細なMnS析出物を形成して電磁特性を劣化させるため、極力低減することが望ましい。ただし、その低減はコスト上昇を招くので、Sの悪影響が顕著でない範囲として0.010%以下とするのが好ましい。さらに好ましくは0.008%以下とする。
【0032】
Alは元来、不可避的に混入する場合のある不純物元素であるが、必要に応じて脱酸を目的に添加しても良い。Alには母材の固有抵抗を大きくする効果もあるが、高価な合金元素であるAlの添加はコストの無用な増加を招くため、上限をsol.Al(酸可溶Al)量で0.05%として添加することが好ましい。
【0033】
ただし、Alを添加する場合はこれが微細AlNとして析出すると磁気特性の劣化をもたらすため、同時に0.0003〜0.005%のBを添加することが望ましい。
【0034】
B添加量が0.0003%未満ではBによる窒化物粗大化の効果が不十分で磁気特性が悪く、0.005%を超えると逆に過剰Bによる磁気特性劣化のおそれがあるため、その上下限をそれぞれ0.0003%、0.005%とする。
【0035】
Nは不可避的不純物であり、窒化物析出量の増加による害を防ぐため、上限を0.007%とし て析出しにくい状態にすることが好ましい。
なお、その他高炉−転炉法にて常識的に混入しうる量の不可避不純物元素(Cu、Ti、Nb、V、Cr、Ni、Mo、Sn、As、Sb等)が含まれていても、本発明の持つ効果は何ら損なわれることは無い。
【0036】
各元素を上記の範囲とすることに加えて、成分パラメータAとフェライト結晶粒度gがA+4.36≧gなる関係を満たすよう成分調整および鋼板組織を制御することが、高周波で優れた磁気特性を得るに当たって重要である。
ここで成分パラメータAは、
A=6.77[ %C] +15.0[ %Si] +4.84[ %Mn] +24.2[ %P]
とする。
【0037】
一般にCのような元素の含有量が多いと、結晶粒は小さくなる傾向にある。即ちgは大きくなる傾向にあり、磁気特性は劣化する。しかし、鋼板組織を制御して成分パラメータAとA+4.36≧gなる関係を満たすようgを調整すれば磁気特性の良好な鋼板を得ることができる。
【0038】
鋼に不純物元素を添加すると、鋼の固有抵抗が大きくなることは、既に一般的に知られている。鋼の固有抵抗が大きくなると、鋼板の高周波鉄損は小さくなる。しかし、前述したように、鋼にCその他の元素を添加すると、フェライト粒径は小さくなり、すなわち、粒度が大きくなり、鋼板の高周波鉄損は大きくなる。つまり、鋼に添加する不純物元素の含有量は一概に増やしたり減らしたりすればいいものではなく、フェライト粒度との均衡関係(バランス)が肝要である。上記(1)式の関係は実験により得られたものであり、その物理的理由は必ずしも明らかではないが、上記(1)式の各元素の項の係数は、ある一定のフェライト粒度のとき、高周波鉄損を保つために必要な、各元素の成分値のバランスを示していると考えられる。
【0039】
板厚は目的とする鉄損レベルやモータ製造工程で許容できる工数に応じて選択することができる。板厚が薄ければ薄いほど渦電流損を低減することができるが、安価な小型モータ用としては板厚0.30mm未満はモータ製造工程におけるコストの増大が無視できないため、モータの製造工程まで含めた視点では本発明の目的とする安価な鋼板とは言い難い。
【0040】
一方、板厚が厚くなると全鉄損に占める渦電流損の割合が相対的に大きくなり、1.8mmを超えると上式を満たすよう成分調整および鋼板組織を制御しても磁気特性が劣る場合がある。
【0041】
そこで本発明の好適態様は板厚の範囲を0.30mm以上1.8mm以下とした。より低コストかつ優れた磁気特性とするためには好ましくは0.5mm以上1.6mm以下とするのが良い。
【0042】
上述のように調整された鋼組成のスラブを、熱間圧延したのち、酸洗して冷間圧延し、さらに仕 上焼鈍をするに際して、熱間圧延の仕上温度はAr3 変態点以下とする。
【0043】
仕上温度がAr3 変態点を超えると、圧延終了後に変態点を通過することで歪みの入っていない組織となって結晶粒成長の駆動力が大幅に低下するため、熱間圧延板組織が微細となる。
【0044】
熱間圧延板組織が微細になると、冷間圧延・焼鈍後に得られる結晶粒も微細になる傾向にあり必要な磁気特性を得ることが難しくなる。
それを補うために焼鈍温度を高くして結晶粒を成長させることは、コスト的に不利であるばかりでなく、粒界近傍から生成する磁気特性に不利な(111)組織が多く形成され、磁気特性を悪化させる可能性も生じる。
【0045】
