JP3918178B2 - 高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンナノチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブその他のナノスケールカーボンチューブを含有する炭素質材料から不純物を除去して高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から水素吸蔵材料として、カーボンナノチューブが知られており、更に本願出願人の開発にかかるアモルファスナノスケールカーボンチューブ(特許文献1参照)等のナノスケールカーボンチューブを含有する炭素質材料が知られている。
【0003】
また、ナノスケールのカーボンチューブを含有する炭素質材料として、 (a)ナノフレークカーボンチューブ又は入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと、(b)炭化鉄又は鉄とからなり、該カーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に、該炭化鉄又は鉄(b)が存在している鉄−炭素複合体を含有する炭素質材料が知られている(特許文献2)。かかる鉄−炭素複合体含有炭素質材料は、例えば電子放出材料、その他の各種用途において有用である。
【0004】
これら炭素質材料は、製造直後の状態では、すす、金属触媒に由来する金属化合物等の不純物を含有している。
【0005】
このような不純物を含有した炭素質材料であっても種々の用途に使用できるが、ナノスケールカーボンチューブ本来の性質に基づく特性、例えば、水素吸蔵能、電子放出特性等の所望の特性を更に向上させるために、該炭素質材料中の所望の特性に寄与しない不純物を除去し、ナノスケールカーボンチューブの存在割合を高めた高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料の開発が要請されている。
【0006】
従来、単層カーボンナノチューブを含む粗生成物から単層カーボンナノチューブを分離する方法として、
(a)単層カーボンナノチューブを含む粗生成物を溶媒中に超音波を用いて分散させ、
(b)その溶液をクロマトグラフィ用カラムに通すことにより単層カーボンナノチューブとナノ粒子以外の炭素物質を分離し、さらに、
(c)単層カーボンナノチューブとナノ粒子の分子量、形状の差によるカラム中での展開速度の相違により、カラムクロマトグラフィを用いて単層カーボンナノチューブを分離し、
(d)分離された前記単層カーボンナノチューブを、回転ドラムにばらまき、
(e)電子ビームの照射またはコロナ放電シャワーを浴びせることにより単層カーボンナノチューブを帯電させ、
(f)回転ドラムを回転させることにより、帯電しなかった金属タイプの単層カーボンナノチューブを回転ドラムから除くことにより金属タイプの単層カーボンナノチューブと絶縁タイプの単層カーボンナノチューブとに分離する
ことを特徴とする単層カーボンナノチューブの精製方法が知られている(特許文献3)。
【0007】
この特許文献3の方法は、単層カーボンナノチューブ(CNTs)を含有する炭素質材料において、金属質のCNTsと非金属質CNTsとの分離、並びに、金属質CNTsと不純物との分離を行って精製する方法である。この方法は、溶媒を使用すると共にカラムクロマトグラフィのための展開液(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤等)、その他の薬品を使用しなければならない;上記工程(e)において単層カーボンナノチューブを帯電させるために電子ビームの照射またはコロナ放電シャワーを浴びせなければならず、カーボンナノチューブが破壊ないし変性されるおそれがある;多数の工程を要するので操作が煩雑である等の欠点を有する。
【0008】
【特許文献1】
WO00/40509=特許第3355442号(請求項1)
【0009】
【特許文献2】
特開2002−338220号公報(請求項1)
【0010】
【特許文献3】
特開平8−231210号公報(請求項1)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶媒その他の化学薬品を使用することなく、簡単な操作で高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を製造でき、ナノスケールカーボンチューブの破壊又は変性のおそれの少ない製造法を提供することを主な目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、次の知見を得た。即ち、カーボンナノチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブその他のナノスケールカーボンチューブを含有する炭素質材料を帯電させることなく、該炭素質材料を、帯電した基材に接触又は接近させると、該炭素質材料中に含まれている不純物が静電力により優先的に基材に付着する。そのため、該基材に付着した不純物とナノスケールカーボンチューブとの分離が極めて容易となる。こうして、溶媒を使用することなく、高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料が製造できる。
【0013】
本発明はこの知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料の製造法を提供するものである。
【0014】
項1 (i)原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料と、静電気を帯びた基材とを接触又は接近させて、該原料ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料中に含まれている不純物を基材表面に付着させる工程、及び
