JP3931756B2 - 非接触吸着ディスク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体が高速で流れる際にその静圧が大気圧以下になることを利用して、保持対象物を保持する非接触吸着ディスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の非接触吸着技術としては、例えば特開平3−43180号公報に掲載されているものが知られている。この非接触吸着装置は、平面状の吸着面に気体の吹出口を設け、上記吸着面に近づく保持対象物を、上記吹出口から噴出する気体流のベルヌーイ効果に基づき吸着するベルヌーイ保持器の上記吸着面を囲むように空隙および周囲壁を設け、上記空隙から気体の流れ方向に対し直角方向に吸引する吸引口を上記保持対象物に対向する位置に設け、かつ上記吹出口からの気体の吹出量を上記吸引口からの吸引量より小とするように構成したものである。
【0003】
上記のように構成された非接触吸着装置においては、吹出口からの吹出量を吸引口からの吸引量より小とし、吹出口から吹き出した気体のすべてを吸引口から吸引することができる。したがって、吸着面に沿って外方に高速で吹き出す空気によってクリーンルーム内の気流が乱れたり、塵埃を巻き上げたりするのを防止することができるという利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記非接触吸着装置においては、気体の流れ方向に対し直角方向に気体を吸引する構造となっていることから、装置の薄型化が制限されると共に吸引効率が悪いという欠点がある。しかも、吸引口からの吸引力を強制的に作用させているので、その強制的な吸引圧力と吹出し圧力のバランス条件によっては保持対象物が不安定になるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に基づいてなされたものであり、装置の薄型化が可能で吸着効率が高く、かつ保持対象物を安定的に保持することのできる非接触吸着ディスクを提供することを
課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、平面状に広がる吸着面に流体の吹出口を設けてなり、上記吹出口から吹き出した流体が上記吸着面とこの吸着面に近接する保持対象物と間の細隙に高速で流れることにより、当該流体の静圧が負圧になることを利用して、上記保持対象物を上記細隙を流れる流体の境界層を介して保持するように構成した非接触吸着ディスクであって、 上記吸着面は、上記流体が上記吹出口から放射状に広がるように移動することによる流速の低下に伴って負圧から大気圧以上の正圧に転じる負正転換位置以上の広がりを有するように形成されるとともに、上記吹出口の外側に平面状に広がる内側吸着面と、この内側吸着面の外側に平面状に広がる外側吸着面とを備えており、かつ上記内側吸着面は、上記外側吸着面に対して上記保持対象物の加振を阻止可能な0.05〜3.0mmの微少段差分だけ凹状に形成されるとともに、上記微小段差は、上記吹出口から上記内側吸着面と上記保持対象物との間の内側細隙および上記外側吸着面と上記保持対象物との間の外側細隙を流れる流体が少なくとも上記内側細隙において高速となって負圧を生じさせるような寸法に設定されていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記内側吸着面が上記吹出口の中心から7.5〜25mmの半径範囲内に形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記内側吸着面が上記吹出口の中心から2.5〜25mmの半径範囲内に形成されていることを特徴としている。
【0013】
上記のように構成された請求項1〜3に記載の発明においては、吸着面が吹出口から負正転換位置以上の広がりを有するように形成されているので、流体が吹出口から吸着面と保持対象物との細隙を高速で流れることにより生じる負圧の全てを当該保持対象物の保持のために利用することができる。したがって、吸着効率をほぼ最高の状態まで高めることができるとともに、より重い保持対象物を保持することができる。
【0014】
また、流体により負圧が作用する部分には、吹出口から放射状に流れる流体の境界層が常に介在した状態になるので、保持対象物を吸着面に対して一定の間隔で保持することができる。したがって、保持対象物を非接触の状態で安定的に保持することができる。
【0015】
さらに、流体が吹出口から負正転換位置以上に放射状に広がることにより、当該流体の速度が充分に低下することになるので、そのまま放射方向に流出させても、例えば、クリーンルームの気流を乱したり、塵埃を巻き上げたりするのを防止することができる。
【0016】
また、流体を吹出口に供給する流路を、吹出口から吸着面に沿って半径方向の外方に向けて延在するように設けた場合には、薄型のもので構成することができるという利点がある。
【0017】
さらに、吸着面の半径方向の外方を環状に囲む周壁部に、吸引口を設けた場合には、吸着面から半径方向の外方に流出する流体を、その流体の動圧を利用して効率よく吸引することができる。
【0018】
一方、吹出口から噴出した流体が少なくとも内側細隙を流れる際に高速になることにより、静圧が低下し、当該内側細隙内が負圧になる。したがって、保持対象物を吸着する力を維持することができる。
ただし、微小段差を設けることによって、内側細隙を流れる流体の流速が低下することになるので、当該流体のレイノルズ数も低下することになる。したがって、内側細隙を流れる流体が乱流側から層流側に変化することになるので、例えば微小段差を設けていない場合には騒音や保持対象物に振動が生じる場合でも、当該微小段差を設けることによって、当該騒音や振動の発生を防止することができる。すなわち、加振源を断つことによって、非接触吸着ディスクの防音および防振を図ることができる。
【0019】
また、微小段差が0.05〜3.0mmであることから、防音効果と防振効果および吸着効果を共に得ることができる。そして、上記のような寸法に設定したのは、0.05mm未満になると、流速の低減効果が少なくなることから、非接触吸着ディスクの防音および防振を図ることが困難になるからである。また、3.0mmを超えた場合は非接触吸着ディスクの吸着力が低下するためである。
そして、防音効果と防振効果をより確実に得るためには、微小段差を0.1〜2.5mmに設定することが好ましく、さらには0.1〜2mmに設定することが好ましく、さらには0.1〜1.5mmが好ましく、そしてさらには0.1〜1.0mmに設定することがより好ましい。
【0020】
請求項2に記載の発明においては、内側吸着面が吹出口の中心から7.5〜25mmの半径範囲内に形成されているので、防音効果と防振効果および吸着効果を共に得ることができる。これらの効果は、特に吹出口の半径が2.5mm以上のときに顕著である。なお、上記のような7.5〜25mmの寸法に設定したのは、7.5mm未満になると、非接触吸着ディスクの防音効果と防振効果が低下するからである。また、25mm以下であれば防音効果と防振効果が十分得られるからである。
ただし、防音効果と防振効果をより確実に得るためには、内側吸着面を吹出口の中心から10〜20mmの半径範囲内に形成することが好ましく、さらには15〜20mmの半径範囲内に形成することが好ましい。
【0021】
請求項3に記載の発明においては、内側吸着面が吹出口の中心から2.5〜25mmの半径範囲内に形成されているので、防音効果と防振効果および吸着効果を共に得ることができる。これらの効果は、特に吹出口の半径が2.5mm未満のときに顕著になる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態として示した非接触吸着ディスクの断面図、図2は同非接触吸着ディスクの斜視図である。
【0023】
この第1の実施の形態で示す非接触吸着ディスクは、図1および図2に示すように、平面状に広がる吸着面11aに空気(流体)の吹出口11bを設けたものであって、吹出口11bから吹き出した空気が吸着面11aとこの吸着面11aに近接するワーク(保持対象物)Wkと間の細隙13に高速で流れることにより、当該空気の静圧が負圧になることを利用して、ワークWkを細隙13を流れる空気の境界層を介して保持するように構成したものある。そして、上記吸着面11aは、空気が吹出口12から放射状に広がるように移動することによる流速の低下に伴って負圧から大気圧以上の正圧に転じる負正転換位置rc以上の広がりを有するように形成されている。
【0024】