なお、熱間圧延板組織をなるべく粗粒にするため仕上温度は変態点以下のなるべく高い温度が良いが、仕上最終スタンド直前での変態点通過は圧延の不安定をもたらすため、好ましくは仕上最終スタンド直前の温度をAr3 −10℃以下とするのが良い。
【0046】
本発明のようにAr3 変態点以下の低温仕上圧延をする場合は、1000〜1250℃といった比較的低い温度にスラブは加熱される。しかし、加熱温度が低ければ低いほど、加熱炉のスキッドとスラブの接触部(スキッドマーク)と非接触部との温度差が大きくなりがちである。よって、必要に応じて仕上圧延前の鋼板(粗バー)を温度保持もしくは再加熱処理するのが好ましい。これにより、コイル全長に渡って、仕上温度をAr3 変態点以下のなるべく高い温度に制御することができ、均一に優れた磁気特性を得ることができる。
【0047】
また、仕上圧延後の巻取温度は、巻取後空冷時の十分な結晶粒成長を得るために600℃以上と定めた。
なお、冷間圧延の圧下率は通常の操業に支障のない範囲内であれば得られる磁気特性に大差はなく特に規定するものではないが、通常の操業に支障のない範囲として好ましくは30〜90%とする。
【0048】
仕上焼鈍は完全な再結晶を得るためその下限を650℃とする。これ未満の温度では組織中に歪みが残存するため急激に磁気特性が悪化する。
また、結晶粒を成長させるにはより高い温度で仕上焼鈍する方が好ましいが、焼鈍温度が高いほどコスト的に不利となるため、安価な鋼板を得る上で許容できる上限は900℃とする。
【0049】
仕上焼鈍に引き続いての過時効処理において、鋼中の固溶Cをほぼ析出させることにより製品として使用中の微細炭化物析出による磁気時効を抑えるとともに、鋼板を加工に適した硬度に調整する。
【0050】
過時効処理温度が300℃未満では炭化物析出の活性化エネルギーが十分得られないために過時 効処理が不十分となって固溶Cが残存した形となり鋼板硬度上昇や、磁気時効の問題を生じるため、下限は300℃とするのが好ましい。
【0051】
一方、500℃を超える温度では、炭化物析出の駆動力が小さいため、これまた固溶Cが残存した形となり前記同様の問題を起こすため、上限は500℃とするのが好ましい。
【0052】
さらに過時効処理時間が150秒よりも短い場合にも固溶Cが多く残存する可能性があるため、150秒以上とすることが望ましい。
なお、上述のように規定した過時効処理により粗大な炭化物を析出させていれば、これらが亀裂の起点となりさらに亀裂の伝播が容易なため打ち抜き性は良好で、あえて他の打ち抜き性対策を講じることによる磁気特性の劣化あるいはコストアップを招くようなことがない。
【0053】
仕上焼鈍後の調質圧延、特に上述の過時効処理後の調質圧延は、鋼板の形状確保を目的として必要に応じて実施しても良いが、その場合は歪みの導入によるヒステリシス損、磁束密度の劣化を極力避けるため伸び率を2%以下とすることが好ましい。
【0054】
【実施例】
表1に示す鋼組成A〜Qの鋳片(Ar3 点800℃以上)を、加熱温度1200℃、仕上温度780℃で3.8mm厚に熱間圧延し650℃で巻き取ったものを、酸洗の後、1.0mmまで冷間圧延し、780℃で仕上焼鈍して引き続き400℃で360秒過時効処理を行い、その後、1.2%の調質圧延を施した。このように製造された鋼板について、高周波での電磁試験、硬さ試験を行った結果を同じ表1中に示す。
【0055】
【表1】
高周波の電磁試験は以下の方法によって行った。まず鋼板から外径45mm、内径33mmのリング試験片を切り出し、5枚積層して、2000Hzの高周波において鉄損(W5/2000)を測定した。高周波磁気特性に優れた鋼板としては、板厚1.0mmの場合、本条件での測定においてW5/2000が640W/kg以下であるものを本発明の範囲内とする。
【0056】
鋼板の硬さHv の測定はJISZ2244に従い、試験力は49Nにて測定した。加工に切削工程が含まれるような場合に工具寿命が問題となってくる硬さとして、Hv が130以上のものは切削性の劣化は免れないので、本発明の範囲から外れるものである。
【0057】
表1に示すように、本発明範囲内に規定される組成成分の上下限を外れた鋼組成のものは、高周波での鉄損が大きく優れた磁気特性が得られなかったり、鋼板の硬さが高いために加工性に劣ることが分かる。
【0058】
次に、表1の鋼組成A〜Jの鋳片から上述の方法と同様にして1.0mmの鋼板を得るにあたり 、熱間圧延の仕上温度、巻取温度、仕上焼鈍の温度を種々に変更して結晶粒度をつくりわけ、それぞれの鋼板について高周波鉄損測定とJISG0552に規定するフェライト結晶粒度測定を行った結果を図1に示す。
【0059】