(ii)該基材表面に付着しなかった高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を回収する工程
を含むことを特徴とする高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料の製造法。
【0015】
項2 ナノスケールカーボンチューブが、アモルファスナノスケールカーボンチューブ及び多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記項1に記載の製造法。
【0016】
項3 ナノスケールカーボンチューブが、(a)ナノフレークカーボンチューブと、(b)鉄又は炭化鉄とからなり、該ナノフレークカーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に、該鉄又は炭化鉄(b)が存在している鉄−炭素複合体である上記項1に記載の製造法。
【0017】
項4 基材が、帯電可能なガラス、樹脂、ゴム及び繊維からなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる容器又は両端が開口した管である上記項1〜3のいずれかに記載の製造法。
【0018】
項5 静電気を帯びた基材が、気体導入口を備え、静電気を帯びた密閉容器であり、
工程(i)を、該基材である密閉容器内で、原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料に気体を吹き付けること、及び/又は、原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料内に気体を吹き込むことにより、該炭素質材料を容器内空間部に浮遊させ、浮遊した不純物を、静電気を帯びた密閉容器内面に付着させることにより行い、
工程(ii)を、浮遊したナノスケールカーボンチューブを容器底部に沈降させ、沈降したナノスケールカーボンチューブを回収することにより行う
ことを特徴とする上記項1〜4のいずれかに記載の製造法。
【0019】
【発明の実施の形態】
原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料
本発明の製造法において、原料として使用する炭素質材料としては、ナノスケールカーボンチューブを含有する各種の炭素質材料が使用できる。該ナノスケールカーボンチューブとしては、カーボンナノチューブ、特許文献1に記載のアモルファスナノスケールカーボンチューブ、又は特許文献2に記載の鉄−炭素複合体、これらの混合物等が例示できる。本明細書においては、これらカーボンナノチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブ、鉄−炭素複合体を総称して「ナノスケールカーボンチューブ」というものとする。
【0020】
<カーボンナノチューブ>
カーボンナノチューブは、黒鉛シート(即ち、黒鉛構造の炭素原子面ないしグラフェンシート)がチューブ状に閉じた中空炭素物質であり、その直径はナノメートルスケールであり、壁構造は黒鉛構造を有している。かかるカーボンナノチューブは、1991年に飯島澄男氏により発見された。カーボンナノチューブのうち、壁構造が一枚の黒鉛シートでチューブ状に閉じたものは単層カーボンナノチューブと呼ばれ、複数枚の黒鉛シートがそれぞれチューブ状に閉じて、入れ子状になっているものは入れ子構造の多層カーボンナノチューブと呼ばれている。
【0021】
本発明では、これらカーボンナノチューブと不純物を含有する炭素質材料を、原料として使用することができる。これらナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料は、公知の方法、例えば、アーク放電法、熱CVD法等の方法により製造される。
【0022】
本発明では、上記多層カーボンナノチューブを含有する炭素質材料を、原料として使用するのが好ましい。
【0023】
<アモルファスナノスケールカーボンチューブ>
アモルファスナノスケールカーボンチューブは、WO00/40509(特許第3355442号=上記特許文献1)に記載されており、カーボンからなる主骨格を有し、直径が0.1〜1000nmであり、アモルファス構造を有するナノスケールナノスケールカーボンチューブであって、直線状の形態を有し、X線回折法(入射X線:CuKα)において、ディフラクトメーター法により測定される炭素網平面(002)の平面間隔(d002)が3.54Å以上、特に3.7Å以上であり、回折角度(2θ)が25.1度以下、特に24.1度以下であり、2θバンドの半値幅が3.2度以上、特に7.0度以上であることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の製造法は、このアモルファスナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を原料として用いて、高純度のアモルファスナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を製造するのに特に適している。
【0025】
該アモルファスナノスケールカーボンチューブは、マグネシウム、鉄、コバルト、ニッケル等の金属の塩化物の少なくとも1種からなる触媒の存在下で、分解温度が200〜900℃である熱分解性樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール等を、励起処理することにより得られる。
【0026】
本発明で使用するアモルファスナノスケールカーボンチューブは、アモルファス構造(非晶質構造)を有するナノスケールのカーボンナノチューブで、中空直線状であり、細孔が高度に制御されている。その形状は、主に円柱、四角柱などであり、先端の少なくとも一方が、キャップを有していない(開口している)場合が多い。先端が閉口している場合には、形状がフラット状である場合が多い。