すなわち、非接触吸着ディスクは、一定の厚さの円板によって形成されたディスク本体11と、ディスク本体11の軸心部に設けられた連結ボス部12とにより一体的に形成されている。上記吸着面11aは、ディスク本体11の一方の面に形成され、連結ボス部12は、ディスク本体11の他方の面から円柱状に突出するように形成されている。また、連結ボス部12は、ディスク本体11の他方の面に対して直交するように形成されている。吹出口11bは、円形状の吸着面11aの軸心部に円形状に開口したものである。この吹出口11bからは、ディスク本体11および連結ボス部12の軸心部を貫通する吹出流路(流体を吹出口に供給する流路)12aが形成されている。
【0025】
負正転換位置rcは、吹出口11bの中心線Cの位置を原点0とした場合に、この原点0から吸着面11aに沿って半径rの方向(放射方向)に所定量離れた位置にある。この負正転換位置rcについては、後述する理論解析および実施例においてさらに説明する。
【0026】
また、上記連結ボス部12は、空気を供給するための図示しないホースに連結されるようになっており、このホースはさらに空気供給源(図示せず)に連結されている。空気供給源は、例えば0.5MPaに加圧された空気を供給するようになっている。
【0027】
一方、非接触吸着ディスクで保持するワークWkとしては、シリコンウエハーや液晶ガラスのような平板状のもので、直接接触して把持することを嫌うものが最適である。ただし、少なくとも一つの平面部があって気体が著しく浸透しないものであればどのようなワークWkでも保持が可能である。因みに、この第1の実施の形態においては、ワークWkとして円板状のシリコンウエハーを用いた例を示している。
【0028】
上記のように構成された非接触吸着ディスクにおいては、吸着面11aが吹出口11bの原点0から負正転換位置rc以上の広がりを有するように形成されているので、空気が吹出口11bから吸着面11aとワークWkとの細隙13を高速で流れることにより生じる負圧を全て利用して、当該ワークWkを吸引することができる。したがって、吸着効率がほぼ最高の状態でワークWkを保持することができるので、より重いワークWkを保持することができる。
【0029】
しかも、負圧となる部分には、吹出口11bから放射状に流れる空気の境界層が常時に介在した状態になるので、ワークWkを吸着面11aに対して一定のクリアランスtで安定的に保持することができる。したがって、ワークWkが不安定に揺れるなどの不具合を確実に防止することができる。また、この第1の実施の形態においては、吸着面11aが負正転換位置rcからさらに半径rの方向に広がっているので、その負正転換位置rcの外方の部分が大気圧にほぼ近い正圧になる。したがって、ワークWkをより安定的に保持することができる。
【0030】
さらに、空気が吹出口11bから負正転換位置rc以上の位置に放射状に広がることにより、当該空気の速度が半径rの2乗に反比例して充分に低下するので、そのまま半径rの方向の外方に流出させても、例えばクリーンルームの気流を乱したり、塵埃を巻き上げたりするのを防止することができる。
【0031】
なお、上記第1の実施の形態においては、連結ボス部12をディスク本体11の他方の面に対して直交して突出するように形成し、吹出流路12aを連結ボス部12の軸心部を貫通するように形成した。しかし、吹出流路12aは、図3(a)に示すように、吹出口11bから所定深さ入りかつその位置から吸着面11aに沿って半径方向の外方に延在するように形成してもよい。ただし、吹出流路12aのうち半径方向に延在する部分は、ディスク本体11の他方の面から一定の高さに突出し、かつ当該他方の面の軸心部から半径方向に延在する突条部14に形成されている。
【0032】
この場合には、吹出流路12aに接続する空気の配管等をディスク本体11の半径方向の外側に配置することができるので、非接触吸着ディスクをより薄型のもので構成することができるという利点がある。
【0033】
また、図3(a)に示した突条部14を設けることなく、ディスク本体11の内部に吹出流路12aにおける半径方向に延在する部分を形成し、当該ディスク本体11の外周面に吹出流路12aの開口部を形成するようにしてもよい。この場合には、非接触吸着ディスクをさらに薄型のものにすることができる。
【0034】
また、図3(b)に示すように、吸着面11aの半径方向の外方を環状に囲む周壁部15を設け、この周壁部15に、吸着面11aから半径方向の外方に流出する空気を吸引する複数の吸引口15aを設けてもよい。各吸引口15aからは、さらに半径方向の外方に延びる吸引流路15bが設けられている。また、周壁部15は、ディスク本体11の他方の面側から半径方向の外方に突出する環状の頂板部16に一体的に連結されている。これにより、吸着面11aと周壁部15との間には環状の空間部が形成されるようになっている。また、周壁部15の下端部には、半径方向の内方に向かう環状のリブ15cが形成されている。
【0035】
このように構成された非接触吸着ディスクにおいては、吸着面11aから半径方向の外方に流出する空気を、その空気の動圧を利用して、吸引口15aおよび吸引流路15bから効率よく吸引することができる。しかも、リブ15cおよび頂板部16によって、半径方向の外方に流出する空気が外部に漏れるのを防止することができる。
【0036】
また、非接触吸着ディスクとしては、図3(c)に示すように、小径のディスク本体11を複数設けたもので構成してもよい。すなわち、図3(c)において、17は断面四角形の棒状部材であり、この棒状部材17の一面に複数のディスク本体11が設けられている。また、棒状部材17には、各ディスク本体11の吹出流路12aに連通する吹出流路17aが形成されている。
【0037】
このように構成された非接触吸着ディスクにおいては、小型で強力な吸着力を有するものを提供することができる。
【0038】
また、流体として空気を用いた例を示したが、この流体としては空気以外の窒素等の他の気体や、水等の液体であってもよい。
【0039】
(理論解析)
次に、上述した非接触吸着ディスクの原理を理論的に説明する。
図4において、吸着面11aと円板状のワークWkとの間に形成される細隙13内の流れは、流れに沿って流管断面積が増大する点では吹出口をノズルとする末広がりダクトの流れに等価である。通常の末広がりダクトの解析は等エントロピー流れ、すなわちダクト壁面の摩擦力がないとすることが可能である(参1)。
【0040】
これに対し、ワークWkとの細隙13内の半径rの方向の流れの場合、レイノズル数がある程度まで大きくならないと壁面摩擦力は無視できない。一方、流量が大きくレイノズル数がある程度以上になると気体の運動エネルギーに対し壁面摩擦力が無視できる領域に入ると推定される。先ず、図4のような一般的な形状を有する円筒座標の平行細隙の流れを、多少大胆と思われるが、等エントロピー流れと仮定し解析を進める。
【0041】
連続の式は、
ρμA=2πrtρμ=Q …(1)
ここに、Aは流管断面積、rは原点0からの半径、tは吸着面11aとワークWkとのクリアランス、uは半径r方向の平均流速、Qは気体流量、ρは気体密度をそれぞれ表す。
【0042】
運動量の式は、
udu+dp/ρ+dΦr/ρA=0 …(2)
ここに、pおよびΦrは、それぞれ半径rにおける静圧(あるいは単に圧力という)および摩擦力を表す。いま、等エントロピー流れを仮定したので、dΦr=0である。さらに、流れのマッハ数が充分小さいときはρ=const.とできるから、(2)式は
po=p+1/2ρu2 …(3)
となる。ここに、poは気体流れの全圧を表す。
【0043】
(1)式より
u=Q/2πrtρ
を(3)式に代入すると、半径方向の圧力変化は、
p=po−CQ2 /r2 …(4)
ここに、
C=1/(8π2 ρt2 ) …(5)
したがって、(4)式によりモデル化した圧力分布は、図5のグラフのように描くことができる。
【0044】
図5において、roは吹出口11bの半径、rcは負正転換位置を示す。気体速度は、吹出口11bの半径ro位置で最大で半径rの2乗に逆比例して減少する。このため、圧力は吹出口11bの半径ro位置で半径rの増大とともに増加し、負正転換位置rcにおいて大気圧paに等しくなる。この間は、大気圧paを基準とした負圧が働く。図4において、半径rが
ro<r<rc
の範囲は吸着面11aに吸引力が発生する吸着領域である。
【0045】
一方、半径rが
rc<r
の範囲は半径rの増大とともに圧力は大気圧より高くなり、吸着面11aが無限に大きいとき、圧力損失がなければ点線のように
r=∞
で再び全圧poに達する。実際の非接触吸着ディスクでは、細隙13内の圧力は図5の実線のように半径rの増大に伴って減少し大気圧paに等しくなる。この領域は、ワークWkを押し返す反発領域となる。
【0046】
非接触吸着ディスクの最大吸着力または最大ワーク荷重Wtmaxは、ワークWkにかかる差圧を
0≦r≦rc
の範囲で積分して求められる。すなわち、
【0047】
(6)式から、他のパラメーターが一定なら吹出口11bの半径roが小さく、負正転換位置rcが大きいほど吸着力は大きいことがわかる。一般に、粘性摩擦力が無視できない場合、図4の流量Qは
Q=πρt3 (po−pa)/6μln(rc/ro) …(7)