図1に示されるように、結晶粒度がA+4.36≧gを満たす鋼板では、たとえ合金元素の含有量が少なくても高周波鉄損は小さく保たれる。逆に結晶粒度が大きくても上式を満たすように成分が含有されていれば優れた高周波鉄損を示すことが分かる。
【0060】
表2は鋼組成CまたはEの鋳片を、加熱温度1180℃、仕上温度800℃、巻取温度630℃で2.3mm、3.8mm、4.5mmの板厚にまで熱間圧延し、酸洗の後、それぞれ板厚0.5mm、1.0mm、1.6mm、に冷間圧延し、780℃で仕上焼鈍して引き続き400℃で300秒過時効処理を行い、その後、1.2%の調質圧延を施して製造した鋼板について、前記同様の高周波電磁試験を行った結果を示したものである。
【0061】
【表2】
板厚は要求される鉄損レベルによって選択されるものであり、つまり板厚によって鉄損レベルが大きく異なる。高周波磁気特性に優れた鋼板としては前記条件での測定においてW5/2000が、板厚0.5mmの場合270W/kg以下、板厚1.0mmの場合640W/kg以下、板厚1.6mmの場合1500W/kg以下であるものを本発明の範囲内とする。
【0062】
表3は鋼組成AおよびFの鋳片を1200℃に加熱後、表3中の各条件で熱間圧延、冷間圧延、仕上焼鈍、過時効処理、調質圧延を行った製品厚さ1.0mmの鋼板について、既述のものと同様に高周波鉄損、鋼板硬さ、フェライト結晶粒度を測定した結果である。
【0063】
【表3】
熱間圧延の仕上温度が鋼組成FのAr3 変態点850℃を超えている鋼No.13や巻取温度が600℃未満の鋼No.14では細粒となって目標の高周波鉄損が得られない。また、仕上焼鈍温度が650℃に達していない鋼No.15は未再結晶組織が残存しており、鉄損が悪化している。
【0064】
過時効処理温度あるいは時間が本発明範囲から外れる鋼No.16〜18は高周波磁気特性の面では優れているものの鋼板硬さが高過ぎる。
調質圧延の伸び率が高過ぎる鋼No.19は磁気特性が劣化している。
【0065】
それに対して、本発明範囲内である鋼No.1〜12は高周波磁気特性、鋼板硬さともに目標の特性が得られている。
【0066】
【発明の効果】
本発明により、コストのかかる手段によらず、成分の含有量と製品の結晶粒径をある関係に保つ ことにより、良好な高周波磁気特性の電磁鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェライト結晶粒度gおよび成分パラメータAと鉄損W5/2000の関係を示す図である。
Claims (6)
- 質量%で、
C :0.015%を超え、0.08%以下
Si:0.8%以下
Mn:0.05%以上、0.80%以下
P :0.06%以下 を含有し、残部Feおよび不純物からなり、かつ、JISG0552に規定するフェライト結晶粒度をgとするとき、
6.77[%C]+15.0[%Si]+4.84[%Mn]+24.2[%P]+4.36≧g………………………(1)
上記(1)式の関係を満たすことを特徴とする電磁鋼板。 - 不可避不純物としてのN、Sをそれぞれ、質量%で、N:0.007%以下、及びS:0.010%以下に制限する、請求項1に記載の電磁鋼板。
- 質量%で、Al:0.05%以下、及びB:0.0003〜0.005%をさらに含む、請求項1または2に記載の電磁鋼板。
- 板厚が0.30mm以上1.8mm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の電磁鋼板。
- 質量%で、
C :0.015%を超え、0.08%以下
Si:0.8%以下
Mn:0.05%以上、0.80%以下
P :0.06%以下 を含有し、または、Al:0.05%以下およびB:0.0003〜0.005%をさらに含有し、残部Feおよび不純物からなるスラブに対し、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、次いで仕上焼鈍を行うに際し、熱間圧延では仕上温度をAr3変態点以下として600℃以上で巻き取りを行い、仕上焼鈍では650℃以上900℃以下での再結晶化処理を施し、さらに仕上げ焼鈍に続いて下限300℃上限500℃、処理時間150秒以上の過時効処理を行うことにより、JISG0552に規定するフェライト結晶粒度をgとしたとき、
6.77[%C]+15.0[%Si]+4.84[%Mn]+24.2[%P]+4.36≧g………………………(1)
上記(1)の関係を満たすことを特徴とする電磁鋼板の製造方法。 - 請求項5に規定する過時効処理後の冷間圧延鋼板に伸び率2%以下の調質圧延を行うことを特徴とする、電磁鋼板の製造方法。
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