【0027】
該アモルファスナノスケールカーボンチューブの外径は、通常1〜1000nm程度の範囲にあり、好ましくは1〜200nm程度の範囲にあり、より好ましくは、1〜100nm程度の範囲にある。そのアスペクト比(チューブの長さ/直径)は2倍以上であり、好ましくは5倍以上である。
【0028】
ここで、「アモルファス構造」とは、規則的に配列した炭素原子の連続的な炭素層からなる黒鉛質構造ではなく、不規則な炭素網平面からなる炭素質構造を意味し、多数の微細なグラフェンシートが不規則に配列し、原子の配列が不規則になっている。代表的な分析手法である透過型電子顕微鏡(TEM)による像からは、本発明による非晶質構造のナノスケールナノスケールカーボンチューブは、上記微細なグラフェンシート1枚の炭素網平面の平面方向の広がりがアモルファスナノスケールカーボンチューブの直径の1倍より小さい、特に、アモルファスナノスケールカーボンチューブ直径の1倍以下、特に、20nmより小さいものと規定できる。
【0029】
典型的には、本発明で使用するアモルファスナノスケールカーボンチューブは、X線回折による回折角度(2θ)が18.9〜22.6度の範囲内にあり、炭素網平面間隔(d002)は3.9〜4.7Åの範囲内にあり、2θバンドの半値幅は7.6〜8.2度の範囲内にある。
【0030】
本発明で使用するアモルファスナノスケールカーボンチューブの形状を表す一つの用語である「直線状」なる語句は、次のように定義される。すなわち、透過型電子顕微鏡によるアモルファスナノスケールカーボンチューブ像の長さをLとし、そのアモルファスナノスケールカーボンチューブを伸ばした時の長さをL0とした場合に、L/L0が0.9以上となる形状特性を意味するものとする。
【0031】
<鉄−炭素複合体>
本発明で使用する鉄−炭素複合体は、前記特許文献2に記載のものであり、(a)ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)炭化鉄又は鉄とからなる鉄−炭素複合体であって、カーボンチューブ内空間部の10〜90%に炭化鉄又は鉄が充填されていることを特徴とする。
【0032】
本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成する炭素製チューブの一つは、フレーク状の黒鉛シートが複数枚(通常は多数)パッチワーク状ないし張り子状に集合して構成されていると思われる、黒鉛シートの集合体からなる炭素製チューブである。本明細書において、この炭素製チューブを「ナノフレークカーボンチューブ」という。このナノフレークカーボンチューブは、一枚の黒鉛シートが円筒状に閉じた単層カーボンナノチューブや複数枚の黒鉛シートがそれぞれ円筒状に閉じて同心円筒状ないし入れ子状となっている多層カーボンナノチューブとは全く構造の異なるチューブ状炭素材である。以下、本発明で使用する鉄−炭素複合体について詳述する。
【0033】
<(a-1) ナノフレークカーボンチューブ>
本発明のナノフレークカーボンチューブと炭化鉄又は鉄からなる鉄−炭素複合体は、典型的には円柱状である。図3の(a-1)にそのような円柱状のナノフレークカーボンチューブの透過型電子顕微鏡による像の模式図を示す。図3の(a-1)において、100は、ナノフレークカーボンチューブの長手方向のTEM像を模式的に示しており、200は、ナノフレークカーボンチューブの長手方向にほぼ垂直な断面のTEM像を模式的に示している。
【0034】
本発明の鉄−炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブは、図3の(a-1)の200から明らかなように、その長手方向に垂直な断面をTEM観察した場合、多数の弧状グラフェンシート像が多層構造のチューブ状に集合しているが、個々のグラフェンシート像は、例えば210、214に示すように、完全に閉じた連続的な環を形成しておらず、途中で途切れた不連続な環を形成している。一部のグラフェンシート像は、211に示すように、分岐している場合もある。不連続点においては、一つの不連続環を構成する複数の弧状TEM像は、図3の(a-1)の222に示すように、層構造が部分的に乱れている場合もあれば、223に示すように隣接するグラフェンシート像との間に間隔が存在している場合もあるが、TEMで観察される多数の弧状グラフェンシート像は、全体として、多層状のチューブ構造を形成している。
【0035】
また、図3の(a-1)の100から明らかなように、ナノフレークカーボンチューブの長手方向をTEMで観察した場合、多数の略直線状のグラフェンシート像が本発明の鉄−炭素複合体の長手方向にほぼ並行に多層状に配列しているが、個々のグラフェンシート像110は、鉄−炭素複合体の長手方向全長にわたって連続しておらず、途中で不連続となっている。一部のグラフェンシート像は、図3の(a-1)の111に示すように、分岐している場合もある。また、不連続点においては、層状に配列したTEM像のうち、一つの不連続層のTEM像は、図3の(a-1)の112に示すように、隣接するグラフェンシート像と少なくとも部分的に重なり合っている場合もあれば、113に示すように隣接するグラフェンシート像と少し離れている場合もあるが、多数の略直線状のTEM像が、全体として多層構造を形成している。
【0036】
かかる本発明のナノフレークカーボンチューブの構造は、従来の多層カーボンナノチューブと大きく異なっている。即ち、図3の(a-2)の400に示すように、入れ子構造の多層カーボンナノチューブは、その長手方向に垂直な断面のTEM像が、410に示すように、完全な円形のTEM像となっている同心円状のチューブであり、且つ、図3の(a-2)の300に示すように、その長手方向の全長にわたって連続する直線状グラフェンシート像310等が平行に配列している構造(同心円筒状ないし入れ子状の構造)である。
【0037】