で与えられる(参2)。(5)式と(7)式を(6)式に代入すると
となる。
【0048】
ここで、(6)式はdΦr=0、すなわち、気体の粘性を無視した運動量の式(2)から誘導された結果であり、そこに気体の粘性を考慮して求められた(7)式を代入することに理論的な妥当性に疑問が残るのは否めないが、図4の流れシステムでの我々の関心は、粘性の影響が利くか利かないかの微妙な領域にあるので、誤差の許容範囲内で工学的近似解として採用が許されるであろう。
【0049】
(8)式は、ワークWkがある距離より吸着面11aに近づこうとしてもなかなか接触できない現象に対する物理的要因、すなわち、粘性力の効果を定性的に理解するのに有用である。ここで、簡単のため吸着面11aのワークWkに対する吸引力および反発力の力の成分をそれぞれFaおよびFrで表すと、(6)式より任意の値の吸着力Wtの力のバランスは
Wt=Fa−Fr …(9)
と表される。
【0050】
すると、レイノルズ数(Re=ρut/μ)の大きさに応じ、(9)式によって、吸着力と反発力の関係について以下のような説明ができる。
(i)Re小(Q小、粘性効果大)のとき、Fa<Fr
この場合は、Wt<0となって吸着力は発生しない。
(ii)Re大(Q大、粘性効果小)のとき、Fa>Fr
この場合は、Wt>0となり、吸着力が発生する。
(iii)t小(Q小、粘性効果大)のとき、Fa<Fr
この場合は、粘性の効果が大きくなってWt<0となり反発力によってワークWkが吸着面11aから押し離される現象が現れる。
【0051】
このように、吸着面11aとワークWkとの間には、気体流量Qとクリアランスtの値の条件によって、(i)と(iii)の間に粘性効果を打ち消し吸着力を発生する(ii)の狭い流れ条件、言わば、トンネル効果の存在が推測される。(iii)の強い反発力の存在は、非接触性に優れワークWkを傷つける恐れが少ないことを意味する。また、(6)式における第2項は、反発力が吸着面11aの中心点から半径rcまで吸着面11aの全面に亘り一様な圧力po−paが働いていることを示唆している。
【0052】
負正転換位置rcは、(4)式から
rc=Q{C/(po−pa)}1/2 …(9′)
で計算できる。例えば、po−pa=0.01MPa、t=0.05cm、
ρ=0.001188g/cm3 (20℃)、ro=0.5cmのとき、(9′)式より、
rc=0.18Q(cm)
となる。
【0053】
流量Qの単位は、l/sec(リットル/秒)である。温度20℃のときの音速は343m/secであるから、roにおける速度すなわち末広がりダクトのノズルの流速が音速を超えられない(参1)ことから、理論的に得られる最大流量Qmaxはこの場合
271/sec(27リットル/秒)
となる。
【0054】
したがって、
rcmax=4.9cm
を得る。ちなみに、ro=0.6cm、ro=0.7cmのとき、それぞれ
rcmax=7.0cm
rcmax=9.5cm
となる。このように、有用な吸着面11aの径は吹出口11bの径の増大に伴い大きくなる。ただし、roは必要な流量を供給できるように、コンプレッサー(空気供給源)からのガス管の最小径以下でなければならないことは言うまでもない。
【0055】
次ぎに、図6および図7のように円板の半径方向にテーパーをつけた細隙流れの場合の吸着力への影響を調べてみることにする。
比較のため、流れの範囲はいずれも平行細隙の負正転換位置rcに一致させる。テーパーはそれぞれ図6および図7に示すように、負正転換位置rc及び吹出口11bの半径ro位置におけるクリアランスが平行な細隙13のクリアランスtのn倍となるように施す。すると、任意の半径rの位置でのクリアランスが三角形の比例関係からn、ro、rc及びtで表され、平行面の細隙流れの場合と同様の手順で、図6及び図7のそれぞれの吸着力Wt′max及びWt″maxが求まる。
【0056】
すなわち、図6の広がり細隙の場合
ここに、
a=(rc′−nro)/(rc′−ro) …(12)
rc′=rc/n …(13)
rc′は、末広がり細隙の負正転換位置の半径を示す。
【0057】
また、図7の先細り細隙の場合
ここに、
b=(nrc″−ro)/(rc″−ro) …(15)
rc″=rc …(16)
rc″は先細り細隙の負正転換位置の半径を表す。
【0058】
(11)式、(14)式は、n=1のとき、共に平行細隙13の場合の(6)式に帰結する。図6の場合の負圧から正圧へ転換する点は、rc′=rc/nとなり、吸引力を発揮する部分は平行細隙流れに比し常に小さくなる。一方、図7の場合は、rc″=rcとなって平行細隙と同様にro≦r≦rcの全域で負圧が発生する。
【0059】
これら2つのケースの吸引力、Fa′、Fa″を平行細隙13の流れの吸引力Faと数値的に比較して見るとその差が明確になる。例えば、
ro=0.5cm
rc=5cm
n=3
のとき、
Fa′/Fa=0.49 …(17)
Fa″/Fa=0.23 …(18)
を得る。
【0060】
すなわち、この例題においては、テーパーを施した細隙の流れは吸引力が平行細隙13の流れの場合に比し、図6の場合で49%、図7の場合で23%まで低下する結果となることが知られる。因みに、平行面の細隙のサイズをrc′に合わせても(17)式の関係は変わらない。このように、発生する吸引力は、平行細隙13の流れの場合が最も大きく、吸着効率が最も高いということが分かる。
【0061】
【実施例】
以下、この発明の実施例を実験例に基づいて説明する。
1.実験に供した非接触吸着ディスク
▲1▼ P140φ・10φ
平行細隙の非接触吸着ディスクであり、図1に示した非接触吸着ディスクに対応している。ただし、
ディスク本体の径:140φ
吹出口の径 : 10φ
厚さ : 10mm
材質 :アクリル樹脂
である。
【0062】
▲2▼ P378φ・23φ
平行細隙の非接触吸着ディスクであり、図1に示した非接触吸着ディスクに対応している。ただし、
ディスク本体の径:378φ
吹出口の径 : 23φ
厚さ : 10mm
材質 :アクリル樹脂
である。
【0063】
▲3▼ T150φ・5φ
平行細隙の薄型非接触吸着ディスクであり、図3(a)に対応したものである。ただし、吹出流路12aがディスク本体11内を軸心部から半径方向外方に延在するように形成したものに対応している。また、
ディスク本体の径:150φ
吹出口の径 : 5φ
厚さ : 15mm
材質 :アクリル樹脂
である。
【0064】
▲4▼ S10φ・1φ
平行細隙の小型非接触吸着ディスクであり、図1に対応したものである。ただし、ディスク本体11が負正転換位置rcより充分小径のもので構成されている。また、
ディスク本体の径:10φ
吹出口の径 : 1φ
厚さ : 10mm
材質 :黄銅
である。
【0065】
▲5▼ D120φ・10φ
末広がりテーパー状の非接触吸着ディスクであり、図6に対応したものである。ただし、
ディスク本体の径:120φ
吹出口の径 : 10φ
テーパー :t=1mmに対してn=4
材質 :ステンレス鋼
である。
【0066】
▲6▼ C120φ・10φ
先細りテーパー状の非接触吸着ディスクであり、図7に対応したものである。ただし、
ディスク本体の径:120φ
吹出口の径 : 10φ
テーパー :t=1mmに対してn=4
である。
【0067】
2.実験用のワーク
図8に示す円板状のワークWk1を用いた。
すなわち、
径 :150φ
厚さ : 10mm
材質 :アクリル樹脂
圧力取出孔hの径 :1φ
圧力取出孔hの位置:中心から半径方向に10mmおきに形成
【0068】
3.実験装置
▲1▼作動気体
空気を使用した。
▲2▼空気供給源
最大0.5MPa(5atm)に加圧されたエアーコンプレッサを使用した。
▲3▼圧力計
大気圧以上の正圧はSMC製G46-10-02、
負圧はSMC製GZ46-A-02、
微弱な圧力は正圧、負圧ともに4φのビニールチューブによるマノメータ(水を利用)を使用した。
▲4▼クリアランスtの測定
隙間ゲージを用いた。
▲5▼吸着力(荷重)の測定
ワークWk1に異なる荷重の分銅を吊り下げることによって測定した。
【0069】
4.実験結果および考察
図9は、ワークWk1の中心における圧力取出孔h1で測定した圧力、すなわち全圧(全圧=動圧+静圧)poと、各非接触吸着ディスクによる最大荷重(最大吸着力)Wtmaxとの関係を測定したものである。
【0070】
平行細隙の非接触吸着ディスクの場合、最大荷重Wtmaxは、P140φ・10φでは4kgfを越え、T150φ・5φでは3kgf近くまで得られた。これに対して、末広がりテーパー状の非接触吸着ディスクであるD120φ・10φの場合は、最大荷重Wtmaxが1kgf弱までしか得られない。また、先細りテーバー状の非接触吸着ディスクの場合は、最大荷重Wtmaxが0.2kgfまでしか得られなかった。
【0071】
(6)式と(7)式から、最大吸着力Wtmaxと流量Qとの間には、一定のroに対してはWtmax∝Q∝poの関係があることが分かる。図9の結果は、最大吸着力Wtmaxの全圧poに対する線形の比例関係を良く表している。平行細隙の非接触吸着ディスクに着目すると、半径roが10φの方が5φより吸着力が大きくなっている。
【0072】
一方、(6)式においてQが一定ならば吹出口11bの半径roが小さいほど最大吸着力Wtmaxは大きくなる。したがって、(6)式の解釈としては、一定の流量のもとでは半径が小さいほど吸着カは大きい、と理解するのが妥当と思われる。
【0073】
図10〜図14は、上記各非接触吸着ディスクの中心(原点0)からの距離によって変化する圧力分布の測定結果を示している。ただし、これらの圧力分布の図には、測定点の間隔が粗く吹出口11b付近の詳細な圧力測定がなされなかったために、吹出口11bの半径ro内では圧力が吹出し動圧に等しくほぼ一定で半径roの位置から急激に減圧する分布(図示せず)となる傾向は表されていない。
なお、圧力の大きさは、
(p−pa)/(po−pa)
によって無次元化している。このため、無次元圧力は中心点の全圧poで1、大気圧で0、大気圧より小さい圧力即ち負圧はマイナス値で表される。いずれのケースも、一部の例外を除き圧縮空気弁を全開にしたときの最大荷重のときの圧力分布である。ただし、図14については、実験の都合上マイナス荷重、即ち、荷重を吹出口の上に乗せた状態で行なった結果を示す。
【0074】
この実験における目的の一つに、非接触吸着ディスクの形状に応じた吸引力の比較がある。この場合、グラフに示される負圧の大きさからは感覚的に吸引力の強さを比較できない点に注意が必要である。例えば、無次元負圧の値は、小さい吸着力に対してはpo−paが小さいため大きくなり、逆に、po−paが大きく吸着力が大きいケースでは小さくなる。
【0075】
図10は、上記P140φ・10φ(平行細隙の非接触吸着ディスク)による実験結果であり、3つの異なる全圧poに対して分銅による最大荷重Wtmaxを作用させた際の圧力分布を測定したものである。最大荷重Wtmaxは、それぞれ0.3kgf、0.96kgf、2.82kgfのように変化した。
【0076】
図10は、本実験の細隙の流れの典型的な圧力分布の特徴を表している。この結果から、空気力学的に興味深い幾つかの定性的な特徴が観察できる。先ず、最大負圧の位置は、吹出口の半径ro位置にはなく、同位置より半径方向の下流にずれ込んでおり、最大荷重Wtmaxの増加とともに更に下流側へと移動している。圧力は最大負圧を通過したあと半径方向の下流側に向かうにしたがって次第に増加してゆき、やがて大気圧を越え正圧に転換している。
【0077】
この負正転換位置rcは、最大荷重Wtmaxとともに大きくなり、半径約20mm以上では著しい増加は見られない。半径が負正転換位置rcを越えると圧力は下流側のディスク本体の全面(吸着面)に弱い正圧を維持しつつ、一旦、最大値に達したのち次第に減少していき、ディスク本体の外縁において大気圧に等しくなる。なお、データの平準化の影響で、負正転換位置rcを越えた直後での近似曲線がやや誇張されている。負圧の圧力分布曲線を見ると、定性的にラヴァールノズルを流れる圧縮性気体の圧力変化に似ているのが興味深い。この点については後で触れる。
【0078】
図11は、上記D120φ・10φ(末広がりテーパー状の非接触吸着ディスク)による実験結果であり、3つの異なる全圧poに対して分銅による最大荷重Wtmaxを作用させた際の圧力分布を測定したものである。最大荷重Wtmaxは、それぞれ0.30kgf、0.41kgf、0.95kgfのように変化した。ただし、0.30kgfについては2種類の実験を行っている。
【0079】
図11の圧力分布は、図10とほぼ同様の定性的傾向を示している。特に、最大荷重Wtmax=0.30kgfに対しては、必要最小限の全圧poと必要以上の過剰の全圧poの2つのケースについての測定結果を示している。図中、負圧の値が大きい方が前者の圧力分布に相当する。末広がりテーパーのケースでは、負圧の最大値が比較的吹出口の半径roに近い位置に発生し、負圧正圧転換位置rcが半径約20mm付近にあり、最大荷重が変化しても殆ど変わらない。また、その位置より下流側の正圧は極めて小さく殆ど大気圧に等しい。なお、図11には示されていないが、この場合の吸着に当たってはワークWk1が揺動するなどしてその保持が不安定であり、図10で示したP140φ・10φの平行細隙の非接触吸着ディスクの安定性が極めて高かったのと対照的であった。
【0080】
(13)式によると、この場合n=4であるから負圧正圧転換位置rcは平行細隙の非接触吸着ディスクの負正転換位置rcの1/4とならねばならない。しかるに、この実験結果は両者ともほぼ同等の値を示している。この不一致点については、クリアランスtが双方で同一でなく、理論式の比較の前提とした条件が満足されないことに起因していると思われる。この点を明らかにするためには、より精確な実験データの収集が必要である。しかしながら、双方で、ほぼrc=20mm近傍でまとまっているのは興味深い。
【0081】
図12は、上記C120φ・10φ(先細りテーパー状の非接触吸着ディスク)による実験結果であり、1つの全圧poに対して分銅による0.25kgfの最大荷重Wtmaxを作用させた際の圧力分布を測定したものである。
【0082】
図12の圧力分布は、計測装置のワークWk1の自重の関係で最大荷重の1ケースのみを示している。この場合は、全圧poに対し負圧が極端に小さいが、負圧の範囲は半径約30mmと比較的大きくなっている。負正転換位置rcより下流域ではほぼ大気圧に等しくなっている。
【0083】
図13は、T150φ・5φ(平行細隙の薄型非接触吸着ディスク)による実験結果であり、4つの異なる全圧poに対して分銅による最大荷重Wtmaxを作用させた際の圧力分布を測定したものである。最大荷重Wtmaxは、それぞれ0.24kgf、0.45kgf、0.83kgf、3.1kgfのように変化した。
【0084】
図13の圧力分布の定性的傾向は、図10の場合に類似している。負正転換位置rcは概ね20mm付近で収束しており、それより下流域での正圧の値は図10の場合より小さくなっている。
【0085】
図14は、P378φ・23φ(平行細隙の非接触吸着ディスク)による実験結果である。この場合は、実験装置の都合で、吹出口を上向きにし、荷重を逆に受けた状態で荷重W=0.24kgfを一定にして圧力弁を全開まで3通りに変化させ、これにより全圧poを3通りに変化させた各状態において、圧力分布を測定した結果を示す。この場合、吹出口の径roを大きくした場合の効果は、負圧領域が広くなること、即ち、負正転換位置rcが半径約30mmと大きくなっているところに見ることができる。この事は、流量を大きくする事によって負圧領域が拡大することを示している。また、全圧poを変化させても圧力分布のパターンはほとんど変化しないという有意な特徴が発見できた。
【0086】
前述したように、細隙内の圧力分布は、ラヴァールノズルの適正膨張流れの圧力分布(参1)と定性的に類似の分布を示している。図5の圧力分布モデルでは、吹出口の半径roで全圧poと負圧pの最大値とが不連続で接しており、流体は吹出口の半径roから単調に減速する形になっている。しかしながら、現実の圧力分布を見ると、明かに、吹出口の半径roの近傍における流管断面積の増加率が最大、即ち、流速の減速度が最大の領域で流体が加速していることを示している。この実験結果から、吹出口の近傍において、空気力学的な見かけ上のラヴァールノズルが形成されていることが想像できる。
【0087】
図15は、この見かけ上のラヴァールノズルがワークを鏡面とする映像と対になって形成されているという仮説に基づいて描いた図である。図15の虚実のノズルを上下に隔離するr座標軸に平行な平面があって、それが実体が無く仮想のものであっても、ノズルは上下対称の流れを維持しつづけると考える。ノズル内の流れは流量に応じた一定の圧力分布を示すとともに、平面は上下に発生する吸引力の釣り合いにより固定されるはずである。
【0088】
この版説を暗示する例として、上述したP140φ・10φ(平行細隙の非接触吸着ディスク)の吸着面に、パウダーで表面処理した透明の薄膜を近づけると、当該薄膜は吸着面に被接触で吸着されるとともに、平らに保持された状態を維持しつづける。ただし、この状態は吹出口から吹き出す空気の動圧が強力になり過ぎると崩れ、中央付近が膨らむとともに、その中央部に向かって皺がよった状態になり、やがて吹き飛ばされてしまい、定常流れはもはや維持できなくなる。
この実験で興味深いのは、吹出口から吹き出す空気の動圧成分が大きいにもかかわらず、薄膜は吹出口付近において膨らむことなく全面にわたって平面を形成している点である。この現象から、上述の見かけ上のラヴァールノズルを形成するミラー効果の仮説が推測されるのである。
【0089】
また、上記S10φ・1φ(平行細隙の小型非接触吸着ディスク)については、計測装置の能力の関係で圧力分布は測定できなかつた。しかしながら、わずかに10φの吸着面でも80gのタイルを容易に吸着することができることを確認した。