以上より、詳細は未だ完全には解明されていないが、本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブは、フレーク状のグラフェンシートが多数パッチワーク状ないし張り子状に重なり合って全体としてチューブを形成しているようにみえる。
【0038】
このような本発明のナノフレークカーボンチューブとそのチューブ内空間部に内包された炭化鉄又は鉄からなる鉄−炭素複合体は、特許第2546114号に記載されているような入れ子構造の多層カーボンナノチューブのチューブ内空間部に金属が内包された複合体に比し、カーボンチューブの構造において大きく異なっており、従来知られていなかった新規な炭素質材料である。
【0039】
本発明の鉄−炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブをTEM観察した場合において、その長手方向に配向している多数の略直線状のグラフェンシート像に関し、個々のグラフェンシート像の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。即ち、図3の(a-1)の100に示されるように、110で示される略直線状のグラフェンシートのTEM像が多数集まってナノフレークカーボンチューブの壁部のTEM像を構成しており、個々の略直線状のグラフェンシート像の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。
【0040】
本発明の鉄−炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブの壁部の炭素部分は、上記のようにフレーク状のグラフェンシートが多数長手方向に配向して全体としてチューブ状となっているが、X線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するものである。
【0041】
また、本発明の鉄−炭素複合体のナノフレークカーボンチューブからなる壁部の厚さは、49nm以下、特に0.1〜20nm程度、好ましくは1〜10nm程度であって、全長に亘って実質的に均一である。
【0042】
<(a-2) 入れ子構造の多層カーボンナノチューブ>
入れ子構造の多層カーボンナノチューブは、図3の(a-2)の400に示すように、その長手方向に垂直な断面のTEM像が実質上完全な円を構成する同心円状のチューブであり、且つ、その長手方向の全長にわたって連続したグラフェンシート像が平行に配列している構造(同心円筒状ないし入れ子状の構造)である。
【0043】
本発明の鉄−炭素複合体を構成する入れ子構造の多層カーボンナノチューブの壁部の炭素部分は、X線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するものである。
【0044】
また、本発明の鉄−炭素複合体の入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる壁部の厚さは、49nm以下、特に0.1〜20nm程度、好ましくは1〜10nm程度であって、全長に亘って実質的に均一である。
【0045】
<(b)内包されている炭化鉄又は鉄>
本明細書において、上記カーボンチューブ内空間部の炭化鉄又は鉄による充填率(10〜90%)は、本発明により得られた鉄−炭素複合体を透過型電子顕微鏡で観察し、各カーボンチューブの空間部(即ち、カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)の像の面積に対する、炭化鉄又は鉄が充填されている部分の像の面積の割合である。
【0046】
炭化鉄又は鉄の充填形態は、カーボンチューブ内空間部に連続的に充填されている形態、カーボンチューブ内空間部に断続的に充填されている形態等があるが、基本的には断続的に充填されている。従って、本発明の鉄−炭素複合体は、金属内包炭素複合体ないし鉄化合物内包炭素複合体、炭化鉄又は鉄内包炭素複合体とも言うべきものである。
【0047】
また、本発明の鉄−炭素複合体に内包されている炭化鉄又は鉄は、カーボンチューブの長手方向に配向しており、結晶性が高く、炭化鉄又は鉄が充填されている範囲のTEM像の面積に対する、結晶性炭化鉄又は鉄のTEM像の面積の割合(以下「結晶化率」という)は、一般に、90〜100%程度、特に95〜100%程度である。
【0048】
上記鉄−炭素複合体は、湾曲が少なく、直線状であり、壁部の厚さが全長に亘ってほぼ一定の均一厚さを有しているので、全長に亘って均質な形状を有している。その形状は、柱状で、主に円柱状である。
【0049】
上記鉄−炭素複合体の外径は、通常、1〜100nm程度、特に1〜50nm程度の範囲にあり、好ましくは1〜30nm程度の範囲にあり、より好ましくは10〜30nm程度の範囲にある。チューブの長さ(L)の外径(D)に対するアスペクト比(L/D)は、5〜10000程度であり、特に10〜1000程度である。
【0050】
上記鉄−炭素複合体の形状を表す一つの用語である「直線状」なる語句は、次のように定義される。即ち、透過型電子顕微鏡により本発明の鉄−炭素複合体を含む炭素質材料を200〜2000nm四方の範囲で観察し、像の長さをWとし、該像を直線状に伸ばした時の長さをWoとした場合に、比W/Woが、0.8以上、特に、0.9以上となる形状特性を意味するものとする。
【0051】
上記のようなナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブから選ばれるカーボンチューブのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に鉄または炭化鉄が充填されている鉄−炭素複合体は、顕微鏡観察によりかろうじて観察できる程度の微量ではなく、多数の該鉄−炭素複合体を含むバルク材料であって、鉄−炭素複合体を含む炭素質材料、或いは、炭化鉄又は鉄内包炭素質材料ともいうべき材料の形態で大量に得られる。
【0052】