【0090】
最後に、クリアランスtの測定結果について考察する。(9)式を
Fr=Fa−Wt
と書くと、Fr、Faの値がともにWtの値に比し大きい場合、(8)式によって
Q∝(po−pa)
であるから、吊り下げ荷重Wtを変化させてもクリアランスtの値は大きく変わらないことが推測される。本実験では、クリアランスtの値は、数グラムの荷重では約1mm、約1kgfの荷重では約0.5mmであった。あるWtの値に対し吸着力が働いているとき、Qの値をいくら大きくしてもクリアランスtの値は上記の範囲で殆ど変化がないことが観察された。しかしながら、本実験でのクリアランスtの測定には、隙間ゲージを用いたため、精度はそれほど期待できない。
【0091】
以上の理論的考察及び実験結果から、非接触吸着ディスクの形状としては、図1および図2に示すものが最良という結論に到達する。そして、これらの図に示す非接触吸着ディスクは、円板状のディスク本体11と、その軸心部に吹出口11bを有する最も基本的な技術要素を成すユニットであることから、構造が簡単であり、加工が容易である上に、単体当たりの吸着力が実験したものの中で最高の4kgfまで得られ、このため応用範囲も広いという有利な効果を備えている。
なお、一定流量に対する最大吸着荷重については、吹出口の径10φ(半径ro=5mm)、ディスク本体の径150φの非接触吸着ディスクの場合、空気流量1100リッター/minのとき最大吸着荷重8kgf以上となるデータ(図示せず)が得られている。
【0092】
また、上記(参1)、(参2)で示した参考文献は以下の通りである。
(参1):Shapiro、A.H.、The Dynamics and Thermodynamics of Compressible Fluid Flow,Vol.II,Chapter 21,The Roland Press Company,New York,1954(参2):機械工学便覧 基礎編 応用編、日本機械学会編、1991年9月30日発行、A5-41pp.
【0093】
(第2の実施の形態)
次に、この発明の第2の実施の形態について、図16〜図17を参照して説明する。ただし、第1の実施の形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付しその説明を簡略化する。
この第2の実施の形態で示す非接触吸着ディスク1は、吸着面11aが吹出口11bの外側に平面状に広がる内側吸着面11cと、この内側吸着面11cの外側に平面状に広がる外側吸着面11dとによって形成されている。
【0094】
内側吸着面11cは、吹出口11bの中心線Cを中心にして円形状に形成されており、その外周縁から直角に立ち上がる段状境界面11eを介して外側吸着面11dにつながっている。すなわち、内側吸着面11cは、外側吸着面11dに対して微小段差δ分だけ平行にずれて凹状に形成された状態になっている。なお、微小段差δは、内側吸着面11cと外側吸着面11dとの高低差を意味する。
【0095】
そして、微小段差δは、吹出口11bから内側吸着面11cとワークWkとの間の内側細隙13aおよび外側吸着面11dとワークWkとの間の外側細隙13bを流れる空気(流体)が少なくとも内側細隙13aにおいて高速となって負圧を生じさせるような寸法に設定されている。すなわち、微小段差δは、0.05〜3.0mmに設定されている。
【0096】
また、上記内側吸着面11cは、吹出口11bの中心から7.5〜25mmの半径に形成されている。すなわち、段状境界面11eは、吹出口11bの中心線Cを中心にして半径が7.5〜25mmの範囲にあって、円形状に形成されている。
なお、上記内側吸着面11cは、微小段差δを超えない高さ以下の凸凹形状にしてもよく、内側吸着面11cの外周縁(あるいは段状境界面11e)は、上記のように円形でなくてもよい。すなわち、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形状、星形状、楕円状等であってもよい。
【0097】
上記のように構成された非接触吸着ディスクにおいては、吹出口11bから噴出した空気が少なくとも内側細隙13aを流れる際に高速になることにより、静圧が低下し、当該内側細隙13a内が負圧になる。したがって、ワークWkを吸着する力を維持することができる。
ただし、微小段差δを設けることによって、内側細隙13aを流れる空気の流速が低下することになるので、当該空気のレイノルズ数が低下することになる。したがって、内側細隙13aを流れる空気が乱流側から層流側に変化することになるので、例えば微小段差δを設けていない場合には騒音やワークWkに振動が生じる場合でも、当該微小段差δを設けることによって、当該騒音や振動の発生を防止することができる。すなわち、加振源を断つことによって、非接触吸着ディスクの騒音や振動を防止することができる。
【0098】
また、微小段差δが0.05〜3.0mmであることから、防音効果と防振効果および吸着効果を共に得ることができる。そして、上記のような寸法に設定したのは、0.05mm未満になると、流速の低減効果が少なくなることから、非接触吸着ディスクの防音および防振を図ることが困難になるからである。また、3.0mmを超えた場合も非接触吸着ディスクの防音効果と防振効果が低下するためである。
ただし、防音効果と防振効果をより確実に得るためには、微小段差δを0.1〜2.5mmに設定することが好ましく、さらには0.1〜2mmに設定することが好ましく、さらには0.1〜1.5mmが好ましく、そしてさらには0.1〜1.0mmに設定することがより好ましい。
【0099】
さらに、内側吸着面11cが吹出口11bの中心から7.5〜25mmの半径範囲内に形成されているので、防音効果と防振効果および吸着効果を共に得ることができる。そして、上記のような寸法に設定したのは、7.5mm未満になると、非接触吸着ディスクの防音効果と防振効果が低下するからである。また、25mm以下であれば防音効果と防振効果が十分得られるからである。
ただし、防音効果と防振効果および吸着効果をより確実に得るためには、内側吸着面11cを吹出口11bの中心から10〜20mmの半径範囲内に形成することが好ましく、さらには15〜20mmの半径範囲内に形成することが好ましい。
【0100】
(理論解析)
次に、上記第2の実施の形態で示した非接触吸着ディスクの原理を理論的に説明する。
すなわち、第1の実施の形態で示した微小段差δのないものは、最大級の吸着力が得られる反面、ワークWkによっては騒音や振動が発生することがある。例えば、ガラスのような塑性を有するものや薄い紙などの板状のワークWkの場合には、騒音や振動が発生しやすくなる。
【0101】
図18は、非接触吸着ディスクとして第1の実施の形態で示したものを用い、ワークWkとしてガラス板を用いた場合の振動領域、圧力分布等を調査した結果を示している。振動領域は、非接触吸着ディスクにおける吹出口11b付近の流れが生じている部分の上面を手で触れて確認した結果に基づくものである。
【0102】
この図に示すように、振動の発生源は、吹出口11bのやや下流側に位置し、負圧の発生領域とほぼ一致していることがわかる。したがって、空気が高速で流れることに振動発生の原因があると仮説を立てて理論解析を行い、最終的に微小段差δを形成することによって防音効果と防振効果があることを導き出した。
【0103】
まず、非接触吸着メカニズムの解析には、流体の運動量差による力と、圧力差による力の相互作用を考慮しなければならない。ここでは、運動量の変化は関係しないので後者の圧力差による力をもとに検討すれば足りる。非接触吸着ディスクの圧力差に起因する吸着力は、微小段差δがない場合(図4参照)には上述した(6)式および(5)式で表すことができる。そして、この(6)式および(5)式から、
Wtmax ∝ 1/t2 …(19)
の関係が得られる。
【0104】
最大ワーク荷重Wtmax、すなわち吸着力は、磁力や引力に共通する不安定性を有し、ワークWkの重量に応じたクリアランスtの閾値が存在する。つまり、ワークWkは、吸着面11aにtの閾値まで近づくと吸引力に支配され、反発力と吸引力とがバランスする最小クリアランスtmin(図示せず)まで引き寄せられ、その非接触状態のまま落ち着いて安定した状態になる。
【0105】
細隙13内における半径r方向の平均流速uと、吸着面11aとワークWkとの間のクリアランスtとの関係は、
u=Q/2πrt ∝ 1/t…(20)
となる。
【0106】
(19)式および(20)式から、何らかの方法でワークWkを吸着状態のtminより大きい位置に保持するれば、最大ワーク荷重Wtmaxも流速uも共に減少することになる。そして、流速uの減少によって、振動領域のレイノルズ数が低下することになるので、空気の流れを乱流から層流側に移行させることができ、これによって加振源を断って、流体の振動を抑制することが期待できる。