本発明の鉄−炭素複合体を含む炭素質材料においては、基本的にはほとんど全ての(特に99%又はそれ以上の)カーボンチューブにおいて、その空間部(即ち、カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)の10〜90%の範囲に炭化鉄又は鉄が充填されており、空間部が充填されていないカーボンチューブは実質上存在しないのが通常である。但し、場合によっては、炭化鉄又は鉄が充填されていないカーボンチューブも微量混在することがある。
【0053】
また、本発明の炭素質材料においては、上記のようなカーボンチューブ内空間部の10〜90%に鉄または炭化鉄が充填されている鉄−炭素複合体が主要構成成分であるが、本発明の鉄−炭素質複合体以外に、スス等が含まれている。
【0054】
本発明炭素質材料は、該炭素質材料1mgに対して25mm2以上の照射面積で、CuKαのX線を照射した粉末X線回折測定において、内包されている鉄または炭化鉄に帰属される40°<2θ<50°のピークの中で最も強い積分強度を示すピークの積分強度をIaとし、カーボンチューブの炭素網面間の平均距離(d002)に帰属される26°<2θ<27°のピークの積分強度Ibとした場合に、IaのIbに対する比R(=Ia/Ib)が、0.35〜5程度、特に0.5〜4程度であるのが好ましく、より好ましくは1〜3程度である。
【0055】
本明細書において、上記Ia/Ibの比をR値と呼ぶ。このR値は、本発明の鉄−炭素複合体を含む炭素質材料を、X線回折法において25mm2以上のX線照射面積で観察した場合に、炭素質材料全体の平均値としてピーク強度が観察されるために、TEM分析で測定できる1本の鉄−炭素複合体における内包率ないし充填率ではなく、鉄−炭素複合体の集合物である炭素質材料全体としての、炭化鉄又は鉄充填率ないし内包率の平均値を示すものである。
【0056】
尚、多数の本発明鉄−炭素複合体を含む炭素質材料全体としての平均充填率は、TEMで複数の視野を観察し、各視野で観察される複数の鉄−炭素複合体における炭化鉄又は鉄の平均充填率を測定し、更に複数の視野の平均充填率の平均値を算出することによっても求めることができる。かかる方法で測定した場合、本発明の鉄−炭素複合体からなる炭素質材料全体としての炭化鉄又は鉄の平均充填率は、10〜90%程度、特に40〜70%程度である。
【0057】
本発明で原料として使用する鉄−炭素複合体を含む炭素質材料は、(1)不活性ガス雰囲気中、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、反応炉内の酸素濃度を、反応炉容積をA(リットル)とし酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aが1×10-10〜1×10-1となる濃度に調整して、反応炉内でハロゲン化鉄を600〜900℃まで加熱する工程、及び(2)上記反応炉内を不活性ガス雰囲気とし、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、熱分解性炭素源を導入して600〜900℃で加熱処理を行う工程を包含する製造方法により得られる。
【0058】
ここで、酸素量Bの単位である「Ncc」は、気体の25℃での標準状態に換算したときの体積(cc)という意味である。
【0059】
工程(2)の加熱処理工程後、50〜2000℃/hで500℃まで冷却することにより、ナノフレークカーボンチューブとそのチューブ内空間部の10〜90%に充填されている炭化鉄又は鉄からなる鉄−炭素複合体を含む炭素質材料が生成させることができる。
【0060】
また、工程(2)の加熱処理工程後、(3)反応炉内を工程(2)の温度を維持したまま不活性気体で置換する工程、(4)不活性気体で置換された反応炉内を950〜1500℃に昇温する工程、(5)昇温終点で終点温度を入れ子構造の多層カーボンナノチューブが生成するまで維持する工程、及び(6)反応炉内を50℃/h以下の速度で冷却する工程を行うことにより、入れ子構造の多層カーボンナノチューブとそのチューブ内空間部の10〜90%に充填されている炭化鉄又は鉄からなる鉄−炭素複合体を含む炭素質材料を生成させることができる。
【0061】
<ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料>
本発明の製造法において原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料は、上記のカーボンナノチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブ、鉄−炭素複合体又はこれらの混合物を含有する炭素質材料である。
【0062】
前記のように、これらナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料は、製造時点では、不純物として、すす、製造時に使用した触媒由来の金属化合物、ナノ粒子等を含んでおり、ナノスケールカーボンチューブの純度(ナノスケールカーボンチューブの存在割合)が1〜80%程度、特に20〜70%程度である。
【0063】
ここで、本明細書において、炭素質材料中のナノスケールカーボンチューブの純度は、後述の実施例の項に記載の方法により求められる純度(視野率)を指すものとする。
【0064】
基材
本発明の製造法では、静電気を帯びた基材を使用する。かかる基材の材質としては、静電気を帯びさせることができる材料であれば特に限定されることなく広い範囲のものが使用できるが、再利用の観点等から、帯電可能なガラス、樹脂、ゴム、繊維等を例示することができる。これらのうちでも、ガラス、樹脂が好ましい。
【0065】
上記基材の形状は、特に限定されないが、本発明製造法を実施する際の効率を考慮すると、原料炭素材料を収容でき、且つ、密閉することができる任意の形状の容器の形態のものが好ましい。
【0066】