【0107】
そこで、上記tminより大きなクリアランスtを保持する手段として、図16に示す内側吸着面11cおよび外側吸着面11dを有する非接触吸着ディスクを試作した。この非接触吸着ディスクを用いた場合には、外側吸着面11dとワークWkとの間がクリアランスtminに保持され、内側吸着面11cとワークWkとの間はtmin+δのクリアランスに保持されることになる。すなわち、内側吸着面11cとワークWkとの間のクリアランスをtiとすると、
ti=tmin+δ…(21)
となる。
【0108】
したがって、最大ワーク荷重Wtmaxおよび内側吸着面11cを流れる流速uは、共に微小段差δのない場合に比べて小さくなるとともに、流体の振動の抑制を図ることができると推定できる。
一方、外側吸着面11dにおいては、段状境界面11eの位置によって変化する内側吸着面11cの影響を受ける。図19は、図5の圧力分布モデルを微小段差δを有する場合に当てはめた圧力分布モデルを表している。
【0109】
この圧力分布モデルにしたがえば、段状境界面11eの半径が内側吸着面11cの負正転換位置rcより外側にあるとき、すなわち、rc<d/2のときは、図19のように内側吸着面11cと外側吸着面11dの双方に負圧が発生し、その中間に正圧が発生する分布となり得る。
一方、rc>d/2のときは、図19の圧力分布と同様の分布形状となるものの、内側吸着面11cと外側吸着面11dとの中間に正圧が発生することがない。
【0110】
また、内側吸着面11cに発生する吸着力に及ぼす微小段差δの影響は、次のように推定することができる。例えば、内側吸着面11cの範囲内でのみ負圧が発生していると仮定すると、微小段差δがある場合の最大ワーク荷重Wtmaxiと、微小段差δがない場合の最大ワーク荷重Wtmaxとは、(19)式から
Wtmaxi/Wtmax ∝ (tmin/ti)2 …(22)
となる。
【0111】
ここで、δ=0.5mmとした場合の簡単な計算例を示す。例えば、実験的に観察されるデータに基づき、仮に、tmin=0.5mm、Wtmax=3kgfとすると、ti=1.0mmとなるので、
Wtmaxi=0.25Wtmax=0.75(kgf) …(23)
となる。
【0112】
すなわち、0.5mmの段差がついた場合の吸着力は、段差がない場合の吸着力の約1/4になることになる。
そして、段状境界面11eの径dが小さくなるにつれ、最大ワーク荷重Wtmaxiは(23)式の値より小さくなるはずである。しかしながら、段状境界面11eは外側吸着面11dに対する吹出口として作用することにもなるので、段状境界面11eの径dの減少によって、外側吸着面11dに負圧が生じるとともに、その負圧が増大することにもなる。したがって、段状境界面11eの径dが小さくなるにしたがって、内側吸着面11cおよび外側吸着面11dの全体としての吸着力が大きくなることも予想される。
【0113】
【実施例】
以下、上記第2の実施の形態で示した非接触吸着ディスクの実施例を実験結果に基づいて説明する。
1.実験に供した非接触吸着ディスク
内側吸着面および外側吸着面を有する非接触吸着ディスクであり、図16、図17に示した非接触吸着ディスクに対応している。ただし、
ディスク本体の径:140φ
吹出口の径 :5φ、10φ
段状境界面の径 :20φ、30φ、40φ
微小段差 :0.1、0.2、0.5、1.0、1.5、2.0mm
厚さ :10mm
材質 :アクリル樹脂
である。
【0114】
2.実験用のワーク
図8に示す圧力測定が可能な円板状のワークWk1を用いた。すなわち、前述した第1の実施の形態に関する実施例と同一のワークWk1を用いた。その他の実験装置等も、第1の実施の形態の実施例で示したものと同一である。
【0115】
3.実験結果
表1および表2は、吹出口の径が5φ(半径roが2.5mm)のものと、吹出口の径が10φ(半径roが5mm)のものの実験結果をそれぞれまとめたものである。また、図20〜図27は、表1および表2のデータをグラフ化したものである。さらに、実際に圧力分布を測定した結果は、図28〜図36に示した。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
表1および表2において、δは微小段差であり、dは段状境界面の径であり、Wtmaxは最大ワーク荷重(吸着力)であり、tminは外側吸着面とワークWk1との間のクリアランスである。
なお、防音防振効果は、耳および指先等の感覚を用いた官能検査の結果を示したものであり、◎印は振動および騒音が全く気にならない状態、○印は振動および騒音がほとんど気にならない状態、△印は振動が気になるが騒音が気にならない状態、×印は振動および騒音が気になる状態を意味している。また、◎○印は◎印と○印との中間的な状態、○△印は○印と△印の中間的な状態、△×印は△印と×印との中間的な状態を意味している。ただし、△×印以上であれば、ワークWk1を吸着して搬送する上で、騒音および振動が障害になることがない。
【0119】
4.考察
図20および図21から、微小段差δが小さいほど、防音効果と防振効果が高くなる傾向にあることがわかる。そして、この傾向は、吹出口の径が5φから10φへ大きくなるほど顕著である。また、段状境界面の径dが大きくなるほど防音効果と防振効果が高くなることがわかる。
【0120】
例えば、図20で示す吹出口の径が5φの場合は、段状境界面の径を40φとすることによって、微小段差δが少なくとも3.0mm程度までは△印以上の防音効果と防振効果があり、振動、騒音の面で支障なく使用可能であると推定できる。これは、図20の鎖線で示すように、微小段差δが2.0mmまでのデータに基づいて推定したものである。したがって、微小段差δを2.5mm以下にすればより支障のない状態にすることができるとともに、微小段差δを2.0mm以下にすれば、確実に支障のない状態にすることができ、さらに1.5mm以下、1.0mm以下にすることによって、防音効果と防振効果の向上を図ることができる。
【0121】
また、実験データはないが、微小段差δが0.05mm未満になった場合には、当該微小段差δが小さくなりすぎて、内側吸着面と外側吸着面とが面一状になることから、防音効果と防振効果が低下するものと推定できる。
【0122】
したがって、微小段差δは、0.05〜3.0mmに設定することによって、振動、騒音の面で支障なく使用することができる。ただし、防音効果と防振効果をより確実に得るためには、微小段差を0.1〜2.5mmに設定することが好ましく、さらには0.1〜2mmに設定することが好ましく、さらには0.1〜1.5mm、そしてさらには0.1〜1.0mmに設定することがより好ましい。
【0123】
一方、段状境界面の径dは、図22および図23に示すように、大きくなるほど防音効果と防振効果が高くなる。例えば、図22の吹出口の径が5φの場合は、微小段差δが0.5〜2.0mmのいずれの場合も、少なくとも50mm(吹出口の中心から25mm)までは防音効果と防振効果が高いと推定できる。ただし、これは、段状境界面の径dが40mmまでのデータに基づいて推定したものである。段状境界面の径dが40mmであれば、防音効果と防振効果が確実に得られる。
また、段状境界面の径dが20mm未満になると、微小段差δが0.5mmや1.0mmの場合も、防音効果と防振効果が△印未満に低下することが推定される。ただし、段状境界面の径dが15mm(吹出口の中心から7.5mm)であれば、十分△×印以上の範囲に入ることが推定できる。
【0124】
したがって、段状境界面の径dは、15〜50mmの範囲内に形成することによって、振動、騒音の面で支障なく使用することができる。ただし、防音効果と防振効果をより確実に得るためには、段状境界面の径dは、20〜40mmの範囲内に形成することが好ましく、さらには30〜40mmの範囲内に形成することが好ましい。
ただし、吹出口の径が5φ(半径roが2.5mm)より小さい場合は、吹出口の中心から数ミリの半径範囲まで小さくしても、防音および防振に有効に効果が表れるデータ(図示せず)が得られている。すなわち、吹出口の径が5φ未満の場合は、段状境界面の径dを5〜50mmの範囲に設定しても、許容可能な吸引力を維持しつつ、防音および防振に効果のあるデータが得られた。
【0125】
また、吸着力としての最大ワーク荷重Wtmaxは、図24および図25に示すように、微小段差δの増大に伴って減少する傾向にある。
さらに、最大ワーク荷重Wtmaxは、図26に示すように、段状境界面の径dの増大に伴って減少する傾向にある。
【0126】
さらに、外側吸着面とワークWk1との間のクリアランスtminは、図27に示すように、最大ワーク荷重Wtmaxの増大にともなって減少する傾向にある。また、クリアランスtminは、微小段差δの増大に伴って増大する傾向にある。
【0127】