かかる容器としては、炭素質材料の仕込み及び精製後の精製物の取り出しのための一つの開口部を備えた容器が挙げられる。例えば、片端が開口し他端が閉口した筒状(特に、中空円筒状、多角柱中空筒状)の容器が好ましいが、これらに限定されない。該容器は、必要であれば、該開口部を閉じるための蓋部を備えていてもよい。また、かかる容器は炭素質材料にガスを吹き付け又は吹き込むための気体導入口を備えていることが好ましい。
【0067】
更に、本発明で基材として使用する容器は、炭素質材料の仕込み及び精製後の精製物の取り出しを容易にするために、2以上の部材に分割できる形態の容器であってもよい。例えば、図1に示すように、片端が閉口し他端が開口し、気体導入管4を備えた第1の筒状部材(底部部材)1と、同様に片端が閉口し他端が開口した第2の筒状部材(上部部材)2とを、それぞれの開口部を合わせて接合面3の気密が保たれるように組み立てることにより、上下端が閉じた筒状密閉容器とすることもできる。
【0068】
また、基材を、上記のような容器の形態で使用するのに代えて、図2に示すような、両端が開口した長い筒状の基材を用いることもできる。
【0069】
これら容器のサイズは、特に制限されることなく広い範囲のものが使用できる。
【0070】
また、本発明では、これら基材に静電気を帯びさせる必要がある。これら基材に帯電させる静電気としては、正及び負の帯電電位のいずれでもよく、その電荷量は原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料中の不純物を付着するに足る量であれば、特に限定されないが、一般的には、−5KV〜+5KV、特に−1KV〜+1KV程度であるのが好ましい。
【0071】
基材への帯電方法としては、従来公知の方法がいずれも使用でき、例えば、摩擦により静電気を発生する材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレンシート等)で上記容器の内壁面又は外壁面又は両壁面を摩擦する方法が使用できる。また、高圧電源を用いて電極間に正負の電位を発生させる方法を用いることにより帯電させることもできる。静電気の発生には、バン・デ・グラーフ型静電高圧発生装置等を使用してもよい。
【0072】
製造工程
本発明では、原料ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料と静電気を帯びた基材とを接触又は接近させ、原料ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料中に含まれている不純物から高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を分離することを特徴とする。
【0073】
本発明では、原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料と上記帯電した基材とを接触又は接近させた際に、不純物は相対的に軽いので、静電気を帯びた基材内壁面に付着され、ナノスケールカーボンチューブは通常凝集しているので重く、基材内壁面にほとんど付着されずに沈降する現象を利用して、不純物と目的のナノスケールカーボンチューブとを分離する。
【0074】
接触ないし接近させる方法としては特に制限されることなく、種々の方法が使用できるが、例えば、気体導入管を備えた容器形状の帯電基材内に、原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を収容し、これに気体を吹き付ける方法、及び/又は、該材料中に気体を吹き込む方法が有利である。上記気体としては、種々の気体が使用できるが、窒素等を例示できる。吹き付けないし吹き込みの程度は、炭素質材料を構成するナノスケールカーボンチューブ及び不純物粒子が空気中に浮遊するのに足る強さで行えばよい。
【0075】
この吹きつけ又は吹き込みにより、炭素質材料が容器内の空間に浮遊し、不純物は相対的に軽いので、静電気を帯びた基材の内壁面に静電力により付着する。なお、原料炭素材料として、アモルファスナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を使用する場合、該炭素質材料に含有される触媒由来の金属不純物は、その発生量がppmオーダーで極めて少なく、微量の粒子としてアモルファスナノスケールカーボンチューブに絡まっているので、基材内壁面に付着せず、分離が困難であるが、ススなどの不純物は基材内壁面に付着する。一方、目的とするナノスケールカーボンチューブは通常凝集しているので重く、基材の内壁面にほとんど付着されることなく、時間の経過と共に重力により容器底部に沈降する。
【0076】
こうして、容器底部に沈降したナノスケールカーボンチューブを取り出すことにより、精製された高純度のナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を得ることができる。また、この本発明方法を繰り返すことにより、精製の程度を向上させることができる。
【0077】
本発明製造法の実施形態の一つを示す図面を、図1の(a)〜(c)に示す。図1の(a)〜(c)において、同一部材は同一符号で示す。図1の(a)に示すように、本発明で使用する基材は、例えば、片端が閉じた円筒状の底部部材1と、片端が閉じた円筒状の上部部材2とを備えており、底部部材1の開口部と上部部材2の開口部とを接合することにより、上下端が閉じた円筒形の密閉容器を形成している。その材質は例えばガラス、樹脂、繊維などである。また、該密閉容器の形状は、円筒形に限らず、三角柱、四角柱等の多角柱形状であってもよい。
【0078】
底部部材1と上部部材2とは、接合面3において、適当な結合部材(図示せず)により、好ましくは気密を保つように結合されている。底部部材1には気体導入管4が備えられている。上部部材2の内面には、公知の方法により、静電気が帯電されている。
【0079】