なお、上述した微小段差δの範囲は、十分大きな最大ワーク荷重Wtmax(吸着力)を得るという見地からすれば、図24および図25に示すように、2.5mm以下に設定することが好ましく、さらには2mm以下に設定することが好ましく、さらには1.5mm以下に設定することがより好ましく、またさらには1mm以下に設定することがより好ましい。
【0128】
また、上述した段状境界面の径dの範囲についても、十分大きな最大ワーク荷重Wtmaxを得るという見地からすれば、図26に示すように、40mm以下に設定することが好ましい。
なお、図24〜図26に示すデータとは別に、異なる試験装置により、一定流量に対する最大ワーク荷重Wtmaxは、吹出口径10φ、微小段差0.2mm、段差径(段状境界面の径)30φの吸着ディスクにおいて、流量1100リッター/minのとき6.5kgf、また、吹出口径5φ、微小段差0.2mm、段差径30φの吸着ディスクにおいて、流量650リッター/minのとき6.0kgfとなるデータ(図示せず)が得られている。
【0129】
次に、図28〜図36に示した圧力分布の測定結果について説明する。
図28〜図32は吹出口の径が5φのものに関する測定結果である。図28においては、微小段差δのない場合の圧力分布もプロットしている。微小段差δがあるものは、ないものに対して、負圧が半径方向に広がり最大負圧が小さくなっており、このことから、流速が減少し流体の振動が抑制されていることが窺える。さらに、微小段差δを有するものは、一旦、正圧になった後、再び負圧になる図19の圧力分布モデルにしたがった圧力分布の曲線形状を示していることが確認できる。
【0130】
また、図29に示すように、段状境界面の径dの違いによって、圧力分布の異なったものになることがわかる。これは、段状境界面の径によって圧力分布を調整できる可能性のあることを示している。
【0131】
さらに、図30において、段状境界面の径dが20mmのものは、その圧力分布が微小段差δがないものに近似した状態になっている。これは、内側吸着面において負圧から正圧に転換し、段状境界面そのものが吹出口として作用しているためと思われる。この傾向は、例えば図31および図32の圧力分布においても観察され、微小段差δが大きいほど顕著である。このような圧力分布となる場合には、騒音や振動が発生する傾向にあった。したがって、段状境界面の径dが15mm未満では防音効果と防振効果が少ないといえる。
【0132】
図33〜図36は吹出口の径が10φのものに関する測定結果である。なお、図35には、比較のために微小段差δがない場合の圧力分布もプロットしている。
吹出口の径が10φの場合も、上述した吹出口の径が5φの場合と同様に、微小段差δによる効果が顕著に現れている。なお、吹出口の径が5φの場合に比して、負圧の絶対値が大きくなっているのは、10φのものは吹出口における動圧の値が小さくなっているためである。
【0133】
以上、吸着面における適切な位置に段状境界面を設けることによって、吸着時の騒音や振動を除去することができることが実験的に確かめられた。また、微小段差δ、段状境界面の径d、吹出口の径をパラメータとして選択することにより、これらのパラメータに基づいて防音効果と防振効果を得る上で最適な条件範囲があることも明らかになった。
【0134】
なお、吹出口の径と防音防振効果との関係については、上記実験結果において特に言及しなかったが、図20〜図23に示すように、吹出口の径が小さくなるほど、微小段差δおよび段状境界面の径dの広い範囲で良好な防音効果と防振効果が得られることが分かる。したがって、吹出口の径を10φより5φにした方が、防音および防振を図る上での設計が容易になるという利点がある。
【0135】
次に、第1の実施の形態の他の例として示した図3(b)の非接触吸着ディスクに関する実験結果を図37を参照して説明する。
【0136】
1.実験条件
この実験で使用した非接触吸着ディスクは、ディスク本体11の径が92φ、吹出口11bの径が5φである。また、ワークWkは、その径が60φであり、重さが243gである。そして、吸着状態において、図3(b)の頂板部16、周壁部15およびリブ15cによって、ワークWkの周囲に、断面が9×10mmの環状の空間部が形成されるようになっている。
【0137】
また、吸引流路15bは、その内径が7.5φであり、周壁部15における周方向に4等分する位置に設けられている。各吸引流路15bにはストップバルブ(図示せず)が接続されており、各ストップバルブはアダプタ(図示せず)を介して500ワットの遠心式の吸引ファン(図示せず)に接続されている。
吸引ファンによる吸引圧力は、アダプタに設けた圧力センサ(図示せず)で検知するようになっている。この吸引圧力は、ゲージ圧力で−15〜−17kPaであった。
【0138】
また、非接触吸着ディスクの環状の空間部の圧力は、頂板部16における各吸引流路15bに対応する位置および各吸引流路15bの間の中央の位置において静圧として検出した。すなわち、頂板部16における周方向に8等分した位置から空間部の圧力を検出した。
【0139】
2.実験結果
図37において、線Eはいずれの吸引流路15bからも吸引しないときの空間部の圧力を示し、線Fはロ方向の1つの吸引流路15bから吸引した場合の空間部の圧力を示し、線Gはロ、ヘ方向の2つの吸引流路15bから吸引した場合の空間部の圧力を示し、線Hはロ、ニ、ヘ、チ方向の4つの吸引流路15bから吸引した場合の空間部の圧力を示してる。
また、各圧力は大気圧を0とし、真空を−1とする無次元圧力で表示している。
【0140】
3.考察
いずれの吸引流路15bからも吸引しないときは、線Eで示すように、空間部の各圧力がほぼ大気圧に等しい0となった。そして、1つの吸引流路15bから吸引するだけで、線Fで示すように、空間部の全体を大気圧以下の負圧に低下させることができる。すなわち、吸引流路15bを半径方向の外方に延在するように形成することによって、空間部内の空気を効率的に排出することができることがわかる。
したがって、ワークWkを搬送する際に、空気が外に漏れるのを防止することができるので、例えばクリーンルームにおいて、シリコンウエハ等を搬送する手段として有効に利用することができる。
なお、吸引流路15bによって吸引する箇所を増やすことによって、図37に示す通り空間部の圧力をさらに低下させることができる。
【0141】
以上説明したように、請求項1〜3に記載の発明によれば、吸着面が吹出口から負正転換位置以上の広がりを有するように形成されているので、細隙に生じる負圧の全てを保持対象物の保持のために利用することができる。したがって、吸引効率をほぼ最高の状態まで高めることができるとともに、より重い保持対象物を保持することができる。
【0142】
また、細隙を流れる流体による境界層が常に介在した状態で、かつ細隙を流れる流体の負圧のみで保持対象物を保持することができるので、非接触の状態で保持対象物を安定的に保持することができる。
さらに、流体の流速が負正転換位置以上に広がることにより急速に低下するので、その放出された流体が、例えば、クリーンルームの気流を乱したり、塵埃を巻き上げたりするのを防止することができる。
【0143】
また、吹出口への流体の供給流路を、吹出口から吸着面に沿って半径方向の外方に向けて延在するように設けた場合には、薄型のもので構成することができるという利点がある。
【0144】
さらに、吸着面の半径方向の外方を環状に囲む周壁部に、吸引口を設けた場合には、吸着面から半径方向の外方に流出する流体を、その流体の運動エネルギーを利用して効率よく吸引することができる。
【0145】
一方、吹出口から噴出した流体が少なくとも内側細隙を流れる際に高速になることにより、静圧が低下し、当該内側細隙内が負圧になる。したがって、保持対象物を吸着する力を維持することができる。
ただし、微小段差を設けることによって、内側細隙を流れる流体の流速が低下することになるので、当該流体のレイノルズ数が低下することになる。したがって、内側細隙を流れる流体が乱流側から層流側に変化することになるので、例えば微小段差を設けていない場合には騒音や保持対象物に振動が生じる場合でも、当該微小段差を設けることによって、当該振動の発生を防止することができる。すなわち、加振源を断つことによって、非接触吸着ディスクの防音および防振を図ることができる。
【0146】
また、微小段差が0.05〜3.0mmであることから、防音効果と防振効果および吸着効果を共に得ることができる。
【0147】
請求項2に記載の発明によれば、内側吸着面が吹出口の中心から7.5〜25mmの半径範囲内に形成されているので、防音効果と防振効果および吸着効果を共に得ることができる。これらの効果は、特に吹出口の半径が2.5mm以上のときに顕著である。
【0148】
請求項3に記載の発明によれば、内側吸着面が吹出口の中心から2.5〜25mmの半径範囲内に形成されているので、防音効果と防振効果および吸着効果を共に得ることができる。これらの効果は、特に吹出口の半径が2.5mm未満のときに顕著になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態として示した非接触吸着ディスクを示す断面図である。