本発明の製造法においては、まず、上記底部部材1内に、原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料5を入れる。
【0080】
次いで、上記気体導入管4から窒素ガス等の気体をナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料5に吹き込む。これに代えて又はこれに加えて、該気体を、炭素質材料5に吹き付けてもよい。これにより、図1の(b)に示すように、原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を容器内空間部に浮遊させる。すると、図1の(c)に示すように、浮遊している炭素質材料の中の不純物は、静電気により、上部部材2の内壁の内壁面に付着して不純物層6,6を形成する。一方、時間の経過と共にナノスケールカーボンチューブは次第に沈降していき、底部部材1の底に、精製されたナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料7として沈降する。
【0081】
こうして得られた高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料7を回収することにより目的とする高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を得ることができ、また、この本発明方法を繰り返すことにより、精製の程度を向上させることができる。こうして得られる炭素質材料中のナノスケールカーボンチューブの純度は、一般に80%以上、特に80〜99%程度となる。アモルファスナノスケールカーボンチューブの場合は、金属不純物を無視するとほぼ100%の高純度を達成することも可能である。
【0082】
上記高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を回収した後の底部部材1及び不純物層6が形成された上部部材2は、洗浄などにより、付着している炭素質材料や不純物を除去して再度利用することができる。
【0083】
また、上記方法の変更態様として、次のような方法を採用することもできる。例えば、図2に示すように、内面が静電気を帯びた両端が開口した長い管の形態の基材10を使用し、該管の上部から原料ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を降下させる。基材10の材質としては、前記容器形態の基材と同様の材質でよい。
【0084】
原料が降下するにつれて、基材10の内壁面には、原料中の不純物が付着して不純物層20が形成され、管状基材10の底部には、精製されたナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料30が沈降する。
【0085】
こうして得られたナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料30を回収することにより、目的とする高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を得ることができる。この方法によれば、精製されたナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料30を連続的に抜き出すことにより、連続処理も可能である。
【0086】
このように、本発明によれば、溶媒その他の化学薬品を使用することなく、且つ、ナノスケールカーボンチューブを帯電させる処理を行うことなく、簡単な操作で高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を製造することができる。
【0087】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明をより詳しく説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではなく、本発明の原理を使用して種々の変更が可能である。
【0088】
下記の実施例において、炭素質材料中のナノスケールカーボンチューブの純度は次のようにして測定した。
【0089】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率20000倍で1サンプル当たり50視野の観察を行う。各視野において、視野の半分以上の面積がナノスケールカーボンチューブで占められている場合はその視野はすべてナノスケールカーボンチューブで占められていると判定し、視野の半分未満の面積しかナノスケールカーボンチューブが存在しない場合はその視野はナノスケールカーボンチューブが全くないと判定する。純度(視野率)を下記の式で計算する。
【0090】
純度(%)=(Nc/N)×100
上記式中、Ncはナノスケールカーボンチューブですべて占められていると判定された視野の数を示し、Nは観察視野数(=50)を示す。
【0091】
実施例1
前記特許文献1の実施例3に記載の方法により製造したアモルファスナノスケールカーボンチューブを含有する炭素質材料を、原料炭素質材料として使用した。
【0092】
使用した基材は、図1に示すような容器形態の基材であり、底部部材1としては内径46mm、長さ10cmの円筒形の、一端が開口し他端が閉じている石英ガラス製容器を使用した。この底部部材1には、気体導入管4が備えられている。上部部材2としては内径内径46mm、長さ60cmの円筒形の、一端が開口し他端が閉じている石英ガラス製容器を使用した。上部部材2の石英ガラス容器は、その内壁面に、ポリテトラフルオロエチレンシートを外周部に巻き付けた円筒管を20回均等にこすりつけることにより帯電させた。上部部材2の石英ガラス容器の内壁面について帯電電位を測定したところ、+1.5kVの電位を示した。
【0093】
底部部材1のガラス製容器内に、上記原料炭素質材料を入れ、その上に、上記内壁面が帯電した上部部材2のガラス製容器を、両容器の開口部どうしが接合するように重ねて、粘着テープで結合した。