【図2】同非接触吸着ディスクを示す図であって、(a)は斜め上からの斜視図であり、(b)は斜め下からの斜視図である。
【図3】同非接触吸着ディスクの他の例を示す図であって、(a)は吹出流路を吸着面に沿って半径方向に延在するように構成した非接触吸着ディスクを示す断面図であり、(b)はディスク本体の半径方向の外方を環状に囲む周壁部に、吸引口を設けるように構成した非接触吸着ディスクを示す断面図であり、(c)は負正転換位置より小径のディスク本体を有するもので構成した参考例としての非接触吸着ディスクである。
【図4】この発明の理論解析で用いた非接触吸着ディスクの説明図である。
【図5】同非接触吸着ディスクの理論解析の結果を示すグラフである。
【図6】同非接触吸着ディスクの比較例として示した末広がりテーパー状の非接触吸着ディスクを示す説明図である。
【図7】同非接触吸着ディスクの他の比較例として示した先細りテーパー状の非接触吸着ディスクを示す説明図である。
【図8】この発明の実施例で示した実験用の非接触吸着ディスクを示す断面図である。
【図9】同実施例における実験結果を示す図であって、吹出し口全圧とその全圧に対する最大荷重との関係を示すグラフである。
【図10】同実施例における実験結果を示す図であって、P140φ・10φの平行細隙の非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図11】同実施例における実験結果を示す図であって、D120φ・10φの末広がりテーパー状の非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図12】同実施例における実験結果を示す図であって、C120φ・10φの先細りテーパー状の非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図13】同実施例における実験結果を示す図であって、T150φ・5φの平行細隙の薄型非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図14】同実施例における実験結果を示す図であって、P378φ・23φの平行細隙の非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図15】同実施例におけるP140φ・10φの平行細隙の非接触吸着ディスク等の解析上比較のために示したラヴァールノズルの説明図である。
【図16】この発明の第2の実施の形態として示した非接触吸着ディスクを示す断面図である。
【図17】同非接触吸着ディスクを示す図であって、(a)は斜め上からの斜視図であり、(b)は斜め下からの斜視図である。
【図18】微小段差がない場合の流体の振動の発生領域を示す説明図である。
【図19】上記第2の実施の形態の非接触吸着ディスクにおける理論的圧力分布モデルを示す説明図である。
【図20】同非接触吸着ディスクの実施例で示した実験結果をまとめたものであって、吹出口の径が5φのものに関する微小段差δと防音防振効果との関係を示したグラフである。
【図21】同実験結果をまとめたものであって、吹出口の径が10φのものに関する微小段差と防音防振効果との関係を示したグラフである。
【図22】同実験結果をまとめたものであって、吹出口の径が5φのものに関する段状境界面の径と防音防振効果との関係を示したグラフである。
【図23】同実験結果をまとめたものであって、吹出口の径が10φのものに関する段状境界面の径と防音防振効果との関係を示したグラフである。
【図24】同実験結果をまとめたものであって、吹出口の径が5φのものに関する微小段差と最大ワーク荷重との関係を示したグラフである。
【図25】同実験結果をまとめたものであって、吹出口の径が10φのものに関する微小段差と最大ワーク荷重との関係を示したグラフである。
【図26】同実験結果をまとめたものであって、吹出口の径が5φのものに関する段状境界面の径と最大ワーク荷重との関係を示したグラフである。
【図27】同実験結果をまとめたものであって、吹出口の径が5φのものに関する最大ワーク荷重と外側吸着面におけるクリアランスとの関係を示したグラフである。
【図28】同実験結果を示すものであって、吹出口の径が5φ、段状境界面の径が40φ、微小段差が0mm、0.1mm、0.2mmに設定された非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図29】同実験結果を示すものであって、吹出口の径が5φ、微小段差が0.5mm、段状境界面の径が20φ、30φ、40φに設定された非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図30】同実験結果を示すものであって、吹出口の径が5φ、微小段差が1.0mm、段状境界面の径が20φ、30φ、40φに設定された非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図31】同実験結果を示すものであって、吹出口の径が5φ、微小段差が1.5mm、段状境界面の径が20φ、30φ、40φに設定された非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図32】同実験結果を示すものであって、吹出口の径が5φ、微小段差が2.0mm、段状境界面の径が20φ、30φ、40φに設定された非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図33】同実験結果を示すものであって、吹出口の径が10φ、微小段差が0.1mm、段状境界面の径が30φ、40φに設定された非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図34】同実験結果を示すものであって、吹出口の径が10φ、微小段差が0.2mm、段状境界面の径が40φに設定された非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図35】同実験結果を示すものであって、吹出口の径が10φ、微小段差が0mm、0.5mm、段状境界面の径が20φ、30φ、40φに設定された非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図36】同実験結果を示すものであって、吹出口の径が10φ、微小段差が1.0mm、段状境界面の径が30φ、40φに設定された非接触吸着ディスクの圧力分布を示すグラフである。
【図37】第1の実施の形態の他の例として示した図3(b)の非接触吸着ディスクに関する実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
11 ディスク本体
11a 吸着面
11b 吹出口
11c 内側吸着面
11d 外側吸着面
11e 段状境界面
12a 吹出流路(流体を吹出口に供給する流路)
13 細隙
13a 内側細隙
13b 外側細隙
15 周壁部
15a 吸引口
rc 負正転換位置
Wk ワーク(保持対象物)
δ 微小段差
Claims (3)
- 平面状に広がる吸着面に流体の吹出口を設けてなり、上記吹出口から吹き出した流体が上記吸着面とこの吸着面に近接する保持対象物と間の細隙に高速で流れることにより、当該流体の静圧が負圧になることを利用して、上記保持対象物を上記細隙を流れる流体の境界層を介して保持するように構成した非接触吸着ディスクであって、
上記吸着面は、上記流体が上記吹出口から放射状に広がるように移動することによる流速の低下に伴って負圧から大気圧以上の正圧に転じる負正転換位置以上の広がりを有するように形成されるとともに、上記吹出口の外側に平面状に広がる内側吸着面と、この内側吸着面の外側に平面状に広がる外側吸着面とを備えており、かつ
上記内側吸着面は、上記外側吸着面に対して上記保持対象物の加振を阻止可能な0.05〜3.0mmの微少段差分だけ凹状に形成されるとともに、上記微小段差は、上記吹出口から上記内側吸着面と上記保持対象物との間の内側細隙および上記外側吸着面と上記保持対象物との間の外側細隙を流れる流体が少なくとも上記内側細隙において高速となって負圧を生じさせるような寸法に設定されていることを特徴とする非接触吸着ディスク。 - 上記内側吸着面は、上記吹出口の中心から7.5〜25mmの半径範囲内に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非接触吸着ディスク。
- 上記内側吸着面は、上記吹出口の中心から2.5〜25mmの半径範囲内に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非接触吸着ディスク。
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