【0094】
次いで、気体導入管4から窒素ガスを吹き込んで、原料炭素質材料を容器内空間部に浮遊させた。
【0095】
そのまま約10分間放置すると、上部部材2のガラス容器内壁には黒色の不純物層が形成されていた。一方、底部部材1のガラス容器の底には高純度アモルファスナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料が得られており、その純度を測定したところ、純度90%であった。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な操作で、高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を製造することができる。
【0097】
溶媒その他の薬品を使用する必要がないので、溶媒その他の薬品がナノスケールカーボンチューブ表面に不純物として残留することがなく、この観点からも高い純度のナノスケールカーボンチューブ炭素質材料を得ることができる。
【0098】
原料とするナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を帯電させるのではなく、基材を帯電させるので、原料中のナノスケールカーボンチューブが破壊されたり、変性されたりすることがない。
【0099】
また、図2について説明した実施形態を採用すると、連続的な製造も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明製造法の実施形態の一例を示す図面であり、(a)は原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を入れた容器形態の基材の縦断面図であり、(b)は気体を炭素質材料中に吹き込むことにより浮遊させた炭素質材料を含む容器形態の基材の縦断面図であり、(c)は静電気により不純物が容器内壁に付着している容器形態の基材の縦断面図である。
【図2】本発明製造法の他の実施形態の一例を示す、長い管状の基材の縦断面図である。
【図3】鉄−炭素複合体を構成するカーボンチューブのTEM像の模式図を示し、(a-1)は、円柱状のナノフレークカーボンチューブのTEM像の模式図であり、(a-2)は入れ子構造の多層カーボンナノチューブのTEM像の模式図である。
【符号の説明】
1 底部部材
2 上部部材
3 接合面
4 気体導入管
5 原料ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料
6 不純物層
7 高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料
10 管状の基材
20 不純物層
30 高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材(目的物)
100 ナノフレークカーボンチューブの長手方向のTEM像
110 略直線状のグラフェンシート像
200 ナノフレークカーボンチューブの長手方向にほぼ垂直な断面のTEM 像
210 弧状グラフェンシート像
300 入れ子構造の多層カーボンナノチューブの長手方向の全長にわたって連続する直線状グラフェンシート像
400 入れ子構造の多層カーボンナノチューブの長手方向に垂直な断面のTEM像
Claims (5)
- (i)原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料と、静電気を帯びた基材とを接触又は接近させて、該原料ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料中に含まれている不純物を基材表面に付着させる工程、及び
(ii)該基材表面に付着しなかった高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を回収する工程
を含むことを特徴とする高純度ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料の製造法。 - ナノスケールカーボンチューブが、アモルファスナノスケールカーボンチューブ及び多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の製造法。
- ナノスケールカーボンチューブが、(a)ナノフレークカーボンチューブと、(b)鉄又は炭化鉄とからなり、該ナノフレークカーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に、該鉄又は炭化鉄(b)が存在している鉄−炭素複合体である請求項1に記載の製造法。
- 基材が、帯電可能なガラス、樹脂、ゴム及び繊維からなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる容器又は両端が開口した管である請求項1〜3のいずれかに記載の製造法。
- 静電気を帯びた基材が、気体導入口を備え、静電気を帯びた密閉容器であり、
工程(i)を、該基材である密閉容器内で、原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料に気体を吹き付けること、及び/又は、原料として使用するナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料内に気体を吹き込むことにより、該炭素質材料を容器内空間部に浮遊させ、浮遊した不純物を、静電気を帯びた密閉容器内面に付着させることにより行い、
工程(ii)を、浮遊したナノスケールカーボンチューブを容器底部に沈降させ、沈降したナノスケールカーボンチューブを回収することにより行う
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造法。
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